JP4036402B2 - 4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造 - Google Patents

4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダヘッドの端部でバルブ駆動用のカム軸を支承するカム軸支承部分がシリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアとして形成されているような4サイクルエンジンにおけるシリンダヘッドの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
DOHC型式のバルブシステムを有する4サイクルエンジン、すなわち、クランク軸の回転によりカムチェーンを介して駆動されるバルブ駆動用のカム軸が、吸気バルブの上方と排気バルブの上方にそれぞれ設けられている4サイクルエンジンでは、エンジンの運転状態に応じて吸・排気バルブの少なくとも何れか一方の開閉タイミングを変化させるために、オイルコントロールバルブによる油圧の制御によってカムスプロケットとカム軸の位相角度を変えるような可変バルブタイミング装置(VVT)を、吸気側と排気側の少なくとも何れか一方のカム軸に対して付設するということが従来から行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような可変バルブタイミング装置を備えた4サイクルエンジンでは、可変バルブタイミング装置の近傍に位置するシリンダヘッドのカム軸支承部分に対して、可変バルブタイミング装置にオイルを供給するためのオイルコントロールバルブを取り付けようとすると、該カム軸支承部分が幅広なものとなって、エンジン全体が前後方向(カム軸の軸線方向)で長くなってしまう。
【0004】
すなわち、エンジンの前端部に位置するカム軸支承部分が、シリンダヘッドの一部として一体的に形成された部分であることにより、該カム軸支承部分から離れたエンジンの前端部近傍でシリンダヘッドをシリンダブロックに連結するためのヘッドボルトに対して、エンジンの前端部に位置するカム軸支承部分の幅(前後方向の長さ)が拡がった分だけ、該ヘッドボルトと可変バルブタイミング装置の間の距離が長くなって、エンジン全体が前後方向で長くなってしまう。
【0005】
なお、エンジンの前端部に位置してオイルコントロールバルブが取り付けられたカム軸支承部分を、平面視でヘッドボルトの取付位置とオーバーラップさせるように、即ち、該カム軸支承部分にヘッドボルトを貫通させるようにすると、ヘッドボルトと可変バルブタイミング装置の間の距離は長くならないが、ヘッドボルトを強く締め付けることで該カム軸支承部分の変形を招くこととなるため、シリンダヘッドとシリンダブロックを固く連結させるためのヘッドボルトの締め付け性を確保することができない。
【0006】
そのような問題に対して、オイルコントロールバルブやそれに関連するオイル通路が設けられたカム軸支承部分を、シリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアとして形成すると共に、シリンダヘッドをシリンダブロックに連結させた状態のヘッドボルトと平面視でオーバーラップするように、該カムキャリアをヘッドボルトの上からシリンダヘッドに連結することで、ヘッドボルトの締め付け性を確保すると共に、エンジン全体が前後方向で長くならないようにするということが本出願人により検討されている。
【0007】
しかしながら、シリンダヘッドの端部に位置するカム軸支承部分を、シリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアとしてシリンダヘッドに連結した場合、該カムキャリアが支承するカム軸がカムチェーンの張力やバルブスプリングの反力を受けることによって、カムキャリアがカム軸方向に倒れやすくなり、カムキャリアの倒れが起きることによって、振動騒音が増大したり信頼性の低下を招くというような問題が生じることとなる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、シリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアをシリンダヘッドのカム軸支承部分としたような4サイクルエンジンにおいて、該カムキャリアの倒れを防ぐことにより、振動騒音の増大を抑えたり、従来通りの信頼性を確保できるようにすることを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、上記の請求項1に記載したように、シリンダヘッドの端部でバルブ駆動用のカム軸を支承するカム軸支承部分がシリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアとして形成されているような4サイクルエンジンにおいて、シリンダヘッドの上面とカムキャリアの上面とが同じ高さとなるようにシリンダヘッドの凹陥部に配置されてシリンダヘッドにボルトで直接に固定されたカムキャリアに対して、カムキャリアの上面側とシリンダヘッドの上面側を繋ぐステーとして、吸気カム軸と排気カム軸の間でカムチェーンを案内するチェーンガイドの取付用基部が、両者の上面にわたって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、上記の請求項に記載された4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造において、上記の請求項に記載したように、シリンダヘッドとは別体のカムキャリアにより支承されているバルブ駆動用のカム軸に対して、吸気側と排気側の少なくとも何れか一方に、可変バルブタイミング装置が付設されていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る4バルブ多気筒エンジンについて、ヘッドカバーを外して吸・排気バルブと点火プラグを除いた状態のエンジン前端部付近を上面視したものであり、図2は、図1に示したものからカムキャップやチェーンガイドを除くと共に、可変バルブタイミング装置と各カム軸をシリンダヘッド上面に沿った断面で示したものである。
【0014】
各気筒の燃焼室毎に2個の吸気バルブと2個の排気バルブが設けられる4バルブ多気筒エンジンのシリンダヘッド1には、各気筒の燃焼室天板部の部分毎に、中央に点火プラグ装着用の円筒状の孔2が形成されていると共に、その両側に、吸気バルブ装着用の円筒状の孔3と排気バルブ装着用の円筒状の孔4がそれぞれ2個ずつ形成されている。
【0015】
シリンダヘッド1に形成された各吸気バルブ装着用孔3,3の上方には、吸気バルブを駆動するための吸気カム軸5が、また、各排気バルブ装着用孔4,4の上方には、排気バルブを駆動するための排気カム軸6が、それぞれ気筒の配列方向(クランク軸の軸線方向)と平行して、互いに間隔をおいて並列的に配置されている。
【0016】
それらの各カム軸5,6をそれぞれ支承するために、各気筒の部分毎に、点火プラグ装着用孔2の両側、即ち、各吸気バルブ装着用孔3,3の間と、各排気バルブ装着用孔4,4の間のそれぞれに、図2に示すように、上面にジャーナル軸受部の下半部を形成したカム軸支承部分7,7が、シリンダヘッド1の一部分としてそれぞれ一体的に形成されている。
【0017】
点火プラグ装着用孔2の両側のそれぞれのカム軸支承部分7,7には、図1に示すように、それぞれのカムキャップ8,8が、カムキャップ8に貫通したボルトをカム軸支承部分7に開けられたネジ孔に螺合して締め付けることで、それぞれ一体的に連結されており、各カム軸5,6は、カム軸支承部分7の上面に形成されたジャーナル軸受下半部とカムキャップ8の下面に形成されたジャーナル軸受上半部とで挟持されることで、それぞれ回転可能に支持されている。
【0018】
排気カム軸6の前端部分については、シリンダヘッド1の前端部に一体的に形成されたカム軸支承部分9と、その上に連結されるカムキャップ10とにより、回転可能に支持されており、排気カム軸6の前端には、カムスプロケット11がボルト12によって一体的に固着されている。
【0019】
吸気カム軸5の前端部分については、シリンダヘッド1の前端部に一体的に連結されたカム軸支承部分13と、その上に連結されるカムキャップ14とにより、回転可能に保持されており、吸気カム軸5の前端には、外周面にカムスプロケット15を形成した可変バルブタイミング装置20が、ボルト16によって一体的に取り付けられている。
【0020】
可変バルブタイミング装置20の外周面に形成されたカムスプロケット15と、排気カム軸6の前端部分に固着されたカムスプロケット11には、図示していない駆動スプロケットとに渡って、無端状のカムチェーン17が巻装されており、クランク軸の回転により駆動スプロケットを介してカムチェーン17が循環移動するのに連れて、可変バルブタイミング装置20を介して吸気カム軸5が、また、カムスプロケット11を介して排気カム軸6が、それぞれ回転駆動されることとなり、各カム軸5,6の回転駆動に応じて、エンジンの各吸気バルブと各排気バルブが所定のタイミングで開閉されることとなる。
【0021】
なお、図6に示すように、可変バルブタイミング装置20の領域を含むシリンダヘッド1の上方は、ヘッドカバー18によって覆われており、ヘッドカバー18よりも下方で、カムチェーン17が配設されているエンジンの前面側は、シリンダヘッド1からシリンダブロック(図示せず)の領域にかけて、チェーンカバー19によって覆われている。
【0022】
吸気カム軸5の前端部分に付設されている可変バルブタイミング装置20は、従来から知られた構造のものであって、図2に示すように、該装置20のカバー部材21とボス部材22が、ボルト16により吸気カム軸5の前端に一体的に固着されており、ボス部材22に対して相対回動可能なようにハウジング部材23が設けられていて、このハウジング部材23の外周面にカムプロケット15が一体的に形成されている。
【0023】
ハウジング部材23の内部には、ボス部材22を囲むようなピストン部材24が、ボス部材22の外周面とスプライン係合され、且つ、ハウジング部材23の内周面とヘリカルギア噛合された状態で、カム軸5の軸線方向に移動可能なように設けられており、ボス部材22に対して回転不能に摺動し、且つ、ハウジング部材23に対して相対的に螺旋移動するピストン部材24は、ボス部材22との間に設けられたコイルスプリング25によってカバー部材21の側に付勢されている。
【0024】
ハウジング部材23内の空間部は、ピストン部材24により二つの油室26,27に区画されており、一方の油室26には、吸気カム軸5からボス部材22を通るオイル通路28が連通され、他方の油室27には、吸気カム軸5からボス部材22を通るオイル通路29が連通されていて、後述するオイルコントロールバルブ30によって、各オイル通路28,29の何れか一方にオイルが送り込まれ、他方からオイルが送り出される。
【0025】
上記のような構造の可変バルブタイミング装置20によれば、各オイル通路28,29により、油室26と油室27の何れか一方にオイルが供給され他方からオイルが排出されるのに応じて、ピストン部材24がボス部材22に沿って摺動され、カム軸5の軸線方向に移動するピストン部材24により、ハウジング部材23が回動されることで、ボス部材22に対してハウジング部材23が相対的に回動されることとなる。
【0026】
その結果、可変バルブタイミング装置20のハウジング部材23に一体形成されたカムプロケット15と、ボス部材22と一体的に固着された吸気カム軸5との位相角度が変えられ、そのように吸気カム軸5とカムプロケット15の位相角度が変えられることによって、吸気カム軸5の回転駆動によって開閉される吸気バルブの開閉タイミングが、エンジンの運転状態に応じて進角又は遅角するように変化される。
【0027】
ところで、上記のような可変バルブタイミング装置20が吸気カム軸5の前端に付設された本実施形態の4サイクルエンジンでは、単なるカムスプロケット11が固着された排気カム軸6の前端部分を支承するカム軸支承部分9が、シリンダヘッド1の一部分として一体的に形成されているのに対して、可変バルブタイミング装置20が付設された吸気カム軸5の前端部分を支承するカム軸支承部分13は、シリンダヘッド1とは別体の部材であるカムキャリアとして形成され、シリンダヘッド1に対して一体的に連結されている。
【0028】
図3および図4は、可変バルブタイミング装置20が付設された吸気カム軸5の前端部分を支承するカムキャリア13自体の構造を示すもので、図3は前面視したものであり、図4は上面視したものである。
【0029】
吸気カム軸5のカム軸支承部分となるカムキャリア13には、吸気カム軸5の前端ジャーナル部を支持するジャーナル軸受部(下半部)31が上面に形成され、また、その下方にオイルコントロールバルブ30のバルブ部分を取り付けるためのバルブ取付部32が形成されていると共に、カムキャリア13をシリンダヘッド1に位置決めするためのピン孔33と、カムキャップ14をカムキャリア13に位置決めするためのピン孔34,34と、カムキャップ14との共締めでカムキャリア13をシリンダヘッド1に連結するためのボルト貫通孔35,35がそれぞれ形成されている。
【0030】
また、ジャーナル軸受部31とバルブ取付部32の間には、ジャーナル軸受部31に形成された環状溝36を介して吸気カム軸5のオイル通路28と連通するオイル通路37と、ジャーナル軸受部31に形成された環状溝38を介して吸気カム軸5のオイル通路29と連通するオイル通路39と、ジャーナル軸受部31に潤滑のためのオイルを供給するためのオイル通路40とがそれぞれ形成されている。
【0031】
さらに、図1および図7に示すような状態でカムチェーン17を案内するチェーンガイド50をカムキャリア13の上面側とシリンダヘッド1の上面側とに渡ってを取り付けるために、チェーンガイド取付用のボルト孔41がカムキャリア13の上面側に形成されている。
【0032】
上記のようなカムキャリア13をシリンダヘッド1に一体的に連結したエンジンの前端部について、図5は、各部材の連結状態を前面視したものであり、図6は、各部材の連結状態を側面視したものであり、図7は、カムキャリアとチェーンガイドの連結状態を図1のA−A線に沿った断面で示すものであり、図8は、オイルコントロールバルブやオイルフィルターや各オイル通路の配置状態を前面視したものである。
【0033】
図5に示すように、カムスプロケット11が固着された排気カム軸6の前端部分を支承するカム軸支承部分9が、シリンダヘッド1の一部分として一体的に形成されているのに対して、可変バルブタイミング装置20が付設された吸気カム軸5の前端部分を支承するカムキャリア13は、シリンダヘッド1とは別体の部材として形成されており、ピン孔33に挿入されるピンによりシリンダヘッド1に位置決めされ、各ピン孔34,34に挿入されるピンによりカムキャップ14を位置決めした状態で、各ボルト貫通孔35,35を貫通するボルト45によるカムキャップ14との共締めによって、シリンダヘッド1に対して一体的に連結されている。
【0034】
そのようにシリンダヘッド1に連結されるカムキャリア13は、図1および図6に示すように、シリンダヘッド1をシリンダブロック(図示せず)に連結するためのヘッドボルト46に対して、平面視でオーバーラップするように配置されていて、シリンダヘッド1をシリンダブロックに連結するためにヘッドボルト46が締め付けられた後で、ボルト45により、カムキャップ14と共締めされて、シリンダヘッド1に連結されることとなる。
【0035】
それにより、可変バルブタイミング装置20のオイルコントロールバルブ30が取り付けられたカムキャリア13に影響を与えることなく、シリンダヘッド1をシリンダブロックに連結するためのヘッドボルト46を強く締め付けることができるため、シリンダヘッド1とシリンダブロックを固く連結させるためのヘッドボルト46の締め付け性を確保することができる。
【0036】
また、カムキャリア13にオイルコントロールバルブ30を取り付けることでカムキャリア13が幅広なものとなっても、ヘッドボルト46と可変バルブタイミング装置20の間の距離が長くなることがなく、エンジン全体が前後方向で長くなってしまうことはない。
【0037】
なお、本実施形態の4サイクルエンジンでは、可変バルブタイミング装置20のオイルコントロールバルブ30は、図8に示すように、ECUからの信号によってバルブ部分を作動させるための本体部分がシリンダヘッド1の外側に露出するように、シリンダヘッド1の壁部を貫通して、そのバルブ部分がカムキャリア13のバルブ取付部32に取り付けられた状態で、ボルト54によりシリンダヘッド1に対して固定されており、オイルコントロールバルブ30の差し込み部は、シリンダヘッド1の壁部において通常のOリング部材55によってシールされている。
【0038】
それにより、ヘッドカバー18を外したりすることなく、オイルコントロールバルブ30の整備を簡単に行なうことができ、しかも、オイルコントロールバルブ30の差し込み部を、特別なシール部品を必要とすることなく、汎用のOリング部材55によって簡単にシールすることができる。
【0039】
しかも、カムキャリア1に取り付けられるオイルコントロールバルブ30が、シリンダヘッド1に対して固定されていることで、シリンダヘッド1に固定されたカムキャリア13に対してオイルコントロールバルブ30が相対的に振動させられるようなことがない。
【0040】
そのように設置されたオイルコントロールバルブ30に対して、本実施形態の4サイクルエンジンでは、シリンダブロック側から供給されたオイルを濾過してオイルコントロールバルブ30に供給するためのオイルフィルター56が、シリンダヘッド1のカムキャリア13よりも下方の部分で、シリンダヘッド1の外側に一部が露出するように取り付けられており、それによって、オイルフィルター56の整備を簡単に行なうことができるようになっている。
【0041】
上記のように各部品が配設された本実施形態の4サイクルエンジンにおいて、ボルト45によりシリンダヘッド1に連結されているカムキャリア13と、シリンダヘッド1とに対して、更に、図1および図7に示すように、カムチェーン17を案内するチェーンガイド50が、カムキャリア13の上面側とシリンダヘッド1の上面側とを繋ぐように、その取付用基部によってボルト51,52でそれぞれ固着されており、それによって、カムキャリア13が前側に倒れないように、カムキャリア13とシリンダヘッド1の連結状態が補強されている。
【0042】
上記のようにチェーンガイド50がカムキャリア13の上面側とシリンダヘッド1の上面側とを繋ぐように取り付けられている本実施形態の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造によれば、吸気バルブ(図示せず)のバルブスプリング反力やカムチェーン17の張力が吸気カム軸5を介してカムキャリア13に作用しても、チェーンガイド50の取付用基部を介して、カムキャリア13の上面側がシリンダヘッド1に対して連結されていることにより、カムキャリア13が倒れるようなことがなく、そのようにカムキャリア13の倒れを防止することで、カムキャリア13の倒れに起因する振動騒音の増大や信頼性の低下を防止することができる。
【0043】
また、カムチェーン17を案内するためのチェーンガイド50が、カムキャリア13の倒れを防止するためのステーとなっていることで、新たに部品を追加することなく、カムキャリア13の倒れを防止することができる。
【0044】
以上、本発明の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造の一実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態に限られるものではなく、例えば、他のバルブ数のエンジンに対しても適用可能であり、また、可変バルブタイミング装置についても、吸気カム軸にのみ付設したエンジンだけでなく、排気カム軸にのみ付設したエンジンや、吸気カム軸と排気カム軸の両方にそれぞれ付設したエンジンに対しても適用可能なものである。
【0045】
図9は、吸気3バルブ・排気2バルブの5バルブで、吸気カム軸と排気カム軸の両方にそれぞれ可変バルブタイミング装置を付設したエンジンについて、ヘッドカバーを外して吸・排気バルブ,点火プラグ,カムキャップ,チェーンガイド等を除いた状態のエンジン前端部付近を上面視したものであり、図10は、図9に示したエンジンの吸気側における各吸気バルブの軸線とオイルコントロールバルブ30の軸線を側面視したものである。
【0046】
吸気カム軸5と排気カム軸6の両方にそれぞれ可変バルブタイミング装置20,20を付設したエンジンでは、図9に示すように、吸気カム軸5と排気カム軸6の両方の前端部分を支承するような一つのカムキャリア13を、シリンダヘッド1とは別体の部材として形成して、これをシリンダヘッド1の前端部に連結することとなり、このカムキャリア13の長手方向中央付近の上面側とシリンダヘッド1の上面側とを繋ぐようにステー(チェーンガイド50)を固着することで、カムキャリア13の倒れが防止されることとなる。
【0047】
なお、図9に示すような、吸気3バルブ・排気2バルブの5バルブエンジンでは、一気筒に吸気バルブが3個設けられている吸気側において、図10に示すように、両側の吸気バルブの軸線B1,B3を、下方で中央の吸気バルブの軸線B2に近づくように傾けると共に、吸気側のオイルコントロールバルブ30の軸線Cを、下方に行くに従って近傍の吸気バルブの軸線B1から離れるように傾けることによって、オイルコントロールバルブ30をシリンダヘッド1のリフター保持部分と干渉させることなく、また、シリンダヘッド1の壁部におけるオイルコントロールバルブ30の取付位置をチェーン室の側に近づけ過ぎることなく、エンジンの前後方向の長さをできるだけ長くならないようにしている。
【0048】
さらに、本発明の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造については、例えば、カムキャリアの上面側とシリンダヘッドの上面側とを繋ぐステーは、チェーンガイド50に限らず、他のステー部品を使用して実施することも可能であり、また、可変バルブタイミング装置を付設した4サイクルエンジンに限ることなく、カム軸の前端部分を支承するカム軸支承部分がシリンダヘッドとは別体のカムキャリアとして形成されている4サイクルエンジンであれば実施可能なものであり、また、カム軸の前端部分を支承するカム軸支承部分のみをシリンダヘッドとは別体のカムキャリアとするのではなく、全てのカム軸支承部分をシリンダヘッドとは別体のカムキャリアとして、それらを梯子状に連結して一つの部材とし、該部材における前端部のカムキャリアの上面側とシリンダヘッドの上面側とをステーで繋ぐことによって実施することも可能である等、適宜設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造によれば、シリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアをシリンダヘッドのカム軸支承部分としたときに、該カムキャリアの倒れを防ぐことによって、振動騒音の増大を抑えたり、従来通りの信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造の一実施形態に係る4バルブ多気筒エンジンについて、ヘッドカバーを外して吸・排気バルブと点火プラグを除いた状態のエンジン前端部付近を示す上面図。
【図2】図1に示したエンジン部分から更にカムキャップやチェーンガイドを除いて、可変バルブタイミング装置と各カム軸をシリンダヘッド上面に沿った断面として示す一部断面上面図。
【図3】図1に示したエンジン部分で可変バルブタイミング装置が付設された吸気カム軸の前端部分を支承しているカムキャリアについて、該カムキャリア自体の構造を示す前面図。
【図4】図3に示したカムキャリアの上面図。
【図5】図1に示したエンジン部分における各部材の連結状態を示す前面説明図。
【図6】図5に示した各部材の連結状態についての側面説明図。
【図7】カムキャリアの上面側とシリンダヘッドの上面側を繋ぐようなチェーンガイドの取付状態を示す、図1のA−A線に沿った断面図。
【図8】オイルフィルターやオイルコントロールバルブの配置状態と、シリンダブロック側から供給されるオイルの各カム軸に至るオイル通路をそれぞれ示す、図1に示したエンジン部分についての前面説明図。
【図9】本発明の他の実施形態に係る5バルブ多気筒エンジンについて、ヘッドカバーを外して吸・排気バルブ,点火プラグ,カムキャップ,チェーンガイド等を除いた状態のエンジン前端部付近を示す上面図。
【図10】図9に示したエンジン部分の吸気側における各吸気バルブの軸線とオイルコントロールバルブの軸線を示す側面説明図。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド
5 吸気カム軸
6 排気カム軸
13 カムキャリア
17 カムチェーン
50 チェーンガイド(ステー)

Claims (2)

  1. シリンダヘッドの端部でバルブ駆動用のカム軸を支承するカム軸支承部分がシリンダヘッドとは別体の部材であるカムキャリアとして形成されているような4サイクルエンジンにおいて、シリンダヘッドの上面とカムキャリアの上面とが同じ高さとなるようにシリンダヘッドの凹陥部に配置されてシリンダヘッドにボルトで直接に固定されたカムキャリアに対して、カムキャリアの上面側とシリンダヘッドの上面側を繋ぐステーとして、吸気カム軸と排気カム軸の間でカムチェーンを案内するチェーンガイドの取付用基部が、両者の上面にわたって取り付けられていることを特徴とする4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造。
  2. シリンダヘッドとは別体のカムキャリアにより支承されているバルブ駆動用のカム軸に対して、吸気側と排気側の少なくとも何れか一方に、可変バルブタイミング装置が付設されていることを特徴とする請求項に記載の4サイクルエンジンのシリンダヘッド構造。
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