JP2509763Y2 - Ｄｏｈｃ機関のカム軸駆動装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は、シリンダヘッドに設けた２本のカム軸によ
り吸気弁及び排気弁を開閉するようにしたDOHC機関のカ
ム軸駆動装置に関する。

〈従来の技術〉 DOHC機関のカム軸駆動装置としては、従来例えば特開
昭60-50208号公報に示されているように、シリンダヘッ
ドに回転自在に支承した２つのカム軸を、クランク軸に
より、チェーン，減速用のアイドラ及びチェーンを介し
て、回転駆動するようにしたものがある。

ここで、アイドラは、シリンダヘッドの端部とこれに
対し所定間隙を介する別体のカバー間に設けられ、かつ
シリンダヘッドの端部とカバー間を結合する取付ボルト
により軸受部を介して回転自在に支承されている。

〈考案が解決しようとする課題〉 ところで、このような従来のカム軸駆動装置にあって
は、シリンダヘッドの端部とカバー間を結合する取付ボ
ルトによりアイドラを支承する構造のため、カバーの熱
変形や組立誤差により取付ボルト穴の中心がカバー側と
シリンダヘッド側とでズレ（偏心）を生じ、カバーの取
付ボルト穴から油が洩れる原因となる。

また、アイドラ組立時にカバーにより視界を遮られ、
アイドラとチェーンのタイミングマークの位置合わせが
できず、吸気弁及び排気弁の開閉時期が狂ってしまうこ
とがあった。

そこで、本考案は、カバーからの油洩れを防止できる
と共に、吸気弁及び排気弁の開閉時期を正確に設定でき
るようにしたDOHC機関のカム軸駆動装置を提供すること
を目的とする。

〈課題を解決するための手段〉 このため、本考案は、シリンダヘッドに回転自在に支
承した２つのカム軸を、クランク軸により、中間に減速
用のアイドラを介して、チェーン駆動するようにしたDO
HC機関のカム軸駆動装置において、前記アイドラをアイ
ドラ軸受部を貫通するアイドラ取付ボルトによりシリン
ダヘッドの端部に片持状に支持し、このシリンダヘッド
の端部周縁からアイドラを囲む周壁をアイドラの軸方向
にアイドラ取付ボルトの頭部を越え、且つアイドラ及び
アイドラ取付ボルトと対向する位置に開放部分を有する
ように延出し、この周壁の下方部分はアイドラとクラン
ク軸との間のチェーンが通される開口を有してアイドラ
の中心より下方に位置にするようにし、前記周壁の開放
部分よりアイドラ取付ボルトを着脱可能にすると共に、
この開放部分をカバーにより閉塞するように構成した。

〈作用〉 上記の構成においては、アイドラをアイドラ取付ボル
トによりシリンダヘッドの端部に片持状に支持し、この
シリンダヘッドの端部周縁からアイドラを囲む周壁をア
イドラの軸方向にアイドラ取付ボルトの頭部を越えて延
出し、この周壁の下方部分はアイドラとクランク軸との
間のチェーンが通される開口を有してアイドラの中心よ
り下方に位置するようにしたので、シリンダヘッドとカ
バーとの接合面をアイドラより外方に位置させることが
できるなど、アイドラで飛散した油が接合面を直撃して
洩れるのを防ぐことができる。

また、アイドラをアイドラ取付ボルトによりシリンダ
ヘッドの端部に片持状に支持し、シリンダヘッド側のア
イドラを囲む周壁をアイドラ及びアイドラ取付ボルトと
対向する位置に開放部分を有するように延出し、この周
壁の開放部分よりアイドラ取付ボルトを着脱可能にする
と共に、この開放部分をカバーにより閉塞するようにし
たので、アイドラ取付ボルトを開放部分を閉塞するカバ
ーと関係なく固着でき、カバーの取付ボルト穴からの油
洩れを防止することができる。

また、開放部分を介して、視認性よく、アイドラとチ
ェーンのタイミングマークの位置合わせを正確に行うこ
とができる。

〈実施例〉 以下に本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図〜第４図は一実施例を示し、第１図はシリンダ
ブロック及びシリンダヘッドの正面図、第２図はシリン
ダヘッドの横断面図、第３図は分解斜視図、第４図はシ
リンダヘッドの底面図である。

シリンダブロック１とシリンダヘッド２とは、ガスケ
ット，ボルト（共に図示せず）により互いに固着されて
いる。

シリンダヘッド２には、吸気弁３を開閉する吸気弁カ
ム軸5aと排気弁４を開閉する排気弁カム軸5bの２つが回
転自在に支持されている。そして、これらのカム軸5a,5
bの端部にはそれぞれスプロケット6a,6bが固着されてい
る。

シリンダブロック１の端部から突出するクランク軸７
にはクランクスプロケット８が固着されている。

アイドラ10は、大径アイドラ10aと小径アイドラ10bと
からなり、シリンダヘッド２の端部2aに位置させて、ア
イドラ軸受部10cを貫通してシリンダヘッド２の端部2a
に片持状に固着されるアイドラ取付ボルト11により回転
自在に支持されている。また、アイドラ取付ボルト11を
固着するシリンダヘッド２の端部には内方に突出するボ
ス部2bが設けられ、このボス部2bは機関冷却水路12内に
臨んでいる。

クランク軸７のクランクスプロケット８と大径アイド
ラ10aとの間にはチェーン13が巻掛けられ、また、小径
アイドラ10bと吸気弁カム軸5a及び排気弁カム軸5bのス
プロケット6a,6bとの間にはチェーン14が巻掛けられて
いる。尚、15,16は可動のチェーンガイド、17,18は固定
のチェーンガイドである。

ここで、大径アイドラ10aはクランクスプロケット８
の２倍の径を有して、アイドラ10がクランク軸７の回転
の1/2となるように設定され、小径アイドラ10bはスプロ
ケット6a,6bと同径で、カム軸5a,5bがアイドラ10と等速
回転するように設定されている。

また、大径アイドラ10aにはタイミングマーク19が付
され、チェーン13のタイグマーク20と位置合わせされ
る。尚、クランクスプロケット８はタイミングマーク21
を有し、チェーン13のタイミングマーク22と位置合わせ
される。

また、小径アイドラ10bにはタイミングマーク23が付
され、チェーン14のタイグマーク24と位置合わせされ
る。尚、スプロケット6a,6bはタイミングマーク25a,25b
を有し、チェーン14のタイミングマーク26a,26bと位置
合わせされる。

一方、シリンダヘッド２の端部2aからアイドラ10を囲
むように周壁27が形成され、この周壁27はアイドラ取付
ボルト11の頭部を越えて外方へ延出している。この周壁
27の前壁部27aにはアイドラ10と対向して開口28が形成
され、この開口（開放部分）28は大径アイドラ10aの外
径より大きく開口され、カバー29（第３図参照）により
閉塞かつシールされている。尚、29aはカバー29に形成
された取付ボルト穴である。

ここで、シリンダヘッド２の上端面2cと周壁27の上端
面27bは１つの平面を形成し、ここにガスケット30を介
して接合されるロッカカバー31の周壁31aも１つの平面
を形成している（第３図参照）。尚、32はロッカカバー
取付用のボルト、33は弾性体である。

また、周壁27の下端面27cには開口34を設けており、
この開口34は大径アイドラ10aの外径より大きく形成さ
れている（第４図参照）。

尚、35（第１図）はネジ穴、36（第２図）は点火栓、
37（第２図）は油通路、38（第２図及び第４図）はシリ
ンダブロック１とシリンダヘッド２とを締結するボルト
穴である。

上記の構成において、機関の運転時には、クランク軸
７の矢印Ａ方向の回転に応じてクランクスプロケット8,
チェーン13を介して大径アイドラ10aが矢印Ｂ方向に回
転する。この大径アイドラ10aは、クランク軸７の1/2の
速度で回転し、小径アイドラ10bはこれと一体動する。
また、小径アイドラ10bはチェーン14を介してスプロケ
ット6a,6bを駆動し、これにより吸気弁カム軸5a及び排
気弁カム軸5bは小径アイドラ10bと等しい速度で矢印Ｃ
方向に回転する。

その結果、吸気弁カム軸5a及び排気弁カム軸5bはクラ
ンク軸７の1/2の速度で回転し、吸気弁３及び排気弁４
をクランク軸７の所定回転位置（クランク角度）で開閉
する。

次にアイドラ10等の組付けについて説明する。

先ず大径アイドラ10aのタイミングマーク19にチェー
ン13のタイミングマーク20を位置合わせした状態で、所
定の工具を用いてシリンダブロック１の上部に載置す
る。その後、シリンダベッド２の周壁27の下端面27cの
開口34を介して周壁27の空間内にアイドラ10を入れてか
ら、シリンダヘッド２をシリンダブロック１に固着す
る。

次に周壁27の前壁部27aに形成した開口28を介してア
イドラ取付ボルト11をシリンダヘッド２の端部2aに固着
する。また、小径アイドラ10bのタイミングマーク23に
チェーン14のタイミングマーク24を位置合わせし、次に
スプロケット6a,6bのタイミングマーク25a,25bをチェー
ン14のタイミングマーク26a,26bと位置合わせし、吸気
弁カム軸5a及び排気弁カム軸5bにスプロケット6a,6bを
固着する。

この開口28はアイドラ10の外径すなわち大径アイドラ
10aより大きいので、開口28を介してアイドラ取付ボル
ト11の固着及び大小アイドラ10a,10bとチェーン13,14と
の位置合わせを確実に行うことができる。その結果、ク
ランク軸７の回転に応じて吸気弁３及び排気弁４の開閉
時期を所定値に正確に設定することができる。

また、周壁27はシリンダヘッド２の端部2aからアイド
ラ取付ボルト11の頭部を越えて延出するので、シリンダ
ヘッド２とカバー29との接合面は大小アイドラ10a,10b
より外方に位置し、大小アイドラ10a,10bに付着した潤
滑油が遠心力により飛散しても、接合面を直撃せず、接
合面からの油洩れを防止できる。

また、開口28を介してアイドラ取付ボルト11をシリン
ダヘッド２の端部2aに片持状に固着するので、アイドラ
取付ボルト11を開口28閉塞用のカバー29と関係なく固着
でき、カバー29の取付ボルト穴29aからの油洩れを防止
することができる。

また、アイドラ取付ボルト11を固着するシリンダヘッ
ド２の端部2aには、機関冷却水路12に突出するボス部2b
を設けているので、ボルト11を介してアイドラ軸受部10
cを冷却でき、該軸受部10cの摩耗を低減することができ
る。

更に、周壁27の下端面27cの開口34を大径アイドラ10a
の外径より大きく形成すると、シリンダヘッド２をシリ
ンダブロック１に載置して組付ける際、チェーンを巻回
したアイドラ10が周壁27内の空間に入り、大幅な組付時
間の短縮を図ることができる。

一方、シリンダヘッド２の上端面2cと周壁27の上端面
27bは１つの平面を形成すると共に、ロッカカバー31の
周壁31aも１つの平面を形成しているので、周壁27の上
端面27bの形状に合わせてロッカカバー31のガスケット3
0を周壁27側へ延出して形成することにより、１つのガ
スケット30で十分シールすることができる。

第５図は他の実施例を示し、第１図とは周壁27の前壁
部27aにおける開口上部壁27dを除去した点が異なり、開
口28はシリンダヘッド２の周壁27の上端面27bまで延び
ている。このものも第１図のものと同じ作用・効果を有
する。

〈考案の効果〉 以上説明したように本考案によれば、アイドラをアイ
ドラ取付ボルトによりシリンダヘッドの端部に片持状に
支持し、このシリンダヘッドの端部周縁からアイドラを
囲む周壁をアイドラ取付ボルトの頭部を越え、且つアイ
ドラと対向する位置に開放部分を有するように延出し、
この周壁の下方部分はアイドラとクランク軸との間のチ
ェーンが通される開口を有してアイドラの中心より下方
に位置するようにし、前記周壁の開放部分よりアイドラ
取付ボルトを着脱可能にすると共に、この開放部分をカ
バーにより閉塞することにより、カバーからの油洩れを
防止できると共に、アイドラとチェーンのタイミングマ
ークを確実に位置合わせをし、吸気弁及び排気弁の開閉
時期を正確に設定できるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図は本考案の一実施例を示し、第１図はシ
リンダブロック及びシリンダヘッドの正面図、第２図は
シリンダヘッドの横断面図、第３図は分解斜視図、第４
図はシリンダヘッドの底面図である。第５図は他の実施
例を示すシリンダヘッドの正面図である。 １……シリンダブロック、２……シリンダヘッド、5a,5
b……カム軸、6a,6b……スプロケット、７……クランク
軸、８……クランクスプロケット、10……アイドラ、10
a……大径アイドラ、10b……小径アイドラ、10c……ア
イドラ軸受部、11……アイドラ取付ボルト、13,14……
チェーン、27……周壁、28……開口、29……カバー、31
……ロッカカバー

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドに回転自在に支承した２つ
   のカム軸を、クランク軸により、中間に減速用のアイド
   ラを介して、チェーン駆動するようにしたDOHC機関のカ
   ム軸駆動装置において、 前記アイドラをアイドラ軸受部を貫通するアイドラ取付
   ボルトによりシリンダヘッドの端部に片持状に支持し、
   このシリンダヘッドの端部周縁からアイドラを囲む周壁
   をアイドラの軸方向にアイドラ取付ボルトの頭部を越
   え、且つアイドラ及びアイドラ取付ボルトと対向する位
   置に開放部分を有するように延出し、この周壁の下方部
   分はアイドラとクランク軸との間のチェーンが通される
   開口を有してアイドラの中心より下方に位置するように
   し、前記周壁の開放部分よりアイドラ取付ボルトを着脱
   可能にすると共に、この開放部分をカバーにより閉塞す
   るようにしたことを特徴とするDOHC機関のカム軸駆動装
   置。