JP2020068664A - 乳由来リン脂質含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】リン脂質に対する乳蛋白質含量が低く、風味が良好である、ベーカリー生地、特に製パン生地練り込み用、あるいは水中油型乳化物、特に起泡性水中油型乳化油脂組成物用に適した、乳由来リン脂質含有組成物を提供すること。また、該乳由来リン脂質含有組成物を、簡単な操作で有機溶媒を使用することなく製造することができる、乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法を提供すること。【解決手段】乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去することによって得られた、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を0.5〜2.5質量部含有する、乳由来リン脂質含有組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、乳由来リン脂質含有組成物及び乳由来リン脂質含有組成物含有する飲食品に関する。
リン脂質はグリセリンモノ脂肪酸エステルと並び、飲食品の製造に最も多く利用される乳化剤の1種である。そしてグリセリンモノ脂肪酸エステルが主としてグリセリンと脂肪酸から製造されるのに対し、リン脂質は大豆、ナタネ、乳、卵黄などの天然物質由来である点で、飲食品に使用する添加物の天然志向に合致するための使用が増加している。さらに、リン脂質はそのように生体の構成成分の1種でもあるため、その生体調節機能などの生理機能性素材としての利用も増加してきている。
その中でも乳由来のリン脂質は、風味が良好であることから、飲食品への利用が増加してきている。
しかし、乳由来のリン脂質は、その含有量が大変少なく、牛の生乳中ではわずかに0.03質量%程度が含まれるにすぎない。そして乳中ではリン脂質は脂肪球の表面を覆う乳脂肪球被膜に含まれるが、リン脂質は蛋白質と結合した複合体として存在しているため、リン脂質としての精製は困難であり、溶剤抽出などコスト的にも高価なものとなるため、医薬品や機能性素材用として分子種ごとの単離精製が行われるのみとなっている。
そこで食品業界では、乳由来のリン脂質は、蛋白質との複合体のままの利用の場面が多い。また、この複合体としての利用は、精製したリン脂質が物理的には単に油中水型乳化物用の乳化性しか効果が見込めないのに対し、水中油型乳化物用の乳化性や、製パン改良機能などの機能を有することから、食品用途としての有用性が高い。
このような複合体としての利用のためには、上記のように牛の生乳中に0.03質量%程度しか含まれないリン脂質含量を少なくとも固形分中の2質量%以上に高める濃縮・精製が必要である。乳由来リン脂質含有素材としては、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が利用されてきた。この水相成分は乳業界における副産物であり、旧来においては破棄されていたため低コストで入手可能であることから、食品業界での利用は拡大しつつある。
ただし、このクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分中には、リン脂質と蛋白質の複合体以外にカゼイン蛋白質やホエイ蛋白質などの単純蛋白質が多く混在し、これらは乳化性や製パン性にはほとんど関与しない成分であることから、これらの蛋白質は含まない形であることが好ましい。しかし、これらの単純蛋白質はリン脂質とある程度の相互作用を有するため、簡単には分離することができないという問題があった。
従来、このような精製としては、例えば、バターミルクを限外ろ過し、又はpH3.0〜4.6で等電沈澱させ、必要に応じカルシウム封鎖剤を併用して牛乳脂肪球皮膜画分を濃縮する方法(特許文献1)、バターミルクをpH4.4〜4.6の酸性域に調整し、等電点沈殿を行うことにより生じた蛋白質の沈殿を除去し、上清を精密濾過膜処理して得られる濃縮液を乾燥してリン脂質高含有粉末を得る方法(特許文献2)、バターゼラムをpH4.0〜5.0に調整し、塩化カルシウムを添加して生成した沈殿を除去し、上清を限外濾過又は精密濾過することによって得られた濃縮液を乾燥してリン脂質高含有粉末を得る方法(特許文献3)、有機溶剤を用いて抽出する方法(特許文献4)が知られている。
しかし、特許文献1の方法は、リン脂質に対する蛋白質含量を低減することができないという問題があり、特許文献2・3に記載の方法は、中性脂質含量が高く、水中油型乳化物用乳化剤や製パン改良用途には不適であるという問題があり、特許文献4の方法は、有機溶剤を用いるため装置が大がかりになり、また天然志向に合致しないという問題があった。また、これらの方法では、限外濾過や精密ろ過により乳風味が失われてしまうため飲食品に適用するための乳由来リン脂質の一番の特徴が失われてしまうという問題があった。
本出願人は、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の利用拡大を図る目的で、該成分を酸処理した場合に、水中油型乳化物用の乳化性能が向上すること(特許文献5)、製パン性能が向上すること(特許文献6)を報告している。また、該水相成分をカルシウム処理することで、同様の効果が得られることについても報告している(特許文献7)。
しかしながら、上記水相成分を酸処理、及び/又はカルシウム処理するだけでは、リン脂質に対する蛋白質含量を低減することができないことから、十分な乳化性能や製パン性の改良効果を得るためには添加量を増やす必要があり、コスト的な面や、物性の面から、さらに該性能を向上させ、低添加量でも同等の効果を得ることのできる、乳由来リン脂質含有素材が求められていた。
特開平03−251143号公報 特開平05−292880号公報 特開2015−053924号公報 特開平09−291094号公報 特開2015−077123号公報 特開2015−077123号公報 特開2015−053924号公報
したがって、本発明の目的は、リン脂質に対する乳蛋白質含量が低く、風味が良好である、ベーカリー生地、特に製パン生地練り込み用、あるいは水中油型乳化物、特に起泡性水中油型乳化油脂組成物用に適した、乳由来リン脂質含有組成物を提供することにある。また、本発明は、該乳由来リン脂質含有組成物を、簡単な操作で有機溶媒を使用することなく製造することができる、乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対し、酸処理、好ましくはカゼイン蛋白質の等電点の範囲外のpHとなるように調整する酸処理を行い、生じた沈殿を除去し、好ましくはその後、中和処理することで、上記課題を達成可能であることを見出した。
本発明は、上記知見により得られたものであり、乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去することによって得られた、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を0.5〜2.5質量部含有する、乳由来リン脂質含有組成物を提供するものである。
また、本発明は乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去する工程を有する、乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法を提供するものである。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、リン脂質に対する蛋白質含量が低く、風味が良好であり、乳化性能が高く、ベーカリー生地、特に製パン生地練り込み用、あるいは水中油型乳化物、特に起泡性水中油型乳化油脂組成物用に適している。
また、本発明の乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法によれば、上記本発明の乳由来リン脂質含有組成物を、簡単な操作で有機溶媒を使用することなく製造することができる。
以下、本発明の乳由来リン脂質含有組成物について説明する。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去することによって得られ、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を0.5〜2.5質量部含有することを特徴とする。
まず、上記乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料について説明する。
上記乳原料としては、バター製造時のチャーニングの際に副生する水相成分であるバターミルクや、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分、あるいはそれらの乳原料の濃縮品や乾燥品が挙げられる。上記乳原料の乳固形分中のリン脂質の含有量は、0.5質量%以上であればよいが、好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。そのため、上記乳原料としては、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分を使用することが好ましい。また、上記乳原料は、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳などの乳から製造されたものであるのが好ましく、特に牛乳から製造されたものであるのが好ましい。
上記乳原料には、リン脂質及び蛋白質の他、リン脂質以外の脂質、炭水化物、ビタミン類及びミネラル類などの多くの成分が含まれており、本発明の乳由来リン脂質含有組成物にもリン脂質及び蛋白質以外の多くの成分が含まれている。含有する成分の種類及びその割合は乳原料の種類により様々であり、また含有する全ての成分の種類及びその割合を特定することは困難且つ非現実的である。本発明においては、乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去することによって得られた、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を0.5〜2.5質量部含有する乳由来リン脂質含有組成物であれば、上記の課題を解決することができるため、その他の成分の種類及びその割合は特定しない。
上記乳原料の乳固形分中のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。ただし、抽出方法などについては、乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳原料の脂質を、Folch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる。)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる。)によりリン量を求める。求めたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を算出する。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
上記のクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
上記のバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、バターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
本発明では、上記乳原料をさらに濃縮したものや乾燥したもの、冷凍処理をしたものなどを用いることも可能である。溶剤を用いて濃縮したものは風味上の問題から用いないことが好ましい。
また、本発明では、上記乳原料中のリン脂質の一部または全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであってもよい。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理などを施してもよい。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
リン脂質をリゾ化するには、上記乳原料をホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
また、上記乳原料は、均質化処理を行なったものであることが、凝集している蛋白質を解きほぐし、酸処理効果を高めることが可能であるため好ましい。特に上記リゾ化処理を行なう場合は、その効果を高めるために均質化処理を行なうことが好ましい。均質化処理は1回でもよく、2回以上行ってもよい。また、上記乳原料が粉末品の場合は水に溶解して使用し、上記乳原料が粘性の高いものであるなどの場合は、加水により粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。該均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミルなどがあげられる。均質化圧力は、特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモゲナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行ってもよい。
さらに、上記乳原料は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
次に、上記乳原料から本発明の乳由来リン脂質含有組成物を得る方法について説明する。
本発明では、上記乳原料に対して酸処理を行う。このため、上記乳原料は水溶液又は懸濁液の状態であることが好ましい。上記酸処理とは、上記乳原料に酸を添加する、又は上記乳原料中に酸を生成させることにより、上記乳原料のpHを調整する処理を意味する。
水溶液又は懸濁液の状態とする場合、酸処理前の上記均質化や殺菌に適した粘度となること、さらには酸処理後の加熱や沈殿除去の際の効率、特に遠心分離の際の効率が優れていることから、乳固形分含量が2〜60質量%であることが好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が最も好ましい。
酸処理における好ましいpHは、蛋白質の少なくとも一部が沈殿するpHであればよく、具体的にはpHが5.5未満にすればよいが、好ましくはカゼイン蛋白質の等電点であるpH4.6周辺を避けたpH3.5以上4.5未満又はpH4.6超5.5未満であることが好ましく、さらに好ましくはpH3.7〜4.3又はpH4.9〜5.3、より好ましくはpH3.8〜4.1又はpH4.9〜5.2、最も好ましくはpH4.9〜5.2である。
上記酸処理は、酸を添加する方法であっても、また、乳酸醗酵などの醗酵処理を行う方法であってもよいが、酸を添加する方法が好ましい。添加する酸としては、塩酸やリン酸等の無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。また、レモンなどの果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルト、醸造酢などの有機酸を含有する飲食品を用いて酸を添加することもできる。
また、上記酸処理時に、沈殿の生成の促進の目的で、さらには得られる乳由来リン脂質含有組成物中のリン脂質に対する乳蛋白質含量を低下させることができることから、カルシウム塩を添加することが好ましい。上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明においては得られる製パン改良材の風味が良好である点で塩化カルシウム及び/又は乳酸カルシウムを使用することが好ましい。上記カルシウム塩の添加量は、上記乳原料に含まれるリン脂質1質量部に対し、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.3質量部である。
さらに、上記酸処理時に、沈殿の生成の促進の目的で、さらには得られる乳由来リン脂質含有組成物中のリン脂質に対する乳蛋白質含量を低下させることができることから、加温することが好ましい。具体的には、45〜100℃、より好ましくは50〜70℃に加温する。
続いて、上記酸処理で生じた沈殿を除去する。沈澱の除去方法としては、自然沈降、濾過、スクリューデカンタ等のデカンタ型遠心分離機、ディスクセパレーター等のディスク型遠心分離機などを含めた遠心分離などの方法が挙げられるが、不要な分画を効率的に除去できる点で遠心分離が好ましい。なお、遠心分離の際の条件は好ましくは1,500〜11,000×g、1〜60分、より好ましくは2,100〜9,000×g、3〜30分である。また、濾過としては沈殿が除去できればよく、濾紙、濾布、ワイヤースクリーンなどを使用することができ、珪藻土等の濾過助剤を使用することも出来る。この際、好ましくは直径0.02mm〜0.06mm程度の沈殿が除去できるものであることが好ましい。また、膜分画法を使用することもできる。この場合、最も孔径の小さいものとしては、分画分子量50,000程度の限外濾過膜(UF膜)が使用でき、それ以上孔径の大きい限外濾過膜や精密濾過膜(MF膜)も使用できるが、分離の効率から、ワイヤースクリーンが好ましい。なお、分画分子量50,000未満の粒子を除去する限外濾過膜、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)等については、有効成分まで除去してしまうことから好ましくない。
沈澱を除去して得られた上清である本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、上記乳原料中に混在していた乳脂肪球被膜蛋白質以外のカゼイン蛋白質やホエイ蛋白質などの蛋白質が除去されているため、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を3質量部以上含有する上記乳原料に比して乳蛋白含量が大幅に低下しており、水中油型乳化物の乳化能が向上し、且つ、製パン改良機能が向上しているという特徴を有する。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を0.5〜2.5質量部、好ましくは0.8〜1.4質量部含有する。ここで、乳由来のリン脂質1質量部に対する乳蛋白質が0.5質量部未満であると、水中油型乳化物用の乳化能が大幅に低下し、またベーカリー生地、特にパン生地における生地改良効果が大幅に低下してしまう。また、2.5質量部以上であると、酸処理の効果がほとんど見られない。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、含有する乳蛋白質における分子量29,000以上の蛋白質の割合が20質量%以下であることが、ベーカリー製品製造においてはベーカリー生地の生地作業性(べとつきがなく伸展性もよくなる)の改良効果や、焼成後のベーカリー製品の食感(もっちり感、口溶け)の向上効果、水中油型乳化物においては、乳化安定性の向上効果、特に起泡性水中油型乳化物ではホイップ外観(キメや艶)や食感(なめらかさ・口溶け)、離水耐性を向上することができるという物性改良効果に優れている点で好ましい。なお、分子量29,000以上の蛋白質の割合を20質量%以下にするには、沈殿の除去時に、2,100×g以上且つ30分以上の遠心分離を行うか、または該分子量の蛋白質を通さない濾過膜を使用することによって達成することができる。
本発明における蛋白質の分子量の測定及び含量の測定は以下の通り行う。還元剤(β−メルカプトエタノール)を含むドデシル硫酸ナトリウム化試薬(β−ME Sample Treatment for Tris SDS、コスモバイオ社製)で前処理したサンプルを、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(Laemmli法)に供し、クマシーブリリアントブルーで染色する。それによって検出されたバンドの濃度をデンシトメトリーの方法(分子画像装置Gel Doc XR システム(BIO−RAD社製)による画像化の後、Quantity One 1次元ゲル解析ソフトウェア(BIO−RAD社製)で解析する方法)で分析し、検出された全ての蛋白質バンドの総濃度に対し、分子量標準29,000のウシ由来カーボニックアンヒドラーゼ(分子量マーカー AE−1440 EzStandard、ATTO社製)の泳動位置よりも高分子領域に検出された蛋白質バンドの濃度を計算する。なお、デンシトメトリーによる蛋白質量の定量では、適切なバンドの濃さの領域が存在する。そこで、本発明では、分析サンプル全体の蛋白質バンドがそれぞれ定量範囲に入るサンプルアプライ量を見極めた。その結果、処理前の乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料は蛋白質純分量として8μg、沈殿を除去した本発明の組成物では5μgとした。なお、処理前の乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料の29,000以上の蛋白質の割合は50質量%以上であった。なお、蛋白質純分量は、未処理原料、処理後の組成物に含まれる蛋白質量を全窒素量分析値に窒素−蛋白質変換計数6.38を乗じて算出し、その後のサンプル調製における希釈率から算出した。また、全窒素分析はケルダール法、デュマ法(燃焼法)等、公知の方法で測定できるものであるが、本発明ではデュマ法を用いた。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、中和処理を行ったものであることが好ましい。中和処理を行うことにより、幅広い飲食品に対し風味を変えることなく添加することが可能になる。また、水中油型乳化物用乳化剤として用いたときの乳化性を高め、製パン練込用として使用した場合に、生地の物性、とくに伸展性を改良することができる点でも好ましい。
中和処理における好ましいpHは7付近であり、具体的にはpHが6〜8、さらに好ましくはpH6.0〜7.0である。中和の際に使用するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カリウム等、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、アンモニア、有機酸のナトリウム塩やカリウム塩などを挙げることができるが、使用する塩の味の影響が少ない点で、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、上記乳原料からの分離工程において、比重の小さいリン脂質の一部が浮遊するため、それを均質化するために均質化処理を行ったものであることが好ましい。その際の条件は上記乳原料の均質化と同様の条件を適用することができる。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、原料の保存性を高めることができる点で、UHT加熱処理を行ったものであってもよい。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、上記のように、リン脂質に対する乳蛋白質含量が低く、さらには糖類や灰分等の低分子物質を含有するため、風味が良好であると同時に水中油型乳化性能が高いという特徴を有する。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、下記のような成分含量であることが、生地物性改良効果や水中油型乳化性能が良好であり、且つ風味が良好である点から好ましい。
・固形分中におけるリン脂質含量が2〜30質量%、好ましくは5〜15質量%。
・固形分中における乳蛋白質含量が1〜75質量%、好ましくは4〜22質量%。
・固形分中における糖類含量が0〜75質量%、好ましくは10〜70質量%。
・固形分中における灰分含量が0〜20質量%、好ましくは2〜10質量%。
・固形分中における中性脂質含量が5〜60質量%、好ましくは10〜30質量%。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、濃縮、乾燥、粉末化、上記リゾ化処理などを行うことができるが、水中油型乳化物における乳化能が低下してしまうため、水分を好ましくは40〜98質量%、より好ましくは50〜95質量%、特に好ましくは60〜90質量%含有する形態であることが好ましい。水分が40質量%未満であると、油中水型の乳化能が高まるために水中油型乳化機能が低下してしまい、98質量%超であると、乳化能自体が弱くなりすぎてしまう。
本発明の乳由来リン脂質含有組成物は、ベーカリー生地、特に製パン生地練り込み用として使用した場合の生地物性、あるいは水中油型乳化物、特に起泡性水中油型乳化油脂組成物における乳化性の改良効果を有する。
次に、本発明の飲食品について説明する。
本発明の飲食品は上記乳由来リン脂質含有組成物を含有する飲食品である。具体的には、上記ベーカリー生地の焼成品、例えば食パン・菓子パン・デニッシュ等のパン類、ビスケット・クッキー・スポンジケーキ・バターケーキ等の焼菓子類、起泡性水中油型乳化油脂組成物の起泡品であるホイップドクリームや起泡済生クリームをはじめ、カフェオレ・ミルクティー・抹茶ミルク・ミルクココア・アイスミルクココア・ホットチョコレート・乳酸菌飲料・炭酸入り乳酸菌飲料・発酵乳飲料・乳性炭酸飲料・スムージー・ドリンクヨーグルト・無脂肪乳・低脂肪乳・いちごミルク・果汁飲料・果実飲料・フレーバーウォーター・豆乳飲料等の各種飲料、カルーアミルク・ベイリーズミルク・乳性サワー・ノンアルコール乳性サワー等のアルコール飲料・ノンアルコールカクテル飲料、カスタードクリーム・フラワーペースト・ホワイトクリーム・バタークリーム等のクリーム類、シチュー・カレー・ホワイトソース・グラタン等のクリーム状食品、コーンスープ・クラムチャウダー等のスープ類、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス・ゼリー・杏仁豆腐・ババロア・ムース・プリン等のデザート類、マーガリン類、マヨネーズ・ドレッシング等のドレッシング類、チーズ様食品、ドーナツ類、キャラメル・キャンディー・チョコレート、チューインガム等の菓子類・ハム・ソーセージ・豆腐・麺類その他加工食品を挙げることができる。
次に、本発明の飲食品の改良方法について説明する。
本発明の飲食品の改良方法は、飲食品の製造時及び/又は喫食時に上記本発明の乳由来リン脂質含有組成物を添加するものであり、例えば、ベーカリー生地においては生地物性が改良され、起泡性水中油型乳化油脂組成物では乳化性が改良される。上記飲食品の種類や添加量は上述のとおりである。
次に、本発明の乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法について説明する。
本発明の乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法は、乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去する工程を有するものである。乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料の種類、酸処理に用いる酸の種類やpH、沈殿の除去方法については上述のとおりである。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<乳由来リン脂質含有組成物の製造>
〔実施例1〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)を水で2.4倍に希釈し、ここに塩酸を添加してpH5.0に調整した。50℃で30分間加熱した後、3,500×gで30分間遠心分離を行い、上清を回収した。続いて3MPaの圧力で均質化し、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で142℃にて4秒間殺菌した後、再度5MPaの圧力で均質化して5℃まで冷却した。これを乳由来リン脂質含有組成物Aとした。この乳由来リン脂質含有組成物Aは、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を1質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.3質量%、固形分中の蛋白質含量は8.3質量%、固形分中の糖類含量は55.0質量%、固形分中の灰分含量は6.8質量%、固形分中の中性脂質含量は20.6質量%、水分は86質量%であった。
〔実施例2〕
実施例1で得られた上清を水酸化ナトリウムでpH6.4となるように中和処理し、これを乳由来リン脂質含有組成物Bとした。この乳由来リン脂質含有組成物Bは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.2質量%、固形分中の蛋白質含量は8.2質量%、固形分中の糖類含量は54.9質量%、固形分中の灰分含量は7.0質量%、固形分中の中性脂質含量は20.9質量%、水分は85質量%であった。
〔実施例3〕
酸処理時のpHを5.0から4.0に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Cを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Cは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1.13質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は9.0質量%、固形分中の蛋白質含量は8.0質量%、固形分中の糖類含量は54.7質量%、固形分中の灰分含量は7.0質量%、固形分中の中性脂質含量は20.5質量%、水分は86質量%であった。
〔実施例4〕
酸処理時のpHを5.0から3.5に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Dを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Dは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1.05質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.3質量%、固形分中の蛋白質含量は8.7質量%、固形分中の糖類含量は54.5質量%、固形分中の灰分含量は7.2質量%、固形分中の中性脂質含量は20.4質量%、水分は87質量%であった。
〔実施例5〕
酸処理時のpHを5から5.1に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Eを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Eは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1.02質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.3質量%、固形分中の蛋白質含量は8.5質量%、固形分中の糖類含量は55.1質量%、固形分中の灰分含量は6.8質量%、固形分中の中性脂質含量は20.5質量%、水分は86質量%であった。
〔実施例6〕
酸処理時のpHを5.0から5.3に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Fを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Fは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1.43質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は9.2質量%、固形分中の蛋白質含量は13.2質量%、固形分中の糖類含量は48.2質量%、固形分中の灰分含量は6.6質量%、固形分中の中性脂質含量は22.1質量%、水分は88質量%であった。
〔実施例7〕
酸処理に使用した塩酸をフィチン酸に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Gを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Gは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を0.99質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.4質量%、固形分中の蛋白質含量は8.3質量%、固形分中の糖類含量は55.0質量%、固形分中の灰分含量は6.8質量%、固形分中の中性脂質含量は20.7質量%、水分は85質量%であった。
〔実施例8〕
酸処理に使用した塩酸を濃縮レモン果汁(レモン6倍濃縮透明果汁、株式会社果香製)に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Hを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Hは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を0.99質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.4質量%、固形分中の蛋白質含量は8.3質量%、固形分中の糖類含量は55.0質量%、固形分中の灰分含量は6.8質量%、固形分中の中性脂質含量は20.7質量%、水分は86質量%であった。
〔実施例9〕
酸処理後の加熱温度と時間を50℃、30分から100℃、1分に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Iを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Iは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.3質量%、固形分中の蛋白質含量は8.3質量%、固形分中の糖類含量は54.8質量%、固形分中の灰分含量は6.8質量%、固形分中の中性脂質含量は20.9質量%、水分は87質量%であった。
〔実施例10〕
酸処理後の加熱をしなかった以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Jを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Jは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1.35質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.3質量%、固形分中の蛋白質含量は11.2質量%、固形分中の糖類含量は53.5質量%、固形分中の灰分含量は6.2質量%、固形分中の中性脂質含量は20.2質量%、水分は85質量%であった。
〔実施例11〕
酸処理後に塩化カルシウムをリン脂質1質量部に対し0.011質量部添加した以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Kを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Kは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を1質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を含有せず、固形分中のリン脂質含量は8.5質量%、固形分中の蛋白質含量は8.5質量%、固形分中の糖類含量は54.5質量%、固形分中の灰分含量は6.7質量%、固形分中の中性脂質含量は21.1質量%、水分は86質量%であった。
〔比較例1〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)を水で2.4倍に希釈し、これを乳由来リン脂質含有組成物Lとした。この乳由来リン脂質含有組成物Lは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を3.81質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を57質量%含有し、固形分中のリン脂質含量は9.8質量%、固形分中の蛋白質含量は31.6質量%、固形分中の糖類含量は49.2質量%、固形分中の灰分含量は7.1質量%、固形分中の中性脂質含量は1.6質量%、水分は84質量%であった。
〔比較例2〕
酸処理後の遠心分離を行わなかった以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Mを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Mは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を3.24質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を57質量%含有し、固形分中のリン脂質含量は9.8質量%、固形分中の蛋白質含量は31.8質量%、固形分中の糖類含量は49.1質量%、固形分中の灰分含量は7.1質量%、固形分中の中性脂質含量は1.4質量%、水分は84質量%であった。
〔比較例3〕
酸処理後の加熱処理及び遠心分離を行わなかった以外は実施例2と同様の配合及び製法で乳由来リン脂質含有組成物Nを得た。この乳由来リン脂質含有組成物Nは、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳蛋白質を3.81質量部含有し、分子量29,000以上の蛋白質を57質量%含有し、固形分中のリン脂質含量は9.7質量%、固形分中の蛋白質含量は31.6質量%、固形分中の糖類含量は49.5質量%、固形分中の灰分含量は7.1質量%、固形分中の中性脂質含量は1.3質量%、水分は84質量%であった。
<ベーカリー試験>
〔実施例12〜22、比較例4〜7〕
上記実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた乳由来リン脂質含有組成物A〜Nを用いて、下記の配合及び製法によりプルマン型食パンを製造した。製造における分割・丸め時の生地作業性、得られた食パンの食感(ソフト感、歯切れ)について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表1に示した。
また、比較例7として、乳由来リン脂質含有組成物を添加しない以外は下記と同様の配合・製法で食パンを製造し、同様の評価を行った。結果を表1に示した。
[食パンの配合・製法]
強力粉70質量部、イースト2.2質量部、イーストフード0.1質量部、及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを用いて、低速2分、中速2分混合し、中種生地を得た。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度80%の恒温室で4時間、中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、食塩1.8質量部、脱脂粉乳1質量部、上白糖8質量部、水24.5質量部、及び、乳由来リン脂質含有組成物0.8質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、マーガリン(フロイデプレミアムPV:株式会社ADEKA製)を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で4分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを30分とった後、230gに分割・丸めを行なった。次いで、ベンチタイムを30分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で約45分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
<評価基準>
・生地作業性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○+:べとつきもなく伸展性もよく、非常に良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又はやや伸展性が悪く、若干劣る作業性であった。
×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
・食感(もっちり感)
◎:きわめて良好
○+:非常に良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(口溶け)
◎:きわめて良好
○+:良好
○:やや良好
△:ややねちゃつくか、またはボソボソして不良
×:ねちゃつき、又は、ぼそつきが激しい

Figure 2020068664
〔実施例23〜33、比較例8〜11〕
<起泡性水中油型乳化油脂組成物による試験>
上記実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた乳由来リン脂質含有組成物A〜Nを用いて、下記の配合及び製法により起泡性水中油型乳化油脂組成物を製造し、その乳化安定性、さらに起泡性水中油型乳化油脂組成物をホイップして得られたホイップドクリームの外観(キメと艶)、食感(なめらかさ・口溶け)、離水耐性について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表2に示した。
また、比較例11として、乳由来リン脂質含有組成物を添加しない以外は下記と同様の配合・製法で起泡性水中油型乳化油脂組成物およびホイップドクリームを製造し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
〔起泡性水中油型乳化油脂組成物の配合・製法〕
ヨウ素価1のパーム極度硬化油55質量部と、パーム核油45質量部を混合した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として添加し、非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Aを得た。
パーム核油33質量部、エステル交換油脂A3質量部、パーム分別中融点部6質量部を混合し、65℃に加温溶解し、油相とした。一方、乳由来リン脂質含有組成物36質量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)0.1質量部、水21.9質量部を混合し、65℃に加温溶解し水相とした。上記油相と上記水相を混合、乳化して、予備乳化物を調製し、3MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度5MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、起泡性水中油型乳化油脂組成物(ホイップクリーム)を得た。
〔ホイップドクリームの配合・製法〕
起泡性水中油型乳化油脂組成物100質量部に対し、上白糖7質量部を添加し、卓上ミキサーでワイヤーホイッパーを使用して最適起泡状態に達するまでホイップし、ホイップドクリームを得た。
[乳化安定性の評価方法]
・ボテの評価
起泡性水中油型乳化物をそれぞれ20℃で1時間調温した後、振動器を用い100回/37秒で水平方向に振動させた。起泡性水中油型乳化物が流動性を失うまでの振動回数が10000回以上のものを◎、7000回以上10000回未満のものを○、4000回以上7000回未満のものを△、4000回未満のものを×とした。
[外観(キメと艶)の評価方法]
◎:キメが細かく、艶のある優れた外観である。
〇:やや艶がないが、キメの細かい良好な外観である。
△:艶がなく、ややキメの粗い外観である。
×:艶がなく、キメの粗い不良な外観である。
[食感(なめらかさ・口溶け)の評価方法]
ホイップドクリームを口にふくんだときのなめらかさ・口溶けを、15人のパネラーにて官能試験した。なめらかさ、及び口溶けをそれぞれ4段階(良好・やや良好・やや不良・不良)で評価し、良好:3点、やや良好:2点、やや不良:1点、不良:0点で評価し、その合計点が30点以上のものを◎+、25〜29点のものを◎、20〜24点のものを○、15〜19点のものを△、14点以下のものを×とした。
[離水耐性の評価方法]
・経日安定性
ホイップドクリームを20℃条件下で長期間保存し、12時間、18時間、24時間経過時の離漿量について、下記基準で評価した。
−…全く離漿が見られない
±…わずかに離漿が確認できる
+…はっきりと離漿が見られる
++…激しい離漿が見られる
Figure 2020068664

Claims (8)

  1. 乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去することによって得られた、乳由来のリン脂質1質量部に対して乳蛋白質を0.5〜2.5質量部含有する、乳由来リン脂質含有組成物。
  2. 沈澱を除去した後、更に中和処理を行って得られた請求項1に記載の乳由来リン脂質含有組成物。
  3. 酸処理が、pHを3.5以上4.5未満又は4.6超5.5未満に調整する処理である請求項1又は2に記載の乳由来リン脂質含有組成物。
  4. 酸処理時の温度が、45〜100℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳由来リン脂質含有組成物。
  5. 前記乳蛋白質における分子量29,000以上の蛋白質の割合が、20質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳由来リン脂質含有組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳由来リン脂質含有組成物を含有する飲食品。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳由来リン脂質含有組成物を添加する飲食品の改良方法。
  8. 乳脂肪球被膜蛋白質を含有する乳原料に対して酸処理を行い、生じた沈殿を除去する工程を有する、乳脂肪球被膜蛋白質の精製方法。

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