JP2019172973A - 二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ - Google Patents

二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】高い生産性、加工性、耐電圧性を有し、かつ、保安性を高めるためコンデンサに加工した際にフィルム層間のエアー量および間隙を均一に制御する表面形状を有する二軸配向ポリプロピレンを提供する。【解決手段】二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、厚み(t)が1.0〜3.0μmであり、かつ算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m2、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/m2である表面を両面に有することを特徴とする二軸配向ポリプロピレンフィルムによって達成することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、コンデンサの誘電体として用いた際に、高温・高電圧環境下において高い耐電圧性を有する二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサに関する。
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性などに優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途などの様々な用途に用いられている。
中でもコンデンサ用途には、その優れた高耐電圧特性、低損失特性から、コンデンサの誘電体として特に好ましく用いられている。最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。さらに、特に自動車用途(ハイブリッドカーや電気自動車含む)や太陽光発電、風力発電用途では使用環境の高温化が進んでおり、コンデンサに対する耐熱化要求が高まっている。そのため、二軸配向ポリプロピレンフィルムには耐電圧特性を維持させつつ、薄膜化・耐熱化することが求められている。
フィルムの薄膜化・耐熱化とは、すなわち、高温下(使用環境温度として、85℃以上125℃以下を示す)での厚みあたりの耐電圧向上を意味する。フィルムの耐電圧を向上させる方法としては、フィルムの生産性、加工性の観点やコンデンサ素子の保安性の観点から、フィルムの表面形状を制御することが有効であると考えられており、様々な検討がなされている。なお、コンデンサ素子の保安性とは誘電体フィルム上に形成した金属蒸着膜を電極とする金属蒸着コンデンサにおいて、異常放電時の放電エネルギーによって蒸着金属を飛散させることで絶縁性を維持する機能であり、コンデンサのショートや破壊を防止する上で重要な機能である。
フィルムの表面形状を制御する方法として、ポリプロピレンのβ晶からα晶への結晶転移を利用する方法(以下β晶法と記載)が知られている。この結晶転移を利用する方法は、耐電圧の悪化が懸念される添加剤等の不純物を混入させる必要がないため、コンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムの粗面化方法として好ましく用いられている。しかし、一般的な直鎖状ポリプロピレンを使用してβ晶法を適用した場合にはクレーター状に急峻な凸部と凹部が低い密度で形成されるため、近年の高温・高電圧環境における耐電圧性や保安性に係るフィルム層間のエアー量の制御が十分であるとは言えなかった(例えば、特許文献1、2参照)。
粗さの密度や突起の均一性に着目した技術として、分岐鎖状ポリプロピレンを添加する方法(例えば、特許文献3、4参照)や分子量や分子量分布の異なるポリプロピレンを混合する方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。これら方法では球晶サイズを小さく制御できるため、高さの均一な凸部を高密度で形成することができるが、凹部も高い密度で存在するため絶縁破壊しやすく、近年の高温・高電圧環境における耐電圧性や保安性に係るフィルム層間のエアー量の制御が十分であるとは言えなかった。
β晶法によって形成される凹部を低減する技術として、フィルム表裏の熱付与条件を制御し、β晶の形成量を適正化する方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。この方法では凹部を低減できるためフィルムの耐電圧を向上させることができるが、加工性を維持するために粗大な突起を形成させる必要があるため、コンデンサ素子に加工した際にフィルム層間のエアー量が多くなりやすく、近年の高温・高電圧環境においては保安性が必ずしも適正に機能するとは言えなかった。
また、表面形状の制御以外にもコンデンサの耐熱性を向上させる方法として、フィルムの熱収縮応力を低減させる方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。この方法ではフィルムが高い寸法安定性を有するため、コンデンサ素子加工時により高い温度で熱処理することができ、さらに長手方向の巻き締りによりフィルムの層間間隙の均一性が高まるためコンデンサの寿命を向上させることができる。しかし、フィルムの製造工程で熱収縮応力を低減させる過程で高い弛緩率で弛緩させており、そのため、フィルムの配向が弱まりやすく、近年の高温・高電圧環境においては耐電圧性が十分とは言えなかった。
特開2008−133446号公報 特開2014−077057号公報 WO2007−094072A1 WO2012−121256A1 特開2014−231584号公報 WO2017−077752A1 WO2014−148547A1
本発明の課題は、高い生産性、加工性、耐電圧性を有し、かつ、適正な保安性を得るためコンデンサに加工した際にフィルム層間のエアー量および間隙を均一に制御する表面形状を有する二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することにある。
上記した課題は、二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、厚み(t)が1.0〜3.0μmであり、かつ算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面を両面に有することを特徴とする二軸配向ポリプロピレンフィルムによって達成することができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムをコンデンサの誘電体として用いた場合、生産性、加工性、耐電圧性に優れ、さらに、コンデンサ加工時にフィルム層間のエアー量や間隙距離を均一に制御することができるため、高温・高電圧環境下においても高い保安性が機能し、コンデンサの寿命が改善する。
以下、さらに詳しく本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサについて説明する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含みさえすれば特に限定されないが、好ましくは二軸配向ポリプロピレンフィルム100質量%中にポリプロピレン樹脂を50質量%以上100質量%以下含む態様である。さらに本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)を主成分とし、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)および分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)を含有することが好ましい。高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)については後述する。
ここで、「高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)を主成分」とするとは、二軸配向ポリプロピレンフィルム100質量%中に高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)を50質量%以上100質量%以下含むことを意味する。
また、二軸配向ポリプロピレンフィルムとは、キャストシートを長手方向と幅手方向の二方向に延伸した二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。つまり、ここでいう二軸配向とは、長手方向と幅手方向に延伸したという意味である。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、厚み(t)が1.0〜3.0μmであることが好ましい。厚み(t)は1.2〜2.8μmであるとより好ましく、1.5〜2.5μmであるとさらに好ましい。厚み(t)を1.0μm以上とすることで、機械強度や高温耐電圧特性に優れたものとすることができ、また、製膜および加工時におけるフィルムの破断を防止することができる。一方、フィルム厚み(t)を3.0μm以下とすることにより、コンデンサ用誘電体として用いた際に体積当たりの容量を大きくすることができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面を両面に有することを特徴とする。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、両面において算術平均高さ(Sa)が10〜70nmである。算術平均高さ(Sa)は15〜65nmであるとさらに好ましく、20〜60nmであるとさらに好ましく、25〜60nmであると特に好ましい。算術平均高さ(Sa)を10nm以上とすることにより、滑り性を保ち、製膜および加工時のフィルム搬送工程において搬送シワの発生や、フィルムロールの巻姿の悪化を防ぐことができる。また、算術平均高さ(Sa)を70nm以下とすることにより、製膜および加工時のフィルムの搬送工程においてフィルムの蛇行や、フィルムロールの巻姿の悪化を防ぐことができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは両面において山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/mである。山部の実体体積(Vmp)は0.0015〜0.0045ml/mであるとより好ましく、0.0020〜0.0040ml/mであるとさらに好ましい。
山部の実体体積(Vmp)はISO25178(2012)で定義される機能(体積)パラメータの一種で、高さデータのベアリングカーブ(ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を100%として百分率で表したものである。ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる)において、負荷面積率0%から10%のベアリングカーブから算出される単位面積あたりの実体部分(負荷面積率0%から10%に相当するフィルムの突起部分)の体積を示す。
山部の実体体積(Vmp)を0.0010ml/m以上とすることにより、コンデンサ素子形成時にフィルムの層間間隙が狭くなることを防止し、コンデンサを使用した際にショート破壊をしにくくすることができる。一方、山部の実体体積(Vmp)を0.0050ml/m以下とすることにより、コンデンサ素子加工時の熱処理工程においてフィルムが収縮してフィルム層間が圧縮された際に、フィルム層間の間隙距離やエアー量を均一にすることができ、さらに、コンデンサ使用時に保安性が効きすぎる、もしくは、効きにくくなることを防ぎ、コンデンサの寿命を長くし、もしくは、ショート破壊を起きにくくすることができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、両面においてコア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである。コア部の空隙容積(Vvc)は0.015〜0.085ml/mであるとより好ましく、0.020〜0.080ml/mであるとさらに好ましく、0.025〜0.075ml/mであると特に好ましい。
コア部の空隙容積(Vvc)はISO25178(2012)で定義される機能(体積)パラメータの一種で、高さデータのベアリングカーブ(ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を100%として百分率で表したものである。ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる)において、負荷面積率10%から80%のベアリングカーブから算出される単位面積あたりの空間部分(負荷面積率10%から80%に相当するフィルムの突起部以外の空間)の容積を示す。
コア部の空隙容積(Vvc)が0.010ml/m以上とすることにより、コンデンサ素子加工時の熱処理工程においてフィルムが収縮してフィルム層間が圧縮された際に、フィルム層間の間隙距離が狭くなり過ぎず、コンデンサ使用時のショート破壊をし難くすることができる。一方、コア部の空隙容積(Vvc)を0.090ml/m以下とすることにより、コンデンサ素子加工時の熱処理工程においてフィルムが収縮してフィルム層間が圧縮されてもエアー排除が進みやすく、層間の間隙距離を短くして、コンデンサの容量の低下を防ぎ、また、寿命が長くなりやすくなる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、山部の実体体積(Vmp)が大きい方の面をA面、小さい方の面をB面とした際に、A面のコア部の空隙容積(Vvc(A))とB面のコア部の空隙容積(Vvc(B))の和(Vvc(A)+Vvc(B))が0.060〜0.140ml/mであることが好ましい。A面のコア部の空隙容積(Vvc(A))とB面のコア部の空隙容積(Vvc(B))の和(Vvc(A)+Vvc(B))は0.065〜0.135ml/mであるとより好ましく、0.070〜0.130ml/mであるとさらに好ましく、0.075〜0.125ml/mであると特に好ましい。
A面のコア部の空隙容積(Vvc(A))とB面のコア部の空隙容積(Vvc(B))の和(Vvc(A)+Vvc(B))を0.060ml/m以上とすると、コンデンサ素子加工時の熱処理工程においてフィルムが収縮してフィルム層間が圧縮された際に、フィルム層間の間隙距離が狭くなり過ぎるのを防ぎ、コンデンサ使用時のショート破壊を防ぎやすい。一方、A面のコア部の空隙容積(Vvc(A))とB面のコア部の空隙容積(Vvc(B))の和(Vvc(A)+Vvc(B))が0.140ml/m以下とすると、コンデンサ素子加工時の熱処理工程においてフィルムが収縮してフィルム層間が圧縮された際にエアー排除が進みやすく、層間の間隙距離が長くなり過ぎるのを防ぐため、コンデンサの容量が低下しにくく、また、寿命が長くなりやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、両面において谷部の空隙容積(Vvv)が0.0010〜0.0090ml/mであることが好ましい。谷部の空隙容積(Vvv)は0.0020〜0.0080ml/mであるとより好ましく、0.0025〜0.0075ml/mであるとさらに好ましく、0.0030〜0.0070ml/mであると特に好ましい。
谷部の空隙容積はISO25178(2012)で定義される機能(体積)パラメータの一種で、高さデータのベアリングカーブ(ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を100%として百分率で表したものである。ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる)において、負荷面積率80%から100%のベアリングカーブから算出される単位面積あたりの空間部分(負荷面積率80%から100%に相当するフィルムの凹部)の容積を示す。
谷部の空隙容積(Vvv)を0.0010ml/m以上とすると、フィルムが平滑になり過ぎるのを防ぎ、製膜および加工時のフィルム搬送工程における搬送シワの発生やフィルムロールの巻姿の悪化を抑制することができる。一方、0.0090ml/m以下とすると、フィルムの最小厚みが薄くなり過ぎるのを防ぎ、耐電圧が低下しにくい、もしくは、ショート破壊が起きにくい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、山部の実体体積(Vmp)が大きい方の面をA面、小さい方の面をB面とした際に、A面の谷部の空隙容積(Vvv(A))とB面の谷部の空隙容積(Vvv(B))の比(Vvv(A)/Vvv(B))が0.80〜1.20であることが好ましい。A面の谷部の空隙容積(Vvv(A))とB面の谷部の空隙容積(Vvv(B))の比(Vvv(A)/Vvv(B))は0.82〜1.18であるとより好ましく、0.85〜1.15であるとさらに好ましく、0.88〜1.12であると特に好ましい。
A面の谷部の空隙容積(Vvv(A))とB面の谷部の空隙容積(Vvv(B))の比(Vvv(A)/Vvv(B))を0.80以上、もしくは、1.20以下とすると、フィルムの表裏で滑り性が異なるのを防ぐため、コンデンサ素子加工時の巻取り工程にて巻込みエアー量が安定しやすく、熱処理工程後にフィルムの層間間隙やエアー量が均一になりやすく、コンデンサ使用時に保安性が効きすぎる、もしくは、効きにくくなるのを防ぐため、コンデンサの寿命が低下しにくい、もしくは、ショート破壊が起きにくい。
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン原料について説明する。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)を主成分とし、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)、および分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)を含有することが好ましい。
最初に高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)について説明する。
本発明でいう高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)とは、メソペンダット分率(mmmm)が0.960〜0.995であり、かつ、溶融流動指数(MFR)が0.5〜5.0g/10分である直鎖状ポリプロピレン樹脂を意味する。なお、本発明において直鎖状ポリプロピレン樹脂とは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)(単位:cN)と溶融流動指数(MFR)(単位:g/10分)が下記式(1)を満たすポリプロピレン樹脂を意味する。
log(MS)≦−0.56log(MFR)+0.74 ・・・式(1)
本発明の二軸配向ポリプロピレンの主成分として好ましく用いられる高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)は、通常コンデンサ用に使用されるアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いることができる。本発明で使用する高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)は直鎖状ポリプロピレン樹脂であり、冷キシレン可溶部(CXS)が4質量%以下、溶融流動指数(MFR)が0.5〜5.0g/10分であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられる前記高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の冷キシレン可溶部(CXS)は4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であるとより好ましく、2質量%以下であると特に好ましい。冷キシレン可溶部(CXS)は、フィルムを135℃のキシレンで完全溶解せしめた後、20℃で析出させた時に、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことである。すなわち、冷キシレン可溶部(CXS)は立体規則性や分子量が低いなどの理由により結晶化し難い成分に相当すると考えられる。高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の冷キシレン可溶部(CXS)が4質量%以下とすると、二軸配向ポリプロピレンフィルムの高温耐電圧特性や寸法安定性を保ちやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられる前記高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)のメソペンタッド分率(mmmm)は0.960〜0.995である。メソペンダット分率(mmmm)は0.965〜0.995であるとより好ましく、0.970〜0.995であると特に好ましい。メソペンタッド分率(mmmm)は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、数値が高いものほど結晶化度や融点が高く、高温下での耐電圧特性に優れるため好ましい。ポリプロピレン樹脂(A)のメソペンタッド分率が0.960以上であると、高温耐電圧特性や寸法安定性を保ちやすい。一方、ポリプロピレン樹脂(A)のメソペンタッド分率が0.995以下であると、製膜性を保ち、に安定して二軸配向ポリプロピレンフィルムが得られやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられる前記高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の溶融流動指数(MFR)は、JIS K 7210−1(2014)に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定した場合において、0.5〜5.0g/10分である。溶融流動指数(MFR)は1.0〜4.5g/10分であるとより好ましく、1.5〜4.0g/10分であると特に好ましい。高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の溶融流動指数(MFR)を0.5g/10分以上とすると、製膜性を保ち安定して二軸配向ポリプロピレンフィルムが得られやすい。一方、高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)のMFRを5g/10分以下とすると、寸法安定性や高温耐電圧特性を保ちやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、前記高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の含有量は、主成分(50質量%以上100質量%以下)であることが好ましいが、80〜98質量%であることが好ましく、85〜95質量%であるとさらに好ましい。高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の含有量を80質量%以上とすると、フィルムの耐熱性を保ち、高温における耐電圧が保ちやすい。また、高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)の含有量を95質量%以下とすると、溶融ポリマーをシート状に形成する際に球晶サイズが大きくなり過ぎるのを防ぎ、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)を得られやすい。
続いて、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)について説明する。
本発明でいう低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)は、メソペンダット分率が0.30〜0.60であり、かつ、溶融流動指数(MFR)が40〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を意味する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンに含有させる低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)は、メソペンダット分率(mmmm)が0.30〜0.60であり、かつ、溶融流動指数(MFR)が40〜60g/10分である。具体的には、出光興産株式会社製“L−MODU(商標登録)(S400、S600、S901など)”が例示される。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに好ましく用いられる低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)のメソペンタッド分率(mmmm)は0.30〜0.60である。メソペンダット分率(mmmm)は0.35〜0.55であるとより好ましく、0.40〜0.50であると特に好ましい。低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)のメソペンタッド分率(mmmm)が0.30以上であると、高温耐電圧特性や寸法安定性を保ちやすい。一方、ポリプロピレン樹脂(B)のメソペンタッド分率が0.60以下であると、フィルムの耐熱性が高くなり過ぎるのを防ぎ、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられる前記低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の溶融流動指数(MFR)は、JIS K 7210−1(2014)に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定した場合において、40〜60g/10分であることが好ましく、45〜55g/10分であるとより好ましい。低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の溶融流動指数(MFR)が40g/10分以上であると、フィルムの耐熱性が高くなり過ぎるのを防ぎ、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。一方、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の溶融流動指数(MFR)が60g/10分以下であると、高温耐電圧特性や寸法安定性を保ちやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、前記低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量は1〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であるとより好ましく、1〜5質量%であると特に好ましい。低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量を1質量%以上とすると、フィルムの耐熱性が高くなり過ぎ、後述する高温加圧処理時にフィルムが溶融しやすく、また、横延伸工程で縦延伸フィルムの凸部と凹部とが均一に延伸されやすいため、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。また、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量が10質量%以下であると、高温耐電圧特性や寸法安定性を保ちやすい。
続いて分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)について説明する。
本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンに含有させる分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)は、230℃で測定したときの溶融流動指数(MFR)が0.5〜10.0g/10分である、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を意味する。ここで分岐鎖状ポリプロピレン樹脂とは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)(単位:cN)と溶融流動指数(MFR)(単位:g/10分)が下記式(2)を満たすポリプロピレン樹脂である。
log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74 ・・・式(2)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いられる分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の溶融流動指数(MFR)は、JIS K 7210−1(2014)に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定した場合において、0.5〜10.0g/10分である。好ましくは0.5〜8.0g/10分であり、0.5〜6.0g/10分であると特に好ましい。分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の溶融流動指数(MFR)を0.5g/10分以上とすると、製膜性を保ち安定して二軸配向ポリプロピレンフィルムが得られやすい。一方、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の溶融流動指数(MFR)を10.0g/10分以下とすると、溶融ポリマーをシート状に形成する際に球晶サイズが大きくなり過ぎるのを防ぎ、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。
式(1)を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)を得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法等が好ましく用いられる。具体的には、Lyondell Basell社製“Profax(登録商標)(PF−814など)”、Borealis社製“Daploy(商標)”(WB130HMS、WB135HMSなど)が例示される。なお、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレン(H)とは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンであり、この内部3置換オレフィンの存在は、1H−NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。分岐鎖状ポリプロピレン(H)は、α晶核剤としての作用を有しながら、一定範囲の添加量であれば結晶形態による粗面形成も可能となる。詳しくは、溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成するポリプロピレンの球晶サイズを小さく制御でき、高温耐電圧特性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の含有量は1〜10質量%であることが好ましく、2〜9質量%であるとより好ましく、3〜8質量%であると特に好ましい。分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の含有量を1質量%以上とすると、溶融ポリマーをシート状に形成する際に球晶サイズが大きくなり過ぎるのを防ぎ、本発明の表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。また、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)の含有量が10質量%以下であると、二軸配向ポリプロピレンフィルムとしての立体規則性が低下するのを防ぎ、高温耐電圧を保ちやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることも好ましい。
上記した添加剤の中で、酸化防止剤の種類、および含有量の選定は長期耐熱性の観点から重要である。すなわち、酸化防止剤としては、立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。具体的には、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASFジャパン社製Irganox(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、BASFジャパン社製Irganox1010:分子量1177.7)などを単独使用、もしくは併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン樹脂組成物全量に対して0.03〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.9質量%であるとより好ましく、0.15〜0.8質量%であるとさらに好ましく、0.15〜0.6質量%であると特に好ましい。ポリプロピレン樹脂組成物中の酸化防止剤含有量を0.03質量%以上とすると、酸化防止の効果が得られやすく、長期耐熱性を保ちやすい。一方、ポリプロピレン樹脂組成物中の酸化防止剤含有量が1.0質量%以下とすると、高温耐電圧特性を保ちやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、灰分が50ppm(質量基準、以下同じ)以下であることが好ましく、40ppm以下であればより好ましく、30ppm以下であればさらに好ましく、20ppm以下であれば特に好ましい。灰分が50ppm以下であると、二軸配向ポリプロピレンフィルムの高温耐電圧特性を保ちやすい。灰分を上記の範囲とするためには、触媒残渣の少ない原料を用いることが重要であるが、製膜時の押出系からの汚染を極力低減する方法、例えば製膜を開始する前に未劣化のポリプロピレン樹脂でポリマーが流れる経路を十分洗浄する方法を好ましく採用することができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面の表面ぬれ張力が38〜52mN/mであることが好ましく、40〜50mN/mであるとより好ましく、42〜48mN/mであるとさらに好ましい。表面ぬれ張力が38mN/m以上であると、金属蒸着する際に金属と十分に密着させやすい。一方、表面ぬれ張力が52mN/m以下であると、高温耐電圧特性を保ちやすい。なお、ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、表面ぬれ張力が30mN/m程度である。表面ぬれ張力を上記の範囲内とするためには、製膜時において、二軸延伸後に表面処理を施す方法が好ましく採用される。具体的には、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理などを採用することができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上記した高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)からなるポリプロピレン樹脂組成物をシート状に成型し、二軸延伸することによって得ることが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、製膜安定性、厚み均一性の観点でテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、上記した高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)をドライブレンドして単軸の溶融押出機に供給し、200〜260℃にて溶融押出を行う。次に、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて、異物や変性ポリマーなどを除去する。そしてTダイよりキャストドラム上に吐出してキャストシートを形成し、冷却ロールで冷却させる。
キャストドラムの温度は、β晶および球晶を適切に生成させる観点から60〜100℃であることが好ましく、65〜95℃であるとさらに好ましく、70〜90℃であればさらに好ましい。キャストドラム温度を60℃以上とすることで、キャストシート中に形成されるβ晶が少なくなり過ぎるのを防ぎ、二軸延伸後に得られるフィルムの滑り性を保つため、製膜および加工時のフィルム搬送工程における搬送シワの発生やフィルムロールの巻姿の悪化を防ぐことができる。一方、キャストドラム温度を100℃以下とすることで、キャストシート中にβ晶が過剰に形成されるのを防ぐことができ、製膜および加工時のフィルムの搬送工程における蛇行の発生やフィルムロールの巻姿の悪化を防ぎやすくなる。
Tダイから吐出された溶融シートがキャストドラムに着地し、ドラムに密着している時間は1〜3秒であることが好ましい。密着している時間を1秒以上とすると、溶融シートを固化しやすく、その後の延伸工程で破断するのを防ぎやすい。一方、密着している時間を3秒以下とすると、キャストシート中にβ晶が過剰に形成されるのを防ぐことができ、製膜および加工時のフィルムの搬送工程における蛇行の発生やフィルムロールの巻姿の悪化を防ぎやすくなる。
溶融シートをキャストドラムへ密着させる方法としては、静電印加法、エアーナイフ法、ニップロール法、水中キャスト法などの手法を採用することができるが、厚みむら抑制、高速製膜化、フィルムの表面形状制御の観点からエアーナイフ法が好ましい。エアーナイフのエアー温度は60〜120℃であることが好ましい。エアーナイフ温度を60℃以上とすることで、キャストシート中に形成されるβ晶が少なくなり過ぎるのを防ぎ、二軸延伸後に得られるフィルムの滑り性を保ち、製膜および加工時のフィルム搬送工程において搬送シワの発生やフィルムロールの巻姿の悪化を防ぎやすくなる。一方、エアーナイフ温度を120℃以下とすることで、キャストシート中にβ晶が過剰に形成されるのを防ぐため、製膜および加工時のフィルムの搬送工程における蛇行の発生やフィルムロールの巻姿の悪化を防ぎやすくなる。
キャストドラム温度とエアーナイフ温度の温度差は、キャストシート両面に同等なβ晶を形成する観点から、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であるとさらに好ましい。キャストドラム温度とエアーナイフ温度の温度差を20℃以下とすると、フィルムの表裏で異なる凹凸が形成されるのを防ぎ、フィルムの表裏で滑り性が同等となりやすく、コンデンサ素子加工時の巻取り工程にて巻込みエアー量が安定し、熱処理工程後にフィルムの層間間隙やエアー量が均一となりやすく、コンデンサ使用時に保安性が効きすぎる、もしくは、効きにくくなるのを防ぐため、コンデンサの寿命が低下しにくい。
キャストシートの冷却温度は10〜40℃であることが好ましい。冷却温度を10℃以上とすると、その後の縦延伸工程でフィルムを所望の温度まで上昇させやすく、縦延伸工程で破断するのを防ぎやすい。一方、冷却温度を40℃以下とすると、キャストシート中の結晶形成を停止しやすく、延伸工程後に得られるフィルムの表面形状が長手方向にばらつくのを防ぎやすい。
次に、縦延伸工程にてキャストシートを長手方向に延伸する。具体的にはキャストシートを125〜145℃に制御したロールに通し、ロール間の周速差によって所定の延伸速度、延伸倍率で長手方向に延伸する。
長手方向の延伸倍率は4.0〜7.0倍であることが好ましく、5.0〜7.0倍であるとさらに好ましい。延伸倍率を高くするほどフィルム表面形状は均一となり高温耐電圧特性にも優れる。縦延伸倍率を7.0倍以下とすると、縦延伸工程でのフィルム破断や次の横延伸工程でフィルム破れを防ぎやすい。
長手方向の延伸速度は、均一延伸、安定製膜の観点から1,000,000〜3,500,000%/分であることが好ましく、1,000,000〜3,000,000%/分であるとより好ましく、1,500,000〜3,000,000%/分であるとさらに好ましく、2,000,000〜3,000,000%/分であると特に好ましい。長手方向の延伸速度を1,000,000%/分以上とすると、均一なフィルム表面形状が得られやすく、高温耐電圧特性を保ちやすい。一方、長手方向の延伸速度が3,500,000%/分以下とすると、製膜時のフィルム破断を防ぎやすい。なお、長手方向の延伸速度の計算方法は、下記式(2)で表される。なお、回転ロール方式で延伸する際の延伸区間は、周速差のあるロール間の接線距離とし、延伸速度は延伸区間内で均一であると仮定する。
長手方向の延伸速度(%/分)=(MDX−1)×100/(L/V) ・・・(2)
MDX:長手方向の延伸倍率(倍)
L:延伸区間距離(m)
V:延伸後の製膜速度(m/分)
フィルムの長手方向への延伸の際には、フィルム幅が減少する所謂ネックダウンと呼ばれる現象が見られるが、厚み斑の観点で、ネックダウン率(延伸後のフィルム幅/延伸前のフィルム幅×100)は90〜99%であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得るためには、縦延伸工程後に縦延伸シートに高温加圧処理をすることが好ましい。一般的にβ晶法を利用する二軸配向ポリプロピレンフィルムに特徴的なクレーター状の表面凹凸は、まず縦延伸工程でβ晶をα晶へ転移させた際に縦延伸シート表面にくさび型の凹部が形成され、次に横延伸工程でくさび型の凹部が延伸され、凹部の際が突起状に変形することで形成される。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面凹凸を得るためには、この横延伸工程での突起変形を抑制することが好ましく、具体的には、縦延伸後に縦延伸シートを温度制御した搬送ロール上に通し、搬送ロールの反対側から温度制御したニップロールで一定圧力を加え、縦延伸フィルム表面のくさび型の凹部を部分溶融させることが好ましい。搬送ロールの温度は100〜140℃であることが好ましく、110〜130℃であるとより好ましい。搬送ロール温度が100℃以上であると、くさび型の凹部の部分溶融が起こりやすく、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)が得られやすい。一方、搬送ロール温度が140℃以下であると、縦延伸シートの配向が低下するのを防ぎ、高温での耐電圧を保ちやすい。
ニップロールの温度は100〜140℃であることが好ましく、110〜130℃であるとより好ましい。ニップロール温度を100℃以上とすると、くさび型の凹部の部分溶融が起こりやすく、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)を得られやすい。一方、ニップロール温度を140℃以下とすると、縦延伸シートの配向が低下するのを防ぎ、高温での耐電圧を保ちやすい。
ニップロールの圧力は0.30〜0.60MPaであることが好ましく、0.35〜0.55MPaであるとより好ましい。ニップロール圧力を0.30MPa以上とすると、くさび型の凹部の部分溶融が起こりやすく、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面凹凸(算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面)を得られやすい。一方、ニップロール圧力を0.60MPa以下とすると、くさび型の凹部の部分溶融が起こり過ぎるのを防ぎ、横延伸後にフィルムが過剰に平滑化するのを防ぎやすい。
しかしながら、縦延伸後の縦延伸シートは横延伸工程でクリップに把持させるエッジ部の成型が不安定であるため、縦延伸後に室温以下に冷却することが重要である。したがって、縦延伸後に上記の高温加圧処理を行うと、縦延伸シートのエッジ部の成型が不安定となり縦延伸時にシートが破断しやすい。そこで、上記の高温加圧処理を行う場合には、縦延伸直後にエッジ部のみを室温以下に冷却することが好ましい。具体的には、縦延伸シートのエッジ部のみを選択的に冷却するエアーブロアを設置することが好ましい。エアーブロアのエアー温度は30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。エアー温度を30℃以下とすると、縦延伸シートのエッジ部を十分に冷却でき、成型不良による縦延伸シートの破断を防ぎやすい。
次に、縦延伸シートのフィルム端部をクリップで把持させ、温度140〜165℃に制御したテンター式延伸機にて延伸倍率8〜15倍、延伸速度10,000〜45,000%/分で幅方向に延伸する。幅手方向の延伸速度の計算方法は、下記式(3)で表される。
幅手方向の延伸速度(%/分)=(TDX−1)×100/t ・・・(3)
TDX:幅手方向の延伸倍率(倍)
t:幅手方向の延伸時間(分)
さらに、幅方向に5〜15%弛緩しつつ、温度150〜170℃で熱固定する。
次に、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムに空気中、窒素中、炭酸ガス中、あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行い、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、端部を除去したフィルムを巻取機で巻取る。最後に、スリッターにて、得られたフィルムをスリットし、フィルムロールとしてコアに巻回し、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体として好ましく用いられるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には、電極構成の観点では箔巻コンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含有させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、巻回式であっても積層式であっても構わない。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく用いられる。
本発明において、上記した二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとすることが好ましい。その方法は特に限定されないが、例えば、当該フィルムの少なくとも片面にアルミニウムを蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となるアルミニウム蒸着膜などの金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロム、および亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。
金属膜積層フィルムの金属膜の厚さは、フィルムコンデンサの電気特性とセルフヒール性の観点から20〜100nmであることが好ましい。また、同様の理由により、金属膜の表面抵抗値が1〜20Ω/□であることが好ましい。表面抵抗値は、使用する金属種と膜厚で制御可能である。
本発明では、必要により金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でエージング処理を行ったり、熱処理を行ったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面にポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
このようにして得られた金属膜積層フィルムは、種々の方法で積層もしくは巻回してフィルムコンデンサを得ることができる。つまり本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムからなる。以下では巻回型コンデンサの好ましい製造方法を次に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを真空蒸着する。その際、フィルムの長手方向に走るマージン部を有するストライプ状にアルミニウムを蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有したテープ状の巻取リールを作製する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージン、および右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し巻回体を得る。巻回体を熱処理後、幅方向の両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、車輌用、家電用(テレビや冷蔵庫など)、一般雑防用、自動車用(ハイブリッドカー、パワーウインドウ、ワイパーなど)、および電源用など多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレン樹脂試料を溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
A.測定条件
装置:Bruker社製 DRX−500
測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm
(2)溶融流動指数(MFR)
JIS K 7210−1(2014)に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定した。
(3)溶融張力(MS)
株式会社東洋精機製作所メルトテンションテスター(キャピラリー直径2.1mm、シリンダー径9.55mm)を用いて、ポリプロピレン樹脂を230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出ストランドし、このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力(MS)とした。
(4)冷キシレン可溶部(CXS)
ポリプロピレン樹脂0.5gを135℃の沸騰キシレン100mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶化させる。ろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法で定量した。沸騰キシレン溶解前のポリプロピレン樹脂の質量をX0(g)、ろ過液に溶解しているポリプロピレン成分の質量をX(g)としたとき、冷キシレン可溶部(CXS)を下記式(4)から求めた。
CXS(質量%)=(X/X0)×100 ・・・(4)
(5)算術平均高さ(Sa)、山部の実体体積(Vmp)、コア部の空隙容積(Vvc)、谷部の空隙容積(Vvv)
株式会社菱化システム社製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan2.0(型式:R3300GL−Lite−AC)を用いて測定した。フィルムロールから採取したサンプルにおいて、フィルムの幅方向の中心位置で、長手方向に無作為に抽出した10箇所を測定箇所とし、その平均値をそのサンプルの算術平均高さ(Sa)、山部の実体体積(Vmp)、コア部の空隙容積(Vvc)、谷部の空隙容積(Vvv)とした。1回の測定の詳細条件については下記の通りとした。なお、1回の測定に対して1視野(視野面積1,252μm×939μm=1,175,628μm)の観察を行った。
A.測定条件
CCDカメラ:SONY HR−57 1/2”
対物レンズ:10X
鏡筒:0.5X BODY
波長フィルター:530 white
測定モード:Wave
視野サイズ:640×480
スキャンレンジ:(スタート)5μm、(ストップ)−5μm
B.測定方法
フィルム測定には専用のサンプルホルダーを使用する。サンプルホルダーは中心に円形の穴が空いた脱着可能な2枚の金属板であり、その間にシワがない状態でフィルムを挟み固定し、中央円形部のフィルムについて測定した。
C.解析方法
上記測定により得られたデータをVertScan2.0の画像解析ソフトVS−Viewerで解析した。まず、メディアンフィルター(5×5)によりノイズを除去し、カットオフ値250μmのガウシアンフィルターによりうねり成分を除去した。次いで、「ISOPara」機能により、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)、山部の実体体積(Vmp)、コア部の空隙容積(Vvc)、谷部の空隙容積(Vvv)を算出した。なお、「ISOPara」機能において、S−Filterを6.0μmに設定した。
(6)厚み(t)
JIS C 2330(2014)に準じ、マイクロメーター法により厚みを測定した。
(7)灰分
初期質量W0の二軸配向ポリプロピレンフィルムを白金坩堝に入れ、まずガスバーナーで十分に燃焼させた後、750〜800℃の電気炉で1時間処理して完全に灰化し、得られた灰の質量W1を測定し、下記式(5)から算出した。
灰分=(W1/W0)×1,000,000(ppm) ・・・(5)
(8)コンデンサ製造における素子加工性
二軸配向ポリプロピレンフィルムのコロナ処理を施した側の面に株式会社ULVAC社製真空蒸着機でアルミニウムを15Ω/□となるように真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状にアルミニウムを蒸着した(蒸着部の幅39.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)。ついで、各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左右いずれかの端部に0.5mmのマージン部を有する全幅20mmのテープ状巻取リールを作製した。得られたリールの左マージン、および右マージンのもの各1本ずつを幅方向に蒸着部分がマージン部より0.5mmはみ出すように2枚を重ね合わせて巻回し、静電容量10μFの巻回体を得た。なお、素子巻回には株式会社皆藤製作所社製KAW−4NHBを使用した。最後に140℃の減圧雰囲気中で10時間熱処理し、コンデンサ素子を得た。このコンデンサ素子を外観や内部にシワや形状のゆがみのあるものを不合格とし、不合格となったものの数により素子加工性を評価した。なお、の製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした。なお、コンデンサ素子は50個作製し、下記判断基準により評価した。
◎:不良品なし
〇:不良品1個
△:不良品2〜3個以上
×:不良品4個以上。
(9)コンデンサ特性の評価
二軸配向ポリプロピレンフィルムのA面側に、株式会社ULVAC社製真空蒸着機でアルミニウムを15Ω/□となるように真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状にアルミニウムを蒸着した(蒸着部の幅39.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)。ついで、各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左右いずれかの端部に0.5mmのマージン部を有する全幅20mmのテープ状巻取リールを作製した。得られたリールの左マージン、および右マージンのもの各1本ずつを幅方向に蒸着部分がマージン部より0.5mmはみ出すように2枚を重ね合わせて巻回し、静電容量10μFの巻回体を得た。なお、素子巻回には株式会社皆藤製作所社製KAW−4NHBを使用した。最後に130℃の減圧雰囲気中で10時間熱処理し、幅方向の両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接してコンデンサ素子を得た。次にコンデンサ素子10個においてコンデンサ特性を評価した。まず、室温にて静電容量(C0)を測定した。次いで、125℃の高温下でコンデンサ素子に200VDC/μm(厚み(t)が2.0μmのとき、印加電圧は400V)の電圧を400時間印加した。その後、室温にて静電容量(C)を測定し、電圧印加前後の静電容量の変化率(ΔC)を下記式(6)から算出した。
ΔC=((C0−C)/C0)×100 ・・・(6)。
コンデンサ素子10個の電圧印加前後の静電容量の変化率(ΔC)の平均値をそのサンプルの変化率とし、下記判断基準により評価した。
◎:ΔCが2%未満
〇:ΔCが2%以上3%未満
△:ΔCが3%以上5%未満
×:ΔCが5%以上。
(実施例1)
メソペンタッド分率が0.980で、溶融流動指数(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が1.5wt%、重量平均分子量40万、数平均分子量が6.5万である株式会社プライムポリマー製ポリプロピレン樹脂(以下、高立体規則性ポリプロピレン(A1)と表記)(log(MS)≦−0.56log(MFR)+0.74の関係を満たす)を90質量%、メソペンダット分率(mmmm)が0.50、溶融流動指数(MFR)が50g/10分である出光興産株式会社製S901(以下、低立体規則性ポリプロピレン(B1)と表記)を5質量%、および、溶融流動指数(MFR)が2.5g/10分であるBorealis社製WB135HMS(以下、分岐鎖状ポリプロピレン(H1)と表記)(log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74の関係を満たす)を5質量%ドライブレンドし、単軸の溶融押出機に供給した。温度250℃でポリプロピレン樹脂を溶融し、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去した。次いで溶融樹脂を、T型スリットダイよりシート状に溶融押出し、温度80℃に保持されたキャストドラム上でエアー温度80℃のエアーナイフにより密着さ固化させた後、温度30℃に保持した冷却ロール上で冷却した。なお、キャストドラムと溶融シートが密着していた時間はそれぞれ1.5秒であった。ここで、キャストドラムに接地する側の面をドラム面(D面)、接地しない側の面を非ドラム面(非D面)とした。
得られたキャストシートを温度140℃の縦延伸ロールで延伸速度2,500,000%/分で長手方向に5.5倍延伸し、縦延伸シートの端部をエアー温度30℃のエアーブロアで冷却しながら、温度120℃の搬送ロール上において温度120℃のニップロールで0.45MPaで加圧し、その後室温まで冷却した。次に縦延伸シート端部をクリップで把持して160℃で幅方向に延伸速度20,000%/分で11倍延伸した。さらに、158℃で幅方向に12%の弛緩を行った。その後、室温まで除冷し、フィルムのドラム面(D面)側に25W・min/mの処理強度でコロナ放電処理を施し、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、端部を除去したフィルムを巻取機で巻取った。次いで、スリッターにてフィルム幅0.82mとなるようにスリットし、長手方向に30,000mをフィルムロールとしてコアに巻回し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(実施例2)
縦延伸後の搬送ロールとニップロールの温度を100℃とした以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(実施例3)
縦延伸後の搬送ロールとニップロールの温度を140℃とした以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(実施例4)
高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A1)を95質量%、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H1)を5質量%とし、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B1)を含有しないこと以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(実施例5)
縦延伸後に搬送ロールとニップロールで加圧する際のニップロールの圧力を0.60MPaとした以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(比較例1)
低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B1)と分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H1)を含有せず、縦延伸後の高温加圧処理をしないこと以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(比較例2)
高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A1)を95質量%、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H1)を5質量%とし、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B1)を含有せず、さらに、縦延伸後の高温加圧処理をしないこと以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(比較例3)
縦延伸後の高温加圧処理時に縦延伸シートのエッジ部を冷却しないこと以外は実施例1と同様に作成したが、縦延伸工程で破断し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。
(比較例4)
縦延伸後の高温加圧処理における搬送ロールの温度を80℃、ニップロールの温度を80℃とした以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(比較例5)
高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A1)を95質量%、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B1)を5質量%とした以外は比較例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
(比較例6)
縦延伸後高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A1)を95質量%、低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B1)を5質量%とした以外は実施例1と同様に作成し、厚み2.0μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。なお、山部の実体体積(Vmp)の結果からA面はドラム面(D面)側であった。
Figure 2019172973
Figure 2019172973
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高い生産性、加工性、耐電圧性を有するため、フィルムコンデンサの誘電体として好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、厚み(t)が1.0〜3.0μmであり、かつ算術平均高さ(Sa)が10〜70nm、山部の実体体積(Vmp)が0.0010〜0.0050ml/m、コア部の空隙容積(Vvc)が0.010〜0.090ml/mである表面を両面に有することを特徴とする二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  2. 山部の実体体積(Vmp)が大きい方をA面、小さい方をB面としたとき、A面のコア部の空隙容積(Vvc(A))とB面のコア部の空隙容積(Vvc(B))の和(Vvc(A)+Vvc(B))が0.060〜0.140ml/mである、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  3. 両面において、谷部の空隙容積(Vvv)が0.0010〜0.0090ml/mである、請求項1または2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  4. 山部の実体体積(Vmp)が大きい方をA面、小さい方をB面としたとき、A面の谷部の空隙容積(Vvv(A))とB面の谷部の空隙容積(Vvv(B))の比(Vvv(A)/Vvv(B))が0.80〜1.20である、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  5. 高立体規則性ポリプロピレン樹脂(A)を主成分として含み、さらに低立体規則性ポリプロピレン樹脂(B)及び分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(H)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  6. コンデンサ用誘電体として用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  7. 請求項6に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を形成してなる金属膜積層フィルム。
  8. 請求項7に記載の金属膜積層フィルムからなるフィルムコンデンサ。
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