JP2021085088A - Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板 - Google Patents

Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】めっき層の表面に文字やデザイン等を意図的に現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供する。【解決手段】鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、金属組織として、Al相と、Al/Zn/MgZn2の三元共晶組織とを含み、溶融めっき層は、第一領域と第二領域とを含み、第一領域は、溶融めっき層の表面におけるAl相の平均の長さが、200μm以上の領域であり、第二領域は、溶融めっき層の表面におけるAl相の平均の長さが、200μm未満の領域であり、第一領域または第二領域が、所定の形状となるように配置されているZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。【選択図】図1

Description

本発明は、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に関する。
溶融亜鉛めっき鋼板に比べて高い耐食性を有するZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、建材、家電、自動車分野等種々の製造業において広く使用されており、近年、その使用量が増加している。
ところで、溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面に、文字、模様、デザイン画などを現すことを目的として、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を施すことにより、文字、模様、デザイン画などを溶融めっき層の表面に現す場合がある。
しかし、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を行うと、文字やデザイン等を施すためのコストや時間が増大する問題がある。更に、印刷や塗装によって文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、需要者から高い支持を得ている金属光沢外観が失われるだけでなく、塗膜自体の経時劣化や塗膜の密着性の経時劣化の問題から、耐久性が劣り、時間とともに文字やデザイン等が消失してしまう恐れがある。また、インクをスタンプすることで文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、コストや時間は比較的抑えられるものの、インクによって、溶融めっき層の耐食性が低下する懸念がある。更に、溶融めっき層の研削によって意匠等を現す場合は、意匠等の耐久性は優れるものの、研削箇所の溶融めっき層の厚みが大幅に減少することから耐食性低下が必然であり、めっき特性の低下が懸念される。
下記特許文献に示されるように、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に対する様々な技術が開発されているが、めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合にその耐久性を向上させる技術は知られていない。
Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に関し、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨地状のめっき外観をより美麗とすることを目的とする従来技術は存在する。
例えば、特許文献1は、キメが細かく、かつ平滑な光沢部が多い梨地状の外観を有するZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板、すなわち、単位面積当たりの白色部の個数が多く、そして、光沢部の面積の割合が大きいという良好な梨地状の外観を有するZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。また、特許文献1においては、好ましくない梨地の状態を、不定形な白色部と円形状の光沢部とが混在して表面に点在した表面外観を呈している状態であることが記載されている。
また、特許文献4は、Al/MgZn/Znの三元共晶組織を微細化させることで、全体的にめっき層の光沢度が増し、外観均一性が向上した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
しかしながら、めっき層の表面に文字等を現した場合に、その耐久性を向上させ、かつ、耐食性を低下させないようにする技術は、従来から知られていなかった。
日本国特許第5043234号公報 日本国特許第5141899号公報 日本国特許第3600804号公報 国際公開第2013/002358号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板と、
前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、
を備え、
前記溶融めっき層は、
平均組成で、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
金属組織として、Al相と、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織とを含み、
前記溶融めっき層は、第一領域と第二領域とを含み、
前記第一領域は、前記溶融めっき層の表面における前記Al相の平均の長さが、200μm以上の領域であり、
前記第二領域は、前記溶融めっき層の表面における前記Al相の平均の長さが、200μm未満の領域であり、
前記第一領域または前記第二領域が、所定の形状となるように配置されていることを特徴とするZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[2] 前記第一領域または前記第二領域が、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている、[1]に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[3] 前記第一領域または前記第二領域が、意図的に形成されたものである、[1]または[2]に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[4] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有する、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[5] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001〜2質量%含有する、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[6] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001〜2質量%含有する、[1]乃至[5]の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
[7] 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30〜600g/mである、[1]乃至[6]の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
本発明によれば、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合に、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供できる。
本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板のAl相の大きさの測定方法を説明する図である。 No.4の第一領域の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す写真である。 No.4の第二領域の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す写真である。 本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の一例を示す写真である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層とを備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、金属組織として、Al相と、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織とを含む。溶融めっき層は、第一領域と第二領域とからなる。第一領域は、溶融めっき層の表面におけるAl相の平均の長さが、200μm以上の領域であり、第二領域は、溶融めっき層の表面におけるAl相の平均の長さが、200μm未満の領域である。そして、第一領域または第二領域が、所定の形状となるように配置されている。
本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、好ましくは、第一領域または第二領域が、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。第一領域または第二領域は、意図的に形成されたものである。
ここで、Al相とは、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当し、三元共晶組織中のAlとは区別される。以下、本実施形態では、〔Al相〕と表記する。
<鋼板>
溶融めっき層の下地として用いる鋼板の材質は、特に制限されない。詳細は後述するが、鋼板としては、一般鋼などを用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼を用いることも可能である。また、鋼板の形状も特に制限されない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係る溶融めっき層が形成される。
<溶融めっき層>
(化学成分)
次に、溶融めっき層の化学成分について説明する。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。溶融めっき層は、好ましくは、平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなる。
溶融めっき層は、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有してもよい。溶融めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001〜2質量%含有してもよい。溶融めっき層は、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001〜2質量%を含有してもよい。
[Al:4質量%以上25質量%未満]
溶融めっき層におけるAlの含有量は、平均組成で4質量%以上25質量%未満である。Alは、耐食性を確保するために必要な元素である。溶融めっき層中のAlの含有量が4質量%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるため、また、〔Al相〕が十分に形成されなくなるため意匠性の確保にも好ましくなく、25質量%以上になると〔Al相〕が過剰に形成されるため意匠性の確保に好ましくない。溶融めっき層におけるAlの含有量は、耐食性の観点から、5〜22質量%であってもよく、5〜18質量%であってもよく、6〜16質量%であってもよい。
[Mg:0質量%以上10質量%未満]
溶融めっき層におけるMgの含有量は、平均組成で0質量%以上10質量%未満であり、好ましくは1質量%以上10質量%未満である。Mgは、耐食性を向上させるために添加してもよい。溶融めっき層中のMgの含有量が1質量%以上になると、耐食性を向上させる効果がより十分となるので好ましい。また、Mgが10質量%以上になるとMg化合物が晶出するため意匠性の確保に好ましくなく、また、めっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となるため好ましくない。耐食性とドロス発生の抑制とのバランスの観点から、溶融めっき層におけるMgの含有量は、1.5〜6質量%としてもよく、2〜5質量%としてもよい。
溶融めっき層は、Siを0.0001〜2質量%の範囲で含有してもよい。Siは、溶融めっき層の密着性を向上させるのに有効な元素である。
Siを溶融めっき層に0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。
一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、溶融めっき層にSiを含有させる場合であっても、Siの含有量は2質量%以下とする。
めっき密着性の観点からは、溶融めっき層におけるSiの含有量は0.0010〜1質量%としてもよく、0.0100〜0.8質量%としてもよい。
溶融めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001〜2質量%含有してもよい。これらの元素を含む金属間化合物は、初晶Al相の晶出核として作用し、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕をより微細、均一にして、溶融めっき層の外観や平滑性を向上させる。溶融めっき層におけるこれらの元素の含有量が0.0001質量%未満では、凝固組織を微細均一にする効果が不十分になるため好ましくない。また、溶融めっき層におけるこれらの元素の含有量が2質量%を超えると、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕を微細化させる効果が飽和し、かつ、溶融めっき層の表面粗度が大きくなり外観が悪くなるため、好ましくない。
特に溶融めっき層の外観向上を目的として上述の元素を添加する場合、上述の元素の含有量は0.001〜0.5質量%が好ましく、0.001〜0.05質量%がより好ましく、さらに好ましくは0.002〜0.01質量%である。
溶融めっき層中には、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001〜2質量%を含有してもよい。溶融めっき層がこれらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。
なお、REMは、周期律表における原子番号57〜71の希土類元素の1種または2種以上を指す。
溶融めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。また、めっきを溶解する際にめっき層と鋼の界面に生成する合金層由来のFeが測定されることもある。
なお、溶融めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP−751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
(金属組織)
次に、溶融めっき層の金属組織について説明する。本実施形態に係る溶融めっき層は、金属組織として〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいる。
具体的には、本実施形態に係る溶融めっき層は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有している。
更に、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれていてもよい。
また、Siを添加した場合には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕
ここで、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相との三元共晶組織であり、この三元共晶組織を形成しているAl相は例えばAl−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当する。
この高温でのAl″相は、常温では通常は微細なAl相と微細なZn相とに分離して現れる。該三元共晶組織中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。該三元共晶組織中のMgZn相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。
状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。しかしながら、その量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
〔Al相〕
〔Al相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当する。この高温でのAl″相は、めっき浴のAlやMg濃度に応じて、固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は、常温では通常は微細なAl相と微細なZn相とに分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形状に起因すると考えられる。
状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。しかしながら、通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形状に起因する相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。
〔Al相〕は前記の三元共晶組織を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
本実施形態では、後述するように、〔Al相〕の平均の長さを、第一領域では200μm以上とし、第2領域では200μm未満とする。
〔Zn相〕
〔Zn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlや少量のMgを固溶していることがある。状態図で見る限り、この相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。
〔Zn相〕は、前記の三元共晶組織を形成しているZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態に係る溶融めっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合が有るが、〔Zn相〕に起因する耐食性への影響はほとんど見られなかった。そのため、溶融めっき層に〔Zn相〕が含まれても、特に問題は無い。
〔MgZn相〕
〔MgZn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることがある。状態図で見る限り、この相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。
〔MgZn相〕と前記の三元共晶組織を形成しているMgZn相とは、顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態に係る溶融めっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件では溶融めっき層中に含まれる。
〔MgSi相〕
〔MgSi相〕とは、Siを添加しためっき層の凝固組織中に、明瞭な境界を持って島状に見える相である。状態図で見る限り、〔MgSi相〕にはZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。〔MgSi相〕は、溶融めっき層中では顕微鏡観察において明瞭に他の相と区別できる。
本実施形態の溶融めっき層は、鋼板がめっき浴に浸漬された後に引き上げられ、その後、鋼板表面に付着した溶融金属が凝固することにより形成される。このとき、最初に、〔Al相〕が形成され、その後、溶融金属の温度低下に伴い、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が形成される。
溶融めっき層の化学成分(つまり、めっき浴の化学成分)によっては、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕、〔MgZn相〕または〔Zn相〕が形成される場合もある。
(第一領域及び第二領域)
次に、溶融めっき層の第一領域及び第二領域について説明する。本実施形態に係る溶融めっき層(溶融めっき層の表面)には、第一領域と第二領域とが存在する。第一領域は、平均長さが長いAl相に起因する金属光沢が観察される。そのため、光沢が線状に認識できる。一方の、第二領域は、平均長さが短いAl相に起因して、金属光沢が点状に認識される。このため、第一領域と第二領域は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能になっている。
本実施形態では、第一領域が直線部、曲線部等を現すものであってもよく、第二領域が直線部、曲線部等を現すものであってもよい。第一領域が直線部、曲線部等を現すものである場合は、第一領域が所定の形状となるように配置され、それ以外の領域を第二領域とすることができる。また、第二領域が直線部、曲線部等を現すものである場合は、第二領域が所定の形状となるように配置され、それ以外の領域を第一領域とすることができる。第一領域と第二領域の境界は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下で把握することができる。
第一領域が所定の形状となるように配置される場合の第一領域は、肉眼で第一領域の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。この場合の第二領域は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)において第一領域以外の部分を占める領域となり、溶融めっき層の大部分を占めてもよい。また、第二領域内に第一領域が配置されてもよい。具体的には、第一領域は、第二領域内おいて、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていてもよい。第一領域の形状を調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。この形状は人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
一方、第二領域が所定の形状となるように配置される場合の第二領域は、肉眼で第二領域の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。この場合の第一領域は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)において第二領域以外の部分を占める領域となり、溶融めっき層の大部分を占めてもよい。また、第一領域内に第二領域が配置されてもよい。具体的には、第二領域は、第一領域内おいて、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていてもよい。第二領域の形状を調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。この形状は人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
第一領域と第二領域は、肉眼に限らず、拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能であってもよい。具体的には、第一領域または第二領域で構成される直線部等の形状は、50倍以下の視野で識別可能であればよい。50倍以下の視野であれば、第一領域または第二領域で構成される所定の形状は、その表面状態の違いにより、識別可能である。
第一領域または第二領域は、好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下で識別可能である。
第一領域と第二領域は、下記の条件を満たすものである。
(a)第一領域は、溶融めっき層の表面における〔Al相〕の平均長さが200μm以上の領域である。
(b)第二領域は、溶融めっき層の表面における〔Al相〕の平均長さが200μm未満の領域、好ましくは〔Al相〕の大きさが180μm以下の領域、より好ましくは〔Al相〕の大きさが150μm未満の領域である。
溶融めっき層には、少なくとも〔Al相〕及び〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が存在する。溶融めっき層では、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有する。そして、〔Al相〕は、溶融めっき層の凝固時に比較的早期に析出するものであり、その際の〔Al相〕の形態は樹枝晶状となる。
ここで、第一領域に存在する〔Al相〕の平均長さは、200μm以上になっている。〔Al相〕の平均長さが200μm以上になると、溶融めっき層表面に〔Al相〕の比較的大きな樹枝晶が露出するようになり、周囲に存在する三元共晶組織などに比べて金属光沢であるAl相が長く、また凹凸の明確になることから、全体として線状に視認できるようになる。
一方、第二領域に存在する〔Al相〕の平均長さは、200μm未満になっている。〔Al相〕の平均長さが200μm未満になると、溶融めっき層表面に〔Al相〕の比較的小さな樹枝晶が露出するようになり、周囲に存在する三元共晶組織などに比べて金属光沢であるAl相が短く、また凹凸が不明瞭になることから、全体として点状に視認できるようになる。第二領域は、好ましくは〔Al相〕の平均長さが180μm以下の領域であり、より好ましくは〔Al相〕の平均長さが150μm未満の領域である。第一領域のおける〔Al相〕の平均長さと、第二領域における〔Al相〕の平均長さの差が大きくなるほど、第一領域及び第二領域を識別しやすくなるため好ましい。
第一領域は、溶融めっき層の凝固時の初期に、〔Al相〕が比較的低い個数密度で生成し、〔Al相〕自体が粗大化することによって形成されるものと推測される。また、第二領域は、溶融めっき層の凝固時の初期に、〔Al相〕が比較的高い個数密度で生成し、〔Al相〕自体が粗大化せず微細のままになることによって形成されるものと推測される。〔Al相〕の大きさを制御するためには、溶融めっき層の凝固時に、溶融金属の冷却速度を制御すればよい。具体的には、〔Al相〕を粗大化させる場合は凝固時の冷却速度を遅くし、〔Al相〕を微細化させる場合は凝固時の冷却速度を速くするとよい。鋼板を溶融めっき浴に浸漬してから引き上げる際に、鋼板表面において溶融金属の冷却速度を部分的に速くするか、または遅くすることにより、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状を、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に現せるようになる。
〔Al相〕の平均の長さは、次のような方法で測定する。まず、溶融めっき層の表面のうち、第一領域及び第二領域のそれぞれにおいて、任意の3視野の領域を走査型電子顕微鏡の反射電子像で撮影する。各領域のサイズは、500μm×360μmの矩形の領域とする。撮影された写真において、樹枝状のAl相を確認する。樹枝状のAl相は、概ね、図1に示すように、主軸部と、主軸部から伸びた二次アーム部とを有する形状となっている。写真内のAl相について、長手方向の長さAを測定する。3視野において全てのAl相の長さAを求め、その平均値を第一領域または第二領域におけるAl相の平均長さとする。なお、樹枝状のAl相は、凝固核から放射状に成長することが多いが、同一平面に配列するとは限らず、表面から観察する場合はその一部、例えば、二次アーム先端のみが観察される、または、主軸部のみが観察される場合がある。そのようなAl相は、計測の対象から排除することとする。一方で、主軸と二次アームの間に別の相がかぶさり、つながっていないように観察できるものは対象とする。
<化成処理皮膜層及び塗膜層>
本実施形態に係るZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の表面に化成処理皮膜層や塗膜層を有してもよい。ここで、化成処理皮膜層や塗膜層の種類は特に限定されず、公知の化成処理皮膜層や塗膜層を用いることができる。
[Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の製造方法]
以下、本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の製造方法を説明する。
まず、熱間圧延鋼板を製造し、必要に応じて熱延板焼鈍を行う。酸洗後、冷間圧延を行い、冷延板とする。冷延板を脱脂、水洗した後、焼鈍(冷延板焼鈍)し、焼鈍後の冷延板を溶融めっき浴に浸漬させて溶融めっき層を形成する。溶融めっきは、鋼板を溶融めっき浴に連続通板させる連続式溶融めっき法でもよく、鋼板を所定の形状に加工した鋼材または鋼板自体を、溶融めっき浴に浸漬してから引き上げるどぶ付け式めっき法でもよい。
溶融めっき浴は、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むことが好ましい。また、溶融めっき浴は、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含むものでもよい。更に、溶融めっき浴は、Si:0.0001〜2質量%を含有してもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を、合計で0.001〜2質量%含有してもよい。なお、本実施形態の溶融めっき層の平均組成は、溶融めっき浴の組成とほぼ同じである。
溶融めっき浴の温度は、組成によって異なるが、例えば、400〜500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板両面の合計の付着量が30〜600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、溶融めっき鋼板の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、溶融めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
第一領域及び第二領域を形成するためには、溶融めっき層の付着量を調整した後、鋼板全体を冷却しつつ、溶融状態の金属に対して非酸化性ガスをガスノズルによって局所的に吹き付ける。非酸化性ガスとしては窒素やアルゴンなどの非酸化性ガスを用いるとよい。
第一領域を所定の形状になるようにするためには、第二領域の形成のために溶融めっき層のほぼ全体に対して浴温から345℃までの間の平均冷却速度を10℃/秒以上で冷却する。また、第一領域の形成のために溶融めっき層の一部に対して浴温から345℃までの間の平均冷却速度を、第二領域よりも遅い速度である8℃/秒未満で冷却する。
より好ましくは、第二領域の形成のために溶融めっき層のほぼ全体に対して送風冷却またはミスト冷却を行って浴温から345℃までの間の平均冷却速度を15℃/秒以上にしつつ、第一領域の形成のために溶融めっき層の一部に対して冷却せずに放冷(放置)するか、もしくは比較的高温の非酸化性ガスを吹き付けることで、浴温から345℃までの間の平均冷却速度を5℃/秒以下とする。この場合の非酸化性ガスの温度は、例えば、100〜300℃の範囲とするとよい。ただし、上記の平均冷却速度を満足できるならば、非酸化性ガスの温度は限定する必要はない。
また、第二領域を所定の形状になるようにするためには、第一領域の形成のために溶融めっき層のほぼ全体に対して浴温から345℃までの間の平均冷却速度を8℃/秒以下で冷却する。また、第二領域の形成のために溶融めっき層の一部に対して浴温から345℃までの間の平均冷却速度を、第一領域よりも速い速度である10℃/秒以上で冷却する。
より好ましくは、第一領域の形成のために溶融めっき層のほぼ全体を放冷して浴温から345℃までの間の平均冷却速度を5℃/秒以下にしつつ、第二領域の形成のために溶融めっき層の一部に対して比較的低温の非酸化性ガスを吹き付けることで、浴温から345℃までの間の平均冷却速度を15℃/秒以上とする。第一領域の冷却は、冷却速度を低下させるために、50〜150℃の雰囲気中で行ってもよい。また、第二領域を冷却する際の非酸化性ガスの温度は、例えば、10〜30℃の範囲としてもよく、水滴を含むミストガスとしてもよい。ただし、上記の平均冷却速度を満足できるならば、第一領域の冷却時の雰囲気温度や非酸化性ガスの温度は、限定する必要はない。
更に、溶融めっき層の表面に化成処理層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、化成処理を行う。化成処理の種類は特に限定されず、公知の化成処理を用いることができる。
また、溶融めっき層の表面や化成処理層の表面に塗膜層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後、又は、化成処理層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、塗装処理を行う。塗装処理の種類は特に限定されず、公知の塗装処理を用いることができる。
本実施形態のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、第一領域を溶融めっき層の表面におけるAl相の平均長さが200μm以上の領域とし、第二領域を、溶融めっき層の表面におけるAl相の平均長さが200μm未満の領域とすることで、第一領域と第二領域を識別できるようになる。第一領域及び第二領域は、印刷や塗装によって形成されたものではないため、耐久性が高くなっている。また、第一領域及び第二領域が印刷や塗装によって形成されたものではないため、溶融めっき層の耐食性への影響もない。更に、第一領域及び第二領域は、溶融めっき層の表面を研削等によって形成したものではない。従って、各領域における溶融めっき層の厚みは、耐食性が劣化するほどのめっき層の厚みの減少がみられず、耐食性を低下させない。また、第一領域または第二領域を、所定の形状、例えば、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように意図的若しくは人工的に配置することで、溶融めっき層に意匠、商標、その他の識別マークなどを表すことができ、また、工程管理や在庫管理に必要な情報なども現すことができる。これらは、耐久性が高く、また、溶融めっき鋼板の優れた耐食性を阻害することがない。
本実施形態によれば、所定の形状に成形した第一領域または第2領域の耐久性が高く、耐食性等の好適なめっき特性を有する溶融めっき鋼板を提供できる。また、本実施形態では、めっき浴から引き上げ後の溶融状態の溶融めっき層の冷却速度を制御しつつ、溶融状態の溶融めっき層の表面に非酸化性ガスをガスノズルによって局所的に吹き付けることで、凝固後の溶融めっき層の〔Al相〕の平均の長さを意図的に調整することができ、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように第一領域または第二領域を配置できる。これにより、溶融めっき層の表面に、印刷、塗装または研削を行うことなく様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、第一領域または第二領域を所定の形状に成形することで、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき層の表面に付与することもでき、溶融めっき鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。鋼板を脱脂、水洗した後に、還元焼鈍、めっき浴浸漬、付着量制御、冷却を行うことで、表2A及び表2Bに示すNo.1〜21の溶融めっき鋼板を製造した。付着量制御後の冷却は、めっき浴から鋼板を引き上げてからガスワイピングによって付着量を調整したのちに、鋼板全体を冷却しつつ、溶融状態の金属に対して窒素ガスをガスノズルによって局所的に吹き付けた。その後、冷却して溶融金属を完全に凝固させた。窒素ガスの吹き付け範囲は、50mm間隔の格子状パターンとなるように制御した。表1に冷却条件を示す。表1に示す平均冷却速度は、いずれも、浴温から345℃までの間の平均冷却速度である。
冷却条件A〜Cによって第二領域で格子状パターンを表現させ、冷却条件Dによって第一領域で格子状パターンを表現させた。また、冷却条件E、Fは、比較例のパターンとした。
冷却条件Aは、鋼板全体を120℃の雰囲気中で徐冷しつつ、非酸化性ガスとして30℃の窒素ガスを吹き付けた。
冷却条件Bは、鋼板全体を放冷しつつ、非酸化性ガスとして20℃の窒素ガスを吹き付けた。
冷却条件Cは、鋼板全体を放冷しつつ、非酸化性ガスとしてミストを含む窒素ガスを吹き付けた。
冷却条件Dは、鋼板全体を、ミストを含む窒素ガスで冷却しつつ、非酸化性ガスとして250℃の窒素ガスを吹き付けた。
また、冷却条件Eは、鋼板全体を30℃の窒素ガス中で放冷しつつ、非酸化性ガスとして30℃の窒素ガスを吹き付けた。冷却条件Fは、鋼板全体を放冷した。
Figure 2021085088
Figure 2021085088
Figure 2021085088
また、上記と同様にしてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面に、インクジェット法により、50mm間隔の格子状パターンを印刷した。この結果をNo.22として表2A及び表2Bに示す。
更に、上記と同様にしてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面を研削して、50mm間隔の格子状パターンを形成した。この結果をNo.23として表2A及び表2Bに示す。
得られた溶融めっき鋼板について、第一領域及び第二領域におけるAl相の平均長さを求めた。まず、第一領域及び第二領域の境界は、溶融めっき層の表面を肉眼で観察することにより特定した。境界の判別が難しい例では、窒素ガスの吹き付け範囲が第一領域または第二領域であるとした。
〔Al相〕の平均の長さは、次のような方法で測定した。まず、溶融めっき層の表面のうち、第一領域及び第二領域のそれぞれにおいて、任意の3視野の領域を走査型電子顕微鏡の反射電子像で撮影した。各領域のサイズは、500μm×360μmの矩形の領域とした。撮影された写真において、樹枝状のAl相を確認した。樹枝状のAl相は、概ね、図1に示すように、主軸部と、主軸部から伸びた一次アーム部とを有する形状となっていた。写真内のAl相について、長手方向の長さAを測定した。3視野において全てのAl相の長さAを求め、その平均値を第一領域または第二領域におけるAl相の平均長さとした。なお、樹枝状のAl相は、凝固核から放射状に成長することが多いが、同一平面に配列するとは限らず、表面から観察する場合はその一部、例えば、アーム先端のみが観察される、または、主軸部のみが観察される場合がある。そのようなAl相は、計測の対象から排除した。一方で、主軸とアームの間に別の相がかぶさり、つながっていないように観察できるものは測定対象とした。
[識別性]
格子状のパターンを施した試験板の、製造した直後の初期状態のものと、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものを対象に、下記の判定基準に基づいて目視評価した。初期状態、経時状態とも、◎〜△を合格とした。
◎:5m先からでも格子状パターンを視認できる。
○:5m先からは格子状パターンを視認できないが、3m先からの視認性は高い。
△:3m先からは格子状パターンを視認できないが、1m先からの視認性は高い。
×:1m先から格子状パターンを視認できない。
[耐食性]
試験板を150×70mmに切断し、JASO−M609に準拠した腐食促進試験CCTを30サイクル試験した後、錆発生状況を調査し、下記の判定基準に基づいて評価した。◎〜△を合格とした。
◎:錆発生がなく、格子状パターンとそれ以外の領域がともに美麗な意匠外観を維持している。
○:錆発生はないが、格子状パターンとそれ以外の領域にごくわずかな意匠外観変化が認められる。
△:意匠外観がやや損なわれているが、格子状パターンとそれ以外の領域が目視で区別できる。
×:格子状パターンとそれ以外の領域の外観品位が著しく低下しており、目視で区別できない。
表2A及び表2Bに示すように、No.1〜No.19の本発明例のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、識別性及び耐食性の両方に優れていた。図2に、No.4の第一領域の走査型電子顕微鏡による観察結果を示し、図3に、No.4の第二領域における走査型電子顕微鏡による観察結果を示す。図2に示す第一領域における〔Al相〕は、図3に示す第二領域における〔Al相〕に比べて、〔Al相〕の平均長さが大きくなっており、それぞれ異なった外観を呈しており、第一領域及び第二領域が識別可能であることがわかる。
No.20及びNo.21は、冷却条件が適切でなかったため、格子状パターンが確認されなかった。
また、インクジェット法で格子状のパターンを印刷したNo.22は、6ヶ月間の屋外暴露によってパターンが薄くなり、識別性が低下した。
また、研削によって格子状のパターンを形成したNo.23は、研削した箇所のめっき層の厚みが低下し、研削箇所での耐食性が低下した。
なお、No.1〜No.23のめっき層には、Al相と、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織とを含んでいた。
図4には、Zn−Al−Mg系溶融めっき層に窒素ガスの吹き付けることにより、文字列(アルファベット)を表した溶融めっき鋼板の表面を示す。
本発明によれば、溶融めっき鋼板の表面に、文字やマークを意図的に表すことができるようになる。

Claims (7)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、
    を備え、
    前記溶融めっき層は、
    平均組成で、Al:4質量%以上25質量%未満、Mg:0質量%以上10質量%未満を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    金属組織として、Al相と、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織とを含み、
    前記溶融めっき層は、第一領域と第二領域とを含み、
    前記第一領域は、前記溶融めっき層の表面における前記Al相の平均長さが200μm以上の領域であり、
    前記第二領域は、前記溶融めっき層の表面における前記Al相の平均長さが200μm未満の領域であり、
    前記第一領域または前記第二領域が、所定の形状となるように配置されていることを特徴とするZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  2. 前記第一領域または前記第二領域が、直線部、曲線部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている、請求項1に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  3. 前記第一領域または前記第二領域が、意図的に形成されたものである、請求項1または請求項2に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  4. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有する、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  5. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001〜2質量%含有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  6. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001〜2質量%含有する、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
  7. 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30〜600g/mである、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
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