JP2824049B2 - チオカルバマート系化合物のハプテン化合物、抗体および測定方法 - Google Patents

チオカルバマート系化合物のハプテン化合物、抗体および測定方法

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チオカルバマート
系化合物のハプテン化合物、抗原、抗体およびそのフラ
グメントに関する。
【0002】本発明は、さらに前記抗原、抗体およびそ
のフラグメントを用いた免疫学的測定方法に関する。
【0003】
【従来の技術】チオカルバマート系化合物は、以下の式
(2):
【化3】 (式中、Xは、無置換であるか、またはハロゲン原子で
あり;R1およびR2は、枝分かれしていてもよい炭素数
1−5のアルキル基であり;そしてnは1−10の整数
である)を有する、一連の化合物である。
【0004】チオカルバマート系化合物の代表的なもの
として、以下の式(3):
【化4】 で表されるS−4−クロロベンジル ジエチルチオカル
バマート(以下、「チオベンカルブ」という)がある。
チオベンカルブは商品名をサターンといい、茎葉兼土壌
処理の除草剤で、イネに対する薬害が少なく、単独の乳
剤、ペンディメタリン・リニュロンとの混合乳剤などが
知られている。また、プロメトリン剤との混合剤などは
畑作にも使用されている。主に幼芽部から吸収され、根
より幼芽部の伸長を強く阻害する。本剤の作用機構は、
オーキシン活性阻害とタンパク質合成阻害と考えられて
いる(農薬ハンドブック 1994年版 日本植物防疫
協会、「最新農薬の残留分析法」 農薬残留分析法研究
班編集 中央法規出版)。
【0005】近年、土壌、水、大気等の環境中での残留
農薬や、最近特に増加してきた輸入農産物のポストハー
ベスト農薬等の残留に大きな社会的関心が寄せられてい
る。例えば、前出のチオベンカルブについては、食品衛
生法に基づき残留基準値が、例えば米、豆類、野菜で
0.2ppm、穀類で0.1ppm、いも類で0.05
ppmと定められている(最新農薬の残留分析法 前
出)。環境や食品に関する安全確保のためには、これら
に含有されるチオカルバマート系化合物の量を迅速、か
つ正確に測定することが必要である。
【0006】従来チオカルバマート系化合物は、穀類、
豆類、いも類、野菜等の試料から抽出し、精製した後、
ガスクロマトグラフィー(GC)により分析されてき
た。例えば、チオベンカルブの場合、試料をアセトンで
抽出して、ヘキサンに転溶した後、フロリジルカラムク
ロマトグラフィーで溶出し、さらにGCで分析する方法
が採用されている(最新農薬の残留分析法 前出)。こ
れらの方法は、試料の調製が煩雑で多大の手間と時間を
必要とし、分析に熟練を有すること、並びに、測定装置
や設備等に高額の費用を必要とする等の問題点がある。
チオカルバマート系化合物の測定は、特に輸入農産物等
の残留農薬の分析においては、短時間で膨大な数の試料
の分析結果を出す必要があり、精度面だけでなく、簡便
性、迅速性および経済性をも具備したチオカルバマート
系化合物の新規測定方法が要求されてきている。
【0007】免疫学的測定方法は、抗体が抗原を特異的
に認識する、抗原抗体反応に基づいて抗原の検出を行う
方法であり、その優れた精度、簡便性、迅速性、経済性
から近年注目を集めてきている。免疫学的測定方法にお
いては検出方法として非常に多種の標識、例えば、酵
素、放射性トレーサー、化学発光あるいは蛍光物質、金
属原子、ゾル、ラテックスおよびバクテリオファージが
適用されてきた。
【0008】免疫学的測定方法の中でも、酵素を使用す
る酵素免疫測定法(EIA)は特に優れたものとして広
く使用されるに至っている。酵素免疫測定法についての
優れた論評が、Tijssen P,“Practice and theory of e
nzyme immunoassays" in Laboratory techniques in bi
ochemistry and molecular biology, Elsevier Amsterd
am New York, Oxford ISBN 0-7204-4200-1 (1990) に記
載されている。
【0009】一般に、分子量が大きな分子については、
それ以上修飾することなく動物に接種することにより、
適当な免疫反応を惹起し、抗原を認識する抗体を産生さ
せることができる。しかし、チオカルバマート系化合物
のような低分子化合物は通常動物に接種したとき免疫応
答を引き出すことができない。これらの分子は免疫原性
を有する高分子化合物に結合させることによって初めて
一団のエピトープとして行動し、T細胞受容体の存在下
で免疫応答を起こし、その結果、一群のBリンパ球によ
り抗体が産生される。このように高分子化合物と結合さ
せて初めて免疫原性を生じる分子を総称して「ハプテ
ン」という。
【0010】しかし、低分子化合物を高分子化合物と結
合させたものを抗原としても、得られた抗体は望む分子
を認識しないか、あるいはごく低い親和性しかもたない
場合がしばしばある。そのため、一般に低分子化合物そ
のものではなく、結合に利用できる官能基と共にスペー
サーアーム(結合手)を導入したものをハプテンとして
使用する必要がある。しかしその場合に、結合手/官能
基の配置、結合手の大きさ等の全ての問題を考慮して導
入が適切に行われたものを使用しないと、好ましい抗体
は得られない。適切な導入は個々の分子に応じて工夫し
なけらばならない。
【0011】チオカルバマート系化合物についてはその
必要性が非常に高かったにもかかわらず、適切な抗体は
もとより、抗体を作製するためのハプテンも本発明前に
は得られていなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、チオカルバ
マート系化合物に特異的に反応する新規な抗体を作製す
るための抗原を構成するハプテン化合物となる、チオカ
ルバマート系化合物誘導体を提供することを目的とす
る。
【0013】本発明は、また、前記チオカルバマート系
誘導体と高分子化合物との結合体を提供することを目的
とする。当該結合体はチオカルバマート系化合物に特異
的に反応する抗体を作製するための抗原となる。
【0014】本発明は、さらに、チオカルバマート系化
合物に反応する新規な抗体もしくはそのフラグメント、
およびその作製方法を提供することを目的とする。
【0015】本発明はその一態様において、チオベンカ
ルブに反応性を有するモノクローナル抗体を提供する。
前記抗体は、さらに20%以下のメタノール存在下にお
いてチオベンカルブを濃度依存的に認識できるという特
徴を有する。
【0016】本発明は、さらにまた、前記抗体およびそ
のフラグメントを産生するハイブリドーマを提供するこ
とを目的とする。
【0017】本発明は、さらに、前記抗体を使用するこ
とを含む、チオカルバマート系化合物の免疫学的測定方
法を提供することを目的とする。
【0018】尚、本明細書において抗体の「フラグメン
ト」とは、抗原と結合可能な抗体の一部分、例えばFab
断片等を意味する。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
を重ねた結果、チオカルバマート系化合物にスペーサー
アーム及びカルボキシル基等の官能基を導入したチオカ
ルバマート系化合物誘導体をハプテンとして使用するこ
とにより、チオカルバマート系化合物に特異的な抗体を
得ることに成功し、本発明の完成に至った。
【0020】本発明の対象となるチオカルバマート系化
合物は、以下の一般式(2):
【化5】 (式中、Xは、無置換であるか、またはハロゲン原子
(本明細書中、ハロゲン原子はF、Cl、BrまたはI
を意味する)であり;R1およびR2は、枝分かれしてい
てもよい炭素数1−5のアルキル基であり;そしてnは
1−10の整数である)で表される構造を有する化合物
である。
【0021】抗体作製のためのハプテンとして使用され
るチオカルバマート系化合物誘導体は、前記チオカルバ
マート系化合物の
【化6】 の部分を
【化7】 (式中、nは1−10の整数、好ましくは3である)に
変化させる。即ち、本発明のチオカルバマート系化合物
誘導体は、以下の一般式(1)
【化8】 (式中、X、R1およびnは式(2)で定義した通りで
ある)で表される構造を有する化合物である。
【0022】限定するわけではないが、好ましい化合物
は、式(1)または式(2)において、Xが無置換であ
るか、あるいは4−クロロおよび2−クロロからなる群
から選択される置換基で置換されており、そしてR1
よびR2がメチル基、エチル基、プロピル基、1−メチ
ルプロピル基および1,2−ジメチルプロピル基からな
る群から選択される化合物である。特に好ましい化合物
は、Xが4−クロロであり、R1およびR2がエチル基で
表される化合物である。
【0023】本発明のチオカルバマート系化合物にスペ
ーサーアームとカルボキシル基を結合させたチオカルバ
マート系化合物誘導体を、ハプテンとして適当な高分子
化合物と結合させたものを抗原として用いることによっ
て、チオカルバマート系化合物に特異的な抗体を得るこ
とができる。
【0024】本発明は、前記ハプテン化合物、ハプテン
化合物と高分子化合物との結合体、チオカルバマート系
化合物に反応する抗体およびその作製方法、ならびに該
ハプテン化合物または該抗体を用いるチオカルバマート
系化合物の免疫学的測定方法に関する。
【0025】チオカルバマート系化合物誘導体の作製 一般式(1)で表されるチオカルバマート系化合物誘導
体は、公知の方法に従って製造することができる。例え
ば以下に記載するA,Bのような方法がある。
【0026】 一般式(X1)
【化9】 (式中、R1およびnは式(1)で定義した通りであ
る。)で表されるアミノ酸誘導体またはその塩、硫化カ
ルボニル(COS)ガスおよび水酸化ナトリウム、水酸
化カリウムなどの苛性アルカリ類を、水、アセトン、ア
セトニトリルなどの極性溶媒およびこれらの混合溶媒中
で、−10℃から溶媒の沸点の温度、好ましくは0℃か
ら室温で、5分−10時間、好ましくは30分−3時間
反応させて一般式(X2)
【化10】 (式中、Mはアルカリ金属を表し、R1、nは式(1)
で定義した通りである。)で表されるカルバミン酸塩を
合成する。
【0027】更にこのカルバミン酸塩を単離することな
しに一般式(X3)
【化11】 (式中、Yはハロゲン原子を表し、Xは式(1)で定義
した通りである。)で表されるハロゲン化ベンジル誘導
体と、−10℃から溶媒の沸点の温度、好ましくは10
℃から60℃で、5分−10時間、好ましくは30分−
3時間反応させて一般式(1)で表されるチオカルバマ
ート系化合物誘導体を製造することができる。
【0028】なお一般式(X1)で表されるアミノ酸誘
導体は、一般式(X4)
【化12】 (式中、R1、nは式(1)で定義した通りである。)
で表されるN−アルキル環状アミド類を、溶媒の存在下
または非存在下に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの強酸
類で加水分解することにより得ることができる。反応温
度は室温から反応系の沸点の温度、好ましくは50℃か
ら150℃で、5分−10時間、好ましくは30分−3
時間撹拌反応させる。
【0029】一般式(X4)の化合物は、試薬として市
販されているものを入手できる。あるいは、一般式(X
5)
【化13】 (式中、nは式(1)で定義した通りである。)で表さ
れる環状アミド化合物を、一般式(X6)
【化14】 (式中、R1は式(1)で、Yは式(X3)で定義した
通りである。)で表されるハロゲン化アルキル誘導体
と、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、
クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、テトラ
ヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケ
トン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド等の不活性溶媒中、水素化
ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラ
ート等の塩基またはKF−アルミナ複合体(Chemistry
Letters,1981,p.1143-1146)の存在下、0℃から溶媒
の沸点の温度、好ましくは室温から50℃で、1−48
時間、好ましくは 2−8時間撹拌反応させることによ
り得ることもできる。
【0030】 一般式(X7)
【化15】 (式中、Xは式(1)で定義した通りである。)で表さ
れる塩化チオ炭酸エステル誘導体を,一般式(X1)で
表されるアミノ酸誘導体またはその塩と、ベンゼン、ト
ルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四
塩化炭素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ
オキサン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニト
リル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルス
ルホキシド等の不活性溶媒中、炭酸水素ナトリウム、炭
酸水素カリウム等の無機塩基、アトリエチルアミン、ピ
リジン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチ
ルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の有機塩基の
存在下、または非存在下に、−10℃から溶媒の沸点の
温度、好ましくは室温から50℃で、5分−8時間、好
ましくは30分−3時間撹拌反応させることにより一般
式(1)のチオカルバマート系化合物誘導体を得ること
ができる。
【0031】なお一般式(X7)で表される塩化チオ炭
酸エステル誘導体は、相当するベンジルメルカプタン類
とホスゲンを、上述と同様の溶媒中、同様の塩基を使用
し、−30℃から溶媒の沸点の温度、好ましくはマイナ
ス10から50℃で、5分−10時間、好ましくは30
分−3時間撹拌反応させることにより得ることができ
る。
【0032】以上の製造法によって得られた化合物を、
必要に応じシリカゲルクロマトグラフィーまたは再結晶
操作等を行うことにより、さらに高純度の精製品とする
ことができる。
【0033】以下、本発明の抗原、抗体の作製、および
免疫学的測定方法について説明する。尚、これらの調製
は公知の方法、例えば続生化学実験講座、免疫生化学研
究法(日本生化学会編)等に記載の方法に従って行うこ
とができる。
【0034】チオカルバマート系化合物誘導体と高分子
化合物との結合体の作製 上述のように合成されたチオカルバマート系化合物誘導
体を適当な高分子化合物に結合させてから免疫用抗原と
して使用する。
【0035】好ましい高分子化合物の例としては、スカ
シガイのヘモシアニン(KLH)、卵白アルブミン、ウ
シ血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミンな
どがある。
【0036】チオカルバマート系化合物誘導体と高分子
化合物との結合は、例えば、活性化エステル法(A.E. K
ARU et al.:J. Agric. Food Chem. 42 301-309 (199
4))、または混合酸無水物法(B.F.Erlanger et al.:J.
Biol.Chem. 234 1090-1094 (1954))等の公知の方法に
よって行うことができる。
【0037】活性化エステル法は、一般に以下のように
行うことができる。まず、ハプテン化合物を有機溶媒に
溶解し、カップリング剤の存在下にてN−ヒドロキシコ
ハク酸イミドと反応させ、N−ヒドロキシコハク酸イミ
ドエステルを生成する。
【0038】カップリング剤としては、縮合反応に慣用
されている通常のカップリング剤を使用でき、例えば、
ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダ
ゾール、水溶性カルボジイミド等が含まれる。有機溶媒
としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(D
MF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサ
ン等が使用できる。反応に使用するハプテン化合物とN
−ヒドロキシコハク酸イミドのモル比は好ましくは1:
10−10:1、より好ましくは、1:1−1:10、
最も好ましくは1:1である。反応温度は、0−100
℃、好ましくは5−50℃、より好ましくは22−27
℃で、反応時間は5分−24時間、好ましくは30分−
6時間、より好ましくは1−2時間である。反応温度は
各々の融点以上沸点以下の温度で行うことができる。
【0039】カップリング反応後反応液を遠心し、上清
液を高分子化合物を溶解した溶液に加え反応させると、
例えば高分子化合物が遊離のアミノ基を有する場合、当
該アミノ基とハプテン化合物のカルボキシル基の間に酸
アミド結合が生成される。反応温度は、0−60℃、好
ましくは5−40℃、より好ましくは22−27℃で、
反応時間は5分−24時間、好ましくは1−16時間、
より好ましくは1−2時間である。反応物を、透析、脱
塩カラム等によって精製して、チオカルバマート系化合
物誘導体と高分子化合物との結合体を得ることができ
る。
【0040】一方、混合酸無水物法において用いられる
混合酸無水物は、カルボン酸とハロ蟻酸エステルとの反
応により得られ、これを高分子化合物と反応させること
により目的とするハプテン−高分子化合物結合体が製造
される。この反応は塩基性化合物の存在下に行われる。
塩基性化合物としては例えば、トリエチルアミン、トリ
メチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、
N−メチルモルホリン、DBN、DBU、DABCO等
の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素
カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基等が挙げら
れる。該反応は、通常マイナス20℃−100℃、好ま
しくは0℃−50℃において行われ、反応時間は5分−
10時間、好ましくは5分−2時間である。得られた混
合酸無水物と高分子化合物との反応は、通常マイナス2
0℃−150℃、好ましくは0℃−100℃において行
われ、反応時間は5分−10時間、好ましくは5分−5
時間である。混合酸無水物法は一般に溶媒中で行われ
る。溶媒としては、混合酸無水物法に慣用されているい
ずれの溶媒も使用可能であり、具体的にはジクロロメタ
ン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化
水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化
水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロ
フラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸メチ
ル、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホル
ムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸
トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
混合酸無水物法において使用されるハロ蟻酸エステルと
しては、例えばクロロ蟻酸メチル、ブロモ蟻酸メチル、
クロロ蟻酸エチル、ブロモ蟻酸エチル、クロロ蟻酸イソ
ブチル等が挙げられる。当該方法におけるハプテンとハ
ロ蟻酸エステルと高分子化合物の使用割合は、広い範囲
から適宜選択され得る。
【0041】また、上記と同様の方法により、酵素をチ
オカルバマート系化合物誘導体に結合させたものを、酵
素免疫測定法において使用することができる。
【0042】ポリクローナル抗体の作製 チオカルバマート系化合物誘導体と高分子化合物との結
合体を使用して、慣用化された方法により本発明のポリ
クローナル抗体を作製することができる。例えば、チオ
カルバマート系化合物誘導体−KLH結合体をリン酸緩
衝液(以下、「PBS」という)に溶解し、フロイント
完全アジュバントまたは不完全アジュバント、あるいは
ミョウバン等の補助剤と混合したものを、免疫用抗原と
して動物に免疫することによって行う。免疫される動物
としては当該分野で常用されるものをいずれも使用でき
るが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等
を挙げることができる。
【0043】免疫の際の投与法は、皮下注射、腹腔内注
射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射のいずれでもよ
いが、皮下注射または腹腔内注射が好ましい。免疫は1
回または適当な間隔で、好ましくは1週間ないし5週間
の間隔で複数回行うことができる。
【0044】免疫した動物から血液を採取し、そこから
分離した血清を用い、チオカルバマート系化合物と反応
するポリクローナル抗体の存在を評価することができ
る。
【0045】モノクローナル抗体の作製 チオカルバマート系化合物誘導体と高分子化合物との結
合体を使用して、公知の方法により本発明のモノクロー
ナル抗体を作製することができる。
【0046】モノクローナル抗体の作製にあたっては、
少なくとも下記のような作業工程が必要である。
【0047】(a)免疫用抗原として使用するチオカル
バマート系化合物誘導体と高分子化合物との結合体の作
製 (b)動物への免疫 (c)血液の採取、アッセイ、及び抗体産生細胞の調製 (d)ミエローマ細胞の調製 (e)抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合とハ
イブリドーマの選択的培養 (f)目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスク
リーニングと細胞クローニング (g)ハイブリドーマの培養または動物へのハイブリド
ーマの移植によるモノクローナル抗体の調製 (h)調製されたモノクローナル抗体の反応性の測定等 モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製す
るための常法は、例えば、ハイブリドーマ テクニック
ス(Hybridoma Techniques),コールド スプリング
ハーバーラボラトリーズ(Cold Spring Harbor Laborat
ory),1980年版)、細胞組織化学(山下修二ら、
日本組織細胞化学会編;学際企画、1986年)に記載
されている。
【0048】以下、上述の本発明のチオカルバマート系
化合物に対するモノクローナル抗体の作製方法を説明す
るが、これに制限されないことは当業者によって明らか
であろう。
【0049】(a)−(c)の工程は、ポリクローナル
抗体に関して記述した方法とほぼ同様の方法によって行
うことができる。
【0050】(c)の工程における抗体産生細胞はリン
パ球であり、これは一般には脾臓、胸腺、リンパ節、末
梢血液またはこれらの組み合わせから得ることができる
が脾細胞が最も一般的に用いられる。従って、最終免疫
後、抗体産生が確認されたマウスより抗体産生細胞が存
在する部位、例えば脾臓を摘出し、脾細胞を調製する。
【0051】(d)の工程に用いることができるミエロ
ーマ細胞としては、例えば、Balb/cマウス由来骨
髄腫細胞株のP3/X63−Ag8(X63)(Natur
e,25 6, 495-497 (1975))、P3/X63−Ag8.U
1(P3U1)(Current Topics.in Microbiology and
Immunology, 81 1-7 (1987))、P3/NSI−1−A
g4−1(NS−1)(Eur.J.Immunol., 6, 511-519
(1976))、Sp2/O−Ag14(Sp2/O)(Natu
re 276, 269-270 (1978))、FO(J. Immuno.Meth., 3
5, 1-21 (1980))、MPC−11、X63.653、S
194等の骨髄腫株化細胞、あるいはラット由来の21
0.RCY3.Ag1.2.3.(Y3)(Nature 277, 1
31-133, (1979))等を使用できる。
【0052】上述した株化細胞をウシ胎児血清を含むダ
ルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはイスコフ
改変ダルベッコ培地(IMDM)で継代培養し、融合当
日に1×106以上の細胞数を確保する。
【0053】(e)の工程の細胞融合は公知の方法、例
えばミルシュタイン(Milstein)らの方法(Methods in
Enzymology, 73, 3 (1981))等に準じて行うことがで
きる。現在最も一般的に行われているのは、融合作業も
簡単なポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法
である。PEG法については、例えば、細胞組織化学、
山下修二ら(上述)に記載されている。その他の融合方
法としては、電気処理(電気融合)による方法等を適宜
採用することもできる(大河内悦子ら、実験医学 5.
1315−19、1987)。また、細胞の使用比率も
公知の方法と同様でよく、例えばミエローマ細胞に対し
て脾細胞を3−10倍程度用いればよい。脾細胞とミエ
ローマ細胞とが融合し、抗体産生能および増殖能を獲得
したハイブリドーマ群の選択は、例えば、ミエローマ細
胞株としてヒポキサンチングアニンホスホリボシルトラ
ンスフェラーゼ欠損株を使用した場合、例えば上述のD
MEMやIMDMにヒポキサンチン・アミノプテリン・
チミジンを添加して調製したHAT培地の使用により行
うことができる。
【0054】(f)の工程では、選択されたハイブリド
ーマ群を含む培養上清の一部をとり、例えば後述するE
LISA法により、チオカルバマート系化合物に対する
抗体活性を測定する。さらに、測定によりチオカルバマ
ート系化合物に反応する抗体を産生することが判明した
ハイブリドーマの細胞クローニングを行う。この細胞ク
ローニング法としては、限界希釈により1ウェルに1個
のハイブリドーマが含まれるように希釈する方法「限界
希釈法」;軟寒天培地上に撒きコロニーをとる方法;マ
イクロマニピュレーターによって1個の細胞を取り出す
方法;セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソ
ータークローン」法等が挙げられる。限界希釈法が簡単
でありよく用いられる。
【0055】抗体価の認められたウェルについて、例え
ば限界希釈法により細胞クローニングを1−4回繰り返
して安定して抗体価の得られたものを、抗チオカルバマ
ート系化合物モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株
として選択する。
【0056】ハイブリドーマを培養する培地としては、
例えば、ウシ胎児血清を含むDMEMまたはIMDM等
が用いられる。ハイブリドーマの培養は、例えば二酸化
炭素濃度5−7%程度および37℃(100%湿度中の
恒温器中)で培養するのが好ましい。
【0057】(g)の工程で抗体を調製するための大量
培養は、フォローファイバー型の培養装置等によって行
われる。または、同系統のマウス(例えば、上述のBa
lb/c)あるいはNu/Nuマウスの腹腔内でハイブ
リドーマを増殖させ、腹水液より抗体を調製することも
可能である。
【0058】これらにより得られた培養上清液あるいは
腹水液を抗チオカルバマート系化合物モノクローナル抗
体として使用することできるが、さらに透析、硫酸アン
モニウムによる塩析、ゲル濾過、凍結乾燥等を行い、抗
体画分を集め精製することにより抗チオカルバマート系
化合物モノクローナル抗体を得ることができる。さらに
精製が必要な場合には、イオン交換カラムクロマトグラ
フィー、アフィニティークロマトグラフィー、オープン
カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)などの慣用されている方法を使用して抗
体画分を集める操作を1回、または複数回行うことによ
り実施できる。
【0059】以上のようにして得られた抗チオカルバマ
ート系化合物モノクローナル抗体は、例えば後述するE
LISA法などの公知の方法を使用して、サブクラス、
抗体価等を決定することができる。
【0060】抗体によるチオカルバマート系化合物の測
本発明で使用する抗体によるチオカルバマート系化合物
の測定方法としては、放射性同位元素免疫測定方法(R
IA法)、ELISA法(Engvall,E.,Meth. Ensymol.,
70, 419-439 (1980))、蛍光抗体法、プラーク法、ス
ポット法、血球凝集反応、オクタロニー(Ouchte
rlony)等の一般に抗原の検出に使用されている種
々の方法(「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗
体」、株式会社R&Dプラニング発行、第30頁−第5
3頁、昭和57年3月5日)が挙げられる。感度、簡便
性等の観点からELISA法が汎用されている。
【0061】チオカルバマート系化合物の測定は各種E
LISA法のうち、例えば間接競合阻害ELISA法に
より、以下のような手順により行うことができる。
(a)まず、抗原であるチオカルバマート系化合物誘導
体と高分子化合物との結合体を担体に固相化する。
(b)抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係
な、例えばタンパク質によりブロッキングする。(c)
これに各種濃度のチオカルバマート系化合物を含む試料
および抗体を加え、該抗体を前記固相化抗原および遊離
チオカルバマート系化合物に競合的に反応させて、固相
化抗原−抗体複合体および遊離チオカルバマート系化合
物−抗体複合体を生成させる。(d)固相化抗原−抗体
複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線
から試料中の遊離チオカルバマート系化合物の量を決定
することができる。
【0062】(a)工程において、抗原を固相化する担
体としては、特別な制限はなく、ELISA法において
常用されるものをいずれも使用することができる。例え
ば、ポリスチレン製の96ウェルのマイクロタイタープ
レートが挙げられる。
【0063】抗原を担体に固相化させるには、例えば、
抗原を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーション
すればよい。緩衝液としては公知のものが使用でき、例
えば、ダルベッコのリン酸緩衝液を挙げることができ
る。緩衝液中の抗原の濃度は広い範囲から選択できる
が、通常0.01−100μg/ml程度、好ましくは
0.05−10μg/mlが適している。また、担体と
して96ウェルのマイクロタイタープレートを使用する
場合には、300μl/ウェル以下で50−150μl
/ウェル程度が望ましい。更に、インキュベーションの
条件にも特に制限はないが、通常4℃程度で一晩インキ
ュベーションが適している。
【0064】(b)工程のブロッキングは、チオカルバ
マート系化合物誘導体と高分子化合物との結合体を固相
化した担体において、チオカルバマート系化合物誘導体
部分以外に後で添加する抗体が吸着され得る部分が存在
する場合があり、もっぱらそれを防ぐ目的で行われる。
ブロッキング剤として、例えば、ウシ血清アルブミン
(BSA)やスキムミルク溶液を使用できる。あるい
は、ブロックエース(「Block Ace」、雪印乳
業社製、コードNo.UK−25B)等のブロッキング
剤として市販されているものを使用することもできる。
具体的には、限定されるわけではないが、例えば抗原を
固相化した部分に、ブロッキング剤を含む緩衝液[例え
ば、1%BSAと60mM NaClを添加した85m
M ホウ酸緩衝液(pH8.0)]を適量加え、約4℃
で、一晩インキュベーションした後、緩衝液で洗浄する
ことにより行われる。洗浄液としては特に制限はない
が、例えば、60mM NaClを添加したホウ酸緩衝
液が適している。
【0065】次いで(c)工程において、チオカルバマ
ート系化合物を含む試料と抗体を固相化抗原と接触さ
せ、抗体を固相化抗原および遊離チオカルバマート系化
合物と反応させることにより、固相化抗原−抗体複合体
および遊離チオカルバマート系化合物−抗体複合体が生
成する。
【0066】この際、抗体としては、第一抗体として本
願発明のチオカルバマート系化合物に対する抗体を加
え、更に第二抗体として標識酵素を結合した第一抗体に
対する抗体を順次加えて反応させる。
【0067】第一抗体は緩衝液に溶解して添加する。限
定されるわけではないが、反応は、25℃程度で約1時
間行えばよい。反応終了後、緩衝液で担体を洗浄し、未
反応の第一抗体を除去する。洗浄液としては、例えば、
60mM NaClを添加したホウ酸緩衝液が好まし
い。
【0068】次いで第二抗体を添加する。例えば第一抗
体としてマウスモノクローナル抗体を用いる場合、酵素
(例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファタ
ーゼ等)を結合した抗マウス抗体−ヤギ抗体を用いるの
が適当である。担体に結合した第一抗体に最終吸光度が
4以下で、好ましくは0.5−3.0となるように希釈
した第二抗体を反応させるのが望ましい。希釈には緩衝
液を用いる。限定されるわけではないが、反応は約25
℃で約1時間行い、反応後、緩衝液で洗浄する。以上の
反応により、第二抗体が第一抗体に結合する。また、標
識した第一抗体を用いてもよく、その場合、第二抗体は
不要である。
【0069】次いで(d)工程において担体に結合した
第二抗体の酵素と反応する発色基質溶液を加え、吸光度
を測定することによって検量線からチオカルバマート系
化合物の量を算出することができる。
【0070】第二抗体に結合する酵素としてペルオキシ
ダーゼを使用する場合には、例えば発色基質として過酸
化水素、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジンを使
用する。限定されるわけではないが、発色基質溶液を加
え室温で約10分間反応させた後、1Nの硫酸を加える
ことにより酵素反応を停止させる。3,3',5,5'−テ
トラメチルベンジジンを使用する場合、450nmの吸
光度を測定する。一方、第二抗体に結合する酵素として
アルカリホスファターゼを使用する場合には、例えばp
−ニトロフェニルリン酸を基質として発色させ、2Nの
NaOHを加えて酵素反応を止め、415nmでの吸光
度を測定する方法が適している。
【0071】上述した間接競合阻害ELISA法によれ
ば、本発明のモノクローナル抗体TBC5−3はチオベ
ンカルブの量を1−30ng/ml、好ましくは2−1
5ng/ml、TBC7−2は0.2−40ng/m
l、好ましくは0.2−8ng/ml、TBC9−2は
1−60ng/ml、好ましくは2−30ng/ml、
TBC14−7は0.2−30ng/ml、好ましくは
0.5−15ng/mlの範囲で測定できる(実施例
5、図1)。
【0072】あるいは、チオカルバマート系化合物の測
定は、例えば以下に述べるような本発明のモノクローナ
ル抗体を用いた直接競合阻害ELISA法によって行う
こともできる。
【0073】(a)まず、本発明のモノクローナル抗体
を担体に固相化する。
【0074】(b)抗体が固相化されていない担体表面
を抗原と無関係な、例えばタンパク質によりブロッキン
グする。
【0075】(c)上記工程とは別に、各種濃度のチオ
カルバマート系化合物を含む試料に、チオカルバマート
系化合物誘導体と酵素を結合させた酵素結合ハプテンを
加えた混合物を調製する。
【0076】(d)上記混合物を上記抗体固相化担体と
反応させる。
【0077】(e)固相化抗体−酵素結合ハプテン複合
体の量を測定することにより、あらかじめ作成した検量
線から試料中のチオカルバマート系化合物の量を決定す
る。
【0078】(a)工程においてモノクローナル抗体を
固相化する担体としては、特別な制限はなくELISA
法において常用されるものを用いることができ、例えば
96ウェルのマイクロタイタープレートが挙げられる。
モノクローナル抗体の固相化は、例えばモノクローナル
抗体を含む緩衝液を担体上にのせ、インキュベートする
ことによって行える。緩衝液の組成・濃度は前述の間接
競合阻害ELISA法と同様のものを採用できる。
【0079】(b)工程のブロッキングは、抗体を固相
化した担体において、後に添加する試料中のチオカルバ
マート系化合物および酵素結合ハプテンが抗原抗体反応
とは無関係に吸着される部分が存在する場合があるの
で、それを防ぐ目的で行う。ブロッキング剤およびその
方法は、前述の間接競合阻害ELISA法と同様のもの
を採用できる。
【0080】(c)工程において用いる酵素結合ハプテ
ンの調製は、チオカルバマート系化合物誘導体を酵素に
結合する方法であれば、特に制限なくいかなる方法で行
ってもよい。例えば、前述した活性化エステル法を採用
することができる。調製した酵素結合ハプテンは、チオ
カルバマート系化合物を含む試料と混合する。
【0081】(d)工程において当該混合物を抗体固相
化担体に接触させ、混合物中のチオカルバマート系化合
物と酵素結合ハプテンとの競合阻害反応により、これら
と固相化抗体との複合体が生成する。チオカルバマート
系化合物を含む試料は適当な緩衝液で希釈して使用す
る。限定されるわけではないが、反応は例えば約25℃
でおよそ1時間行う。反応終了後、緩衝液で担体を洗浄
し、未反応の酵素結合ハプテンを除去する。洗浄液は、
例えば60mM NaClを添加した85mMホウ酸緩
衝液(pH8.0)を採用することができる。
【0082】さらに、(e)工程において酵素結合ハプ
テンの酵素に反応する発色基質溶液を前述の間接競合阻
害ELISA法と同様に加え、吸光度を測定することに
より検量線からチオカルバマート系化合物の量を算出す
ることができる。
【0083】本発明のモノクローナル抗体の一つ、TB
C7−2は、直接競合阻害ELISA法において4−2
50ng/ml,好ましくは5−200ng/mlの範
囲でチオベンカルブを測定できる(実施例8、図2)。
【0084】本発明の抗体のメタノール耐性 本発明の一態様であるモノクローナル抗体TBC7−2
はさらに、記述した直接競合阻害ELISA法によれば
0−20%、好ましくは10−20%の濃度のメタノー
ル存在下においてチオベンカルブを濃度依存的に認識で
きる(実施例9、図3)。チオカルバマート系化合物は
有機溶媒に易溶性であり、一般に分析はメタノール等の
有機溶媒中で行われることを考慮すると、本発明のモノ
クローナル抗体のこのような特性は非常に有効である。
【0085】本発明の抗体の交差反応性 上述した直接競合阻害ELISA法または間接競合阻害
ELISA法により、本発明のモノクローナル抗体の交
差反応性を調べることができる。TBC7−2は、例え
ば直接競合阻害ELISA法において、チオベンカルブ
代謝分解物−3および−6がチオベンカルブの約15%
の交差反応性を示すほかは、他の類縁化合物は1%以下
しか交差反応せず、チオベンカルブと特異性が高い(実
施例10、表2)。
【0086】以下、実施例によって本発明を具体的に説
明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するため
のものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容
易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは
本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
【実施例】実施例1 チオベンカルブ誘導体の合成
【化16】 1−エチル−2−ピロリドン(2)の合成 フッ化カリウム14.5g(250mmol)を水20
0mlに溶解し、この溶液にアルミナ(活性アルミナ9
0、中性、活性度1)22gを加え、湯温70℃で水を
減圧下に留去した後、残渣の白色粉末を75℃で18時
間真空乾燥した。このようにして得られたKF−アルミ
ナと2−ピロリドン(1)8.5g(100mmol)
およびヨウ化エチル23.4g(150mmol)をア
セトニトリル150mlに懸濁し、室温下で8時間撹拌
した後、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣に
アセトン30mlを加え、さらに濾過し、濾液を濃縮し
た。残渣を減圧蒸留に付し、7.3g(収率66%)の
1−エチル−2−ピロリドン(2)を得た。
【0088】沸点:102−105℃/23mmHg4−エチルアミノブタン酸(3)の合成 1−エチル−2−ピロリドン(2)3.7g(33mm
ol)に濃塩酸4.7mlを加え、2時間撹拌環流させ
た。反応混合物を濃縮し、過剰の濃塩酸を留去して、
4.0g(収率72%)の4−エチルアミノブタン酸の
塩酸塩(3)を固体として得た。潮解性が高く、融点を
測定できなかった。
【0089】4−[N−(4−クロロベンジルチオカル
ボニル)−N−エチルアミノ]ブタン酸(4)(チオベ
ンカルブ誘導体)の合成 4−エチルアミノブタン酸の塩酸塩(3)3.4g(2
0mmol)および水酸化ナトリウム2.4g(60m
mol)を水20mlに溶解した。この溶液に氷水冷却
下5−10℃で、50%硫酸20mlに室温下でチオシ
アン酸アンモニウム2.3g(30mmol)の飽和水
溶液を徐々に滴下することにより得られたCOSガスを
30分間かけて吹き込んだ。次にこの溶液に4−クロロ
ベンジルクロリド3.2g(20mmol)の20ml
アセトン溶液を室温下に加え、50℃で1時間撹拌し
た。反応混合物からアセトンを減圧下に留去し、酢酸エ
チルで抽出した。酢酸エチル層を水洗い後、硫酸マグネ
シウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロ
マトグラフィ一(n−へキサン:酢酸エチル=1:1)
で精製し、2.7g(収率42%)の4−[N−(4−
クロロベンジルチオカルボニル)−N−エチルアミノ]
ブタン酸(4)を無色透明の液体として得た。
【0090】 1H−NMR(DMSO−D6,ppm) 1.08(3H,br) 1.73(2H,br) 2.21(2H,br) 3.32(4H,br) 4.09(2H,s) 7.35(4H,s) 12.12(IH,br) IR(neat,cm-1) 3450−2600、1700、1640実施例2 活性化エステル法によるチオベンカルブ誘導
体とキャリアータンパク質との結合 実施例1で得られたチオベンカルブ誘導体(3.5μm
ol)をジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と略
す)50μlに溶解した。次にこの溶液にN−ヒドロキ
シコハク酸イミド(5μmol)をDMSO10μlに
溶解したものを添加した後、さらに1−エチル−3−
(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
(4μmol)をDMS020μ1に溶解し添加した。
室温にて1.5時間反応させた後、この反応溶液に85
mMホウ酸緩衝液(pH8.0)500μ1に溶解した
牛血清アルブミン(BSA)あるいはスカシガイのへモ
シアニン(KLH)各々10mgを、さらに添加し、再
び室温にて1.5時間反応させた。反応終了後ダルベコ
のリン酸緩衝液(以下、「PBS(−)」と略す)に対
して透析し、チオベンカルブ誘導体とKLHとの結合
体、チオベンカルブ誘導体とBSAとの結合体を各々調
製した。
【0091】実施例3 チオベンカルブ誘導体とKLH
との結合体の免疫 免疫には、Balb/cマウスを用いた。実施例2で調
製したチオベンカルブ誘導体とKLHとの結合体100
μgをPBS(−)50μlに溶解し、等量のフロイン
ト完全アジユバントと乳化混合した後、マウスの腹腔内
に接種した。その1カ月後に初回免疫量の1/4量を追
加免疫し、さらにその2週間後に追加免疫と同量を最終
免疫した。
【0092】実施例4 モノクローナル抗体の作製 実施例3の最終免疫後3日目のマウスの脾細胞を用いて
細胞融合を行った。ステンレスメッシュで大きな固形物
を除去しながら、DMEM中に取り出した脾細胞をDM
EMにて3回洗浄した後、マウスのミエローマ細胞P3
−X63−Ag8.653と細胞数の比で5:1(脾細
胞:ミエローマ細胞)になるように混合し、遠心(1,
200rpm、5分間)して細胞沈渣を集めた。この細
胞沈渣に予め37℃に加温しておいた50%ポリエチレ
ングリコール(分子量1,500)1mlを加え、細胞
を融合した。細胞融合は、DMEM10mlを徐々に添
加し、牛胎児血清(以下、「FBS」と略す)1mlを
更に添加することにより、停止した。融合した細胞は、
10%FBSを添加したDMEMにヒポキサンチン(1
00μM)、アミノプテリン(0.4μM)、およびチ
ミジン(16μM)を添加したHAT培地に懸濁後、9
6ウェルのポリスチレンプレートに2×105細胞/ウ
ェルで分注し、37℃、5%二酸化炭素存在下で10日
間−14日間培養した。培養後、ウェル中の抗体活性の
有無をそれぞれスクリーニングした。
【0093】抗体活性は、実施例2で調製したチオベン
カルブ誘導体とBSAとの結合体を用いたELISA法
にて測定した。PBS(−)に溶解したチオベンカルブ
誘導体とBSAとの結合体(1μg/ml)を、96ウ
ェルのマイクロタイタープレートに100μl/ウェル
で添加し、4℃で1晩静置することにより、固相化し
た。次に300μl/ウェルでブロッキング剤を含む緩
衝液{1%BSAと60mM NaClを添加した85
mMホウ酸緩衝液(pH8.0)}に置き換え、室温で
1時間ブロッキングした。このウェルを洗浄液{60m
M NaClを添加した85mMホウ酸緩衝液(pH
8.0)}で洗浄した後、ハイブリドーマの培養上清を
100μl/ウェルで加え、室温で1時間反応した。洗
浄液で3回洗浄した後、第二抗体希釈液{0.3% B
SAと60mM NaClを添加した85mMホウ酸緩
衝液(pH8.0)}で1000倍希釈したペルオキシダ
ーゼ結合抗マウスIgG抗体(カペル社製)を100μ
1/ウェルで添加し、室温で1時間反応した。洗浄液で
3回洗浄した後、ペルオキシダーゼの基質溶液{3,
3',5,5'−テトラメチルベンジジン(100μg/m
l)、0.006%過酸化水素を添加した0.1M酢酸
ナトリウム緩衝液(pH5.5)}で10分間発色し、
1N硫酸で反応を停止した後450nmの吸光度を測定
した。
【0094】抗体活性を示したウェル中のハイブリドー
マは、限界希釈法によって細胞クローニングし、モノク
ローナル抗体を産生しているハイブリドーマとして選択
した。
【0095】これらの結果、表1に示したとおり、チオ
ベンカルブ誘導体とBSAとの結合体と反応するハイブ
リドーマを4株(TBC5−3、TBC7−2、TBC
9−2、TBC14−7)分離した。
【0096】
【表1】 これらのうちTBC7−2を、平成8年10月11日に
寄託番号FERM P−15905として工業技術院生
命工学工業技術研究所(〒305 茨城県つくば市東1
丁目1番3号)に寄託した。
【0097】実施例5 間接競合阻害ELISA法によ
る分離したモノクローナル抗体のチオベンカルブに対す
る反応性 実施例4で得られた4株のハイブリドーマが産生するモ
ノクローナル抗体(以後モノクローナル抗体は、これを
産生するハイブリドーマと同一の名称を用いる)とチオ
ベンカルブとの反応性を間接競合阻害ELISA法によ
って検討した。
【0098】まず、実施例4に示したELISA法と同
様の方法で、チオベンカルブ誘導体とBSAとの結合体
(1μg/ml)を固相化後、ブロッキングしたマイク
ロタイタープレートへ、希釈液{150mM NaCl
を添加した85mMホウ酸緩衝液(pH8.0)}で適
当な濃度に希釈したチオベンカルブ溶液を50μl/ウ
ェルで加えた。その後直ちに、同じ希釈液で適当な濃度
に希釈した抗体溶液を50μl/ウェルで加えて混合
し、室温で1時間反応させた。3回洗浄した後、実施例
4に示したELISA法と同様の方法で第二抗体と反応
させ、発色後450nmの吸光度を測定した。
【0099】結果は、図1に示すように、TBC5−3
が約2から15ng/ml、TBC7−2が約0.2か
ら8ng/ml、TBC9−2が約2から30ng/m
l、TBC14−7が約0.5から15ng/mlの測
定範囲でチオベンカルブと反応した。従って、これらの
抗体は、すべてチオベンカルブと反応し、その内TBC
7−2が最も高感度に反応することが明らかとなった。
【0100】実施例6 モノクローナル抗体の精製 抗体精製は、チオベンカルブと最も高感度に反応したT
BC7−2に対して行った。まず、ハイブリドーマをD
MEMに10%FBSを添加した培地を用いて培養し、
その培養上清に50%飽和となるように硫安を加え、4
℃で1晩撹拌した。生じた沈殿物に蒸留水を加えて可溶
化した後、PBS(−)で透析し、Avid ALゲル
(バイオプローブ インターナショナル社製)カラムク
ロマトグラフィーによって精製した。回収率は、実施例
4に記載したELISA法で確認した結果、ほぼ100
%だった。また、純度もSDSポリアクリルアミドゲル
電気泳動の結果から、少なくとも95%以上であった。
【0101】実施例7 ペルオキシダーゼ結合ハプテン
の調製 まずチオベンカルブ誘導体1.25μmolをDMSO
100μ1に溶解した。この溶液へDMSOに溶解し
たN−ヒドロキシコハク酸イミド(5.5μmol)を
3μl、および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ
プロピル)カルボジイミド塩酸塩(3.5μmol)を
7μlを加え、室温にて1時間反応させた。この反応液
に1M炭酸水素ナトリウム40μlを加え、更にペルオ
キシダーゼ溶液(20mg/ml)500μ1を加えて
混合し、室温にて3時間反応した。得られた反応液は、
ゲル濾過カラム(セファデックスG−25)で低分子化
合物を除去し、ペルオキシダーゼ結合ハプテンとした。
【0102】実施例8 直接競合阻害ELISA法によ
るモノクローナル抗体TBC7−2のチオベンカルブに
対する反応性 直接競合阻害ELISA法は、以下の手順で実施した。
まず実施例6で精製したTBC7−2を4μg/mlの
濃度で50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.3)に
溶解し、96ウェルのマイクロタイタープレートに10
0μl/ウェルで加えた後、4℃で1晩静置することに
より固相化した。つぎに300μl/ウェルでブロッキ
ング緩衝液に置き換え、室温で1時間ブロッキングし
た。またこのプレートとは別に、各々60mM NaC
lを添加した85mMホウ酸緩衝液(pH8.0)で適
当な濃度に希釈したチオベンカルブとペルオキシダーゼ
結合ハプテンを混合し、先にブロッキングしたプレート
に100μl/ウェルで加えた後、室温にて1時間反応
した。洗浄液で5回洗浄した後、実施例4に示したEL
ISA法と同様の方法で発色させ、450nmの吸光度
を測定した。
【0103】結果は、図2に示すように、約5−200
ng/mlの測定範囲でチオベンカルブと反応した。
【0104】実施例9 モノクローナル抗体TBC7−
2のメタノール耐性 作物中などに残留するチオベンカルブを測定する場合、
一般に有機溶媒抽出物が被検試料となる。そこでこの試
料を直接測定し得る可能性を検討するため、実施例8に
示した直接競合阻害ELISA法を用いて、この測定系
におけるメタノールの影響を検討した。メタノールは、
競合反応時の溶液に、最終濃度が0から20%となるよ
うに添加した。結果は、図3に示したように、メタノー
ル濃度の増加に依存して吸光度の減少は認められるもの
の、20%メタノールまではほぼ同じ測定感度でチオベ
ンカルブを測定できた。
【0105】実施例10 モノクローナル抗体TBC7
−2のチオベンカルブの類縁化合物との交差反応性 実施例9に示した条件の内、競合反応時のメタノールの
最終濃度を15%としてTBC7−2のチオベンカルブ
の代謝分解物及びその類縁化合物との交差反応性を検討
した。結果は、化合物が未添加の条件での反応を50%
阻害する化合物の濃度を各々IC50値として、表2に示
した。
【0106】
【表2】 表2からわかるように、TBC7−2を用いた直接競合
阻害ELISA法は、チオベンカルブ代謝分解物−3と
−6がチオベンカルブの約15%の交差反応性を示した
ほかは、すべて1%以下しか交差反応せず、チオベンカ
ルブと特異性の高いことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の各モノクローナル抗体のチ
オベンカルブとの反応性を、間接競合阻害ELISA法
によって調べた結果を示す。
【図2】 図2は、本発明のモノクローナル抗体TBC
7−2のチオベンカルブに対する反応性を、直接競合阻
害ELISA法によって調べた結果を示す。
【図3】 図3は、本発明のモノクローナル抗体TBC
7−2を用いた直接競合阻害ELISA法におけるメタ
ノールの影響を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C12P 21/08 C12R 1:91) (72)発明者 山口 優樹 東京都港区浜松町1丁目27番14号 株式 会社環境免疫技術研究所内 (72)発明者 別府 佳紀 東京都港区浜松町1丁目27番14号 株式 会社環境免疫技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 333/04 C12P 21/08 G01N 33/53 G01N 33/577 CA(STN)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の式(1) 【化1】 (式中、 Xは、無置換であるか、またはハロゲン原子であり;R
    1は、枝分かれしていてもよい炭素数1−5のアルキル
    基であり;そしてnは1−10の整数である)で表され
    る構造を有する化合物。
  2. 【請求項2】式(1)において、Xが4−クロロであ
    り、R1がエチル基である、請求項1に記載の化合物。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の化合物と高分子
    化合物との結合体。
  4. 【請求項4】請求項1または2に記載の化合物に高分子
    化合物を結合させることにより抗原を作製し、当該抗原
    を用いることにより、以下の式(2) 【化2】 [式中、 R2は、枝分かれしていてもよい炭素数1−5のアルキ
    ル基であり;そしてX、R1およびnは式(1)で定義
    した通りである]で表される構造を有する化合物に反応
    性を示す抗体を製造することを特徴とする、式(2)の
    化合物と反応性を示す抗体またはそのフラグメントの製
    造方法。
  5. 【請求項5】請求項3に記載の結合体を抗原として用い
    ることにより製造された、式(2)の化合物と反応性を
    示す抗体またはそのフラグメント。
  6. 【請求項6】式(2)において、Xが4−クロロであ
    り、R1およびR2がエチル基である、請求項5に記載の
    抗体またはそのフラグメント。
  7. 【請求項7】モノクローナル抗体である、請求項5また
    は6に記載の抗体またはそのフラグメント。
  8. 【請求項8】20%以下のメタノール中で式(2)の化
    合物と反応性を有する、請求項5ないし7のいずれか1
    項に記載の抗体またはそのフラグメント。
  9. 【請求項9】TBC7−2である、請求項5ないし8の
    いずれか1項に記載の抗体またはそのフラグメント。
  10. 【請求項10】請求項5ないし9のいずれか1項に記載
    の抗体またはそのフラグメントを産生するハイブリドー
    マ。
  11. 【請求項11】寄託番号FERM P−15905で寄
    託されている、請求項10に記載のハイブリドーマ。
  12. 【請求項12】請求項5ないし9のいずれか1項に記載
    の抗体またはそのフラグメントを用いることを特徴とす
    る、式(2)で表される化合物の免疫学的測定方法。
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