JP3034992B2 - 燃料タンクの燃料遮断装置 - Google Patents

燃料タンクの燃料遮断装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両に搭載
される燃料タンクにおいて燃料の外部流出を防止する燃
料遮断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用燃料タンクの中には、タンク本
体内の燃料液面の変動によってエバポチューブ部分から
燃料が外部に流出しないよう燃料遮断装置を配設したも
のが知られている。この燃料遮断装置は、一般に、タン
ク本体内の上部に配設されるケーシングに、エバポチュ
ーブと連通するガス排出孔が設けられると共に、燃料の
流入によって浮動するフロートが収容され、車両の旋回
や傾斜によってタンク本体内の燃料液面が変動してケー
シング内に燃料が流入した際に、フロートが浮力によっ
て上昇し、フロートの上面に設けたシール部がガス排出
孔を閉塞して燃料がエバポチューブを通って外部に流出
しないようにしている。
【0003】ところが、このような燃料遮断装置の場
合、フロートが浮力によってガス排出孔を閉塞した状態
においてタンク本体内のガス圧力が高まると、燃料がケ
ーシングから排出された後もフロートがガス排出孔から
離れなくなる、所謂スティック現象を起こすことが考え
られるため、フロート重量を重くする等して対処してお
り、車体重量の増加等の問題を発生させている。
【0004】従来では、これに対処するために、例え
ば、実開昭62−75278号公報に示されるもののよ
うに、ケーシングにリリーフ弁を設け、フロートがガス
排出孔を閉塞した状態においてタンク本体内のガス圧力
が設定圧以上になると、このリリーフ弁が開いてタンク
本体内の蒸発燃料ガスをエバポチューブに逃がし、これ
によってスティックを回避出来るようにした燃料遮断装
置が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この燃料遮断装置にお
いて、リリーフ弁はフロートのスティックを回避するた
めのものであるため、その開弁圧は、フロートがタンク
本体内のガス圧力を受けてガス排出孔に強接触する圧力
(以下、スティック圧と言う。)よりも低く設定する必
要がある。このため、フロートのスティック圧を低く設
定することはリリーフ弁の開弁圧をも低く設定すること
となり、結局、フロートのスティック圧をある程度以上
に低くすることは難しくなっている。したがって、この
従来の燃料遮断装置の構造は、フロートの大型化や重量
増加といった問題に対し、抜本的な解決策とはならなか
った。
【0006】そこで本発明は、フロートを大型,重量化
することなくスティックを確実に防止することが出来る
燃料タンクの燃料遮断装置を提供しようとするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述した課題を
解決するための手段として、タンク本体内の上部に配設
されるケーシングに、蒸発燃料ガスをエバポチューブに
排出するガス排出孔を設けると共に、タンク本体内の燃
料液面の変動に伴ってこのガス排出孔の開閉を制御する
フロートを収容した燃料タンクの燃料遮断装置におい
て、前記ガス排出孔を、前記ケーシングの下方側から同
ケーシングの内部に向かって連通するように設けると共
に、このガス排出孔部分に弁手段を配置し、この弁手段
を、前記ガス排出孔をその下方側から開閉する弁体と、
この弁体を前記ガス排出孔に向けて下方から付勢するス
プリングとを備えた構成とすると共に、前記フロート
に、同フロートの下方変位時に前記弁体を上方から押圧
する押圧部を設けた
【0008】
【作用】燃料液面が変動しない通常状態では、フロート
の重量が弁手段の弁体に対する開弁方向の押圧力として
作用し、タンク本体内の蒸発燃料ガスの圧力が高まる
と、蒸発燃料ガスが弁体を押し下げ、ガス排出孔を通っ
てエバポチューブに排出される。燃料液面の変動によっ
てケーシング内に燃料が流入すると、フロートに浮力が
作用するようになってフロートの重量による開弁方向の
押圧力が弱められ、弁体がスプリングの付勢力によって
ガス排出孔を強力に閉じる。この状態でタンク本体内の
蒸発燃料ガスの圧力が高まっても、このガス圧力はガス
排出孔を開く方向に作用するため、弁体はスティクを生
じることなく液面の戻りと共にガス排出孔を容易に開く
ようになる。
【0009】
【実施例】次に、本発明の第1〜第5実施例を図面に基
づいて説明する。
【0010】まず、第1実施例について説明する。
【0011】図1〜図3において、1は、燃料遮断装置
Aのケーシングであり、このケーシング1はタンク本体
2内の上部にブラケット3を介して取付けられると共
に、その下端側部に、タンク本体2内で発生した蒸発燃
料ガスをキャニスター4に導くエバポチューブ5が配管
接続されている。尚、図2中、Bはフィラーチューブで
あり、Cはベントチューブである。
【0012】ケーシング1は、その内部にフロート6が
上下方向に摺動自在に収容されると共に、下壁と側壁に
夫々連通孔7,8が形成され、車両の旋回時や傾斜時に
タンク本体2内の燃料液面が変動すると、連通孔7,8
を経て燃料がケーシング1内に流入してフロート6に浮
力を生じさせるようになっている。ケーシング1の底壁
の中心部は有底円筒状に上方に隆起し、この部分がバル
ブハウジング9となっている。このバルブハウジング9
は、その上端にガス排出孔10が形成されると共に、ケ
ーシング1の下部に一体に形成されたアウトレット11
とその内部において連通するようになっている。また、
このアウトレット11には前記エバポチューブ5が直接
配管接続されるようになっている。バルブハウジング9
には、弁体としての球12と、ガス排出孔10に向けて
この球12を下方側から付勢するスプリング13とが収
容されている。尚、14は、バルブハウジング9の下端
の開口に被着されたキャップであり、15は、このキャ
ップ14と一体に形成されて球12の開弁方向(図中下
側)の変位を規制するストッパである。また、この実施
例の場合、弁手段は球12とスプリング13によって構
成されている。
【0013】フロート6はその下面中央に凹部16が形
成され、この凹部16に前記バルブハウジング9が摺動
自在に嵌入されるようになっている。このため、前記ガ
ス排出孔10は、ケーシング1のうちのフロート6の中
心部下方位置に配置されることとなる。また、凹部16
の上壁は、その中央に下側に所定量突出する突起17が
形成されると共に、この突起17から僅かにずれた位置
に上下方向に連通する連通孔18が形成されている。突
起17はガス排出孔10に遊挿されてその先端が球12
と(上下方向で)接触するようになっている。この突起
17は本発明における押圧部を構成している。
【0014】球12を閉弁方向(図中上方向)に付勢す
るスプリング13の力は、通常状態においてフロート6
の重量が加えられたまま球12がガス排出孔10を閉じ
るように設定されていて、この状態からタンク本体2内
の蒸発燃料ガスの圧力が設定圧まで高まると、この圧力
によって球12がガス排出孔10を開くようになってい
る。また、フロート6はその燃料中における浮力が自重
よりも小さくなる材質によって形成されていて、ロール
オーバー時以外は突起17の先端が常時球12と接触す
るようになっている。
【0015】以上のような構成であるため、車両が旋回
したり傾斜したりしない通常状態では、フロート6の重
量が突起17を介して球12に開弁方向の押圧力として
作用しており、この状態においてタンク本体2内の蒸発
燃料ガスの圧力が設定圧まで高まると、図1に示すよう
に、この圧力によって球12がガス排出孔10を開いて
タンク本体2内の燃料蒸発ガスをエバポチューブ5から
キャニスター4に導くようになる。これにより、タンク
本体2内のガス圧力は設定圧以内に抑えられる。
【0016】また、この状態から車両が旋回したり傾斜
したりすると、図3に示すように、タンク本体2内の燃
料液面の変動によってケーシング1内に燃料が流入し、
フロート6に浮力が作用するようになる。これにより、
フロート6の重量による開弁方向の押圧力はこの浮力に
よって弱められ、球12がスプリング13の付勢力によ
ってガス排出孔10を強力に閉じるようになる。
【0017】この状態においてタンク本体2内のガス圧
力が高まっても、このガス圧力はガス排出孔10を閉じ
る方向に作用せずに逆に開く方向に作用するため、球1
2がスティクするような事態は起こらなくなり、この後
燃料液面がもとの状態に戻ると、球12はタンク本体2
内のガス圧力の上昇と共に容易にガス排出孔10を開く
ようになる。
【0018】また、車両がロールオーバーした場合に
は、フロート6が自重によって下降し、球12に対して
なんら開弁方向の押圧力を付与しなくなるため、球12
はより強力にガス排出孔10を閉じるようになる。
【0019】本発明にかかるこの燃料遮断装置Aの場
合、フロート6と、ガス排出孔10のシールを担う部分
(球12)が別体であるため、フロート6を球12より
もコストの安い材料や比重の軽い材料によって形成し、
それによって製造コストの低減や装置の小型化を図るこ
とも可能である。
【0020】次に、本発明のこの他の実施例について説
明する。尚、以下の実施例の説明において第1実施例の
説明と重複する部分の説明は省略し、同一部分には対応
する図面に同一符号を付すものとする。
【0021】図4は本発明の第2実施例を示すものであ
り、この燃料遮断装置は、ガス排出孔10の開閉を行う
弁体を球ではなく先端に突起112aを備えた略円錐形
状の弁112によって構成するようにした点と、フロー
ト6を上方に付勢するスプリング19をケーシング1内
に別に設けるようにした点が、第1実施例のものと異な
り、他の基本的な構成はほぼ同様となっている。この燃
料遮断装置のようにフロート6を上方に付勢するスプリ
ング19をケーシング1内に別に設けるようにした場
合、フロート6を、その浮力が自重よりも大きい材料に
よって形成することが可能になる。即ち、このような材
料によって形成した場合、スプリング19がなければ車
両のロールオーバ時にフロート6が浮力によって弁11
2を押し上げてしまうが、スプリング19があるために
ロールオーバ時の開弁をその付勢力によって確実に阻止
することが出来るようになる。
【0022】図5は本発明の第3実施例を示すものであ
り、この燃料遮断装置は、バルブハウジング9の下端に
被着されるキャップ14に、バルブハウジング9内とタ
ンク本体2内を連通させる連通孔20を形成すると共
に、この連通孔20を開閉するチェック弁21を設けて
ある。このチェック弁21は、球22と、この球22を
タンク本体2側から連通孔20を閉じる方向に付勢する
スプリング23とから構成され、タンク本体2内の圧力
がバルブハウジング9内の圧力よりも所定圧低くなった
場合にだけ球22が連通孔20を開くようになってい
る。尚、この実施例の場合にも、球12を付勢するスプ
リング13は通常状態においてフロート6の重量が加え
られたまま球12がガス排出孔10を閉じるように設定
されていて、タンク本体2内の蒸発燃料ガスの圧力が所
定圧以上に上昇して初めて開くようになっている。
【0023】一般に、エバポチューブのキャニスター側
には、燃料注入時にタンク本体2の上部を密封して燃料
液面の上昇を規制するためにタンク本体2内の圧力が所
定圧以上に上昇した場合にだけエバポチューブの通路を
開くように設定した正圧弁と、タンク本体2内の圧力が
所定圧以下に低下した場合にだけエバポチューブの通路
を開くように設定した負圧弁とが設けられている。とこ
ろが、この実施例のように球12を付勢するスプリング
13を上述のように設定して、キャップ14にチェック
弁21を設けるようにすれば、球12とスプリング13
が正圧弁の働きを為し、チェック弁21が負圧弁の働き
を為すようになる。したがって、この実施例を採用すれ
ば燃料遮断装置と別にエバポチューブに正圧弁と負圧弁
を設ける必要がなくなり、大幅なコスト低減が可能にな
る。
【0024】また、図6は本発明の第4実施例を示すも
のであり、この燃料遮断装置は図5に示したものとほぼ
同構成で同様に機能するものであるが、キャップ14に
設けるチェック弁121の構造が僅かに異なる。この実
施例のチェック弁121の場合、図5に示したものがス
プリングの付勢力によって連通孔20を閉じるようにし
ていたのに対し、ゴム材によって一体に形成してこのゴ
ム材の弾性力によって連通孔20を閉じるようにしてい
る点だけが異なる。この実施例を採用した場合、チェッ
ク弁121の製造コストの低減が可能になる。
【0025】さらに、図7は本発明の第5実施例を示す
ものであり、この燃料遮断装置は第1実施例のものと基
本的な構成はほぼ同様であるが、タンク本体2に対する
組付性をより良好にするための改良を加えた点が異な
る。以下、この点について詳述する。
【0026】この燃料遮断装置は、ケーシング101
が、アウトレット11を備えたアッパケース101aと
バルブハウジング9を備えたロアケース101bとから
構成され、アッパケース101aとロアケース101b
の組付時にアウトレット11とバルブハウジング9がO
リング24を介して接続されるようになっており、ま
た、アッパケース101aとロアケース101bは爪2
5と孔26による係合によって互いが組付られている。
アッパケース101aとロアケース101bは異なる樹
脂材料によって形成されていて、アッパケース101a
側はタンク本体2と同じ樹脂材料によって形成されてい
る。さらに、アッパケース101aとロアケース101
bには夫々互いに突き合わされるべくフランジ27と2
8が形成されており、アッパケース101a側のフラン
ジ27はロアケース101b側のフランジ28よりも一
回り径が大きく形成され、しかも、その外周縁部に溶着
用の肉厚部27aが形成されている。
【0027】この燃料遮断装置をタンク本体2に組付け
る場合には、まず、フロート6等を内装した状態でアッ
パケース101aとロアケース101bを爪25と孔2
6の係合によって組付け一体化しておき、こうして一体
化したものをタンク本体2の取付孔29に嵌入してフラ
ンジ27,28を取付孔29の外周縁部に係合させる。
そして、最後にフランジ27の肉厚部27aをタンク本
体2に対して溶着してタンク本体2に対する組付けを完
了する。
【0028】この実施例の燃料遮断装置の場合、アッパ
ケース101aをタンク本体2と同じ樹脂材料によって
形成しているため、タンク本体2に対する溶着を容易
に、かつ、確実に行うことが出来、しかも、ロアケース
101bのフランジ28が、タンク本体2の取付孔29
の外周縁部とアッパケース101aとに挟み込まれたか
たちでタンク本体2に取付けられるため、経時使用に伴
うロアケース101bの脱落を確実に防止することが出
来る。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ガス排出
孔を、ケーシングの下方側から同ケーシングの内部に向
かって連通するように設けると共に、このガス排出孔部
分に弁手段を配置し、この弁手段を、ガス排出孔をその
下方側から開閉する弁体と、この弁体をガス排出孔に向
けて下方から付勢するスプリングとを備えた構成とする
と共に、フロートに、同フロートの下方変位時に前記弁
体を上方から押圧する押圧部を設けたため、通常時はフ
ロートの重量が弁体に対する開弁方向の押圧力として作
用し、燃料液面の変動時はフロートの浮力が重量による
開弁方向の押圧力を弱めるように作用するようになり、
その結果、液面変動時にガス排出孔が閉じられた状態で
タンク本体内の燃料蒸発ガスの圧力が高まってもこの圧
力がガス排出孔を閉じる方向に作用しなくなり、フロー
トを大型・重量化することなくスティックを確実に防止
出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図。
【図2】本発明の第1実施例を示す全体概要図。
【図3】本発明の第1実施例を示す断面図。
【図4】本発明の第2実施例を示す断面図。
【図5】本発明の第3実施例を示す断面図。
【図6】本発明の第4実施例を示す断面図。
【図7】本発明の第5実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1…ケーシング、2…タンク本体、5…エバポチュー
ブ、6…フロート、10…ガス排出孔、12…球(
)、13…スプリング。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 マイケル・フィリー 神奈川県横浜市保土ケ谷区岩井町51番地 加藤発条株式会社内 (56)参考文献 実開 平3−59466(JP,U) 実開 昭63−24033(JP,U) 実開 昭62−75278(JP,U) 実開 昭56−79420(JP,U) 実開 昭56−29260(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60K 15/02 F16K 17/36 F16K 24/00 F16K 31/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンク本体内の上部に配設されるケーシ
    ングに、蒸発燃料ガスをエバポチューブに排出するガス
    排出孔を設けると共に、タンク本体内の燃料液面の変動
    に伴ってこのガス排出孔の開閉を制御するフロートを収
    容した燃料タンクの燃料遮断装置において、前記ガス排出孔を、前記ケーシングの下方側から同ケー
    シングの内部に向かって連通するように設けると共に、
    このガス排出孔部分に弁手段を配置し、この弁手段を、
    前記ガス排出孔をその下方側から開閉する弁体と、この
    弁体を前記ガス排出孔に向けて下方から付勢するスプリ
    ングとを備えた構成とすると共に、前記フロートに、同
    フロートの下方変位時に前記弁体を上方から押圧する押
    圧部を設けた ことを特徴とする燃料タンクの燃料遮断装
    置。
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