JP2877149B2 - 複合酸化物セラミック系超電導線の製造方法 - Google Patents

複合酸化物セラミック系超電導線の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の属する技術分野 本発明は超電導特性を有する焼結セラミックスからな
る長尺体の製造方法に関する。特に、超電導コイル等を
製造するのに用いられる複合酸化物系焼結セラミックス
製の超電導ワイヤの製造方法に関する。更に詳細には、
本発明は、高い臨界電流密度と臨界温度とを有する複合
酸化物系焼結セラミックス製の超電導ワイヤの製造方法
に関する。
従来の技術 超電導現象下の物質は完全な反磁性を示し、内部で有
限な定常電流が流れているにもかかわらず電位差が現れ
なくなる、即ち電気抵抗がゼロになる。そこで、電力損
失の全くない伝送媒体、素子あるいは装置として超電導
体の各種応用が提案されている。
具体的には、MHD発電、送電、電力貯蔵等の電力分
野;磁気浮上列車、電磁気推進船舶等の動力分野;さら
には、NMR、π中間子治療装置、高エネルギー物理実験
装置などの計測の分野で用いられる磁場、マイクロ波、
放射線等の検出用超高感度センサ等を例示できる。ま
た、エレクトロニクスの分野でも、ジョセフソン素子に
代表される低消費電力の超高速動作素子を実現し得る技
術として期待されている。
但し、超電導現象は超低温でしか現われない。従来か
らよく知られた金属系の超電導材料の中ではA−15構造
をもつ一群の物質は比較的高いTC(超電導臨界温度)を
示すが、最も高いTcを有するNb3GeでもそのTCは23.2Kで
ある。従って、このTC以下の温度に冷却するには液体ヘ
リウム(沸点4.2K)を用いなければならない。しかしな
がら、わが国ではヘリウムは全量輸入に頼っており、コ
ストの点で大きな問題がある。更に、21世紀には世界的
にもヘリウム資源が枯渇するとの予測もある。また、液
化に大がかりな装置が必要になるという欠点がある。こ
のような背景から、高いTCをもつ超電導材料の出現が強
く望まれていた。
これまでにも、複合酸化物系のセラミック材料が超電
導特性を示すこと自体は公知であり、例えば、米国特許
第3,932,315号には、Ba−Pb−Bi系の複合酸化物が超電
導特性を示すということが記載されており、特開昭60−
173,885号公報にもBa−Bi系の複合酸化物が超電導特性
を示すということが記載されている。しかし、これまで
に知られていた上記の系の複合酸化物のTCは10K以下な
ので超電導現象を起こさせるには依然として液体ヘリウ
ムを用いる他なかった。
ところが、1986年にベドノーツおよびミューラー達に
よって従来よりも遥かに高いTCを有する超電導酸化物が
発見されるに至り、高温超電導の可能性が大きく開けて
きた(Z.Phys.B64,1986,9月、p189−193)。ベドノーツ
およびミューラー達によって発見された酸化物超電導体
はK2NiF4型酸化物と呼ばれる(La,Ba)2CuO4または(L
a,Sr)2CuO4であり、所謂ペロブスカイト型超電導酸化
物と結晶構造は似ているが、TCは従来の超電導材料に比
べて飛躍的に高い30〜50Kという値である。
また、II a族元素およびIII a族元素の酸化物を含む
焼結体は、ペロブスカイト型酸化物と類似した擬似ペロ
ブスカイト型とも称すべき結晶構造を有すると考えられ
る〔La、Ba〕2CuO4あるいは〔La,Sr〕2CuO4等のK2NiF4
型酸化物の他に、Ba2YCu3O系のオルソロンビック型酸化
物も見出され、これらの物質では、75K以上のTCも報告
されている。従って、超電導を起こさせるための冷媒と
して液体水素(沸点20.4K)または液体ネオン(沸点27.
3K)等が使えるようになる。特に水素の場合は、引火等
の危険性はあるもののヘリウムと違って資源の枯渇の心
配がない。
但し、上記の新超電導酸化物は、発見されてから日が
浅いこともあって未だ粉末の焼結体しか製造されていな
い。その理由は、上記のようなセラミック系の超電導材
料は従来公知の金属系超電導材料、例えば、Nb−Ti系の
金属系超電導材料のような優れた塑性加工特性を有して
おらず、金属系超電導材料で用いられている従来の線材
化技術、例えば、金属系超電導材料を直接または銅のよ
うな被覆材中に埋設した状態で伸線加工等の塑性加工を
行うことができないためである。
また、脆くて酸化され易い金属系超電導材料、例えば
PbMo0.35S8等のいわゆるシェブレル化合物の場合には、
その原料粉末を金属のシェルに入れた状態のものを1,00
0℃以上の温度で押出し成形し、さらに引抜き加工して
線材にしようとする試みが提案されている(特開昭61−
131,307号公報参照)。しかしながら、この方法を金属
系ではない複合酸化物系のセラミック材料に応用するこ
とはできない。その理由は、複合酸化物系超電導材料は
特定の結晶構造をとらないと超電導現象を示さず、その
ためには操作条件、処理条件および使用材料等の選択が
限定されているからである。また、仮に超電導材料にな
ったとしても、実用的な臨界電流密度および臨界温度を
実現することは難しく、特に、金属シェル(外皮)の材
料の選択が不適当な場合は、焼結時に原料の複合酸化物
がシェルを構成する金属によって還元され、優れた特性
の超電導線材にはならないことが判っている。
従って、セラミックス材料からワイヤー形状のものを
製造する場合には、一般に、セラミックス原料粉末に適
当な有機系粘着剤を混合し、細棒状に押出成形するか、
または角材に型押しした後に切削加工して細棒に成形
し、その後これらの成形体を中間焼結して含有される有
機系粘着剤を除去し、次いで更に焼結するのみが試みら
れている。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、角材に型押しした後に切削加工して細
棒に成形し焼結する方法では、高価なセラミックス原料
粉末の利用効率が悪いこと、切削加工を行うために、長
手方向の寸法を断面方向の寸法に対して十分に長くとれ
ないこと、切削加工を要するため生産性に劣ること等の
欠点がある。
細棒に押出成形して焼結する方法は、セラミックス原
料粉末の利用効率が良く生産性もよいという利点はある
が、押出成形のために原料粉末中に極めて多量の有機系
粘着剤を混合しなければならない。このため、粘着材の
完全な除去が非常に難しく、焼結時まで残留する粘着剤
が欠陥の原因となり、最終製品の強度および靭性が低下
するという欠点がある。
また、実用に足る製品を得るこめには、製品が十分な
強度と靭性を有すると同時にできるだけ細径で、且つ、
臨界電流密度および臨界温度が十分高いことが求められ
る。
そこで、本発明は、強度や靭性低下の原因となる有機
系粘着剤を使用せずに、断面方向の寸法に対する長手方
向の寸法を十分に大きくできるような新規な製造方法を
提供することを目的としている。また、細径でありなが
ら十分な強度や靭性を有する複合酸化物系焼結セラミッ
クス線材の製造方法を提供することも本発明の目的のひ
とつである。更に、高い臨界電流密度および臨界温度を
有する焼結セラミックス製の超電導線材の製造方法を提
供することも本発明の目的のひとつである。
課題を解決するための手段 本発明により、超電導特性を有する複合酸化物よりな
るセラミック原料粉末を、Ag、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、M
o、Wの中から選択される金属またはこれらの金属をベ
ースとした合金によって作られたパイプ中に充填する工
程、セラミック原料粉末を充填した状態で上記金属製パ
イプの断面積を縮小させる塑性変形加工を実施する工
程、および、上記金属製パイプを加熱処理することによ
って上記金属製パイプ中に充填された上記セラミック原
料粉末を焼結する工程を含むことを特徴とする超電導長
尺体の製造方法が提供される。
更に、本発明の他の態様に従うと、上記金属パイプの
材料を、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osとすることができ
る。、更に他の態様に従うと、AlまたはAuとすることも
できる。
また、本発明の好ましい態様に従うと、上記セラミッ
ク原料粉末はK2NiF4型結晶構造を有する超電導特性を有
する複合酸化物であり得、具体的には(La、Ba)2CuO4
または(La、Sr)2CuO4等を例示することができる。
また、本発明の好ましい態様に従うと、上記セラミッ
ク原料粉末は、 一般式:(α1-x、β)γyOz 〔ここで、αは周期律表のII a族元素の中から選択され
る元素であり、βは周期律表のIII a族元素の中から選
択される元素であり、γは周期律表のI b、II b、III
b、IV aおよびVIII a族元素の中から選択される元素で
あり、x、yおよびzはそれぞれ0.1≦x≦0.9、0.4≦
y≦4.0、1≦z≦5を満たす数である〕 で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する超電導特
性を有する複合酸化物であり得、具体的には上記αがB
a、上記βがY、上記γがCuである組合せを例示するこ
とができる。
更に、上述の原料粉末は、Bi2O3粉末と、SrCO3粉末
と、CaCO3粉末と、CuO粉末とを混合し、乾燥した後、混
合粉末を成形し、焼成した後、これを粉砕して得られる
粉末を例示することができる。
また、本発明に係る方法における前記加熱処理は、70
0〜1000℃程度の温度で実施することが好ましい。ま
た、上記金属製パイプの断面積を縮小させる塑性変形加
工が金属製パイプの断面積を14%よりも大きく95%より
も小さい加工率で縮小する加工を含んでおり、伸線加工
でありる得る。このような塑性変形加工は、ダイス伸
線、ローラダイス伸線または押出し伸線のいずれか一つ
によって行うことができる。また、上記塑性変形加工は
鍛造加工でもよく、この場合、上記鍛造加工はスウェイ
ジング加工、ロール圧延加工によって実施することがで
きる。
尚、本発明の好ましい態様によると、上記超電導特性
を有する複合酸化物よりなるセラミック原料粉末を予め
造粒しておくことができる。更に、上記の加熱処理後
に、焼結されたセラミック原料粉末焼結体を内部に収容
した金属製パイプを50℃/分以下の冷却速度で徐冷する
ことも好ましい。
また、上記セラミック原料粉末が焼結された後に、上
記金属製パイプを上記のセラミック原料粉末の焼結体か
ら除去する工程をさらに含むことも本発明の技術的範囲
に含まれるものと解すべきである。
発明の実施の形態 本発明による超電導長尺体の製造方法は、超電導特性
を有する複合酸化物よりなるセラミック原料粉末を、A
g、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、Wの中から選択される金
属またはこれらの金属をベースとした合金によって作ら
れたパイプ中に充填する工程、セラミック原料粉末を充
填した状態で上記金属製パイプの断面積を縮小させる塑
性変形加工を実施する工程、および、上記金属製パイプ
を加熱処理することによって上記金属製パイプ中に充填
された上記セラミック原料粉末を焼結する工程を含むこ
とを特徴とする。
上記の長尺体とは断面寸法に対する長さ方向寸法の比
が30以上のロッド、ワイヤ、ストランド、テープ、バン
ド等をいい、その断面形状は円形のみに限定されず、角
形等の任意の形にすることができる。
上記の超電導特性を有する複合酸化物よりなるセラミ
ック原料粉末とはバルクの状態、例えば焼結した状態で
超電導特性を有する材料から粉砕して作られた複合酸化
物よりなるセラミック粉末であることが好ましいが、超
電導焼結体を製造するための原料粉末をそのまま使用す
ることもできる。具体的には、例えば、K2NiF4型の(L
a,Ba)2CuO4または(La,Sr)2CuO4型の複合酸化物を線
材化する場合には、これら複合酸化物の構成元素の酸化
物、炭酸塩、硝酸塩または硫酸塩等の粉末を原料粉末と
した混合粉末、例えば、La2O3と、BaO2またはSrO2と、C
uOとの混合粉末を焼結して得られる〔La、Ba〕2CuO4
たは〔La、Sr〕2CuO4を用いることができる。
また、セラミックス原料粉末としては、 一般式:AaBbCc 〔Aは周期律表I a、II aおよびIII a族元素からなる群
より選択した少なくとも1種の元素、Bは周期律表I
b、II bおよびIII b族元素からなる群より選択した少な
くとも1種の元素、Cは酸素、炭素、窒素、フッ素およ
びイオウからなる群より選択した少なくとも1種の元素
を示し、一般式中のa、bおよびcは、それぞれ、A、
BおよびCの組成比を示す数であり、a×(Aの平均原
子価)+b×(Bの平均原子価)=c×(Cの平均原子
価)を満たすものが好ましい〕 で表される超電導材料を挙げることができる。ここで、
上記I a族元素としては、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr
が挙げられる。II a族元素としては、Be、Mg、Ca、Sr、
Ba、Raが挙げられる。III a族元素としては、Sc、Y、L
a、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、BK、C
f、Es、Fm、Md、Mo、Lrが挙げられる。また、I b族元素
としては、Cu、Ag、Auが挙げられる。II b族元素として
は、Zn、Cd、Hgが挙げられる。III b族元素としては、
B、Al、Ga、In、Tlが挙げられる。
尚、上記の原料粉末は常温以上で酸化物生成の酸素ポ
テンシャルが銅と同じかまたは銅より高い金属の酸化物
粉末を含む混合粉体であることが好ましい。
また、本発明に係る方法で使用可能な超電導性セラミ
ックス材料として、上記一般式においてAとして周期律
表I a、II aおよびIII a族元素からなる群より選ばれた
少なくとも2種の元素を含み、Bとして少なくとも銅を
含み、Cとして少なくとも酸素を含む系、例えば、Y−
Ba−Cu−O系セラミックス、Y−Sr−Cu−O系セラミッ
クス、La−Sr−Cu−O系セラミックスおよびLa−Ba−Cu
−O系セラミックスを例示することができる。より具体
的には、K2NiF4型結晶構造を有する超電導特性を有する
複合酸化物、例えば、(La,Ba)2CuO4または(La,Sr)2
CuO4を好ましく用いることができる。
更に、上記セラミック原料粉末として、 一般式:(α1-x、β)γyOz 〔ここで、αは周期律表のII a族元素の中から選択され
る元素であり、βは周期律表のIII a族元素の中から選
択される元素であり、γは周期律表のI b、II b、III
b、IV aおよびVIII a族元素の中から選択される元素で
あり、x、yおよびzはそれぞれ0.1≦x≦0.9、0.4≦
y≦4.0、1≦z≦5を満たす数である〕 で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する超電導特
性を有する複合酸化物を用いることもでき、特に、上記
αがBaであり、上記βがYであり、上記γがCuであるも
のを好ましく例示できる。
また更に、Sr−Ca−Bi−Cu系の複合酸化物も好まし
い。この複合酸化物は、Bi2O3粉末と、SrCO3粉末と、Ca
CO3粉末と、およびCuO粉末とを混合し、乾燥した後、混
合粉末を成形し、焼成した後、これを粉砕して製造する
ことができる。
尚、これらのセラミック原料粉末は予め造粒されてい
てもよく、特に、粉末の嵩密度が低く金属パイプ中への
充填が困難な場合には、予め造粒して粒塊状としておく
ことによって原料粉末の充填が容易になり且つ高い充填
密度にすることができる。本発明の好ましいひとつの態
様によると、セラミック原料粉末は粒径を0.1mm以下の
状態にして熱処理した後に金属パイプ中へ充填される。
この場合の上記熱処理は、従来の最終焼結に相当するも
のであるが、必要な場合には金属パイプ内に粉末を充填
した後に再度焼成してもよい。また、熱処理後の粉末
が、粉末同士の凝集などによって0.1mmより大きな粒径
になる場合には、熱処理後の粉末を0.1mm以下の粒径に
なるまで粉砕した後、金属パイプに充填してもよい。す
なわち、このような場合には、従来の最終焼結に相当す
る熱処理を0.1mm以下の粒径の粉末の状態で行う。従っ
て、熱処理後の粉末は全体が超電導結晶構造となってお
り、従来のような絶縁体構造の部分が存在せず、また、
金属パイプ内での粉末のパッキングファクタが良好とな
り、また伸線性も良好なものになる。そのため、この実
施態様に従って得られた超電導線材は、長手方向に連続
した超電導体となっており、高い臨界電流密度を示す。
本発明に係る方法において、金属製パイプとしては、
Ag、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W、Pt、Pd、Rh、Ir、R
u、Os、Al、Auの中から選択される金属またはこれらの
金属をベースとした合金によって作ることができる。特
に、Agは、超電導セラミックスと一緒に加熱してもほと
んど反応を起こさない。したがって、線材を十分に熱処
理することができ、内部に存在する超電導性セラミック
ス粒子同士の焼結や固相反応等を十分に進行させて、均
一の連続体を形成させることができる。また、焼結後
に、上記の金属性パイプの外周に更に銅、銅合金または
ステンレス銅を配することもできる。このように、銅な
どによってさらに被覆することにより、塑性加工で得ら
れる線材をより可撓性に優れたものにすることができ
る。
一方、上記金属製パイプの断面積を縮小させる塑性変
形加工は金属製パイプの断面積を14よりも大きく95%よ
りも小さい加工率、好ましくは20から90%の範囲内の加
工率すなわち断面縮小率で縮小させる加工とすることが
できる。この断面縮小率が95%以上になると、原料粉末
が塑性変形される金属製パイプの内面の運動に追随しな
くなり、最終的には金属製パイプの内部で焼結されたセ
ラミック線が各所で破断してしまう。一方、断面縮小率
が14%以下では金属製パイプの内部への粉末原料の充填
密度が不足するため十分な焼結ができない。この塑性変
形加工は伸線加工、特に、ダイス伸線、ローラダイス伸
線または押出し伸線のいずれか一つによって行うことが
好ましい。また、上記塑性変形加工は鍛造加工によって
行うこともでき、この鍛造加工としては、スウェイジン
グ加工またはロール圧延加工を用いることが好ましい。
本発明において行われる塑性加工、たとえば、押出、
圧延、スウェイジおよび伸線加工は2種以上を組み合わ
せて行うこともできる。また、塑性加工された線材を、
たとえば超電導マグネット等に使用するコイルなどの所
望の形状に成形した後に、後述の熱処理を施すこともで
きる。
また、上記塑性加工は、金属製パイプの再結晶化温度
以上で行う熱間加工であり得る。即ち、この金属製パイ
プの再結晶化温度以上では金属の変形抵抗が著しく低下
して極めて大きな展性を示し、降温後に再結晶が生じて
も加工硬化が残らない。この熱間加工は当然ながら、金
属の融点以下、好ましくは融点よりも10℃程度低い温度
で行うことが好ましい。この場合の塑性変形加工は被加
工物に圧縮応力が作用する加工、例えば伸線加工および
鍛造加工が好ましく、それにより金属製パイプ中に収容
された原料粉末を緻密化することができる。
一方、熱間塑性変形加工の前および/または後に冷間
塑性変形加工する工程をさらに追加することもできる。
また、上記の熱間塑性変形加工および上記焼結工程とを
含む一連の工程を複数回繰り返すこともできる。
加熱処理は、700〜1000℃程度の温度で実施すること
が好ましい。但し、この温度はセラミックスの成分系に
応じた温度が選択れる。即ち、塑性加工後の線材の内部
は、超電導セラミックス粉末等が互いに接触し合った状
態で存在しているのみで、その連続性は十分ではない。
このような状態のセラミックス原料粉末に対して適切な
熱処理を施すことにより、粒子同士の焼結や固相反応が
進行し、均一な連続体となる。
一般には、複合酸化物粒子の焼結時の焼結温度は、焼
結体の溶融温度を上限とし、溶融温度との差が100℃以
内の温度であることが好ましい。焼結温度が上記範囲よ
り低いと、焼結体粉末の焼結反応が進行せず、得られた
焼結体の強度が極端に低くなる。一方、焼結温度が上記
範囲を越えると、焼結中に液相が生じ、焼成体の溶融あ
るいは分解が発生する。このような反応を経た焼結体の
品質、例えば超電導臨界温度TCは大きく低下する。
本発明の一実施態様によると、原料粉末を充填した金
属筒体を目的形状に伸線加工した後に、該酸化物超電導
体が生成する反応温度以下かつ絶対温度で反応温度の1/
2以上の温度において、該原料粉末の粒界が拡散するま
で焼結し、また好ましくは伸線加工後に中間焼鈍を行
い、更に伸線加工するという一連の工程を必要に応じて
繰返し行なうことができる。更に、Y−Ba−Cu−O系の
酸化物超電導体セラミックスの場合は、焼結後50℃/分
以下の徐冷過程、50℃/分以上の急冷過程を含む熱処理
を行って線材にすることができる。このようにする理由
は、この主の酸化物超電導体が、700℃よりも高い温度
で焼結しないと超電導特性を示さず、しかも、このよう
な高温で焼結を行うと、原料粉末中のCuが筒体の金属等
で還元されてしまい、最終的に得られる製品の超電導特
性が悪化してしまうからである。この問題を解決するた
めは、予め焼結等によって調製した超電導特性を持つセ
ラミックスを粉砕して得た超電導体粉末を原料粉末とし
て用い、伸線後は上記の還元反応が起こらない温度で焼
結することが好ましい。
尚、上記の加熱処理後の、焼結されたセラミック原料
粉末焼結体を収容した金属製パイプは、50℃/分以下の
冷却速度で徐冷することが好ましい。また、Ba−Y−Cu
−O系等の酸化物超電導焼結セラミックス線に本発明の
方法を適用する場合は、焼結後50℃/分以下の徐冷過
程、50℃/分以上の急冷過程を含む熱処理を施すと優れ
た超電導特性が得られる。
更に、金属製パイプは焼結後も焼結体上にそのままに
残しておくこともできるが、セラミック原料粉末が焼結
された後に除去することもできる。金属製パイプを残し
たままにすることによって、磁気に対する安定性および
超電導状態が破れた場合に対する安全性および放熱路を
確保することができる。一方、例えば、耐食性、耐摩耗
性等のセラミックス本来の特性を必要とする場合には焼
結後に金属パイプを除去することもできる。金属パイプ
の除去は研磨等により機械的に除去する方法の他、硝酸
等の腐食液によって化学的に除去することもできる。
また、本発明の他の態様に従うと、金属パイプとして
用いる金属の大部分を、焼結時に原料粉末の焼結と同時
に除去し、焼結体の表面に残留した金属被覆を導電時の
保護導体として用いることができる。この金属層の被覆
厚さは500μm以下、好ましくは200μm以下であり、こ
の金属被覆層があまり厚いと焼結時に溶け落ちる恐れが
あり、上記の厚みであれば、溶け落ちないまでも表面張
力等で形状を保つからである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する
が、以下の開示は本発明の一実施例に過ぎず、本発明の
技術的範囲を何ら限定するものではない。
実施例 第1a図から第1j図は、本発明による長尺焼結体製品の
製造方法を工程を追って説明する図である。
先ず、第1a図に示すように、所定の断面形状および寸
法(外径L、内径l)を有する金属管1の内部に、第1b
図に示すようにセラミック原料粉末2を充填する。続い
て、この原料粉末2を充填した金属管1を伸線加工す
る。伸線加工は、第1c図に示すようにローラダイス3を
用いて行うことができる。また、第1d図の断面図に示す
ようにダイス4を単数あるいは複数用いてもよい。更
に、第1e図に示すようにスェージング5により、あるい
は、第1f図の断面図に示すように押出伸線機6を用いて
もよい。また、金属管が矩形の断面を有する材料である
場合には、第1g図に示すように、ローラ7により圧延を
行ってもよい。また、この伸線加工にあたって、金属管
を一旦焼鈍することによって、伸線加工をより円滑に行
うことも可能である。また、伸線加工に先立って、第1h
図の断面図にその一端を示すように、金属管の一端ある
いは両端を封止することによって、原料粉末の漏洩を防
止することも好ましい。
こうして伸線工程を経た管の内部の原料粉末2は、第
1i図に示すように、その形状を直径l′の細線状あるい
はテープ状に成形されている。従って、この状態で焼成
を行うことによって線状あるいはテープ状の焼成体が得
られる。
ここで、本発明の一つの態様では、第1j図に示すよう
に、焼成体の表面に付着している管部材を除去して、焼
成体を更に焼結する。
作製例1 焼結原料としてLa2O3を85重量%、BaCO3を4重量%お
よびCuOを11重量%それぞれ含有する混合粉末を用い成
形後、焼結した。焼結条件は900℃、24時間であった。
この焼結体はそれ自体超電導性を示した。
この焼結体を粉末にして内径5mm肉厚0.3mmのCu製パイ
プの中に充填し、850℃で10時間焼結し、冷却すること
なく、このCu製パイプをかしめた。このようにして得ら
れた超電導ワイヤはTCが30Kで、曲率半径300mmまでの曲
げ加工が可能である特性を示した。
作製例2 焼結原料としてLa2O3を85重量%、SrOを2重量%およ
びCuOを13重量%それぞれ含有する混合粉末を、内径10m
m、肉厚1mmのCu製パイプの中に充填した。これを850℃
で24時間焼結し、冷却することなく、Cu製パイプの直径
が2mmになるまで高温伸線した。
このようにして得られた超電導ワイヤはTCが35Kで、
曲率半径100mmまで曲げ加工ができるという特性を示し
た。
作製例3 市販のLa2O3粉末85.5重量%、SrCO3粉末3.1重量%及
びCuO粉末11.4重量%をアトライターで湿式混合したの
ち乾燥し、混合粉末を100kg/cm2の圧力でプレス成形
し、大気中900℃で20時間焼成した後、これを粉砕して1
00メッシュアンダーに篩分けした。この造粒処理した原
料粉末を外径5mm、内径4mm及び長さ1mの銅製筒体に充填
したのち両端を封じた。原料粉末を充填した筒体を外径
1.8mm迄伸線加工し、続いて真空中にて1050℃で2時間
の焼結を実施した。その結果、厚さ0.2mmの銅で被覆さ
れた長さ7.7mの焼結セラミックス線が得られた。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、35.5Kであり、抗折強度及び破壊
靭性(K1c)は夫々24.7kg/cm2及び2.2MN/m3/2であっ
た。
作製例4 作製例3と同じ原料粉末を外径6mm、内径5mm及び長さ
50cmの鉄製筒体に充填し、筒体の両端を封じた。この筒
体5個を伸線加工率95%、88%、56%、37%及び14%に
て夫々伸線加工し、次に真空中1100℃で2時間の焼結を
実施した。
その後、外周の鉄の被覆を酸洗により溶解除去したと
ころ、内部の焼結セラミックス線が伸線加工率95%のも
のは9本に破断しており、伸線加工率14%のものは十分
に焼結されず形状を維持できなかった。これに対し他の
伸線加工率のものは全く破断せず完全な形状に焼結する
ことができた。
作製例5 作製例3と同じ原料粉末を外径6mm、内径5mm及び長さ
1mのニッケル製筒体に充填し、筒体の両端を封じた。原
料粉末を充填した筒体を外径2.0mmまで伸線加工し、続
いて1150℃で2時間の焼結を実施した。その後、外周の
ニッケル被覆を研削により除去し、直径1.6mmで長さ9m
の焼結セミックス線を製造した。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、37.0Kであり、抗折強度及び破壊
靭性(K1c)は夫々24.4kg/cm2及び2.1MN/m3/2であっ
た。
作製例6 作製例3と同じ原料粉末を外径6mm、内径5mm及び長さ
1mの鉄製筒体に充填し、筒体の両端を封じた。原料粉末
を充填した筒体を外径2.0mmまで伸線加工し、続いて950
℃で2時間の焼結を実施した。その後、外側の銀の被覆
を研削により除去し、直径1.5mm、長さ6.3mの焼結セラ
ミック線を製造した。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、37.0Kであった。
作製例7 市販のLa2O3粉末85.8重量%、SrCO3粉末3.1重量%及
びCuO粉末11.4重量%をアトライターで湿式混合したの
ち乾燥し、混合粉末を100kg/cm2の圧力でプレス成形
し、大気中900℃で20時間焼成した後、これを粉砕して1
00メッシュアンダーに篩分けした。
この造粒処理した原料粉末を外径5mm、内径4mm及び長
さ1mの鉄製筒体に充填したのち両端を封じた。原料粉末
を充填した筒体を外径1.8mm迄伸線加工し、続いて真空
中にて1050℃で2時間の焼結を実施した。その結果、厚
さ0.2mmと鉄で被覆された長さ7.7mの焼結セラミックス
線が得られた。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、35.1Kであり、抗折強度及び破壊
靭性(K1c)は夫々25.1kg/cm2及び2.1MN/m3/2であっ
た。
作製例8 作製例7と同じ原料粉末を外径6mm、内径5mm及び長さ
50cmの鉄製筒体に充填し、筒体の両端を封じた。この筒
体7個を伸線加工率95%、90%、83%、56%、37%、20
%及び14%にて夫々伸線加工し次に真空中1100℃で2時
間の焼結を実施した。
その後、外周の鉄の被覆を酸洗により溶解除去したと
ころ、内部の焼結セラミックス線が伸線加工率95%のも
のは10本に破断しており、伸線加工率14%のものは十分
に焼結されず形状を維持できなかった。これに対し他の
伸線加工率のものは全く破断せず完全な形状に焼結する
ことができた。
作製例9 作製例7と同じ原料粉末を外径6mm、内径5mm及び長さ
1mのニッケル製筒体に充填し、筒体の両端を封じた。原
料粉末を充填した筒体を外径2.0mmまで伸線加工し、続
いて窒素雰囲気中にて1150℃で2時間の焼結を実施し
た。その後、外周のニッケル被覆を研削により除去し、
直径1.6mmで長さ9mの焼結セラミックス線を製造した。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、35.8Kであり、抗折強度及び破壊
靭性(K1c)は夫々24.9kg/cm2及び2.2MN/m3/2であっ
た。
作製例10 Y0.8Sr0.2CuO7の組成を有する粒径3μmの超電導性
セラミックス粉末を、白金パイプに充填し、この白金パ
イプのまわりにさらに無酸素銅パイプを被せた。これを
押出および伸線加工して、直径0.8mmの線材にした。得
られた線材の断面における体積率は、Cu:Pt:セラミック
ス=10:1:2であった。
この線材を900℃×12時間熱処理して、線材内部のセ
ラミックス粉末を焼結させた。
得られた超電導線材の超電導臨界温度は100Kであり、
同じ粉末をプレス形成して焼結したペレットの場合に得
られた超電導臨界温度105Kとほぼ同等の超電導特性が認
められた。
なお、伸線加工したのみで熱処理を施していない線材
について超電導特性を調べたところ、この線材は液体ヘ
リウム(4.2K)中においても超電導性を示さなかった。
作製例11 市販のY2O3粉末20.8重量%、BaCO3粉末54.7重量%お
よびCuO粉末24.5重量%を外径6mm、内径5mm及び長さ1m
の銀製筒体に充填し、その両端を封じた。原料粉末を充
填した筒体を外径2.0mmまで伸線加工し、続いて950℃で
2時間の焼結を実施した。その後、外側の銀の被覆を研
削により除去し、直径1.5mm、長さ6.3mの焼結セラミッ
クス線を製造した。
この焼結セラミックス線が超電導になる臨界温度(T
c)を測定したところ、87.0Kであった。
作製例12 最終焼成でYBa2Cu3O7の組成となるように予備焼成さ
れた粒径0.1mmの粉末に、920℃20時間の熱処理を施し
た。熱処理後の粉末を粉砕して0.1mmの粒径とした後、
内径5mm、外径9mmのステンレスパイプに充填した。これ
を、外径2mmとなるまで伸線して線材化した。得られた
超電導線材の超電導臨界温度(Tc)は92Kであり、臨界
電流密度(Jc)は103A/cm2であった。比較のため、作製
例12と同じ予備焼成状態の粉末を一旦ペレットに成形
し、ペレットの状態で作製例12と同様の熱処理を施し、
その後粉砕して作製例と同様にステンレスパイプ内に充
填し伸線して線材化させた。この比較の超電導線材は、
Tcが92Kであり、Jcが12A/cm2であった。このことから、
この作製例に従って製造された超電導線材が高い臨界電
流密度を示すことが確認された。
作製例13 市販のY2O3粉末20.8重量%、BaCO3粉末54.7重量%お
よびCuO粉末24.5重量%をアトライターで湿式混合した
のち乾燥した混合粉末を大気中880℃で24時間焼成した
後、これを粉砕して100メッシュアンダーに篩分けし
た。この焼成から粉砕、篩分けまでの工程を3回繰返し
た。
この造粒処理した原料粉末を外径5mm、内径4mmおよび
長さ1mの鉄製筒体に充填したのち両端を封じた。原料粉
末を充填した筒体を1回の伸線あたりの平均減面率19%
で伸線したところ、外径1.2mmφで断線した。続いて同
様の方法で1.5mmφまで伸線し、750℃×25分の中間焼鈍
を実施し、さらに1回当りの平均減面率18%で0.6mmφ
まで伸線し、930℃×3時間の焼結を施した。
得られた焼結セラミックス線の臨界温度(Tc)は38K
であった。
作製例14 市販のY2O3粉末20.8重量%、BaCO3粉末54.7重量%お
よびCuO粉末24.5重量%をアトライターで湿式混合した
のち乾燥し、大気中950℃で3時間焼成したのち、これ
を粉砕して100メッシュアンダーに篩分けした。この焼
成、粉砕、篩分けまでの工程を3回繰り返して行なっ
た。
このようにして得た原料粉末を外径5mm、内径4mmおよ
び長さ1mのステンレス製筒体に充填したのち両端を封じ
た。
かくして原料粉末を充填した筒体を外径3.6mmφまで
伸線加工し、続いて大気中にて、 950℃×3時間、 850℃×3時間、 700℃×3時間、 500℃×3時間、 850℃×30時間、 700℃×30時間、 500℃×30時間、 の焼結をそれぞれ行った。その結果、厚さ0.4mmのスレ
ンレスで被覆された長さ1.6mの焼結セラミックス線が得
られた。
続いてこのセラミクッス線の超電導特性を調べるべく
抵抗を測定した。尚、以下では超電導界臨界温度をTc、
電気抵抗が完全に0になる温度をTcfで示した。
のセラミクッス線は、超電導性を全く示さず、切断
して断面を観察したところ、セラミックスの成分のCuO
が還元されてCuになっており、赤色を呈していた。
のセラミックス線は、Tcが58KでTcfが7Kであった。
切断し、断面を観察したところ明確にCuOが還元されて
はいなかったが、原料粉末のもととなったセラミックス
と比較すると、ややポーラスであった。
のセラミックス線は、同様超電導特性を全く示さ
ず、切断したところセラミックスが完全に焼結されてお
らず、粒状であった。のセラミックス線も、、同
様超電導性を全く示さず、切断したところ原料粉末とほ
とんど変わらない粉末状であった。
のセラミックス線は、Tcが84KでTcfが75Kであっ
た。切断したところ断面は暗緑色で原料粉末のもととな
ったセラミックスと性状、色彩ともによく似ていた。
のセラミックス線は、Tcが68KでTcfが47Kであっ
た。切断したところのセラミックスと似ていたが、や
やポーラスであった。のセラミックス線は、やはり超
電導特性を全く示さず、切断したところセラミックスは
粒状であった。
作製例15 純度99.9%以上のBaCO3、Y2O3およびCuOの各々の粉末
を用意し、Y2O3粉末が20.8重量%、BaCO3粉末が54.7重
量%、CuO粉末が24.5重量%となるように秤量し、アト
ライターで湿式混合した後110℃で1時間乾燥した。こ
の混合粉末を、100Kg/cm2の圧力でプレス成形して940℃
で15時間焼成した後、100メッシュ以下まで粉砕した。
以下、 の工程を3回繰り返した後に、得られた焼成体粉末を、
各々第1表に示す工程に従って加工し、試料番号乃至
までの試料を作製した。更に、各試料の密度を測定し
た上で、超電導臨界電流密度を測定した各試料を評価し
た。尚、本作製例では、超電導材料である複合酸化物焼
結体の結晶構造を好ましく形成するために、酸素を透過
し易いAgを筒体の材料とした。
密度の測定は、溶液置換法によって得た焼結体の体積
で、試料の重量を割ることによって求めた。また、顕微
鏡による点算法も併用して確認した。また、臨界電流密
度の測定は、4端子法で試料に電気抵抗が生じる直前の
電流値を測定し、測定値を電流路の面積で割って求め
た。
測定結果を第1表に示すが、表の記載から、本発明の
方法に従って熱間加工を施した試料乃至では、焼結
体線材の密度と共に臨界電流密度が著しく向上してい
る。また、 の工程を反復した試料では、更に特性が向上しているこ
とが判る。
作製例16 作製例14と同じ原料粉末を用い、第2表に示すように
Cu、Niのパイプを用いて本発明の方法を実施した。ま
た、評価も同様の方法で行った。
第2表に示すように、何れの金属筒体を用いた場合で
も、塑性加工時の温度条件を適切に設定することによっ
て、熱間加工を経た試料は焼結体の密度と共に、臨界電
流密度が顕著に向上している。
作製例17 純度99.9%、平均粒径1μmのBaCO3、Y2O3、CuOの各
々の粉末を、焼成後の組成比が Ba0.670.33Cu1O3-δ(Ba2Y1Cu3O7-δ) となるように乳鉢で3時間、乾式混合した原料粉末を用
意した(重量比BaCO3:52.9%、Y2O3:15.13%、CuO:31.9
8%)。この混合粉末を200℃で7時間、真空中で水分を
除去した後、大気中で930℃、24時間焼成した。ケーキ
状に固化した粉末を乳鉢で粗粉砕した後、ボールミルに
より粉砕して平均粒径30μm以下とした。この原料粉末
を外径6mm、内径4mm、長さ4mのステンレス(SOS31OS)
製パイプに充填した後、両端を封じた。原料粉末を充填
したパイプを加工率25%で伸線をくり返し、外径を1.8m
mまで仕上げた。この線材に、CO2レーザーを用いて直径
約200μmの穴を20mmピッチであけた。
続いて酸素気流中で1000℃、16時間の焼結を行ない、
10℃/分の速度で徐冷した。更に、酸素気流中で700
℃、10時間の熱処理を行ない、10℃/分で徐冷した。
更に、第3表に示す組成及びパイプ材質につき、上記
と同様の方法で実施し、試料の電気抵抗が完全に検出で
きなくなる臨界温度Tci及び77KでのJCを測定した結果を
第3表に示す。なお、焼結温度は、各々のパイプ材が溶
融しない範囲におさえた。また、第3表に示した元素α
およびβ、並びに組成比X、Yは、パイプに充填した焼
成体の組成を式:(α1-Xβ)CuYO3-δとした場合の
それぞれの元素並びに組成比に対応している。
作製例18 市販のBi2O3粉末36.42重量%、SrCO3粉末23.07重量
%、CaCO3粉末23.07重量%及びCuO粉末24.87重量%をア
トライターで湿式混合した後乾燥し、混合粉末を1000kg
/cm2の圧力でプレス成形し、大気中800℃で8時間焼成
した後、これを粉砕して100メッシュアンダーに篩分け
した。
この造粒処理した原料粉末を外径5mm、内径4mm及び長
さ1mの銀製筒体に充填したのち両端を封じた。原料粉末
を充填した筒体を外径1.8mm迄伸線加工し、続いて真空
中にて800℃で2時間の焼結を実施した。その結果、厚
さ0.3mmの銀で被覆された長さ5.0mの焼結セラミックス
線が得られた。この焼結セラミックス線が超電導になる
臨界温度(Tc)を測定したところ100Kであった。
発明の効果 前述したように、従来の製造方法では、高価なセラミ
ックス原料粉末の利用効率が悪いこと、切削加工を行う
関係で細棒の長手方向の寸法を断面方向の寸法に対して
十分に長くとれないこと、切削加工を要するため生産性
に劣ること、原料粉末中に極めて多量の有機系粘着剤を
混合しなければならず残留する粘着剤が欠陥の原因とな
って、得られたセラミックス焼結体の強度および靭性を
低下させる等の欠点があった。
しかしながら、本発明の方法によれば、使用中に折損
等が生じないような十分な強度と靭性を有すると共に、
細い直径でしかも臨界電流密度および臨界温度が十分高
い超電導線を製造することが可能になる。
また、本発明の方法によれば、強度あるいは靭性低下
の原因となる有機系粘着剤を使用せずに、しかも断面方
向の寸法に対する長手方向の寸法を実用的に十分使用で
きる程度の大きさに製造することができる。更に、本発
明によれば、加工率すなわち断面積の縮小率が大きく従
って十分に直径が細く、しかも断線が生じない強度を確
保することができる。
このように、本発明の方法によって得られた超電導線
は、高い臨界電流密度並びに臨界温度を有する焼結セラ
ミックス製の超電導線材である。
【図面の簡単な説明】
第1a図から第1j図までは、本発明の方法に係る方法の一
部の工程をそれぞれ示す図である。 〔符号の説明〕 1……金属管、2……セラミック原料粉末、3……ロー
ラダイス、4……ダイス、5……スウェージ、6……押
出伸線機、7……ローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願昭62−90426 (32)優先日 昭62(1987)4月13日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−93973 (32)優先日 昭62(1987)4月16日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−93974 (32)優先日 昭62(1987)4月16日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−95882 (32)優先日 昭62(1987)4月18日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−102901 (32)優先日 昭62(1987)4月24日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−121733 (32)優先日 昭62(1987)5月19日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−121734 (32)優先日 昭62(1987)5月19日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願昭62−209842 (32)優先日 昭62(1987)8月24日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 河部 望 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 糸▲崎▼ 秀夫 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 藤田 順彦 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 澤田 和夫 大阪府大阪市此花区島屋1丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 林 和彦 大阪府大阪市此花区島屋1丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 柴田 憲一郎 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 佐々木 伸行 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 礒嶋 茂樹 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 矢津 修示 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作作所内 (72)発明者 上代 哲司 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作作所内 (56)参考文献 特開 昭63−276825(JP,A) 特開 昭63−248009(JP,A) 特開 昭64−57534(JP,A) 特開 昭63−232209(JP,A) 特開 昭63−225409(JP,A) 特開 平1−97312(JP,A) 特開 昭63−232210(JP,A) 日本金属学会会報 26〔10〕(1987) P.981

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】超電導特性を有する複合酸化物よりなるセ
    ラミック原料粉末を、Ag、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W
    の中から選択される金属またはこれらの金属をベースと
    した合金によって作られたパイプ中に充填する工程、セ
    ラミック原料粉末を充填した状態で上記金属製パイプの
    断面積を縮小させる塑性変形加工を実施する工程、およ
    び、上記金属製パイプを加熱処理することによって上記
    金属製パイプ中に充填された上記セラミック原料粉末を
    焼結する工程を含むことを特徴とする超電導長尺体の製
    造方法。
JP63025108A 1987-02-05 1988-02-05 複合酸化物セラミック系超電導線の製造方法 Expired - Lifetime JP2877149B2 (ja)

Applications Claiming Priority (22)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2522487 1987-02-05
JP6699287 1987-03-20
JP7794187 1987-03-31
JP9042687 1987-04-13
JP9397387 1987-04-16
JP9397487 1987-04-16
JP9588287 1987-04-18
JP10290187 1987-04-24
JP12173487 1987-05-19
JP12173387 1987-05-19
JP62-93974 1987-08-24
JP62-121733 1987-08-24
JP62-77941 1987-08-24
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