JP3427848B2 - 帯電防止性樹脂組成物 - Google Patents

帯電防止性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、帯電防止性、外観特
性、光学特性、及び透明性に優れたメチルメタクリレー
ト−スチレン共重合樹脂組成物に関するものであり、具
体的には、ほこりなどの付着する恐れのある電子・電気
機器や照明カバーなどに好適な樹脂組成物に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、熱可塑性樹脂組成物に帯電防止性
をもたせる方法としては、種々の方法が開示されてお
り、例えば、特公平1−37414号公報に開示されて
いる通り、熱可塑性樹脂の表面を帯電防止性を有する物
質としてアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレ
ンアルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性
剤、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤が知られ
ている。しかしこれらの帯電防止剤は低分子のため、効
果に持続性がないという欠点を有する。熱可塑性樹脂組
成物中に帯電防止性を有する物質を添加する方法も上記
公報に開示されており、主な帯電防止剤として、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキルアミノエーテル、アルキルジエタノールアミド等
の非イオン性界面活性剤が知られている。しかし、これ
ら非イオン性界面活性剤はイオン性界面活性剤に比べて
帯電防止効果が低い。
【0003】更に、特開平3−43440号公報には、
アクリル系樹脂等に吸水性の化合物や帯電防止剤などを
練り込む方法、及び界面活性剤などを表面に塗布する方
法などが開示されている。しかし上記練り込む方法で
は、相溶性の不足、分散性の不良や帯電防止剤の高分子
材料表面へのブリードアウト等による外観特性低下等の
問題を生じていた。
【0004】又、特開昭62−230835号公報、特
開平1−62336号公報等にポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、ポリメチル
メタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロ
ラクタム等の熱可塑性樹脂に帯電防止剤としてスルホン
酸ホスホニウム塩を使用することが開示されている。こ
の場合、良好な帯電防止効果が得られ、高分子材料表面
へのブリードアウト等の不都合は解消される。しかし、
上記特開昭62−230835号公報、特開平1−62
336号公報に記載の熱可塑性樹脂に帯電防止剤として
スルホン酸ホスホニウム塩を添加配合しても全光線透過
率が高く、かつ屈折率の高いものは得られず、プロジェ
クションテレビ用のレンズ基材等の高い全光線透過率と
屈折率が要求される分野への使用に不都合を生じてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記課題を解
決し、帯電防止性、外観特性、屈折率等の光学特性、及
び透明性に優れたメチルメタクリレート−スチレン共重
合樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、これらの従来
方法の欠点について改良すべく研究した結果、熱可塑性
樹脂としてメチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂
を使用し、該樹脂に、帯電防止剤としてスルホン酸ホス
ホニウム塩を使用することにより優れた帯電防止性と高
い全光線透過率と屈折率を有する熱可塑性樹脂組成物が
得られることを見いだし、更に滑剤として脂肪族エステ
ル化合物を配合することにより、帯電防止性、外観特
性、光学特性、及び透明性が更に改良された熱可塑性樹
脂が得られることを見いだし、本発明に達した。
【0007】すなわち、本発明は、メチルメタクリレー
ト−スチレン共重合樹脂100重量部に対して、スルホ
ン酸ホスホニウム塩を0.3〜3重量部、炭素数6以上
の脂肪族もしくは芳香族エステル化合物を0〜3重量部
配合した帯電防止性樹脂組成物に関する発明である。
【0008】本発明で使用可能なメチルメタクリレート
−スチレン共重合樹脂は、一般にメチルメタクリレート
20〜80重量%とスチレン80〜20重量%配合(こ
こで重量%の合計は100重量%とする)して共重合し
て得られる共重合樹脂が好ましく、その分子量としては
押出混練り性、物性面から好ましくは100000〜2
00000である。共重合樹脂を得る際、メチルメタク
リレートの配合割合が上記20重量%未満であると強
度、曲げ強度等の機械的物性が低下する、一方、メチル
メタクリレートの配合割合が上記80重量%を越えると
得られる樹脂の屈折率が低下し、またペレットの製造が
困難になる場合がある。上記配合割合は、得られた樹脂
組成物の屈折率が1.50〜1.57の範囲になるもの
が種々の光学機器に使用する上で望ましい。又、押出し
成形により、フィルム、シートを成形する際、成形温度
条件において好ましい溶融粘度を得るには、メチルメタ
クリレート−スチレン共重合樹脂の分子量として100
000〜200000程度が望ましい。
【0009】本発明で使用するスルホン酸ホスホニウム
塩は下記の式(1)で示される。
【0010】
【化3】
【0011】(一般式(1)中、R1 は、炭素数8〜2
2のアルキル基またはアルキルアリール基であり、R2
〜R5 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または
アリール基であり、これらは同じであっても異なってい
てもよい。)
【0012】本発明におけるスルホン酸ホスホニウム塩
は、有機スルホネートアニオンと有機ホスホニウムカチ
オンとからなるものである。該有機スルホネートアニオ
ンの具体例としては、ドコシルスルホネート、テトラコ
シルスルホネート等、及びこれらの混合物が挙げられ
る。
【0013】該有機ホスホニウムカチオン具体例として
は、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニ
ウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホ
スホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリオク
チルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウ
ム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウ
リルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウ
ム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリブチルオク
チルホスホニウム等の脂肪族ホスホニウム、トリフェニ
ルメチルホスホニウム、トリフェニルエチルホスホニウ
ム等の芳香族ホスホニウム、トリフェニルベンジルホス
ホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム等のアルキ
ルアリールホスホニウムが挙げられる。
【0014】更に、テトラメチロールホスホニウム、ト
リ(2−シアノエチル)メチルホスホニウム、トリ(2
−シアノエチル)エチルホスホニウム、トリ(2−シア
ノエチル)ベンジルホスホニウム、トリ(3−ヒドロキ
シプロピル)ベンジルホスホニウム、トリメチル(2−
ヒドロキシエチル)ホスホニウム、トリブチル(2−ヒ
ドロキシエチル)ホスホニウム等の置換基を有する脂肪
族ホスホニウムも使用できる。一般式(1)の例として
上記に挙げたスルホン酸ホスホニウム塩の中でも、一般
式(2)に示すものが特に好ましい。
【0015】
【化4】
【0016】(一般式(2)中、R6 は、炭素数2〜1
6のアルキル基であり、R2 〜R5 は水素原子、炭素数
1〜10のアルキル基またはアリール基であり、これら
は同じであっても異なっていてもよい。)
【0017】本発明のスルホン酸ホスホニウム塩は、こ
れら有機スルホネートアニオンと有機ホスホニウムカチ
オンとの任意の組み合わせにより構成されるが、本発明
はこれらに限定されるものではない。本発明のスルホン
酸ホスホニウム塩の配合割合は、メチルメタクリレート
−スチレン共重合樹脂100重量部に対して、0.3〜
3重量部、好ましくは0.8〜2重量部である。スルホ
ン酸ホスホニウム塩の配合割合が上記0.3重量部未満
では十分な帯電防止効果が得られず、3重量部より多い
場合では、スルホン酸ホスホニウム塩の粘りが強いた
め、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂との混
合が困難となり、更に押出機での原料供給部分でのすべ
り性が悪くなることに起因する押出安定性が低下するの
で好ましくない。
【0018】本発明で、メチルメタクリレート−スチレ
ン共重合樹脂とスルホン酸ホスホニウム塩からなる樹脂
組成物に更に滑剤として脂肪族もしくは芳香族エステル
化合物を使用すると全光線透過率、黄色度(YI値)等
の光学物性の改良の効果、及びホスホニウム塩の使用量
を減ずることによる押出安定性等の改良の効が得られ
る。上記エステル化合物の使用割合は、メチルメタクリ
レート−スチレン共重合樹脂100重量部に対して、エ
ステル化合物が0〜3重量部である。本発明におけるエ
ステル化合物は、炭素数6以上の脂肪族もしくは芳香族
カルボン酸及びグリセライドからなる重合体であり、特
にステアリン酸モノグリセライドが好ましく用いられ
る。
【0019】本発明の樹脂組成物を光拡散性シートに使
用する場合は、メチルメタクリレート−スチレン共重合
樹脂に更に光拡散剤を配合して使用することができる。
上記光拡散剤として、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、
結晶性シリカ、無定形シリカ、及びガラス等の無機化合
物からなる微粒子、又はメタクリル系共重合体、スチレ
ン系共重合体、ポリカーボネート系共重合体、及び塩化
ビニル系共重合体等の架橋有機ポリマー微粒子が使用で
きる。上記光拡散剤の中でも硫酸バリウムの使用が特に
望ましい。光拡散剤の使用割合は、メチルメタクリレー
ト−スチレン共重合樹脂100重量部に対して、無機化
合物からなる微粒子の場合は0.05〜2重量部、架橋
有機ポリマー微粒子の場合は0.05〜20重量部であ
る。光拡散剤の配合割合が上記範囲未満では光拡散性の
効果が少なく、一方、上記範囲を越える場合は透明性が
低下するという不都合を生ずる。
【0020】本発明の帯電防止性樹脂組成物には、更に
所望に応じて更に安定剤、顔料、染料、難燃剤、滑剤等
の各種添加剤やガラスビーズなどの充填剤を配合して使
用することができる。本発明の樹脂組成物を調整するに
当たっては、従来公知の方法が採用されれば良く、ドラ
イブレンドやスーパーミキサーなどからの結果物を押出
機等で混練する方法などがある。
【0021】なお、本発明にかかる帯電防止性樹脂組成
物による最終成形品の製造は、射出成形、押出し成形、
ブロー成形、圧縮成形等の通常の成形手段を適用するこ
とができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例により本発明の詳細を説明す
る。尚、評価は、以下の方法によった。 (1)外観特性は、ブランクのシート(帯電防止剤を添
加しない合成高分子のみから成るシート)を標準として
肉眼により比較評価した。○印は、透明でくもり、ひ
け、すじがない場合を示し、×印は、くもり、ひけ、す
じ等がある場合を示す。 (2)黄色度(YI値)は、日本電色工業(株)製の測
色色差計(型式:Z−Σ80)を使用して透過法によっ
て測定した。 (3)表面固有抵抗値は、成形直後、成形板を23℃、
50%湿度の恒温室に24時間放置後、(株)川口電気
製作所製の超絶縁抵抗計で測定した。 (4)全光線透過率は、日本電色工業 (株) 製のヘイズ
メーター(型式:NDH)を使用して測定した。
【0023】実施例1〜6 メチルメタクリレート―スチレン共重合樹脂(メチルメ
タクリレート64重量%、スチレン36重量%からなる
単量体混合物を共重合して得た、分子量150000の
ペレット)と帯電防止剤として式(2)に示すアルキル
(アルキルの平均炭素数:12)ベンゼンスルホン酸テ
トラアルキル(アルキルの平均炭素数:4)ホスホニウ
ムを表1に示す割合で配合し、スーパーミキサーで攪は
ん混合し、ベント付45mmφの2軸押出機で、樹脂温
度220℃で溶融混練、押出を行うことによってペレッ
トを製造した。次いで、ベント付65mmφのシート押
出機で、樹脂温度225℃で試験片を試作し、各物性値
を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0024】比較例1 帯電防止剤を添加することなく、実施例1で使用したメ
チルメタクリレート−スチレン共重合樹脂のみで実施例
1と同様に試験片を試作し、各物性値を測定した。結果
を表2に示す。
【0025】比較例2 実施例1で使用したメチルメタクリレート−スチレン共
重合樹脂と、帯電防止剤としてドデシルスルホン酸ナト
リウムを表2に示す割合で配合し、実施例1と同様に試
験片を試作し、各物性値を測定した。結果を表2に示
す。
【0026】比較例3 実施例1で使用したメチルメタクリレート−スチレン共
重合樹脂と、滑剤としてステアリン酸モノグリセライド
を表2に示す割合で配合し、実施例1と同様に試験片を
試作し、各物性値を測定した。結果を表2に示す。
【0027】
【発明の効果】本発明の帯電防止性樹脂組成物は、外観
特性及び全光線透過率88以上等の光学特性に優れ、更
に機械的特性を低下させることなく、ほこりが付着しに
くい良好な優れた帯電防止性と透明性を有するものであ
る。
【0028】
【表1】 実施例番号 1 2 3 4 5 配合組成(重量部) MS共重合樹脂 100 100 100 100 100 スルホン酸ホスホニウム塩 0.4 1 2 3 1.0 ステアリン酸モノグリセライド − − − − 0.8 厚み(mm) 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 外観特性 ○ ○ ○ ○ ○ 黄色度(YI値) 3 5 8 11 5 表面固有抵抗値(Ω) 1015 1015 1013 1012 1013 全光線透過率(%) 91 90 89 88 90
【0029】
【表2】 実施例、比較例番号 実施例6 比較例1 比較例2 比較例3 配合組成(重量部) MS共重合樹脂 100 100 100 100 ドデシルスルホン酸ナトリウム − − 0.5 − スルホン酸ホスホニウム塩 1.5 − − − ステアリン酸モノグリセライド 0.5 − − 0.5 厚み(mm) 1.5 1.5 1.8 1.5 外観特性 ○ ○ × ○ 黄色度(YI値) 6 1 − 2 表面固有抵抗値(Ω) 1013 >1016 1011 1016 全光線透過率(%) 90 92 83 91
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 33/12 C08L 33/12 //(C08L 33/12 101:00 101:00) (56)参考文献 特開 平5−295212(JP,A) 特開 昭64−90284(JP,A) 特開 昭62−230835(JP,A) 特開 昭64−62336(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メチルメタクリレート−スチレン共重合
    樹脂100重量部に対して、スルホン酸ホスホニウム塩
    を0.3〜3重量部、炭素数6以上の脂肪族若しくは芳
    香族エステル化合物を0〜3重量部配合した帯電防止性
    樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 スルホン酸ホスホニウム塩が、一般式
    (1)で示される化合物である請求項1に記載の帯電防
    止性樹脂組成物。 【化1】 (一般式(1)中、R1 は、炭素数8〜22のアルキル
    基またはアルキルアリール基であり、R2 〜R5 は水素
    原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で
    あり、これらは同じであっても異なっていてもよい。)
  3. 【請求項3】 スルホン酸ホスホニウム塩が、下記の一
    般式(2)で示される化合物である請求項1に記載の帯
    電防止性樹脂組成物。 【化2】 (一般式(1)中、R6 は、炭素数2〜16のアルキル
    基であり、R2 〜R5 は水素原子、炭素数1〜10のア
    ルキル基またはアリール基であり、これらは同じであっ
    ても異なっていてもよい。)
  4. 【請求項4】 屈折率が1.50〜1.57の範囲であ
    る請求項1に記載の帯電防止性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 メチルメタクリレート−スチレン共重合
    樹脂100重量部に対して、スルホン酸ホスホニウム塩
    を0.3〜3重量部、炭素数6以上の脂肪族若しくは芳
    香族エステル化合物を0〜3重量部、及び光拡散剤とし
    て無機化合物の微粒子を0.05〜2重量部配合した光
    拡散性シート。
  6. 【請求項6】 メチルメタクリレート−スチレン共重合
    樹脂100重量部に対して、スルホン酸ホスホニウム塩
    を0.3〜3重量部、炭素数6以上の脂肪族若しくは芳
    香族エステル化合物を0〜3重量部、及び光拡散剤とし
    て架橋有機ポリマー微粒子を0.05〜20重量部配合
    した光拡散性シート。
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