JP3216137B2 - Sawデバイス - Google Patents

Sawデバイス

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JP3216137B2
JP3216137B2 JP51158896A JP51158896A JP3216137B2 JP 3216137 B2 JP3216137 B2 JP 3216137B2 JP 51158896 A JP51158896 A JP 51158896A JP 51158896 A JP51158896 A JP 51158896A JP 3216137 B2 JP3216137 B2 JP 3216137B2
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道明 高木
英司 桃崎
芳則 生坂
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、弾性表面波(以下においてSAW(Surface A
coustic Wave)と呼ぶ)を用いたデバイスに関し、特
に、高周波領域を安定して発振可能なSAW共振子に関す
るものである。
背景技術 水晶片などの圧電体平板の表面に交差指電極(以下に
おいてIDT(Interdigital transducer)と呼ぶ)と、こ
のIDTの両端に位置する反射器とを設けたSAW共振子の構
造については、例えば、米国特許471616号公報、米国特
許3886504号公報、あるいは特開昭61−281612号公報な
どに開示されている。
SAW共振子を構成する圧電体平板としては、水晶STカ
ットを用いてそのX軸を弾性波の伝搬方向とした、いわ
ゆるSTカットSAW共振子が知られている。このSTカットS
AW共振子は零温度係数すなわち、周波数温度特性の1次
係数αが0となるので周波数安定性に優れている。
従来、SAWデバイスは、高周波用のフィルターであるS
AWフィルターとして用いられていたため、それほど高い
Q値は要求されていなかった。しかしながら、近年、そ
の用途として広がっている発振器を構成するSAW共振子
においては、フィルターよりさらに安定した共振周波数
を得ることが重要であり、良好な温度特性を有すると共
にQ値の高い共振子を提供することが必要となってい
る。また、STカットSAW共振子は、1次温度係数αはほ
とんど0であるが、2次温度係数βは−3.4×10-8/℃
と比較的大きい。従って、SAW共振子の動作温度範囲で
ある−20℃から80℃の温度範囲で約100ppmの周波数変化
が発生することとなる。このため、移動体通信などの用
途において、高周波数を精度良く発振するためには、さ
らに温度特性の安定したSAW共振子を提供する必要があ
る。
発明の開示 本発明においては、STカットSAW共振子などにおい
て、その優れた周波数温度特性を劣化させることなくQ
値の高いSAW共振子を提供することを目的としている。
そのために、本発明のSAW共振子は、IDTおよびその両側
に位置した反射器を弾性表面波のエネルギーを閉じ込め
るように構成している。さらに、IDTおよび反射器を圧
電体上の弾性表面波の位相の進行方向と共にエネルギー
の進行方向もカバーするように配置し、弾性表面波のエ
ネルギーの閉じ込めをさらに効率良く行えるようにして
いる。
また、Q値の向上と共に周波数温度特性をさらに向上
することも本発明の目的としている。そのために、1次
係数αが零となる範囲で2次係数βを削減できる切断方
位を見いだし、この切断方位を有する水晶片を用いて弾
性表面波のエネルギーを効率良く閉じ込め、Q値が高く
動作温度範囲内での周波数のずれの少ないSAW共振子を
提供可能としている。
さらに、近年、大浦らによって米国FCS(Frequency C
ontrol Symposium,1994年6月)および日本の電気学会
電子回路研究会(The Institute of Electrical Engine
ers of Japan,1994年9月8日)において、STカットよ
り周波数短期安定性能が1から2桁優れた水晶Kカット
についての発表があった。この水晶Kカットとしては直
交座標系におけるオイラー角表示で、(φ,μ,ν)=
(0.,96.51,33.79)(度)近傍の角度が提唱されてい
る。しかし、このカット角は耐熱衝撃特性に優れている
と言われているが、周波数温度特性が動作温度範囲内で
使用できるか否か確認されていない。そこで、本発明に
おいては、このカット角の近傍で、温度特性に優れたカ
ット角を見いだし、Q値の高いSAW共振子を実現するこ
とを目的としている。
図面の簡単な説明 図1は、本発明のSAW共振子の方位を示す概念図であ
る。
図2は、本発明の1ポート型のSAW共振子の構成を示
す平面図である。
図3は、本発明の1ポート型のSAW共振子の異なる例
の構成を示す平面図である。
図4は、トータル反射係数Γと共振振幅との関係を示
すグラフである。
図5は、電極の膜厚Hおよび弾性表面波の波長λの比
と、共振振幅との関係を示すグラフである。
図6は、IDTの放射コンダクタンスの中心周波数と、
反射器の反射特性の中心周波数との関係を示す図であ
る。
図7は、IDTの交差指電極の配置間隔、反射器の導体
ストリップの配置間隔およびIDTと反射器の隙間を示す
断面図である。
図8は、IDTと反射器の隙間と、共振振幅との関係を
示すグラフである。
図9は、IDTおよび反射器の配置を角度δ傾斜させた
ときの角度δとQ値との関係の一実施例を示すグラフで
ある。
図10は、角度θが−72.5度で角度ψが25度および30度
のときの周波数温度特性を示すグラフである。
図11は、角度θが−72.5度で角度ψが25度近傍の頂点
温度Θmaxと、2次係数βの変化を示すグラフである。
図12は、パワーフロー角の補正をした方位決定の概念
を示す図である。
図13は、角度θが約25度から50度の範囲で、1次係数
αが零を示す角度θとψとの組み合わせを示すグラフで
ある。
図14は、図13に示す角度の組み合わせを用いた共振子
の2次係数βと、パワーフロー角PFAの変化を示すグラ
フである。
図15は、図13に示す角度の組み合わせの内、角度θが
33度のときの周波数温度特性の角度ψに対する変化を示
すグラフである。
図16は、図13に示す角度の組み合わせの水晶片の音速
降下特性を示すグラフである。
図17は、角度θが約2度から9度の範囲で、1次係数
αが零を示す角度θとψとの組み合わせ、およびΔF=
0の軌跡を示すグラフである。
図18は、図17に示す角度の組み合わせを用いた共振子
の2次係数βと、頂点温度Θmaxの変化を示すグラフで
ある。
図19は、2次係数βと角度θの関係を示すグラフであ
る。
図20は、図17に示す角度の組み合わせを用いた共振子
の周波数温度特性の一例を示すグラフである。
図21は、図17に示す角度の組み合わせの水晶片の音速
降下特性を示すグラフである。
図22は、電極の配置方向のPFAからのずれと、Q値と
の関係を示すグラフである。
図23は、PFAと角度ψとの関係を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態 以下においてα水晶単結晶(右水晶)からカットした
水晶片を圧電体平板として採用したSAW共振子を例にと
って本発明を詳しく説明する。左水晶の場合には、左手
直交座標系に従い、以下の議論は同一である。図1に、
本発明で用いる水晶片5の母材となるウェハ1の方位を
示してある。ウェハ1は、水晶の機械軸であるY軸に垂
直な、いわゆるY板2を水晶の電気軸Xの回りに反時計
方向に角度θ度(ディグリー)回転させた面を備えてお
り、この回転した面に対し水晶の機械軸Yおよび光軸Z
のθ度回転したY′軸およびZ′軸が規定される。さら
に、SAW共振子を構成するIDT20および反射器30は、水晶
の電気軸XをY′軸の回りに反時計方向を正として±ψ
度回転させたX′軸に沿って配置される。SAW共振子10
を構成する水晶片5は、ウェハ1からZ′軸を±ψ度回
転させたZ″軸およびX′軸で規定される主面6を有す
るようにカットされる。
なお、角度θおよびψをオイラー角表示で表すと(0,
θ+90゜,ψ)となる。また、角度の符号は反時計方向
を正(+)とする。さらに、角度ψの値については、+
方向に回転した場合と−方向に回転した場合とでは、そ
の示す特性は同一である。すなわち、+方向と−方向は
対称であり、以下において示す角度ψの値はいずれの方
向であっても良い。
IDTおよび反射器の配置 図2および図3に、本発明にかかる交差指電極(ID
T)20および反射器30の配置を示してある。IDT20は、向
かい合った一対の電極21aおよび21bを備えており、それ
ぞれの電極21aおよび21bからM対の交差指電極22aおよ
び22bが櫛状に延びている。これらの交差指電極22aおよ
び22bは、前述のX′軸と直交するようにピッチPtで並
列に配置されている。このIDT20のX′軸に沿った両側
には、隙間gを開けて一対の反射器30aおよび30bが配置
されている。それぞれの反射器30aおよび30bは、X′軸
と直交するようにピッチPrで並列に配置された複数の導
体ストリップ31によって構成されている。電極22および
導体ストリップ31は、水晶の平板5の上にAl、Auあるい
はCu等の導体金属膜を蒸着あるいはスパッタ等の手段に
よって薄膜状に形成し、フォトリソグラフィ技術を用い
てパターン形成することにより微細なパターンを有する
ものでも容易に製造することができる。
本発明のSAW共振子10においては、IDT20および反射器
30aおよび30bの配置にエネルギー閉じ込め型を採用し、
さらに、IDT20に直交する方向、すなわち弾性表面波の
位相の進行方向であるX′軸(角度ψ)に対しエネルギ
ーの伝搬する方向であるパワーフローの方向をカバーす
るように電極22および導体ストリップ31を配置してあ
る。
エネルギー閉じ込め型の概念は、信学技報(THE INST
ITUTE OF ELECTRONICS,INFORMATION AND COMMUNICATION
ENGINEERS TECHNICAL REPORT IEICE,JAPAN)US87−36
(pp9−16(1987年9月発行))の「エネルギー閉じ込
め弾性表面波共振子」などに紹介されているが、本例の
SAW共振子10においては、IDT20のトータル反射係数Γを
次の通り定義し、この値の範囲をほぼ0.8〜10の範囲に
設定している。
Γ=4MaH/λ ……(1) ただし、MはIDTの交差指電極22の対数、aは電極22
の1本当たりの弾性表面波の反射係数、Hは電極22を構
成する導体の膜厚、さらに、λは弾性表面波の波長であ
る。STカット水晶板を圧電体の平板5として採用しアル
ミニウム(Al)で電極22を構成した場合において、aが
0.255、H/λが0.03およびMが80とすると150〜170MHzの
共振周波数を持った1ポートSAW共振子を構成でき、こ
のときΓは2.448程度となる。
図4に、1ポートSAW共振子において、対数Mを変数
にしてトータル反射係数Γを制御し、そのときのSAW共
振子の共振振幅の変化の様子を示してある。なお、反射
器の導体スリップの本数は2M本に設定してある。本図か
ら、Γが0.8程度から振幅が立ち上がる様子が見られ、
共振子として使用可能であることが判る。一方、トータ
ル反射係数Γを大きくするために電極膜厚に対する弾性
表面波の波長の比H/λを大きくすると、電極膜に粘性ロ
スが存在するために共振振幅は最大値を持ち、その後徐
々に減少する。本図では、Γが10程度から減少する様子
が現れ、このときMは約160である。従って、Γが0.8か
ら10程度の範囲であれば、IDTの交差指電極によるエネ
ルギー閉じ込め効果が得られるので特性の安定した共振
子が得られる。
図5に、電極の対数Mおよび反射器の導体の数Nrの総
数を150に固定し、その範囲内で対数Mを変えたときの
電極膜厚と、共振レベル(ピーク間のレベルApp)の最
大値との関係を測定した結果を示してある。本図で判る
ように、H/λが0.02から0.05と大きくなるにつれて共振
レベルの最大値は増加する。しかしながら、上述したよ
うに電極膜厚と周波数の比H/λが0.06に近づくと、表面
波の音速が低下し粘性も現れるため共振レベルが低下す
る。従って、H/λは0.02から0.06の範囲が望ましい。ま
た、対数Mが増加すると上述したトータル反射係数Γが
増加してしまうので、対数Mが300程度までをカバーす
るためには、H/λは0.02から0.04程度であることがさら
に望ましい。また、電極パターンの加工性を考慮しても
この範囲H/λを選択することが望ましい。
さらに、図5において、対数Mと反射器の導体ストリ
ップの本数Nrとの比Nr/Mが1.5〜2.0とした場合に最良の
共振振幅が得られることも判る。
本例のSAW共振子では、IDTの放射コンダクタンスの中
心周波数と、反射器の反射中心周波数をほぼ一致させる
ことにより、IDT自体におけるエネルギー閉じ込め効果
に加え、反射器によるエネルギーを閉じ込める効果を向
上している。この結果、SAW共振子の共振先鋭度を高め
ることができ、Q値の高いSAW共振子を提供することが
できる。
図6に、IDTの放射コンダクタンスの特性と、反射器
の反射特性の概略を示してある。実線で示したように、
IDTの交差指電極のピッチPtと、反射器の導体のピッチP
rとが同じときには、IDTの励振可能な弾性表面波の周波
数のうち振幅がピーク値となる放射コンダクタンスの中
心周波数が、反射器の反射中心周波数より若干低くな
る。このため、本例ではIDTのピッチPtと反射器のピッ
チPrの比Pr/Ptを若干高く設定し、これらの中心周波数
の値をほぼ一致させるようにしている。この結果、IDT
における弾性表面波の励振が効率良く行われるようにな
り、共振子の振動変位の最大がIDTの中央に位置するよ
うになるので、Q値の高いエネルギー閉じ込め型の共振
子を実現できる。本例のSAW共振子では、図5に示した
ように、Pr/Ptが1.004〜1.008程度に設定し、エネルギ
ーの閉じ込め効果の向上を図っている。
また、ピッチの異なるIDTと反射器との隙間gは、縦
モードのスプリアス振動の発生を抑制するように、IDT
のピッチPtの隙間Lbに合わせて設定してある。図7に、
反射器30がIDT20に隣接して配置されている部分の断面
を拡大して示してある。反射器30は、ピッチPrで導体ス
トリップ31が配置され、導体ストリップ31の幅Lcとスト
リップ同士の隙間Ldは高い反射率が得られるようにほぼ
同じに設定してある。IDT20は、交差指電極22aおよび22
bが交互にピッチPtで配置され、これらも電極の幅Laと
電極同士の隙間Lbとはほぼ同じか、Laがやや大きくなる
ように設定してある。さらに、IDT20の反射器30側の電
極と、反射器30のIDT20側の導体ストリップとの隙間g
は、電極同士の隙間Lbと同じに設定して、反射器30のID
T20側の導体ストリップをピッチPrで並べてある。
図8に、隙間gを変えた場合の共振レベルへの影響を
示してある。本図では、隙間gをIDTの最も反射器より
の電極からのピッチPgで表し、Pg/Ptの比を変えて共振
レベルを測定している。本図から判るように、IDTと反
射器との隙間のピッチは同一に保つことが好ましく、こ
のピッチをずらすとスプリアス振動を誘発し、共振レベ
ルが低下してしまう。
このように、IDT20および反射器30を圧電体である水
晶片上に配置することによって、共振先鋭度を示すQ値
の大きなSAW共振子を得ることができる。さらに、本例
のSAW共振子10は、交差指電極22および反射器の導体ス
トリップ31をパワーフローの方向をカバーできるように
配置してある。
図2に示したSAW共振子では、弾性表面波の位相の伝
搬方向であるX′軸に対するエネルギーの伝搬方向であ
るパワーフロー角PFAは、異方性の圧電性結晶から切り
だされるほとんどの圧電体平板においては零ではない。
このことは、レーリー波に限らずリーキー波においても
言えることである。SAWフィルターに関しては、パワー
フローの方向と弾性表面波の位相の伝搬方向とを一致さ
せる、すなわち、PFAを零とすることによって特性が改
善されることが知られている。しかしながら、パワーフ
ロー角PFAを零とする方向にカットした圧電体平板が温
度特性や周波数安定性などの特性からみてSAW共振子と
して十分であるものが得られるとは限らない。このた
め、SAW共振子としてはパワーフロー角PFAと位相が伝搬
する方向とを一致させることは現状では難しい。そこ
で、本例では、図2に示したように、弾性表面波の位相
の伝搬方向に対し直交する方向に平行に延びた電極22お
よび導体ストリップ31をZ″軸に対し平行移動させて、
これらの配列した方向がX′軸から角度δだけ傾斜し、
パワーフロー角PFAの方向に向かって配置されるように
している。あるいは、図3に示すように、パワーフロー
角PFAの方向もカバーできるように幅を広げてある。こ
のように、パワーフローの方向を電極22および反射器の
導体ストリップ31でカバーすることによって、IDTの励
振エネルギーの閉じ込めをさらに効率良く行うことがで
きるので、いっそう高いQ値を持ったSAW共振子を提供
することが可能となる。
まず、本例の共振子のように、パワーフロー角PFAと
弾性表面波の位相の伝搬方向とを一致させなくともパワ
ーフローの方向に沿ったエネルギーの閉じ込め効果がえ
られることを説明する。弾性表面波のパワーフローベク
トルPi=1,2,3)の基本的特性として、特定の方向
に前進して伝搬するベクトルをPiとすれば、後退して伝
搬するベクトルを−Piで表すことができる。これは次の
通り証明される。
2Pi=kωA2CsjCpkCijkl{(ll−ηpdl)×U/w +ξ×V/w} ……(2) ただし、 U=(ξ+ξ)cos(θsj−θpk)−(η−η)sin(θsj−θpk) V=(ξ+ξ)sin(θsj−θpk)+(η−η)cos(θsj−θpk) W=(ξ+ξ+(η−η である。さらに、liは伝播方向ベクトル、diは減衰方向
ベクトル、ξ+jηは減衰率(jは虚数単位)、C
ijおよびθijは振幅定数、ωは角周波数、Aは任意の振
幅定数、Cijklは弾性定数(i,j,k,l=1,2,3をとる)、
さらに、kは波数である。
上記の(2)式において、弾性表面波の伝搬方向がli
から−liすなわち、前進から後退にかわると、1972年電
子通信学会信越支部大会(Sinetu Section of IECE Jap
an)で発明者により開示されたようにξ+jηがξ
−jηに、また、θijは−θijになることが証明さ
れている。このため、弾性表面波の伝搬方向が反対方向
に変わると、パワーフローベクトルは−Piとなる。
図2に示したSAW共振子10において、IDT20の交差指電
極22aおよび22bを、弾性表面波の位相の伝搬方向である
X′軸に直交する方向に平行に並べ、これらの電極の配
列の方向をX′軸に対し角度δ傾斜し、パワーフロー角
PFAに沿って配置してある。また、IDT20の両側に位置す
る反射器30aおよび30bも、IDT20に対し角度δだけ傾斜
して配置し、パワーフロー角PFAに沿って並べてある。
さらに、それぞれの反射器30aおよび30bを構成する導体
ストリップ31も、弾性表面波の位相の伝搬方向である
X′軸に直交する方向に平行に並べ、これらストリップ
の配列の方向をX′軸に対し角度δ傾斜し、パワーフロ
ー角PFAに沿って配置してある。このため、上記の式
(2)に基づき示したように、パワーフロー角PFAに沿
って伝搬する弾性表面波のエネルギーはIDT20、反射器3
0aおよび30bの間を両側に漏れることなくパワーフロー
角PFAに沿って往復し、共振現象が生ずる。その結果、
振動エネルギーの損失が極めて少なくなり、SAW共振子
のQ値を大きくすることができる。本例のSAW共振子に
おいて、反射器30aおよび30bのPFA軸と直交する方向の
幅Wrを、IDT20のPFA軸と直交する方向の幅Wtと同じある
いは広くして反射器からのエネルギーの漏れを少なくす
ることが望ましい。
IDT20、反射器30aおよび30b、さらにこれらを構成す
る電極22および導体ストリップ31を図2に示したように
パワーフロー角PFAに沿って配置することが最も望まし
い。しかし、これらの配置を位相の伝搬方向に対し多少
でも、すなわち零でない角度δだけパワーフロー角PFA
の方向に傾けることによって、X′軸方向にIDTや反射
器を配置したSAW共振子と比較し振動エネルギーを効率
良く閉じ込めることができる。従って、これらの配置を
変えることによってSAW共振子のQ値の改善を図れる。
図3に、反射器30aおよび30bをIDT20に対し弾性表面
波の位相の伝搬方向X′軸に沿って配置し、反射器30a
および30bのX′軸に直交する幅wrを広げることによっ
て、パワーフロー角PFAに沿って伝搬するエネルギーを
閉じ込めるタイプのSAW共振子の例を示してある。本例
のSAW共振子10は、IDT20のX′軸に直交する方向の幅wt
に対し、幅wrの広い反射器30aおよび30bをIDT20の両側
に配置してある。反射器の幅wrは、パワーフロー角PFA
に沿ってパワーフロー角PFAに直交する方向の幅Wtが確
保できるように選定されており、IDT20からパワーフロ
ー角PFAの方向に伝搬する弾性表面波のエネルギーのほ
とんどを反射器30aおよび30bによって反射し、上記のSA
W共振子と同様にエネルギーの共振状態を生じさせるこ
とができるようになっている。本例のSAW共振子は、従
来と同様に位相の伝搬方向にIDTおよび反射器が配置さ
れ、これらを構成する電極22および導体ストリップ31は
位相の伝搬方向に配列されているが、反射器の幅を広げ
ることによってエネルギーの閉じ込め効果を向上させ、
高いQ値を得ることができる。
図9に、位相の伝搬方向に対し幾つかの角度δ傾斜し
た方向に上述した図2あるいは図3のようにIDTおよび
反射器を配置したSAW共振子において測定されたQ値を
示してある。これらのSAW共振子は、圧電体として水晶S
Tカットを用いた共振周波数が150MHzから170MHzの共振
子である。本図にて判るように、角度δを大きくすると
Q値は大幅に向上し、パワーフローの方向とほぼ等しい
角度δが5度近傍において2.5×104と非常に高いQ値を
持つSAW共振子が得られた。
さらに、図1の(θ,ψ)の表示で(−72.5,25)
と、(−72.5,30)のX′軸方向に位相の伝搬するSAW共
振子を作成し、その温度特性を測定した。この測定によ
って得られたそれぞれの共振子の周波数温度特性を図10
に示してある。また、角度θは同じに設定し、角度ψを
25度近傍で変えたSAW共振子における周波数温度特性の
変化を計算し、その結果を図11に示してある。この計算
においては、エネルギーの伝搬方向の傾き、すなわち、
パワーフロー角PFAは考慮していない。図11には、各共
振子の周波数温度特性カーブの頂点で温度Θmaxと、20
℃における周波数2次温度係数β20の角度ψに対する変
化を示してある。
図10および図11を比較すると判るように、実測した角
度ψが25度のSTカットSAW共振子の周波数温度特性は、
頂点の温度Θmaxが100℃であり、計算結果によると角度
ψが20度のときに対応する。また、実測した角度ψが30
度の周波数温度特性は、頂点の温度Θmaxが20℃であ
り、計算による角度ψが25度のときに対応する。このよ
うに、周波数温度特性の実測結果に対して計算結果は、
角度ψの絶対値が約5度小さくなる方向にずれていると
思われる。一方、計算によると水晶片のパワーフロー角
とX′軸とのなす角度は、絶対値で角度ψよりも−4.75
度小さくなる方向にずれていることが判っており、周波
数温度特性のずれとほぼ一致することが判る。以上の結
果から、周波数温度特性もパワーフロー角PFAだけずれ
て実現されるようである。従って、面内の回転角ψをパ
ワーフロー角度分だけ補正して設定すれば、零温度係数
を示す弾性表面波の伝搬方向とエネルギーの伝搬方向を
一致させることが可能になると考えられる。そして、主
な動作温度領域で良好な周波数温度特性を備え、発振も
非常に安定したSAW共振子を実現できると考えられる。
図12に、パワーフロー角PFAを+方向にとった一般的
なIDTの配置を示してある。まず、水晶片上の弾性表面
波の伝搬方向をX″軸に設定する。このX″軸は、水晶
の電気軸+X軸を角度ψ′回転させた軸であり、角度
ψ′は以下の式で表される。
ψ′=ψ−PFA ……(3) そして、先に図2に基づき説明したIDTおよび反射器
が配列された電極形成領域40を−PFAの方向に回転さ
せ、零温度係数を示す方向にPFAの方向41を一致させれ
ば良い。図中の42、43および44は、SAW共振子の振動振
幅の変位を示している。
なお、このような考え方は、前述の温度特性に限ら
ず、他の応力感度特性、短期安定性などにかかわる方位
についても言えると推定される。
水晶圧電体の選定 このようにIDTおよび反射器を弾性表面波のエネルギ
ーの伝搬方向をカバーするように配置することによっ
て、共振先鋭度が高くQ値の大きなSAW共振子を得るこ
とができる。移動体通信などに用いられる共振子として
は、さらに、温度に対して非常に安定した特性が要求さ
れる。STカット水晶片を用いたSAW共振子は、周波数温
度特性の1次温度係数αが零になることから安定した発
振源として着目されている。しかし、先に説明したよう
に2次温度係数βが比較的大きく、広い動作温度範囲、
例えば−20℃から80℃の範囲で使用するにはさらに温度
特性を改善することが望ましい。このような要望に対
し、発明者は、前述のSAW共振子の構造方法において、
新たに、先に図1に示した座標系を用いて角度θがほぼ
25度から45度の範囲で、角度ψがほぼ40度から47度の範
囲を組み合わせることによって周波数温度特性のさらに
優れたSAW共振子を提供できることを見いだした。
図13に、周波数温度得す営の1次係数αが零(α=
0)となる回転角θおよびψの組み合わせの範囲を示し
てある。αは、以下の式に示したように周波数温度特性
カーブを常温の20℃でテイラー展開して得られる温度T
に対する1次の係数を示している。
Δf/f=α(T−20)+β(T−20)+γ(T−2
0) ……(4) ここで、Δf/fは20℃におけるSAW共振子の周波数を基
準とした、他の温度における周波数の変化率である。ア
ルミニウム電極を用いたSAW共振子においては、周波数
温度特性はアルミニウム電極の膜厚Hに依存する。この
ため、図13は、先に説明したようにH/λとして望ましい
0.02から0.04の範囲のSAW共振子を前提として表してあ
る。
さらに、1次係数αが零となるSAW共振子の面内の回
転角ψを変えて温度の2次係数βを測定した。図14に、
その測定結果と、パワーフロー角PFAを示してある。本
図にて判るように、角度ψがほぼ40度から47度の範囲に
おいて、2次係数βが−2.5×10-8/℃以下となる。こ
れは、従来のSTカットSAW共振子の2次係数βが−3.4×
10-8/℃であるのに対し、その2/3以下と低い値であ
り、周波数温度特性を大幅に改善できることが判る。ま
た、この角度ψの範囲では、パワーフロー角PFAも0度
に近く、先に説明したようにエネルギーの閉じ込めを効
率良く行える。従って、角度θがほぼ25度から45の範囲
で、角度ψがほぼ40度から47度の範囲の切断方位を持っ
た水晶片を用いることによって、良好な周波数温度特性
と共に高いQ値を備えたSAW共振子を実現することが判
る。
さらに、2次係数βは、角度ψが44度近傍にて最小値
である約−1.4×10-8/℃と、従来のSTカットSAW共振
子の約半分以下と非常に低い値を示す。また、パワーフ
ロー角PFAは角度ψが40度に近いほど低い値を示す。従
って、上記の角度範囲において、角度ψがほぼ40度から
44度で、これに対応した角度θがほぼ25度から37度の範
囲の切断方位を持った水晶片を用いることが望ましい。
特に、角度θが33±1度で、角度ψが42.75±1度の切
断方位の水晶片においては、その表面に結晶配向性に優
れたアルミニウム単結晶膜が得られるので、経時変化が
非常に少ないSAW共振子を提供することができる。した
がって、この角度範囲を含んだ角度θがほぼ32度から37
度で角度ψがほぼ40度から44度の範囲の切断方位を持っ
た水晶片を用いることがさらに望ましい。これらの角度
θおよびψの切断方位の水晶片を用いることにより、2
次係数βも−1.6×10-8/℃と従来のSTカットSAW共振
子の半分程度になるので、周波数温度特性は非常に改善
される。なお、上記の角度範囲において周波数温度特性
の3次係数であるγは−1×10-10/℃以下と非常に小
さい。
図15に、角度θを33度ととして、角度ψを42度から4
3.5度範囲にわたって変化させた場合の1次温度係数
α、2次温度係数βおよび周波数温度特性カーブの頂点
の温度Θmaxの計算結果を示してある。計算結果による
と、角度θが33度で角度ψが42.75度のSAW共振子はΘma
xが室温20℃近傍となる。しかしながら、先に図2およ
び図3で示した傾斜角δを設定していない従来のSAW共
振子においては、共振の先鋭度を示すQ値が低い。これ
に対し、傾斜角δを設定し、その値δをパワーフロー角
PFA(1.85度)とほぼ等しくすると、Q値は2倍以上に
向上することが判った。このような顕著な効果を得るた
めには、傾斜角δをパワーフロー角PFAの±1゜程度と
することが好ましい。さらに、IDTおよび反射器をパワ
ーフロー角PFAを考慮して傾斜させたこのSAW共振子の周
波数温度特性は、−20℃から80℃の動作温度範囲におい
て50ppm以下と低い値を示した。
この切断方位の水晶片を用いて、先に説明したような
エネルギー閉じ込め型のSAW共振子を実現するには、ま
ず、電極一本当たりの弾性表面波の反射係数aを求める
必要がある。このため、膜厚Hのアルミニウム膜を水晶
片の表面全部に形成したときのX′軸方向に伝搬する弾
性表面波の位相速度を計算した。その結果を図16に、H/
λに対する、H=0の場合の位相速度V0と膜厚Hの時の
位相速度Vhの比D=Vh/V0を用いて表してある。また、
図16には、従来のSTカット水晶片を用いた計算結果161
と、上述した切断方位のうちθが33度でψが42.75度の
水晶片を用いた計算結果160を示してある。
弾性表面波の波長λは、IDTの交差指電極の周期2Pt
(Ptは、上述したようにIDTの交差指電極のピッチを示
す)とほぼ一致し、図16に示した位相速度の変化率であ
り、速度降下特性と通常呼ばれる特性と反射係数aとの
間には以下の式がなりたつ。
a=K{(1/D)−1}/(4H/λ) ……(5) ただし、 K=0.8271×SIN(πη) η=La/Pt である。Laは、図7に基づき説明したように交差指電極
一本当たりの横幅であり、この電極幅Laと電極間の隙間
Lbが等しい場合は、ηが0.5となる。
(5)式は、弾性表面波の伝搬路をMason等価回路で
表示した際の自由表面の音響インピーダンスZfと、膜形
成時の音響インピーダンスZmの比が以下の通り各々の音
速の2乗の比として表せること、 Zm/Zf=D2 ……(6) および、音響インピーダンス不整合による反射係数γ
が、以下の式で表され、 γ=(Zf−Zm)/(2Zm) ……(7) さらに、反射係数aおよびγが次の式で近似できること
から導出される。
2aH/λ=bγ×SIN(πη) ……(8) なお、STカット共振子の反射係数a(a=0.255)を
導き出す段階で定数bが決定されており、その値(b=
0.8271)を採用している。
上記の(5)式を用いて本例の水晶片に対する反射係
数aを求めるために、図16に示した速度比Dのうち、H/
λとして適当な値であるH/λ=0.03に対応する値、D=
0.988を代入する。この結果、本例の水晶片の反射係数
aとして0.1684が得られる。
さらに、エネルギー閉じ込め型のSAW共振子として、
先に説明したSTカットSAW共振子と同じ程度のトータル
反射係数(Γ=2.448)を得るために必要とされる交差
指電極の対数Mを求める。このため、(1)式に上記に
て求めた反射係数aを代入すると、必要な対数Mとして
121.1が得られる。すなわち、IDTを構成する交差指電極
の対数Mとして120対程度であれば、先にSTカット水晶S
AW共振子において説明したような高いQ値を持ったSAW
共振子を得ることができる。さらに、本例の共振子は、
周波数温度特性の変動の少ない圧電体を用いて構成して
あるので、本発明により周波数特性の優れ、Q値の大き
なSAW共振子を実現することができる。
SAW共振子は、発振回路において並列容量値C0が通常6
pF以下で使用される。SAW共振子の容量値C0は、以下の
式で求められる。
C0=1.95εεΓWcM ……(9) ただし、εは真空の誘電率であり、εΓは比誘電率
(水晶はほぼ4.43〜4.63)である。また、Wcは、位相の
伝搬する方向に直交する方向のIDTの幅寸法であり、横
方向のスプリアス振動の励起を考慮するとWc/λをほぼ3
5〜40の範囲に収めることが望ましい。この結果、対数
Mの最大値は300程度となることが判る。また、容量C0
および電極パターンの加工性を考慮すると、上述したよ
うにH/λの範囲はほぼ0.02から0.04が望ましい。
さらに発明者は、周波数の短期安定性が非常に優れた
切断方位として提唱されているKカット近傍の切断方位
を有する水晶を用いたSAW共振子についても、その周波
数温度特性を確認した。そして、Q値が高く、周波数の
短期安定性にも優れたSAW共振子を実用に供する諸条件
を見いだした。
図17に、図1に示した角度θおよびψの組み合わせの
うち、Kカットの近傍、すなわち、角度θが2ないし9
の範囲において周波数温度特性の1次係数αが0となる
組み合わせを示してある。また、図17には、SAW共振子
にレーザーを照射した際の瞬時的な周波数シフト量ΔF
が零を示す角度θおよびψの組み合わせも示してある。
本図にて判るように1次係数αが零(α=0)となる組
み合わせを示す曲線と、周波数シフト量ΔFが零(ΔF
=0)となる組み合わせを示す曲線は、角度θが5.4度
および角度ψが32.1度である点Pにおいて交差する。従
って、この角度を切断方位とした水晶片は零温度係数で
周波数シフト量が零となることが判る。この点Pの近
傍、すなわち、角度θが4度から7度および角度ψが31
度から33度の範囲において、1次係数αが零となる角度
θおよびψの組み合わせを実験的に求めた。それらの組
み合わせは次の式で近似できる。
θ=2.775×(ψ−32.5)+6.5 ……(10) 図18に、(10)式の成り立つ角度θおよびψのうち、
角度θを6.5とし、角度ψを32.5度近傍に設定した水晶
片において、その周波数温度特性カーブの頂点を示す温
度Θmaxと、周波数温度特性の2次係数βの変化を示し
てある。本図から、周波数温度特性カーブの頂点を示す
温度Θmaxの動作温度範囲のうち通常の使用条件である2
0±20℃に入るようにするには、角度ψの許容値を±30
分に設定すれば良いことが判る。また、周波数温度特性
の2次係数βは、本図に示したように−2.4×10-8/℃
から−2.7×10-8/℃の範囲であり、従来のSTカットの
2次係数β(−3.4×10-8/℃)の2/3程度の低い値を
示す。特に、方位(θ,ψ)が(6.5,32.5)および(5.
4,32.1)の場合は、2次係数βは−2.5×10-8/℃であ
る。
また、図19に、(10)式で示した角度θおよびψの関
係を持った水晶片の2次係数βの変化を示してある。本
図で判るように、角度θがほぼ4度から7度の範囲で、
周波数温度特性の2次係数βは、おおむね−2.5×10-8/
以下の良好な値をとる。従って、角度θおよびψが
(10)式の関係を持ち、角度θがほぼ4度ないし7度の
範囲であれば、温度特性が改善され、さらに短期安定性
の非常に高いSAW共振子を構成できることが判る。この
範囲内であれば、2次係数βの変動は非常に少なく安定
しているので、角度θの許容値としては±度程度で良
い。
図20に、本例の切断方位の水晶片を用いて制作された
SAW共振子の周波数温度特性の実測値の一例を示してあ
る。本図にて判るように、動作温度範囲である−20℃か
ら80℃にわたって、周波数変化率は68ppmと少ない値を
示し、周波数温度特性の改善されたSAW共振子が得られ
る。
次に、本例の水晶片を用いたSAW共振子の設計条件を
定めるべく、上記と同様の方法でまずIDTの交差指電極
一本当たりの弾性表面波の反射係数aを求める。図21
に、本例の切断方位を持つ水晶片のX′軸方向に伝搬す
る弾性表面波の位相速度の計算結果を速度比Dを用いて
示してある。この図には、本例の切断方位のうち、カッ
ト角の組み合わせとして角度θが6.5および角度ψが32.
5度の速度比Dと、水晶STカットの速度比を合わせて示
してある。なお、角度θおよびψが6.5度および32.5度
の電極膜厚Hが0の場合の位相速度V0は、3308.2m/sで
あった。
本例においても電極膜厚Hと波長λの比H/λが0.03の
時の位相速度の変化率D=0.9798を用い、(5)式から
本例の水晶片を用いた場合の反射係数を計算し、反射係
数aとして0.2871が得られる。さらに、水晶STカットSA
W共振子と同じ程度のエネルギー閉じ込めが得られる程
度のトータル反射係数(Γ=2.448)として交差指電極
の対数Mを計算すると対数Mは71となる。これにより、
本例の水晶片を用いて交差指電極の対数Mが71対以上の
IDTを設ければ、高いQ値を持ち、周波数温度特性が優
れ、さらに、短期安定性にも優れたSAW共振子を実現で
きることがわかる。また、SAW共振子の並列容量値C0は
上記と同様に6pF以下であるので、対数Mの最大値は300
対程度となる。
これによって、本例の水晶片を用いたSAW共振子の設
計条件を見いだせたので、図2あるいは図3に基づき説
明したパワーフロー角を考慮してIDTおよび反射器を配
置することにより高いQ値を持ったSAW共振子を提供す
ることが可能となる。本例の切断方位を用いた場合のパ
ワーフロー角の影響を図22に示した。図22は、従来のSA
W共振子のようにパワーフロー角を考慮しないでIDTおよ
び反射器を配置した場合に、その電極の配置の方向とパ
ワーフロー角PFAとのずれが大きくなるとQ値の大幅な
低下が測定されることを示している。
図23に、角度θを6.5度とし、角度ψを30度から35度
の範囲で変化させた場合のパワーフロー角PFAを示して
ある。角度θおよびψが6.5度および32.5度のときのパ
ワーフロー角PFAは3.1度となる。また、これとは別に、
角度θおよびψが5.4度および32.1度の時のパワーフロ
ー角PFAは3.2度である。図22に示したように、それぞれ
の電極の延びた方向に直交する方向、すなわち、位相の
伝搬する方向ψに対し電極の並んだ方向を角度δだけず
らした場合、このずれ角δとパワーフロー角PFAとの差
が±1゜程度以上であれば、ずれ角δがパワーフロー角
PFAと合致した場合と同じ程度の非常に高いQ値が得ら
れる。さらに、ずれ角δとパワーフロー角PFAとの差が
±3゜程度以内であれば、Q値は半分程度に減少する
が、従来の数倍の高いQ値が得られる。このような角度
範囲でなくとも、図から判るように、パワーフロー角PF
Aの方向に多少でもずれ角δを設定することによってQ
値は改善される。
本例に示した角度θおよびψの組み合わせの切断方位
を持った水晶片にパワーフロー角を考慮してIDTおよび
反射器を配置したSAW共振子によって、例えばQ値が共
振周波数152MHzにおいて20000であり、等価直列抵抗が1
5Ω、等価直列容量が3.2pF、容量比が1700程度といった
共振子の等価定数を備えたSAW共振子を作成できる。こ
れらの数値は従来のSTカットSAW共振子と同等以上であ
り、周波数温度特性は上述したようにSTカットSAW共振
子より優れた特性を示す。さらに、本例のSAW共振子は
周波数短期安定度にも優れており、サンプル周期τが2
秒のときのアラン分散の値が約3×10-9とSTカットSAW
共振子(約1.3×10-8)より1桁程度優れた安定性を示
す。
なお、以上の例では、1ポートタイプのSAW共振子に
基づき説明しているが、2ポートタイプであってももち
ろん良い。また、パワーフロー角を考慮したIDTおよび
反射器の配置は、水晶を圧電体として採用したSAW共振
子に限らず、LiTaO3、LiNbO3等の他の圧電体素材を採用
したSAW共振子についても適用できることはもちろんで
ある。また、本発明は、SAW共振子に限らず、SAWフィル
ターやその他のSAWデバイスにも適用でき、共振先鋭度
が高く、優れた温度特性を有するSAWデバイスを提供で
きる。さらに、本発明にかかるSAW共振子を収納する保
持器については、円筒形の容器あるいは平型の金属容器
であっても良く、また、セラミックの面実装タイプの容
器であってももちろん良い。
産業上の利用可能性 本発明にかかるSAWデバイスは、高いQ値を持ち、優
れた温度特性や、周波数特性を備えているので、移動体
通信などに用いられる高周波数領域において高い精度の
要求される発振装置に好適なデバイスである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−73513(JP,A) 特開 昭57−5418(JP,A) 米国特許4705979(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 9/25 H03H 9/145

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平板状の圧電体と、 この圧電体の表面の第1の方向に周期λで並列に形成さ
    れた膜厚Hの導体からなるM対の交差指電極を備えた交
    差指電極と、 この交差指電極の前記第1の方向の両端に配置され、前
    記交差指電極と並列した複数の反射電極を備えた1対の
    反射器とを有し、 前記圧電体はα水晶単結晶の機械軸Yに垂直な面を電気
    軸Xの回りの反時計方向に角度θが32度ないし37度の範
    囲で回転させた平板であり、前記第1の方向と前記X軸
    のなす角度ψの絶対値が40度ないし44度の範囲であり、 前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記交差指電
    極および反射電極の少なくとも一部が配置されており、
    前記第1の方向と前記第2の方向とのなす角度は、パワ
    ーフロー角にほぼ等しく設定され、 前記交差指電極一本当たりの弾性表面波の反射係数を
    a、前記交差指電極の対数をM、前記交差指電極の膜厚
    をH、前記交差指電極の周期をλとすると、Γ=4×M
    ×a×H/λで表される前記交差指電極のトータル反射係
    数Γが0.8ないし10の範囲であり、 前記交差指電極はアルミニウム金属膜で形成されてお
    り、前記交差指電極の前記膜厚および前記周期の比H/λ
    がほぼ0.02ないし0.04の範囲であるSAWデバイスであっ
    て、 前記パワーフロー角が1.85±1度であり、さらに、前記
    第1の方向と前記第2の方向とのなす角度が、前記パワ
    ーフロー角の±1度程度以内であることを特徴とするSA
    Wデバイス。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記反射電極の本数Nr
    と前記交差指電極の対数Mとの比Nr/Mがほぼ1.5〜2の
    範囲であることを特徴とするSAWデバイス。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記交差指電極の対数
    Mが、ほぼ120ないし300の範囲であることを特徴とする
    SAWデバイス。
  4. 【請求項4】請求項3において、前記角度θが33±1度
    であり、前記角度ψの絶対値が42.7度±1度であること
    を特徴とするSAWデバイス。
  5. 【請求項5】平板状の圧電体と、 この圧電体の表面の第1の方向に周期λで並列に形成さ
    れた膜厚Hの導体からなるM対の交差指電極を備えた交
    差指電極と、 この交差指電極の前記第1の方向の両端に配置され、前
    記交差指電極と並列した複数の反射電極を備えた1対の
    反射器とを有し、 前記圧電体はα水晶単結晶の機械軸Yに垂直な面を電気
    軸Xの回りの反時計方向に角度θがほぼ4度ないし7度
    の範囲で回転させた平板であり、 前記第1の方向と前記X軸のなす角度ψの絶対値が公差
    ±30分の範囲で前記角度θと、 θ=2.775×(ψ−32.5)+6.5(度) の関係があることを特徴とするSAWデバイス。
  6. 【請求項6】請求項5において、前記第1の方向と交差
    する第2の方向に、前記交差指電極および反射電極の少
    なくとも一部が配置されていることを特徴とするSAWデ
    バイス。
  7. 【請求項7】請求項6において、前記第1の方向と前記
    第2の方向とのなす角度は、パワーフロー角にほぼ等し
    いことを特徴とするSAWデバイス。
  8. 【請求項8】請求項7において、前記角度θが6.5±1
    度であり、前記角度ψの絶対値が32.5±1度であり、前
    記パワーフロー角が3.1±1度であり、さらに、前記第
    1の方向と前記第2の方向とのなす角度が、前記パワー
    フロー角の±1度程度以内であることを特徴とするSAW
    デバイス。
  9. 【請求項9】請求項7において、前記角度θが5.4±1
    度であり、前記角度ψの絶対値が32.1±1度であり、前
    記パワーフロー角が3.2±1度であり、さらに、前記第
    1の方向と前記第2の方向とのなす角度が、前記パワー
    フロー角の±1度程度以内であることを特徴とするSAW
    デバイス。
  10. 【請求項10】請求項5において、前記交差指電極一本
    当たりの弾性表面波の反射係数をaとすると、Γ=4×
    M×a×H/λで表される前記交差指電極のトータル反射
    係数Γが0.8ないし10の範囲であり、 前記反射電極のピッチは前記交差指電極のピッチより広
    く、前記反射器の反射中心周波数と前記交差指電極の放
    射コンダクタンスの最大値を与える周波数とがほぼ一致
    し、さらに、 前記反射器の前記交差指電極の側の端は、前記交差指電
    極と同じピッチで配置されていることを特徴とするSAW
    デバイス。
  11. 【請求項11】請求項10において、前記反射電極の本数
    Nrと前記交差指電極の対数Mとの比Nr/Mがほぼ1.5〜2
    の範囲であることを特徴とするSAWデバイス。
  12. 【請求項12】請求項10において、前記交差指電極はア
    ルミニウム金属膜で形成されており、前記交差指電極の
    前記膜厚および周期の比H/λがほぼ0.02ないし0.04の範
    囲であることを特徴とするSAWデバイス。
  13. 【請求項13】請求項10において、前記交差指電極の対
    数Mが、ほぼ71ないし300の範囲であることを特徴とす
    るSAWデバイス。
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