JP2617703B2 - 改善された組合せの極限引張強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法 - Google Patents

改善された組合せの極限引張強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法

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JP2617703B2
JP2617703B2 JP8124602A JP12460296A JP2617703B2 JP 2617703 B2 JP2617703 B2 JP 2617703B2 JP 8124602 A JP8124602 A JP 8124602A JP 12460296 A JP12460296 A JP 12460296A JP 2617703 B2 JP2617703 B2 JP 2617703B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子工業において
リードフレームまたはコネクタの材料として特定の用途
を有する銅基合金の製造方法に関する。電子工業界にお
いては、良好な加工性、電気的および熱的伝導性を有す
る高強度リードフレーム合金に対する要求がますます高
まりつつある。同様にコネクタの応用においても、それ
ら合金が良好な耐応力緩和性を有して提供されることが
できれば有利である。本発明方法によって得た銅基合金
は市販の合金と比較して改善された、組合せの極限引張
強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する。
【0002】
【従来技術、および発明が解決しようとする課題】電子
工業において用途が見出されている種々の銅合金の比較
がスミトモ・メタル・マイニング・カッパー・アンド・
ブラス・セールス社(Sumitomo Metal Mining Copper &
Brass Sales Co. Ltd) 刊行の表題「ハイストレング
ス、ハイコンダクティビティー カッパー アロイズ
フォア IC リード フレーム(High Strength, High
Conductivity Copper Alloys For IC Lead Frame)」と
されたパンフレットに記載されている。下記の記載から
本発明合金が、多くの市販合金と比較して有意に改善さ
れた強度および伝導性の組合せを与えるものであること
が明らかであろう。
【0003】リードフレーム材料に対し約40%IAC
Sまたはそれ以上の電気伝導率を維持しつつ約100ks
i またはそれ以上の引張強さを有する、上述の用途にお
ける銅合金を提供することは非常に望ましいことであ
る。該パンフレットに記載の材料から、42アロイ(All
oy) のみが上記強度目標を達成しているが、該合金の伝
導性は極めて低い。中程度の伝導性合金であるアロイ(A
lloy) C19500は、所望の性質に最も近いが強度目
標を満たしていない。アロイC17400のような或る
種のベリリウム・銅合金は、良好な伝導性および強度を
与えるが、曲げ特性の犠牲およびコスト上の不利があ
る。コネクタへの適用に対しては強度および伝導性のほ
かに耐応力緩和性が重要な性質である。本発明方法によ
る合金(以下、本発明合金(または本発明銅基合金)と
称する)は、リン青銅であるアロイC51000のよう
な代表的な工業用合金と比較して改善された組合せの曲
げ特性、伝導性および耐応力緩和性を与える。
【0004】本発明合金は析出硬化性Ni−Si青銅であ
り、これにMgを添加して、改善された独特な性質の組合
せが得られる。NiおよびSiの添加により与えられる析出
硬化特性を利用する多数の合金および(または)その製
法が特許明細書および文献に記載されている。例えば、
コルソンの米国特許第1658186号明細書、フラー
の米国特許第1778668号明細書およびストラング
らに対する2185958号明細書に記載のものであ
る。Ni−Si青銅に対するその他の各種元素の添加につい
ては、ヘンセルの米国特許第2137282号明細書、
クレメントの米国特許第3072508号明細書、エデ
ンスの米国特許第4191601号明細書、キムの米国
特許第4466939号明細書、およびミヤフジの日本
特許出願公開第213847/83号公報に記載されて
いる。ペン・プレシション・プロダクツ社(Penn Precis
ion Products Inc.)が、DIKALLOYなる商標でNi
−Si青銅を製造している。その製品パンフレットに記載
されているように、それら合金はCu、Ni、Siより成り、
AlおよびCrが加えられている。
【0005】本出願人はまた、Mgを添加した耐応力緩和
性を改良する銅基合金に関する特許の所有者でもある。
これらの特許は、黄銅合金に関するスミスの米国特許第
4223068号および第4233069号ならびにCu
−Ni−Al合金に関するザレーの米国特許第443401
6号を包含する。ノルの米国特許出願第645957号
明細書はリードフレーム用またはコネクタ用の銅基合金
を開示しており、該合金はFe、Mg、P(燐)および必要
に応じてSnを含有する。Ni−Si青銅にMgを加えたものが
ローチの米国特許第2851353号明細書およびツジ
の米国特許第4366117号明細書に開示されてい
る。これら特許明細書で意図している合金は、一または
それ以上の観点において本発明合金の範囲外にある。
【0006】ヘンセルおよびラーセンの米国特許第21
57934号明細書は時効硬化性であり、かつMg0.1
〜3.0%、Ni、CoまたはFeから選ばれる元素0.1〜
5%、Si0.1〜3%で、残部が銅である銅基合金を記
載している。この合金は、700℃を超える温度への加
熱後、急冷し、次いで700℃未満で時効処理すること
により処理される。所望により該合金を、急冷と時効処
理との間で冷間加工してその硬度を増加させることがで
きる。
【0007】Ni1.8%、Si0.8%を含有し、残部が
CuであるCu−Ni−Si合金の時効挙動に対するAl、Mg、Mn
およびCrの合金化添加(alloying addition) の効果がト
ランスアクション・オブ・ザ・インディアン・インステ
ィチュート・オブ・メタルズ(Transaction of The Indi
an Institute of Metals) 、1964年12月号、第2
11〜216頁に示されるタワリ(Tawari)らの刊行物
「エフェクト・オブ・スモール・アロイング・アディシ
ョン・オン・ザ・エィジング・ビヘィビア・オブ・ア・
カッパー・ニッケル・シリコン・アロイ(Effect of Sma
ll Alloying Addition On the Ageing Behaviour Of A
Copper-Nickell-Silicon Alloy) 」に記載されている。
試験Mg含量の変化範囲は0.2%〜1%であった。
【0008】Cu−Ni−Si−Mg合金、特にNi1.8%、Si
0.8%と共にMgまたはCrの0.3%を含む合金が Z.
Metallkde 、BD. 63(1972年)、H.3、第15
5〜157頁におけるBhargavaらの「スタディース オ
ン エイジ ハードニングCu−Ni−Si−MgアンドCu−Ni
−Si−Crアロイ(Studies on Age Hardening Cu −Ni−
Si−Mg and Cu−Ni−Si−Cr Alloy) 」に記載されてい
る。この刊行物には上記合金の時効硬化の挙動が記載さ
れている。これら刊行物において研究された合金のNi量
は本発明の範囲外であることに留意すべきである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明により極めて良好
な強度特性と共に中程度から高度までの電気伝導性、お
よび優れた耐応力緩和性を有する銅基合金が提供され
る。該合金は、それぞれの用途に対し種々の態様で加工
して強度、曲げ加工性および電気伝導性の最良の組合せ
を提供することができる。コネクタ用合金では、強度と
耐応力緩和性とが最も重要である。また、リードフレー
ム用合金としては、一般的に、強度と伝導性との最良の
組合せ、ならびに良好な曲げ加工性を与えるように該合
金が加工される。或る種のコネクタ用としては、強度を
減少させても、電気伝導性および曲げ加工性の向上が要
求される。
【0010】これらの改良された性質は、実質的に、N
i:約0.05〜約5.0%、Si:約0.01〜約2.
0%、選択成分としてのMg:1%以下、および残部とし
てのCuから成る銅基合金(数字はいずれも重量%) によ
り達成される。好ましくは、該合金は、実質的にNi:約
2〜約4.8%、Si:約0.2〜約1.4%、Mg:約
0.05〜約0.45%、および残部としてのCuから成
る。より好ましくは、該合金は、実質的にNi約2.4〜
約4.0%、Si約0.3〜約1.1%およびMg約0.0
5〜約0.3%および残部としてのCuから成る。最も好
ましくは、Mg量が約0.1〜約0.2%の場合である。
リードフレーム用としては該合金が過時効状態にあるこ
とが好ましい。コネクタ用としては該合金は安定化状態
にあることが好ましい。合金の性質に有害な影響を与え
ない種々のその他の元素の少量を添加することができ
る。合金を加工することにより、それら合金の強度、伝
導性、曲げ加工性および応力緩和性の組合せ、ならびに
リードフレーム材料またはコネクタ材料としての用途に
対するそれら合金の安定性が部分的に定められる。一般
的に該合金は、ダイレクトチル鋳造によって鋳造され
る。その後、該合金は、約750〜950℃、好ましく
は約850〜900℃の温度で熱間圧延される。必要に
応じて、該合金を上記処理後に約550〜700℃の温
度において均質化焼鈍することができる。該方法におい
て均質化焼鈍が行われる場合には、該合金を750℃以
上の温度において再溶体化し、次いで急冷してから任意
の時効処理を施すべきである。均質化焼鈍は所望により
熱間加工後または最初の冷間加工後に行うことができ
る。
【0011】第一の選択プロセスにおいては、1回また
はそれ以上の冷間圧延および時効処理が合金に施され
る。その場合の第1回目における冷間圧延は圧下率を少
なくとも約30%、好ましくは少くとも約50%にすべ
きである。或る程度の曲げ加工性の犠牲において最高の
強度特性が要求されるコネクタへの応用に対しては、次
いで合金を約350〜約500℃、好ましくは約425
〜約480℃の温度において時効処理する。もしも、第
2回目の冷間圧延および時効処理の連続操作が必要であ
れば該冷間圧延は、圧下率を約10%、好ましくは少な
くとも約30%とするべきであり、しかもこの冷間圧延
後に第1回目の時効処理温度よりも低い温度において、
すなわち一般的に約350〜約490℃の範囲にわたる
温度において時効処理すべきである。次いで、該合金を
最終的に冷間加工して厚さを約10〜約90%、好まし
くは約30〜約60%減少させるべきである。コネクタ
用に対しては、その後に合金を、随意的に約200〜3
45℃、好ましくは約225〜約330℃の温度におい
て焼鈍することによって安定化させる。
【0012】リードフレーム用に対する第二の選択プロ
セスでは、熱間加工または均質化焼鈍後の加工は合金を
冷間加工して厚さを少なくとも約30%、好ましくは約
50%減少させ、次いで約750〜900℃、好ましく
は約800〜850℃の温度において焼鈍を行い、次い
で急冷し、次いで少なくとも約10%、好ましくは少な
くとも約30%冷間加工し、次いで約500〜約700
℃、好ましくは約510〜約575℃の温度において過
時効させ、次いで冷間圧延して厚さを約10〜約90
%、好ましくは約30〜約60%減少させることより成
る。この工程はリードフレーム用に意図されたものであ
るが、該合金をコネクタ用に使用することが意図される
ならば、前記第一の選択プロセスにおけるように、該合
金を随意的に安定化することができる。該第二の選択プ
ロセスにおいては、Ni約0.05〜約5.0%、Si約
0.01〜約2.0%、Mg約1%以下、および残部とし
てのCuより成る銅合金に広く応用することができると考
える。その他の元素および不純物が存在してもよいが、
それらは合金の性質に対し実質的に悪影響を及ぼさない
ものである。しかしながら該第二の方法を本発明の合金
に適用することが好ましい。
【0013】最後に、第三の選択プロセスにおいては比
較的に高い強度と、適度の伝導性と、該第二の選択プロ
セスよりは或る程度劣るものの、第一の選択対象よりは
実質的に良好な曲げ特性を有するリードフレーム材料ま
たはコネクタ材料のいずれかとしての使用に適する方法
によって該合金を処理することができる。この方法は過
時効焼鈍を非過時効焼鈍に置き換えることにより第二の
選択プロセスと同一となる。この方法によれば、最終減
厚加工前の焼鈍を温度約350℃〜約500℃、好まし
くは温度約425℃〜480℃で行う。最終冷間加工は
先の方法と同一であり、かつコネクタ用には前述したよ
うな随意的な安定化焼鈍が好ましい。
【0014】したがって、本発明により強度、伝導性、
曲げ加工性および耐応力緩和性の独特の組合せを有する
多目的銅基合金が提供され、この組合せにより該合金は
コネクタ用およびリードフレーム用の材料として使用す
るのに適したものとなる。臨界的にMgを添加した本発明
の合金はそれらの加工を適切に調整することにより上記
の用途のいずれかに容易に適合させ得ることが判った。
予想外にも本発明の合金は、過時効状態において、比較
的に高強度および良好な伝導性を維持しつつ曲げ加工性
を実質的に改良することが判った。これもまた予想外に
も該合金の耐応力緩和性は安定化焼鈍の利用により著し
く影響されることも判った。本発明の限度内においてMg
量を臨界的に調節することにより、予想外にも本発明合
金の高温加工性を改善できることが判った。もしも、高
Mg量を採用するならば、該合金は高温加工温度に関係す
る割れに対する感受性が増す。しかしながら、Mgを本発
明の限度内に保つことにより、割れに対する感受性は高
温加工温度に無関係に回避される。
【0015】かくして、リードフレームまたはコネクタ
のような電子的用途に対する多目的銅基合金、およびそ
れらの加工方法を提供することが本発明の利点である。
強度、伝導性、曲げ加工性および耐応力緩和性の改善さ
れた組合せを有する上記合金を提供することが、本発明
の他の利点である。容易に熱間加工することができ、し
かも熱間加工中に温度変化による割れ感受性を増大させ
ない上記合金を提供することが本発明の別の利点であ
る。
【0016】
【発明の実施の形態】上記利点およびその他の利点につ
いては以下の記載および図面により明らかになるだろ
う。本発明により多目的銅基合金が提供され、該合金は
その加工方法によって電子工業界においてリードフレー
ムまたはコネクタの材料として効果的に使用することが
できる。該合金は、現在一般的に市販されている合金か
ら得られるものよりも優れた各性質の組合せを提供する
点において独特である。過去において同様な性質を達成
するためには高価なベリリウム銅合金の使用を必要とし
た。本発明合金は、適度な伝導性において非常に高い強
度を提供する。例えばそれら合金はアロイ42に匹敵す
る強度と共に実質的により良好な伝導性を達成すること
ができる。それら合金はまた市販の中程度の伝導性合金
に匹敵する伝導性と共により高い引張強さを達成するこ
とができる。
【0017】加工を適当に調整することにより該合金を
コネクタ用に成形することができる。例えば、板ばね(f
lat spring) コネクタのような用途においては該合金を
加工して、35%IACS以上の伝導性を維持しつつ8
96.4MPa (130ksi )以上の極限引張強さを与え
ることができる。高い強度および良好な曲げ加工性を必
要とするコネクタ用またはリードフレーム用に対しては
該合金を処理して約40%IACSまたはそれ以上の電
気伝導率と共に792.9MPa (115ksi )以上の極
限引張強さを与えることができる。最後に、より一層良
好な曲げ加工性をも必要とするリードフレームおよびそ
の他の用途に対しては689.5MPa (100ksi )以
上の極限引張強さおよび45%IACS以上の電気伝導
率を与える態様において該合金を加工することができ
る。したがって本発明により、所定の組成範囲内の合金
を独特に処理して、該合金が多種の異なる用途に適合で
きるような機械的性質の範囲とすることができるという
ことは明らかである。該合金の極限引張強さは、曲げ特
性および電気伝導特性を若干犠牲にして、これを高める
ことができる。またその代りに、良好な伝導性を与えな
がら、極限引張強さの若干の損失において、曲げ特性を
高めることができる。
【0018】コネクタまたはその他の用途に対し、該合
金を優れた耐応力緩和性が得られるように加工すること
ができる。本発明の多目的銅基合金は下記の臨界的な組
成範囲内の合金を包含する。すなわち、実質的に、Ni:
約0.05〜約5.0%、Si:約0.01〜約2.0
%、選択成分としてのMg:1%以下、および残部として
のCuから成る銅基合金である。好ましくは、該銅合金
は、Ni:約2〜約4.8%、Si:約0.2〜約1.4
%、Mg :約0.05〜約0.45%、および残部とし
てのCuから成る。より好ましくは、該銅基合金は、Ni約
2.4〜約4.0%、Si約0.3〜約1.1%、Mg約
0.05〜約0.3%、および残部としてのCuより実質
的に成るものである。最も好ましくは、Mg約0.1〜約
0.2%である。好ましくは、該合金におけるNi対Siの
比(Ni:Si)が約3.5:1〜約4.5:1の範囲であ
り、最も好ましくはNi対Siの比(Ni:Si)が約3.8:
1〜約4.3:1の範囲である。リードフレームに使用
する場合には、該合金は過時効状態にあることが好まし
い。コネクタに使用する場合には、該合金が安定化状態
にあることが好ましい。
【0019】合金の性質に悪影響を及ぼすことのない、
その他の元素および不純物を合金に含有させることがで
きる。Cr、Co、Fe、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、ミッシュメタ
ル(ランタニド)およびそれらの混合物のような珪化物
(シリサイド)形成元素を、有効量約1%以下存在させ
ることができる。このような元素が存在する場合、それ
ら元素はNiの同等量と置換して存在すべきである。好ま
しくは、Crは約0.1%を超えない量に限定すべきであ
る。本発明の合金は、Li、Ca、Mn、ミッシュメタルおよ
びそれらの混合物から選択される脱酸元素および(また
は)脱硫元素の1種またはそれ以上を、脱酸素または脱
硫に対する有効量において約0.25重量%まで包含す
ることもできる。本発明の合金におけるNiおよびSiに対
する下限は、該合金の所望の強度を達成するために必要
である。もしも、NiまたはSiが、示された量を超えて存
在すれば、それらは合金中に溶体化することが困難とな
る。Mgの範囲は、該合金の熱間加工性および冷間圧延性
に対し臨界的である。
【0020】図1において、熱間圧延温度に対する合金
のMg含量に関するグラフを示す。点線ABの下方および
左方の領域は、割れなしに熱間圧延が可能な領域であ
る。点線ABの上方および右方の領域は、熱間圧延中の
インゴットの割れが発生するために不適当な領域であ
る。図1から、Mg量が0.45%を超えると、本発明合
金に対する熱間圧延温度の感受性が存在することが明ら
かである。Mg0.45%以下である本発明の限度内にお
いて、該合金は熱間加工温度に対して不感性であり、し
かも広範囲の熱間加工温度にわたって容易に熱間加工す
ることができる。高温熱間加工温度における割れに対す
るこの感受性は、米国特許第2157934号明細書に
おいてヘンセルおよびラーソンによっては決して予知さ
れなかった。ヘンセルおよびラーソンの特許明細書に示
されたMgの範囲は3%までにわたるものであった。図1
の考察から、この範囲の小部分のみが本発明のとおりに
使用されて該合金を割れの観点から熱間加工温度に対し
不感性とし、したがって該合金の熱間加工を容易に行い
得ることが明らかに立証される。Mgの下限は、本発明の
合金の所望の機械的性質を達成するため、特にこれら合
金の耐応力緩和性を向上させるために重要である。Mgは
合金の清浄化能力をも向上させると考える。また、Mg量
は、冷間加工中にエッジクラッキング(エッジ割れ:ed
ge cracking)の発生を減少させるように本発明の限界内
に調節すべきである。各種方法により加工した合金の冷
間圧延中におけるエッジクラッキングに対するMg量の影
響およびMg量の範囲を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1のデータを見ると、Mg量を本発明の範
囲内、特に本発明の好ましい範囲内に保つことにより、
冷間加工中、特にエッジトリミング(edge trimming )
後における、顕著に改善されたエッジクラッキングの減
少が得られることが明らかである。表1において、各Mg
量の下のスラッシュ記号の前に示す成績は、冷間圧延開
始時の厚さが13.97mm(0.55インチ)で、そ
の後の冷間圧延後の特定の板厚における割れの程度を示
す。スラッシュ記号(/)の後に示す成績は処理工程欄
に示される最終標準板厚における割れの程度である。
【0023】本発明合金は、所望の機械的性質、そして
それは順繰りに該合金が使用される最終用途によって定
められるものである該機械的性質によって異なる加工が
される。通常、コネクタ合金は、十分な電気伝導性、熱
伝導性および成形性を維持しつつ、ばね特性に対する高
い強度および良好な耐応力緩和性を必要とする。優れた
加工性をも必要とするそれらコネクタ用に対しては強度
特性に与える影響を適度に抑えながら、加工方法を調整
することができる。最後に、良好な曲げ加工性および電
気伝導性を必要とするリードフレーム用には、強度を若
干犠牲にすることにより更に調整することができる。コ
ネクタ型の用途に重要である合金の耐応力緩和性は合金
の加工方法により非常に大きく影響され、特に驚くべき
ことに安定化焼鈍を用いることがこれら合金の耐応力緩
和性に対し非常に有利に影響することがわかった。
【0024】本発明の合金は、例えばダイレクトチル
(Direct Chill) 鋳造のような慣用の手段により任意に
鋳造することができる。鋳造温度は、好ましくは少なく
とも約1100℃から約1250℃までである。普通に
行われているようにスラブまたはインゴットとして、合
金が鋳造される場合に、それらの合金は次いで約850
〜約980℃の温度において約0.5〜約4時間にわた
り均質化または均熱され、次いで複数パスの熱間圧延に
よる熱間加工により、一般的に約19mm(3/4イン
チ)以下、好ましくは12.7mm(1/2インチ)また
はそれ以下の所望の板厚(gauge)とする。該合金は、好
ましくは熱間加工後に、例えば水焼入れによって急冷す
る。該熱間加工は、合金元素が溶体化するように行うこ
とが好ましい。
【0025】ダイレクトチル鋳造と、それに続く熱間加
工が本発明の好ましい方法であるものの、合金を約2
5.4mm(1インチ)またはそれ以下の厚さを有するス
トリップ形態に鋳造することもできる。合金がストリッ
プ形態に鋳造されるならばそれらを熱間圧延する必要が
ないことは明らかである。熱間加工方法は、特にその後
に水焼入れを行う場合に、合金元素を溶体化する目的で
行い、それにより溶体化焼鈍(solution anneal )の必
要性をなくすべきである。しかしながら、所望により、
または特に合金がストリップ鋳造物である場合には該合
金は約750〜約950℃の温度において約30秒〜約
8時間、好ましくは約1分〜約4時間にわたり随意的に
溶体化処理をし、次いで急冷(好ましくは水焼入れ)す
ることができる。該合金は熱間加工またはストリップ鋳
造後に面削して酸化物およびスケールを除去してから更
に加工することが好ましい。所望により該合金を約55
0〜約700℃の温度において約1〜約8時間にわたり
随意的に均質化焼鈍することができる。均質化焼鈍は熱
間加工後か、または冷間圧延のような初期冷間加工後に
行って厚さを約80%まで、好ましくは約50〜70%
減少させることができる。もしも、該合金を均質化焼鈍
するならば、その後に該ストリップを溶体化処理する必
要がある。それ故、該合金は均質化焼鈍処理の一部とし
て約750〜約950℃の温度において約30秒〜約8
時間、好ましくは約1分間〜約4時間にわたって溶体化
処理をすることが好ましい。焼鈍直後に該合金を、好ま
しくは水焼き入れにより急冷する。連続焼鈍は、水焼入
れが容易であるため、溶体化処理に対する好ましい方法
である。熱間圧延または均質化焼鈍後に、場合によって
は該合金を冷間加工と時効処理を操作の1回またはそれ
以上連続して行う。該冷間加工は冷間圧延により行うこ
とが好ましい。第1回の冷間圧延操作は好ましくは少な
くとも約30%、最も好ましくは少なくとも約50%の
板厚の減少を包含する。
【0026】選択プロセス1 高強度のための加工 第1回目の冷間加工に次いで、温度約350〜約500
℃、好適には温度約425〜約480℃で合金を時効処
理した。冷間加工と時効処理の連続操作を更に行う場合
には、冷間圧延は少なくとも約10%好ましくは少なく
とも約30%の圧下率とすべきであり、この後に、先の
時効焼鈍よりも低い温度において約350〜約490℃
の範囲の焼鈍温度において時効焼鈍を行うべきである。
時効焼鈍は約0.5〜8時間、好ましくは約2〜4時間
にわたって上記温度において行うべきである。冷間圧延
および時効処理の連続操作の後に該合金を、圧延するこ
とにより、最終的に冷間加工して厚さを約10〜約90
%、好ましくは約30〜約60%減少させる。本発明の
合金の耐応力緩和性は、約200〜345℃、好ましく
は約225〜約330℃の温度において約0.5〜約8
時間、好ましくは約1〜約2時間にわたる安定化焼鈍を
利用することにより著しく改良される。
【0027】選択プロセス2 最良の曲げ加工性のための加工 熱間加工または均質化焼鈍処理後の合金を好ましくは冷
間圧延による冷間加工の最初の連続操作に供して、厚さ
を少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%
減少させる。次いで該合金を約750〜約950℃、好
ましくは約800〜約850℃の温度において約30秒
から約8時間まで、好ましくは約1分間から1時間まで
にわたって焼鈍を行い、次いで好ましくは水焼入れによ
り急冷することにより再溶体化(resolutionize)する。
この焼鈍は連続焼鈍として行うことが好ましい。随意的
には、この冷間加工および焼鈍の最初の連続操作を第二
の連続操作としてくり返して所望の最終板厚に到達させ
ることができる。その後に、該合金を圧延により冷間加
工して厚さを少なくとも約10%、好ましくは少なくと
も約30%減少させ、次いで過時効処理する。過時効処
理は、好ましくは該合金を約500〜約700℃、好ま
しくは約510〜約575℃の温度において約0.5時
間〜約8時間、好ましくは約1時間〜約4時間にわたっ
て焼鈍することより成る。次いで一般的に該合金を最終
的に冷間圧延により圧下して厚さを約10〜約90%、
好ましくは約30〜約60%減少させる。この選択プロ
セス2はリードフレーム用の合金の調製に特に適合して
いるが、コネクタ合金にも利用することができ、この場
合は前述の随意的な安定化処理を行うことが好ましい。
この選択プロセス2は、実質的にNi約0.05〜約5.
0%、Si約0.01〜約2.0%、選択元素としてのMg
約1%以下、および残部としてのCuより成る銅合金に広
く応用できると考える。該合金の性質に実質的に悪い影
響を及ぼすことのないその他の元素および不純物を存在
させることができる。しかしながら該方法は、本発明合
金に適用することが好ましい。
【0028】選択プロセス3 選択プロセス1,2の中間の強度と曲げ特性を得る処理 本プロセスは、選択プロセス2よりも比較的高い強度、
中程度の伝導性および或る程度劣る曲げ特性を有するリ
ードフレーム材料またはコネクタ材料のいずれかに使用
するための銅合金を提供するものである。本プロセス
は、過時効焼鈍の代りに時効焼鈍で置き換えた点を除い
て、選択プロセス2に関して記載された方法と実質的に
同一である。この方法によれば、最終減厚加工に先立っ
て、最終時効焼鈍を、約350〜約500℃以下、好ま
しくは約425〜約480℃の温度において約0.5〜
約8時間、好ましくは約1〜約4時間にわたって行う。
次いで、該合金を最終的に約10〜約90%、好ましく
は約30〜約60%冷間加工する。合金がコネクタ用に
意図される場合には選択プロセス1に記載の前述の安定
化方法によるような安定化焼鈍を行うことが好ましい。
本発明の随意的な安定化焼鈍は所望により最終減厚加工
後または最終部品の成形加工後に行うことができる。製
造の便宜上、該安定化焼鈍は最終減厚加工後に最も容易
に行われる。しかしながら最良の応力緩和実績は最終成
形加工後に安定化処理を行った場合に得られると思われ
る。なぜならば合金が安定化焼鈍された後の成形加工は
応力緩和性をある程度減少させることがあるからであ
る。
【0029】図2において、異なる時効処理時間におけ
る本発明の合金の、時効処理温度と硬度、曲げ加工性お
よび電気伝導率との間の関係を例証するグラフを示す。
図2において実線曲線Cは、それぞれの時効処理温度に
おいて2時間時効処理したCu−4.0%Ni−0.98%
Si−0.18%Mg合金の硬度を示す。実線曲線Dは時効
処理温度の全範囲にわたるそれら合金の電気伝導率を示
す。点線Eは硬度に対する上記合金の4時間にわたる時
効処理の影響を示し、点Fは電気伝導率に対する該合金
の4時間にわたる時効処理の影響を示す。曲線Gおよび
Hのそれぞれは4時間にわたって時効処理した合金に対
する良方向(good way)の曲げ特性および悪方向(bad
way)の曲げ特性を示す。図2に示される結果は時効処理
状態における合金に対するものである。図2について考
慮することにより、450℃の時効処理温度においては
時効処理応答ピークが得られ、それに対し480℃以
上、好ましくは500℃以上の温度において過時効状態
が得られることが明らかである。合金を比較的に高い強
度水準に保ちつつ過時効処理することができるというこ
とは重要で、かつ予想外である。図2を考慮することに
より硬度ピークに対する時効処理と比較して過時効によ
り曲げ特性および電気伝導率が著しく改良されることも
明らかである。図2を考慮することにより選択プロセス
1は一般的にピーク時効生成物を生じ、これに対し選択
プロセス2は過時効生成物を生ずることが示される。選
択プロセス3は大体においてそれら2者の間に存在す
る。図2において、曲げ加工特性は曲げ半径をストリッ
プの厚さで除した最小曲げ半径として示される。曲げ加
工性試験はストリップがひび割れることなく90°の角
度に曲がることのできる最小曲げ半径を測定する。良方
向、すなわち長さ方向の曲げ特性は、圧延方向と直角の
曲げ軸線で測定する。悪方向、すなわち横方向の曲げ特
性は圧延方向に平行な曲げ軸線で測定する。最小曲げ半
径(MBR)は最小の金型(ダイ)の半径であって、該
金型はストリップがその周りに沿って割れることなく9
0°の角度に曲がり得るものである。tはストリップの
厚さである。図2において曲線Gは良方向、または長手
方向の曲りであり、それに対し曲線Hは悪方向、または
横方向の曲りである。以上の説明では、電気伝導率につ
いて論じたが、本発明合金が意図される電気的な応用は
良好な熱伝導性をも所望されることは明らかであり、該
熱伝導性は該合金の電気伝導性に物理的に関係する。該
合金は、所望により焼鈍後に行われる通常の酸洗い溶液
により随意的に清浄化することができる。
【0030】本発明は下記の例証的な実施例を考慮する
ことにより更に容易に理解することができるであろう。 実施例I 断面積152.4mm×762mm(6インチ×30イン
チ)のインゴットを約1100℃の融解温度からダイレ
クトチル鋳造することによりNi3.03%、Si0.71
%、Mg0.17%、および残部としてのCuから成る合金
を調製した。該インゴットから切断した51mm×51mm
×102mm(2インチ×2インチ×4インチ)の試料を
875℃の温度において2時間にわたり均熱し、次いで
熱間圧延し、6パスで14mm(0.55インチ)の厚さ
にした。さらに、該合金は切削加工によって厚さ11.
4mm(0.45インチ)になされた。次いで該インゴッ
トを2.5mm(0.10インチ)に冷間圧延し、次いで
475℃の温度において2時間にわたって時効焼鈍を施
した。その後、該合金を1.3mm(0.050インチ)
に冷間圧延し、次いで400℃の温度において2時間に
わたり再び時効処理した。次いで該合金を0.76mm
(0.030インチ)に冷間圧延し、300℃の温度に
おいて1時間にわたり安定化焼鈍した。最終冷間圧延
後、および安定化焼鈍後に該合金の機械的性質を測定し
た。測定された性質を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】表2のデータを見ると、本発明の合金を選
択プロセス1により加工した場合に適度の電気伝導性を
有しなおかつ極めて高い極限引張強さが得られることが
明らかである。しかしながら、曲げ加工性をかなり犠牲
にする。安定化処理後は88.8%の応力が残留し、非
安定化合金では64.1%しか残留しないことを比較す
ることにより示されるように安定化焼鈍によって合金の
応力緩和性が著しく改良される。安定化状態における優
れた耐応力緩和性と本発明合金の高い強度および伝導性
を組合せることにより該合金は平ばね型装置のようなコ
ネクタ用に非常に有用となる。したがって選択プロセス
1は安定化状態における優れた耐応力緩和性と共に、適
度の伝導性を有するとともに極めて高い強度を有する本
発明合金を提供するのに明らかに適合している。
【0033】実施例II 表3に示すような組成を有する一連の合金を製造した。
該合金を表3に示すようにして加工した。
【0034】
【表3】
【0035】表3に示す合金は種々のMg量を含有する。
該合金の耐応力緩和性を、最終冷間圧延後と、更に安定
化焼鈍した後とにおいて測定した。表3に示すデータは
Mg成分を広範囲に変化させた場合、これら合金の耐応力
緩和性に対するMgの効果を明らかに確証する。該データ
は合金の安定化焼鈍によって得られる耐応力緩和性の明
らかに有意の改良を更に確証する。それ故、耐応力緩和
性が所望されるコネクタまたはその他の用途に対し、安
定化状態にある合金を本発明により使用することが好ま
しい。
【0036】実施例III 熱間圧延後の実施例Iからの試料を下記の連続手順に供
した。熱間圧延してから該合金を3.8mm(0.15イ
ンチ)に冷間圧延した。次いで該合金を、600℃にお
いて6時間焼鈍を行い、2.5mm(0.10インチ)に
冷間圧延し、830℃において4.5分間焼鈍を行い、
次いで水焼入れすることより成る均質化処理をした。該
合金を均質化処理してから0.76mm(0.030イン
チ)に冷間圧延し、次いで、830℃において4.5分
間にわたり焼鈍を行い、次いで水焼入れし、次いで、
0.38mm(0.015インチ)に冷間圧延した。0.
38mm(0.015インチ)に冷間圧延した際に該合金
の一部を525℃において4時間にわたり過時効焼鈍に
供し、次いで、0.25mm(0.010インチ)に冷間
圧延した。この加工は選択プロセス2にしたがった。次
いで、これら合金の別の部分を475℃において2時間
にわたり時効焼鈍に供し、次いで0.25mm(0.01
0インチ)に冷間圧延した。これらの合金を選択プロセ
ス3にしたがって加工した。板厚0.25mm(0.01
0インチ)における合金の性質を表4に示す。
【0037】
【表4】 板厚0.25mm(0.010インチ)における Cu-3.03Ni-0.71Si-0.17Mgの性質 0.38mm(0.015インチ) 伝導率 耐力 UTS 伸び MBR/t MPa MPaフ゜ロセスニオケル焼鈍 % IACS (ksi) (ksi) % フ゜ロセス 2 525 ℃-4時間 46.1 676(98) 696(101) 1.5 1.2 1.6フ゜ロセス 3 475 ℃-2時間 40.5 814(118) 848(123) 0.8 1.6 6.2 UTS:極限引張強度 MBR:最小曲げ半径
【0038】表4に示されるように選択プロセス2によ
り、689.5MPa (100ksi )以上の優れた極限引
張強さを維持し、かつ優れた曲げ加工性を提供しながら
最高の電気伝導性が得られる。このプロセスは優れた曲
げ加工性ならびに強度および伝導性が所望されるリード
フレーム用途向けの材料を製造するのに特に適してい
る。選択プロセス2により加工された合金はリードフレ
ームとしての用途を主としているが、それら合金は優れ
た曲げ加工性を必要とするコネクタまたはその他の用途
にも使用することができる。コネクタ用としては、耐応
力緩和性を改良するために安定化焼鈍をすることが好ま
しい。選択プロセス3の成績は選択プロセス2の成績お
よび先に表2に示した成績と比較して、他のプロセス特
性の中間に存在する。選択プロセス3は悪方向の曲げは
やや犠牲にするが、827MPa (120ksi )以上の極
限引張強さと40%IACS以上の良好な伝導性を与え
る。
【0039】実施例IV 表Vに示す組成を有する一連の合金を下記のようにして
製造した:合金を約1225℃の温度において溶解し
た。各溶解物を水冷銅板上に載せた鋼製の型に注入し
た。得られた5.1mm×5.1mm×10.2mm(2イン
チ×2インチ×4インチ)のチル鋳造インゴットを2時
間にわたり900℃において均熱し、該温度から熱間圧
延し、6パスにおいて厚さ14mm(0.55インチ)と
した。次いで該合金を下記のようにして加工した:それ
ら合金を面削して板厚10.2mm(0.40インチ)と
し、次いで冷間圧延して板厚4.6mm(0.18イン
チ)とした。該合金の一部を4時間にわたり500℃に
おいて焼鈍を行い、次いで冷間圧延して板厚2.0mm
(0.080インチ)とし、次いで2時間にわたり42
5℃において焼鈍を行い次いで75%冷間圧延して板厚
0.51mm(0.020インチ)とした。次いで、該合
金の機械的性質および電気的性質を測定し、表5に示し
た。
【0040】
【表5】 板厚0.51mm(0.020インチ) における性質 0.2% 耐力 引張強さ 伸び 伝導率 合金(残余分Cu) MPa(ksi) MPa(ksi) % % IACS 4Ni-1Si 607( 88) 676( 98) 4 51 4Ni-1Si-0.1Mg 855(124) 952(138) 2 44 4.7Ni-1.2Si-0.2Mg 848(123) 938(136) 2 42 4.7Ni-1.2Si-0.1Cr-0.2Mg 855(124) 952(138) 2 43 4Ni-1Si-0.1Mn-0.2Mg-0.05Cr 827(120) 931(135) 4 42
【0041】表5は本発明の合金により、電気伝導性を
犠牲にすることなく強度を顕著に改良できる方法を明ら
かに例証する。表5のデータはまた該合金が、強度を犠
牲にすることなく本発明の範囲内において、例えばCrや
Mnのような他の元素を包含することができるということ
をも示す。
【0042】実施例V 板厚4.6mm(0.18インチ)における前記実施例の
合金の一部を475℃の温度において2時間にわたって
焼鈍を行い、次いで冷間圧延して板厚2.0mm(0.0
80インチ)とし、400℃において2時間にわたり焼
鈍を行い、次いで75%冷間圧延して板厚0.51mm
(0.020インチ)とした。該合金の機械的性質およ
び電気的性質を測定し、表6に示した。
【0043】
【表6】 板厚0.51mm(0.020インチ) における性質 0.2%耐力 引張強さ 伸び 伝導率 合金(残余分Cu) MPa(ksi) MPa(ksi) % % IACS 4Ni-1Si 703(102) 800(116) 4 48 4Ni-1Si-0.1Mg 896(130) 1007(146) 2 38 4.7Ni-1.2Si-0.2Mg 883(128) 1007(146) 1 41 4.7Ni-1.2Si-0.1Cr-0.2Mg 952(138) 1055(153) 1 36 4Ni-1Si-0.1Mn-0.2Mg-0.05Cr 917(133) 1041(151) 2 34
【0044】表6を考慮すれば、本発明の合金は適度の
電気伝導性を維持しながら例外的に高いレベルの引張強
さに到達できることが示される。表6は更に、少量のCr
および(または)Mnの添加が該合金の引張強さに対して
有利であるが電気伝導性をやや減少させることを示す。
【0045】実施例VI 表7は、NiおよびSiが本発明で定義された含有量範囲内
にある銅基合金であって、本発明で定義された含有量範
囲内のMg(0.18重量%)を含む銅基合金と、Mg以外
の添加成分(Sn、Mn、Cr)をそれぞれ含む3種類の銅基
合金の耐応力緩和性を、残留応力を測定することによっ
て比較したものである(表7において、「CR」は50
%の冷間圧延が施された合金であることを示し、「A」
は400℃、4時間の焼鈍が施された合金であることを
示す)。表7を見ると、本発明合金(Mg0.18重量
%)は、その他の銅基合金に比して優れている。通常、
Cu-Ni-Si基合金のような析出硬化型銅合金は、焼鈍(時
効処理)された最高硬さ状態で販売されている。温度1
05℃、100000時間のシュミレーション結果によ
ると、本発明合金(Mg0.18重量%)は、90%の残
留応力を有している。その他の銅基合金の残留応力は、
90%よりもかなり低く、本発明合金(Mg0.18重量
%)に比して大幅に劣っている。以下に、その比較結果
を示す: a) Sn添加の場合:本発明合金に比して11%低い。 b) Mn添加の場合:本発明合金に比して21%低い。 c) Cr添加の場合:本発明合金に比して30%低い。 たとえ、焼鈍(時効)状態ではなく、冷間圧延状態で、
合金が販売されていると仮定しても、本発明合金は、そ
の他の銅基合金に比して著しく優れている。表7は、Cr
を含む冷間圧延状態の銅基合金の残留応力の割合が、冷
間圧延状態の本発明合金における残留応力の割合よりも
18%少ないことを示している。
【0046】実施例VII 表8は、NiおよびSiが本発明で定義された含有量範囲内
にある銅基合金であって、本発明で定義された含有量範
囲内のMg(0.36重量%)を含む銅基合金と、Mg以外
の添加成分(Sn、Mn、Ti、Zr) をそれぞれ含む4種類の
銅基合金の電気伝導性、降伏強度、極限引張強さ(UT
S)を比較したものである。電気伝導性と引張強度の関
係は、一方の特性を増大させると、他方の特性が低下す
るのが普通である。しかるに、或る優れた合金は、高い
引張強さと、高い電気伝導性とを兼備する。表8に示さ
れた各合金は、先に説明した選択プロセス1によって高
強度と適度の電気伝導性を有するように処理されたCu-N
i-Si合金についての試験結果である。表8のデータから
明らかなように、Mg0.36重量%を含む本発明銅基合
金は、その他の合金に比して優れている。以下に、その
比較結果を示す: a) Sn添加の場合:本発明合金の極限引張強さは、Snを
含む銅基合金のそれよりも僅かに低いが、本発明合金の
電気伝導性は、劇的に(24%も)高い。 b) Mn添加の場合:本発明合金の極限引張強さは、Mnを
含む銅基合金のそれよりも僅かに低いに過ぎないが、電
気伝導性については、Mnを含む銅基合金に比して驚くほ
ど高い(17%高い)。 c) Ti添加の場合:Tiを含む銅基合金の極限引張強さ
は、本発明合金のそれに比して約11%低い。一方、驚
くべきことに、Tiを含む銅基合金の電気伝導性は、本発
明合金のそれに比して約33%低い。 d) Zr添加の場合:本発明合金の極限引張強さは、Zrを
含む銅基合金のそれに比して僅かに高いに過ぎないが、
本発明合金の電気伝導性は、Zrを含む銅基合金のそれに
比して28%高い。
【0047】実施例VIII 表9は、NiおよびSiが本発明で定義された含有量範囲内
にある銅基合金であって、本発明で定義された含有量範
囲内のMg(0.1重量%)を含む銅基合金と、Mg以外の
添加成分(Sn、Fe) をそれぞれ含む2種類の銅基合金の
電気伝導性、降伏強度、極限引張強さ(UTS)を比較
したものである。表9に示された各合金は、先に説明し
た選択プロセス2によって処理された。表9は、中程度
の強度と、高電気伝導性とを有するように処理された状
態で、本発明合金がその他の銅基合金に比して、驚くほ
ど改善されていることを示している。
【0048】実施例IX 公称組成がNi:4%、Si:1%、Sb:0.4%、残部Cu
である銅合金を鋳造して、導電性と極限強さを評価し
た。この合金は、熱間圧延加工の間に割れを生じた。
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】本明細書において「耐力」とは0.2%の
歪み量(offset) で測定した耐力を意味する。「UT
S」は極限引張強さを意味する。本発明における「伸
び」は51mm(2インチ)の標点間距離において測定し
たものである。用語「ksi 」は25.4平方mm(1平
方インチ)当り1000ポンドの略語である。全ての組
成100分率は重量%である。すべての焼鈍時間は温度
保持時間であり、その温度に到達、および冷却する炉内
時間を含まない。本発明によれば連続焼鈍は合金の溶体
化処理または再溶体化処理に対して好ましい。10分間
以下の時間において行うことのできる焼鈍は連続焼鈍技
術により行うことが好ましい。上記時間以上における焼
鈍はベル(Bell)焼鈍により行うことが好ましい。
【0053】本明細書に示される工業用銅合金の記号は
米国、ニューヨーク州10017、ニューヨーク市、レ
キシントンアベニュー405におけるカッパー・デベロ
プメント・アソシエイション Inc.の標準記号によ
る。
【0054】本発明により、前述した目的、手段、およ
び利点を十分に満足させる、適度な伝導性および高強度
を有する多目的銅合金およびそれに対する加工方法が提
供されたことが明らかである。本発明をその特定の実施
態様との組合せにおいて記載したが、前記の記載から多
くの変更、改良および変更が当業者に明らかであること
は明白である。したがって、全ての上記変更、改良およ
び変更は特許請求の範囲の記載の要旨および広義の範囲
内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mg量成分と、熱間加工中の割れに対する合金の
温度感受率との間の関係を示すグラフ。
【図2】時効処理温度と、異なる時効化時間における合
金の硬度、曲げ加工性および電気伝導率との関係を示す
グラフ。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 改善された組合せの極限引張強さ、電気
    伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法
    において: (a) 実質的にNi:0.05〜5.0%、Si:0.01〜
    2.0%、選択成分としてのMg:1%以下、残部:Cu
    (数字はいずれも重量%)から成る銅基合金を調製し; (b) 前記銅基合金を所望形状に鋳造し; (c) 前記銅基合金を温度750〜950℃において30
    秒〜8時間にわたって溶体化し、次いで急冷し; (d) 前記銅基合金に、少なくとも30%の加工率で冷間
    加工を施し; (e) 温度750〜950℃、30秒〜8時間の焼鈍を行
    い、次いで急冷し; (f) 少なくとも10%の加工率で冷間加工を行い; (g) 温度500〜700℃、0.5〜8時間の過時効焼
    鈍処理を施し; (h) 前記銅基合金に、温度200〜345℃、0.5〜
    8時間の安定化焼鈍を施す、前記各工程を含む銅基合金
    の製造方法。
JP8124602A 1985-04-26 1996-05-20 改善された組合せの極限引張強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法 Expired - Lifetime JP2617703B2 (ja)

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