JP2022124269A - 溶融めっき鋼板 - Google Patents

溶融めっき鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP2022124269A
JP2022124269A JP2021021939A JP2021021939A JP2022124269A JP 2022124269 A JP2022124269 A JP 2022124269A JP 2021021939 A JP2021021939 A JP 2021021939A JP 2021021939 A JP2021021939 A JP 2021021939A JP 2022124269 A JP2022124269 A JP 2022124269A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
steel sheet
dip
dip plated
pattern portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021021939A
Other languages
English (en)
Inventor
哲也 鳥羽
Tetsuya Toba
泰平 金藤
Yasuhei Kanefuji
邦彦 東新
Kunihiko Toshin
敦司 森下
Atsushi Morishita
茂 橋本
Shigeru Hashimoto
裕人 安井
Hiroto Yasui
雄策 中川
Yusaku Nakagawa
智博 西浦
Tomohiro Nishiura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2021021939A priority Critical patent/JP2022124269A/ja
Publication of JP2022124269A publication Critical patent/JP2022124269A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Coating With Molten Metal (AREA)

Abstract

【課題】溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供する。【解決手段】鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層は、溶融めっき層と鋼板との界面に金属間化合物であるMg2Siを含み、溶融めっき層には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、パターン部における面積あたりのMg2Siの個数密度が、非パターン部における面積あたりのMg2Siの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度である、溶融めっき鋼板を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、溶融めっき鋼板に関する。
溶融めっき鋼板は、耐食性に優れており、その中でもZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は、特に優れた耐食性を備えている。このような溶融めっき鋼板は、建材、家電、自動車分野等種々の製造業において広く使用されており、近年、その使用量が増加している。
ところで、溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面に、文字、模様、デザイン画などを現すことを目的として、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を施すことにより、文字、模様、デザイン画などを溶融めっき層の表面に現す場合がある。
しかし、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を行うと、文字やデザイン等を施すためのコストや時間が増大する問題がある。更に、印刷や塗装によって文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、需要者から高い支持を得ている金属光沢外観が失われるだけでなく、塗膜自体の経時劣化や塗膜の密着性の経時劣化の問題から、耐久性が劣り、時間とともに文字やデザイン等が消失してしまう恐れがある。また、インクをスタンプすることで文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、コストや時間は比較的抑えられるものの、インクによって、溶融めっき層の耐食性が低下する懸念がある。
下記特許文献に示されるように、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に対する様々な技術開発がなされているが、めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合にその耐久性を向上させる技術は知られていない。
Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に関し、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨地状のめっき外観をより美麗とすることを目的とする従来技術は存在する。
例えば、特許文献1は、キメが細かく、かつ平滑な光沢部が多い梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板、すなわち、単位面積当たりの白色部の個数が多く、そして、光沢部の面積の割合が大きいという良好な梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。また、特許文献1においては、好ましくない梨地の状態を、不定形な白色部と円形状の光沢部とが混在して表面に点在した表面外観を呈している状態であることが記載されている。
また、特許文献2には、めっき層の厚さ方向断面において、めっき層と地鉄との界面からめっき表層の間にAl晶が非存在である部分が、該断面の幅方向長さの10%~50%を占めることで、めっき外観を向上させたZn-Al-Mg系めっき鋼板が記載されている。
更に、特許文献3には、めっき鋼板表面の中心線平均粗さRaが0.5~1.5μmであり、PPI(1インチ(2.54cm)あたりに含まれる1.27μm以上の大きさのピークの数)が150~300であり、Pc(1cmあたりに含まれる0.5μm以上の大きさのピークの数)がPc≧PPI/2.54+10である成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
更にまた、特許文献4は、Al/MgZn/Znの三元共晶組織を微細化させることで、全体的にめっき層の光沢度が増し、外観均一性が向上した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
しかしながら、めっき層の表面に文字等を現した場合に、その耐久性を向上させ、かつ、耐食性を低下させないようにする技術は、従来から知られていなかった。
特許第5043234号公報 特許第5141899号公報 特許第3600804号公報 国際公開第2013/002358号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
前記溶融めっき層は、前記溶融めっき層と前記鋼板との界面に金属間化合物であるMgSiを含み、
前記溶融めっき層には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
前記パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が、前記非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
[2] 前記非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が、1000個/mm以下であることを特徴とする[1]に記載の溶融めっき鋼板。
[3] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼板。
[4] 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[5] 前記パターン部が、意図的に形成されたものであることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[6] 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の溶融めっき鋼板。
本発明によれば、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供できる。
No.1のパターン部の走査型電子顕微鏡写真である。 No.1の非パターン部の走査型電子顕微鏡写真である。 本実施形態の溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面の一例を示す写真であって、パターン部によって所定のパターンを現した状態を示す写真である。
本発明の実施形態である溶融めっき鋼板について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、また、溶融めっき層は、溶融めっき層との界面に金属間化合物であるMgSiを含み、更に、溶融めっき層には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、パターン部におけるMgSiの面積あたりの個数密度が、非パターン部におけるMgSiの面積あたりの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度になっている。
本実施形態の溶融めっき鋼板では、溶融めっき層と鋼板との界面に存在するMgSiの個数密度を局所的に変化させることで、めっき表面にパターン部と非パターン部を形成させる。パターン部では、MgSiの面積あたりの個数密度が比較的多いため、光沢度が高い外観となる。一方、非パターン部では、MgSiの面積あたりの個数密度がパターン部より少ないため、微細な光沢領域と微細な白色領域とが混在した梨地状の外観になる。
なお、本実施形態における、溶融めっき層と鋼板との界面は、溶融めっき層を表面から段階的に研削することで露出させた複数の研削面のうち、MgSiの個数密度が最も高い研削面を、溶融めっき層と鋼板との界面とする。本実施形態では、溶融めっき層に順次露出させた研削面のうち、最も鋼板に近い側にある研削面が、溶融めっき層と鋼板との界面になる場合が多くなる。
このように、溶融めっき層におけるMgSiの面積あたりの個数密度の違いによって、溶融めっき層の表面は、場所により、光沢または梨地状のいずれかに見える。ここで、溶融めっき層の表面に、文字、図形、線、ドット、模様などを視認できるようにするためには、これらの文字等を構成するパターン部と、それ以外の非パターン部とが、識別できるようになればよい。そのためには、パターン部におけるMgSiの面積あたりの個数密度が、非パターン部におけるMgSiの面積あたりの個数密度に対して2.0倍以上であるとよい。これにより、パターン部と非パターン部とが識別可能になる。
本実施形態の溶融めっき鋼板を製造するには、鋼板を溶融めっき浴に浸漬させてから引き上げる所謂溶融めっき法において、引き上げ直後の溶融金属に、液体窒素を吹き付ける。液体窒素は、パターン部が形成される側の溶融金属ではなく、その反対側の溶融金属に局所的に吹き付ける。液体窒素を吹き付ける領域は、パターン部の形成領域に対応する領域とする。パターン部が形成される側とは反対側の溶融金属に液体窒素を局所的に吹き付けることで、パターン部が形成される側の溶融金属が、鋼板側から冷却される。鋼板側から局所的に冷却された領域では、それ以外の領域に比べて、溶融めっき層と鋼板との界面に微細なMgSiが数多く形成されて、MgSiの個数密度が高くなる。MgSiの個数密度が比較的高い領域では、溶融金属の凝固の進行に伴い、溶融めっき層中の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が微細化し、これにより、溶融めっき層の表面の光沢度が増加する。このようにしてパターン部が形成される。
一方、液体窒素が吹き付けられず鋼板側からの冷却を受けなかった領域では、粗大なMgSiが形成されてMgSiの個数密度が比較的小さくなり、溶融めっき層中の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の微細化が進まず、溶融めっき層の表面が梨地状の外観になる。このような領域が非パターン部になる。
このように、溶融めっき浴から引き上げた鋼板において、パターン部を形成する面とは反対側の面に付着する溶融金属に対して液体窒素を部分的に吹き付けることで、鋼板と溶融めっき層との界面におけるMgSiの個数密度を制御することが可能となり、これにより、光沢度が比較的高く、非パターン部に対して識別可能なパターン部を、所定の形状になるように意図的に形成できるようになる。
以下、本実施形態の溶融めっき鋼板を詳細に説明する。
溶融めっき層の下地となる鋼板は、材質に特に制限はない。詳細は後述するが、材質として、一般鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係る溶融めっき層が形成される。
次に、溶融めっき層の化学成分について説明する。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。更に好ましくは、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなる。また、溶融めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。
Alの含有量は、平均組成で4~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために含有させるとよい。溶融めっき層中のAlの含有量が4質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。耐食性の観点から、好ましくは5~18質量%とする。より好ましくは6~16質量%とする。
Mgの含有量は、平均組成で1.0~10質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。溶融めっき層中のMgの含有量が1.0質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。しかし、Mgが10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となるので、Mgの含有量は10質量%以下とする。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、Mgの含有量は好ましくは1.5~6.0質量%とする。より好ましくは2.0~5.0質量%の範囲とする。
Siの含有量は、平均組成で0.01~2.0質量%の範囲である。Siは、パターン部及び非パターン部を設けるために必要な、MgSiを形成させるために含有させる。溶融めっき層中のSiの含有量が0.01質量%以上であれば、パターン部と非パターン部を形成させる効果が得られる。一方、Siが2.0質量%を超えるように含有させたとしても、パターン部と非パターン部を形成させる効果が飽和するため、Siは2.0質量%以下とする。めっき密着性の観点から、好ましくはSiの含有量を0.02~1.0質量%の範囲とする。より好ましくは0.05~0.8質量%の範囲とする。さらに好ましくは0.1~0.8質量%の範囲とする。
溶融めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、溶融めっき層の耐食性を更に改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。
溶融めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、溶融めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビタ(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
次に、溶融めっき層の組織について説明する。
Al、Mg及びZnを含有する溶融めっき層は、〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいる。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有している。また、本実施形態の溶融めっき層には、Siが含有されるため、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、金属間化合物であるMgSiが含まれる。更に、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中には、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕は、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相との三元共晶組織であり、この三元共晶組織を形成しているAl相は例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。また、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるがその量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
また、〔Al相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。この〔Al相〕は前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
また、〔Zn相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlさらには少量のMgを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔Zn相〕は前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本発明のめっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合も有るが、実験では加工部耐食性向上に与える影響はほとんど見られなかったため、めっき層に〔Zn相〕が含まれても特に問題はない。
また、〔MgZn相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgZn相〕は前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているMgZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態の溶融めっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合もあるが、ほとんどの製造条件では溶融めっき層中に含まれる。
MgSiは、溶融めっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。パターン部ではMgSiが微細に多数存在することでMgSiの個数密度が高くなり、これにより〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を微細化させる。一方、非パターン部ではMgSiが粗大に成長することでMgSiの個数密度が低くなり、これにより〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕は微細化されない。状態図で見る限りZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。このMgSiはめっき中では顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
次に、溶融めっき層の表面におけるパターン部及び非パターン部について説明する。
本実施形態の溶融めっき層の表面には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成されている。パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることが好ましい。また、非パターン部は、パターン部以外の領域である。また、パターン部の形状は、ドット抜けのように一部が欠けていても、全体として認識できれば許容される。また、非パターン部は、パターン部の境界を縁取るような形状であってもよい。
溶融めっき層表面に、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が配置されている場合に、これらの領域をパターン部とし、それ以外の領域を非パターン部とすることができる。パターン部と非パターン部の境界は、肉眼で把握することができる。パターン部と非パターン部の境界は、光学顕微鏡や拡大鏡などによる拡大像から把握してもよい。
パターン部は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下でパターン部の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。また、非パターン部は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)の大部分を占める領域であり、非パターン部内にパターン部が配置される場合がある。パターン部は、非パターン部内において所定の形状に配置されている。具体的には、パターン部は、非パターン部内おいて、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。パターン部の形状を意図的に調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
パターン部及び非パターン部には、〔Al相〕、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が含まれる。また、パターン部及び非パターン部には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれる場合がある。更に、少なくともパターン部には、MgSiが含まれる。また、非パターン部には、MgSiが含まれる場合がある。パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度は、非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度とされている。非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度は1000個/mm以下であることが好ましい。
溶融めっき層中に形成したMgSiは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が凝固する際の起点になる効果を有すると考えられており、MgSiの個数密度を高めることによって〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の生成数が増加し、結果として〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が微細化すると考えられる。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が微細化すると、初相である〔Al相〕のデンドライトの樹枝部分を、微細な〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が埋め尽すように凝固するため、Al相のデンドライト剥き出し部が減り、金属光沢を有した〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が溶融めっき層の表面を覆うようになると考えられる。
パターン部は、面積あたりのMgSiの個数密度が非パターン部よりも高いため、パターン部の外観は光沢度が高い外観となる。一方、非パターン部は、面積あたりのMgSiの個数密度がパターン部より低いため、非パターン部の外観は、パターン部ほどの光沢度は得られず、微細な光沢領域と微細な白色領域とが混在した梨地状の外観になる。パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が、非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度になることで、パターン部と非パターン部との識別が可能になる。パターン部におけるMgSiの個数密度が、非パターン部におけるMgSiの個数密度に対して2.0倍未満になると、パターン部及び非パターン部の外観が似たような外観になり、パターン部を識別することが困難になる。個数密度の差は、大きければ大きいほどよく、2.2倍以上であることがより好ましく、2.5倍以上であることが更に好ましい。
また、非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が1000個/mm以下になることで、非パターン部における光沢度が低下し、パターン部の光沢度との差が大きくなり、これにより、パターン部をより鮮明に識別できるようになる。非パターン部におけるMgSiの個数密度は500個/mm以下であってもよく、100個/mm以下であってもよく、50個/mm以下であってもよい。
パターン部におけるMgSiの個数密度は、特に限定されるものではないが、例えば、1000個/mm超であってもよく、1200個/mm以上であってもよく、1300個/mm以上であってもよい。また、パターン部におけるMgSiの個数密度は、パターン部内においてほぼ一定であってもよいし、パターン部内において個数密度が高い領域と低い領域とが混合した状態で存在していてもよい。
パターン部及び非パターン部は、肉眼で識別可能であってもよく、拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能であってもよい。拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能とは、例えば、パターン部で構成される形状が50倍以下の視野で識別可能であればよい。50倍以下の視野であれば、パターン部と非パターン部は、その外観の違いにより、識別可能である。パターン部と非パターン部は、好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下で識別可能である。
MgSiの個数密度の測定方法は次の通りである。溶融めっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察し、当該研削面におけるMgSiの個数密度を計測する。この操作を鋼板表面が露出するまで繰り返す。1回当たりの研削量は例えば1μmの深さとする。各研削面におけるMgSiの個数密度を比較し、MgSiの個数密度が最も大きくなる研削面を、溶融めっき層と鋼板との界面とする。そして、当該界面におけるMgSiの個数密度を、パターン部又は非パターン部におけるMgSiの個数密度とする。個数密度は、パターン部、非パターン部毎に測定する。また、個数密度を測定する場合の観察領域は、0.2mm以上の領域とすることが好ましい。
また、計測対象となるMgSiは、円相当径が0.2μm以上のMgSiとする。MgSiの円相当径を測定するには、前述のように撮影したSEM写真について、対象とするMgSiを画像処理して投影面積を求め、円相当径を計算する。同一結晶のMgSiが他の相によって分断されているように観察される場合は、分断している他の相の面積も当該MgSiであるとして、円相当径を求めることもできる。
本実施形態に係る溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の表面に化成処理皮膜層や塗膜層を有してもよい。ここで、化成処理皮膜層や塗膜層の種類は特に限定されず、公知の化成処理皮膜層や塗膜層を用いることができる。
[Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板の製造方法]
次に、本実施形態の溶融めっき鋼板の製造方法を説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、製鋼、鋳造、熱間圧延を経て製造された鋼板に対して、溶融めっきを行う。また、上記の熱間圧延後に更に、酸洗、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍を行い、その後に溶融めっきを行ってもよい。また、溶融めっきは、鋼板を溶融めっき浴に連続通板させる連続式溶融めっき法とする。
溶融めっき浴は、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むことが好ましい。また、溶融めっき浴は、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部がZnおよび不純物からなるものでもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%含有してもよい。なお、本実施形態の溶融めっき層の平均組成は、溶融めっき浴の組成とほぼ同じである。
溶融めっき浴の温度は、組成によって異なるが、例えば、400~500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板両面の合計の付着量が30~600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、溶融めっき鋼板の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、溶融めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
本実施形態では、溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板に対して、パターン部を形成させる面とは反対側の面に付着している溶融金属に、液体窒素をノズルによって局所的に吹き付ける。液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の温度は、組成によって最適な温度域が異なるが、例えば、Al:11%、Mg:3%、Si:0.2%のめっき組成においては、溶融金属の温度が380℃~390℃の範囲にあるときに、液体窒素の吹き付けを行うとよい。また、液体窒素を吹き付ける領域は、パターン部の形成領域に対応する領域とする。
液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の最適温度は、実験によって求めることが望ましいが、例えば、熱力学平衡計算ソフトウエアである「Thermo-Calc」((Thermo-Calcは登録商標)Thermo-Calc Software社製)を使用することで、最適温度範囲を推定することもでき、この推定結果に基づいて最適温度を決定できる。「Thermo-Calc」(登録商標)を利用した熱力学平衡計算では、一般的なデータベースを使用し、計算から除外する相として、実際のめっき組織では観察されにくいMgZn11相とSi相を指定した上で、狙いの組成におけるMgSiの形成開始温度を計算する。実際のMgSiの形成温度は、過冷却や形成量の影響により、上記の計算温度から10~40℃程度低いため、当該温度範囲を、液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の最適温度範囲域と推定する。例えば、Al:11%、Mg:3%、Si:0.2%のめっき組成において計算されるMgSiの形成開始温度は、約400℃であるため、溶融金属の温度が360℃~390℃の範囲、好ましくは380℃~390℃の範囲にあるときに、液体窒素の吹き付けを行うこととする。なお、計算に利用する熱力学平衡計算ソフトウエアは「Thermo-Calc」(登録商標)に限定されるものではなく、他のソフトウエアを利用してもよい。
液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の温度が低すぎると、MgSiの微細化が進まず、明瞭なパターン部を形成できなくなるおそれがある。また、液体窒素を吹き付け時の溶融金属の温度が高すぎると、液体窒素による冷却が不十分となり、MgSiの微細化が進まず、明瞭なパターン部を形成できなくなるおそれがある。
液体窒素が吹き付けられた領域では、溶融金属の冷却速度が増加し、これにより、液体窒素を吹き付けた面とは反対側の面、すなわち、パターン部を形成させる側の面において、溶融めっき層と鋼板との界面にMgSiが微細に数多く形成する。一方、液体窒素の吹き付けがなかった領域では、MgSiが粗大となり、その個数も少なくなる。微細かつ多数のMgSiが形成した領域では、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の微細化が進み、溶融めっき層の表面が光沢を呈するようになる。一方、粗大かつ少数のMgSiが形成した領域では、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の微細化が進まなくなり、溶融めっき層の表面が梨地状を呈するようになる。このようにして、溶融めっき層のうち、液体窒素を吹き付けた領域と吹き付けなかった領域とが、相互に異なる外観を呈するようになる。
以上のように、液体窒素の吹き付け量と範囲を調整することによって、パターン部の形状を任意に調整でき、かつ、パターン部及び非パターン部を肉眼で判別できるようになる。
液体窒素の吹き付けは、パターン部を形成する側の面に付着した溶融金属に対して行うのではなく、その反対側の面に付着した溶融金属に対して行う必要がある。その理由は、液体窒素が直接吹き付けられた溶融金属では、液体窒素の気化による膨張時に溶融めっき層の表面が波打ち、目的とする光沢を呈する外観にはならず、梨地状に近い外観となるためである。パターン部を形成する側の面とは反対側から液体窒素を吹き付けると、パターン部を形成する側にある溶融金属の凝固が鋼板に近い側から始まり、溶融金属の温度が〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の析出温度に到達する頃には多くのMgSiが析出し、これらMgSiが〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の起点となって〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が微細化するようになる。
液体窒素は、好ましくは、液体の状態のまま溶融金属に付着するように吹き付けられることが、冷却効率を高められる点で好ましい。溶融金属に付着する前に液体窒素が気化してしまうと、冷却効率が低下して、MgSiの微細化が進まなくなる。
液体窒素の吹き付け量は、特に限定する必要はないが、溶融めっき層の組成、溶融めっき層の付着量、鋼板の板厚に応じて最適量が変動する場合があるため、予備試験等を行ってパターン部を確認することで、最適な吹き付け量を調整すればよい。
なお、パターン部は、溶融めっき鋼板の一方の溶融めっき層のみに形成されるものではなく、液体窒素の吹き付け領域が重ならないように調整することで、溶融めっき鋼板の両面へのパターン部の形成も可能になる。
更に、溶融めっき層の表面に化成処理層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、化成処理を行う。化成処理の種類は特に限定されず、公知の化成処理を用いることができる。
また、溶融めっき層の表面や化成処理層の表面に塗膜層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後、又は、化成処理層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、塗装処理を行う。塗装処理の種類は特に限定されず、公知の塗装処理を用いることができる。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度を、非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度の2.0倍以上の個数密度とすることで、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。形成されたパターン部及び非パターン部は、印刷や塗装によって形成されたものではないため、耐久性が高くなっている。また、パターン部及び非パターン部が印刷や塗装によって形成されたものではないため、溶融めっき層の耐食性への影響もない。よって、本実施形態の溶融めっき鋼板は、耐食性に優れたものとなる。
本実施形態によれば、所定の形状に成形したパターン部の耐久性が高く、耐食性等の好適なめっき特性を有する溶融めっき鋼板を提供できる。特に本実施形態では、液体窒素を局所的に吹き付けることで、パターン部または非パターン部の範囲を意図的若しくは人工的な形状にすることができ、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるようにパターン部を配置できる。これにより、溶融めっき層の表面に、印刷や塗装を行うことなく、様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部によって、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき鋼板に付与することもできる。これにより、溶融めっき鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。鋼板を脱脂、水洗した後に、還元焼鈍、めっき浴浸漬、付着量制御、冷却を行うことで、表1Aに示すNo.1~36のZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。めっき組成によるが、Al:11%、Mg:3%、Si:0.2%のめっき組成の場合は、めっき浴から鋼板を引き上げた際に、溶融金属の温度が380℃~390℃の範囲にあるときに、鋼板表面の溶融金属に、液体窒素をノズルから吹き付けた。その後、冷却して溶融金属を完全に凝固させた。液体窒素の吹き付け範囲は、一辺が50mmの正方形パターンとなるように制御した。正方形パターンの箇所をパターン部とし、正方形パターン以外の箇所を非パターン部とした。ただし、No.30については、溶融金属の温度が380℃~390℃の範囲よりも高い温度にあるときに、窒素ガスをガスノズルによって吹き付けた。なお、溶融金属の温度は鋼板温度とほぼ同じであるので、鋼板温度で代替した。このようにして、表1A及び表1Bに示すNo.1~36の溶融めっき鋼板を製造した。
また、液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の温度範囲は、「Thermo-Calc」((Thermo-Calcは登録商標)Thermo-Calc Software社製)を使用することで、最適温度範囲を推定した。「Thermo-Calc」を利用した熱力学平衡計算では、一般的なデータベースを使用し、計算から除外する相として、実際のめっき組織では観察されにくいMgZn11相とSi相を指定した上で、狙いの組成におけるMgSiの形成開始温度を計算した。実際のMgSiの形成温度は、過冷却や形成量の影響により、上記の計算温度から10~40℃程度低いため、当該温度範囲を、液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の最適温度範囲域とした。例えば、Al:11%、Mg:3%、Si:0.2%のめっき組成において計算されるMgSiの形成開始温度は、約400℃であったため、溶融金属の温度が360℃~390℃の範囲、好ましくは380℃~390℃の範囲にあるときに、液体窒素の吹き付けを行うこととした。同様にして、表1Aに示すめっき組成において、液体窒素吹き付け時の溶融金属の最適温度範囲を推測した。表1Aの液体窒素吹き付け時の鋼板温度の欄において、下線を付した温度は、推測した最適温度範囲から外れることを意味する。
また、液体窒素の吹き付けを行わなかった以外は上記と同様にして、溶融めっき鋼板を製造した。この鋼板の溶融めっき層の表面に、インクジェット法により、一辺が50mmの正方形パターンを印刷した。このようにして、No.37の溶融めっき鋼板を製造した。
また、液体窒素の吹き付けを行わなかった以外は上記と同様にして、溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面を研削して、一辺が50mmの正方形パターンを形成した。このようにして、No.38の溶融めっき鋼板を製造した。
得られた溶融めっき鋼板について、液体窒素を吹き付けた面とは反対側の面にある溶融めっき層のパターン部及び非パターン部それぞれにおける、面積あたりのMgSiの個数密度を測定した。まず、パターン部及び非パターン部の境界は、溶融めっき層の表面を肉眼で観察することにより特定した。境界の判別が難しい例では、液体窒素の吹き付け範囲がパターン部であるとした。
MgSiの個数密度の測定方法は次の通りとした。溶融めっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察し、当該研削面におけるMgSiの個数密度を計測した。この操作を鋼板表面が露出するまで繰り返した。1回当たりの研削量は1μmの深さとした。各研削面におけるMgSiの個数密度を比較し、MgSiの個数密度が最も大きくなる研削面を、溶融めっき層と鋼板との界面とした。そして、当該界面におけるMgSiの個数密度を、パターン部又は非パターン部におけるMgSiの個数密度とした。個数密度は、パターン部、非パターン部毎に測定した。また、個数密度を測定する場合の観察領域は、0.2mmの領域とし、パターン部、非パターン部のそれぞれにおいて、5箇所の領域について個数密度を測定し、平均値をパターン部、非パターン部それぞれの個数密度とした。そして、非パターン部におけるMgSiの個数密度に対する、パターン部におけるMgSiの個数密度の比率を求めた。
[識別性]
正方形パターンを施した試験板の、製造した直後の初期状態のものと、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものを対象に、下記の判定基準に基づいて目視評価した。初期状態、経時状態とも、◎~△を合格とした。
◎:8m先からでも正方形パターンを視認できる。
○:8m先からは正方形パターンを視認できないが、4m先からの視認性は高い。
△:4m先からは正方形パターンを視認できないが、1m先からの視認性は高い。
×:1m先から正方形パターンを視認できない。
[耐食性]
試験板を150×70mmに切断し、JASO-M609に準拠した腐食促進試験CCTを30サイクル試験した後、錆発生状況を調査し、下記の判定基準に基づいて評価した。◎~△を合格とした。
◎:錆発生がなく、正方形パターンとそれ以外の領域がともに美麗な意匠外観を維持している。
○:錆発生はないが、正方形パターンとそれ以外の領域にごくわずかな意匠外観変化が認められる。
△:意匠外観がやや損なわれているが、正方形パターンとそれ以外の領域が目視で区別できる。
×:正方形パターンとそれ以外の領域の外観品位が著しく低下しており、目視で区別できない。
表1A及び表1Bに示すように、No.1~No.29の本発明例の溶融めっき鋼板は、識別性及び耐食性の両方に優れていた。図1に、No.1のパターン部の走査型電子顕微鏡による観察結果を示し、図2に、No.1の非パターン部の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す。図1と図2は同倍率での観察結果である。図1、図2において、黒色の粒子状に見えるものがMgSiである。パターン部では10μm以下のMgSiが数多く存在し、非パターン部では10μm以上のMgSiがまばらに存在しており、パターン部のMgSiの個数は、非パターン部の2倍以上であった。その結果、図1の領域は光沢を呈する外観であり、図2の領域は梨地状を呈する外観であった。このように、パターン部と非パターン部は異なった外観を呈しており、識別が可能であることがわかる。
No.30は、液体窒素を吹き付ける際の溶融金属の温度が適切でなかったため、パターン部が形成されず、その結果、正方形パターンが現れなかった。
No.31~34は、めっき層の化学成分が本発明の範囲から外れたため、識別性または耐食性を満足しなかった。
No.35は、めっき層にSiが含有されなかったため、めっき層中にMgSiが発見されなかった。そのため、表1BにおけるMgSiの個数密度は「0」と記載した。このように、MgSiが形成されなかったため、パターン部が形成されず、その結果、正方形パターンが形成されなかった。
No.36は、めっき層にSiが過剰に含有されため、非パターン部におけるMgSiの個数密度が高くなり、そのため、個数密度比が2.0未満になり、パターン部を目視確認できず、その結果、正方形パターンが現れなかった。
また、インクジェット法で正方形パターンを印刷したNo.37は、6ヶ月間の屋外暴露によってパターンが薄くなり、意匠性が低下した。
更に、研削によって正方形パターンを形成したNo.38は、研削した箇所のめっき層の厚みが低下し、研削箇所での耐食性が低下した。
なお、No.1~No.2、No.4~No.30、No.32~No.38の溶融めっき層には、〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいた。
図3には、溶融めっき層にパターン部によって文字列(アルファベット)を表した溶融めっき鋼板の表面を示す。
本発明によれば、溶融めっき鋼板の表面に、文字やマークを意図的に表すことができるようになる。
Figure 2022124269000001
Figure 2022124269000002

Claims (6)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
    前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%、Si:0.01~2.0質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    前記溶融めっき層は、前記溶融めっき層と前記鋼板との界面に金属間化合物であるMgSiを含み、
    前記溶融めっき層には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
    前記パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が、前記非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度に対して2.0倍以上の個数密度であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
  2. 前記非パターン部における面積あたりのMgSiの個数密度が、1000個/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
  3. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  4. 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  5. 前記パターン部が、意図的に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  6. 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の溶融めっき鋼板。
JP2021021939A 2021-02-15 2021-02-15 溶融めっき鋼板 Pending JP2022124269A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021021939A JP2022124269A (ja) 2021-02-15 2021-02-15 溶融めっき鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021021939A JP2022124269A (ja) 2021-02-15 2021-02-15 溶融めっき鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022124269A true JP2022124269A (ja) 2022-08-25

Family

ID=82941276

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021021939A Pending JP2022124269A (ja) 2021-02-15 2021-02-15 溶融めっき鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022124269A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6428974B1 (ja) めっき鋼材
CN112166206B (zh) Zn-Al-Mg系热浸镀钢板及其制造方法
TWI425116B (zh) Corrosion resistance of the molten Zn-Al-Mg-Si-Cr alloy plating steel
JP7328542B2 (ja) 溶融めっき鋼板
WO2019221193A1 (ja) めっき鋼材
JP7381864B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
JP7328543B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7381865B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
CN114787411B (zh) 弯曲加工性和耐蚀性优异的热浸镀锌钢板及其制造方法
CN102712988B (zh) 金属镀覆钢带
JP7339531B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7328541B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP2022124269A (ja) 溶融めっき鋼板
KR102658299B1 (ko) Zn-Al-Mg계 용융 도금 강판
WO2021106259A1 (ja) 溶融めっき鋼板
CN114901853B (zh) 加工部耐蚀性优异的Zn-Al-Mg系热浸镀合金钢材及其制造方法
JP7486011B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7410448B1 (ja) 溶融めっき鋼板
CN114846171A (zh) 耐腐蚀性优异的热浸镀合金钢材及其制造方法
TWI840251B (zh) 熔融鍍敷鋼板
JP7440819B1 (ja) 溶融めっき鋼板
JP2017008387A (ja) めっき鋼材、フラックス及びめっき鋼材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231019