本発明の実施形態は、望ましいポリマー特性を有するシス−1,4−ポリジエンを製造するための方法を見出したことに、少なくとも部分的に基づいている。本発明の態様によれば、ランタニド系触媒系は事前形成され、その後で長期間熟成される。ある実施形態では、これらの触媒組成物が特定の期間熟成された場合、官能性を向上できることが、予期せず見出された。また、かなり長期間の熟成を経ると、望ましいシス−1,4結合含有量を得ることができることが、予期せず見出された。更に、これらの熟成触媒組成物を更に改質することにより、望ましいポリマー特性を得ることができることが、予期せず見出された。例えば、熟成触媒系内に含まれるアルキル化剤の量を操作することにより、長期熟成の利益を利用しつつ、全体的に望ましいバランスのポリマー特性を得ることができることが見出された。また、熟成後に追加のアルキル化剤を添加することにより、長期熟成の利益を活用しつつ、全体的に望ましいバランスのポリマー特性を得ることができることも見出された。また、更に他の実施形態では、官能性停止剤(functional terminating agent)と共にルイス酸を添加することにより、本発明の熟成触媒がポリジエンの合成に用いられた場合に高い鎖末端官能性が得られることが見出された。
モノマー:
共役ジエンモノマーの例には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、及び2,4−ヘキサジエンが挙げられる。2つ以上の共役ジエンの混合物を共重合において用いてもよい。
触媒系:
1又は複数の実施形態において、本発明で用いられる触媒系は、配位触媒系である。特定の実施形態において、この配位触媒系は、ランタニド系触媒系である。1又は複数の実施形態において、この触媒系は、事前形成されたランタニド系触媒系である。
配位触媒系:
配位触媒系は、一般的に知られている。配位重合の重要な機構的特徴は、書籍(例えば、Kuran,W.,Principles of Coordination Polymerization;John Wiley & Sons:New York,2001)及び総説(例えば、Mulhaupt,R.,Macromolecular Chemistry and Physics 2003,volume 204,pages 289〜327)において説明されている。配位触媒によるモノマーの重合の開始は、活性金属中心に対するモノマーの配位又は錯化を、モノマーを成長ポリマー鎖に挿入する前に行うメカニズムにより行われると考えられている。配位触媒は、重合を立体化学的に制御することにより、立体規則性ポリマーを生成することができるという有益な特徴を有する。当該技術分野で知られているように、配位触媒を形成するための方法は数多く存在する。しかし、すべての方法は、モノマーと配位してモノマーを活性金属中心と成長ポリマー鎖との間の共有結合に挿入することができる活性中間体を最終的に発生させる。共役ジエンの配位重合は、中間体としてのπ−アリル錯体を介して進むと考えられる。配位触媒は、1成分系、2成分系、3成分系、又は多成分系とすることができる。1又は複数の実施形態において、配位触媒の形成を、重金属化合物(例えば、遷移金属化合物又はランタニド含有化合物)、アルキル化剤(例えば、有機アルミニウム化合物)、及び任意的に他の共触媒成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)を組み合わせて行なっても良い。1又は複数の実施形態において、重金属化合物は、配位金属化合物と称されることがある。
ランタニド系触媒系:
本発明の実施は、特定のランタニド系触媒系を選択することに必ずしも限定されない。1又は複数の実施形態において、用いられる触媒系は、(a)ランタニド含有化合物、(b)アルキル化剤、及び(c)ハロゲン源を含む。他の実施形態では、ハロゲン源の代わりに、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を用いることができる。これらの又は別の実施形態では、他の有機金属化合物、ルイス塩基、及び/又は触媒改質剤を、前述した構成成分又は成分に加えて用いることができる。例えば、一実施形態では、ニッケル含有化合物を、米国特許第6,699,813号に開示されているとおり分子量調節剤として用いることができる。なおこの文献は、本明細書において参照により組み込まれている。
ランタニド含有化合物:
前述したように、本発明で用いられるランタニド系触媒系には、ランタニド含有化合物を含めることができる。本発明で有用なランタニド含有化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムのうち少なくとも1種の原子を含む化合物である。一実施形態では、これらの化合物には、ネオジム、ランタン、サマリウム、又はジジムを含めることができる。本明細書で用いる場合、用語「ジジム」は、モナズ砂から得られる希土類元素の市販の混合物を示すものとする。加えて、本発明で有用なランタニド含有化合物は、元素ランタニドの形態とすることができる。
ランタニド含有化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3、及び+4の酸化状態であってもよい。一実施形態では、三価のランタニド含有化合物(ここで、ランタニド原子は、+3の酸化状態である)を用いることができる。好適なランタニド含有化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ−ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
1又は複数の実施形態では、ランタニド含有化合物は、炭化水素溶媒(例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は脂環式炭化水素)に可溶性であり得る。しかし、炭化水素不溶性のランタニド含有化合物も、本発明で有用な場合がある。重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるためである。
説明を簡単にするために、有用なランタニド含有化合物の更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、他のランタニド金属に基づく同様の化合物を選択することができるであろう。
好適なネオジムカルボキシレートには、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2−エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(別名、ネオジムベルサターテ)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスフェートには、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフェート、及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスホネートには、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、及びネオジム(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスフィネートには、ネオジムブチルホスフィネート、ネオジムペンチルホスフィネート、ネオジムヘキシルホスフィネート、ネオジムヘプチルホスフィネート、ネオジムオクチルホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムデシルホスフィネート、ネオジムドデシルホスフィネート、ネオジムオクタデシルホスフィネート、ネオジムオレイルホスフィネート、ネオジムフェニルホスフィネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムジブチルホスフィネート、ネオジムジペンチルホスフィネート、ネオジムジヘキシルホスフィネート、ネオジムジヘプチルホスフィネート、ネオジムジオクチルホスフィネート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムジデシルホスフィネート、ネオジムジドデシルホスフィネート、ネオジムジオクタデシルホスフィネート、ネオジムジオレイルホスフィネート、ネオジムジフェニルホスフィネート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムカルバメートには、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメート、及びネオジムジベンジルカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムジチオカルバメートには、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメート、及びネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムキサンテートには、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテート、及びネオジムベンジルキサンテートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムβ−ジケトネートには、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、及びネオジム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドには、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2−エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムハライドには、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミド、及びネオジムヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジム疑似ハライドには、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアニドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジムオキシハライドには、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、及びネオジムオキシブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。ルイス塩基(例えばテトラヒドロフラン(「THF」))を、このクラスのネオジム化合物を不活性有機溶媒中に可溶化しやすくするために用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド、又はハロゲン原子を含有する他のランタニド含有化合物を用いる場合、ランタニド含有化合物は任意選択的に、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を提供してもよい。
本明細書で用いる場合、有機ランタニド化合物という用語は、少なくとも1つのランタニド−炭素結合を含有する任意のランタニド含有化合物を指す。これらの化合物は主に、排他的ではないが、シクロペンタジエニル(「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル、及び置換アリル配位子を含有する化合物である。好適な有機ランタニド化合物には、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Cl(Lnは、ランタニド原子を表わし、Rはヒドロカルビル基を表わす)が挙げられるが、これらに限定されない。1又は複数の実施形態では、本発明で有用なヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等を含有していてもよい。
アルキル化剤:
前述したように、本発明で用いるランタニド系触媒系には、アルキル化剤を含めることができる。1又は複数の実施形態では、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、1又は複数のヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。概ね、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。本発明で有用なアルキル化剤には、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いる場合、有機アルミニウム化合物という用語は、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合を含有する任意のアルミニウム化合物を指す。1又は複数の実施形態では、炭化水素溶媒に可溶性である有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で用いる場合、有機マグネシウム化合物という用語は、少なくとも1つのマグネシウム−炭素結合を含有する任意のマグネシウム化合物を指す。1又は複数の実施形態では、炭化水素に可溶性である有機マグネシウム化合物を用いることができる。後に詳細に説明するように、好適なアルキル化剤のいくつかの種をハライドの形態とすることができる。アルキル化剤にハロゲン原子が含まれる場合、アルキル化剤はまた、前述の触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部として機能する場合がある。
有機アルミニウム化合物:
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒系において用いることができる有機アルミニウム化合物には、一般式AlRnX3−n(式中、各Rは独立に、アルミニウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよく、各Xは独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよく、nは1〜3の範囲の整数であってもよい)によって表わされるものが含まれる。1又は複数の実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基(アルキル置換アリール基)、アリル基、及びアルキニル基であってもよく、それぞれの基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。
一般式AlRnX3−nによって表わされる有機アルミニウム化合物の種類には、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、アルキル化剤には、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物を含めることができる。一実施形態では、アルキル化剤に有機アルミニウムヒドリド化合物が含まれる場合、前述のハロゲン源は、スズハライドによって提供することができ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,008,899号に開示されている。
好適なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物には、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ−p−トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、p−トリルエチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムヒドリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドには、エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn−オクチルアルミニウムジヒドリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物には、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ−p−トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロリド、p−トリルエチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロリド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物には、エチルアルミニウムジクロリド、n−プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn−オクチルアルミニウムジクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
一般式AlRnX3−nによって表わされ得るアルキル化剤として有用な他の有機アルミニウム化合物には、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
ランタニド系触媒系においてアルキル化剤として用いるのに適した別のクラスの有機アルミニウム化合物は、アルミノキサンである。アルミノキサンには、以下の一般式によって表わすことができるオリゴマー直線状アルミノキサンと、
以下の一般式によって表わすことができるオリゴマー環式アルミノキサン
(式中、xは1〜約100、又は約10〜約50の範囲の整数であってもよく、yは2〜約100、又は約3〜約20の範囲の整数であってもよく、各Rは独立に、アルミニウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよい)と、を含めることができる。一実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基(アルキル置換アリール基)、アリル基、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基はまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。なお、本出願で用いるアルミノキサンのモル数とは、オリゴマーアルミノキサン分子のモル数ではなく、アルミニウム原子のモル数を指すことに留意すべきである。この慣習は、アルミノキサンを用いる触媒系の技術分野において広く用いられている。
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含有される結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法、等の既知の方法により行なうことができる。
好適なアルミノキサン化合物には、メチルアルミノキサン(「MAO」)、改質メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが含まれるが、これらに限定されない。改質メチルアルミノキサンの形成は、当業者に既知の技術を用いて、メチルアルミノキサンのメチル基の約5〜95%を、C2〜C12ヒドロカルビル基、好ましくは、イソブチル基と置換することによって可能である。
1又は複数の実施形態では、アルミノキサンを、単独で又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて用いることができる。一実施形態では、メチルアルミノキサンと、少なくとも1種の他の有機アルミニウム化合物(AlRnX3−n等)、例えば、ジイソブチルアルミニウムヒドリドとを、組み合わせて用いることができる。米国特許出願公開第2008/0182954号には、アルミノキサン及び有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例が示されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。1又は複数の実施形態では、本発明で用いられる触媒組成物は、アルミノキサンを欠いている、或いは、実質的に欠いている。
有機マグネシウム化合物:
前述したように、ランタニド系触媒系において有用なアルキル化剤には、有機マグネシウム化合物を含めることができる。1又は複数の実施形態では、用いることができる有機マグネシウム化合物には、一般式MgR2(式中、各Rは独立に、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよい)によって表わされるものが含まれる。1又は複数の実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基(アルキル置換アリール基)、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基はまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。
一般式MgR2で表わされ得る好適な有機マグネシウム化合物には、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル化剤として用いることができる別のクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式RMgX(式中、Rは、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよく、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよい)で表わされ得る。アルキル化剤が、ハロゲン原子を含む有機マグネシウム化合物である場合、有機マグネシウム化合物は、触媒系において、アルキル化剤とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。1又は複数の実施形態では、Rは、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基(アルキル置換アリール基)、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基はまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。一実施形態では、Xは、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよく、各基は、1〜約20の範囲の炭素原子を含有している。
一般式RMgXで表わされ得る有機マグネシウム化合物の種類には、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
一般式RMgXによって表わされ得る好適な有機マグネシウム化合物には、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
ハロゲン源:
前述したように、本発明で用いるランタニド系触媒系には、ハロゲン源を含めることができる。本明細書で用いる場合、ハロゲン源という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む任意の物質を指す。1又は複数の実施形態では、ハロゲン源の少なくとも一部を、前述したランタニド含有化合物及び/又は前述したアルキル化剤のいずれかによって提供することが、これらの化合物に少なくとも1つのハロゲン原子が含有されているときに可能である。言い換えれば、ランタニド含有化合物は、ランタニド含有化合物とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。
別の実施形態では、ハロゲン源の少なくとも一部は、触媒系において、別個で異なるハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1又は複数のハロゲン原子を含有する種々の化合物(又はそれらの混合物)をハロゲン源として用いることができる。ハロゲン原子の例には、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2種類以上のハロゲン原子の組み合わせを用いることもできる。炭化水素溶媒に可溶性であるハロゲン含有化合物が、本発明で用いるのに適している。しかし、炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物は、重合系において懸濁させて触媒活性種を形成することができるため、やはり有用である。
使用できる有用な種類のハロゲン含有化合物には、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド、及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な元素ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混合ハロゲンのいくつかの具体例には、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられる。
好適なハロゲン化水素には、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
好適な有機ハライドには、t−ブチルクロリド、t−ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ−ジ−フェニルメタン、ブロモ−ジ−フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な無機ハライドには、リントリクロリド、リントリブロミド、リンペンタクロリド、リンオキシクロリド、リンオキシブロミド、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミド、シリコンテトラフルオリド、シリコンテトラクロリド、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラヨージド、ヒ素トリクロリド、ヒ素トリブロミド、ヒ素トリヨージド、セレンテトラクロリド、セレンテトラブロミド、テルルテトラクロリド、テルルテトラブロミド、及びテルルテトラヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な金属ハライドには、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アンチモントリクロリド、アンチモンペンタクロリド、アンチモントリブロミド、アルミニウムトリヨージド、アルミニウムトリフルオリド、ガリウムトリクロリド、ガリウムトリブロミド、ガリウムトリヨージド、ガリウムトリフルオリド、インジウムトリクロリド、インジウムトリブロミド、インジウムトリヨージド、インジウムトリフルオリド、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラヨージド、亜鉛ジクロリド、亜鉛ジブロミド、亜鉛ジヨージド、及び亜鉛ジフルオリドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な有機金属ハライドには、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ−t−ブチルスズジクロリド、ジ−t−ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。
非配位アニオン/非配位アニオン前駆体:
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒系には、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を含めることができる。1つ以上の実施形態では、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を、前述したハロゲン源の代わりに用いることができる。非配位アニオンは、立体的に嵩高いアニオンであり、立体障害があるために、例えば、触媒系の活性中心と配位結合を形成することはない。本発明で有用な非配位アニオンには、テトラアリールボレートアニオン及びフッ素化テトラアリールボレートアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。また、非配位アニオンを含有する化合物は、対カチオン、例えば、カルボニウム、アンモニウム、又はホスホニウムカチオンを含有することができる。例示的な対カチオンには、トリアリールカルボニウムカチオン及びN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。非配位アニオン及び対カチオンを含有する化合物の例には、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施形態では、非配位アニオン前駆体を用いることもできる。非配位アニオン前駆体とは、反応条件下で非配位アニオンを形成することができる化合物である。有用な非配位アニオン前駆体には、トリアリールホウ素化合物、BR3(ここで、Rは、電子求引性の高いアリール基、例えば、ペンタフルオロフェニル又は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明で用いるランタニド系触媒組成物の形成は、前述の触媒構成成分を組み合わせるか又は混合することによって行なってもよい。1又は複数の活性触媒種は、ランタニド系触媒構成成分の組み合わせから得られると考えられるが、種々の触媒構成成分又は成分間の相互作用又は反応の程度は、それほど正確には分かっていない。したがって、用語「触媒組成物」は、構成成分の単純混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる種々の構成成分の合成物、構成成分の化学反応生成物、又は前述の組み合わせを包含するように用いている。
量:
前述のランタニド系触媒組成物は、共役ジエンを重合してシス−1,4−ポリジエンにすることを広範囲の触媒濃度及び触媒構成成分比に亘って行なうための高い触媒活性を有する場合がある。いくつかの要因が、触媒構成成分のうちのいずれか1つの最適濃度に影響を及ぼす場合がある。例えば、触媒構成成分は相互作用して活性種を形成する場合があるため、任意の1つの触媒構成成分に対する最適濃度が、他の触媒構成成分の濃度に依存する場合がある。
1又は複数の実施形態において、ランタニド含有化合物に対するアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/Ln)は、約1:1〜約1,000:1、他の実施形態では、約2:1〜約500:1、他の実施形態では、約5:1〜約200:1で変動してもよい。
ランタニド含有化合物に対するハロゲン含有化合物のモル比は、ランタニド含有化合物中のランタニド原子のモル数に対するハロゲン源中のハロゲン原子のモル数の比(ハロゲン/Ln)の観点で最もよく説明される。1又は複数の実施形態では、ハロゲン/Lnモル比は、約0.5:1〜約20:1、他の実施形態では約1:1〜約10:1、及び他の実施形態では約2:1〜約6:1で変動し得る。
更に別の実施形態では、ランタニド含有化合物に対する非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体のモル比(An/Ln)は、約0.5:1〜約20:1、他の実施形態では約0.75:1〜約10:1、及び他の実施形態では約1:1〜約6:1であってもよい。
触媒系の調製:
本発明で用いられる触媒系は、種々の方法によって形成することができる。1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒組成物は事前形成され得る。つまり、触媒構成成分を、重合系外で予備的に混合する。1又は複数の実施形態では、触媒構成成分を予備的に混合することによって、活性触媒系が形成される。この活性触媒系は、モノマー、特に共役ジエンモノマーを重合して、本発明の1又は複数の実施形態で所望される所望のシス−1,4−ポリジエンとすることができる。ランタニド系触媒組成物を事前形成するための有用なプロセスの例が、米国特許第5,686,371号、同第6,576,731号、米国特許出願公開第2002/0,035,226号、同第2012/0,208,964号、及び同第2013/0,237,669号に開示されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
添加の順序:
1又は複数の実施形態では、触媒構成成分を同時に又は連続的に混合することにより、触媒系を形成する場合がある。構成成分を連続的に混合する場合、まず、アルキル化剤をランタニド含有化合物と混合し、次にその混合物をハロゲン源又は非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物と混合することができる。他の実施形態では、まず、アルキル化剤とハロゲン源(又は、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体)とを混合し、次にその混合物をランタニド含有化合物と混合することができる。更に他の実施形態では、まず、ランタニド含有化合物とハロゲン源(又は、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体)とを混合し、次にその混合物をアルキル化剤と混合することができる。
溶媒の使用:
1又は複数の実施形態では、触媒の事前形成は、溶媒と共に行うことができる。1又は複数の実施形態において、溶媒を担体として用いて触媒を溶解又は懸濁させて、重合系への触媒の送達を容易にしても良い。他の実施形態では、モノマーを担体として用いることができる。更に他の実施形態では、触媒を、いかなる溶媒も用いることなく無希釈の状態で用いることができる。
1又は複数の実施形態において、好適な溶媒には、触媒又は開始剤の存在下でのモノマーの重合中に、重合することも伝搬ポリマー鎖に取り込まれることもない有機化合物が含まれる。1又は複数の実施形態では、これらの有機種は、周囲温度及び圧力で液体である。1又は複数の実施形態では、これらの有機溶媒は、触媒又は開始剤に対して不活性である。例示的な有機溶媒には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素のような低い又は比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記の炭化水素の混合物を使用することもできる。当該技術分野で知られているように、環境上の理由から、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素を用いることが望ましい場合がある。低沸点の炭化水素溶媒は典型的に、重合が終了したらポリマーから分離される。
有機溶媒の他の例としては、一般に油展ポリマーに使用される炭化水素油を含む高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。これらのオイルの例には、パラフィン系オイル、芳香油、ナフテン系オイル、ヒマシ油以外の植物油、及び低PCAオイル、例えばMES、TDAE、SRAE、重ナフテン系オイルが挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるため、それらは典型的に、分離する必要がなく、ポリマー内に取り込まれたままである。
安定剤の使用:
1又は複数の実施形態では、触媒系の調製は、任意的に、触媒系を安定させ得る少量のアルケン含有化合物の存在下で行われる場合がある。有用なアルケン含有化合物には、本明細書で定義されるモノマーが含まれ得る。触媒系の事前形成に好適なモノマーの具体例には、1,3−ブタジエン又はイソプレン等の共役ジエンモノマーが挙げられる。触媒の事前形成に用いることができるアルケン含有化合物の量は、ランタニド含有化合物のモル当たり、約1〜約100モル、他の実施形態では約2.5〜約75モル、他の実施形態では約5〜約50モルの範囲とすることができる。
触媒系形成の条件:
1又は複数の実施形態では、本発明で用いられる触媒系は、特定の温度で調製される場合がある。1又は複数の実施形態では、触媒組成物の調製は、−20℃以上、他の実施形態では0℃以上、他の実施形態では20℃以上、他の実施形態では40℃以上の温度で行うことができる。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の調製は、100℃以下、他の実施形態では80℃以下、他の実施形態では60℃以下、他の実施形態では40℃以下、他の実施形態では20℃以下、他の実施形態では0℃以下の温度で行うことができる。
触媒系の熟成:
1又は複数の実施形態では、触媒組成物は、使用の前に(即ち、重合系への添加の前に)熟成される場合がある。
1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、−20℃以上、他の実施形態では0℃以上、他の実施形態では20℃以上、他の実施形態では40℃以上の温度で行う場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の熟成は、100℃以下、他の実施形態では80℃以下、他の実施形態では60℃以下、他の実施形態では40℃以下、他の実施形態では20℃以下、他の実施形態では0℃以下の温度で行う場合がある。ある実施形態では、触媒組成物は、温度制御が行われない環境(そこでは、変化する環境温度に触媒組成物がさらされる可能性がある)において熟成される場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物は、上述の温度で熟成される場合がある。また、熟成時間の少なくとも一部において、制御されない温度で更に熟成される場合がある。
1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、1時間以上、他の実施形態では3時間以上、他の実施形態では6時間以上、他の実施形態では12時間以上、他の実施形態では24時間以上、他の実施形態では3日間以上、他の実施形態では5日間以上、他の実施形態では6日間以上、他の実施形態では12日間以上、他の実施形態では30日間以上、他の実施形態では60日間以上行われる場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の熟成は、1000日間以下、他の実施形態では750日間以下、他の実施形態では500日間以下、他の実施形態では300日間以下、他の実施形態では100日間以下、他の実施形態では24日間以下、他の実施形態では18日間以下、他の実施形態では12日間以下行われる場合がある。1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、約4〜約16日間、他の実施形態では約5〜約15日間、他の実施形態では約6〜約12日間行われる。
具体的な触媒系:
1又は複数の実施形態では、本発明の実施において用いられる触媒は、ランタニドカルボキシレート、アルミニウムヒドリド、及び有機金属ハライドの組み合わせ又は反応生成物である、事前形成触媒である。1又は複数の実施形態では、触媒系において、ランタニドカルボキシレートに対するアルミニウムヒドリドのモル比(ランタニドカルボキシレート内のランタニド原子のモルに対するアルミニウムヒドリド内のアルミニウム金属原子のモルのモル比(Al/Ln)で最もよく説明される)は1000:1未満、他の実施形態では500:1未満、及び更に他の実施形態では200:1であり得る。これらの又は他の実施形態では、触媒系において、ランタニドカルボキシレートに対するアルミニウムヒドリドのモル比(Al/Ln)は1:1超、他の実施形態では2:1超、及び更に他の実施形態では5:1超であり得る。ある実施形態では、触媒系において、ランタニドカルボキシレートに対するアルミニウムヒドリドのモル比(Al/Ln)は約1:1〜約1000:1、他の実施形態では約2:1〜約500:1、及び更に他の実施形態では約5:1〜約200:1であり得る。
アルミノキサン及び少なくとも1つの他の有機アルミニウム剤がアルキル化剤として用いられるこれらの実施形態において、ランタニド含有化合物に対するアルミノキサンのモル比(アルミノキサン/Ln)は、5:1〜約1,000:1、他の実施形態では、約10:1〜約700:1、他の実施形態では、約20:1〜約500:1で変動してもよく、また、ランタニド含有化合物に対する少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物のモル比(Al/Ln)は、約1:1〜約200:1、他の実施形態では、約2:1〜約150:1、他の実施形態では、約5:1〜約100:1で変動してもよい。
具体的な実施形態では、ランタニドカルボキシレートはネオジムカルボキシレートであり、アルミニウムヒドリドはジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであり、有機金属ハライドはヒドロカルビルアルミニウムセスキクロリドである。更に具体的な実施形態では、触媒系は、ネオジムネオデカノエート、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、及びエチルアルミニウムセスキクロリドの組み合わせ又は反応生成物である。触媒系において、ネオジムネオデカノエートに対するジイソブチルアルミニウムヒドリドのモル比は約5〜約40、他の実施形態では約10〜約20である場合がある。また、ネオジムネオデカノエートに対するエチルアルミニウムセスキクロリドのモル比(ネオジムネオデカノエート内のランタニド原子のモルに対するエチルアルミニウムセスキクロリド内のハロゲン原子のモルのモル比(ハロゲン/Ln)で最もよく説明される)は約1〜約4、他の実施形態では約2〜約3である場合がある。これらの又は他の実施形態では、これらの具体的な触媒系は、安定剤として共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエン又はイソプレン)を含む場合がある。
本発明の1又は複数の実施形態で用いられ得る触媒系は、市販のものである場合がある。例えば、有用な事前形成触媒系としては、商標名COMCAT Nd−FC(NH)、COMCAT Nd−FC/20(NH)、COMCAT Nd−FC/SF[COMAR CHEMICALS(Pty)Ltd]のものを用いることができる。
熟成後に添加されるアルキル化剤:
1又は複数の実施形態では、触媒組成物を熟成した後で、追加のアルキル化剤(例えば、追加のアルキルアルミニウムハイドライド)が触媒組成物に添加される。前述のように、アルキル化剤を追加することにより、特性(例えば、触媒組成物を用いて合成されたポリジエンのムーニー粘度)を調整することができることが予期せず見出された。このことは、熟成触媒組成物を用いたときに高ムーニー粘度が確認されたという点において、特に有益であることが分かっている。1又は複数の実施形態では、この追加のアルキル化剤は、触媒組成物を重合すべきモノマーに導入する前に、触媒組成物に導入される(すなわち、重合系への添加の前に予備的に混合される)。他の実施形態では、熟成触媒組成物及びアルキル化剤を別々に、同時に又は連続的に、重合すべきモノマーに添加する(すなわち、重合系)。
添加するアルキル化剤の量は、数多くの要因に応じて変化し得る。この要因には、元の触媒組成物内に存在するアルキル化剤の量、触媒の熟成時間、熟成を行った温度、及び所望のムーニー粘度が含まれるが、これらに限定されない。1又は複数の実施形態では、触媒組成物に添加する追加のアルキル化剤の量は、触媒組成物内のランタニド含有化合物の量を参照して説明される場合がある。1又は複数の実施形態では、触媒組成物内のランタニド含有化合物に対する熟成後に添加される追加のアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/Ln)は、少なくとも0.1:1、他の実施形態では少なくとも0.5:1、他の実施形態では少なくとも1:1、他の実施形態では少なくとも5:1であり得る。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物内のランタニド含有化合物に対する熟成後に添加される追加のアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/Ln)は約0.1:1〜約100:1、他の実施形態では約0.5:1〜約50:1、他の実施形態では約0.8:1〜約20:1で変動してもよい。又は複数の実施形態では、熟成後に添加される追加のアルキル化剤の量は、約10〜約100、他の実施形態では約20〜約90、他の実施形態では約25〜約85のムーニー粘度(ML1+4@100℃)のポリジエンを生成するのに十分な量である。1又は複数の実施形態では、熟成後に添加される追加のアルキル化剤の量は、触媒を熟成させることなく同じ触媒系を用いて得られるムーニー粘度と略同様のムーニー粘度を有するポリジエンを生成するのに十分な量である。
1又は複数の実施形態では、追加のアルキル化剤を含む触媒組成物の重合すべきモノマーへの導入(後で詳述する)は、追加のアルキル化剤導入の1分以内、他の実施形態では15分以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では24時間以内に行う。
重合混合物:
本発明による反応性ポリマーの製造は、所望の分子量のポリマーを生成するのに十分な量の共役ジエンモノマーを、触媒的に有効な量の触媒の存在下で重合することによって行うことができる。触媒及び共役ジエンモノマーを導入することにより、重合混合物が形成される。なお、この重合混合物は、重合系と呼ばれることもあり、この重合系内で反応性ポリマーが形成される。用いるべき触媒の量は、種々の要因(例えば、用いる触媒又は開始剤の種類、構成成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び重合転化率、所望の分子量、及び多くの他の要因)の相互作用に依存する場合がある。したがって、具体的な触媒又は開始剤量については、触媒的に有効な量の触媒又は開始剤を用いてもよいと言う以外に、明確に述べることはできない。
1又は複数の実施形態において、用いる配位金属化合物(例えば、ランタニド含有化合物)の量を、モノマー100グラム当たり、約0.001〜約2mmol、他の実施形態では約0.005〜約1mmol、更に他の実施形態では約0.01〜約0.2mmolと変えることができる。
前述したように、モノマー(例えば、1,3−ブタジエン)の量に対する、触媒系内で用いられるアルミニウム金属の総量は制限されている場合がある。1又は複数の実施形態では、用いられるアルミニウム(アルキル化剤及びエチルアルミニウムセスキクロリド等のハロゲン源によって与えられる場合がある)の総量は、モノマー100グラム当たり、5mmol未満、他の実施形態では4.5mmol未満、他の実施形態では4.0mmol未満、他の実施形態では3.5mmol未満、他の実施形態では3.0mmol未満のアルミニウムであり得る。これらの又は他の実施形態では、用いられるアルミニウムの総量は、モノマー100グラム当たり、1mmol超、他の実施形態では1.5mmol超、他の実施形態では2.0mmol超のアルミニウムであり得る。1又は複数の実施形態において、アルミニウムの総量は、モノマー100グラム当たり、約1〜約4.5mmol、他の実施形態では約1.5〜約4.0mmol、及び更に他の実施形態では約2〜約3.5mmolの総アルミニウムの範囲で変化し得る。
1又は複数の実施形態では、重合は、相当量の溶媒を含む重合系において行なわる場合がある。一実施形態では、溶液重合系として、重合すべきモノマー及び形成されたポリマーの両方が溶媒に可溶であるものを用いてもよい。別の実施形態では、沈殿重合系を用いることを、形成されたポリマーが不溶性である溶媒を選択することによって行なってもよい。いずれの場合も、触媒又は開始剤を調製するときに用いてもよい溶媒量に加えて、ある量の溶媒が、通常、重合系に添加される。付加的な溶媒は、触媒又は開始剤を調製するときに用いる溶媒と同じであってもよいし又は異なっていてもよい。例示的な溶媒については前述している。1又は複数の実施形態において、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、20重量%超、他の実施形態では50重量%超、更に他の実施形態では80重量%超であり得る。
他の実施形態では、用いることのできる重合系は概ね、実質的に溶媒が含まれないか又は最小量の溶媒が含まれるバルク重合系であると考えられる。当業者であれば、バルク重合プロセス(すなわち、モノマーが溶媒として働くプロセス)による利益を理解するであろう。したがって、重合系に含まれる溶媒の量が、バルク重合を行なうことによって求められる利益に悪影響を及ぼす量よりも少ないことを理解するであろう。1又は複数の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、約20重量%未満、他の実施形態では約10重量%未満、更に他の実施形態では約5重量%未満であり得る。別の実施形態では、重合混合物には、使用する原材料に固有の溶媒以外の溶媒は含有されていない。更に別の実施形態では、重合混合物は溶媒を実質的に欠いている。これは、存在していれば重合プロセスにかなりの影響を及ぼすであろう量の溶媒が、存在していないことを指す。溶媒を実質的に欠いている重合系は、溶媒を実質的に含まないとも言える。特定の実施形態では、重合混合物は溶媒を欠いている。
重合は、当該技術分野で知られている任意の従来の重合容器内で行なってもよい。1又は複数の実施形態では、溶液重合を従来の攪拌槽型反応器内で行なうことができる。他の実施形態では、特にモノマー転化率が約60%未満である場合、バルク重合を従来の攪拌槽型反応器内で行なうことができる。更に他の実施形態では、特にバルク重合プロセスにおけるモノマー転化率が約60%を超える場合(この場合、典型的に、高粘性のセメントが得られる)、バルク重合を細長い反応器(重合中の粘性セメントがピストンによって又は実質的にピストンによって動かされる)内で行う場合がある。例えば、セメントが自浄式1軸スクリュー又は2軸スクリュー撹拌器によって押し出される押出機が、この目的に適している。有用なバルク重合プロセスの例は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,351,776号に開示されている。
1又は複数の実施形態において、重合に対して使用する構成成分をすべて単一容器(例えば、従来の撹拌タンク反応器)内で混合することができ、重合プロセスのすべてのステップをこの容器内で行なうことができる。他の実施形態では、2つ以上の構成成分を1つの容器内で事前に組み合わせてから別の容器に移し、そこでモノマー(又は少なくともその大部分)の重合を行なうことができる。
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして行なうことができる。半連続プロセスでは、モノマーを必要に応じて断続的に充填して、すでに重合したモノマーと入れ替える。1又は複数の実施形態において、重合が進む条件を制御して、重合混合物の温度を、約−10℃〜約200℃、他の実施形態では約0℃〜約150℃、他の実施形態では約20℃〜約100℃の範囲に維持しても良い。1又は複数の実施形態において、重合の熱を取り除くことを、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流凝縮器を用いることによるモノマーの気化及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組み合わせによって行なっても良い。また、重合条件を制御して、重合を行なう圧力を約10kPa〜約5066kPa(約0.1気圧〜約50気圧)、他の実施形態では約51kPa〜約2027kPa(約0.5気圧〜約20気圧)、他の実施形態では約101kPa〜約1013kPa(約1気圧〜約10気圧)にしてもよい。1又は複数の実施形態では、重合を行ない得る圧力には、大部分のモノマーが確実に液相となる圧力が含まれる。これらの又は他の実施形態では、重合混合物を嫌気条件下で維持してもよい。
官能化剤:
ランタニド系触媒による重合によって生成されるポリマーは、その結果得られるポリマー鎖の一部又は全てが、重合混合物が急冷される前に反応性鎖末端を保有するようなポリマーであり得る。そのため、反応性ポリマーについて言及する際は、反応性鎖末端を有するポリマーについて言及している。前述したように、ランタニド系触媒を用いて調製された反応性ポリマーは、疑似リビングポリマーと呼ばれることもある。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーを含む重合混合物を活性重合混合物と言ってもよい。反応性末端を所有するポリマー鎖のパーセンテージは、種々の要因(例えば、触媒又は開始剤の種類、モノマーの種類、構成成分の純度、重合温度、モノマー転化率、及び多くの他の要因)に依存する。1又は複数の実施形態において、ポリマー鎖の少なくとも約20%が反応性末端を保有し、他の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約50%が反応性末端を保有し、更に他の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約80%が反応性末端を保有している。いずれの場合でも、反応性ポリマーは、官能化剤と任意的に反応され得る。
1又は複数の実施形態において、好適な官能化剤には、本発明に従って生成される反応性ポリマーと反応し得る基を含有する化合物が含まれる。例示的な官能化剤としては、ケトン類、キノン類、アルデヒド類、アミド類、エステル類、イソシアネート類、イソチオシアネート類、エポキシド類、イミン類、アミノケトン類、アミノチオケトン類、及び酸無水物類が挙げられる。これらの化合物の例は、米国特許第4,906,706号、同第4,990,573号、同第5,064,910号、同第5,567,784号、同第5,844,050号、同第6,838,526号、同第6,977,281号、及び同第6,992,147号、米国特許出願公開第2006/0004131(A1)号、同第2006/0025539(A1)号、同第2006/0030677(A1)号、及び同第2004/0147694(A1)号、並びに日本国特許出願公開第05−051406(A)号、同第05−059103A号、同第10−306113(A)号、及び同第11−035633(A)号に開示されている。なお、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれている。官能化剤の他の例には、米国特許第7,879,952号に記載されているようなアジン化合物、同第7,671,138号に開示されているようなヒドロベンズアミド化合物、同第7,732,534号に開示されているようなニトロ化合物、同第8,088,868号に開示されているような保護オキシム化合物、同第8,314,189号に開示されている複素環式ニトリル化合物、同第8,258,332号に開示されているアミノ基を含有するハロシラン、同第7,906,592号に開示されている保護アミノ基を含有するイミド化合物、米国特許出願公開第2010/0168378号に開示されているニトロソ化合物、同第2010/0099826号に開示されているアミド含有化合物、同第2011/0077325号に開示されているシリル化アミノ基を含有するカルボン酸エステル又はチオカルボン酸エステル、同第2011/0152449号に開示されているポリオキシム化合物、同第2011/0288200号に開示されているポリシアノ化合物、及び同第2012/0059112号に開示されている保護アミノ基を含有するニトリル化合物が含まれる。なお、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
官能化ポリマーを得るために重合混合物に添加することができる官能化剤の量は、種々の要因(反応性ポリマーを合成するために用いる触媒の種類及び量、及び所望の官能化度を含む)に依存する場合がある。1又は複数の実施形態において、ランタニド系触媒を用いて反応性ポリマーを調製する場合、用いられる官能化剤の量は、ランタニド含有化合物のランタニド金属を基準にして説明することができる。例えば、ランタニド金属に対する官能化剤のモル比は、約1:1〜約200:1、他の実施形態では、約5:1〜約150:1、及び他の実施形態では、約10:1〜約100:1であってもよい。
1又は複数の実施形態では、重合が行われた場所(例えば、容器内)で、官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。他の実施形態では、重合が行われた場所とは異なる場所で、官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。例えば、下流の容器(下流の反応器又はタンク、インライン反応器又はミキサー、押出機、又は脱揮装置を含む)内で、官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。
1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの反応を、所望のモノマー転化率が実現された後、かつ、重合混合物が急冷剤によって急冷される前に行なうことができる。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達した後、30分以内、他の実施形態では5分以内、及び他の実施形態では1分以内に起きる場合がある。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達し後すぐに起こり得る。他の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、反応性ポリマーが貯蔵された後に起こり得る。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーの貯蔵は、室温で又は室温未満で、不活性雰囲気下で行なう。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が起こる温度は、約10℃〜約150℃であっても良く、他の実施形態では、約20℃〜約100℃であっても良い。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が終了するのに必要な時間は、種々の要因(例えば、反応性ポリマーを調製するのに用いる触媒又は開始剤の種類及び量、官能化剤の種類及び量、並びに官能化反応が行なわれる温度)に依存する。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10〜60分間、行なわれ得る。
ルイス酸処理:
上記で示唆されているように、1又は複数の実施形態において、重合系はルイス酸で処理される。1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、反応性ポリマーを含む重合混合物へ(つまり、活性重合混合物へ)導入される。1又は複数の実施形態では、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、所望のモノマー転化の後、かつ、重合混合物が急冷剤によって急冷される前に行われる。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、ピーク重合温度に達した後、2時間以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では30分以内、他の実施形態では5分以内、他の実施形態では1分以内に行われる場合がある。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、ピーク重合温度に達した後すぐに行われる場合がある。他の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、反応性ポリマーが貯蔵された後に行われる場合がある。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーの貯蔵は、室温で又は室温未満で、不活性雰囲気下で行なう。
1又は複数の実施形態において、ルイス酸の導入は、官能化剤の導入と同時に行われる。他の実施形態では、ルイス酸の重合混合物への導入は、官能化剤の導入後、かつ、重合混合物は急冷剤によって急冷される前に行われる。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、官能化剤の導入後2時間以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では30分以内、他の実施形態では5分以内、他の実施形態では1分以内に行われる場合がある。
1又は複数の実施形態において、ルイス酸を活性重合混合物(又は、官能化ポリマーを含む重合混合物)へ導入する温度は、約10℃〜約150℃であっても良く、他の実施形態では、約20℃〜約100℃であっても良い。ルイス酸と重合混合物の任意の構成成分との間で反応又は相互作用を起こすのに必要な時間は、種々の要因(例えば、反応性ポリマーを調製するのに用いる触媒の種類及び量、ルイス酸の種類及び量、官能化剤の種類及び量、並びにルイス酸が導入される温度)に依存する。1又は複数の実施形態では、ルイス酸を含有させた後の重合混合物の熟成は、重合系の急冷前に、5分間以上、他の実施形態では20分間以上、他の実施形態では1時間以上、他の実施形態では2時間以上行う場合がある。
1又は複数の実施形態では、重合が行われた場所(例えば、容器内)で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。他の実施形態では、重合が行われた場所とは異なる場所で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。例えば、下流の容器(下流の反応器又はタンク、インライン反応器又はミキサー、押出機、又は脱揮装置を含む)内で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。
1又は複数の実施形態では、重合系に導入されるルイス酸の量は、ポリマーの調製に用いられる重合系内のランタニド金属の量(例えば、ネオジム原子)と相対的に定義される場合がある。1又は複数の実施形態では、ランタニド含有化合物内のランタニド金属に対するルイス酸のモル比(LA/Ln)は、少なくとも0.5:1、他の実施形態では少なくとも1:1、他の実施形態では少なくとも5:1である。これらの又は他の実施形態では、ランタニド金属に対するルイス酸のモル比(LA/Ln)は、多くとも150:1、他の実施形態では多くとも100:1、及び他の実施形態では多くとも50:1である。1又は複数の実施形態では、LA/Lnモル比は、約0.5:1〜約150:1、他の実施形態では約1:1〜約100:1、及び他の実施形態では約5:1〜約50:1である。
ルイス酸:
当業者であれば、ルイス酸が、ルイス塩基と反応してルイス付加体を形成する化合物を含むことを理解するであろう。このメカニズムによれば、ルイス塩基は電子対をルイス酸に供与し、ルイス酸は電子対を受け取る。1又は複数の実施形態では、ルイス酸はブレンステッド−ローリー酸ではなく、酸性水素原子を有しない。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、チタンテトラアルコキシド、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、トリヒドロカルビルシリルトリフラート、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、アルミニウムトリハライド、亜鉛ジハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルオキシボレート、チタンテトラハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ボロントリハライドは、以下の式によって規定され得る:
(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。好適なハロゲン原子には、フッ化物、塩化物、及び臭化物が挙げられる。1又は複数の実施形態では、各Xは同一であってもよい。例えば、各Xがフッ素原子である場合、ボロントリハライドはボロントリフルオリドであってもよい。
1又は複数の実施形態では、トリヒドロカルビルオキシボレートは、以下の式によって規定され得る:
(式中、各Rは独立に一価の有機基である)。
1又は複数の実施形態では、一価の有機基はヒドロカルビル基であってもよく、これには、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルカリル基(アルキル置換アリール基)、又はアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロカルビル基にはまた、置換ヒドロカルビル基も挙げられ、置換ヒドロカルビル基は、1又は複数の水素原子がヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、又はシリルオキシ基などの置換基によって交換されているヒドロカルビル基を指す。1又は複数の実施形態において、これらの基には、1個(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)〜約20個の炭素原子が含まれていてもよい。これらの基はまた、ヘテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ原子素、硫黄原子、スズ原子、及びリン原子を含有していてもよい。
1又は複数の実施形態において、リントリハライドは、以下の式によって規定され得る:
(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。
1又は複数の実施形態では、チタンテトラハライドは、以下の式によって規定され得る:
(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ルイス酸−ルイス塩基錯体の一部であってもよい。例えば、ルイス酸ボロントリハライドが、ボロントリフルオリド錯体として用いられ得る。錯体の形成に好適なルイス塩基には、アルコール、水、酸素含有鉱酸、水、アルデヒド、アミン、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、ケトン、及びニトリルが含まれるが、これらに限定されない。
1又は複数の実施形態では、ケトンは式RCOR(式中、各Rは独立に一価の有機酸である)によって定義され得る。ボロントリフルオリド錯体に好適に用いられるケトンの代表的な例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルオクチルケトン、2,4−ペンタンジオン、ブチルシクロヘプタノン、アセトフェノン、アミルフェニルケトン、ブチルフェニルケトン、ベンゾフェノン、フェニルトリルケトン、及びキノンが挙げられる。ボロントリフルオリドケトン錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドアセトフェノン及びボロントリフルオリドベンゾフェノンが挙げられる。
1又は複数の実施形態では、アルデヒドは式RCHO(式中、各Rは独立に一価の有機酸である)によって定義され得る。ボロントリフルオリド錯体に好適に用いられるアルデヒドの代表的な例には、ブチルアルデヒド、アニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘプタアルデヒド、ドデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、及びm−ヒドロベンズアルデヒドが挙げられる。ボロントリフルオリドアルデヒド錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドベンズアルデヒド及びボロントリフルオリドトルアルデヒドが挙げられる。
1又は複数の実施形態では、エステルは式R−COOR(式中、各Rは独立に一価の有機酸である)によって定義され得る。エステルの代表的な例には、エチルブチレート、エチルオクタノエート、イソプロピルヘキサノエート、アミルアセテート、ヘキシルプロピオナート、セチルアセテート、エチルベンゾエート、アミルベンゾエート、フェニルアセテート、フェニルブチラート、及びフェニルベンゾアートが挙げられる。ボロントリフルオリドエステル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドエチルベンゾエート、ボロントリフルオリドエチルアセテート、及びボロントリフルオリドフェニルアセテートが挙げられる。当業者であれば、エステルに関する上記説明に基づいて、チオエステル類似体を容易に調製することができるであろう。
1又は複数の実施形態において、エーテルは式R−O−R(式中、各Rは独立に一価の有機酸である)によって定義され得る。エーテルの代表的な例には、エトキシブタン、ブトキシブタン、エトキシオクタン、イソプロポキシヘキサン、プロポキシヘキサン、エトキシベンゼン、及びアミルオキシベンゼンが挙げられる。ボロントリフルオリドエーテル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドメチルt−ブチルエーテル、ボロントリフルオリドジブチルエーテル、及びボロントリフルオリドジメチルエーテルが挙げられる。当業者であれば、エーテルに関する上記説明に基づいて、チオエーテル類似体を容易に調製することができるであろう。
1又は複数の実施形態において、ニトリルは式RCN(式中、各Rは一価の有機酸である)によって表され得る。ニトリルの代表的な例には、アセトニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリル、o−トルニトリル、m−トルニトリル、p−トルニトリル、及びフェニルアセトニトリルが挙げられる。ボロントリフルオリドニトリル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドベンゾニトリルが挙げられる。
急冷:
1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応が行なわれたか又は終了した後に、急冷剤を重合混合物に添加して、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応生成物にプロトンを付加し、任意の残りの反応性ポリマー鎖を不活性化し、及び/又は触媒若しくは触媒成分を不活性化することができる。急冷剤には、プロトン性化合物が含まれていてもよく、これには、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、イソプロピルアルコール等のアルコールが用いられる。これは、イソプロピルアルコールの使用が、最終ポリマーにおける特定の望ましい特性(例えば、望ましいコールドフロー)に貢献することが分かっているからである。
1又は複数の実施形態において、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤の添加を、急冷剤の添加と共に、前に、又は後に行なってもよい。使用する酸化防止剤の量は、ポリマー生成物の重量に対して0.2重量%〜1重量%の範囲であってもよい。更に加えて、ポリマー生成物は、オイルをポリマーに添加することによって油展することができ、これは、モノマー内で溶解又は懸濁されたポリマーセメント又はポリマーの形態であってもよい。本発明の実施では、添加してよいオイル量を限定してはおらず、したがって通常の量を添加してもよい(例えば、5〜50phr)。使用してもよい有用なオイル又は伸展剤としては、芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、ヒマシ油以外の植物油、MES、TDAE、及びSRAEなどの低PCA油、並びに重ナフテン系油が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリマーの回収:
重合混合物を急冷させた後、重合混合物の種々の成分を回収してもよい。1又は複数の実施形態では、未反応モノマーを重合混合物から回収することができる。例えば、当該技術分野で既知の技術を用いてモノマーを重合混合物から蒸留することができる。1又は複数の実施形態では、脱揮装置を用いてモノマーを重合混合物から取り出してもよい。モノマーを重合混合物から取り出した後、モノマーを精製してもよいし、貯蔵してもよいし、かつ/又はリサイクルして重合プロセスに戻してもよい。
ポリマー生成物を重合混合物から回収することを、当該技術分野で知られた技術を用いて行なってもよい。1又は複数の実施形態では、脱溶媒及び乾燥技術を用いてもよい。例えば、ポリマーの回収を、重合混合物を加熱されたスクリュー装置(例えば脱溶媒押出機)に通すことによって行なうことができる。この装置では、揮発性物質の除去が、適温(例えば、約100℃〜約170℃)かつ大気圧又は準大気圧下の気化によって行われる。この処理によって、未反応モノマー及び任意の低沸点溶媒が除去される。代替的に、ポリマーの回収を、重合混合物に蒸気脱溶媒を施し、続いて、結果として得られたポリマークラムを熱風トンネル内で乾燥させることによって行なうこともできる。ポリマーの回収はまた、重合混合物をドラム乾燥機上で直接乾燥させることによって行なうこともできる。
ポリマーの特性:
1又は複数の実施形態において、本発明のポリマーは、シス−1,4−ポリジエンであって、シス−1,4−結合含有量が60%を超えるもの、他の実施形態では約75%を超えるもの、他の実施形態では約90%を超えるもの、他の実施形態では約95%を超えるもの、他の実施形態では約96%を超えるもの、他の実施形態では約97%を超えるもの、他の実施形態では約98%を超えるもの、他の実施形態では約99%を超えるものであり得る。これらのパーセンテージは、ジエンマー単位の数に基づいており、シス−1,4結合対ジエンマー単位総数を採用している。また、これらのポリマーは、1,2−結合含有量が7%未満、他の実施形態では5%未満、他の実施形態では2%未満、他の実施形態では1%未満であり得る。これらのパーセンテージは、ジエンマー単位の数に基づいており、1,2−結合対ジエンマー単位総数を採用している。ジエンマー単位の残部には、トランス−1,4−結合を採用してもよい。シス−1,4−、1,2−、及びトランス−1,4−結合含有量の測定は、赤外分光法によって行なってもよい。
1又は他の実施形態では、本発明のシス−1,4−ポリジエンの数平均分子量(Mn)は、約1,000〜約1,000,000、他の実施形態では約5,000〜約200,000、他の実施形態では約25,000〜約150,000、他の実施形態では約50,000〜約120,000であり得る。この数値は、ポリスチレン標準と当該のポリマーに対するMark−Houwink定数とを用いて校正されるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。本発明のシス−1,4−ポリジエンの分子量分布又は多分散性(Mw/Mn)は、約1.5〜約5.0、他の実施形態では約2.0〜約4.0であり得る。これらの又は他の実施形態では、本発明のシス−1,4−ポリジエンのMw/Mnは3.0未満、他の実施形態では2.5未満、他の実施形態では2.3未満、他の実施形態では2.2未満、他の実施形態では2.1未満、及び他の実施形態では2.0未満であり得る。
1又は複数の実施形態では、反応性ポリマーを官能化剤で処理することにより、反応性鎖末端を保有するポリマー鎖に官能基を与えてもよい。末端に官能基を所有するポリマー鎖のパーセンテージは、種々の要因(例えば、触媒又は開始剤の種類、モノマーの種類、構成成分の純度、重合温度、モノマー転化率、及び多くの他の要因)に依存する。1又は複数の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約10%が末端に官能基を保有し、他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約20%が末端に官能基を保有し、他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約30%が末端に官能基を保有し、他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約40%が末端に官能基を保有し、他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約50%が末端に官能基を保有し、更に他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約60%が末端に官能基を保有する。いずれの場合でも、反応性ポリマーは、シアノ基を含む保護オキシム化合物と反応することができる。
産業上の利用:
本発明のポリマーは、タイヤ部品の製造に使用することができるゴム組成物の調製に特に有用であるという点で、有利である。ゴム配合技術及び当該技術で用いられる添加物は、概して、The Compounding and Vulcanization of Rubber,in Rubber Technology(2nd Ed.1973)に開示されている。
ゴム組成物の調製は、ポリマーを単独で又は他のエラストマー(即ち、ゴム又はエラストマー特性を有する組成物を形成するために加硫処理できるものポリマー)とともに用いることによって行なうことができる。使用してもよい他のエラストマーには、天然及び合成ゴムが含まれる。合成ゴムは、典型的に、共役ジエンモノマーの重合、共役ジエンモノマーと他のモノマー(例えばビニル置換芳香族モノマー)との共重合、或いはエチレンと1つ又は複数のα−オレフィン及び任意的に1つ又は複数のジエンモノマーとの共重合から得られる。
例示的なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン−コ−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物などが挙げられる。これらのエラストマーは、無数の巨大分子構造、例えば、直線状、分岐状、及び星形構造を有することができる。
ゴム組成物には、充填剤、例えば、無機及び有機充填剤が含まれていてもよい。有機充填剤の例には、カーボンブラック及びデンプンが含まれる。無機充填剤の例には、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(水和アルミニウムシリケート)が挙げられる。カーボンブラック及びシリカは、タイヤの製造において用いられる最も一般的な充填剤である。ある実施形態では、異なる充填剤の混合物を有利に用いてもよい。
1又は複数の実施形態では、カーボンブラックには、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラックが含まれる。カーボンブラックのより具体的な例には、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高磨耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
特定の実施形態では、カーボンブラックの表面積(EMSA)は、少なくとも20m2/g、他の実施形態では少なくとも35m2/gであってもよく、表面積値は、ASTM D−1765によって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)技術を用いて決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化された形態又はペレット化されていない綿状形態であり得る。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器の種類に依存し得る。
ゴム組成物中で用いるカーボンブラックの量は、ゴム100重量部(phr)当たり最大で約50重量部であってもよく、約5〜約40phrが典型的である。
使用され得るいくつかの市販のシリカとしては、Hi−Sil(商標)215、Hi−Sil(商標)233、及びHi−Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pa.)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(Baltimore,Md.)、Degussa Corp.(Parsippany,N.J.)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,N.J.)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,N.J.)が挙げられる。
1又は複数の実施形態では、シリカは、その表面積によって特徴付けることができ、これにより、その補強特性の尺度が与えられる。ブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309 et seq.に記載されている)は、表面積を決定するための広く認められている方法である。シリカのBET表面積は、一般に450m2/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32〜約400m2/g、約100〜約250m2/g、約150〜約220m2/gが挙げられる。
シリカのpHは、概して、約5〜約7である。或いは、わずかに7より高い。また、他の実施形態では、約5.5〜約6.8である。
1又は複数の実施形態では、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中に結合剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加して、シリカとエラストマーとの相互作用を高めることがある。有用な結合剤及び遮蔽剤は以下の文献に開示されている。米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号。これらは本明細書において参照により組み込まれている。
ゴム組成物中に用いるシリカの量は、約1〜約100phr、又は他の実施形態では約5〜約80phrであり得る。有用な上限範囲は、シリカによって与えられる高粘性によって限定される。シリカをカーボンブラックと共に用いるとき、シリカの量を約1phr程度に低くすることができる。シリカの量が低いため、使用する結合剤及び遮蔽剤の量を少なくすることができる。概ね、結合剤及び遮蔽剤の量は、使用するシリカの重量に対して、約4%〜約20%の範囲である。
硫黄又は過酸化物系硬化系を含む、多数のゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)が用いられてもよい。硬化剤は、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365〜468,(3rd Ed.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390〜402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
ゴム配合において典型的に用いられる他の成分もまた、ゴム組成物に添加されてもよい。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、蝋、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、脂肪酸、例えばステアリン酸、解こう剤、劣化防止剤、例えば酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤が挙げられる。特定の実施形態では、用いられる油としては、従来から伸展油として用いられるものが挙げられる。これは、前述したとおりである。
ゴム組成物の全ての成分は、標準的な混合機器、例えばバンバリー又はブラベンダーミキサ、押出機、ニーダー、及び2つの圧延ミルを用いて混合することができる。1又は複数の実施形態では、構成成分を2段階以上で混合する。第1の段階(多くの場合、マスターバッチ混合段階とも呼ばれる)において、いわゆるマスターバッチ(典型的に、ゴム成分及び充填剤が含まれる)を調製する。早期加硫(別名スコーチ)を防止するために、マスターバッチから加硫剤を除外してもよい。マスターバッチの混合を、開始温度が約25℃〜約125℃、吐出温度が約135℃〜約180℃で行なってもよい。マスターバッチが調製されたらすぐに、加硫剤をマスターバッチに導入して混合することを、最終的な混合段階で行なっても良く、これを典型的に比較的低温で行なって、早期加硫が起きる可能性を小さくする。任意的に、しばしば再ミルと呼ばれる付加的な混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終的な混合段階との間で用いることができる。ゴム組成物にシリカが充填剤として含まれる場合、1又は複数の再ミル段階が用いられることが多い。本発明のポリマーを含む種々の構成成分の添加を、これらの再ミル中に行うことができる。
シリカ充填されたタイヤ配合物に特に適用可能な混合手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、同第5,719,207号、及び同第5,717,022号、並びに欧州特許第890,606号に記載されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれている。一実施形態では、最初のマスターバッチの調製は、結合剤及び遮蔽剤が実質的に存在しない状態で本発明のポリマー及びシリカを含めることによって行なう。
本発明のポリマーから調製されるゴム組成物が特に有用であるのは、タイヤ部品、例えばトレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビードフィラーなどを形成する場合である。好ましくは、本発明のポリマーが、トレッド配合及びサイドウォール配合物で用られる。1又は複数の実施形態において、これらのトレッド又はサイドウォール配合物には、約10%〜約100重量%、他の実施形態では約35%〜約90重量%、及び他の実施形態では約50%〜約80重量%(配合物内のゴムの総重量に基づく)のポリマーが含まれていても良い。
ゴム組成物をタイヤの製造において用いる場合、これらの組成物を処理してタイヤ部品にすることを、普通のタイヤ製造技術、例えば、標準的なゴム成形技術、成型技術、及び硬化技術により行なうことができる。典型的に、加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって達成される。例えば、成形型は、約140℃〜約180℃に加熱されてもよい。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫ゴム(一般的に熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する)と呼ばれることもある。充填剤及び加工助剤などの他の成分は、架橋された網状組織全体に亘って一様に分散してもよい。空気入りタイヤは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に記載されるように作製され得る。
本発明の実施を示すために、以下の実施例が調製され、試験された。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義するものとする。
実験:
実施例I(サンプル1〜8):
シス−1,4−ポリジエンの調製に熟成触媒組成物を用いたときに確認される有益な特性を実証するため、以下の触媒組成物を調製してポリジエンの合成に使用した。
別段の指定がない限り、ポリマーサンプルのムーニー粘度(ML1+4)は、大ロータ、1分間の予備加熱時間、及び4分間の運転時間でMonsanto Mooney粘度計を用いて100℃で求められた。ポリマーサンプルの数平均(Mn)及び重量平均(Mw)分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められた。GPC機器は、示差屈折率(RI)検出器及び紫外(UV)吸収検出器を備えていた。ポリマーサンプルのシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合、及び1,2−結合含有量は、赤外分光法によって求めた。GPC UV/RI比(UV検出器信号とRI検出器信号の比である)を用いて、アニオン重合によって生成され、かつ、同じMnを有する官能化ポリブタジエンサンプルのUV/RI比に対して官能化シス−1,4−ポリジエンのGPC UV/RI比を参照することにより、ポリマーサンプルの官能性率を計算した。ポリマーサンプルのシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合、及び1,2−結合含有量は、赤外分光法によって求めた。
サンプル1:
窒素パージされた密封ガラス容器に、95.2gの無水ヘキサンとヘキサン中の238.1gの21.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この混合物に、ヘキサン中の0.94mLの1.09Mジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、シクロヘキサン中の0.77mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の0.21mLの0.43Mエチルアルミニウムセスキクロリド溶液とを順次添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物にトルエン中の2.10mLの0.80Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを充填して、65℃で撹拌を続けた。30分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表Iを参照のこと。
触媒A〜F:
触媒A(触媒の熟成無し):シクロヘキサン中の8.50mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の10.79mLの21.3重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の10.89mLの1.03Mジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の2.17mLの0.43Mエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、5.00mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。
触媒B(1日間熟成):シクロヘキサン中の8.50mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の10.79mLの21.3重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の10.89mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の2.17mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、5.00mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で1日間熟成した。
触媒C(7日間熟成):シクロヘキサン中の23.18mLの0.11Mのネのオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の29.57mLの21.2重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の29.71mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の5.93mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、13.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で7日間熟成した。
触媒D(12日間熟成):シクロヘキサン中の23.18mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の29.57mLの21.2重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の29.71mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の5.93mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、13.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で12日間熟成した。
触媒E(15日間熟成):シクロヘキサン中の23.18mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の29.57mLの21.2重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の29.71mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の5.93mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、13.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で15日間熟成した。
触媒F(20日間熟成):シクロヘキサン中の23.18mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の29.57mLの21.2重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の29.71mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の5.93mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、13.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で20日間熟成した。
サンプル2、3、6、及び7:
窒素パージされた密封ガラス容器に、98.6gの無水ヘキサンとヘキサン中の234.7gの21.3重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、3.40mLの事前形成触媒A、B、E、又はFを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物にトルエン中の2.10mLの0.80M4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを充填して、65℃で撹拌を続けた。30分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表Iを参照のこと。
サンプル4及び5
窒素パージされた密封ガラス容器に、88.2gの無水ヘキサンとヘキサン中の245.1gの20.4重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、3.40mLの事前形成触媒C又はDを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物にトルエン中の2.10mLの0.80Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを充填して、65℃で撹拌を続けた。30分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表Iを参照のこと。
表I中のデータにより、ME%によって表される官能性(改質効率(ME)とも呼ばれる)が、触媒の熟成により大幅に向上されたことが分かる。また、官能性は、室温での熟成の約7〜15日の間に予期せずピークに達した。また、熟成により、有利な分子量分布も得られた。更に、表I中のデータにより、熟成によってシス−1,4−結合含有量が増加する傾向があることが分かる。最後に、触媒の熟成によって、ムーニー粘度が増加することに留意されたい。
実施例II(サンプル8〜14):
熟成触媒組成物を追加のアルキル化剤で処理したときに確認される有益な特性を実証するため、以下の触媒組成物を調製してポリジエンの合成に使用した。
ヘキサン中の11.76mLの20.1重量%ブタジエン溶液と、シクロヘキサン中の2.69mLの0.54Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の13.38mLの1.08Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液とを順次混合することにより、事前形成触媒溶液を調製した。この混合物を室温で3分間静置して、ヘキサン中の2.17mLの1.00Mのエチルアルミニウムジクロリド溶液を添加した。室温での10分間の追加的な熟成の後、4.00mLのヘキサンで触媒混合物を希釈した。
サンプル8:
窒素パージされた密封ガラス容器に、84.6gの無水ヘキサンとヘキサン中の248.8gの20.1重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、室温で10分間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル9:
窒素パージされた密封ガラス容器に、84.6gの無水ヘキサンとヘキサン中の248.8gの20.1重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、室温で4時間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル10:
窒素パージされた密封ガラス容器に、84.6gの無水ヘキサンとヘキサン中の248.8gの20.1重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、室温で24時間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル11:
窒素パージされた密封ガラス容器に、83.3gの無水ヘキサンとヘキサン中の250.0gの20.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、ヘキサン中の0.39mLの1.08Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、室温で7日間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLとを順次添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル12:
窒素パージされた密封ガラス容器に、83.3gの無水ヘキサンとヘキサン中の250.0gの20.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、ヘキサン中の0.79mLの1.08Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、室温で7日間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLとを順次添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル13:
窒素パージされた密封ガラス容器に、83.3gの無水ヘキサンとヘキサン中の250.0gの20.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、ヘキサン中の0.39mLの1.08Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、室温で30日間熟成させた実施例1に記載の事前形成触媒2.00mLとを順次添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
サンプル14:
窒素パージされた密封ガラス容器に、83.3gの無水ヘキサンとヘキサン中の250.0gの20.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、ヘキサン中の0.79mLの1.08Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、室温で30日間熟成させた上記実施例IIに記載の事前形成触媒2.00mLとを順次添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、トルエン中の2.07mLの0.82Mの4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン溶液を充填して重合溶液を80℃で60分間撹拌することにより、重合混合物を官能化した。重合混合物を、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液で希釈することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIを参照のこと。
表IIより、7〜15日の間に官能性のピークが確認されるという表Iと同じ傾向が分かる。また、データより、同等のムーニー粘度でシス−1,4−結合含有量が増加することが分かる。また、データより、ムーニー粘度はアルキル化剤の添加により調製可能であることが分かる。しかし、熟成後にアルキル化剤を過剰に使用すると、特性に悪影響を与えることがある。このように、データより、ムーニー粘度を望ましい範囲内に維持しつつ、シス−1,4−結合含有量を増加させることができることが示唆されている。また、熟成後に適量のアルキル化剤を導入すると、熟成によってより狭い分子量を得ることができる。
実施例III(サンプル15〜20):
熟成触媒組成物を追加のアルキル化剤で処理したときに確認される有益な特性を実証するため、以下の触媒組成物を調製してポリジエンの合成に使用した。
触媒AA(触媒の熟成無し):
シクロヘキサン中の8.50mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の10.79mLの21.3重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の10.89mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の2.46mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、4.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。
触媒BB(7日間熟成):
シクロヘキサン中の8.50mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の10.79mLの21.3重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の10.89mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の2.46mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、4.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で7日間熟成した。
触媒CC(−30℃で6か月間熟成):
シクロヘキサン中の8.50mLの0.11Mのネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の10.79mLの21.3重量%ブタジエン溶液と、ヘキサン中の10.89mLの1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の2.46mLの0.43Mのエチルアルミニウムセスキクロリド溶液と、4.75mLのヘキサンとを順次混合することにより、触媒溶液を調製した。各化学成分を触媒混合物に添加する度に、混合物を10分間静置した。この触媒を、室温で7日間、そして−30℃で6か月間熟成した。
サンプル15及び16:
窒素パージされた密封ガラス容器に、98.6gの無水ヘキサンとヘキサン中の234.7gの21.3重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、3.40mLの事前形成触媒AA及びBBを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIIを参照のこと。
サンプル17:
窒素パージされた密封ガラス容器に、95.2gの無水ヘキサンとヘキサン中の238.1gの21.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、3.40mLの事前形成触媒CCを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIIを参照のこと。
サンプル18:
窒素パージされた密封ガラス容器に、95.2gの無水ヘキサンとヘキサン中の238.1gの21.0重量%ブタジエン溶液とを充填した。この溶液に、まず、ヘキサン中の80mLの1.09Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液を添加し、その後で、3.40mLの事前形成触媒CCを添加した。この重合混合物を、直ちに50℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表IIIを参照のこと。
表IIIより、同等のムーニー粘度でシス−1,4−結合含有量が増加することが分かる。また、データより、ムーニー粘度はアルキル化剤の添加により調製可能であることが分かる。このように、データより、ムーニー粘度を望ましい範囲内に維持しつつ、シス−1,4−結合含有量を増加させることができることが示唆されている。また、熟成後に適量のアルキル化剤を導入すると、熟成によってより狭い分子量を得ることができる。最後に、表III中のデータにより、特性に顕著な影響を与えることなくより低い温度で触媒組成物を熟成することが可能であることが分かる。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。