JP2016188360A - 二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ - Google Patents

二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高電圧用コンデンサ用途において優れた耐電圧性と、薄膜生産においても優れた生産性を兼ね備えた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供せんとするものである。【解決手段】メソペンタッド分率が98.6〜99.5%であり、分子量分布(Mw/Mn)が8未満のポリプロピレン樹脂Aと、メソペンタッド分率が30〜60%であり、MFRが40〜60g/10minのポリプロピレン樹脂Bを含む二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2であり、マイクロメータ法による厚みが0.5μm〜2.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルムとする。【選択図】なし

Description

本発明は、工業用等に好適な二軸配向ポリプロピレンフィルムに関するものであり、さらに詳しくはコンデンサ用誘電体の薄膜フィルムとして、高い耐電圧性を維持しつつ、生産性に優れているコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。
この中でもコンデンサ用途は、その優れた耐電圧特性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。
最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような市場要求、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途の要求を受け、二軸配向ポリプロピレンフィルムの耐電圧性・耐熱性を向上させ、生産性、加工性を維持させつつ、一層の薄膜化が必須な状況となってきている。
かかる二軸配向ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性、生産性、加工性の観点から表面を適度に粗面化する必要があるが、これは特にフィルムの滑り性や油含浸性の向上あるいは蒸着コンデンサにおいては保安性を付与するため特に重要である。ここで、保安性とは、該誘電体フィルム上に形成した金属蒸着膜を電極とする金属蒸着コンデンサにおいて、異常放電時に蒸着金属が放電エネルギーによって飛散することで絶縁性を回復させ、ショートを防止することでコンデンサの機能を維持する乃至は破壊を防止する機能であり、安全性からも極めて有用な機能である。
かかる粗面化方法としては、これまでエンボス法やサンドブラスト法などの機械的方法、溶剤によるケミカルエッチング等の化学的方法、ポリエチレン等の異種ポリマーを混合したシートを延伸する方法、β晶を生成させたシートを延伸する方法(例えば特許文献1、2参照)等が提案されている。
しかし、機械的方法および化学的方法では粗さ密度が低く、また通常の条件にてβ晶を生成させたシートを延伸する方法では粗大突起が生じやすく、粗さ密度、粗大突起、突起個数という点で必ずしも十分とはいえない場合があった。また、これらの方法で粗面化したフィルムは、コンデンサ形成時にフィルム層間への油含浸が不十分となり部分的に未含浸部分を生じやすく、コンデンサ寿命が低下する場合がある。ポリエチレン等の異種ポリマーを配合したシートを延伸する方法では、コンデンサ形成時に気泡の残存は少ないが、該フィルムをリサイクルした場合に異種ポリマーが悪影響を及ぼす場合があり、リサイクル性に劣るという問題がある。
また、耐電圧性を向上させるため、高立体規則性のポリプロピレン樹脂を使用し、面配向を向上させることが提案されている(特許文献3参照)。しかし、ポリプロピレン樹脂の立体規則性が高いと、フィルムの延伸性が悪くなり、薄膜化が困難となる。そのため、延伸性の向上と表面改質のため分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を添加する方法が提案されている(特許文献4〜7参照)。しかしながら、分枝鎖状ポリプロピレンを添加するとフィルム表面が粗面化されるため、平滑な表面を得ることが困難である。
特開2001−324607号公報 特開2001−129944号公報 特開平10−156939号公報 特許第5320115号公報 特許第5664137号公報 特許第4962082号公報 特許第4940986号公報
本発明は、高電圧用コンデンサ用途において優れた耐電圧性と、薄膜生産においても優れた生産性を兼ね備えた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供せんとするものである。
上記課題を解決するための本発明は以下の構成を有する。
(1)メソペンタッド分率が98.6〜99.5%であり、分子量分布(Mw/Mn)が8未満のポリプロピレン樹脂Aと、メソペンタッド分率が30〜60%であり、MFRが40〜60g/10minのポリプロピレン樹脂Bを含む二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2であり、マイクロメータ法による厚みが0.5μm〜2.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(2)フィルム全体に対するポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの総含有量が95質量%以上である上記(1)に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(3)少なくとも一方の面の光沢度が125%〜150%である上記(1)または(2)に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が設けられてなる金属膜積層フィルム。
(5)金属膜の表面電気抵抗値が1〜20Ω/□の範囲内にある、上記(4)に記載の金属膜積層フィルム。
(6)上記(4)または(5)に記載の金属化フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
本発明によれば、コンデンサ用途に好適である薄膜フィルムであり、耐電圧性に優れ、且つ生産性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することができるので、特にコンデンサ用途に、好ましくは自動車用に好適である。
以下、さらに詳しく本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサについて説明する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに使用されるポリプロピレン樹脂は、メソペンタッド分率が98.6〜99.5%であり、分子量分布(Mw/Mn)が8未満であるポリプロピレン樹脂Aと、メソペンタッド分率が30〜60%であり、MFRが40〜60g/10minのポリプロピレン樹脂Bとを含んでいる。また、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2である。
ポリプロピレン樹脂Aは、メソペンタッド分率が99.5%を超えると、薄いフィルムの生産性が極端に低下する場合があり、98.6%未満であると、耐電圧性が低下する場合がある。また、ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布(Mw/Mn)が8以上の場合、低分子量成分が多くなるため、耐電圧性が低下する場合がある。
かかるポリプロピレン樹脂Aとしては、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよい。またプロピレンと共にポリプロピレンと他の単量体との共重合体が含まれていてもよい。このような単量体成分としては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、耐絶縁破壊特性、寸法安定性の点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では30質量%未満とするのが好ましい。
また、かかるポリプロピレン樹脂Aやそのペレットには、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は長期耐熱性の観点から行うことが好ましい。たとえば、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(たとえばBASFジャパン社製“Irganox”(登録商標)以下同じ)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASFジャパン社製 “Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン樹脂全量に対して0.03〜1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングにより、コンデンサ素子に悪影響を及ぼす場合がある。より好ましい含有量は0.1〜0.9質量%であり、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
また、上記ポリプロピレン樹脂Bのメソペンタッド分率は30〜60%であり、好ましくは35〜55%である。メソペンタッド分率が60%を超えると、延伸工程でフィルムが延伸し難くなり、フィルム破れする場合があり、30%未満では耐電圧性が低下する場合がある。また、MFRは、40〜60g/10minであり、好ましくは45〜55%である。60g/10minを超えると、耐電圧性が低下する場合があり、40g/10min未満では、延伸工程でフィルムが延伸し難くなり、フィルム破れする場合がある。かかるポリプロピレン樹脂Bとしては、例えば出光興産株式会社製“エルモーデュ”(L-MODU)(登録商標)が例示される。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては、このようなポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2で混合されていることで、コンデンサ特性に好適な延伸性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムが得られる。質量比は、好ましくは、0.01〜0.15であり、さらに好ましくは、0.03〜0.10である。質量比が0.005未満では、ポリプロピレン樹脂Bの効果が発揮されず、延伸工程でフィルムが延伸し難くなり、フィルム破れする場合があり、質量比0.2を超えると、耐電圧性が低下する場合がある。
更に、フィルム全体に対するポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの総含有量が95質量%以上であることが好ましい。更に好ましくは98質量%以上である。95質量%未満では、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの効果が発揮されず、コンデンサ特性に好適な延伸性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムが得られないことがある。
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、マイクロメータ法による厚みが0.5〜2.3μmであることが好ましい。フィルムの厚みは、1.0μm以上、さらに1.4μm以上が好ましい。また2.0μm以下、さらに1.8μm以下が好ましい。フィルムの厚みが薄すぎると、機械的強度や絶縁破壊強度、耐熱性に劣る場合がある。また、フィルムの厚みが厚すぎるとコンデンサ用の誘電体として用いた場合、体積当たりの容量が小さくなる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサの高い耐電圧性を得るには、フィルム表面を平滑にすることが好ましい。但し、コンデンサにした時に最適な保安性を得るには、フィルム表面を適度に粗面化することが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の面の光沢度は125〜150%の範囲であることが好ましく、より好ましくは130〜145%である。光沢度が低いということはフィルム表面での光散乱が大きくなることである。このことは、フィルム表面の凹凸が緻密になっていることを意味する。光沢度が過度に低すぎると、突起高さ、突起個数が増えることによって、フィルム層間の滑り性が高まり、またコンデンサとして高温での寸法安定性が低下しやすくなる。一方、光沢度が高すぎるとフィルム層間が非常に滑りにくく扁平状のコンデンサ素子に成形することが難しくなる。また巻回コンデンサの場合、充分なフィルム層間のクリアランスを維持できずに保安性が低下する等の問題が生じる場合がある。少なくとも一方の面の光沢度が上記の範囲であることにより、高温での耐電圧性と保安性の両立が可能となるので好ましい。
また、フィルム表面に突起を形成することも好ましい。その方法として、結晶変態を利用する手法が好適である。この手法は、ポリプロピレンに相溶しない樹脂や無機、または有機粒子等を添加する方法に比べて、電気特性を低下させる不純物を添加する必要がなく、絶縁破壊電圧等の電気特性を悪化する可能性が低いために好ましく採用される。以下、結晶変態により得られる表面形態について説明する。
結晶変態による面形成法とは文献(M.Fujiyama et.al., Journal of Applied Polymer Science 36, P.985-1048(1988)等に記載のポリプロピレンが有する2つの結晶系を利用して表面形成を行うものであり、α晶(単斜晶系、結晶密度0.936g/cm)系の球晶とβ晶(六方晶系、結晶密度0.922g/cm)系の球晶を未配向延伸シートに生成させておき、配向延伸工程で、熱的に不安定なβ晶をα晶に結晶変態させることで、フィルム表面に凹凸を形成するものである。本手法により得られる表面凹凸のそれぞれは球晶の変形に起因するものであることから、この形状は円弧状に形成されたクレータ状である。すなわち、凸部が円形や楕円形の形状に並んだ形態が観察される。当該結晶変態により得られる典型的な表面形状は、楕円状に形成されたクレータ形状が多数存在することで形成され、フィルム表面から突起した部分(凸部)は円弧状に連なることでクレータ形状を有するものである。更に、本技術によればβ晶系球晶が存在しないところでは凹凸が形成されず比較的平坦になることが特徴である。該円形弧状突起(クレータ)は二軸延伸する際の縦横の延伸倍率比に対応し、その縦横比が変化し、縦横比が1、すなわち等方的な延伸ではほぼ円状となり、縦横比が大きくなるに従い扁平化する。通常、逐次2軸延伸法で得られる形状はフィルムの横方向(フィルムロールの幅方向)に長軸を有する。また、球晶のでき方によっては、形状の異なるクレータが複数重畳した形状を示すこともあり、また円形弧が環状に閉じられること無く弓状ないしは半円形弧状の形状を呈することもある。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を含有できる。α晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナナクリドン系化合物等)等が例示される。ただし、本発明ではこれらの結晶核剤を添加することにより、結晶性やそれに伴う熱特性、寸法安定性、表面粗さが得難くなったり、高温での体積固有抵抗の低下等、電気特性にも悪影響を与える可能性があり、添加量としては、フィルム全体に対して0.1質量%未満とするのが好ましく、さらに好ましくは実質的に添加されていないことが好ましい。
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの灰分は50ppm以下(質量基準、以下同じ)であることが好ましく、より好ましくは30ppm以下であり、特に好ましくは20ppm以下である。かかる灰分が多すぎると、該フィルムの耐絶縁破壊特性が低下し、コンデンサとした場合に絶縁破壊強度が低下する場合がある。灰分をこの範囲とするためには、触媒残渣の少ない原料を用いることが重要である。その他に製膜時の押出系からの汚染も極力低減するように図るべきである。たとえばブリード時間を1時間以上かけ、実際に製膜を開始する前にポリマーで経路を十分洗浄する方法を採用できる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプが限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、巻回式であっても積層式であっても構わない。しかしながら本発明のフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく使用される。
なお、ポリプロピレンフィルムは通常、表面濡れ張力が低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属付着力を良好とする目的で、事前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜50mN/m、好ましくは39〜48mN/m程度とすることが好ましい。この表面濡れ張力の範囲であると、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、溶融押出しし、シート化し、二軸延伸することによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、延伸工程の安定性、得られるフィルムの厚みの均一性、フィルムの表面形状を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、ポリプロピレン樹脂を準備する。ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2になるようにドライブレンドし、フィルム全体に占める総樹脂量(A+B)が95質量%以上となるようにした混合樹脂を押出機にて溶融押出しし、濾過フィルターを通した後、230〜260℃の温度でスリット状口金から押出し、キャストドラム上で固化させ未配向延伸シートを得る。ここで、キャストドラムの回転速度は30〜80m/minが好ましく、より好ましくは40〜70m/minである。スリット状口金から未延伸シートを引き取るキャストドラムの引き取り速度が速いほうが、未延伸シートの結晶性が高くなり、フィルムの絶縁破壊電圧が向上する。更に、口金から押出された未配向延伸シートのキャストドラムへの密着方法としては、結晶性を高めるためにはエアーで未延伸フィルムを押し付け密着させる方法が好ましい。従来のエアーナイフ法では、局所的にエアーを当てて未延伸シートをキャストドラムに密着させていたが、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムでは、キャストドラムの半円周上に、キャストドラムから50〜100mm離れた位置に、段階的にエアーを吹き付ける装置を設置し、未延伸シートにエアーを吹き付け、未延伸シートをキャストドラムに密着させることが好ましい。吹き付けるエアー温度は、40〜120℃が好ましく、さらに好ましくは50〜110℃である。エアー温度が高すぎるとキャストドラム上で固化せず、シート状に成形できない場合がある。エアー温度が低すぎると結晶生成が不十分となり目的とする表面の粗化度を得ることが困難となる場合がある。また、未延伸シートへのエアーの吹き付け時間は、2〜6秒が好ましく、さらに好ましくは2.3〜4.5秒である。エアーの吹き付け時間が短いと結晶性が低くなり、目的とする耐電圧性を得ることが困難である。また、エアーが吹き出す際のエアー速度は、100〜130m/sが好ましい。エアー速度が、100m/s未満の場合は十分なキャストドラムとの密着性が付与できず製膜性が低下し、130m/sを超える場合には、均一なキャストドラムへの密着ができず製膜性、品質ムラ、厚みムラ等の弊害が生じやすい。このように、結晶性を高めることで耐電圧性を高めることが可能になるが、後の工程での配向延伸が困難であったため、本発明ではポリプロピレン樹脂Bを上記のように混合することで、この課題を解決したものである。
ここで、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得るため、β晶を適正に生成せしめる目的で、キャストドラムの温度制御を適切に行うことが好ましい。β晶を効率的に生成せしめるためには、β晶の生成効率が最大となる温度に樹脂を所定時間維持することが好ましく、該温度は通常110〜135℃である。また保持時間としては1秒以上保持することが好ましい。これらの条件を実現するためには樹脂温度や押出量、引き取り速度等に応じて適宜プロセスを決定することができるが、生産性の観点から、キャストドラムの径が保持時間に大きく影響するために、該ドラムの直径は少なくとも1m以上であることが好ましい。更に、選定すべきキャストドラム温度としては、70℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上である。またこのキャストドラム温度は、120℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。キャストドラム温度が高すぎるとフィルムの結晶化が進行しすぎ、後の工程での配向延伸が困難になったり、フィルム内にボイドができ耐絶縁破壊特性が低下する場合がある。
次に、この未配向延伸シートを二軸延伸し、二軸配向せしめる。まず未配向延伸フィルムを120〜150℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを130〜150℃の温度に保ち、この場合、長手方向の延伸倍率として4〜7倍配向延伸した後、室温まで冷却する。延伸方法や延伸倍率は、とくに限定されず用いるポリマー特性により適宜選択される。その後、引き続き該延伸フィルムをテンターに導いて、140〜165℃の温度で幅方向に7〜15倍に配向延伸し、次いで幅方向に7〜15%の弛緩を与える。
フィルムを巻き取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行いフィルム表面の濡れ張力を制御することが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、その表面に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとすることができる。その方法は特に限定されないが、たとえば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アルミニウムを蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となるアルミニウム蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、たとえば、ニッケル、銅、金、銀、クロムおよび亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。
金属膜の厚さは、フィルムコンデンサの電気特性とセルフヒール性の点から20〜100nmの範囲であることが好ましい。また、同様の理由により、金属膜の表面電気抵抗値は1〜20Ω/□の範囲であることが好ましい。表面電気抵抗値は、使用する金属種と膜厚で制御可能である。なお、表面電気抵抗値の測定法は後述する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムでは、必要により、金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でエージング処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
このようして得られた金属膜積層フィルムは、種々の方法で積層もしくは巻回してフィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを真空蒸着する。その際、フィルム長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。この巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車両用、一般家電用(テレビや冷蔵庫など)、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車等含む)および風力発電、太陽光発電用等、多岐に亘っており、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)フィルム厚み
JIS C−2330(2001)の7.4.1.1に従い、マイクロメータ法厚みを測定した。
(2)グロス(光沢度)
JIS K−7105(1981)に準じ、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件で測定した5点のデータの平均値を光沢度とした。
(3)溶融流動指数(MFR)
JIS−K7210(1999)に準じて、測定温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
(4)メソペンタッド分率(mmmm)
試料を溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
A.測定条件
装置:Brukner社製、DRX−500
測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピーク面積から以下のようにピーク面積分割を行い、更に付属ソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク面積分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とした。
尚、測定は5回行い、その平均値をメソペンタッド分率とした。
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm
(5)フィルム絶縁破壊電圧
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、平均値を求め、測定したサンプルのマイクロメータ法フィルム厚み(μm)(上述)で除し、V/μmで表記した。フィルム絶縁破壊電圧は550V/μm以上が使用可能である。
(6)製膜性評価
後述する各実施例および比較例の製膜条件で製膜した時の製膜性について、1日当たりの製膜破れ回数を評価した。製膜破れ回数2回以下/日を「◎」、製膜破れ回数3〜4回/日を「○」、製膜破れ回数5〜6回/日を「△」、製膜破れ回数7回/日以上を「×」とした。◎、○、△が製膜可能レベルであり、×は製膜不可レベルである。
以下、実施例を挙げて本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの効果をさらに説明する。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂Aとしてメソペンタッド分率が99.2%で、分子量分布(Mw/Mn)が6であるプライムポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂と、ポリプロピレン樹脂Bとしてメソペンタッド分率が50%で、MFRが50g/10minである出光興産株式会社製“エルモーデュ”(L-MODU)(登録商標)を用い、質量比がポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.05になるようにドライブレンドした混合樹脂を、フィルム原料全体に対し99質量%占めるように、温度250℃の押出機に供給した。残り1質量%は、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)を0.5質量%とBASFジャパン社製“Irganox”(登録商標)1010を0.5質量%となるように添加した。樹脂温度250℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、キャストロールの回転速度60m/minで引き取った。該溶融シートを90℃に保持された直径1mのキャストドラムに、キャストドラム円周に沿って設置したエアー吹き出し装置からエアーで吹き付けて密着させ固化した。この時エアーの吹き出し温度100℃、吹き付け時間3秒、吹き付けエアー速度120m/sであった。次いで、該シートを徐々に140℃に予熱し、引き続き145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4.8倍に配向延伸した。その際、配向延伸部でラジエーションヒーター出力3.5kWを用い熱量を補い配向延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、配向延伸温度160℃で幅方向に10倍配向延伸し、次いで幅方向に10%の弛緩率で弛緩し、その後室温で5秒間急冷してフィルム厚みが1.5μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに該A面側の表面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性は表1に示すとおりであった。製膜性、フィルム絶縁破壊電圧とも優れるものであった。
(実施例2)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.15とした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.2とした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例4)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.08とし、フィルム厚みを1μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例5)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.18とし、フィルム厚みを0.5μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例6)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.03とし、フィルム厚みを2.3μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂Aとして、メソペンタッド分率98.6%、分子量分布Mw/Mnが7.9のものを用い、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.1とした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例8)
ポリプロピレン樹脂Bとして、メソペンタッド分率30%でMFRが55g/10minのものを用いた以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(実施例9)
ポリプロピレン樹脂Bとして、メソペンタッド分率60%でMFRが42g/10minのものを用いた以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.25とした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂Aとして、メソペンタッド分率98.6%、分子量分布Mw/Mnが8.5のものを用い、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.18とした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.004とし、フィルム厚みを1.0μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(比較例4)
ポリプロピレン樹脂Aとして、メソペンタッド分率98.0%、分子量分布Mw/Mnが5のものを用い、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.2とし、フィルム厚みを1.0μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
(比較例5)
ポリプロピレン樹脂Bとして、メソペンタッド分率92%でMFRが10g/10minのものを用い、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.2とし、フィルム厚みを1.0μmとした以外は実施例1と同様に製膜を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。
Figure 2016188360

Claims (6)

  1. メソペンタッド分率が98.6〜99.5%であり、分子量分布(Mw/Mn)が8未満のポリプロピレン樹脂Aと、メソペンタッド分率が30〜60%であり、MFRが40〜60g/10minのポリプロピレン樹脂Bを含む二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの質量比が、ポリプロピレン樹脂B/ポリプロピレン樹脂A=0.005〜0.2であり、マイクロメータ法による厚みが0.5μm〜2.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  2. フィルム全体に対するポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの総含有量が95質量%以上である、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  3. 少なくとも一方の面の光沢度が125〜150%である、請求項1または2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が設けられてなる金属膜積層フィルム。
  5. 金属膜の表面電気抵抗値が1〜20Ω/□の範囲内にある、請求項4に記載の金属膜積層フィルム。
  6. 請求項4または請求項5に記載の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
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