JP2019172922A - ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ - Google Patents

ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ Download PDF

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佑太 中西
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正寿 大倉
今西 康之
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康之 今西
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Abstract

【課題】高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現できるポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供する。【解決手段】本発明のポリプロピレンフィルムは、三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の表面アスペクト比Strが0.3〜0.99であり、表面の光沢度が130%以上150%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサに関する。
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。
この中でもコンデンサ用途は、その優れた耐電圧性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。
最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような市場、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途の要求を受け、ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊電圧を向上させ、生産性、加工性を維持させつつ、一層の薄膜化が必須な状況となってきている。
かかるポリプロピレンフィルムは、絶縁破壊電圧の向上、生産性、加工性および耐熱性の観点からフィルム面内高倍率延伸が必要であり、かつ、フィルム表面は適度な平滑性と易滑性を両立する面設計とすることが特に重要である。ここで耐熱性という観点では、将来的に、SiCを用いたパワー半導体用途を考えた場合、使用環境の温度が高温になると言われている。コンデンサとしてさらなる耐熱化と耐電圧性の要求から、110℃を超えた高温環境下でのフィルムの絶縁破壊電圧の向上が求められている。しかしながら、非特許文献1に記載のように、ポリプロピレンフィルムの使用温度上限は約110℃といわれており、このような温度環境下において絶縁破壊電圧を安定維持することは極めて困難であった。
これまでポリプロピレンフィルムにおいて、薄膜でかつ高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できるポリプロピレンフィルムを得るために重要となる表面制御をする手法として、キャスト温度を所定の温度に調整して、キャストシートに多数のポリプロピレンβ型球晶を生成させ、延伸工程でより高密度のα型球晶に結晶転移させることで、クレーター状の凹凸を形成させる手法が提案されている。(例えば、特許文献1、2、4)。また重量平均分子量(Mw)を調整し、クレーター状表面形状の形成に重要なβ型球晶のサイズを、キャストシート作成時に制御することで絶縁破壊電圧を向上させる提案が特許文献3でなされている。さらに長鎖状ポリプロピレンに分岐鎖状のポリプロピレンをブレンドすることで、従来のβ晶法よりもさらに微細な凹凸が形成され、コンデンサ用途等に好適な突起の均一性に優れ、粗さ密度が高く、粗大突起の少ない平滑な表面を形成できることが特許文献5に開示されている。さらにまた、特許文献6では分子量が低いポリプロピレン樹脂をブレンドすることによって、結晶子サイズが小さく高温での耐電圧特性に優れたフィルムとなることが提案されている。
しかしながら、特許文献1、2、4および5に記載のポリプロピレンフィルムは、β型球晶からの表面形成故に微細突起以外にも粗大な突起が多く存在するため、コンデンサとしたときの耐電圧性が十分とは言い難いものであった。また特許文献3、6に記載のポリプロピレンフィルムは、低分子量のポリプロピレンを含有しているため、フィルムの結晶性が十分に高くなく、特に高温環境下での耐電圧性能に劣る場合があった。
特開2014−077057号公報 特開2014−001265号公報 特開2008−133446号公報 特開2006−290979号公報 WO2014/142264号公報 特開2015−201610号公報
河合基伸、「フィルムコンデンサ躍進、クルマからエネルギーへ」、日経エレクトロニクス、日経BP社、2012年9月17日号、P.57−62
そこで、本発明は、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現できるポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討の結果、本発明に至ったものである。本発明は、三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面の表面アスペクト比Strが0.3〜0.99であり、表面の光沢度が130%以上150%未満であるポリプロピレンフィルムである。
本発明により、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現できるポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の表面アスペクト比Strが0.3〜0.99であり、表面の光沢度が130%以上150%未満である。なお、本発明において、ポリプロピレンフィルムをフィルムと称する場合がある。
本発明のポリプロピレンフィルムは、三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)の断面解析により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の表面アスペクト比Strが0.3〜0.99である。好ましくは0.4〜0.98であり、さらに好ましくは0.7〜0.97である。表面アスペクト比Strが0.3未満であると、表面に筋状の凹凸が存在している事を意味し、筋状凹凸に対してフィルム面内垂直方向へのエア抜け性が低下し、巻き取り性が悪化する場合がある。表面アスペクト比Strは、1.0に近い値ほどフィルム表面の凹凸形状が等方的でありエア抜け性を付与できる。なお本発明では2軸延伸を行うことから、表面アスペクト比Str=0.99が実質的な上限値である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは表面が平滑でありながら素子加工性を向上させ、耐電圧性の向上と両立させる観点から、少なくとも片表面の光沢度が130%以上150未満である。光沢度は135%以上149%以下が好ましく、140%以上148%以下がさらに好ましい。光沢度が130%未満の場合、フィルム表面での光散乱密度が高いことから、表面が過度に粗面化し、絶縁破壊電圧の低下を生じ易くなる場合がある。光沢度が150以上の場合は、表面が過度に平滑化されていることを意味し、フィルムの滑りが極端に低下しやすく、ハンドリング性に劣り、製膜の搬送時、蒸着工程および素子加工時にシワが生じる場合がある。
ポリプロピレンフィルムの表面粗さおよび光沢度を制御する手法として、例えばβ型球晶からα型球晶への結晶転移を利用する手法や、フィルム表層に無機粒子を添加する手法、ポリプロピレンとは非相溶の樹脂をブレンドし、表層にドメインを形成する手法などが挙げられるが、これらいずれの手法でもStrと光沢度を上記した好ましい範囲に制御することは困難であった。すなわちβ型球晶をからα型球晶への結晶転移を利用する手法ではキャストシートを縦延伸する工程で球晶の赤道方向に応力が集中することで赤道方向の端部が隆起したクレーター状突起となるためStrの値は低くなり、またβ型球晶からα型球晶への結晶転移を利用する手法は表面に粗大な凹凸が形成されるため上記した好ましい光沢度が得られない場合がある。表層に無機粒子を添加する手法では延伸工程において粒子周辺にフィブリルが形成されるためフィルムの長手方向(以降「MD」という場合があり、幅方向は「TD」という場合がある)に向かって山脈状の突起となるため表面アスペクト比が低くなる場合がある。ポリプロピレンとは非相溶の樹脂をブレンドし表層にドメインを形成する手法では、口金から樹脂を押し出す際に非相溶樹脂ドメインが流れ方向にせん断を受け配向することで山脈状ドメインが形成され、表面アスペクト比が低くなる場合がある。
本発明者らは鋭意検討することにより、ポリプロピレンフィルムの表面に適度な高さの突起を形成させ、表面アスペクト比および光沢度を制御することに着想した。表面アスペクト比と光沢度を制御することでフィルム同士あるいは搬送ロールとの滑り易さを発現し、またコンデンサ素子作成時の加工性およびフィルムを巻回もしくは積層したコンデンサとした場合に、フィルムとフィルムとの層間ギャップの均一性を発現し、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下での耐電圧性と信頼性を得られることを見出したものである。ここで、ポリプロピレンフィルムの表面のStrおよび光沢度をそれぞれ上記した範囲内に制御するには、後述するエンボス加工によって処理条件を好ましい範囲内で制御することや、溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムにおけるエンボス処理とは、ポリプロピレンフィルムを微細な凹凸を有するエンボスロール被処理材(本発明ではポリプロピレンフィルム)に荷重をかけて押し付けることで、エンボスロール表面の凹凸を転写させる技術をいう。フィルム表面にエンボス処理が施される工程は特に限定されないが、例えば延伸前の未延伸フィルムに対してエンボス処理する、一方向に延伸された後にエンボス処理する、二軸に延伸された後の巻き取り前にエンボス処理する、巻き取り後、後加工としてエンボス処理するなどがあげられる。本発明のポリプロピレンフィルムにおいて前述の表面粗さを達成しようとする場合、延伸工程を経ることで表面突起を緻密で均一で微細に形成でき、またエンボス処理により耐電圧を低下させない観点から、未延伸シートにエンボス処理を施した後、二軸延伸を施すことが特に好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、メソペンタッド分率が0.960以上であることが好ましい。より好ましくは、0.970以上、さらに好ましくは0.980以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温環境下での絶縁破壊電圧を向上できるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。高メソペンタッド分率のポリプロピレンフィルムを得る為には、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒において、電子供与成分の選定を適宜行う方法等が好ましく採用されたポリプロピレン樹脂を用いる。ポリプロピレンフィルムのメソペンタッド分率が0.960未満の場合、ポリプロピレンの規則性が低い為、フィルムの高温環境下での強度や絶縁破壊電圧の低下を招いたり、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工での、フィルム搬送中に破膜する場合がある。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、冷キシレン可溶部(以下CXS)が1.5質量%未満であることが好ましい。ここで冷キシレン可溶部(CXS)は、立体規則性が低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当すると考えられる。CXSが1.5質量%を超える場合にはフィルムの絶縁破壊電圧が低下したり、熱寸法安定性が低下したり、もれ電流が増加する等の問題を生じることがある。従って、CXSはより好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1.1質量%以下である。このようなCXSを有するポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等が使用できる。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、好ましくはメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分(230℃、21.18N荷重)、より好ましくは2〜5g/10分(230℃、21.18N荷重)であることが、製膜性の点から好ましい。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、使用するポリプロピレンの平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンの単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。他の不飽和炭化水素の共重合量またはブレンド量は、絶縁破壊電圧、耐熱性の点から、共重合量では1mol%未満とすることが好ましく、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、実質的にポリプロピレン単体のみからなることが好ましい。ここで実質的にポリプロピレン単体のみとは、ポリプロピレンとは異なる熱可塑性樹脂の含有量が0.1質量%未満、有機粒子もしくは無機粒子の含有量が0.01質量%未満、分岐鎖状ポリプロピレンの含有量が0.05質量%未満であるポリプロピレン樹脂である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含有してもよい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサとした場合に、特に高温環境下において、フィルム非晶部を流れる漏れ電流を低減でき、コンデンサの自己発熱に伴う温度上昇による容量低下やショート破壊、耐電圧性の低下などを抑制でき、信頼性を向上させる観点から、結晶子サイズが12.0nm以下であることが好ましい。より好ましくは11.5nm以下、さらに好ましくは11.0nm以下、最も好ましくは10.5nm以下である。上記観点から、結晶子サイズは小さいほど好ましいが、実質9nmが下限である。上記した結晶子サイズは、たとえば高メソペンタッド分率のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内にすることで制御できる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、表面を適度に粗面化し、フィルム層間間隙の均一性、フィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さ、コンデンサ素子作成時の加工性、およびコンデンサとしての信頼性を得る観点から少なくとも一方の表面の突起の算術平均高さSaが5〜30nmであることが好ましく、より好ましくは7〜25nm、さらに好ましくは9〜20nmである。少なくとも一方の表面の突起の算術平均高さSaが5nm未満であると表面が過度に平滑化しているためフィルムの滑りが極端に低下することでハンドリング性が悪くなり、シワの発生など、素子加工性が劣る場合がある。またコンデンサとして連続使用する際にシワ等の影響で容量変化が大きくなったり、フィルムを積層したコンデンサとした場合にフィルム層間の適度な隙間がないため自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し難くコンデンサの信頼性が低下する場合がある。他方、少なくとも一方の表面の突起の算術平均高さSaが30nmを超えると耐電圧の低下に影響する場合がある。
本発明のポリプロピレンフィルムは、表面を適度に粗面化しフィルム層間間隙の均一性、フィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さ、コンデンサ素子作成時の加工性およびコンデンサとしての信頼性を得る観点から、少なくとも一方の表面の突起の最大高さSzが100〜500nmであることが好ましく、より好ましくは100〜350nm、さらに好ましくは100〜200nmである。少なくとも一方の表面の突起の最大高さSzが100nm未満であると表面が過度に平滑化しているためフィルムの滑りが極端に低下することでハンドリング性が悪くなり、シワの発生など、素子加工性が劣る場合がある。また、コンデンサとして連続使用する際にシワ等の影響で容量変化が大きくなったり、フィルムを積層したコンデンサとした場合にフィルム層間の適度な隙間がないため自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し難くコンデンサの信頼性が低下する場合がある。他方、少なくとも一方の表面の突起の最大高さSzが500nmを超える場合は、粗大突起として影響し、耐電圧の低下や厚み均一性が得られにくく、コンデンサとして連続使用時にシワ等の影響で容量変化が大きくなったりする場合がある。突起の算術平均高さSaおよび最大高さSzを上記の好ましい範囲に制御するには、溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、エンボス処理条件を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、耐電圧特性を向上させながら素子加工性を向上させる観点から、フィルムを重ね合わせた際の静摩擦係数(μs)が0.1以上1.5未満であることが好ましい。静摩擦係数μsが0.1未満であると、フィルムが滑りすぎて製膜時の巻き取りや素子加工時に巻きずれが発生する場合がある。静摩擦係数μsが1.5以上であると、フィルムの滑りが極端に低下し、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなったり、素子加工性が劣ったりすることがある。静摩擦係数μsは、より好ましくは、0.2以上1.0以下、さらに好ましくは0.3以上0.7以下である。静摩擦係数μsを上記の好ましい範囲に制御するには、高メソペンタッド分率のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、エンボス処理条件を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、特に高温環境下で用いられる自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)等に要求される薄膜の耐熱フィルムコンデンサ用に好適である観点から、フィルム厚みは0.5μm以上50μm未満の範囲である。より好ましくは0.6μm以上25μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上10μm以下であり、上記耐熱フィルムコンデンサ用途としては特性と薄膜化によるコンデンササイズのバランスから0.8μm以上4μm以下が最も好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現させるため、130℃でのフィルム絶縁破壊電圧が400V/μm以上であることが好ましい。130℃でのフィルム絶縁破壊電圧が400V/μm未満であると、コンデンサとした場合に高温環境下において容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。130℃でのフィルム絶縁破壊電圧は、より好ましくは415V/μm以上、さらに好ましくは430V/μm以上、最も好ましくは445V/μm以上である。フィルム絶縁破壊電圧を上記した好ましい範囲内に制御するには、たとえば、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上とし、長手方向に一軸延伸後の幅方向への二軸延伸直前の予熱温度を、幅方向の延伸温度+5〜+15℃とすること、二軸延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプは限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では金属箔とフィルムとの併せ巻きコンデンサ、金属蒸着フィルムコンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。しかしながら本発明のフィルムの特性から、特に金属蒸着フィルムコンデンサとして好ましく使用される。形状の観点では、巻回式であっても積層式であっても構わない。
ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難である。したがって、本発明のポリプロピレンフィルムは、金属付着力を向上する目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜75mN/m、好ましくは39〜65mN/m、最も好ましくは41〜55mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、二軸延伸、熱処理および弛緩処理されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、フィルムの製膜安定性、結晶・非晶構造、表面特性、機械特性および熱寸法安定性を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法を説明する。まず、ポリプロピレンを支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとする。この未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して、逐次二軸延伸せしめる。その後、熱処理および弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法において、メゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムにエンボス処理を施し、その後、二軸延伸せしめることが特に好ましい。以下、より具体的に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、ポリプロピレンを単軸押出機から溶融押出し、濾過フィルターを通した後、230〜280℃、より好ましくは230〜260℃の温度でスリット状口金から押し出す。スリット状口金から押し出された溶融シートを、10〜110℃の温度に制御されたキャスティングドラム(冷却ドラム)上で固化させ、未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。
未延伸ポリプロピレンフィルムは、メゾ相構造を有していることがより好ましく、メゾ相分率として20%以上が好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは70%以上である。ここで未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を算出するには、未延伸ポリプロピレンフィルムを広角X線回折で測定し、X線回折プロファイルを用いて算出する。得られたX線回折プロファイルをピーク分離ソフトウェアで処理して、メゾ相、α晶、非晶のプロファイルに分離し、メゾ相分率を算出する。ここでメゾ相とは、結晶(α晶)と非晶の中間相であり、溶融状態から非常に早い冷却速度で固化させた際に特異的に生成する。本発明において、メゾ相を形成している、またはメゾ相構造を有するとは、上記メゾ相分率が20%以上であることをいう。α晶に由来する回折プロファイルとは、回折角(2θ)が10〜30度の範囲での広角X線回折測定において観測される、14.1度付近、16.9度付近、18.6度付近、21.6度付近および21.9度付近の5つのピークからなるものである。メゾ相に由来する回折プロファイルとは、15度付近と21度付近の2つのブロードなピークからなるものである。非晶に由来する回折プロファイルとは、回折角が16.2度付近のブロードなピークであり、溶融状態のポリプロピレンを広角X線回折で測定することで得られる。
溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては、静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために、製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムの機械特性の向上、電気特性の向上、結晶子サイズの小径化、表面の光沢度の向上の観点から、キャスティングドラムの温度は、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは10〜60℃、最も好ましくは10〜30℃である。特に、キャスティングドラムの温度を10〜30℃とすることで未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高め、該未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有するようにすることができる。
前記のメゾ相構造は未延伸ポリプロピレンフィルムの段階で形成させることが望ましい。一般的にポリプロピレンを結晶化させると球晶が成長することが知られているが、結晶化した未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸すると、球晶部と球晶部と間の非晶部で延伸応力に差が生じ、局所的な延伸斑が発生し耐電圧低下を生じやすくなる。一方、メゾ相は球晶を生成しないため延伸斑が生じず、優れた耐電圧を発現することができる。未延伸ポリプロピレンフィルムでメゾ相を効率的に形成するには、結晶生成を抑える必要があるが、ポリプロピレンは溶融後の冷却工程で、非常に結晶生成しやすい。特に、立体規則性の高いホモポリプロピレンを用いると非常に結晶生成しやすくなる為、メゾ相の形成を阻害してしまう。結晶生成を抑える為に、一般的にはメソペンタッド分率の低いポリプロピレンを使用したり、プロピレン−エチレン共重合体などの共重合体を用いる手法が用いられる。しかしながら、そういった手段を用いると、フィルムの高温環境下での機械特性が低下したり、熱収縮率が増加する場合がある。そこで、本発明のプリプロピレンフィルムでは結晶生成を抑えるための手法として、たとえば、キャスティングドラムの温度を40℃以下とすること、未延伸ポリプロピレンフィルムの厚さを300μm以下とすること、キャストドラム上の未延伸ポリプロピレンフィルムに冷風を当てて冷却効率を高めること、また、口金のリップ部の温度を上流の短管部分より高く設定する等が挙げられ、該手法を適宜組み合わせることにより、結晶生成を抑制することができる。口金リップ部を昇温することによる効果は、ポリマーとリップ部との摩擦が軽減され、剪断による結晶化を抑えることができるためと推測している。
二軸延伸フィルムの表面に緻密で微細な突起を均一に形成する観点から、未延伸ポリプロピレンフィルムをエンボス処理することが好ましく、メゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムをエンボス処理することが特に好ましい。エンボス処理は、特に限定されないが、フィルム処理面を微細な凹凸を有するエンボスロールと接するように配置し、フィルム非処理面にはバックアップロールを設け、エンボスロールとバックアップロールとの間にフィルムを走行させ、エンボスロールをフィルムに押し付けることにより処理を行うことが好ましい。なお、エンボス処理の回数は特に制限はなく、1回であっても、必要に応じ2回以上であってもよい。またエンボス処理強さはフィルム表面に触れているエンボスロールの表面形状、エンボスロールの押付圧、フィルムの搬送速度、フィルム表面の温度、バックアップロールの材質、硬度などによって適宜変更できる。エンボスロールを押し付ける線圧は0.1〜10.0kN/cmが好ましく、より好ましくは1.0〜6.0kN/cm、さらに好ましくは1.5〜4.0kN/cmである。エンボス処理を行うフィルムの表面温度は25℃〜135℃が好ましく、より好ましくは25〜115℃、さらに好ましくは25〜95℃、最も好ましくは25〜75℃である。フィルムを加熱する方法は特に限定されないが、フィルム搬送するロールを加熱したり、フィルムに近赤外ヒーターを照射したり、熱風を吹き付けるなどの手段によりフィルム温度を制御できる。
エンボスロールにはサンドブラストやビーズブラストによって微細な凹凸を付与したものや、斜格子柄、縦線柄、横線柄、梨地柄などが好適に用いられるが、中でもサンドブラストやビーズブラストによって微細な凹凸を付与したものが好ましい。サンドブラストによって微細な凹凸を付与したエンボスロールを採用する場合には、研磨砂の番手は#80〜#500が好ましく、より好ましくは#100〜#450、さらに好ましくは#120〜400である。エンボスロールの材質は特に限定されないが、効率よく凹凸を付与する観点からスチールロールが好ましく、ロール粗さは十点平均粗さRz=1〜200μm、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは3〜20μmである。エンボスロールの十点平均粗さRzが上記範囲より小さい場合、フィルムの突起形成が不十分となり、滑りが極端に低下しハンドリング性が悪くなり素子加工性が劣る場合がある。エンボスロールの十点平均粗さRzが上記範囲より大きい場合には、フィルムに転写される凹凸が大きすぎるために耐電圧の低下を招いたり、延伸工程においてフィルム破れが発生する可能性がある。またバックアップロールの材質は特に限定されないが、エンボスロール押付時に適度な反発力が生じることからデュロメータによって測定される硬度A50〜90°のゴムロールが好ましい。
次に、未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、フィルムの表面に緻密で微細な突起を均一に形成できる観点から、未延伸ポリプロピレンフィルムにエンボス処理を施した後に二軸延伸することが特に好ましい。エンボス処理後の未延伸ポリプロピレンフィルムを70〜150℃、好ましくは80〜140℃に保たれたロール間に通して予熱し、引き続き未延伸ポリプロピレンフィルムを、長手方向の延伸温度である70℃〜150℃、好ましくは80〜140℃の温度に保ち、長手方向に2〜15倍、好ましくは4.5〜12倍、より好ましくは5.5〜10倍に延伸した後、室温まで冷却する。さらに未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率が20%以上の場合は、80〜130℃、好ましくは90〜120℃に保たれたロール間に通して予熱し、引き続き未延伸ポリプロピレンフィルムを80〜130℃、好ましくは90〜120℃の温度に保ち、長手方向に2〜15倍、好ましくは4.6〜15倍、より好ましくは5.0〜12倍、最も好ましくは5.6〜10倍に延伸した後、室温まで冷却する。
長手方向に一軸延伸したポリプロピレンフィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し、幅方向の延伸温度である140〜170℃、好ましくは145〜160℃の温度で幅方向に7〜15倍、より好ましくは8〜14倍、最も好ましくは9〜13倍に延伸する。
ここで、面積倍率は50倍以上であることが耐電圧性向上の観点で好ましい。本発明において、面積倍率とは、長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じたものである。面積倍率は、55倍以上であることがより好ましく、特に好ましくは60倍以上である。
本発明においては、二軸延伸に続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、80℃以上165℃以下の温度で熱処理を行うことが、フィルム厚み、表面形状の均一性、熱寸法安定性を向上させ、コンデンサとしたときの耐電圧性、信頼性を得る観点から好ましい。
弛緩処理においては、熱寸法安定性を高める観点から、弛緩率は2〜20%が好ましく、5〜18%がより好ましく、8〜15%がさらに好ましい。20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎ製品にシワが入り蒸着時にムラを発生させる場合があったり、機械特性の低下が生じたり、他方、弛緩率が2%より小さい場合は十分な熱寸法安定性が得られず、コンデンサとしたときの高温環境下で容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。
熱処理および弛緩処理を経た後は、ポリプロピレンフィルムをテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム厚み0.5μm以上10μm未満のフィルム製品ロールを巻き取る。ここでフィルムを巻取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行うことが好ましい。
なお、本発明のポリプロピレンフィルムを得るため、特に重要な製造条件は以下の条件である。
・未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を含んでいること。
・未延伸ポリプロピレンフィルムにエンボス処理を施していること。
加えて、以下の条件が満たされていることが、より好ましい。
・ポリプロピレンフィルムのメソペンタッド分率が0.960以上であること。
・ポリプロピレン樹脂のCXS量が1.5質量%未満であること。
・面積延伸倍率が50倍以上であること。
・二軸延伸後のポリプロピレンフィルム厚みが0.5μm以上10μm未満であること。
・熱処理温度が、80℃以上165℃以下であること。
・熱処理工程において、幅方向に2〜20%の弛緩処理が施されていること。
続いて、本発明のポリプロピレンフィルムを用いてなる金属膜積層フィルム、それを用いてなるフィルムコンデンサ、およびそれらの製造方法について説明する。本発明の金属膜積層フィルムは、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面に金属膜が設けられてなる。また、本発明の金属膜積層フィルムの製造方法は、上記のポリプロピレンフィルムの製造方法により得られるポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設ける金属膜付与工程を有する。
本発明において、上記したポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとする金属膜付与工程の方法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面に、アルミニウムまたは、アルミニウムと亜鉛との合金を蒸着して、フィルムコンデンサの内部電極となる蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムなどの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。ポリプロピレンフィルム表面の粗さが表裏で異なる場合には、粗さが平滑な表面側に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとすることが耐電圧性を高める観点から好ましい。
本発明では、必要により、金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でアニール処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを用いてなる。
また、本発明のフィルムコンデンサの製造方法は、上記本発明の金属膜積層フィルムの製造方法により得られる金属膜積層フィルムを用いる。
例えば、上記した本発明の金属膜積層フィルムを、種々の方法で積層もしくは巻回することにより本発明のフィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを減圧状態で蒸着する。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面の一端(右または左)にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左右のいずれか一方にマージンを有するテープ状の巻取リールの各1本を、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
両面に蒸着を行う場合は、一方の面(第1面)の長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着し、もう一方の面(第2面)には長手方向のマージン部が裏面(第1面)側蒸着部の中央に位置するようにストライプ状に蒸着する。次に表裏それぞれのマージン部中央に刃を入れてスリットし、両面ともそれぞれ片側にマージン(例えば表面右側にマージンがあれば裏面には左側にマージン)を有するテープ状の巻取リールを作製する。得られた巻取リールと未蒸着の合わせフィルム各1本を、幅方向に巻取リールの蒸着部分が合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
以上のようにして作成した巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車輌用、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車)、太陽光発電・風力発電用および一般家電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。その他、包装用フィルム、離型用フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途でも用いることができる。
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)フィルム厚み
ポリプロピレンフィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの平均値をポリプロピレンフィルムのフィルム厚みとした。
(2)表面アスペクト比(Str)、二乗平均平方根高さ(Sq)、最大高さ(Sz)、算術平均高さ(Sa)
測定は(株)菱化システムのVertScan2.0 R5300GL−Lite−ACを使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。ISO25178に基づいて各種パラメータを求め、キャストドラム面に対して一方の面内の任意の5箇所で測定を行った平均値を算出した。
測定条件は下記のとおり。
製造元:株式会社菱化システム
装置名:VertScan2.0 R5300GL−Lite−AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR−57 1/2インチ(1.27センチ)
対物レンズ 10x
中間レンズ 0.5x
波長フィルタ 520nm white
測定モード:Phase
測定ソフトウェア:VS-Measure Version5.5.1
解析ソフトフェア:VS−Viewer Version5.5.1
測定面積:1.252×0.939mm
(3)結晶子サイズ
ポリプロピレンフィルムを長さ40mm、幅1mmの短冊状に切断し、厚さが1mmになるように重ねて試料調製した。フィルムのMD−ZD断面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約17°(α晶(040)面)における結晶ピークの半値幅βeから、下記式(1)、(2)により計算した。
Figure 2019172922
Figure 2019172922
ここで、λ:X線波長(=0.15418nm)、βe:回折ピークの半値幅、βo:半値幅の補正値(=0.6(透過2θ-θスキャン法)、および0.13(反射2θ-θスキャン法))、K:Scherrer定数(=1.0(透過2θ-θスキャン法)、および0.9(反射2θ-θスキャン法))である。
(測定装置)
・X線回折装置 理学電機(株)社製 4036A2型
X線源 :CuKα線(Niフィルタ使用)
出力 :40kV−30mA
・ゴニオメータ 理学電機(株)社製 2155D型
スリット:2mmφ−1°−1°
検出機 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置 理学電機(株)社製 RAD−C型。
(4)未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率(広角X線回折)
キャスト工程後の未延伸ポリプロピレンフィルムを幅方向に10mm、長手方向に20mmに切り出した。その試料を用いて、室温中で、回折角(2θ)が5〜30度の範囲で測定を行った。詳細な測定条件は下記のとおりである。
・装置:nano viwer(株式会社リガク製)
・波長:0.15418nm
・X線入射方向:Through方向(フィルム表面に垂直に入射)
・測定時間:300秒
次に、得られた回折プロファイルをピーク分離ソフトウェアで処理してメゾ相、α晶、非晶のプロファイルの3成分に分離する。解析ソフトウェアとして、WaveMetrics,inc社製のIGOR Pro(Ver.6)ソフトウェアを用いた。解析を行うにあたり、以下の様な仮定を行った。
・ピーク形状関数:ローレンツ関数
・ピーク位置:非晶=16.2度、メゾ相=15.0度、21.0度
α晶=14.1度、16.9度、18.6度、21.6度、21.9度
・ピーク半値幅:非晶=8.0、メゾ相(15.0度)=3.5、メゾ相(21.0度)=2.7
非晶、メゾ相の半値幅は上記の値で固定するが、α晶は固定しない。
得られたピーク分離結果に対して、メゾ相に由来する15度と21度にピークを有する回折プロファイルの面積(m15とm21)、非晶に由来する16.2度にピークを有する回折プロファイルの面積(a16.1)、α晶に由来する14.1度、16.9度、18.6度、21.6度および21.9度にピークを有する回折プロファイルの面積(α14.1とα16.9とα18.6とα21.6とα21.9)を算出し、これを下記式のとおり算出することにより、メゾ相に由来するプロファイルの面積の割合を求め、これをメゾ相分率とした。
メゾ相分率(%)=100×(m15+m21)/(m15+m21+a16.1+α14.1+α16.9+α18.6+α21.6+α21.9
(5)冷キシレン可溶部(CXS)
原料の場合はポリプロピレン樹脂、フィルムの場合はフィルム試料の0.5gを135℃のキシレン100mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量する(X(g))。試料0.5gの精量値(X0(g))を用いて下記式から算出した。
CXS(質量%)=(X/X0)×100
(6)メソペンタッド分率
原料の場合はポリプロピレン樹脂、フィルムの場合はフィルム試料について凍結粉砕にてパウダー状にし、60℃のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去した後、130℃で2時間以上減圧乾燥したものをサンプルとする。該サンプルを溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(単位:%)。
測定条件
・装置:Bruker製DRX−500
・測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度:10質量%
・溶媒:ベンゼン:重オルトジクロロベンゼン=1:3混合溶液(体積比)
・測定温度:130℃
・スピン回転数:12Hz
・NMR試料管:5mm管
・パルス幅:45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント:64K
・積算回数:10000回
・測定モード:complete decoupling
解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更にソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とする。
<1>mrrm
<2><3>rrrm(2つのピークとして分割)
<4>rrrr
<5>mrmr
<6>mrmm+rmrr
<7>mmrr
<8>rmmr
<9>mmmr
<10>mmmm
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたメソペンタッド分率の平均値を当該サンプルのメソペンタッド分率とした。
(7)125℃でのフィルム絶縁破壊電圧(V/μm)
125℃に保温されたオーブン内でフィルムを1分間加熱後、その雰囲気中でJIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて測定した。ただし、下部電極については、JIS C2330(2001)7.4.11.2のB法記載の金属板の上に、同一寸法の株式会社十川ゴム製「導電ゴムE−100<65>」を載せたものを電極として使用した。絶縁破壊電圧試験を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1))で除し、(V/μm)に換算し、計30点の測定値(算出値)のうち最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を125℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。
(8)光沢度
JIS K−7105(1981)に準じ、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件でキャストドラム面を測定した5点のデータの平均値を光沢度(%)とした。
(9)静摩擦係数(μs)
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、25℃、65%RHにて測定した。なお、測定は2枚のフィルムのフィルム長手方向を一致させ、かつ、フィルムの一方の表面と他のフィルムその反対面をそれぞれ重ねて行った。同じ測定を1つのサンプルについて5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの静摩擦係数(μs)とした。
(10)130℃でのフィルム絶縁破壊電圧(V/μm)
130℃に保温されたオーブン内でフィルムを1分間加熱後、その雰囲気中でJIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて測定した。ただし、下部電極については、JIS C2330(2001)7.4.11.2のB法記載の金属板の上に、同一寸法の株式会社十川ゴム製「導電ゴムE−100<65>」を載せたものを電極として使用した。絶縁破壊電圧試験を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1))で除し、(V/μm)に換算し、計30点の測定値(算出値)のうち最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を130℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。
(11)フィルムコンデンサ特性の評価(115℃での耐電圧および信頼性)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムのコロナ放電処理またはプラズマ処理を施したフィルム表面(フィルム処理表面が不明な場合は、フィルム両面のうち濡れ張力が高い方のフィルム表面)に、(株)アルバック製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が8Ω/sqで長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンで蒸着を施し、幅50mmの蒸着リールを得た。
次いで、このリールを用いて(株)皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、126℃の温度で14時間の熱処理を施し、リード線を取り付けコンデンサ素子に仕上げた。
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、115℃高温下でコンデンサ素子に250VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行なった。
<素子加工性>
下記基準で判断した。上記と同様にしてコンデンサ素子を作成し、目視により素子の形状を確認した。
◎:コンデンサ素子の端面フィルムのズレ、シワ、変形がなく、後の工程に全く支障がないレベル
○:コンデンサ素子の変形が僅かにあるが後の工程で問題がないレベル
×:コンデンサ素子の変形、シワが生じており、後の工程に支障を来すレベル
◎、○は使用可能である。×では実用が困難である。
<耐電圧>
ステップアップ試験において静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の70%になった電圧をフィルムの厚み(上記(1))で除して耐電圧評価とし、以下の通り評価した。
◎:400V/μm以上
○:390V/μm以上400V/μm未満
△:380V/μm以上390V/μm未満
×:380V/μm未満
◎、○、△は使用可能である。×では実用上の性能に劣る。
<信頼性>
ステップアップ試験において静電容量が初期値に対して8%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、信頼性を以下の通り評価した。
◎:素子形状の変化は無く貫通状の破壊は観察されない。
○:素子形状の変化は無くフィルム10層以内の貫通状破壊が観察される。
×:素子形状に変化が認められる若しくは10層を超える貫通状破壊が観察される、もしくは素子形状が破壊する。
◎は問題なく使用でき、○では条件次第で使用可能である。×では実用上の性能に劣る。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
(実施例1)
メソペンタッド分率が0.982、融点が165℃で、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.8質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を温度265℃の押出機に供給し、樹脂温度265℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、エンボス処理として予熱ロールにてフィルム温度が75℃となるよう制御し、該フィルム表面のキャスティングドラム面側にエンボスロール(250番手の研磨砂によるサンブラストにより表面を粗面化したスチール製ロールであり、Rz=5μm)を、3.0kN/cmの圧力で硬度A70の耐熱ゴム製バックアップロールにニップして未延伸エンボス処理フィルムを得た。該未延伸エンボス処理フィルムを複数のロール群にて徐々に80℃に予熱し、引き続き125℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.3倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、165℃の温度で幅方向に10.8倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に12%の弛緩を与えながら156℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま143℃で熱処理を行った。最後に3段目の熱処理として112℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.5μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性、耐電圧はともに優れたものであった。
(実施例2〜4)
溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、エンボス処理条件として、ロール表面粗さ、エンボス処理温度とロール押付圧力、原料のCXS量を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、実施例2、3は厚み2.5μm、実施例4は厚み2.8μmのポリプロピレンフィルム得た。実施例2〜4のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、実施例2のポリプロピレンフィルムの耐電圧は実施例1のポリプロピレンフィルムには劣るものの、コンデンサ素子加工性・信頼性に優れるものあった。実施例3のポリプロピレンフィルムは素子加工工程において多少のシワや端面のズレが発生したものの、コンデンサとしての耐電圧は優れたものであり、信頼性は実用上問題のないレベルであった。実施例4のポリプロピレンフィルムは、耐電圧に優れ、コンデンサ素子加工性、信頼性は実使用上問題ないレベルであった。
(実施例5)
メソペンタッド分率が0.965、メルトフローレイト(MFR)が3.8g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が3.5質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を用い、溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、二軸延伸時の延伸倍率を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、実施例5では厚み2.4μmのポリプロピレンフィルムを得た。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサ素子加工性については変形が僅かにあるが後の工程で問題がないレベルであり、コンデンサとしての耐電圧および信頼性は実使用上問題のないレベルであった。
(実施例6)
フィルム厚みを6μmとした以外の条件は実施例1と同様にして、ポリプロピレンフィルム得た。実施例6のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、実施例2のポリプロピレンフィルムの耐電圧は実施例1のフィルムには劣るものの、コンデンサ素子加工性に優れ、信頼性評価においては10層以内の貫通状破壊が観察されるが、実使用上問題ないレベルであった。
(比較例1)
エンボス処理を施さないこと、二軸延伸時の延伸倍率を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、本比較例では厚み3.0μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサとしての耐電圧は優れるが、コンデンサ素子加工性はズレや変形が大きく実使用において問題のあるレベルであり、信頼性評価においては10層以内の貫通状破壊が観察されるが、実使用上問題ないレベルであった。
(比較例2)
比較例2ではメソペンタッド分率が0.982、メルトフローレート(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.8質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂に、トクヤマ製シリカ粒子“SANSIL”(SS−01、平均粒子径0.1μm)0.5重量%添加し、実施例1と同様の製膜条件にて、厚み3.0μmのポリプロピレンフィルムを得た。比較例2のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、素子加工性に優れ、信頼性評価においては10層以内の貫通状破壊が観察されるが、実使用上問題ないレベルであった。しかしながらフィルム表面に粒子が脱落した痕跡や、フィルムと粒子界面での剥離が一部で認められ、高温環境下での耐電圧が実使用に耐えられないレベルであった。
(比較例3)
直鎖状ポリプロピレンとしてメソペンダット分率が0.940で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が4.0質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を用い、キャスティングドラム温度、延伸倍率を表1の条件、縦延伸の予熱温度を140℃、延伸温度を145℃とした以外は実施例1と同様の製膜条件にて、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムを得た。比較例3のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、素子加工性に優れ、フィルム端面のズレ、シワ、変形は認められなかった。また、コンデンサの信頼性は実使用には問題のないレベルではあるが、高温環境下での耐電圧に劣る結果となった。
(比較例4)
比較例4ではメソペンタッド分率が0.982、メルトフローレート(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.8質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂97重量%と、ポリメチルペンテン系樹脂として三井化学(株)製“TPX”(登録商標:MX002、融点224℃)3重量%をブレンドし、260℃に設定した押出機で混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料とした。該ポリプロピレン樹脂を用い、キャスティングドラムの冷却温度、延伸倍率を表1の条件とした以外は実施例1と同様の製膜条件にて、厚み2.8μmのポリプロピレンフィルムを得た。比較例4のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、素子加工性は変形が僅かに認められるが後の工程で問題がないレベルであった。また、コンデンサ耐電圧は実使用上問題ないレベルではあるが、実施例1〜6のポリプロピレンフィルムには劣る結果となり、コンデンサ信頼性評価では10層を超える貫通状破壊が観察され、実使用には耐えられないレベルであった。
(比較例5)
エンボス処理条件として、ロール表面粗さ、エンボス処理温度とロール押付圧力を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、比較例5は厚み2.9μmのポリプロピレンフィルム得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサとしての耐電圧は優れるが、コンデンサ素子加工性はズレや変形が大きく実使用において問題のあるレベルであり、信頼性評価においては10層以内の貫通状破壊が観察されるが、実使用上問題ないレベルであった。
(比較例6)
実施例1のポリプロピレン樹脂を用い、エンボス処理条件として、エンボスロールパターン、ロール押付圧力、エンボス処理時のフィルム温度、二軸延伸時の延伸倍率を表1の条件、エンボス処理の対象を二軸延伸フィルムとして、それ以外の製膜条件は実施例1と同様にして厚み6.2μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサ素子加工性には優れるものの、耐電圧に劣り、信頼性はコンデンサ素子の破壊が認められるため実使用に耐えられないものであった。
Figure 2019172922

Claims (7)

  1. 三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の表面アスペクト比Strが0.3〜0.99であり、表面の光沢度が130%以上150%未満であるポリプロピレンフィルム。
  2. フィルムをキシレンで完全溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分である冷キシレン可溶部(CXS)が1.5質量%未満である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
  3. 結晶子サイズが12.0nm以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. 三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の算術平均高さSaが、5〜30nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレンフィルム。
  5. 三次元非接触表面形状計測(VertSCAN)により測定した少なくとも一方の表面に存在する突起の最大高さSzが、100〜500nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレンフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が設けられてなる金属膜積層フィルム。
  7. 請求項6に記載の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
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