JP4535230B2 - コーティング剤 - Google Patents

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本発明は、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバが溶媒に分散されたコーティング剤に関する。
外径が30nm以下のサイズの中空ファイバは、その特異な量子効果、光学異方性、電子放出能、大表面積、吸着分子のサイズ選択性等の特性から、近年、エレクトロニクス、バイオサイエンス、触媒等の各種分野から大きな注目を集めている。これらの中空ファイバの優れた特性を様々な用途に応用するためには、簡便なプロセスによる薄膜化、コーティング化が必要不可欠になる。一般に、中空ファイバの分散は、中空ファイバ同士の結合が強いために困難とされている。例えば、カーボンナノチューブを分散する方法として、イオン性液体と混合する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
一方、ワイドギャップ型半導体の中空ファイバは、透明性、紫外線レーザー発振等の特性が期待されている。ワイドギャップ半導体のうち、特に酸化チタンは高い屈折率と優れた光触媒特性を有しているため、光学薄膜や、防曇、防汚コーティング材料として注目されている。酸化チタンないしチタン酸の中空状ファイバについては、粉末状の材料については既に報告されている(たとえば、特許文献1、非特許文献2参照)。しかしながら、中空ファイバ同士の吸着力は高く、互いに絡み合っているため、溶媒に高度に分散した溶液を提供することは困難である。
T. Fukushima et al., Science, 300, 2072 (2003) 特開平10-152323号公報 L. M. Peng et al., Adv. Mater. 14, 1208 (2002)
チタン元素を含む化合物からなる中空状ファイバを溶媒中に高度に分散させ、沈殿を生じることなく安定なコーティング剤を提供する。
本発明では、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバと溶媒を含んでなり、前記チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバの内部ないし表面にプロトンが付加され前記溶媒アミン水溶液あり、前記溶媒に前記プロトン付加後の中空ファイバを分散させたことを特徴とするコーティング剤を提供する。本発明では、中空ファイバが溶媒に安定に分散したコーティング剤が得られる。


本発明によれば、様々な用途、たとえば光触媒部材や充放電材料、に適用が可能な中空ファイバのコーティング剤を提供することができる。
本発明に係るコーティング剤はチタン元素を含む化合物からなる中空ファイバが溶媒に分散されている。また、前記チタン元素を含む化合物の内部ないし表面にはプロトンが付加されている。無機物に高い分散性を持たせるための手段として、凝集の駆動力となる静電エネルギーを低くすることが有効である。本発明においては、中空ファイバの内部ないし表面にプロトンを付加することで、電気的中性が保たれるため高い分散性を発現することができる。プロトン付加量は赤外分光法(IR)、昇温脱離法(TDS)、CHNコーダで分析することができる。例えば、本発明に係る中空ファイバをCHNコーダで分析すると水素の濃度は3重量%以上となり、従来のアナターゼ型酸化チタンに含まれる水素の量(約1重量%)よりも高い。本発明では、水素の濃度1.5重量%以上でプロトンが付加されたものと見なす。前記中空ファイバにプロトンを挿入する方法としては、酸に接触する方法が最も簡便である。
また、本発明に係るコーティング剤の溶媒として、アミン水溶液を好適に使用することができる。アミン水溶液を使用することで、前記中空ファイバを高度に分散することができる。具体的なアミンの種類としては、たとえば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン等のアルキルアミンやそのハロゲン酸塩、またはエチレンジアミン、プロパンジアミンなどのジアミン類からなる郡から選択される少なくとも一種を好適に使用することができる。
本発明の更に好ましい態様においては、前記アミン水溶液として、四級アンモニウム水酸化物の水溶液を好適に使用することができる。四級アンモニウム水酸化物は解離定数が高いため、中空ファイバを高度に分散することができる。すなわち、前記プロトン挿入と四級アンモニウム水酸化物の水溶液を溶媒として使用することで、高度に分散した中空ファイバのコーティング剤を提供することが可能となる。前記四級アンモニウム水酸化物として、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの四級アンモニウム水酸化物のうち、少なくとも一種を使用することができる。
四級アンモニウム水酸化物の水溶液の濃度としては、0.001M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.01M以上2M以下である。ここで、0.001M未満の濃度条件では、四級アンモニウム水酸化物の中空ファイバへの吸着が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.01M未満の場合、四級アンモニウム水酸化物の吸着反応が遅くなる恐れがあり、2Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
本発明に係るチタン元素を含む化合物は酸化チタン、チタン水酸化物、チタン酸塩、非晶質のいずれか一項を含んでいる。本発明に係るチタン元素を含む化合物が酸化チタンの場合、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型、TiO2(B)が好適に使用できる。本発明に係るチタン元素を含む化合物がチタン酸塩の場合、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、七チタン酸、八チタン酸等のプロトンを含む多価チタン酸や、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸セシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の多価チタン酸塩であっても構わない。特に好ましい態様においては、チタン元素を含む化合物は巻物状の層状のトリチタン酸で構成されている。前記巻物状の層状のトリチタン酸は、電荷の中性を保つため、層間にプロトンが挿入されており、溶媒中での安定性は極めて高い。
前記中空ファイバの作製方法としては、例えば、酸化チタン粒子を水酸化ナトリウム水溶液中において、水熱処理する方法が好ましく用いられる。
本発明に係る中空ファイバのサイズは、内径が3〜8nm、外径が8〜30nm、長さが100nm〜1μmの範囲である。従来のTiO2コロイドと比較するとサイズが小さいために、量子サイズ効果が起こり、キャリアの移動度が高い。また、異方性が高いので機械的な強度が高いことと、ファイバ先端からの光放出能が期待できる。
本発明に係る中空ファイバはプロトンを付加しているため、従来の酸化チタンよりもアニオン性を示し、等電点におけるpHは3〜6の範囲である。従来の酸化チタンコロイドの等電点でのpHは6〜7であるため、従来のTiO2に比較すると、中性領域の分散性に優れている。また、本発明の中空ファイバのより好ましい等電点でのpHは5〜6である。
本発明のコーティング剤の固形分の濃度は10%以下である。この範囲であれば、分散性が高く、沈殿を生じることなく、室温で長期間安定である。
本発明のコーティング剤に更にバインダー成分が含まれていてもよい。バインダーとして、例えば、シロキサン結合を有する物質を好適に使用することができる。シロキサン結合は化学的な安定性や耐候性も高い。前記シロキサン結合を有する物質としては水ガラス等のアルカリシリケート、コロイダルシリカ、アルミノシリケート化合物を使用することもできる。アルミノシリケート化合物はシリケート化合物のSiの一部をAlで置換した化合物であって、更に電荷を補償するためにH+やLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+などのアルカリ金属イオンやBe2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+などのアルカリ土類金属イオンが含有されていてもよい。前記シリケート結合を有する化合物のSiの一部をAlで置換した物や、ゼオライトなどを使用することができる。また、前記シロキサン結合を有する物質として、更に好ましい態様において、シリコーンエマルジョンを用いることができる。シリコーンエマルジョンとしては、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランの部分加水分解物、脱水宿重合物を好適に使用することができる。
更に、本発明のコーティング剤に含まれるバインダーとして、フッ素樹脂エマルジョンを使用することができる。フッ素樹脂エマルジョンを含む塗膜は化学的安定性が高く、また、耐候性も高く、柔軟性にも優れている。前記フッ素樹脂エマルジョンとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等フルオロ基を含有するポリマーのエマルジョン等から選択される少なくとも一つが好適に利用できる。
本発明に係る中空ファイバを光触媒等の電荷移動媒体として使用する場合、電荷分離を促進させるため、前記中空ファイバにPt, Pd, Ag, Cu, Au, Ni等の金属を担持してもよい。前記金属を担持することによって光励起した電子正孔対が効率的に分離し、光電流が増大する。また、特にAgやCuを担持した場合、抗菌性や防藻性も発揮する。
本発明のコーティング剤を製造する方法として、特に好ましくは、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる工程の後、アミン水溶液に分散させる方法が挙げられる。酸水溶液に接触させることによって中空ファイバの内部ないし表面にプロトンが付加されて安定化し、その後四級アンモニウム水酸化物の水溶液を溶媒にすることによって高度に分散する。
中空ファイバにプロトンを付加する方法として、中空ファイバを酸水溶液と接触させる方法が好適に用いられる。ここで用いる酸の種類としては、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸などが挙げられる。プロトンの付加を効率的に促進させるため、攪拌・振蕩させてもよい。
前記酸水溶液と接触させる時の温度条件としては、0℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。ここで、0℃未満の温度条件では、溶媒である水が凍結してしまい、プロトンの付加反応が阻害される恐れがあり、また100℃以上の温度条件では、水の沸点以上になる為に、溶媒の揮発が顕著になることや中空ファイバの溶解・分解反応が促進される恐れがある。そして、10℃未満の温度では、溶液中の拡散低下により中空ファイバへのプロトン付加反応が遅くなり、50℃より高い温度
では、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
酸水溶液の酸濃度としては、0.1M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.2M以上5M以下である。ここで、0.1M未満の濃度条件では、プロトン量が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.2M未満の場合、プロトン付加反応が遅くなる恐れがあり、5Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
前記コーティング剤を製造する方法において、アミン水溶液に分散させる時の温度条件としては、0℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。ここで、0℃未満の温度条件では、溶媒である水が凍結してしまうので、アミンの解離が阻害されてしまい、また100℃以上の温度条件では、水の沸点以上になる為に、溶媒の揮発が顕著になることや中空ファイバの溶解・分解反応が促進される恐れがある。そして、10℃未満の温度では、溶液中の拡散低下によりアミンの解離反応が遅くなり、50℃より高い温度では、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
アミン水溶液の濃度としては、前述のとおり、0.001M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.01M以上2M以下である。ここで、0.001M未満の濃度条件では、アミンの中空ファイバへの吸着が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.01M未満の場合、アミンの吸着反応が遅くなる恐れがあり、2Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
本発明のコーティング剤を用いて塗膜を作製する方法の例として、前記中空ファイバが分散した溶液と、カチオン性ポリマーを含む溶液に対し、基材を交互に浸漬することによって製造する方法が挙げられる。前記中空ファイバの表面はアニオン性なので、カチオン性のポリマーと交互に積層することによって、単粒子膜が容易に製造でき、浸漬回数によって精密な膜厚の制御が可能となる。
前記製造方法において、カチオン性ポリマー水溶液として、ポリスチレンスルホン酸(PSS)ポリ塩化ジエチルジアリルアンモニウム(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルサルフェート(PVS)、ポリアリルアミン(PAH)等のポリマーが好適に使用することができる。カチオン性のポリマーを嵩高くするため、前記カチオン性ポリマー水溶液にNaCl、KCl等の塩を添加しても構わない。また、成膜後、前記カチオン性ポリマーを除去してもよい。中空ファイバの層間に存在するポリマーは、50℃〜600℃の熱処理によって取り除くことができる。
前記製造方法のカチオン性ポリマーを除去する方法として、更に好ましくは紫外線の照射をおこなう。紫外線照射の工程は、熱処理と比較すると中空ファイバの構造が収縮しないという利点がある。たとえば、充放電材料ではプロトンの拡散速度が速くなる。
本発明のコーティング剤は長期間沈殿を生じることなく安定である。本発明のコーティング剤で得られる塗膜は高い透明性が得られる。具体的な応用として、たとえば、光触媒活性を有する中空ファイバを用いれば光触媒部材が得られ、導電性機材を用いれば充放電材料が得られる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
1.中空ファイバの作製
酸化チタン粉末(商品名P25、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径約25nm、比表面積約55m2/g)0.64gを10M水酸化ナトリウム水溶液80mlに投入し、ガラス棒にて1分間攪拌することにより、白色懸濁液を得た。この白色懸濁液を100mlフッ素樹脂製容器に入れ、さらにステンレス製容器にこのフッ素樹脂製の容器を入れた。乾燥器の中にこのステンレス容器を入れて、110℃で20時間保持した。反応終了後、室温までステンレス容器を自然放冷させ、白色沈殿物を含む溶液を回収した。洗浄工程として、この白色沈殿物を含む溶液から、上澄み液をまずスポイトにて除去した。残った白色沈殿物に0.1M塩酸水溶液100mlを少量ずつ添加した。塩酸水溶液を全量添加後、室温(20℃)で3時間静置した。静置後、上澄み液を除去した。この洗浄工程を合計3回行い、上澄み液がpH7以下であることを確認した。これらの中和操作の後、残った白色沈殿物を蒸留水で2回洗浄することにより、白色粉末を得た。この白色粉末を走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、この方法で得られる白色粉末が中空ファイバの集合体であり、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。
2.コーティング剤の作製
上記の方法で作製した白色粉末を2M硝酸水溶液64ml中に添加、室温で15時間マグネティックスターラーによって攪拌した。攪拌後、得られた半透明溶液を遠心分離機(佐久間製作所(株)製 M200−IVD)により5000rpmで30分遠心分離することで、プロトンを付加した白色ゲルを得た。さらに、この白色ゲルを0.1Mの水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液に加え、室温で24時間マグネティックスターラーによって攪拌し、半透明なコーティング剤を得た。水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液に分散した半透明なコーティング剤は室温で60日経過しても沈殿を生じていなかった。
前記プロトンを付加した白色ゲルをCHNコーダによってn=2にて水素量を評価した結果を表1に示す。この結果、従来のアナターゼ型酸化チタン(商品名:ST-01、石原産業製)よりも水素量が高く、多量のプロトンが付加されていることが示唆された。
また、前記コーティング剤に分散した中空ファイバのゼータ電位を測定した。前記コーティング剤0.1gを200gの10mmol/Lの塩化ナトリウム水溶液に滴下、混合した液のゼータ電位を電気泳動光散乱光度計(型名:ELS-6000、大塚電子製)によって各種pHで測定した。pHの調節は10mmol/Lの塩酸および水酸化ナトリウムを使用した。比較としてアナターゼ型の酸化チタンゾル(商品名STS-01、石原産業製)のゼータ電位も測定した。
ゼータ電位が0になるpHが等電点である。この結果、本発明の中空ファイバの等電点におけるpHは5.5となった。つまり、中性〜アルカリ性において表面が負に帯電している。比較例のアナターゼ型TiO2の等電点でのpHは6.5となり、本発明に係る中空ファイバは従来の酸化チタンよりもアニオン性を示しており、中性領域での安定性が高いことが期待される。
Figure 0004535230
本発明のコーティング剤は、光学薄膜、光触媒、光半導体電極、トランジスタ、発光素子、バイオセンサ電極、化学センサ電極、充放電材料、誘電体材料、導電性材料、絶縁性材料、エレクトロクロミック素子、フォトクロミック素子、防錆材料、紫外線遮蔽材料、プロトン伝導体、水素吸蔵体等の広範な用途に適用することができる。
本発明に係る中空ファイバの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 本発明の実施例に係る、pHとゼータ電位の関係を示す図である。

Claims (9)

  1. チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバと、溶媒とを含んでなり、前記チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバの内部ないし表面にプロトンが付加され前記溶媒アミン水溶液であり、前記溶媒に前記プロトン付加後の中空ファイバを分散させたことを特徴とするコーティング剤。
  2. 前記アミン水溶液が四級アンモニウム水酸化物の水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤。


  3. 前記チタン元素を含む化合物が、酸化チタン、チタン水酸化物、チタン酸塩、非晶質の酸化チタンのいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング剤。
  4. 前記チタン元素を含む化合物が、巻物状の層状のトリチタン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング剤。
  5. 前記中空ファイバの内径が3〜8nm、外径が8〜30nm、長さが100nm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のコーティング剤。
  6. 前記中空ファイバの等電点におけるpHが3〜6であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載のコーティング剤。
  7. 前記コーティング剤の固形分濃度が10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載のコーティング剤。
  8. 前記コーティング剤に、更にバインダーが含まれることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載のコーティング剤
  9. 請求項1〜8いずれか一項に記載のコーティング剤を製造する方法であって、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる工程の後、四級アンモニウム水酸化物の水溶液に分散させる工程を有することを特徴とするコーティング剤の製造方法。
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