JP2021091227A - 離型フィルム - Google Patents

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有貴 六車
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博士 多田
良介 川原
Ryosuke Kawahara
良介 川原
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Hirosuke Maekawa
博亮 前川
宏明 小屋原
Hiroaki Koyahara
宏明 小屋原
豊嶋 克典
Katsunori Toyoshima
克典 豊嶋
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Abstract

【課題】従来よりも優れた離型性を有し、RtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造にも好適に用いることができる離型フィルムを提供することを目的とする。【解決手段】少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層は、入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により求められる結晶化度が50%以上である離型フィルムである。【選択図】 なし

Description

本発明は、離型フィルムに関する。
プリント配線基板、フレキシブル回路基板、多層プリント配線板等の製造工程において離型フィルムが使用されている。
フレキシブル回路基板の製造工程においては、銅回路を形成したフレキシブル回路基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化型接着シートを介してカバーレイフィルムが熱プレス接着される。このとき、カバーレイフィルムと熱プレス板との間に離型フィルムを配置することで、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着するのを防止することができ、また、接着剤が染み出して電極部のめっき処理の障害となる等の不具合を防止することができる。
近年では、フレキシブル回路基板のL/S(ライン/スペース)の細線化にも対応して離型性、凹凸への追従性(埋め込み性)等の性能を確保できるよう、離型層とクッション層とを含む多層からなる離型フィルムも使用されている。
離型フィルムには、熱プレス接着後に容易に剥離する離型性が求められる。離型性の向上のために、例えば、離型フィルムの結晶化度を調整することが行われている。特許文献1には、少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂を含む離型層を有し、離型層の結晶化度が10%以上50%以下である離型フィルムが記載されている。
特開2016−2730号公報
近年、フレキシブル回路基板の薄膜化に伴い、離型フィルムには離型性の更なる向上が求められている。また、近年、フレキシブル回路基板の製造は、ロールトゥーロール(RtoR)方式等による自動化も進んでいる。RtoR方式では、ロールから繰り出したフレキシブル回路基板本体や離型フィルム等をそれぞれ熱プレス板の間に搬送し、熱プレス接着した後、再びロールに巻き取ることが行われる。このようなRtoR方式においては、熱プレス接着後にフレキシブル回路基板から離型フィルムを剥離する際に、剥離角度が低角度となる傾向にある。そのため、従来の離型フィルムを用いた場合は、剥離の際により大きな力をかけなければならないことがあり、不良の発生等につながるおそれがある。従って、離型フィルムには離型性の更なる向上が求められる。
本発明は、従来よりも優れた離型性を有し、RtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造にも好適に用いることができる離型フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層は、入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により求められる結晶化度が50%以上である離型フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
本発明者らは、少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムにおいて、離型層全体の結晶化度ではなく、離型層の表面の極めて薄い領域(極表面)の結晶化度のみを選択的に高めることで、離型性を劇的に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の離型フィルムは、少なくとも1つの離型層を有する。
上記離型層は、入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法(In−Plane法)により求められる結晶化度が50%以上である。
斜入射広角X線回折法において入射角を0.06°とすることにより、上記離型層全体の結晶化度ではなく、上記離型層の極表面のみの結晶化度を測定することができる。極表面とは、表面の極めて薄い領域をいい、より具体的には、表面から厚み約4nm程度までの領域をいう。上記離型層の極表面の結晶化度が50%以上であることにより、熱プレス接着時にカバーレイフィルムに形成された接着剤が上記離型層に浸透することを充分に抑制できる。即ち、接着剤が上記離型層に浸み込む深さを浅くすることができ、接着剤によるアンカー効果を抑制できるため、離型フィルムの離型性が大きく向上する。なお、上記離型層の少なくとも一方の表面がこのような極表面の結晶化度を有していればよい。上記離型層の極表面の結晶化度は60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
上記離型層の極表面の結晶化度の上限は特に限定されないが、好ましい上限は90%である。上記離型層の極表面の結晶化度が90%以下であれば、熱プレス接着時に上記離型層の極表面の結晶質相に割れが生じにくく、離型性の悪化を抑制できる。上記離型層の極表面の結晶化度のより好ましい上限は80%である。
上記離型層の極表面の結晶化度は、X線の入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により上記離型層の表面を分析して得られた回折測定プロットにベースラインを引き、結晶質相及び非晶質相に対してそれぞれフィッティングを行い、得られた結晶質相のピーク総面積及び非晶質相のピーク総面積から下記式(1)により求めることができる。
結晶化度(%)=結晶質相のピーク総面積/(結晶質相のピーク総面積+非晶質相のピーク総面積)×100 (1)
上記離型層の極表面の結晶化度を求めるためのX線回折装置としては、例えば、下記の条件に設定したリガク社製の表面構造評価用多機能X線回折装置(ATX−G型)を用いることができる。
X線源 CuKα線
管電圧−管電流 50kV−300mA
入射光学系 集中法
入射角(ω) 0.06°
測定範囲 5−70°
測定間隔 0.02°
走査速度 1.0°/min
走査方法 In−Plane法
上記離型層の極表面の結晶化度を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記離型層の表面処理前の算術平均粗さRaを小さく、かつ/又は、上記離型層の表面処理前の光沢度を大きく調整したうえで、上記離型層の表面に対して表面処理を行うことが好ましい。上記離型層の表面処理前の算術平均粗さRaを小さく、かつ/又は、上記離型層の表面処理前の光沢度を大きく調整することで、上記離型層の表面に対して表面処理を行って結晶化度を高める効果が大きく向上し、上記離型層の極表面の結晶化度を上記範囲に調整することができる。
上記離型層の表面処理前の算術平均粗さRaを小さく、かつ/又は、上記離型層の表面処理前の光沢度を大きく調整する方法は特に限定されないが、上記離型層を構成する樹脂を溶融押出して、溶融樹脂を冷却する際に、例えば次のような方法を採用することが好ましい。即ち、より平滑な表面を有する冷却ロールを用いて、そのロール表面形状をフィルムに転写させる方法や、冷却の際に、溶融樹脂にかかる伸長応力が大きくなるように調整する方法等が好ましい。
なお、表面処理前の算術平均粗さRaや表面処理前の光沢度を調整することで、表面処理による結晶化度を高める効果が向上する理由は定かではないが、次のように推定できる。算術平均粗さRaが比較的大きい場合は、表面処理による極表面への影響がばらついてしまう可能性があるが、算術平均粗さRaが比較的小さい場合は、表面処理による極表面への影響が均等になり、極表面のカルボニル基が面内にもぐりこむ確率や量が向上すると考えらえる。また、光沢度は、対象の表面粗さや内部の結晶粒の大きさに影響を受けるため、光沢度が大きいということは、表面粗さが小さく、結晶粒が小さい(一定のサイズ以下である)ことを意味する。表面処理前の結晶粒が比較的大きい場合は、複数の結晶粒が互いに立体的な障害となり、表面処理による結晶の成長が妨げられてしまう。一方、表面処理前の結晶粒が比較的小さい場合は、上述のような立体的な障害を受けることなく、表面処理によって結晶の成長が促進されるため、結果として極表面の結晶化度を高める効果が向上すると考えられる。また、結晶粒の大きさは、溶融押出時の冷却や伸長応力の影響を受けていると考えることができる。
上記離型層の表面の算術平均粗さRaは特に限定されないが、好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は0.50μmであり、より好ましい下限は0.02μm、より好ましい上限は0.40μmである。上記離型層の表面の算術平均粗さRaが上記範囲であることにより、離型フィルムの離型性が向上しやすくなる。
上記離型層の表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠した算術平均粗さRaであり、例えば、Mitutoyo社製のサーフテストSJ−301を用いて測定することができる。
なお、上記離型層の表面の算術平均粗さRaは、離型フィルムの製造過程において製膜後に表面処理を行った場合であっても、通常は製膜後の表面処理による変化の影響は比較的少なく、表面処理の前後で値が著しく変化するものではない。
上記離型層の表面の算術平均粗さRaは、主に製膜時の条件に影響される。ただし、加熱プレス(プレスアニール)等の処理を加えた場合は、表面の凹凸がつぶれるため、一般に算術平均粗さRaの値は小さくなる。
上記離型層の表面の光沢度は特に限定されないが、好ましい下限は100%、好ましい上限は200%であり、より好ましい下限は120%、より好ましい上限は180%である。上記離型層の表面の光沢度が上記範囲であることにより、上記離型層の極表面の結晶化度を上記範囲に調整しやすくなり、離型フィルムの離型性が向上しやすくなる。
上記離型層の表面の光沢度は、JIS Z8741に準拠し、入射角を60°として測定した光沢度であり、例えば、日本電色工業社製の光沢度計VG−1Dを用いて測定することができる。
なお、上記離型層の表面の光沢度は、離型フィルムの製造過程において製膜後に表面処理を行った場合であっても、通常は製膜後の表面処理による変化の影響は比較的少なく、表面処理の前後で値が著しく変化するものではない。
上記離型層の表面の光沢度は、主に製膜時の条件に影響される。
上記表面処理は特に限定されず、例えば、摩擦処理、熱処理、一軸延伸又は二軸延伸処理等が挙げられる。これらの表面処理は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記摩擦処理の方法は特に限定されないが、摩擦処理装置(例えば、山縣機械社製の研磨処理装置、型式YCM−150M)を用い、摩擦処理材の表面の素材として織物を用いて摩擦処理を行う方法が好ましい。
上記熱処理の方法は特に限定されないが、一定の温度に加熱したロールの間にフィルムを通す方法、ヒーターによりフィルムを加熱する方法等が好ましい。
上記一軸又は二軸延伸処理の方法は特に限定されないが、製膜後のフィルムを一定の温度下にて、延伸する方法等が好ましい。
上記離型層全体の結晶化度は特に限定されないが、上記離型層の極表面の結晶化度よりも小さいことが好ましい。上記離型層全体の結晶化度の好ましい下限は25%、好ましい上限は50%である。
上記離型層全体の結晶化度を必要以上に高めると、離型フィルム全体としての柔軟性が低下し、凹凸への追従性が低下して、熱プレス接着時にボイドが発生したり、接着剤の染み出し幅が増大したりすることがある。上記離型層の極表面以外の結晶化度を調整することで、上記離型層が極表面では50%以上という高い結晶化度を有しつつ、上記離型層全体としては上記範囲の適度な結晶化度を有するようにすることができる。このような構成とすることで、上記離型フィルムは、離型性にも凹凸への追従性にも更に優れたものとなる。上記離型層全体の結晶化度が25%以上であれば、離型フィルムの耐熱性が向上する。上記離型層全体の結晶化度が50%以下であれば、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。上記離型層全体の結晶化度の下限は、より好ましくは30%、更に好ましくは35%である。上記離型層全体の結晶化度の上限は、より好ましくは45%、更に好ましくは40%、特に好ましくは35%である。
上記離型層全体の結晶化度は、広角X線回折法により上記離型層全体を分析して得られた回折測定プロットにベースラインを引き、結晶質相及び非晶質相に対してそれぞれフィッティングを行い、得られた結晶質相のピーク総面積及び非晶質相のピーク総面積から下記式(1)により求めることができる。なお、離型フィルムが多層からなる場合には、離型フィルムの各層を剥がし、上記離型層のみからなるサンプルに対して分析を行うことで、上記離型層全体の結晶化度を評価することができる。
結晶化度(%)=結晶質相のピーク総面積/(結晶質相のピーク総面積+非晶質相のピーク総面積)×100 (1)
上記離型層全体の結晶化度を求めるためのX線回折装置としては、例えば、下記の条件に設定したリガク社製の薄膜評価用試料水平型X線回折装置(Smart Lab)を用いることができる。
X線源 CuKα線
管電圧−管電流 45kV−200mA
入射光学系 集中法
測定範囲 5−80°
測定間隔 0.02°
走査速度 5.0°/min
走査方法 Out−of−Plane法
上記離型層全体の結晶化度を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記離型層を構成する樹脂を溶融押出して、溶融樹脂を冷却する際に、例えば次のような方法を採用することが好ましい。即ち、溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間を調整する方法、冷却ロール温度を調整する方法等が好ましい。このようにして離型層表面と離型層内部との温度勾配を調整することで、離型層表面と離型層内部での結晶化の速度を調整し、上記離型層全体としての結晶化度を調整することができる。なお、離型層全体の結晶化度は、離型層の極表面の結晶化度よりも高い値に調整することもできる。
上記離型層は、ATR法によって測定された赤外吸収スペクトルにおけるAbs(x)及びAbs(x+12)が下記式(2)を満たすことが好ましい。
Abs(x)/Abs(x+12)≦1.50 (2)
式(2)中、Abs(x)は波数1455cm−1以上、1465cm−1以下の領域に存在する最大吸収強度であり、xは前記最大吸収強度を示す波数であり、Abs(x+12)は波数(x+12)cm−1における吸収強度である。
離型層を構成する樹脂は、単一の結晶構造(結晶系)だけではなく、複数種の結晶構造をとりうる。本発明者らは、それぞれの結晶構造で分子鎖のコンフォメーションが異なることに着目し、それぞれが離型層の表面にもたらす影響も異なりうることから、離型性の向上のためには、離型層における結晶構造を制御することが重要であることを見出した。本発明者らは、離型層についてATR法によって赤外吸収スペクトルを測定し、得られた赤外吸収スペクトルにおける吸収強度が特定の式を満たすように結晶構造を制御することにより、離型フィルムの離型性を向上できることを見出した。
少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムであって、上記離型層は、ATR法によって測定された赤外吸収スペクトルにおけるAbs(x)及びAbs(x+12)が上記式を満たす離型フィルムもまた、本発明の1つである。
上記Abs(x)及び上記Abs(x+12)は、上記離型層におけるそれぞれ別の結晶構造に由来する吸収強度であり、上記Abs(x)/Abs(x+12)の値は、上記Abs(x+12)に対応する結晶構造に対する、上記Abs(x)に対応する結晶構造の存在比を意味する。上記Abs(x)/Abs(x+12)の値が上記範囲を満たすことにより、上記Abs(x)に対応する結晶構造の割合が低下し、上記Abs(x+12)に対応する結晶構造の割合が増加する。上記離型層における結晶構造をこのように制御することにより、離型フィルムの離型性を向上させることができる。
例えば、上記離型層が芳香族ポリエステル樹脂を含有する場合について具体的に説明する。芳香族ポリエステル樹脂は、「α型」と呼ばれる結晶構造(安定な構造)と、「β型」と呼ばれる結晶構造との2種類の結晶構造をとりうる。β型結晶構造では、α型結晶構造に比べて、芳香族ポリエステル樹脂に由来するカルボニル基が上記離型層の面内にもぐりこむように配向する傾向にあり、上記離型層の表面にカルボニル基が露出しにくい。このような離型層についてATR法によって赤外吸収スペクトルを測定すると、α型結晶構造のブチレン鎖の吸収として波数1455cm−1以上、1465cm−1以下の領域にAbs(x)が、β型結晶構造のブチレン鎖の吸収として波数(x+12)cm−1にAbs(x+12)が得られる。ここで、上記Abs(x)/Abs(x+12)の値が上記範囲を満たすことにより、上記Abs(x)に対応するα型結晶構造の割合が低下し、上記Abs(x+12)に対応するβ型結晶構造の割合が増加する。その結果、上記離型層の表面にカルボニル基が露出しにくくなり、接着剤(特に、エポキシ接着剤)と上記離型層との相互作用を抑制でき、熱プレス接着時にカバーレイフィルムに形成された接着剤(特に、エポキシ接着剤)が上記離型層に浸透することを充分に抑制できる。これにより、離型フィルムの離型性を向上させることができる。
上記Abs(x)/Abs(x+12)の値は、より好ましい上限が1.45、更に好ましい上限が1.40、特に好ましい上限が1.30である。上記Abs(x)/Abs(x+12)の値の下限は特に限定されず、通常は1.0以上程度となる。
上記Abs(x)/Abs(x+12)の値は、上記離型層の表面について、Geプリズムを使用したATR(全反射測定)法によって赤外吸収スペクトルを測定することで求めることができる。赤外吸収スペクトル測定装置としては、例えば、FT/IR 6600(JASCO社製)等を用いることができる。なお、上記離型層の少なくとも一方の表面が上記Abs(x)/Abs(x+12)の値を満たしていればよい。
上記Abs(x)/Abs(x+12)の値を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上述のように離型層に張力をかけつつ離型層の表面に対して表面処理を行う方法が好ましい。張力をかけつつ表面処理を行うことで、上記Abs(x)に対応する結晶構造の割合を低下させ、上記Abs(x+12)に対応する結晶構造の割合を増加させることができる。張力をかけつつ表面処理を行う方法として、例えば、上記離型層の表面に対して表面処理を行う際、表面処理部の前後でロールの回転速度に差をつける(巻き取り側のロール回転速度と、送り側のロールの回転速度とに差をつける)方法等が挙げられる。張力は、例えば、表面処理部にテンションメーターを設置し、荷重を測定することで測定することができる。張力の大きさは特に限定されないが、200N/m以上が好ましい。この際、更に、例えば、ラインスピードを遅くする、上記離型層の厚みを増大させる、上記離型層を構成する樹脂に占めるポリブチレンテレフタレート樹脂の割合を増加させる等により、上記Abs(x)/Abs(x+12)の値を上記範囲に調整しやすくなり、離型フィルムの離型性が向上する。
上記離型層の水接触角は特に限定されないが、好ましい下限は71°である。上記離型層の水接触角が71°以上であれば、上記離型層の表面のカルボニル基の露出がより充分に抑えられ、接着剤(特に、エポキシ接着剤)と上記離型層との相互作用がより充分に抑制されるため、離型フィルムの離型性が向上する。上記離型層の水接触角のより好ましい下限は73°である。上記離型層の水接触角の上限は特に限定されない。
上記離型層の水接触角は、湿度50%、温度23℃の環境下で、上記離型層の表面に水1μLを滴下して5秒後の接触角のことを意味する。水接触角は、θ/2法に従い、接触角計(例えば、協和界面科学社製、DropMaster 100等)及び固液界面解析装置(例えば、協和界面科学社製、DropMaster 300等)を用いて測定することができる。
上記離型層を構成する樹脂は特に限定されないが、離型フィルムの離型性が向上することから、ポリエステル、ポリオレフィン又はポリスチレンが好ましい。
上記ポリエステルは、芳香族ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。上記ポリオレフィンは、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)又は脂環式オレフィン系樹脂を含有することが好ましい。上記ポリスチレンは、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂を含有することが好ましい。なかでも、凹凸への追従性に優れ、カバーレイフィルムに形成された接着剤の染み出し防止性に優れることから、上記離型層は、芳香族ポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。
上記芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されないが、結晶性芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、テレフタル酸ブタンジオールポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらの芳香族ポリエステル樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、耐熱性、離型性、凹凸への追従性等のバランスの観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ポリブチレンテレフタレートと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体との混合樹脂も好ましい。上記脂肪族ポリエーテルは特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記芳香族ポリエステル樹脂は、フィルム製膜性の観点から、メルトボリュームフローレートが30cm/10min以下であることが好ましく、20cm/10min以下であることがより好ましい。なお、メルトボリュームフローレートは、ISO1133に従って、測定温度250℃、荷重2.16kgで測定することができる。
上記芳香族ポリエステル樹脂のうち、市販されているものとして、例えば、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡社製)、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン社製)、「ジュラネックス(登録商標)」(ポリプラスチックス社製)、「ノバデュラン(登録商標)」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が挙げられる。
上記ポリ(4−メチル−1−ペンテン)を含有するポリオレフィンには、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)樹脂が90重量%以上含有されていることが好ましい。
上記ポリ(4−メチル−1−ペンテン)樹脂は、例えば、三井化学社製の商品名TPX(登録商標)等の市販品を用いることができる。
上記脂環式オレフィン系樹脂とは、主鎖又は側鎖に環状脂肪族炭化水素を有するオレフィン系樹脂であり、耐熱性、強度等の点から、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が好ましい。
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂として、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体又は開環共重合体を、(必要に応じてマレイン酸付加やシクロペンタジエン付加のような変性を行った後に)水素添加した樹脂が挙げられる。また、ノルボルネン系モノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレン又はα−オレフィン等のオレフィン系モノマーとを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとシクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の環状オレフィン系モノマーとを付加重合させた樹脂が挙げられる。更に、これらの樹脂の変性物等も挙げられる。
上記シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂を含有するポリスチレンには、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂が70重量%以上、90重量%以下含有されていることが好ましい。
なお、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂とは、シンジオタクチック構造、即ち、炭素−炭素シグマ結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体規則構造を有する樹脂である。
上記シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂は、特に限定されない。例えば、ラセミダイアッドで75%以上、又は、ラセミペンタッドで30%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)等が挙げられる。また、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、これらを主成分とする共重合体等が挙げられる。上記シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂は、例えば、出光興産社製の商品名ザレック(登録商標)(XAREC(登録商標))等の市販を用いることができる。
上記離型層は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエラストマーを含む混合樹脂を含有するものであってもよい。上記エラストマーは特に限定されず、例えば、ポリブチレンテレフタレートと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体等が挙げられる。上記脂肪族ポリエーテルは特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記離型層を構成する樹脂に占める上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の割合は特に限定されないが、75重量%以上であることが好ましい。上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の割合が75重量%以上であれば、上記Abs(x)/Abs(x+12)の値を上記範囲に調整しやすくなり、離型フィルムの離型性が向上する。上記離型層を構成する樹脂に占める上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の割合のより好ましい下限は80重量%である。
上記離型層は、ゴム成分を含有してもよい。上記離型層がゴム成分を含有することにより、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。
上記ゴム成分は特に限定されず、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPM、EPDM)、ポリクロロプレン、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、上記ゴム成分として、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
上記離型層は、安定剤を含有してもよい。
上記安定剤は特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、熱安定剤等が挙げられる。
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は特に限定されず、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。上記熱安定剤は特に限定されず、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスチリルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
上記離型層は、更に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
上記離型層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は40μmである。上記離型層の厚みが10μm以上であれば、離型フィルムの耐熱性が向上する。上記離型層の厚みが40μm以下であれば、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。上記離型層の厚みのより好ましい下限は15μm、より好ましい上限は30μmである。
本発明の離型フィルムは、上記離型層のみから構成される単層構造であってもよく、上記離型層以外の層を有する多層構造であってもよい。
本発明の離型フィルムは、更にクッション層を有することが好ましい。上記クッション層を有することにより、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。
上記クッション層を有する場合、本発明の離型フィルムは、少なくとも1つの離型層とクッション層とを有してればよく、2層構造であってもよいし、3層以上の構造であってもよい。なかでも、クッション層の両側に離型層を有する構造を有することが好ましい。この場合、両側の離型層が上述したような極表面の結晶化度を有していてもよいし、片側の離型層のみが上述したような極表面の結晶化度を有していてもよい。また、両側の離型層は同じ樹脂組成であってもよいし、異なる樹脂組成であってもよい。また、両側の離型層は同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい。
また、本発明の離型フィルムは、離型層とクッション層とが直接接して一体化している構造であってもよいし、離型層とクッション層とが接着層を介して一体化している構造であってもよい。
上記クッション層を構成する樹脂は特に限定されないが、上記クッション層が上記離型層を構成する樹脂を含有することが好ましい。
上記クッション層が上記離型層を構成する樹脂を含有することにより、上記離型層と上記クッション層との密着性が向上する。上記クッション層は、上記離型層の主成分樹脂を含有することがより好ましく、上記離型層の主成分樹脂及びポリオレフィン樹脂を含有することが更に好ましい。ここで、上記離型層の主成分樹脂とは、上記離型層に含まれる樹脂の中で含有量が最も多い樹脂のことを意味する。
上記クッション層における上記離型層を構成する樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が50重量%である。上記離型層を構成する樹脂の含有量が10重量%以上であれば、上記離型層と上記クッション層との密着性が向上する。上記離型層を構成する樹脂の含有量が50重量%以下であれば、上記クッション層の柔軟性が充分となり、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。上記離型層を構成する樹脂の含有量のより好ましい下限は20重量%、更に好ましい下限は25重量%である。上記離型層を構成する樹脂の含有量のより好ましい上限は40重量%、更に好ましい上限は35重量%である。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−アクリル系モノマー共重合体等も挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、凹凸への追従性と耐熱性を両立させやすいことから、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
上記クッション層における上記ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が90重量%である。上記ポリオレフィン樹脂の含有量が50重量%以上であれば、上記クッション層の柔軟性が充分となり、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。上記ポリオレフィン樹脂の含有量が90重量%以下であれば、上記離型層と上記クッション層との密着性が向上する。上記ポリオレフィン樹脂の含有量のより好ましい下限は60重量%、更に好ましい下限は65重量%である。上記ポリオレフィン樹脂の含有量のより好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は75重量%である。
上記クッション層は、更に、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステル等の樹脂を含有してもよい。
上記クッション層は、更に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
上記クッション層は、単独の層からなる単層構造であってもよいし、複数の層の積層体からなる多層構造であってもよい。クッション層が多層構造である場合は、複数の層が接着層を介して積層一体化していてもよい。
上記クッション層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は15μm、好ましい上限は200μmである。上記クッション層の厚みが15μm以上であれば、離型フィルムの凹凸への追従性が向上する。上記クッション層の厚みが200μm以下であれば、熱プレス接着時におけるフィルム端部で生じる上記クッション層からの樹脂の染み出しを抑制できる。上記クッション層の厚みのより好ましい下限は30μm、より好ましい上限は150μmである。
本発明の離型フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、水冷式又は空冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法、溶剤キャスティング法、熱プレス成形法等が挙げられる。
上記クッション層の両側に上記離型層を有する構造を有する場合には、一方の離型層となるフィルムを作製した後、このフィルムにクッション層を押出ラミネート法にて積層し、次いで他方の離型層をドライラミネーションする方法が挙げられる。また、一方の離型層となるフィルム、クッション層となるフィルム及び他方の離型層となるフィルムをドライラミネーションする方法が挙げられる。
なかでも、各層の厚み制御に優れる点から、共押出Tダイ法で製膜する方法が好適である。
本発明の離型フィルムの用途は特に限定されないが、プリント配線基板、フレキシブル回路基板、多層プリント配線板等の製造工程において好適に用いることができる。
具体的には例えば、フレキシブル回路基板の製造工程において、銅回路を形成したフレキシブル回路基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化型接着シートを介してカバーレイフィルムを熱プレス接着する際に本発明の離型フィルムを用いることができる。
本発明の離型フィルムは離型性に極めて優れることから、高い離型性が求められるRtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造にも好適に用いることができる。
本発明によれば、従来よりも優れた離型性を有し、RtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造にも好適に用いることができる離型フィルムを提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)離型フィルムの製造
離型層(離型層a及び離型層b)を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を用いた。クッション層を構成する樹脂として、ポリプロピレン樹脂(PP)75重量部と、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(離型層の主成分樹脂)25重量部とを用いた。
離型層を構成する樹脂、及び、クッション層を構成する樹脂を押出機(ジーエムエンジニアリング社製、GM30−28(スクリュー径30mm、L/D28))を用いてTダイ幅400mmにて三層共押出し、押出された溶融樹脂を冷却ロール(温度90℃)により冷却した。これにより、クッション層(厚み50μm)の両側に離型層a(厚み20μm)及び離型層b(厚み30μm)をそれぞれ有する3層構造のフィルムを得た。なお、冷却時には、溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間を2.0秒、冷却ロールによって溶融樹脂を冷却する際の伸長応力を400kPaとした。
なお、伸長応力は、下記式(3)で表される。
伸長応力(Pa)=ひずみ速度(1/s)×溶融樹脂の伸長粘度(Pa・s) (3)
また、ひずみ速度及び溶融樹脂の伸長粘度は、それぞれ下記式(4)、(5)で表される。
ひずみ速度(1/s)=9×V×{(V/V0)^(1/9)−1}/L (4)
溶融樹脂の伸長粘度(Pa・s)=零せん断粘度(Pa・s)×ひずみ速度(1/s)^(−0.1) (5)
式(4)中、Vはロール速度(m/s)、V0は金型出口の溶融樹脂の流速(m/s)、Lは金型出口から溶融樹脂のロール接触点までの距離(m)である。
得られたフィルムをロールで送りつつ、離型層aの表面を、摩擦処理装置(山縣機械社製の研磨処理装置、型式YCM−150M)を用い、摩擦処理材の表面の素材として織物を用いて摩擦処理し、離型フィルムを得た。摩擦処理の際には、送り側ロールと、巻き取り側ロールとの間に表面処理部ロールを設け、表面処理部ロールをフィルムに押し当てることでフィルムに荷重をかけた。巻き取り側のロール回転速度と、送り側のロールの回転速度との比を調整し、フィルムの繰り出し方向へ張力400N/mを生じさせた。なお、摩擦処理の際に加えた仕事エネルギー量は300kJであった。また、摩擦処理前の算術平均粗さRaは0.04μm、光沢度は185%であった。
(2)算術平均粗さRaの測定
JIS B 0601:2013に準拠し、Mitutoyo社製のサーフテストSJ−301を用いて摩擦処理後の離型層aの表面の算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示した。
(3)光沢度の測定
JIS Z8741に準拠し、入射角を60°として、日本電色工業社製の光沢度計VG−1Dを用いて摩擦処理後の離型層aの表面の光沢度を測定した。結果を表1に示した。
(4)極表面の結晶化度(入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により求められる結晶化度)の測定
X線の入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により離型層aの表面を分析した。得られた回折測定プロットに、2θ=9.5〜35°の範囲で直線状のベースラインを引いた。結晶質相及び非晶質相に対してそれぞれガウス関数としてフィッティングを行い、得られた結晶質相のピーク総面積及び非晶質相のピーク総面積から下記式(1)により離型層の極表面の結晶化度を求めた。結果を表1に示した。
結晶化度(%)=結晶質相のピーク総面積/(結晶質相のピーク総面積+非晶質相のピーク総面積)×100 (1)
斜入射広角X線回折装置としては、下記の条件に設定したリガク社製の表面構造評価用多機能X線回折装置(ATX−G型)を用いた。
X線源 CuKα線
管電圧−管電流 50kV−300mA
入射光学系 集中法
入射角(ω) 0.06°
測定範囲 5−70°
測定間隔 0.02°
走査速度 1.0°/min
操作方法 In−Plane法
(5)離型層全体の結晶化度の測定
離型フィルムの各層を剥がし、離型層aのみからなるサンプルを得た。広角X線回折法により離型層aを分析した。得られた回折測定プロットに、2θ=12.0〜28.18°の範囲で直線状のベースラインを引いた。結晶質相及び非晶質相に対してそれぞれガウス関数としてフィッティングを行い、得られた結晶質相のピーク総面積及び非晶質相のピーク総面積から下記式(1)により離型層全体の結晶化度を求めた。結果を表1に示した。
結晶化度(%)=結晶質相のピーク総面積/(結晶質相のピーク総面積+非晶質相のピーク総面積)×100 (1)
広角X線回折装置としては、下記の条件に設定したリガク社製の薄膜評価用試料水平型X線回折装置(Smart Lab)を用いた。
X線源 CuKα線
管電圧 45kV−200mA
入射光学系 集中法
測定範囲 5−80°
測定間隔 0.02°
走査速度 5.0°/min
走査方法 Out−of−Plane法
(6)離型層の赤外吸収スペクトルの測定
離型フィルムの離型層の表面について、赤外吸収スペクトル測定装置FT/IR 6600(JASCO社製)を用い、Geプリズム(PKS G1)を使用したATR(全反射測定)法によって赤外吸収スペクトルを測定した。測定範囲を4000〜400cm−1、積算を32回、分解能を4cm−1とした。その結果、芳香族ポリエステル樹脂のα型結晶構造のブチレン鎖の吸収として波数1458cm−1にAbs(x)が、β型結晶構造のブチレン鎖の吸収として波数1470cm−1にAbs(x+12)が得られた。得られたAbs(x)及びAbs(x+12)から、Abs(x)/Abs(x+12)の値を求めた。結果を表1に示した。
(7)離型層の水接触角の測定
離型フィルムの離型層の表面について、θ/2法に従い、接触角計(協和界面科学社製、DropMaster 100)及び固液界面解析装置(協和界面科学社製、DropMaster 300)を用いて水接触角を測定した。
(実施例2)
離型層(離型層a及び離型層b)を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)とPBT−ポリテトラメチレングリコール共重合体とを重量比80:20で用い、溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間、冷却ロール温度及び伸長応力を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、実施例1と同様にして各物性を求めた。
(実施例3〜7、比較例1〜3)
溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間、冷却ロール温度及び伸長応力、並びに、表面処理時の張力を表1、2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、実施例1と同様にして各物性を求めた。
(比較例4)
溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間、冷却ロール温度及び伸長応力、並びに、表面処理時の張力を表2に示したように変更した以外は実施例2と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、実施例1と同様にして各物性を求めた。
(比較例5)
溶融樹脂と冷却ロールとの接触時間、冷却ロール温度及び伸長応力、並びに、表面処理時の張力を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、実施例1と同様にして各物性を求めた。
<評価>
実施例及び比較例で得られた離型フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
(1)離型性の評価
エポキシ接着シートとしてCVL1(ニッカン工業社製、CISV2535)を用い、離型フィルムを、離型層aがエポキシ接着シートに接するようにしてエポキシ接着シートに重ね、180℃、30kgf/cmの条件で5分間熱プレスした。その後、一部のサンプルでは離型フィルムが自然剥離した。熱プレスから10分間が経過しても離型フィルムが自然剥離しなかったサンプルについては、幅30mmにカットし、試験速度500mm/分、剥離角度30°で剥離試験を行い、30°剥離強度(30°ピール値)を求めた。
また、通常求められる条件よりも厳しい条件下での離型性を比較するために、エポキシ接着シートCVL1を、より接着力が強いエポキシ接着シートであるCVL2(デュポン社製、HXC2525)に代えて同様の測定を行った。
これらの測定結果をもとに、離型フィルムの離型性について以下のように評価した。
◎:CVL1を用いた試験において離型フィルムが自然剥離し、かつ、CVL2を用いた試験において30°剥離強度が100gf/cm以下であった場合
○:CVL1を用いた試験において離型フィルムが自然剥離し、かつ、CVL2を用いた試験において30°剥離強度が100gf/cmより大きかった場合
×:CVL1を用いた試験において離型フィルムが自然剥離しなかった場合
なお、剥離角度30°で行う剥離試験は、剥離角度180°で行う試験に比べて剥離角度が低角度であるため一般に剥離が非常に困難である。すなわち、剥離角度30°での剥離試験が良好である離型フィルムは、従来の離型フィルムに比べて優れた離型性を有しているといえる。
(2)追従性の評価
銅張積層板(CCL)(12.5cm×12.5cm、ポリイミド厚み25μm、銅箔厚み35μm)の銅箔面に、φ=1mmの穴を空けたカバーレイフィルム(12.5cm×12.5cm、ポリイミド厚み25μm、エポキシ接着剤層厚み35μm)をエポキシ接着剤層が接するようにして積層させた。更に離型フィルムを、離型層aがカバーレイフィルムに接するようにして積層した。この積層体を、180℃、30kgf/cmの条件で2分間熱プレスした。その後、離型フィルムを剥離し、銅張積層板(CCL)上に流れ出したエポキシ接着剤を光学顕微鏡にて観察した。エポキシ接着剤の染み出し幅を12点測定してその平均値を算出した。
測定結果をもとに、離型フィルムの追従性について以下のように評価した。
〇:エポキシ接着剤の染み出し幅の平均値が55μm未満であった場合
×:エポキシ接着剤の染み出し幅の平均値が55μm以上であった場合
Figure 2021091227
Figure 2021091227
本発明によれば、従来よりも優れた離型性を有し、RtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造にも好適に用いることができる離型フィルムを提供することができる。

Claims (13)

  1. 少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムであって、
    前記離型層は、入射角を0.06°とした斜入射広角X線回折法により求められる結晶化度が50%以上である
    ことを特徴とする離型フィルム。
  2. 離型層全体の結晶化度が、離型層の極表面の結晶化度よりも低いことを特徴とする請求項1記載の離型フィルム。
  3. 離型層全体の結晶化度が25〜50%であることを特徴とする請求項1又は2記載の離型フィルム。
  4. 離型層は、表面の算術平均粗さRaが0.50μm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の離型フィルム。
  5. 離型層は、表面の光沢度が100%以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の離型フィルム。
  6. 離型層は、ATR法によって測定された赤外吸収スペクトルにおけるAbs(x)及びAbs(x+12)が下記式を満たすことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の離型フィルム。
    Abs(x)/Abs(x+12)≦1.50
    式中、Abs(x)は波数1455cm−1以上、1465cm−1以下の領域に存在する最大吸収強度であり、xは前記最大吸収強度を示す波数であり、Abs(x+12)は波数(x+12)cm−1における吸収強度である。
  7. 離型層の水接触角が71°以上であることを特徴とする請求項6記載の離型フィルム。
  8. 離型層は、芳香族ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の離型フィルム。
  9. 芳香族ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有することを特徴とする請求項8記載の離型フィルム。
  10. 離型層を構成する樹脂に占めるポリブチレンテレフタレート樹脂の割合が75重量%以上であることを特徴とする請求項9記載の離型フィルム。
  11. 更にクッション層を有し、前記クッション層の両側に離型層を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又10記載の離型フィルム。
  12. 少なくとも1つの離型層を有する離型フィルムであって、
    前記離型層は、ATR法によって測定された赤外吸収スペクトルにおけるAbs(x)及びAbs(x+12)が下記式を満たすことを特徴とする離型フィルム。
    Abs(x)/Abs(x+12)≦1.50
    式中、Abs(x)は波数1455cm−1以上、1465cm−1以下の領域に存在する最大吸収強度であり、xは前記最大吸収強度を示す波数であり、Abs(x+12)は波数(x+12)cm−1における吸収強度である。
  13. RtoR方式によるフレキシブル回路基板の製造に用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の離型フィルム。
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