JP7020393B2 - ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び、フィルムロール - Google Patents

ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び、フィルムロール Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び、フィルムロールに関する。
ポリプロピレンフィルムは、高い耐電圧性や低い誘電損失特性等の優れた電気特性を有し、且つ、高い耐湿性を有する。そのため、広く電子機器や電気機器に用いられている。具体的には、例えば、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、フィルター用コンデンサ(例えば、コンバーター、インバーター等)、平滑用コンデンサ等に使用されるフィルムとして利用されている。
近年、コンデンサの小型化及び高容量化が更に要求されている。コンデンサの体積を変えないで静電容量を向上させるためには、誘電体としてのフィルムを薄くすることが好ましい。そのため、厚さがより薄いフィルムが求められている。
しかしながら、薄いポリプロピレンフィルムは、コンデンサを作製する際の素子巻き加工において、シワや巻きずれを発生し易いという問題がある。そこで、素子巻き加工時の滑り性を向上させ、該素子巻き加工を容易にすることを主な目的として、ポリプロピレンフィルムの表面に微細凹凸を形成し、粗面化が行われる場合がある。
特許文献1には、厚みが1~3μmであり、一方のフィルム表面をA面、他方の面をB面としたとき、A面に存在する突起の0.1mmあたりの個数(Pa)、B面に存在する突起の0.1mmあたりの個数(Pb)、A面の10点平均粗さ(SRzA)、及び、B面の10点平均粗さ(SRzB)が所定の関係を満たしているコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムが開示されている(請求項1参照)。
特許文献1には、上述した構成のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの効果として、薄いフィルムであっても加工適性に優れ、低温(-40℃)から高温(150℃)までの広範囲の雰囲気温度条件下でも高耐電圧性を発揮することが記載されている(段落[0023]参照)。加工適性に関しては、具体的に、素子巻き加工を行った際に、しわやずれの発生割合が少ないことが記載されている(段落[0122]、段落[0123]参照)。
また、特許文献2には、フィルムの両面に突起を有し、各面の突起のうち最も多い突起の高さ(PhZ)が両面ともに100nm以上400nm未満であり、かつ各面の0.1mmあたりの突起個数(Pc)が両面ともに150個以上500個未満である二軸配向ポリプロピレンフィルムが開示されている(請求項1参照)。
特許文献2には、上述した構成の二軸配向ポリプロピレンフィルムの効果として、フィルムの両面に高さの低い突起を多数もった表面を有することにより、特に交流電圧用コンデンサ用途において、高い耐電圧性、好適な素子加工性および優れた鳴き特性を有することが記載されている(段落[0025]参照)。素子加工性に関しては、具体的に、素子巻き加工を行った際に、しわやずれの発生割合が少ないことが記載されている(段落[0098]、段落[0099]参照)。
国際公開第2013/146367号 国際公開第2012/002123号
コンデンサ用ポリプロピレンフィルムは、コンデンサを作製するために素子巻きされる前にも、その製造工程において、ロール状に巻回される工程が存在する。具体的に、未延伸のキャストシートを二軸延伸する工程において、二軸延伸された後のポリプロピレンフィルムは、一旦、ロール状に巻回される。さらに、前記工程においてロール状に巻回されたポリプロピレンフィルムは、その後、巻き戻され(繰り出され)、蒸着膜等の金属層が一方の面に形成され、再び、巻回される。
本発明者らは、コンデンサ用ポリプロピレンフィルムについて鋭意検討を行った。その結果、素子巻き加工時の滑り性を向上させるために表面を粗面化したポリプロピレンフィルムを用いた場合であっても、上記の金属層が形成されたフィルムを巻き戻す際に、蒸着面と非蒸着面とがブロッキングし、フィルムに流れ方向のしわが発生する場合があるという知見を得た。なお、本明細書において、ブロッキングとは、巻回され、接触した上層のポリプロピレンフィルムと下層のポリプロピレンフィルムとが巻回の圧力等で密着することをいう。また、ポリプロピレンフィルムを金属蒸着巻取としてスリット加工を行った際、端面ずれ(巻取時においてフィルムが左右へ蛇行し、小巻取の端面が不揃いになったときのずれ長さ)が大きくなる場合があるという知見も得た。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロール状に巻回された金属層一体型ポリプロピレンフィルムのブロッキングを抑制することが可能なポリプロピレンフィルムを提供することにある。また、本発明は、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサ、及び、当該ポリプロピレンフィルムがロール状に巻回されているフィルムロールを提供することにある。また、本発明は、さらに好ましくは、上記目的に加えて、スリット工程加工性に優れるポリプロピレンフィルム、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサ、及び、当該ポリプロピレンフィルムがロール状に巻回されているフィルムロールも提供する。
本発明者らは、上記知見に関して鋭意検討を行った。その結果、下記構成を採用することにより、ロール状に巻回されたポリプロピレンフィルムのブロッキングを抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。また、下記構成を採用することにより、好ましい場合としてスリット工程加工性にも優れることを見出した。
本発明に係るポリプロピレンフィルムは、
第1の面と第2の面とを有するポリプロピレンフィルムであって、
主成分としてポリプロピレン樹脂を含有し、
前記第1の面のSpk値(Spk)と前記第2の面のSpk値(Spk)との比率Spk/Spkが0.490以上0.730以下であり、
前記第1の面のSvk値(Svk)と前記第2の面のSvk値(Svk)との比率Svk/Svkが0.735以上1.250以下である
ことを特徴とする。
ここで、Svk値、Spk値は、表面性状パラメータ(ISO 25178-2:2007)で定義されるパラメータである。Svk値は、突出山部及び突出谷部をベアリングカーブから取り除いた曲線の下にある突出谷部の平均高さをいう。Spk値は、突出山部及び突出谷部をベアリングカーブから取り除いた曲線の上にある突出山部の平均高さをいう。
ポリプロピレンフィルムは、第1の面と第2の面とのいずれか一方又は両方に金属層が形成され、巻回した際には、金属層が形成された状態で前記第1の面と前記第2の面とが接触することになる。前記構成によれば、第1の面のSpk値(Spk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、及び、第2の面のSpk値(Spk)を用いた上記比率が前記数値範囲内であり、粗面化の度合いを前記数値範囲内において異ならせている。従って、ポリプロピレンフィルムを巻回した際の第1の面と第2の面との接触面積が小さくなるとともに、適度な粗大突起による上記第1の面と第2の面との空隙が維持でき、クッション性に優れる。その結果、実施例からも分かるように、ブロッキングを抑制することが可能となる。また、前記構成によれば、好ましい場合としてスリット工程加工性にも優れる。
また、一般的に、ポリプロピレンフィルムの巻回は、シワが発生したり、蛇行したりしないようにするために、複数の搬送用ロールを用い、ポリプロピレンフィルムに張力をかけながら行われる。そのため、一方の面だけが搬送用ロールに触れるのではなく、両方の面がいずれかの搬送用ロールに触れながら巻回が行われる。
前記構成によれば、ポリプロピレンフィルムの両面の粗面化が同程度であるため、二軸延伸された後のポリプロピレンフィルムをロール状に巻回する際に、搬送用ロールに対する滑り性が両面ともに好適である。その結果、好適な搬送性が得られ、シワや巻きずれが抑制され、素子巻き加工性が良好となる。
ここで、搬送性だけを考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで同程度である方が好ましい。しかしながら、耐電圧性を考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで異なる方が好ましい。以下、この点について説明する。
一般的に、フィルムの厚さは、表面に凹凸が存在する場合には、凸部の頂点が厚さの端部である。つまり、第1の面と第2の面との両方に凹凸が存在する場合には、第1の面に存在する凸部の頂点から第2の面に存在する凸部の頂点までの距離がフィルムの厚さである。
ここで、コア部の厚さは、第1の面の凸部高さと第2の面の凸部高さとを差し引いた厚さである。従って、両面が共に粗面化されたポリプロピレンフィルムとすると、コア部の厚さは薄くなり、漏れ電流が発生し易くなり、耐電圧性が低下することとなる。
そこで、本発明では、(1)第1の面のSvk値(Svk)と第2の面のSvk値(Svk)とについては同程度、すなわち、谷部の深さについては第1の面と第2の面とで同程度としつつ、(2)粗大突起については第2の面のSpk値(Spk)を第1の面のSpk値(Spk)よりも小さくしてコア部の厚さを確保する構成とした。以上により、耐電圧性を維持しつつ、粗面化による搬送性を兼ね備えることとした。
このように、本発明によれば、ブロッキングを抑制することが可能であり、さらに、スリット工程加工性と搬送性と耐電圧性とを兼ね備えることが可能となる。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用であることが好ましい。
第1の面のSpk値(Spk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、及び、第2の面のSpk値(Spk)が前記数値範囲内であるポリプロピレンフィルムは、ブロッキングを抑制することが可能であり、さらに、スリット工程加工性と搬送性と耐電圧性を兼ね備えるため、コンデンサ用として好適に使用できる。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、二軸延伸されていることが好ましい。
二軸延伸されていると、第1の面のSpk値(Spk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、及び、第2の面のSpk値(Spk)が前記数値範囲内であるポリプロピレンフィルムとし易い。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、前記第1の面のSq値(Sq)と前記第2の面のSq値(Sq)との比率Sq/Sqが0.4~1.0であることが好ましい。
ここで、Sq値は、表面性状パラメータ(ISO 25178-2:2007)で定義されるパラメータであり、定義された領域における、高さデータの二乗平均平方根の値である。
前記比率Sq/Sqが0.4~1.0であると、絶縁破壊の強さを維持しつつ、金属層形成後のブロッキングを抑制できる。その結果、その後のスリット工程における繰り出し時のしわ抑制につながるため好ましい。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、前記第1の面のSa値(Sa)と前記第2の面のSa値(Sa)との比率Sa/Saが0.6~1.0であることが好ましい。
ここで、Sa値は、表面性状パラメータ(ISO 25178-2:2007)で定義されるパラメータであり、定義された領域における、高さデータの絶対値の算術平均値である。
前記比率Sa/Saが0.6~1.0であると、フィルムの走行に伴う随伴空気量が表裏で近くなる。その結果、フィルムの蛇行が抑制され、金属層一体型フィルムのスリット工程における小巻取の端面ずれの抑制につながるため好ましい。
前記構成のポリプロピレンフィルムにおいて、
前記ポリプロピレン樹脂は、
分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)としたときの差、以下、「微分分布値差D」ともいう)が8.0%以上である直鎖ポリプロピレン樹脂Aと、
分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(微分分布値差D)が8.0%未満である直鎖ポリプロピレン樹脂Bと、
メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cとを含むことが好ましい。
微分分布値の差が異なる直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含むということは、高分子量成分と低分子量成分の量的な関係が異なる2種類の直鎖ポリプロピレン樹脂を含むということを意味する。そのため、直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含む未延伸ポリプロピレンフィルム(キャストシート)は、微細混合状態(相分離状態)にある。そのような未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸することによりフィルムを構成する樹脂成分の配置が複雑化するため、1種の直鎖ポリプロピレン樹脂を単独で用いるよりも高温での耐電圧性が向上すると考えられる。
また、本発明者らは、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cを含ませると、上記特定のキャストシートにβ晶が多量に形成されることを発見した。そして、β晶を含むキャストシートを延伸することによりβ晶がα晶に転移することから、β晶とα晶との密度の差に起因して、延伸により得られるポリプロピレンフィルムに(略)円弧形状の凹凸が形成され、好適に表面を粗面化することができることを発見した。
なお、微分分布値の差が異なる直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含むことに加えて、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cを含むことにより、フィルムを構成する樹脂成分の配置が複雑化することによる延伸フィルムの耐電圧性の向上とともに、微細化された(略)円弧形状の凹凸が形成され、より好適な粗面化を実現することが可能である。
このように、ポリプロピレンフィルムに直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bと長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cとを含ませると、高温での耐電圧性をより好適なものとしつつ、より好適な粗面化を実現することが可能となる。
なお、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cではなく、過酸化物による架橋変性により得られる長鎖分岐ポリプロピレン樹脂を用いると、過酸化物による架橋変性により得られる長鎖分岐ポリプロピレン樹脂の有するα晶造核効果によって、キャストシートにはα晶の形成が促進され、β晶の形成が大きく抑制されることになる。α晶を含むキャストシートを延伸しても結晶子の転移は起こらないため、凹凸は形成され難い。従って、ポリプロピレンフィルムを粗面化するためには、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cが好適である。
また、本発明に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、
前記ポリプロピレンフィルムと、
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする。
前記構成によれば、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層を有するため、ポリプロピレンフィルムを誘電体とし、金属層を電極としたフィルムコンデンサに使用することができる。また、前記ポリプロピレンフィルムは、ブロッキングが抑制され、さらに、スリット工程加工性と搬送性と耐電圧性を兼ね備えているため、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、好適に製造することができ、かつ、耐電圧性を備える。
また、本発明に係るフィルムコンデンサは、巻回された前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有することを特徴とする。
また、本発明に係るフィルムロールは、前記ポリプロピレンフィルムが、ロール状に巻回されていることを特徴とする。
本発明によれば、ロール状に巻回された金属層一体型ポリプロピレンフィルムのブロッキングを抑制することが可能なポリプロピレンフィルムを提供することができる。また、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサを提供することができる。また、本発明によれば、さらに好ましくは、上記目的に加えて、スリット工程加工性に優れるポリプロピレンフィルム、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサを提供することもできる。
(a)は、クレーター状の微細凹凸を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その横断面図であり、(c)は、(b)のI-I’線での縦断面図である。 光干渉式非接触表面形状測定機を用いて、微細凹凸のうちの高さが0.02μm以上の部分をフィルム表面へ投影した投影画像の一例を示す図である。 (a)~(c)は、仮想円環の決定方法を説明するための模式平面図である。
以下、本発明の実施形態について、説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
本明細書中において、「含有」、「含む」という表現は、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」、「のみからなる」という概念を含む。
本明細書において、「素子」、「コンデンサ」、「コンデンサ素子」、「フィルムコンデンサ」は同じものを意味する。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、微孔性フィルムではないので、多数の空孔を有していない。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、2層以上の複数層で構成されていてもよいが、単層で構成されていることが好ましい。
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、
主成分としてポリプロピレン樹脂を含有し、
前記第1の面のSpk値(Spk)と前記第2の面のSpk値(Spk)との比率Spk/Spkが0.490以上0.730以下であり、
前記第1の面のSvk値(Svk)と前記第2の面のSvk値(Svk)との比率Svk/Svkが0.735以上1.250以下である。
比率Spk/Spkは、0.495以上が好ましく、0.500以上がより好ましく、0.505以上がさらに好ましい。また、比率Spk/Spkは、0.710以下が好ましく、0.700以下がより好ましく、0.690以下がさらに好ましい。
比率Svk/Svkは、0.750以上が好ましく、0.760以上がより好ましく、0.780以上がさらに好ましい。また、比率Svk/Svkは、1.240以下が好ましく、1.200以下がより好ましく、1.150以下がさらに好ましい。
前記第1の面のSvk値(Svk)は、限定的ではないが、0.005μm以上が好ましく、0.007μm以上がより好ましく、0.008μm以上がさらに好ましく、0.009μm以上が特に好ましい。また、前記第1の面のSvk値(Svk)は、限定的ではないが、0.050μm以下が好ましく、0.040μm以下がより好ましく、0.035μm以下がさらに好ましい。
前記第2の面のSvk値(Svk)は、限定的ではないが、0.005μm以上が好ましく、0.007μm以上がより好ましく、0.008μm以上がさらに好ましく、0.009μm以上が特に好ましい。また、前記第2の面のSvk値(Svk)は、限定的ではないが、0.050μm以下が好ましく、0.040μm以下がより好ましく、0.035μm以下がさらに好ましく、0.030μmが特に好ましい。
前記第1の面のSpk値(Spk)は、限定的ではないが、0.030μm以上が好ましく、0.040μm以上がより好ましく、0.043μm以上がさらに好ましく、0.045μm以上が特に好ましい。また、前記第1の面のSpk値(Spk)は、限定的ではないが、0.090μm以下が好ましく、0.080μm以下がより好ましく、0.075μm以下がさらに好ましい。
前記第2の面のSpk値(Spk)は、限定的ではないが、0.010μm以上が好ましく、0.015μm以上がより好ましく、0.020μm以上がさらに好ましく、0.025μm以上が特に好ましい。また、前記第2の面のSpk値(Spk)は、限定的ではないが、0.060μm以下が好ましく、0.055μm以下がより好ましく、0.050μm以下がさらに好ましい。
ポリプロピレンフィルムは、第1の面と第2の面とのいずれか一方又は両方に金属層が形成され、巻回した際には、金属層が形成された状態で前記第1の面と前記第2の面とが接触することになる。前記ポリプロピレンフィルムによれば、第1の面のSpk値(Spk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、及び、第2の面のSpk値(Spk)を用いた上記比率が前記数値範囲内であり、粗面化の度合い(粗大突起の度合い含む)を前記数値範囲内において異ならせている。従って、ポリプロピレンフィルムを巻回した際の第1の面と第2の面との接触面積が小さくなるとともに、適度な粗大突起による上記第1の面と第2の面との空隙が維持でき、クッション性に優れる。その結果、実施例からも分かるように、ブロッキングを抑制することが可能となる。また、前記ポリプロピレンフィルムによれば、好ましい場合としてスリット工程加工性にも優れる。
また、一般的に、ポリプロピレンフィルムの巻回は、シワが発生したり、蛇行したりしないようにするために、複数の搬送用ロールを用い、ポリプロピレンフィルムに張力をかけながら行われる。そのため、一方の面だけが搬送用ロールに触れるのではなく、両方の面がいずれかの搬送用ロールに触れながら巻回が行われる。
前記ポリプロピレンフィルムによれば、ポリプロピレンフィルムの両面の粗面化が同程度であるため、二軸延伸された後のポリプロピレンフィルムをロール状に巻回する際に、搬送用ロールに対する滑り性が両面ともに好適である。その結果、好適な搬送性が得られ、シワや巻きずれが抑制され、素子巻き加工性が良好となる。
ここで、搬送性だけを考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで同程度である方が好ましい。しかしながら、耐電圧性を考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで異なる方が好ましい。以下、この点について説明する。
一般的に、フィルムの厚さは、表面に凹凸が存在する場合には、凸部の頂点が厚さの端部である。つまり、第1の面と第2の面との両方に凹凸が存在する場合には、第1の面に存在する凸部の頂点から第2の面に存在する凸部の頂点までの距離がフィルムの厚さである。
ここで、コア部の厚さは、第1の面の凸部高さと第2の面の凸部高さとを差し引いた厚さである。従って、両面が共に粗面化されたポリプロピレンフィルムとすると、コア部の厚さは薄くなり、漏れ電流が発生し易くなり、耐電圧性が低下することとなる。
そこで、本実施形態では、(1)第1の面のSvk値(Svk)と第2の面のSvk値(Svk)とについては同程度、すなわち、粗面化の指標ともいえる谷部の深さについては第1の面と第2の面とで同程度としつつ、(2)粗大突起については第2の面のSpk値(Spk)を第1の面のSpk値(Spk)よりも小さくしてコア部の厚さを確保する構成とした。以上により、耐電圧性を維持しつつ、粗面化による搬送性を兼ね備えることとした。
このように、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムによれば、ブロッキングを抑制することが可能であり、さらに、スリット工程加工性と搬送性と耐電圧性とを兼ね備えることが可能となる。
前記第1の面のSvk値(Svk)、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第2の面のSvk値(Svk)、及び、前記第2の面のSpk値(Spk)は、光干渉式非接触表面形状測定機を使用し、三次元表面粗さ評価法を用い、表面形状を計測することで求める。「三次元表面粗さ評価法」は、フィルム表面の全面の高さを評価するので、フィルム表面の形状を三次元的に評価することになる。従って、測定対象面の局所的な微細変化や変異を把握することができ、より正確な表面粗さを評価することができる。単なる突起の高さ(一般的な中心線平均粗さRaなどによる二次元の表面粗さ評価)ではなく、三次元的な突出山部の平均高さ、及び、突出谷部の平均高さを用いてフィルム表面粗さを評価することにより、ブロッキングを抑制することが可能となる。また、良好なスリット工程加工性と搬送性と耐電圧性とを兼ね備える構成とすることが可能となる。
より具体的に、前記第1の面のSvk値(Svk)、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第2の面のSvk値(Svk)、及び、前記第2の面のSpk値(Spk)は、(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を光干渉式非接触表面形状測定機として使用して測定した値である。
以下、測定方法の詳細について説明する。
まず、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの計測を行う。この操作を対象試料(ポリプロピレンフィルム)の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で10箇所について行う。
次に、得られたデータに対して、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。これにより、粗面化表面の状態を適切に計測できる状態とする。
次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」にある、「ISOパラメータ」を用いて解析を行う。
最後に、上記10箇所で得られた各値(Svk、Spk、Svk、Spk、Sq、Sq、Sa、Sa、Sk、Sk)について、それぞれ平均値を算出する。以上により、前記第1の面のSvk値(Svk)、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第2の面のSvk値(Svk)、及び、前記第2の面のSpk値(Spk)が得られる。また、Sq、Sq、Sa、Sa、Sk、Skも同様にして得られる。
より詳細には、実施例に記載の方法による。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面のSq値(Sq)と前記第2の面のSq値(Sq)との比率Sq/Sqが0.4~1.0であることが好ましく、0.45~0.8であることがより好ましく、0.48~0.7であることがさらに好ましい。
前記Sqは、0.020μm~0.080μmであることが好ましく、0.025μm~0.070μmであることがより好ましい。
前記Sqは、0.005μm~0.030μmであることが好ましく、0.010μm~0.025μmであることがより好ましい。
前記比率Sq/Sqが0.4~1.0であると、絶縁破壊の強さを維持しつつ、金属層形成後のブロッキングを抑制できる。その結果、その後のスリット工程における繰り出し時のしわ抑制につながるため好ましい。
前記第1の面のSq値(Sq)、前記第2の面のSq値(Sq)、前記比率Sq/Sqの詳細な測定方法は、実施例に記載の方法による。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面のSa値(Sa)と前記第2の面のSa値(Sa)との比率Sa/Saが0.6~1.0であることが好ましく、0.65~0.9であることがより好ましく、0.7~0.8であることがさらに好ましい。
前記Saは、0.005μm~0.025μmであることが好ましく、0.009μm~0.020μmであることがより好ましい。
前記Saは、0.005μm~0.025μmであることが好ましく、0.007μm~0.015μmであることがより好ましい。
前記比率Sa/Saが0.6~1.0であると、フィルムの走行に伴う随伴空気量が表裏で近くなる。その結果、フィルムの蛇行が抑制され、金属層一体型フィルムのスリット工程における小巻取の端面ずれの抑制につながるため好ましい。
前記第1の面のSa値(Sa)、前記第2の面のSa値(Sa)、前記比率Sa/Saの詳細な測定方法は、実施例に記載の方法による。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面のSk値(Sk)と前記第2の面のSk値(Sk)との比率Sk/Skが0.6~1.0であることが好ましく、0.7~0.9であることがより好ましく、0.75~0.85であることがさらに好ましい。
前記Skは、0.030μm~0.070μmであることが好ましく、0.035~0.060であることがより好ましい。
前記Skは、0.010μm~0.050μmであることが好ましく、0.020μm~0.040μmであることがより好ましい。
ここで、Sk値は、表面性状パラメータ(ISO 25178-2:2007)で定義されるパラメータであり、突出山部及び突出谷部をベアリングカーブから取り除いた曲線の上側レベルと下側レベルとの差である。
前記比率Sk/Skが0.6~1.0であると、絶縁破壊の強さを維持しつつ、金属層形成後のブロッキングを抑制できる。その結果、その後のスリット工程における繰り出し時のしわ抑制につながるため好ましい。
前記第1の面のSk値(Sk)、前記第2の面のSk値(Sk)、前記比率Sk/Skの詳細な測定方法は、実施例に記載の方法による。
前記第1の面のSvk値(Svk)、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第2の面のSvk値(Svk)、前記第2の面のSpk値(Spk)、前記比率Spk/Spk、前記比率Svk/Svk、前記第1の面のSq値(Sq)、前記第2の面のSq値(Sq)、前記比率Sq/Sq、前記第1の面のSa値(Sa)、前記第2の面のSa値(Sa)、前記比率Sa/Sa、前記第1の面のSk値(Sk)、前記第2の面のSk値(Sk)、及び、前記比率Sk/Skを前記数値範囲内とする方法については、特に限定されないが、(i)前記ポリプロピレンフィルムを構成する樹脂(原料樹脂)の種類選定、立体規則性、分子量分布、及び、微分分布値差D、(ii)前記ポリプロピレンフィルム全体に対する各樹脂の含有量、(iii)延伸の際の縦及び横の延伸倍率、並びに延伸温度、(iv)添加剤(特に造核剤)の種類選定及びその含有量、等で適宜調整することができる。
前記第1の面のSvk値(Svk)と前記第2の面のSvk値(Svk)とを異ならせる方法、前記第1の面のSpk値(Spk)と前記第2の面のSpk値(Spk)とを異ならせる方法、前記第1の面のSq値(Sq)と前記第2の面のSq値(Sq)とを異ならせる方法、前記第1の面のSa値(Sa)と前記第2の面のSa値(Sa)とを異ならせる方法、前記第1の面のSk値(Sk)と前記第2の面のSk値(Sk)とを異ならせる方法としては、特に限定されないが、例えば、第1の面をキャストロール側の面とし、第2の面をエアーナイフ側の面として、キャストシートを作製し、このキャストシートを二軸延伸することにより調整することができる。
前記ポリプロピレンフィルムは、クレーター状の微細凹凸により両面が粗面化されていてもよい。図1(a)は、クレーター状の微細凹凸を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、その横断面図であり、図1(c)は、(b)のI-I’線での縦断面図である。なお、図1(a)~図1(c)は、「楕円」を説明するための模式図であり、後述する実施例に係るポリプロピレンフィルム等の表面形状を示すものではない。
クレーター状の微細凹凸の多くは、例えば光学顕微鏡等により、互いに逆向きに湾曲した対をなす2つの円弧形状又は略円弧形状(以下、円弧形状および略円弧形状を纏めて、「(略)円弧形状」ともいう)として観察される。観察された対をなす2つの(略)円弧形状部分を補完(補間)して繋いだ場合、楕円形状又は略楕円形状(以下、楕円形状および略楕円形状を纏めて、「(略)楕円形状」ともいう)となる。
この対をなす2つの(略)円弧形状部分は、突起と、突起間における窪みとを形成する(図1(a)参照)。この突起および窪みにより、上記クレーター状の微細な凹凸を形成する(図1(b)および図1(c)参照)。なお、2つの(略)円弧形状は合わさって円形状若しくは略円形状(以下、円形状および略円形状を纏めて、「(略)円形状」ともいう)又は(略)楕円形状をなしている場合もある。この場合の突起の横断面は円環状若しくは略円環状(以下、円環状および略円環状を纏めて、「(略)円環状」ともいう)又は楕円環状若しくは略楕円環状(以下、楕円環状および略楕円環状を纏めて、「(略)楕円環状」ともいう)となる。また、対をなさずに単独の(略)円弧形状として観察される場合もある。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面の楕円密度Dが50~120個/mmであることが好ましい。また、前記第2の面の楕円密度Dは、前記Dよりも低いことが好ましい。また、前記第2の面の楕円密度Dは、1~90個/mmであることが好ましい。
前記楕円密度Dは、85~120個/mmであることがより好ましく、90~105個/mmであることがさらに好ましい。
前記楕円密度Dは、1~12個/mmであることがより好ましく、3~11個/mmであることがさらに好ましく、4~10個/mmであることが特に好ましい。
前記楕円密度は、デジタルスコープ(例えば株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-2000)を用いて観察される下記(X)及び下記(Y)の単位面積当たりの合計数をいう。以下、下記(X)の形状と下記(Y)の形状とを総称して、「楕円」ともいう。
なお、一方の軸の長さLμmと他方の軸の長さSμmとしたきにS≦L且つ1≦L≦300を満たすものを、楕円密度を算出する際に考慮する「楕円」とする。これを満たさないものは、楕円密度を算出する際に考慮しない(楕円密度を算出する際の「楕円」としてカウントしない)。
(X)上記対をなす2つの(略)円弧形状の突起が合わさって構成される(略)円形状または(略)楕円形状。
(Y)上記対をなす2つの(略)円弧形状を補間して繋いで構成される(略)楕円形状。
前記楕円密度の具体的な測定方法は、実施例記載の方法による。
前記第1の面の楕円密度Dが50~120個/mmであり、前記第2の面の楕円密度Dが1~90個/mmであると、ポリプロピレンフィルムを巻回した際の第1の面と第2の面との接触面積をより小さくすることができる。
具体的に、前記第1の面の楕円密度Dが50~120個/mmである場合、「楕円」の数は比較的多いといえる。従って、より大きく粗面化されている。一方、前記第2の面の楕円密度Dが1~90個/mmであると、「楕円」の数は比較的少ないといえる。従って、粗面化はされているものの、その程度は小さい。
このように、第1の面の楕円密度Dを50~120個/mmとするともに、前記第2の面の楕円密度Dを1~90個/mmとすれば、スリット工程加工においてフィルムが左右へ蛇行し、小巻取の端面が不揃いになることを抑制できる。その結果、実施例からも分かるように、スリット工程加工性を良好とすることができる。
また、前記第1の面の楕円密度Dが50~120個/mmであり、前記第2の面の楕円密度Dが1~90個/mmであると、ポリプロピレンフィルムの両面がより好適に粗面化されているため、二軸延伸された後のポリプロピレンフィルムをロール状に巻回する際に、搬送用ロールに対する滑り性が両面ともにより好適である。その結果、より好適な搬送性が得られ、シワや巻きずれがより抑制される。
ここで、搬送性だけを考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで同程度である方が好ましい。しかしながら、耐電圧性を考慮すれば、粗面化の程度は、第1の面と第2の面とで異なる方が好ましい。一般的に表面を粗面化するとフィルムの薄い部分(凹凸の凹部)は、漏れ電流の原因となる。そこで、第2の面の楕円密度Dを第1の面の楕円密度Dよりも少なくすれば、漏れ電流の原因となり得る凹凸の数を少なくすることができる。具体的に、前記第2の面の楕円密度Dが1~90個/mmであると、漏れ電流の原因となり得る凹凸の数は少ないといえる。その結果、耐電圧性をより好適に維持しつつ、粗面化による搬送性をより好適に兼ね備える構成となる。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面の楕円密度Dを構成する楕円の平均長軸長さLが20~80μmであり、前記第2の面の楕円密度Dを構成する楕円の平均長軸長さLが30~100μmであることが好ましい。
前記平均長軸長さLは、30~70μmであることがより好ましく、40~68μmであることがさらに好ましい。
前記平均長軸長さLは、35~90μmであることがより好ましく、40~80μmであることがさらに好ましい。
前記平均長軸長さLは、前記楕円密度Dの測定において観測された「楕円」の長軸の平均値である。
前記平均長軸長さLは、前記楕円密度Dの測定において観測された「楕円」の長軸の平均値である。
前記平均長軸長さL、及び、前記平均長軸長さLの具体的な測定方法は、実施例記載の方法による。
前記第1の面の楕円密度Dを構成する楕円の平均長軸長さLが20~80μmであると、前記第1の面の楕円密度Dを前記数値範囲内とし易くなる。また、前記第2の面の楕円密度Dを構成する楕円の平均長軸長さLが30~100μmであると、前記第2の面の楕円密度Dを前記数値範囲内とし易くなる。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記第1の面の楕円密度Dを構成する楕円の楕円完全度Pが30~70%であり、前記第2の面の楕円密度Dを構成する楕円の楕円完全度Pが15~50%であることが好ましい。
前記楕円完全度Pは、35~65%であることがより好ましく、40~60%であることがさらに好ましい。
前記楕円完全度Pは、20~45%であることがより好ましく、25~40%であることがさらに好ましい。
前記楕円完全度は、下記のようにして求める値である。
まず、光干渉式非接触表面形状測定機として、(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式R5500GML)」を使用し、WAVEモードにて530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの表面形状データを得る。この操作を対象試料(ポリプロピレンフィルム)の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で10箇所について行う。
次に、得られたデータについて、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。
上述のようにして得られた10箇所の各表面形状データの投影画像(図2参照)から、対をなす円弧からなるクレーター投影画像を3個ずつ抽出する。
図2は、光干渉式非接触表面形状測定機を用いて、微細凹凸のうちの高さが0.02μm以上の部分をフィルム表面へ投影した投影画像の一例を示す図である。なお、図2は、「投影画像」について、視覚的に理解を容易にするために示した画像であり、後述する実施例に係るポリプロピレンフィルム等の投影画像ではない。
クレーター投影画像を抽出するにあたっては、異なるβ型球晶に基づく円弧同士の重なり合いが認められないクレーター投影画像を3個ずつ抽出する。3個の抽出方法は、目視による楕円の面積で四分位数(第1四分位数、第2四分位数(すなわち中央値)および第3四分位数)となる楕円を抽出することとする。例えば、N個のクレーター投影画像を確認した場合、第1四分位数として[(3+N)/4]番目、第2四分位数として[(1+N)/2]番目、第3四分位数として[(1+3N)/4]番目に大きい面積のクレーター投影画像を抽出する。Nを代入して得られた第1四分位数~第3四分位数が小数点を有する場合は、当該第1四分位数~第3四分位数が整数となるように小数点以下を四捨五入する。具体的には、例えば、9個のクレーター投影画像を確認した場合、3番目、5番目および7番目の面積のクレーター投影画像を抽出する。また、例えば、12個のクレーター投影画像を確認した場合、4番目、7番目および9番目の面積のクレーター投影画像を抽出する。
次に、抽出した3個のクレーター投影画像のそれぞれについて、対をなす円弧の合計長さLtと、対をなす円弧を含む仮想円環の全周長さをLcとを計測し、比(Lt/Lc)を求める。そして、得られた合計30個の前記比の値を平均し、比(Lt/Lc)の平均値αを得る。
仮想円環の決定と、LtおよびLcの計測には、光干渉式非接触表面形状測定器VertScan2.0の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「エッジ曲線長」を用いて行う。具体的手順は以下の通りである。
図3(a)~図3(c)は、仮想円環の決定方法を説明するための模式平面図である。
(1)まず、図3(a)に示すように、円弧30aおよび円弧30b上における、互いに最も離れた2点をP、Pとし、PとPを結んだ直線(以下、直線(P-P)という。)を決定する。
(2)ついで、図3(b)に示すように、直線(P-P)の一方側(図3中では、直線(P-P)よりも上方側。)に位置する部分の円弧30a、30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P-P)が長軸となるような楕円(E)を導き出す。そして、この楕円(E)を構成する曲線(楕円(E)の周の一部)により、上記一方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40aとする。なお、図3では、楕円(E)のうち、補完線40aに相当する部分以外を図示略としている。
(3)ついで、図3(c)に示すように、直線(P-P)の他方側(図3では、直線(P-P)よりも下方側。)に位置する部分の円弧30a、30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P-P)が長軸となるような楕円(E)を導き出す。そして、この楕円(E)を構成する曲線(楕円(E)の周の一部)により、上記他方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40bとする。なお、図3では、楕円(E)のうち、補完線40bに相当する部分以外を図示略としている。
(4)このように決定された補完線40a、40bと、円弧30a、30bとで連結された図3(c)に示される円環が仮想円環である。
(5)そして、この仮想円環の周における各位置(周のある点を基準とした際の距離。)に対する、各位置における微細凹凸20の高さを示す、微細凹凸20の高さプロファイルを描く。この高さプロファイルから、高さ0.02μm以上の部分に対応するクレーター投影画像GにおけるLtおよびLcを読み取る。
なお、最小二乗法の実施に際しては、それぞれ30個(n=30)の位置データを用いる。
前記楕円完全度Pが40~60%であり、前記楕円完全度Pが25~35%であると、絶縁破壊の強さを維持しつつ、金属層形成後のブロッキングを抑制できる。その結果、その後のスリット工程における繰り出し時のしわ抑制につながるため好ましい。
前記ポリプロピレンフィルムの100℃での直流絶縁破壊強度ESは、510VDC/μm以上であることが好ましく、525VDC/μm以上であることがより好ましく、540VDC/μm以上であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレンフィルムの100℃での直流絶縁破壊強度ESは、高いほど好ましいが、例えば、600VDC/μm以下、570VDC/μm以下、550VDC/μm以下である。
前記ポリプロピレンフィルムの120℃での直流絶縁破壊強度ESは、485VDC/μm以上であることが好ましく、490VDC/μm以上であることがより好ましい。前記ポリプロピレンフィルムの125℃での直流絶縁破壊強度ESは、高いほど好ましいが、例えば、600VDC/μm以下、550VDC/μm以下である。
前記ポリプロピレンフィルムの灰分は、前記ポリプロピレンフィルムに対して6×10ppm以下(60ppm以下)であることが好ましく、5×10ppm以下(50ppm以下)であることがより好ましく、4×10ppm以下(40ppm以下)であることがさらに好ましく、3×10ppm以下(30ppm以下)が特に好ましい。前記灰分は、0×10ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、5ppm以上がさらに好ましく、1×10ppm以上(10ppm以上)が特に好ましい。前記灰分が前記数値範囲内であると、極性をもった低分子成分の生成を抑制しつつコンデンサとしての電気特性がより向上する。前記灰分は、実施例に記載の方法により得られる値をいう。
前記ポリプロピレンフィルムは、厚さが、9.5μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、2.9μm以下がさらに一層好ましく、2.8μm以下が特に好ましく、2.5μm以下が特に一層好ましい。また、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、0.8μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.4μm以上がさらに好ましく、1.5μm以上がさらに一層好ましく、1.8μm以上が特に好ましい。特に、1.4~6.0μm、1.5~3.0μm、1.5~2.9μm等の範囲内である場合、ポリプロピレンフィルムが非常に薄いにもかかわらずスリット工程加工性、蒸着工程時のブロッキング抑制性及び素子巻き加工性に優れるため、好ましい。
厚さが、9.5μm以下であると、静電容量を大きくすることができるため、コンデンサ用として好適に使用できる。また、製造上の観点から、厚さ0.8μm以上とすることができる。
前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、シチズンセイミツ社製の紙厚測定器MEI-11を用いて100±10kPaで測定すること以外、JIS-C2330に準拠して測定した値をいう。
前記ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよい。なかでも、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第1の面のSpk値(Spk)、前記第2の面のSvk値(Svk)、及び、前記第2の面のSpk値(Spk)を前記数値範囲内とし易い観点から、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
前記ポリプロピレンフィルム及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、各々ロール状に巻回されており、フィルムロールの形態であることが好ましい。前記フィルムロールは、巻き芯(コア)を有していてもよいし、有していなくてもよい。前記フィルムロールは、巻き芯(コア)を有することが好ましい。前記フィルムロールの巻き芯の材質としては特に限定されない。前記材質としては、紙(紙管)、樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)、金属等が挙げられる。前記樹脂としては、一例として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。前記繊維強化プラスチックを構成するプラスチックとしては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。前記繊維強化プラスチックを構成する繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維(ケブラー(登録商標)繊維)、カーボン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維(ザイロン(登録商標)繊維)、ポリエチレン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。前記金属としては、鉄、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。前記フィルムロールの巻き芯は、前記樹脂を紙管に含浸させてなる巻き芯も包含する。この場合、前記巻き芯の材質は樹脂として分類される。
前記ポリプロピレンフィルムは、上述の通り、主成分としてポリプロピレン樹脂を含有する。本明細書において、主成分としてポリプロピレン樹脂を含有する、とは、ポリプロピレンフィルム全体に対して(ポリプロピレンフィルム全体を100質量%としたときに)、ポリプロピレン樹脂を50質量%以上含有することをいう。ポリプロピレンフィルム全体に対する前記ポリプロピレン樹脂の含有量は、好ましくは、75質量%以上であり、より好ましくは、90質量%以上である。前記ポリプロピレン樹脂の含有量の上限は、ポリプロピレンフィルム全体に対して、例えば、100質量%、98質量%等である。
前記ポリプロピレン樹脂は、特に限定されず、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。前記ポリプロピレン樹脂は、なかでも、キャストシートとした際にβ型球晶を形成するポリプロピレン樹脂が好適である。
前記ポリプロピレン樹脂としては、直鎖ポリプロピレン樹脂が挙げることができる。直鎖ポリプロピレン樹脂は、単独で、又は、2種以上を混合して使用できる。なかでも、下記直鎖ポリプロピレン樹脂A、及び/又は、下記直鎖ポリプロピレン樹脂Bを使用することが好ましい。特に、下記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと下記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを併用することが好ましい。下記直鎖ポリプロピレン樹脂A、及び、下記直鎖ポリプロピレン樹脂Bは、ホモポリプロピレン樹脂であることが好ましい。下記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと下記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの併用としては、下記樹脂A-1と下記樹脂B-1、下記樹脂A-2と下記樹脂B-2、下記樹脂A-3と下記樹脂B-3、下記樹脂A-4と下記樹脂B-4の組み合わせが好適なものとして挙げられる。但し、本発明では前記ポリプロピレン樹脂として以下の樹脂に限定されない。
<直鎖ポリプロピレン樹脂A>
(直鎖ポリプロピレン樹脂A-1)
分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、8.0%以上である直鎖ポリプロピレン樹脂。
(直鎖ポリプロピレン樹脂A-2)
ヘプタン不溶分(HI)が98.5%以下である直鎖ポリプロピレン樹脂。
(直鎖ポリプロピレン樹脂A-3)
230℃におけるメルトフローレート(MFR)が4.0~10.0g/10minである直鎖ポリプロピレン樹脂。
(直鎖ポリプロピレン樹脂A-4)
重量平均分子量Mwが34万以下である直鎖ポリプロピレン樹脂。
<直鎖ポリプロピレン樹脂B>
(直鎖ポリプロピレン樹脂B-1)
分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、8.0%未満である直鎖ポリプロピレン樹脂。
(直鎖ポリプロピレン樹脂B-2)
ヘプタン不溶分(HI)が98.5%を超える直鎖ポリプロピレン樹脂。
(直鎖ポリプロピレン樹脂B-3)
230℃におけるメルトフローレート(MFR)が4.0g/10min未満である直鎖ポリプロピレン樹脂(特に0.1~3.9g/10minである直鎖ポリプロピレン樹脂)。
(直鎖ポリプロピレン樹脂B-4)
重量平均分子量Mwが34万超えである直鎖ポリプロピレン樹脂。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量Mwは、25万以上であることが好ましい。また、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量Mwは、45万以下であることが好ましく、40万以下であることがより好ましく、35万以下であることがさらに好ましく、34万以下であることが特に好ましい。前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であると、樹脂流動性が適度となる。その結果、キャストシートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易となる。また、キャストシートおよび延伸フィルムの厚みにムラが発生し難くなり、適度な延伸性が得られるので好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、5.5以上12.0以下であることが好ましく、7.0以上12.0以下であることがより好ましく、7.5以上11.0以下であることがさらに好ましく、8.0以上11.0以下であることが特に好ましく、9.0以上11.0以下であることがより特に好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、15.0以上70.0以下であることが好ましく、20.0以上60.0以下であることがより好ましく、25.0以上50.0以下であることがさらに好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの上記各分子量分布が上記好ましい範囲内であると、キャストシートおよび延伸フィルムの厚みにムラが発生し難くなり、適度な延伸性が得られるので好ましい。
本明細書において、直鎖ポリプロピレン樹脂Aおよび直鎖ポリプロピレン樹脂Bの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定した値である。本明細書では、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC-8121GPC-HT(商品名)を使用して測定した値である。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR-H(20)HTを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得る。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をQ-ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算して、Mw、Mn及びMzを得る。更に、分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
また、長鎖分岐ポリプロピレンCの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定した値である。より具体的には、高温GPC-MALS測定、すなわち光散乱検出器(DAWN EOS;Wyatt Technology製)を備えた高温GPC装置(HLC-8121GPC/HT;東ソー製)により測定する。カラムとして、いずれも東ソー株式会社製の、TSKgel guardcolumnHHR(30)(7.8mmID×7.5cm)と3本のTSKgel GMH-HR-H(20)HT(7.8mmID×30cm)とを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定し、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/分の流速で流して、MwとMnの測定値を得る。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aは、微分分布値差Dが8.0%以上が好ましく、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの前記微分分布値差Dは、8.0%以上18.0%以下であることがより好ましく、9.0%以上17.0%以下であることがさらに好ましく、10.0%以上16.0%以下であることが特に好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの前記微分分布値差Dが8.0%以上18.0%以下であるということは、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としての対数分子量Log(M)=4.5の成分と、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としてのLog(M)=6.0前後の成分とを比較したときに、低分子量成分の方が8.0%以上18.0%以下の割合で多いと理解できる。
つまり、例えば、分子量分布Mw/Mnが7.0~12.0である場合を例にすると、分子量分布Mw/Mnが7.0~12.0であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aは、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、8.0%以上18.0%以下の割合で多く含むこととしている。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aは、前記微分分布値差Dが8.0%以上18.0%以下である場合、低分子量成分を、高分子量成分と比較すると、8.0%以上18.0%以下の割合で多く含む。従って、本実施形態におけるフィルムの表面を得やすくなり、好ましい。
前記微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得た値である。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることができる。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読みとる。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aのメソペンタッド分率([mmmm])は、99.8%以下であることが好ましく、99.5%以下であることがより好ましく、99.0%以下であることがさらに好ましい。また、前記メソペンタッド分率は、94.0%以上であることが好ましく、94.5%以上であることがより好ましく、95.0%以上がさらに好ましい。メソペンタッド分率が前記数値範囲内であると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での耐電圧性が向上する。一方、キャストシート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。本明細書において、メソペンタッド分率([mmmm])は、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)、JNM-ECP500を利用して測定した値をいう。観測核は、13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒にはo-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。メソペンタッド分率([mmmm])のより詳細な測定方法は、実施例に記載の方法による。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aのヘプタン不溶分(HI)は、96.0%以上であることが好ましく、より好ましくは97.0%以上である。また、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aのヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは98.5%以下であり、さらに好ましくは98.0%以下である。ここで、ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記ヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での耐電圧性が向上する。一方、キャストシート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。ヘプタン不溶分(HI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの灰分は、6×10ppm以下(60ppm以下)が好ましく、5×10ppm以下(50ppm以下)がより好ましく、4×10ppm以下(40ppm以下)であることがさらに好ましく、3×10ppm以下(30ppm以下)が特に好ましい。また、前記前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの灰分は、0×10ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、5ppm以上がさらに好ましく、1×10ppm以上(10ppm以上)が特に好ましい。前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの灰分が上記好ましい範囲内である場合、極性をもった低分子成分の生成を抑制しつつコンデンサとしての電気特性がより向上する。前記灰分は、実施例に記載の方法により得られる値をいう。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、1.0~15.0g/10minであることが好ましく、2.0~10.0g/10minであることがより好ましく、4.0~10.0g/10minであることがさらに好ましく、4.3~6.0g/10minが特に好ましい。ポリプロピレンAの230℃におけるMFRが上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくく、また、延伸時の破断も抑えられる。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部の形成が抑制されるという利点がある。メルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、99.9質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
直鎖ポリプロピレン樹脂Bの重量平均分子量Mwは、30万以上であることが好ましく、33万以上であることがより好ましく、34万超えであることがさらに好ましく、35万以上であることがさらに一層好ましく、35万超えであることが特に好ましい。また、直鎖ポリプロピレン樹脂Bの重量平均分子量Mwは、40万以下であることが好ましく、38万以下であることがより好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、7.0以上9.0以下であることが好ましく、7.5以上8.9以下であることがより好ましく、7.5以上8.5以下であることがさらに好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、20.0以上70.0以下であることが好ましく、25.0以上60.0以下であることがより好ましく、25.0以上50.0以下であることがさらに好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの上記各分子量分布が上記好ましい範囲内であると、キャストシートおよび延伸フィルムの厚みにムラが発生し難くなり、適度な延伸性が得られるので好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの微分分布値差Dは、8.0%未満であることが好ましく、-20.0%以上8.0%未満であることがより好ましく、-10.0%以上7.9%以下であることがさらに好ましく、-5.0%以上7.5%以下であることが特に好ましい。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bのメソペンタッド分率([mmmm])は、99.8%未満であることが好ましく、99.5%以下であることがより好ましく、99.0%以下であることがさらに好ましい。また、前記メソペンタッド分率は、94.0%以上であることが好ましく、94.5%以上であることがより好ましく、95.0%以上がさらに好ましい。メソペンタッド分率が前記数値範囲内であると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での耐電圧性が向上する。一方、キャストシート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bのヘプタン不溶分(HI)は、97.5%以上であることが好ましく、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは98.5%超えであり、特に好ましくは98.6%以上である。また、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bのヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは99%以下である。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの灰分は、6×10ppm以下(60ppm以下)が好ましく、5×10ppm以下(50ppm以下)がより好ましく、4×10ppm以下(40ppm以下)であることがさらに好ましく、3×10ppm以下(30ppm以下)が特に好ましい。また、前記前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの灰分は、0×10ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、5ppm以上がさらに好ましく、1×10ppm以上(10ppm以上)が特に好ましい。前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの灰分が上記好ましい範囲内である場合、極性をもった低分子成分の生成を抑制しつつコンデンサとしての電気特性がより向上する。前記灰分は、実施例に記載の方法により得られる値をいう。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10min以上であることが好ましい。また、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、6.0g/10min以下であることが好ましく、5.0g/10min以下であることがより好ましく、4.0g/10min未満であることがさらに好ましく、3.9g/10min以下であることが特に好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂として前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bを使用する場合、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様に、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂として、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを併用する場合、ポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、55~90重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと、45~10重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含むことが好ましく、60~85重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと、40~15重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bと含むことがより好ましく、60~80重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと、40~20重量%の前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含むことが特に好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂が、前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含む場合、前記ポリプロピレンフィルムは、直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとの微細混合状態(相分離状態)となるため、高温での耐電圧性が向上する。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂は、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。本実施形態のポリプロピレンフィルムに用い得る直鎖ポリプロピレン樹脂を製造することができる限り、特に制限されることはない。そのような重合方法として、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
重合は、1つの重合反応器を用いる単段(一段)重合であってよく、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。更に、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行ってもよい。
重合の際の触媒には、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、前記直鎖ポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されない。前記触媒は、助触媒成分やドナーを含んでもよい。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、立体規則性等を制御することができる。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、微分分布値差D等は、例えば、(i)重合方法及び重合の際の温度・圧力等の各条件、(ii)重合の際の反応器の形態、(iii)添加剤の使用有無、種類及び使用量、(iv)触媒の種類及び使用量、などを適宜選択することより調整することができる。
具体的に、前記直鎖ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、微分分布値差D等の調整は、例えば、多段重合反応により行うことができる。多段重合反応としては、例えば、次のような方法が例示できる。
まず、第1重合工程において、プロピレン及び触媒が第1重合反応器に供給される。これらの成分とともに、分子量調整剤としての水素を、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量で混合される。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70~100℃程度、滞留時間は20分~100分程度である。複数の反応器は、例えば直列に使用することができる。この場合、第1の工程の重合生成物は、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに連続的に次の反応器に送られ、続いて、第1重合工程より低分子量あるいは高分子量に分子量を調整した第2の重合が行われる。第1及び第2の反応器の収量(生産量)を調整することによって、高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を調整することが可能となる。
また、前記直鎖ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、微分分布値差D等の調整は、過酸化分解によって行うこともできる。例えば、過酸化水素や有機過酸化物などの分解剤による過酸化処理による方法が例示できる。
ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに過酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれる。すなわち、高分子量成分ほど高い確率で分解が進行する。これにより、低分子量成分が増大し、分子量分布の構成を調整することができる。
ブレンド(樹脂混合)により低分子量成分の含有量を調整する場合には、少なくとも2種以上の異なる分子量の樹脂を、ドライ混合あるいは、溶融混合するのがよい。一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高いか、あるいは低い添加樹脂を1~40質量%程度混合する2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましく利用される。
また、この混合調整の場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1~30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から良い。
前記直鎖ポリプロピレン樹脂としては、市販品を用いることもできる。
前記ポリプロピレン樹脂は、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂のなかでも、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られる長鎖分岐ポリプロピレン樹脂C(以下、「長鎖分岐ポリプロピレン樹脂C」ともいう)が好ましい。具体的に、前記ポリプロピレン樹脂に前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cが含まれると、キャストシートにβ晶が多量に形成される。そして、β晶を含むキャストシートを延伸することによりβ晶がα晶に転移することから、β晶とα晶との密度の差に起因して、延伸により得られるポリプロピレンフィルムに(略)円弧形状の凹凸が形成され、好適に表面を粗面化することができる点で好ましい。
なかでも、前記ポリプロピレン樹脂に前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cが含まれることがより好ましい。
さらに、前記ポリプロピレン樹脂に前記直鎖ポリプロピレン樹脂Aと前記直鎖ポリプロピレン樹脂Bとが含まれ、且つ、前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cが含まれることがより好ましい。直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとは、微分分布値差D、ヘプタン不溶分(HI)、及び/又は、メルトフローレート(MFR)等が異なり、微細混合状態(相分離状態)となっているため、そのような未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸することによりフィルムを構成する樹脂成分の配置が複雑化する。従って、微分分布値差D、ヘプタン不溶分(HI)、及び/又は、メルトフローレート(MFR)等が異なる直鎖ポリプロピレン樹脂Aと直鎖ポリプロピレン樹脂Bとを含むことに加えて、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cを含むことにより、フィルムを構成する樹脂成分の配置が複雑化することによる延伸フィルムの耐電圧性の向上とともに、微細化された(略)円弧形状の凹凸が形成され、より好適な粗面化を実現することが可能である。
なお、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cではなく、過酸化物による架橋変性により得られる長鎖分岐ポリプロピレン樹脂を用いると、過酸化物による架橋変性により得られる長鎖分岐ポリプロピレン樹脂の有するα晶造核効果によって、キャストシートにはα晶の形成が促進され、β晶の形成が大きく抑制されることになる。α晶を含むキャストシートを延伸しても結晶子の転移は起こらないため、凹凸は形成され難い。従って、ポリプロピレンフィルムを粗面化するためには、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cが好適である。
メタロセン触媒は、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であることが一般的である。メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cは、ポリプロピレンの分岐鎖長や分岐鎖間隔が適度なものとなり、線状ポリプロピレンとの優れた相溶性が得られるため好ましい。また、均一な組成や均一な表面形状が得られるため好ましい。長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの製造において、使用する触媒の種類や使用量以外のその他の各条件、例えば(i)重合方法及び重合の際の温度・圧力等の各条件、(ii)重合の際の反応器の形態、(iii)添加剤の使用有無、種類及び使用量、などは、製造する長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの分子量、分子量分布、微分分布値差D等を考慮した上で、前記直鎖ポリプロピレン樹脂の製造方法の項で説明した各条件と同様とすることができる。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの重量平均分子量Mwは、15万以上60万以下であることが好ましく、20万以上50万以下であることがより好ましく、25万以上45万以下であることがさらに好ましく、35万以上42万以下であることが特に好ましい。前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの重量平均分子量Mwが15万以上60万以下であると、樹脂流動性が適度となる。その結果、キャストシートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易となる。また、キャストシートおよび延伸フィルムの厚みにムラが発生し難くなり、適度な延伸性が得られるので好ましい。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、1.5以上4.5以下であることが好ましく、1.8以上4.2以下であることがより好ましく、2.0以上4.0以下であることがさらに好ましく、2.1以上3.9以下であることが特段好ましく、2.2以上3.0以下であることが特に好ましい。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、4.0以上9.0以下であることが好ましく、4.2以上8.8以下であることがより好ましく、4.5以上8.5以下であることがさらに好ましく5.0以上8.2以下であることが特に好ましい。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの分子量、分子量分布、微分分布値差D等は、上述の通り、触媒や重合条件を調整することによって制御することができる。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cのヘプタン不溶分(HI)は、98.0%以上であることが好ましく、より好ましくは98.2%以上であり、さらに好ましくは98.5%以上である。また、前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cのヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0%以下である。前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂CのHIが上記好ましい範囲である場合、キャストシートにβ晶がより好適に形成され、結果として本実施形態に係るポリプロピレンフィルムの表面を好適に粗面化することができる。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの灰分は、45×10ppm以下(450ppm以下)が好ましく、40×10ppm以下(400ppm以下)がより好ましい。また、前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの灰分は、0×10ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、5ppm以上がより一層好ましく、1×10ppm以上(10ppm以上)がさらに好ましく、10×10ppm以上(100ppm以上)がさらに一層好ましく、20×10ppm以上(200ppm以上)が特に好ましい。前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの灰分が上記好ましい範囲である場合、キャストシートにβ晶がより好適に形成され、結果として本実施形態に係るポリプロピレンフィルムの表面を好適に粗面化することができる。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1~12g/10minが好ましく、0.5~5g/10minがより好ましく、0.7~3.5g/10minがさらに好ましく、1.0~2.2g/10minが特に好ましい。前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの230℃におけるMFRが上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくく、また、延伸時の破断も抑えられる。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部の形成が抑制されるという利点がある。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、より特に好ましくは2.5質量%以上である。また、前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの含有率は、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、より特に好ましくは5質量%以下である。前記ポリプロピレンフィルムは、1種又は2種以上の前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cを含有することができる。
前記長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの代表的市販品としては、例えば日本ポリプロ株式会社製MFX3、MFX6、日本ポリプロ株式会社製MFX8等が挙げられる。
前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を含んでもよい。「他の樹脂」とは、一般的に、主成分の樹脂とされるポリプロピレン樹脂以外の樹脂であって、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。他の樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(1-メチルペンテン)などのポリプロピレン以外の他のポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のα-オレフィン同士の共重合体、スチレン-ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体-ジエン単量体ランダム共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのビニル単量体-ジエン単量体-ビニル単量体ランダム共重合体等が挙げられる。前記ポリプロピレンフィルムは、目的とするポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含むことができる。前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、他の樹脂を好ましくは10質量部以下含んでよく、より好ましくは5質量部以下含んでよい。また、前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、他の樹脂を好ましくは0.1質量部以上含んでよく、より好ましくは1質量部以上含んでよい。
前記ポリプロピレンフィルムは、樹脂成分に加えて、更に、添加剤を少なくとも1種含有してもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレンに使用される添加剤であって、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。添加剤には、例えば、造核剤(α晶造核剤、β晶造核剤)、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の必要な安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー等が含まれる。前記無機フィラーとしては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。前記添加剤を用いる場合、目的とするポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含むことができる。
「造核剤」は、ポリプロピレンに一般的に用いられ、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。
造核剤としては、α晶を優先的に造核させるα晶造核剤とβ晶を優先的に造核させるβ晶造核剤とが挙げられる。
α晶造核剤のうち有機系造核剤としては、分散型造核剤と溶解型造核剤とが挙げられる。分散型造核剤としては、リン酸エステル金属塩系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ロジン金属塩系造核剤等が挙げられる。溶解型造核剤としては、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、アミド系造核剤等が挙げられる。
β晶造核剤としては、アミド系造核剤、ジまたはポリカルボン酸金属塩系造核剤、キナクリドン系造核剤、芳香族スルホン酸系造核剤、フタロシアニン系造核剤、テトラオキサスピロ化合物系造核剤等が挙げられる。
造核剤は、ポリプロピレン原料とドライブレンド又はメルトブレンドし、ペレット化して用いることもできるし、ポリプロピレンペレットと共に押出機に投入して用いることもできる。造核剤を用いることによりフィルムの表面粗さを所望の粗さに調節することができる。造核剤の代表的市販品の例としては、例えばβ晶造核剤として、新日本理化株式会社製のエヌジェスターNU-100が挙げられる。前記ポリプロピレンフィルムがβ晶造核剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)好ましくは1~1000質量ppm、より好ましくは50~600質量ppmである。
「酸化防止剤」とは、一般に酸化防止剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、コンデンサ用フィルムとしての長期使用における劣化抑制及びコンデンサ性能向上に寄与することである。押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能向上に寄与する酸化防止剤を、「2次剤」ともいう。
これらの2つの目的に、2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的に1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
1次剤としては、例えば、2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-パラ-クレゾール(一般名称:BHT)が挙げられる。1次剤は、通常、後述のポリプロピレンフィルムの製造方法において説明するポリプロピレン樹脂組成物の調製の際に、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する目的で添加することができる。この目的でポリプロピレン樹脂組成物に添加される酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない。したがって、前記ポリプロピレンフィルムが1次剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)通常100質量ppm未満である。
2次剤としては、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
「カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤」とは、通常、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とされ、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-ターシャリー-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-ターシャリー-ブチルー4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられるが、高分子量であり、ポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、とりわけ好ましい。
前記ポリプロピレンフィルムは、長期使用時における時間と共に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種類以上含んでもよい。前記ポリプロピレンフィルムがカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1種類以上含有する場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)、好ましくは4000質量ppm以上6000質量ppm以下、より好ましくは4500質量ppm以上6000質量ppm以下である。フィルム中のカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が4000質量ppm以上6000質量ppm以下であることが、適切な効果発現の観点から好ましい。
ポリプロピレンと分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させたポリプロピレンフィルムは、長期耐用性が向上するので好ましい。
「塩素吸収剤」とは、一般に塩素吸収剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。そのような塩素吸収剤を用いる場合、目的とするポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含むことができる。
前記ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸されていることが好ましい。前記ポリプロピレンフィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一般的に知られている二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法により製造することができる。例えば、直鎖ポリプロピレン樹脂A、直鎖ポリプロピレン樹脂B、及び、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cを、必要に応じて他の樹脂、添加剤等と共に混合することにより得られたポリプロピレン樹脂組成物からキャストシートを作製し、次いでキャストシートを二軸延伸することにより製造することができる。
<ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
前記ポリプロピレン樹脂組成物を調製する方法としては、特に制限はないが、直鎖ポリプロピレン樹脂A、直鎖ポリプロピレン樹脂B、及び、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの重合粉あるいはペレットを、必要に応じて他の樹脂、添加剤等と共に、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、直鎖ポリプロピレン樹脂A、直鎖ポリプロピレン樹脂B、及び、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cの重合粉あるいはペレットを、必要に応じて他の樹脂、添加剤等と共に、混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る方法などが挙げられる。
ミキサー、混練機は、特に制限されない。混練機は、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
溶融混練によるブレンドの場合、混練温度は、良好な混練さえ得られれば特に制限はないが、好ましくは170~320℃の範囲であり、より好ましくは200℃~300℃の範囲であり、さらに好ましくは230℃~270℃の範囲内である。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによって、メルトブレンド樹脂組成物のペレットを得ることができる。
ポリプロピレン樹脂組成物の調製の際に、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する目的で、上述の添加剤の項において説明した酸化防止剤としての1次剤を添加することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含む場合、その含有量は、好ましくは樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)1000質量ppm~5000質量ppmである。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない。
上述の添加剤の項において説明したカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を2次剤としてポリプロピレン樹脂組成物に添加することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物がカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)好ましくは100質量ppm~10000質量ppm、より好ましくは5500質量ppm~7000質量ppmである。押出機内では少なからず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤も消費される。
ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。これは、押出機内で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増えるためである。ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含まず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)6000質量ppm~8000質量ppm以下である。
<キャストシートの作製>
キャストシートは、予め作製したドライブレンド樹脂組成物および/またはメルトブレンド樹脂組成物のペレット類を押出機に供給して、加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、好ましくは170℃~320℃、より好ましくは200℃~300℃に加熱溶融してTダイから溶融押し出し、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは80℃~140℃、さらに好ましくは90~140℃、特に好ましくは90~120℃、より特に好ましくは90~105℃の温度(キャスト温度)に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることにより得ることができる。この際、溶融押し出しされた樹脂組成物をエアーナイフで金属ドラムに押さえつけることが好ましい。なお、金属ドラムに接触する側の面が第1の面となり、反対側の面(エアーナイフ側の面)が第2の面となる。
前記キャストシートの厚みは、目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、好ましくは0.05mm~2mm、より好ましくは0.1mm~1mmである。
なお、キャストシートの作製工程中(特に、押出機内)においては、ポリプロピレンは、少なからず熱劣化(酸化劣化)やせん断劣化を受ける。このような劣化の進行度合い、即ち分子量分布や立体規則性の変化は、押出器内の窒素パージ(酸化の抑制)、押出機内のスクリュー形状(せん断力)、キャスト時のTダイの内部形状(せん断力)、酸化防止剤の添加量(酸化の抑制)、キャスト時の巻き取り速度(伸長力)などにより抑制することが可能である。
<延伸処理>
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記キャストシートに延伸処理を施すことによって製造することができる。延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、まずキャストシートを好ましくは100~180℃、より好ましくは140~160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3~7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。この縦延伸工程の温度を適切に調整することにより、β晶は融解しα晶に転移し、凹凸が顕在化する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて好ましくは160℃以上、より好ましくは160~180℃の温度で幅方向に3~11倍に横延伸した後、緩和、熱固定を施して、ロール状に巻回する。
ロール状に巻回されたフィルムは、20~45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、巻き戻されながら(繰り出されながら)、スリッター等で所望の製品幅にスリット加工(断裁)され、各々、再び巻回される。
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された二軸延伸フィルムとなる。
前記ポリプロピレンフィルムには、延伸及び熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行ってもよい。コロナ放電処理を行うことにより、金属蒸着加工工程などの後工程における接着特性を高めることができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスを用いて行うことが好ましい。
コンデンサとして加工するために、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムとしてもよい。前記金属層は、電極として機能する。前記金属層に用いられる金属としては、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、それらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を例示することができる。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
蒸着により金属層を積層する際のマージンパターンも特に限定されるものではないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターンといった、いわゆる特殊マージンを含むパターンをフィルムの片方の面上に施すことが好ましい。保安性が高まり、コンデンサの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的である。
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限無く使用することができる。
前記ポリプロピレンフィルムに金属層を形成する際には、ロール状に巻回されたポリプロピレンフィルムが、巻き戻され(繰り出され)、蒸着膜等の金属層が一方又は両方の面に形成され、再び、巻回される。
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、従来公知の方法で複数積層するか、素子巻き加工(巻回)してフィルムコンデンサとすることができる。
具体的に、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの各マージン部の中央に刃を入れてスリット加工し、表面の一方の面にマージンを有する巻取リールを作製する。
ここで、前記ポリプロピレンフィルムは、第1の面のSpk値(Spk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、及び、第2の面のSpk値(Spk)を用いた前記比率が所定の数値範囲内であるため、ブロッキングが抑制されている。従って、上記のスリット加工時に、ポリプロピレンフィルムがブロッキングし、フィルムに流れ方向のしわが発生することを防止できる。
次に、左マージンの巻取リールと右マージンの巻取リールを用い、幅方向に蒸着部分がマージン部よりもはみ出すように2枚重ね合わせて巻回する(素子巻き加工)。次に、巻回体から芯材を抜いてプレスする。次に、両端面に外部電極を形成し、さらに、外部電極にリード線を設ける。以上により、巻回型のフィルムコンデンサが得られる。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔ポリプロピレン樹脂〕
実施例及び比較例のポリプロピレンフィルムを製造するために使用したポリプロピレン樹脂を、表1に示す。
表1に示す樹脂A1は、プライムポリマー株式会社製の製品である。樹脂A2は、プライムポリマー株式会社製の製品である。樹脂B1は、大韓油化社製のS802Mである。樹脂B2は、大韓油化社製のHPT-1である。樹脂B3は、大韓油化社製である。樹脂C1は、日本ポリプロ株式会社製のMFX6である。樹脂X1は、ボレアリス社製のWB135HMS(Daploy HMS-PP)である。なお、MFX6は、メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂である。WB135HMSは、過酸化物による架橋変性により得られた長鎖分岐ポリプロピレン樹脂である。樹脂A1、樹脂A2は、直鎖ポリプロピレン樹脂Aに相当する。樹脂B1、樹脂B2、樹脂B3は、直鎖ポリプロピレン樹脂Bに相当する。樹脂C1は、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cに相当する。樹脂A1、樹脂A2、樹脂B1、樹脂B2、樹脂B3は、いずれもホモポリプロピレン樹脂である。樹脂X2はプライムポリマー株式会社製の製品であり、直鎖状のホモポリプロピレンである。
表1に、各樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)を示した。これらの値は、原料樹脂ペレットの形態での値である。測定方法は以下の通りである。
<直鎖状ポリプロピレン樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、各樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)を測定した。
具体的に、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC装置であるHLC-8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel GMHHR-H(20)HTを3本連結して使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、トリクロロベンゼンを、1.0ml/minの流速で流して測定した。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成し、測定値をQ-ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、z平均分子量(Mz)を得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。また、このMzとMnの値を用いて分子量分布(Mz/Mn)を得た。
<長鎖分岐ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)を測定した。
東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC装置であるHLC-8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgelGMHHR-H(20)HTを3本連結し、さらに、TSKgel guardcolumnHHR(30)1本使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、1,2,4-トリクロロベンゼンに0.05wt%の2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-パラ-クレゾール(一般名称:BHT)を、1.0ml/minの流速で流して測定し、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びz平均分子量(Mz)を得た。このMzとMnの値を用いて分子量分布(Mz/Mn)を、また、MwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。測定条件は、以下の通りである。
GPC装置 :HLC-8121GPC/HT(東ソー製)
光散乱検出器:DAWN EOS(Wyatt Technology社)、
カラム :TSKgel guardcolumnHHR(30)(7.8mmID×7.5cm)×1本+TSKgelGMHHR-H(20)HT(7.8mmID×30cm)×3本(東ソー製)
溶離液 :1,2,4-トリクロロベンゼンに0.05wt%のBHT
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :2mg/mL
注入量 :300μL
カラム温度 :140℃
システム温度:40℃
前処理 :試料を精秤し、溶離液を加えて140℃で1時間振とう溶解させ、0.5μmの焼結金属フィルターで熱ろ過を行った。
<対数分子量log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量log(M)=6.0のときの微分分布値、及び、微分分布値差Dの測定>
各樹脂について、対数分子量log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量log(M)=6.0のときの微分分布値を、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。また、Log(M)=4.5のときの微分分布値とLog(M)=6.0のときの微分分布値との差を微分分布値差Dとした。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。結果を表1に示す。
<メルトフローレート(MFR)の測定>
各樹脂について原料樹脂ペレットの形態でのメルトフローレート(MFR)を、東洋精機株式会社のメルトインデックサを用いてJIS K 7210の条件Mに準じて測定した。具体的には、まず、試験温度230℃にしたシリンダ内に、4gに秤りとった試料を挿入し、2.16kgの荷重下で3.5分予熱した。その後、30秒間で底穴より押出された試料の重量を測定し、MFR(g/10min)を求めた。上記の測定を3回繰り返し、その平均値をMFRの測定値とした。結果を表1に示す。
<ヘプタン不溶分(HI)の測定>
各樹脂について、10mm×35mm×0.3mmにプレス成形して約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。結果を表1に示す。
<灰分の測定>
各樹脂の灰分について、下記のように測定した。
試料約200gを秤量し、白金皿へ移して800℃で40分間で灰化した。得られた灰分残渣から灰分の割合(ppm)を測定した。結果を表1に示す。
<メソペンタッド分率>
各樹脂を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)を用いて、以下の条件で測定した。
高温型核磁気共鳴(NMR)装置:日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)、JNM-ECP500
観測核:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4,500回
シフト基準:CH3(mmmm)=21.7ppm
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載を参考とした。
Figure 0007020393000001
上述の樹脂を用いて、実施例、及び、比較例のポリプロピレンフィルムを作製し、その物性を評価した。
<ポリプロピレンフィルムの作製>
(実施例1)
樹脂A1と樹脂B1と樹脂C1とをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(樹脂A1):(樹脂B1):(樹脂C1)=64:33:3とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、樹脂温度250℃で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させてキャストシートを作製した。この際、溶融押し出しされた樹脂組成物をエアーナイフで金属ドラムに押さえつけながらキャストシートを作製した。得られた未延伸のキャストシートを130℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4.5倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。引き続き、延伸フィルムをテンターに導いて、158℃の温度で幅方向に8倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して巻き取り、40℃程度の雰囲気中でエージング処理を施して実施例1に係るポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例2、比較例1~比較例6)
原料樹脂のドライブレンドの際の混合比率を表2の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2、比較例1~比較例6に係るポリプロピレンフィルムを得た。
ただし、比較例6については、押出成形時のメルトフラクチャーにより平滑なキャストシートを作製できなかった。そのため、当該キャストシートを延伸した時に破断が起こった。
(実施例3~実施例5、比較例7、比較例8)
原料樹脂のドライブレンドの際の混合比率を表2の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3~実施例5、比較例7、比較例8に係るポリプロピレンフィルムを得た。
Figure 0007020393000002
<ポリプロピレンフィルムの厚さ測定>
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムの厚さを測定した。具体的に、シチズンセイミツ社製の紙厚測定器MEI-11を用いて100±10kPaで測定すること以外、JIS-C2330に準拠して測定した。結果を表3に示す。
<第1の面のSvk値(Svk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、第2の面のSpk値(Spk)、第1の面のSq値(Sq)、第2の面のSq値(Sq)、第1の面のSa値(Sa)、第2の面のSa値(Sa)、第1の面のSk値(Sk)、及び、第2の面のSk値(Sk)の測定>
以下、第1の面を「A面」と呼び、第2の面を「B面」と呼ぶことがある。表3中においても、A面、B面という用語を使用する場合がある。
光干渉式非接触表面形状測定機として(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用した。
まず、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの計測を行った。この操作を対象試料(ポリプロピレンフィルム)の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で10箇所について行った。
次に、得られたデータに対して、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。これにより、粗面化表面の状態を適切に計測できる状態とした。
次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」にある、「ISOパラメータ」を用いて解析を行った。
最後に、上記10箇所で得られた各値(Svk、Spk、Svk、Spk、Sq、Sq、Sa、Sa、Sk、Sk)について、それぞれ平均値を算出した。以上により、第1の面のSvk値(Svk)、第1の面のSpk値(Spk)、第2の面のSvk値(Svk)、第2の面のSpk値(Spk)、第1の面のSq値(Sq)、第2の面のSq値(Sq)、第1の面のSa値(Sa)、第2の面のSa値(Sa)、第1の面のSk値(Sk)、及び、第2の面のSk値(Sk)を決定した。結果を表3に示す。なお、表3には、比Spk/Spk、比Svk/Svk、比Sq/Sq、比Sa/Sa、比Sk/Skの値も合わせて示した。
<楕円密度の測定>
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムの第1の面(A面)、及び、第2の面(B面)の楕円密度を測定した。具体的に、デジタルスコープ(株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-2000)を用いて、レンズ倍率:100倍、測定方法:反射測定、視野範囲:3.4mm×2.6mmにてポリプロピレンフィルムの各面を観察し、その視野範囲内に観測された「楕円」の数を計測した。その後、単位面積当たりに換算した。結果を表3に示す。
なお、一方の軸の長さLμmと他方の軸の長さSμmとしたきにS≦L且つ1≦L≦300を満たすものを、楕円密度を算出する際に考慮する「楕円」とした。これを満たさないものは、楕円密度を算出する際に考慮しなかった(楕円密度を算出する際の「楕円」としてカウントしなかった)。
<平均長軸長さの測定>
楕円密度の測定で観測された楕円の長軸の平均値を算出した。結果を表3に示す。
<楕円完全度の測定>
まず、光干渉式非接触表面形状測定機として、(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式R5500GML)」を使用し、WAVEモードにて530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの表面形状データを得た。この操作を対象試料(ポリプロピレンフィルム)の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で10箇所について行った。
次に、得られたデータについて、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。
上述のようにして得られた10箇所の各表面形状データの投影画像から、対をなす円弧からなるクレーター投影画像を3個ずつ抽出した。なお、投影画像は、微細凹凸のうちの高さが0.02μm以上の部分をフィルム表面へ投影した投影画像とした。
クレーター投影画像を抽出するにあたっては、異なるβ型球晶に基づく円弧同士の重なり合いが認められないクレーター投影画像を3個ずつ抽出した。3個の抽出方法は、目視による楕円の面積で四分位数(第1四分位数、第2四分位数(すなわち中央値)および第3四分位数)となる楕円を抽出することとした。
次に、抽出した3個のクレーター投影画像のそれぞれについて、対をなす円弧の合計長さLtと、対をなす円弧を含む仮想円環の全周長さをLcとを計測し、比(Lt/Lc)を求めた。そして、得られた合計30個の前記比の値を平均し、比(Lt/Lc)の平均値αを得た。
仮想円環の決定と、LtおよびLcの計測には、光干渉式非接触表面形状測定器VertScan2.0の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「エッジ曲線長」を用いて行った。具体的手順は以下の通りである。
(1)まず、図3(a)に示すように、円弧30aおよび円弧30b上における、互いに最も離れた2点をP、Pとし、PとPを結んだ直線(以下、直線(P-P)という。)を決定する。
(2)ついで、図3(b)に示すように、直線(P-P)の一方側(図3中では、直線(P-P)よりも上方側。)に位置する部分の円弧30a、30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P-P)が長軸となるような楕円(E)を導き出す。そして、この楕円(E)を構成する曲線(楕円(E)の周の一部)により、上記一方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40aとする。なお、図3では、楕円(E)のうち、補完線40aに相当する部分以外を図示略としている。
(3)ついで、図3(c)に示すように、直線(P-P)の他方側(図3では、直線(P-P)よりも下方側。)に位置する部分の円弧30a、30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P-P)が長軸となるような楕円(E)を導き出す。そして、この楕円(E)を構成する曲線(楕円(E)の周の一部)により、上記他方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40bとする。なお、図3では、楕円(E)のうち、補完線40bに相当する部分以外を図示略としている。
(4)このように決定された補完線40a、40bと、円弧30a、30bとで連結された図3(c)に示される円環が仮想円環である。
(5)そして、この仮想円環の周における各位置(周のある点を基準とした際の距離。)に対する、各位置における微細凹凸20の高さを示す、微細凹凸20の高さプロファイルを描く。この高さプロファイルから、高さ0.02μm以上の部分に対応するクレーター投影画像GにおけるLtおよびLcを読み取る。
なお、最小二乗法の実施に際しては、それぞれ30個(n=30)の位置データを用いる。
<ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊強度の測定(耐電圧性評価)>
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、直流電源を使用し、100℃、125℃で、ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊電圧値を12回測定した。絶縁破壊電圧値VDCを、フィルムの厚み(μm)で割り、12回の測定結果中の上位2点および下位2点を除いた8点の平均値を、絶縁破壊強度ES(VDC/μm)とした。結果を表3に示す。
なお、比較例1、比較例4では、120℃での絶縁破壊強さが485VDC/μm未満であり、耐電圧性に劣ることがわかる。
<金属蒸着ロールのブロッキング評価>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗15Ω/□にてアルミニウム蒸着を施すことにより、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得た。パターン蒸着はワイヤー方式による真空蒸着法に従って行い、ヘビーエッジ蒸着はるつぼ方式による真空蒸着法に従って行った。蒸着に用いたフィルムは幅620mmであり、蒸着後のフィルム長さは50,000mであった。この幅620mmの金属層一体型ポリプロピレンフィルムの各マージン部の中央に刃を入れて、スリット速度350m/分で、幅30mm、長さ10,000mの小巻取になるようにスリット加工した。その際、金属蒸着巻取繰り出し部で蒸着面と非蒸着面とのブロッキングによる流れ方向のしわが観察されなかった場合をAA、しわとまでは言えないわずかなスジが観察された場合をA、幅方向端部で流れ方向のしわが観察された場合をB、幅方向中央部でも流れ方向のしわが観察された場合をCとして評価した。結果を表3に示す。
<灰分の測定>
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムについて、下記のように測定した。
試料約200gを秤量し、白金皿へ移して800℃で40分間で灰化した。得られた灰分残渣から灰分の割合(ppm)を測定した。結果を表3に示す。
<スリット工程加工性評価>
幅620mmの金属蒸着巻取を、幅30mm、長さ10,000mになるように、スリット速度350m/分でスリット加工を行い、幅方向20個に分割した。その結果、得られた20個の小巻取全ての端面ずれ(巻取時においてフィルムが左右へ蛇行し、小巻取の端面が不揃いになったときのずれ長さ)がスリット幅の0.5%以内である場合をA、20個の小巻取全ての端面ずれがスリット幅の1.0%以内であり且つ上記A評価にならない場合をB、20個の小巻取全ての端面ずれがスリット幅の2.0%以内であり且つ上記A評価にもB評価にも該当しない場合をC、20個の小巻取の端面ずれがスリット幅の2.0%超えが1つ以上存在した場合をDとして評価した。結果を表3に示す。
<素子巻き加工性評価>
スリット加工性評価により得られた小巻取をのうち、左マージンの巻取リールと右マージンの巻取リールを用い、幅方向に蒸着部分がマージン部よりもはみ出すように2枚重ね合わせて巻回した(素子巻き加工)。巻回は、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機 3KAW-N2型を用い、巻き取り張力200gにて、1360ターン行った。その際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、しわやずれが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした(以下素子巻収率と称する)。素子巻収率は高いほど好ましい。95%以上を良好「○」、95%未満を不良「×」として評価した。結果を表3に示す。
Figure 0007020393000003
<コンデンサの作製、及び、静電容量>
実施例で得られたポリプロピレンフィルムを用いて、以下の通りコンデンサを作製した。ポリプロピレンフィルムに、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗15Ω/□にてアルミニウム蒸着を施すことにより、ポリプロピレンフィルムの片面に金属膜を含む金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得た。60mm幅にスリットした後に、2枚の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機3KAW-N2型を用い、巻き取り張力250gにて、1076ターン巻回を行った。素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて15時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサを得た。扁平型コンデンサの端面にリード線をはんだ付けし、その後エポキシ樹脂で封止した。出来上がったコンデンサの静電容量は、いずれも75μF(±5μF)であった。

Claims (7)

  1. 第1の面と第2の面とを有するポリプロピレンフィルムであって、
    主成分としてポリプロピレン樹脂を含有し、
    前記第1の面のSpk値(Spk)と前記第2の面のSpk値(Spk)との比率Spk/Spkが0.490以上0.730以下であり、
    前記第1の面のSvk値(Svk)と前記第2の面のSvk値(Svk)との比率Svk/Svkが0.735以上1.250以下であり、
    前記ポリプロピレン樹脂は、
    分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が8.0%以上である直鎖ポリプロピレン樹脂Aと、
    分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が8.0%未満である直鎖ポリプロピレン樹脂Bと、
    メタロセン触媒を用いて重合された長鎖分岐ポリプロピレン樹脂Cとを含み、
    二軸延伸されていることを特徴とするポリプロピレンフィルム。
  2. コンデンサ用であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
  3. 前記第1の面のSq値(Sq)と前記第2の面のSq値(Sq)との比率Sq/Sqが0.4~1.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. 前記第1の面のSa値(Sa)と前記第2の面のSa値(Sa)との比率Sa/Saが0.6~1.0であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のポリプロピレンフィルム。
  5. 請求項1~のいずれか1に記載のポリプロピレンフィルムと、
    前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
  6. 巻回された請求項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、請求項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有することを特徴とするフィルムコンデンサ。
  7. 請求項1~のいずれか1に記載のポリプロピレンフィルムが、ロール状に巻回されていることを特徴とするフィルムロール。
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