JP2608479B2 - 環状デプシペプチド物質およびその製造法、ならびにそれを含有する駆虫剤 - Google Patents

環状デプシペプチド物質およびその製造法、ならびにそれを含有する駆虫剤

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は,駆虫活性を有する新規化合物,およびその
製造法,ならびに駆虫剤に関する。
従来の技術 従来,微生物の生産に生理活性物質は数多く知られて
いるが,本発明による環状デプシペプチド物質であるPE
1022物質と理化学的性状が一致する化合物は知られてい
ない。また駆虫活性を有する化合物は多数知られている
が,微生物の生産物で駆虫活性を有する物質としては,
デストマイシンA,ハイグロマイシンB,アベルメクチン等
が挙げられるがその数はきわめて少ない。
発明が解決しようとする課題 一般に,寄生虫病と呼ばれる病気は動物宿主に寄生虫
が寄生することによって起こり,人間および動物の健康
ならびに農業に甚大な被害を及ぼす。従って新規な駆虫
活性物質の出現は常に求められている。本発明者らは,
駆虫作用を有する新規な化合物を提供するとともに,そ
の有利な製造法を確立し,該有効物質を含有する駆虫剤
を提供することによって,これを解決しようとするもの
である。
課題を解決するための手段 本発明者らは,上述の期待に応えるべく,駆虫活性を
有する物質の探索を続けていたところ,カビに属する菌
株の培養物中に駆虫活性を有する物資が生産されている
ことを見出し,有効物質を単離し,その理化学性状を確
定することにより,本発明を完成した。
PE1022物質は下記の特性を有する。
(1)色および形状:無色結晶 (2)融点:104〜106℃ (3)分子式:C52H76N4O12 (4)元素分析: 計算値 C65.80,H8.07,N5.90(%) 実験値 C65.46,H8.25,N6.10(%) (5)マススペクトル(EI−MS):m/z948(M+) (6)比旋光度:[α]22 D−120゜(c 0.1,メタノー
ル) (7)紫外線吸収スペクトル:第1図に示す。
(8)赤外線吸収スペクトル:第2図に示す。
(9)1HNMRスペクトル:第3図に示す。
(10)13CNMRスペクトル:第4図に示す。
(11)溶解性:メタノール,酢酸エチル,アセトン,ク
ロロホルム,ジメチルスルホキシドに溶け,水に溶けな
い。
(12)塩基性,酸性,中性の区別:中性物質また,本発
明に係る環状デプシペプチド物質であるPF1022物質の化
学構造式は,下式(I)で示される事が分かった。
式(I)で示されるPE1022物質は公知の化学的な合成
方法によって製造することは可能であるが,以下にその
製造法の一様態として,カビに属するPE1022物質生産菌
を培養し,その培養物からPF1022物質を採取する方法に
記載する。
本発明に使用する微生物PE1022株は1988年に,茨城県
下で採取した植物より新たに分離したカビの一種で,そ
の菌学的性状は次の通りである。
PF1022株の菌学的性状 ポテト・デキストロース寒天(PDA),ポテト・キャ
ロット寒天(PCA),麦芽エキス寒天(MEA),およびオ
ートミール寒天(OA)の4種類の培地上,25℃でよく生
育し,7日間でペトリ皿全面(>85mm)が白色綿毛状菌糸
でおおわれる。集落の裏面が最初白色ないし淡黄色で,3
週間程度培養すると径2〜3mmの黒褐色斑点を生ずる
が,分生子などの特徴的形態は観察出来なかった。顕著
な可溶性色素は生成しない。pH5〜7での生育は良好で
ある。
ツアペック・ドックス寒天(CzA),三浦寒天(Lc
A),およびコーンミール寒天(CMA)の各培地上,25℃
での成育は悪く,7日間で径10〜20mm程度の白色綿毛様の
集落となる。分生子などの形成は認められなかった。37
℃は生育せず,15℃ではPCA,PDA,MEA,OAで35〜50mm程度
に生育し,その培養性状は25℃の場合とほぼ同様であっ
た。
素寒天上に減菌した稲ワラ,バナナの葉,カーネーシ
ョンの葉などを置いて植菌し,25℃で1ケ月間観察した
が,この場合も分生子の形成などを特徴的な形態は認め
られなかった。
従って,本菌株を無胞子不完全菌PF1022株と呼称する
ことにした。
なお,本菌株は工業技術院微生物工業技術研究所に微
工研菌寄第10504号(FERM P−10504)として寄託され
ていたが,現在は微工研条寄第2671号(FERM BP−267
1)として寄託されている。
PF1022株は他のカビに見られるように,その性状が変
化しやすい。例えば,この株に由来する突然変異株(自
然発生または誘発性),形質接合体または遺伝子組替え
体であっても,PF1022物質を生産するものは全て本発明
に使用できる。本発明の方法では,前記の菌を通常の微
生物が利用しうる栄養物を含有する培地で培養する。栄
養源としては,従来カビの培養に利用されている公知の
ものが使用できる。
PF1022株の培養法 例えば,炭素源として,グルコース,シュクロース,
水あめ,デキストリン,澱粉,グリセロール,糖みつ,
動・植物油等を使用しうる。また窒素源として,大豆
粕,小麦胚芽,コーンスティープリカー,綿実粕,肉エ
キス,ペプトン,酵母エキス,硫酸アンモニウム,硫酸
ソーダ,尿素等を使用しうる。その他,必要に応じ,ナ
トリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,コバ
ルト,塩素,燐酸,硫酸,およびその他のイオンを生成
することができる無機塩類を添加することは有効であ
る。また菌の発育を助け,PF1022物質の生産を促進する
ような有機および無機物を適当に添加することができ
る。
培養法としては,好気的条件での培養法,特に深部培
養法が最も適している,培養に適当な温度は15〜30℃で
あるが,多くの場合26℃付近で培養する。PF1022物質の
生産は培地や培養条件により異なるが,振盪培養,タン
ク培養のいずれにおいても通常2〜10日の間でその蓄積
が最高に達する。培養中のPF1022物質の蓄積量が最高に
なった時に培養を停止し,培養液から目的物質を単離精
製する。
PF1022物質の精製法 本発明によってえられるPF1022物質の培養物からの採
取に当たっては,その性状を利用した通常の分離手段,
例えば,溶剤抽出法,イオン交換樹脂法,吸着または分
配カラムクロマト法,ゲルろ過法,透析法,沈澱法等を
単独または適宜組合わせて用いることができる。例え
ば,PF1022物質は,培養菌体中からはアセトン−水また
はメタノール水で抽出される。また,培養液中に蓄積さ
れたPF1022物質は合成吸着剤であるダイヤイオンHP−20
(三菱化成社製)等に吸着される。また,水と混ざらな
い有機溶剤,例えば,ブタノール,酢酸エチル等で抽出
すればPF1022物質は有機溶剤層に抽出される。
PF1022物質をさらに精製するには,シリカゲル(ワコ
ーゲル C−200,和光純薬工業社製等),アルミナ等の
吸着剤やセファデックスLH−20(ファルマシア社製)等
のゲル濾過剤を用いるクロマトグラフィーを行うとよ
い。また逆相高速液体クロマトグラフィーも有効な手法
である。
本発明の第3の要旨は,PF1022物質を有効成分として
含有する駆虫剤を提供することにある。
PF1022物質を駆虫剤として適用しようとする動物は
豚,牛,馬,兎,羊,山羊,鶏,アヒル,七面鳥,二十
日ネズミ,大黒ネズミ,モルモット,サル,犬,猫,小
鳥等の家畜,家禽,実験動物,ペット等を挙げることが
できる。また,これらの動物の寄生虫としては,例え
ば,牛,羊の捻転胃虫,オステルターグ胃虫,毛円虫,
クーパー線虫,腸結節虫,双口吸虫,ベネディン条虫,
肺虫,肝蛭等,豚の回虫,鞭虫,腸結節虫等,犬の回
虫,鈎虫,鞭虫,糸状虫等,猫の回虫,マンソン裂頭条
虫等,鶏の回虫,毛様虫,盲腸虫等がある。また、ヒト
の回虫,蟯虫,鈎虫(ズビニ鈎虫,セイロン鈎虫,アメ
リカ鈎虫),東洋毛様線虫,糞線虫,鞭虫などが知られ
ている。
PF1022物質は寄生虫感染症の治療および予防のために
用いることができる。治療のための投与方法は,経口適
または非経口的な方法がある。経口的に投与する場合
は,液状の製剤を胃カテーテル等の器具を用いて強制的
に投与する方法,通常の飼料または飲料水に混合して投
与する方法,あるいは,通常の経口投与に適した剤型,
例えば錠剤,カプセル剤,ペレット剤,巨丸剤,粉剤あ
るいは軟カプセル剤等で投与する方法がある。非経口的
に投与する場合は、ピーナッツ油,大豆油等の非水溶性
処方,グリセロール,ポリエチレングリコール等の水溶
性処方を注射などにより皮下,筋肉内,静脈内,腹腔内
等に投与する。また,寄生虫の予防のための投与方法
は,通常用いられている飼料に混合して経口的に投与す
るのが一般的である。投与期間は予防の場合制限が無い
が,通常肉用鶏では約2ケ月,豚では5ケ月で十分であ
ることが多い。
PF1022物質の投与量は対象動物及び寄生虫の種類,あ
るいは投与方法により異なる。例えば,鶏の回虫を駆除
するために液状製剤を胃カテーテルを用いて経口的に投
与する場合は0.05mg/kg以上,好ましくは0.2ないし3mg/
kgを投与する。また,予防のための投与量は飼料中1ppm
以上,好ましくは5〜10ppmの濃度で連続的に投与す
る。
また,PF1022物質を液体担体に溶解または,懸濁した
場合には,動物の皮下,または筋肉内等に注射により,
非経口的に投与することができる。非経口投与する場合
は,ピーナッツ油,大豆油のような植物油類を用いた非
水性処方が使用され,またグリセロール,ポリエチレン
グリコールのような水溶性賦形剤を用いた水性非経口処
方も使用される。これらの処方は、一般に,PF1022物質
を0.1〜10重量%含有する。非経口投与における用量は,
1日当たり,0.01mg/kg以上,好ましくは,0.1〜10mg/kgの
範囲で使用される。本PF1022物質をマウスに300mg/kgを
経口投与しても平常の体重増加を示し,その他の異常も
認められず,本物質がきわめて低毒性であることを示し
ている。又,本PF1022物質のエイムス試験,及び哺乳動
物細胞染色体異常試験は,共に陰性で変異原性にも問題
がないことが証明されている。
実施例 以下に本発明の実施例を示すが,これらは単なる一例
であって本発明を限定するものではない。ここに例示し
なかった多くの変法あるいは修飾手段を用いることは勿
論のことである。
実施例1 種培地として,澱粉1.0%,グルコース1.0%,綿実粕
0.5%,小麦胚芽0.5%,大豆粕0.5%,酵母エキス0.5
%,硫酸マグネシウム(7水塩)0.1%,炭酸カルシウ
ム0.2%,および塩化ナトリウム0.2%の組成からなる培
地を用いた。
また,生産培地として,水あめ3.0%,大豆油1.0%,
小麦胚芽0.8%,大豆粕1.0%,乾燥酵母1.0%,炭酸カ
ルシウム0.3%,硫酸マグネシウム(7水塩)0.2%およ
び塩化ナトリウム0.2%の組成からなる培地を用いた。
なお,殺菌前pHはすべてpH7.0に調節して使用した。
前記の種培地20mlを分注した100ml容三角フラスコを1
20℃で15分間殺菌し,これに不完全菌PF1022株(FERM
BP−2671)の斜面寒天培養の2〜3白金耳を接種し,26
℃で7日間振盪培養し,第1種培養とした。次いで,種
培地80mlを分注した500ml容三角フラスコを120℃で15分
間殺菌し,前記第1種培養4mlを接種し,26℃で2日間振
盪培養し,これを第2種培養とした。予め120℃で30分
間殺菌した35Lの生産培地を含む50L容ジャー・ファーメ
ンター2基に,前記の第2種培養をフラスコ5本分接種
し,26℃で5日間通気(20L/分),撹拌(初期250rpm,65
時間以降400rpm)培養した。
培養終了後,濾過助剤として珪藻土を加えて濾過し
た。
得られた菌体を含む固型物に,60%アセトン水(62L)
を加え,1時間撹拌後菌体を濾別して抽出液を得た。菌体
抽出液は,減圧下でアセトンを留去して11.7Lの濃縮液
を得た。この濃縮液から酢酸エチル(23L)でPF1022物
質を抽出し,酢酸エチル層を濃縮すると油状物質(19.8
g)が得られた。この油状物質をシリカゲルカラム(ワ
コーゲル C−200,250g)の上部にのせ,クロロホルム
(2L)およびクロロホルムーメタノールの混合溶媒(10
0:1,1.5L)で展開するクロマトグラフィーを行った。PF
1022物質を含む画分を濃縮乾固すると褐色の油状物質
(4.25g)が得られた。得られた粗PF1022物質を更に,
メタノールを展開溶媒とするセファデックスLH−20(1
L)のカラムクロマトグラフィーを行って精製すると淡
黄色の粉末(594mg)が得られた。この淡黄色粉末100mg
をアセトニトリル−水の混合溶媒(85:15)を展開溶媒
とする高速液体クロマトグラフィー(YMC,D−ODS−5,流
速5ml/分)により精製し,PF1022物質を含む画分(保持
時間42分)の溶媒を留去すると無色粉末(65.5mg)が得
られた。この粉末を,0.5mlのアセトンに溶解後5mlのヘ
キサンを加え室温に一晩静置したところ,PF1022物資の
無色柱状結晶(24.9mg)が得られた。
実施例2 糞検査により,鶏回虫の感染が確認された鶏回虫人工
感染鶏を1群3羽に群別して使用した。PF1022物質の投
与量は0.2mg/kgから3mg/kgまでの5段階とし,無投与対
照群を含めて,6群,計18羽を試験に供した。
PF1022物質の投与に際しては,各鶏毎の体重から正確
に計算した投与量を,カルボキシメチセルローズを混合
した水に懸濁させて,胃ゾンデを用いて一回経口投与し
た。投与後,毎日各鶏毎に排出虫体数を数え,7日後に,
各鶏を解剖して腸管内残留虫体数を数え,排虫率を算出
した。
また,各鶏について投与直前の体重と7日後の体重とを
測定し増体率を算出した。
上記試験結果は第1表に示す通りであり,PF1022物質
は,0.2mg/kgの投与量で駆虫活性を示し,投与量を増す
に従い駆虫効果は上昇し,3mg/kgで排虫率ほぼ100%を示
すという強い駆虫活性物質である。さらに本物質は,排
虫率100%を示す投与量においても,増体率は,無投薬
対照のものと同等であり,きわめて安全性の高い物質で
ある。
実施例3 糞便検査により,豚回虫(Ascaris suum)の感染が確
認された豚にPF1022物質を経口投与して駆動効果を観察
した実施例を示す。
PF1022物質は5mg/kg,10mg/kgの1回,及び,1.25mg/k
g,2.5mg/kg,5mg/kgの1日1回2日間連続投与とし,所
要量の原末を少量の通常の飼料に添加して与えられた。
投薬後,毎日排出虫体を数え,糞便注の回虫卵EPG(糞
便1g中の虫卵数)を調べた。そして,投薬開始から1週
間後に解剖して腸管内の残存虫体数を数えた。
結果は第2表に示す通りであった。1.25mg/kgの2日
間投与で駆虫活性を示し,2.5mg/kgの2日間投与,5mg/k
g,10mg/kgの1回投与では50%前後からそれ以上の排虫
率を示した。そして,5mg−kgの2日間投与では100%の
排虫率を示した。
このようにPF1022物質は豚回虫に対して強い駆虫効果
が認められた。
実施例4 糞便検査により,豚鞭虫(Trichuris suis)の感染が
確認された豚にPF1022物質を経口投与して駆虫効果を観
察した実施例を示す。
PF1022物質は1mg/kg,5mg/kg,10mg/kgの1回,及び,2.
5mg/kg,5mg/kgの1日1回2日間連続投与とし,所要量
の原末を少量の通常の飼料に添加して与えられた。投薬
後,毎日全例の糞便中の鞭虫卵のEGPを調べ,また,そ
のうち3例においては排虫を数えた。そして,投薬開始
から1時間後に全例解剖して腸管内の残存虫体数を数え
た。
結果は第3表に示す通りであった。1mg/kg1回投与で
わずかに駆虫活性を示し,5mg/kg1回投与では排虫率80%
前後から100%,10mg/kg1回投与と5mg/kg2日間投与では
残存虫体が0で排虫率100%,2.5mg/kg2日間投与では1
例が残存虫体1,他の1例は残存虫体0であった。
このようにPF1022物質は豚鞭虫に対して強い駆虫効果
が認められた。
実施例5 糞便検査により,猫回虫(Toxocara cati)の感染が
確認された猫12頭にPF1022物質を1回経口投与して駆虫
効果を観察した実施例を示す。
感染猫12頭を1群4頭の3群に分け,それぞれ0.2mg/
kg投与群,1mg/kg投与群,5mg/kg投与群とした。PF1022物
質は所要量の原末を少量の通常の飼料に添加して与えら
れた。観察項目は投薬後7日間の排虫数と7日後の解剖
時点の残存虫体数とした。
結果は第4表に示す通りであった。0.2mg/kgでも4例
中3例が排虫率100%であり,5mg/kgでは全例が排虫率10
0%であった。
このようにPF1022物質は猫回虫に対して強い駆虫効果
が認められた。
実施例6 糞便検査により,猫鉤虫(Ancylostoma tubaef orm
e)の感染が確認された猫12頭にPF1022物質を1回経口
投与して駆虫効果を観察した実施例を示す。
感染猫12頭を1群4頭の3群に分け,それぞれ0.2mg/
kg投与群,1mg/kg投与群,5mg/kg投与群とした。PF1022物
質は所要量の原末を少量の通常の飼料に添加して与えら
れた。観察項目は投薬後7日間の排虫数と7日後の解剖
時点の残存体数とした。
結果は第5表に示す通りであった。0.2mg/kgでは1列
で排虫率100%であった。投与量を増すとそれにつれて
排虫率も増大し,5mg/kgでは全例が排虫率100%であっ
た。
このようにPF1022物質は猫鉤虫に対して強い駆虫効果
が認められた。
実施例7 第4胃に寄生するオステルターグ胃虫(Ostertagia c
ircumcincta)及び,小腸に寄生する毛様線虫(Tricost
rongylus colubriformis)を人工的に混合感染させた羊
24頭にPF1022物質を経口投与して駆虫効果を観察した実
施例を示す。
感染羊24頭を1群6頭の4群に分け、それぞれ1mg/kg
投与群,5mg/kg投与群,10mg/kg投与群,及び,感染対照
群とした。PF1022物質は0.5%CMCに懸濁して胃カテーテ
ルを用いて投与された。観察項目は投薬前の糞便1g中の
寄生虫虫卵数(EPG)と投薬日後のEPG,そして,投薬7
日後に解剖した際の第4胃内及び腸管内の残存虫体数と
した。
結果は第6表に示す通りであった。各々の数値は6頭
の平均値で示した。10mg/kg投与群では第4胃内および
腸管内残存虫体数は感染対照群に比べて半分程度であっ
た。
このようにPF1022物質は毛様線虫に対して駆虫効果が
認められた。
実施例8 糞便検査により,いわゆる消化管内線虫(捻転胃虫,
オステルターグ胃虫,毛様線虫,クーペリア等)の感染
が確認された牛3頭にPF1022物質を経口投与して駆虫効
果を観察した実施例を示す。
PF1022物質は5mg/kg1回と12.5mg/kg1日1回2日間投
与とし,水に懸濁して胃カテーテルを用いて投与され
た。投薬前3日間と投薬後7日間毎日糞便中の寄生虫虫
卵数(EPG)を数えた。
結果は第7表に示す通りであった。5mg/kg投与ではば
らつきはあるが徐々にEPGが減少する傾向を示した。12.
5mg/kg2日間投与では2日目の投与の翌日に投薬前の1/2
程度のEPGとなった。
このようにPF1022物質は消化管内線虫に対して駆虫効
果が認められた。
実施例9 糞便検査により,馬回虫(Parascaris equorum)と円
虫類(Strongylus spp.)の感染が確認された馬1頭にP
F1022物質を経口投与して駆虫効果を観察した実施例を
示す。
PF1022物質は水に懸濁して胃カテーテルを用いて1日
目に5mg/kg,2日目に2.5mg/kg投与された。回虫,円虫と
も投薬開始から1週間毎日糞便1g中の寄生虫虫卵数(EP
G)を数え,排虫数も数えた。なお,円虫は糞便100g中
の排虫数を数えた。
結果は第8表に示す通りであった。EPGは投薬2日目
から減少し,その翌日には激減した。回虫においては投
薬2日目とその翌日に排虫が観察され,それ以後は排虫
がなかった。円虫においては投薬2日目において糞便10
0g中に82の排虫が観察され,それ以降は0であった。
このようにPF1022物質は馬回虫と円虫類に対して強い
駆虫効果が認められた。
実施例10 糞便検査により,鶏回虫(Ascaridia galli)の感染
が確認された鶏9羽にPF1022物質を飼料添加で投与して
駆虫結果を観察した実施例を示す。
鶏を1群3羽に分け,それぞれ1ppm添加群,5ppm添加
群,10ppm添加群とした。PF1022物質を添加した飼料は3
週間にわたって鶏に与えられた。糞便中の虫卵は1週間
に1回観察し,排虫は毎日数えた。投与終了後,鶏を解
剖して残存虫体数を数えた。
結果は第9表に示す通りであった。1ppm添加群では2
例でわずかに排虫が認められ,5ppm添加群では投約開始
から2週間後には糞便中の虫卵は全例0となった残存虫
体が認められた。10ppm添加群では2例において排虫率1
00%であった。
このようにPF1022物質は飼料添加によっても鶏回虫に
対して強い駆虫効果が認められた。
実施例11 牛の第4胃から採取した捻転胃虫(Haemonchus conto
rtus)を試験管内で遊泳させ,そこへPF1022物質を添加
して駆虫活性を観察した1例を示す。
調整した培養液を4本の試験管に分注して39〜40℃に
加温しておき,牛の第4胃から採取した捻転胃虫をそれ
ぞれ3から5隻入れて遊泳させた。そこへPF1022物質の
所定量を少量のジメチルスルホキシドに溶解したものを
滴下混和し,捻転胃虫の動きを観察した。PF1022物質は
培養液中の最終濃度でそれぞれ2ppm,8ppm,40ppmとなる
ように調整した。なお,1本はジメチルスルホキシドのみ
滴下し対照とした。
結果はPF1022物質40ppmでは10分,8ppmでも15分,2ppm
では25分で運動が停止した。ジメチルスルホキシドのみ
滴下した対照では運動は弱くなるが1時間経過しても運
動性が認められた。
このことからPF1022物質は捻転胃虫に対して強い麻痺
作用があることが認められた。
実施例12 糞便検査で犬回虫(Toxocara canis)、犬鉤虫(Ancy
iostoma caninum)、犬に鞭虫(Trichuris vu−ipis)
がそれぞれ感染していることが確認された犬PF1022物質
を経口投与して駆虫効果を観察した実施例を示す。
犬回虫あるいは犬鉤虫に感染した犬それぞれ1頭に5m
g/kgを1回投与し、排虫数と残存虫体数を数えた。犬回
虫では排虫数6、残存虫体数0であり、犬鉤虫では排虫
数12、残存虫体数0であり、排虫率はいずれも100%で
あった。
一方、犬鞭虫に感染した犬1頭に5mg/kg、もう1頭に
10mg/kgを1回経口投与し、排虫数と残存虫体数を数え
た。5mg/kgでは排虫数327、残存虫体数504で排虫率は3
9.4%、10mg/kgでは排虫数22、残存虫体数0で排虫率10
0%であった。
このようにPF1022物質は犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫に対
して強い駆虫効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
第1図:PF1022物質のメタノール中(100μg/ml)での紫
外部吸収スペクトルを示す。 第2図:PF1022物質の臭化カリウム錠での赤外部吸収ス
ペクトルを示す。 第3図:PF1022物質の重クロロホルム溶液中で400M水素
核核磁気共鳴スペクトルを示す。 第4図:PF1022物質の重クロロホルム溶液中で100M炭素
核核磁気共鳴スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢口 貴志 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 宮道 慎二 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 庄村 喬 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 佐々木 徹 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 瀬崎 正次 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 清水 功雄 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 新井田 昌志 神奈川県横浜市港北区師岡町760 明治 製菓株式会社薬品総合研究所内

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の構造式(I)で示されるPE1022物質
  2. 【請求項2】PE1022物質生産能を有する無胞子不完全菌
    PE1022株(FERM BP−2671)を培養し,その培養物から
    PE1022物質を採取することを特徴とする請求項1に記載
    の構造式で示されるPE1022物質の製造法。
  3. 【請求項3】有効成分として請求項1に記載の構造式で
    示されるPE1022物質を含有する駆虫剤。
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