JP2017186521A - 熱硬化性組成物、これを含む封止剤、有機el素子用枠封止剤、及び有機el素子用面封止剤、並びにその硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗布装置内等で変質がなく、塗布性が良好であり、さらに熱処理や熱処理後にアウトガスが少ない熱硬化性組成物を提供する。【解決手段】(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、(B)アゾ系重合開始剤と、(C)特定の一般式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル誘導体と、を含み、E型粘度計で測定される、25℃、2.5rpmにおける粘度が5mPa・s以上400mPa・s以下である、熱硬化性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性組成物、これを含む封止剤、有機EL素子用枠封止剤、及び有機EL素子用面封止剤、並びにその硬化物に関する。
有機EL(Electro−Luminescence)素子は、消費電力が少ないことから、ディスプレイや照明装置などに用いられつつある。有機EL素子は、大気中の水分や酸素によって劣化しやすいことから、各種シール部材で封止されて使用されることが一般的である。
有機ELデバイスは、例えば、基板と、当該基板上に配置された有機EL素子と、基板と対になる封止基板とを含む構造体とすることができる。このような構造体の有機EL素子を封止する方法として、有機EL素子の周囲の基板に封止剤を枠状に塗布し、当該封止剤によって基板と封止基板とを貼り合わせる方法(枠封止法)が挙げられる。また、封止基板と基板との間、及び有機EL素子と封止基板との間に、封止剤を塗布し、これを硬化させる方法(面封止法)も挙げられる。
有機EL素子等の表示素子を封止するための封止剤として、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、硬化促進剤とを含む樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
国際公開第2013/118509号
ここで、封止剤には、熱硬化中や硬化後に有機EL素子等の表示素子に影響を与えるアウトガスが少ないことが求められている。さらに、封止剤には、塗布時の流動性が高いことや、塗布装置内(例えば、無酸素かつ40℃以下の環境)等で一定期間保持しても、変質がないことも求められている。これに対し、上記特許文献1に記載の樹脂組成物は、塗布時の流動性が低いことがあり、熱安定性も十分でないことがあった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、塗布装置内等でも変質がなく、塗布性が良好であり、さらに熱処理や熱処理後にアウトガスが少ない熱硬化性組成物を提供する。
すなわち、本発明の第1は、以下の熱硬化性組成物に関する。
[1](A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、(B)アゾ系重合開始剤と、(C)下記一般式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル誘導体と、を含み、E型粘度計で測定される、25℃、2.5rpmにおける粘度が5mPa・s以上400mPa・s以下である、熱硬化性組成物。
Figure 2017186521
(一般式(1)中、RはH、ヒドロキシ基、オキソ基、アミノ基、シアノ基、アセトアミド基、メトキシ基、カルボキシ基、パーミタミド基、メタクリロイル基、イソチオシアナート基、2−クロロアセトアミド基、2−ヨードアセトアミド基、(9−アクリジンカルボニル)アミノ基、及び[2−[2−(4−ヨードフェノキシ)エトキシ]カルボニル]ベンゾイル基からなる群から選ばれるいずれかの基を表す)
[2]前記(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が、400以上2000以下である、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[3]前記(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーが、メタクリルモノマーである、[1]または[2]に記載の熱硬化性組成物。
[4](A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[5]前記(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が、400以上2000以下である、[4]に記載の熱硬化性組成物。
[6]前記(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーが、ビスフェノールA型の構造を含む、[4]または[5]に記載の熱硬化性組成物。
[7](D)レベリング剤をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
本発明の第2は、以下の封止剤や有機EL素子用の封止剤等に関する。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を含む、表示素子用の封止剤。
[9]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を含み、有機EL素子の枠封止に用いる、有機EL素子用枠封止剤。
[10]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を含み、有機EL素子の面封止に用いる、有機EL素子用面封止剤。
[11]シート状に成形されている、[10]に記載の有機EL素子用面封止剤。
[12]前記[10]に記載の有機EL素子用面封止剤の硬化物。
本発明によれば、塗布装置内等でも変質せず、塗布性が良好であり、さらに熱処理を行ってもアウトガスが少ない熱硬化性組成物とすることができる。
1.熱硬化性組成物について
本発明の熱硬化性組成物は、各種表示素子を封止するための封止剤として用いられる。各種表示素子を封止するための封止剤には、適度な流動性が求められる。流動性が低いと、所望の領域に封止剤を塗り広げられず、十分な封止性能が得られないことがある。また、封止剤には、保存時に重合性組成物と重合開始剤とが反応し難く、ポットライフが長いことも求められる。また、塗布装置内(例えば、無酸素かつ40℃以下の環境下)で安定であることも求められている。さらに、封止基板と基板との貼り合わせは、真空中で行われることが一般的であり、通常、1Pa以下の真空環境下で行われる。そのため、封止剤には、真空環境下でも、成分が揮発し難いことが求められることがある。また、封止剤には、熱硬化中や硬化後にアウトガスが少ないことも求められる。封止剤の硬化中や硬化後に、封止剤やその硬化物から表示素子に影響のあるアウトガスが発生すると、表示素子が劣化すること等がある。しかしながら、これらの性能を併せ持った熱硬化性組成物が得られていないのが実状である。さらに、封止基板と基板との貼り合わせは、真空中で行われることが一般的であり、通常、1Pa以下の真空環境下で行われる。
これに対し、本発明の熱硬化性組成物では、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーを含むため、熱硬化性組成物の粘度が適度に低い。また、重合開始剤が(B)アゾ系重合開始剤であるため、(A)(メタ)アクリルモノマーを短時間で硬化させることができ、熱硬化性組成物の硬化中や硬化後に、表示素子に影響を与えるガスが発生し難い。さらに、熱硬化型の(A)(メタ)アクリルモノマーは、一般的に安定性が低いことが多いが、本発明の熱硬化性組成物では(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体によって、保存中や塗布装置等の内部で(A)(メタ)アクリルモノマーと(B)アゾ系重合開始剤との反応が抑制されるため、熱硬化性組成物を安定して塗布することができる。つまり、本発明によれば、塗布性が良好であり、さらに熱処理や熱処理後にアウトガスが少ない熱硬化性組成物とすることができる。
以下、熱硬化性組成物が含む各成分について説明する。
(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーについて
本発明の熱硬化性組成物が含む脂肪族(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有するモノマーであれば特に制限されない。熱硬化性組成物を各種表示素子の封止剤とする場合、(メタ)アクリルモノマーの重合物が大気中の酸素や水分等から各種表示素子を保護する機能を果たす。なお、本明細書における(メタ)アクリルとは、アクリル及び/またはメタクリルを表す。脂肪族(メタ)アクリルモノマーを用いることで、熱硬化性組成物の粘度を低くでき、かつ、得られる硬化物に柔軟性を持たせることができる。
熱硬化性組成物は、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。一般に、重量平均分子量が大きい脂肪族(メタ)アクリルモノマーによれば、得られる硬化物の膜強度を高くできるものの、熱硬化性組成物の粘度が高くなる。一方、重量平均分子量が小さい脂肪族(メタ)アクリルモノマーは、得られる硬化物の膜強度が低いものの、熱硬化性組成物の粘度を低くすることができる。したがって、2種以上の(メタ)アクリルモノマーを組み合わせることで、熱硬化性組成物の粘度と、熱硬化性組成物から得られる硬化膜の膜強度とを、所望の範囲に調整しやすくなる。
ここで、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量は、400以上2000以下であることが好ましく、500以上1000以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、モノマーの構造から導き出しされる分子量であってもよく、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定される値(ポリスチレン換算)であってもよい。脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が2000以下であると、熱硬化性組成物の粘度が過度に高まらず、熱硬化性組成物の塗布性が良好になりやすい。一方、脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が400以上であると、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーが真空環境下でも揮発し難くなる。そこで、真空環境下で揮発しやすい成分をより少なくすることが求められる場合、重量平均分子量が400未満の脂肪族(メタ)アクリルモノマーの量は、熱硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満である。
また、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーは、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれの基を有するモノマーであってもよいが、メタクリロイル基を有するモノマー、つまりメタクリルモノマーのほうが好ましい。熱硬化性組成物が、メタクリルモノマーを含む場合、アクリルモノマーを含む場合より、得られる硬化膜の強度が高くなりやすい。メタクリルモノマーのほうが、アクリルモノマーより反応速度が遅く、停止反応が生じ難い。したがって、分子量が十分に大きくなりやすく、膜強度が高まりやすい。
(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーは、脂肪族鎖を有し、かつ上記重量平均分子量を有するモノマーであれば特に制限されず、直鎖状および分岐鎖状のいずれの構造を有する(メタ)アクリルモノマーであってもよい。(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーの具体例には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;グリセリンポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが含まれる。
上記の中でも分子量が高くても、粘度が適度に低いとの観点から、好ましいモノマーとして、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーを含むことが好ましい。(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとを含有することで、熱硬化性組成物の粘度を低く、かつ、得られる硬化膜の膜強度を高くすることができる。
ここで、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量は、400以上2000以下であることが好ましく、500以上1000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が2000以下であると、熱硬化性組成物の粘度が過度に高まらず、熱硬化性組成物の塗布性が良好になりやすい。一方、重量平均分子量が400以上であると、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーが真空環境下でも揮発し難くなる。そこで、真空環境下で揮発しやすい成分をより少なくすることが求められる場合、重量平均分子量が400未満の環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの量は、熱硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満である。
(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとの比率(重量比)は、30:70〜90:10であることが好ましく、40:60〜80:20であることがより好ましい。
一方、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーは、芳香環、脂環式、またはヘテロ環を含むモノマーであれば特に制限されない。特に、芳香環を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
芳香環を有する(メタ)アクリルモノマーの例には、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールA型構造を有するジ(メタ)アクリレート;(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールF型構造を有するジ(メタ)アクリレート;(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールS型構造を有するジ(メタ)アクリレート;ビフェノール(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、ビフェノール(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート等のビフェノール構造を有するジ(メタ)アクリレート;フタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジヒドロキシナフタレン(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシナフタレン(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、ビナフトールジ(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ビナフトールジ(メタ)アクリレート等の縮合環を有する(メタ)アクリレート;ビスフェノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシメタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシ(ポリ)カプロラクトンフルオレンジ(メタ)アクリレート等の複数の芳香環を有するジ(メタ)アクリレート;ビフェニル型フェノールアラルキルエポキシ樹脂とアクリル酸との反応物;等が含まれる。
脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の例には、水添ビスフェノールA(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールS(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールS(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の例には、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
上記の中でも入手が容易である等の観点から、好ましいモノマーの例には、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールA型構造を有するジ(メタ)アクリレートが含まれる。
ここで、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーは、熱硬化性組成物100質量部に対して、90質量部以上99.9質量部以下含まれることが好ましく、95質量部以上99.9質量部以下含まれることがより好ましい。(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーが上記範囲含まれると、熱硬化性組成物を各種表示素子の封止剤としたとき、当該熱硬化性組成物の硬化物が、各種表示素子を大気中の酸素や水分から保護する機能を十分に果たすことができる。
ただし、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと共に、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーを含む場合は、熱硬化性組成物100質量部に対して、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとの合計量が、90質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、95質量部以上99.9質量部以下であることがより好ましい。
(B)アゾ系重合開始剤
アゾ系重合開始剤は、熱によって分解してフリーラジカルを発生させる、アゾ基を有する化合物であり、上述の(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマー等を硬化(重合)させるための化合物である。一般的に、熱硬化性組成物の塗膜や硬化物から、重合開始剤が揮発したり、重合開始剤の分解物(例えば、アセトンやトルエン等の低分子量体、水酸基やアミノ基を有する極性物質)等が揮発することで、表示素子に影響が生じやすい。これに対し、アゾ系重合開始剤は、熱によって生成したラジカル成分が分解せずに重合に寄与することから、低分子量成分が発生し難い。したがって、熱硬化性組成物の塗膜や硬化物から表示素子に影響を与えるアウトガスが発生し難い。
(B)アゾ系重合開始剤は、アゾニトリル化合物、アゾエステル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物、アゾイミダゾリン化合物、高分子アゾ系化合物のいずれの化合物であってもよい。
アゾニトリル化合物の例には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)等が含まれる。
アゾエステル化合物の例には、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、1,1’−アゾビス−(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が含まれる。
アゾアミド化合物の例には、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ハイドロキシメチル)−2−ハイドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2‐ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド等が含まれる。
アゾアミジン化合物の例には、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)テトラヒドレート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド等が含まれる。
アゾイミダゾリン化合物の例には、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロキシクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−(2‐イミダゾリン―2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2‐イミダゾリン―2−イル)プロパン]ジスルフェイトジハイドレート等が含まれる。
高分子アゾ系化合物の例には、商品名VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−1001(いずれも和光純薬社製)等が含まれる。
熱硬化性組成物は、(B)アゾ系重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。上記の中でも、アゾニトリル化合物またはアゾエステル化合物が好ましい。
(B)アゾ系重合開始剤は、分解温度が高いことが好ましく、具体的には、10時間半減期温度(分解温度)が45℃〜85℃であることが好ましく、55℃〜70℃であることがより好ましい。(B)アゾ系重合開始剤の分解温度が高いと、熱硬化性組成物を無酸素環境、40℃以下で一定期間保持した場合にも、熱硬化性組成物が変質し難く、熱硬化性組成物の塗布等を安定して行うことができる。
(B)アゾ系重合開始剤は、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して、0.05質量部以上、5質量部以下含まれることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下含まれることがより好ましい。(B)アゾ系重合開始剤が上記範囲含まれると、(メタ)アクリルモノマーを十分に熱硬化させることが可能となる。
(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体
(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体は、熱硬化性組成物中で重合禁止剤として機能し、熱硬化性組成物が当該化合物を含むと、熱硬化性組成物のポットライフが高まる。ここで、上記(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2017186521
上記一般式(1)において、Rは一価、または二価の基を表し、具体的には、H、ヒドロキシ基、オキソ基、アミノ基、シアノ基、アセトアミド基、メトキシ基、カルボキシ基、パーミタミド基、メタクリロイル基、イソチオシアナート基、2−クロロアセトアミド基、2−ヨードアセトアミド基、(9−アクリジンカルボニル)アミノ基、及び[2−[2−(4−ヨードフェノキシ)エトキシ]カルボニル]ベンゾイル基からなる群から選ばれるいずれかの基を表す。
熱硬化性組成物は、(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、上記の中でも、入手しやすさ等の観点から、一般式(1)におけるRがH、オキソ基、またはヒドロキシ基である化合物が好ましい。
(C)テトラピペリジンフリーラジカル誘導体は、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して、0.0005質量部以上、0.2質量部以下含まれることが好ましく、0.001質量部以上0.1質量部以下含まれることがより好ましい。(C)テトラピペリジンフリーラジカル誘導体が上記範囲含まれると、熱硬化性組成物のポットライフを長くすることができる。また、(C)テトラピペリジンフリーラジカル誘導体の量が過剰となると、アクリルモノマーの熱硬化性が低下することがあるが、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して0.2質量部以下であれば、熱硬化性組成物の熱硬化性を良好にすることができる。
(D)レベリング剤
前述のように、熱硬化性組成物は、(D)レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、熱硬化性組成物を加熱硬化させる過程で、熱硬化性組成物の塗膜表面に配向して塗膜の表面張力を均一化し、ハジキなどを生じにくくし、被塗布物上に濡れ広がりやすくする化合物である。
レベリング剤が、熱硬化性組成物の塗膜表面の表面張力を調整すると、被塗布物への組成物の濡れ性が改善され、塗膜面の流動性や消泡性が改善されやすくなる。なお、これらの効果は、わずかな添加量で発現することが多い。そのため、レベリング剤としては、表面改質作用が比較的小さいシリコーン系ポリマーやアクリレート系ポリマーを用いることが好ましい。このようなシリコーン系ポリマーやアクリレート系ポリマーは、公知のものを用いることができる。
(D)レベリング剤は、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して0.01〜1質量部含まれることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。レベリング剤の含有量が一定以上であると、熱硬化性組成物の塗膜表面に十分な量のレベリング剤が配向しやすく、十分なレベリング効果が得られやすい。一方、レベリング剤の含有量が一定以下であると、レベリング剤と(メタ)アクリルモノマーとの相溶性や硬化物の透明性が損なわれにくい。
(E)その他の成分
熱硬化性組成物は、本発明の効果を大きくは損なわない範囲において、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂は、例えば熱硬化性樹脂等とすることができる。熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂等が含まれる。熱硬化性組成物は、熱硬化性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
熱硬化性組成物は、充填材を含んでいてもよい。熱硬化性組成物が含む充填材の例には、ガラスビーズ、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子等が含まれる。熱硬化性組成物は、充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
熱硬化性組成物は、改質剤や安定剤を含んでいてもよい。改質剤の具体例には、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤等が含まれる。これらの改質剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。一方、安定剤の具体例には、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤等が含まれる。熱硬化性組成物は、これらの改質剤や安定剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
熱硬化性組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、プラズマ照射や日光照射により発生するラジカルを失活させるもの(Hindered Amine Light Stabilizer, HALS)や、過酸化物を分解するものなどをいう。酸化防止剤は、熱硬化性組成物の硬化物の変色を防ぐ機能を有する。酸化防止剤の例には、ヒンダードアミン、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が含まれる。
ヒンダードアミンの例には、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、2,4−ジクロロ−6−tert−オクチルアミノ−s−トリアジンと4,4’−ヘキサメチレンビス(アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピヘリジン)の重縮合生成物、ビス[1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]セバケートが含まれる。
フェノール系酸化防止剤の例には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのモノフェノール類、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどの高分子型フェノール類が含まれる。
リン系酸化防止剤は、ホスファイト類から選ばれる酸化防止剤及びオキサホスファフェナントレンオキサイド類から選ばれる着色防止剤が好ましく用いられる。
特に、紫外線への耐性を付与するという点では、Tinuvin123(ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバシン酸)、Tinuvin765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバシン酸とメチル 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバシン酸との混合物)、Hostavin PR25(ジメチル 4−メトキシベンジル Idenemalonate)、Tinuvin 312 または Hostavin vsu(エタンジアミド N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル))、CHIMASSORB 119 FL(N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物が好ましい。
熱硬化性組成物は、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、各成分を均一に分散または溶解させる機能を有する。溶剤の例にはトルエン、キシレン等の芳香族溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ−ルモノアルキルエーテル等のエーテル類;N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が含まれる。
(F)熱硬化性組成物の物性等
本発明の熱硬化性組成物の、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定される粘度は、5mPa・s以上400mPa・s以下であり、5〜200mPa・sであることが好ましい。熱硬化性組成物の粘度が上記範囲であると、熱硬化性組成物を各種封止剤とする際の貼り合わせ時の流動性が十分に得られやすい。上記粘度は、例えばBROOKFIEL社製のデジタルレオメータ型式DII−III ULTRA等で測定することができる。
熱硬化性組成物に含まれる、各成分の含有量を調製することで、熱硬化性組成物の粘度を上記範囲に調整できる。また、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーや、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量を調整することも、熱硬化性組成物の粘度を上記範囲に調整するために有効である。
上記熱硬化性組成物は、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマー、(B)アゾ系重合開始剤、及び(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体と、必要に応じて他の成分((A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマー等)を、公知の方法で混合することにより製造することができる。混合順序は特に制限されないが、例えば、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーや(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーに(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体を溶解させてから、(B)アゾ系重合開始剤を混合することが好ましい。
(G)熱硬化性組成物の用途
本発明の熱硬化性組成物は、各種表示素子を封止するための封止剤として好ましく用いられる。各種表示素子の例には、無機LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、有機EL素子などが含まれ、好ましくは有機EL素子である。各種表示素子を封止することにより、これらの表示素子が、水分などにより劣化することを抑制できる。
本発明の熱硬化性組成物の使用方法は特に制限されず、熱硬化性組成物の用途に応じて適宜選択される。本発明の熱硬化性組成物は、各種表示素子を面封止するための面封止剤としてもよく、枠封止するための枠封止剤としてもよい。ここで、液状の熱硬化性組成物を、被封止物(基板や表示素子)上に塗布した後、基板と封止基板とを対向させて熱硬化性組成物を硬化させること等により、表示素子を封止することができる。この場合、熱硬化性組成物は、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布等により塗布することができる。
また、熱硬化性組成物を予めフィルム状に成形し、当該フィルムを被封止物(基板や表示素子)上にラミネートしてもよい。この場合、フィルム状の熱硬化性組成物上に、さらに封止基板を載置し、熱硬化性組成物を硬化させることにより、表示素子を封止することができる。
本発明の熱硬化性組成物は、無酸素環境、40℃以下での使用が可能である。したがって、このような環境でも熱硬化性組成物が変質することなく粘度変化も少ないため、熱硬化性組成物の塗布や基板と封止基板との貼りあわせが可能となる。
また、上記熱硬化性組成物の硬化は、加熱により行うことができる。加熱温度は、適宜設定され、被封止物の耐熱温度や効率等を考慮して適宜設定されるが、通常80〜130℃とすることができ、90〜110℃とすることが好ましい。本発明の熱硬化性組成物によれば、上記温度で加熱しても、硬化中や硬化後に、表示素子に影響を及ぼすアウトガスが生じ難く、高品質な表示装置が得られる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
[材料]
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマー
・9G:下記式で表されるポリエチレンングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学工業社製 分子量536)
Figure 2017186521
・9PG:下記式で表されるポリプロピレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学工業社製 分子量536)
Figure 2017186521
・A−400:下記式で表されるポリエチレンングリコール#400ジアクリレート(新中村化学工業社製 分子量508)
Figure 2017186521
・FA−260M:下記式で表されるポリエチレンングリコール#600ジメタクリレート(日立化成製 分子量740)
Figure 2017186521
・FA−280M:下記式で表されるポリエチレンングリコール#800ジメタクリレート(日立化成製 分子量940)
Figure 2017186521
・FA−P220M:下記式で表されるポリプロピレングリコール#200ジメタクリレート(日立化成社製 分子量300)
Figure 2017186521
(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマー
・BPE−500:下記式で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学社製 分子量804)
Figure 2017186521
・A−BPE−10:下記式で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学社製 分子量776)
Figure 2017186521
・BPE−900:下記式で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学社製 分子量1112)
Figure 2017186521
・BPE−1300N:下記式で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学社製 分子量1684)
Figure 2017186521
(B)アゾ系重合開始剤
・OTAZO:下記化学式で表される1,1’−アゾビス−(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)(大塚化学社製 分子量354.4、融点106〜110℃、分解点106〜110℃、10時間半減期の温度61℃)
Figure 2017186521
・MAIB:下記化学式で表されるジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(大塚化学社製 分子量230.3、融点28〜33℃、分解点117〜121℃、10時間半減期の温度67℃)
Figure 2017186521
・AIBN:下記化学式で表される2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(大塚化学社製 分子量164.2、融点100〜103℃、分解点100〜103℃、10時間半減期の温度65℃)
Figure 2017186521
・AMBN:下記化学式で表される2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(大塚化学社製 分子量192.3、融点48〜52℃、分解点105〜107℃、10時間半減期の温度67℃)
Figure 2017186521
(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体
・TEMPO:下記化学式で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル
Figure 2017186521
・4−O−TEMPO:下記化学式で表される4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル
Figure 2017186521
・4H−TEMPO:下記化学式で表される4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル
Figure 2017186521
(D)レベリング剤
・LS−460 (楠本化成社製)
(その他)
・ルペロックス575:t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製)
・パーロイルTCP:ビス(4−tertブチルシクロヘキシル)パーオキサイドカーボネート(日本油脂社製)
[実施例1]
(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーとして9G 50g、(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとしてBPE−500 50gと、(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体として、TEMPO 0.03gを混合・攪拌した後、(B)アゾ系重合開始剤としてOTAZO 0.3gを加え、さらに混合・攪拌して、熱硬化性組成物を調製した。
[実施例2〜21、及び比較例1〜4]
表1〜3に示す材料及び組成とした以外は、実施例1と同様に熱硬化性組成物を調製した。
[評価]
各実施例及び比較例で調製した熱硬化性組成物の粘度を測定した。さらに、以下の方法で、熱硬化性組成物のポットライフ、硬化物からのアウトガスの量、硬化物(フィルム)の鉛筆硬度、真空環境下での重量減少率、を測定した。結果を表1〜3に示す。
・粘度測定
E型粘度計(BROOKFIEL社製のデジタルレオメータ型式DII−III ULTRA)にて、25℃、2.5rpmにおける熱硬化性組成物の粘度を測定した。
・窒素環境、40℃における熱硬化性組成物のポットライフの評価
20mLバイアル瓶に10gの熱硬化性組成物を入れて酸素濃度(東レエンジニアリング製LC−850KS測定)が0.1ppbであるグローブボックス内で密閉した。その後、40℃オーブン内で保管した。そして、24時間ごとに、オーブン内でバイアル瓶を逆さにして1分保持し、熱硬化性組成物が下に落ちてくるまでの日数を評価した。熱硬化性組成物が下に落ちてくるまでの日数が長いほど、ポットライフが長い、と評価できる。
・硬化物からのアウトガス量の測定
テフロン(登録商標)シートで100μmのギャップを作ったガラスの間に熱硬化性組成物を挟み込み、100℃30分で窒素パージオーブン(ヤマト科学製DN4101)中で硬化させ、フィルムを作製した。その後、ヘッドスペース型のGCで100℃30分加熱後のアウトガスを測定した。
・硬化フィルムの鉛筆硬度測定
アウトガス量の測定と同様に、硬化フィルムを作製した。そして、当該硬化フィルムについて、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度6B〜3H)を用いて、JISK5600−5−4(1999)が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、4.9Nの荷重にて、硬化フィルム表面の鉛筆硬度を測定した。
・真空環境下での重量減少率の測定
10cm×10cmのガラスに0.5gの熱硬化性組成物をのせて真空チャンバー内に入れ、真空ポンプで1.2Paまで減圧し、減圧前後の重量減少を測定した。
Figure 2017186521
Figure 2017186521
Figure 2017186521
表1〜3に示すように、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、(B)アゾ系重合開始剤と、(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体と、を含む熱硬化性樹脂組成物(実施例1〜21)では、ポットライフがいずれも4日超であり、非常に安定であった。またこれらの熱硬化性組成物は、硬化物からのアウトガスも少なく、例えば有機EL素子の封止剤としたときに、有機EL素子に影響を及ぼすおそれが少ない。さらに、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が400以上2000以下であると、真空下での重量減少が殆どなく、熱硬化性組成物中の成分が揮発し難いといえる(実施例1〜20)。
ただし、(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーを含まない場合には、熱硬化性組成物の粘度が400mPa・sを超え、当該組成物は塗布性が低く、均一に塗布することが難しかった(比較例2)。
また、(C)テトラメチルピペリジンフリーラジカル誘導体を含まない場合には、ポットライフが非常に短かった(比較例1)。これは、熱硬化性組成物が窒素環境、40℃において、(A)(メタ)アクリルモノマーと、(B)アゾ系重合開始剤とが反応してしまったためである、と推察される。
また、(B)アゾ系重合開始剤以外の重合開始剤を用いた場合(例えば過酸化物開始剤)には、硬化後にアウトガスが発生しやすかった(比較例3および4)。生成したラジカルが分解や転移して、低分子量成分が発生したことが要因であると推察され、アウトガスが発生すると、有機EL素子にダメージを与えると推測される。
本発明の熱硬化性組成物は、塗布性が良好であり、さらに熱処理や熱処理後にアウトガスが少ない。したがって、種々の表示素子の封止剤に適用可能である。

Claims (12)

  1. (A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーと、
    (B)アゾ系重合開始剤と、
    (C)下記一般式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル誘導体と、
    を含み、
    E型粘度計で測定される、25℃、2.5rpmにおける粘度が5mPa・s以上400mPa・s以下である、
    熱硬化性組成物。
    Figure 2017186521
    (一般式(1)中、RはH、ヒドロキシ基、オキソ基、アミノ基、シアノ基、アセトアミド基、メトキシ基、カルボキシ基、パーミタミド基、メタクリロイル基、イソチオシアナート基、2−クロロアセトアミド基、2−ヨードアセトアミド基、(9−アクリジンカルボニル)アミノ基、及び[2−[2−(4−ヨードフェノキシ)エトキシ]カルボニル]ベンゾイル基からなる群から選ばれるいずれかの基を表す)
  2. 前記(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が、400以上2000以下である、
    請求項1に記載の熱硬化性組成物。
  3. 前記(A)脂肪族(メタ)アクリルモノマーが、メタクリルモノマーである、
    請求項1または2に記載の熱硬化性組成物。
  4. (A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
  5. 前記(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量が、400以上2000以下である、
    請求項4に記載の熱硬化性組成物。
  6. 前記(A−2)環構造を有する(メタ)アクリルモノマーが、ビスフェノールA型の構造を含む、
    請求項4または5に記載の熱硬化性組成物。
  7. (D)レベリング剤をさらに含む、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を含む、
    表示素子用の封止剤。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を含み、有機EL素子の枠封止に用いる、
    有機EL素子用枠封止剤。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を含み、有機EL素子の面封止に用いる、
    有機EL素子用面封止剤。
  11. シート状に成形されている、
    請求項10に記載の有機EL素子用面封止剤。
  12. 請求項10に記載の有機EL素子用面封止剤の硬化物。
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