JP2017161548A - 輪郭形状表面粗さ測定装置および輪郭形状表面粗さ測定方法 - Google Patents

輪郭形状表面粗さ測定装置および輪郭形状表面粗さ測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構成が簡単で低コストで実現でき、高分解能で広い測定範囲について高い線形性を有する変位信号を生成する輪郭形状表面粗さ測定装置の実現。
【解決手段】輪郭形状表面粗さ測定装置は、測定子7を有する測定部13と、測定子に対してワークを相対的に移動させる送り機構14と、測定部を一端に有し、測定子の変位量を伝える、支点16を中心に回動するアーム12と、アームの変位量を測定することにより、測定子の変位量を測定する差動変圧器型の変位量測定機構51およびスケール型の変位量測定機構52と、を含む。変位量測定機構51、52が出力するデータの整合性を確認することによって、変位量測定機構51、52の精度を診断する。
【選択図】図7

Description

本発明は、輪郭形状表面粗さ測定装置および輪郭形状表面粗さ測定方法に関する。
被測定物(ワーク)の表面粗さを測定する表面粗さ測定装置、およびワークの表面形状(輪郭)を測定する輪郭形状測定装置が、広く使用されている。表面粗さ測定装置は、ワーク表面の微小な凹凸を検出し、ワーク表面の微小な長さにおける高さ変化、すなわち短い周期の高さ変化を検出する。これに対して、輪郭形状測定装置は、ワーク表面の比較的長い周期での高さ変化を検出する。言い換えれば、表面粗さ測定装置および輪郭形状測定装置は、検出する触針の変位の細かさ、すなわちワークに対して検出部を一定速度で相対移動した時に得られる検出信号における長さに対応する周期成分のうちどの周期範囲を検出するかが異なるといえる。そのため、表面粗さ測定装置に使用される変位検出器(センサ)は、高速の応答性を有し、微小な変位を検出可能であること、すなわち高分解能が要求されるが、長い周期の変位の絶対値、すなわち広い検出範囲における検出信号の線形性についてはあまり厳しい検出精度を要求されない。言い換えれば、広い検出範囲についての検出信号の線形性は、比較的低精度でも許容される。これに対して、輪郭形状測定装置に使用される変位検出器(センサ)は、表面粗さの場合ほど高速の応答性を要求されず、微小な変位を検出可能(高分解能)である必要はないが、長い周期の変位の絶対値、すなわち検出信号の広い検出範囲の線形性については高精度を要求される。
また、以上のような測定の特性を考慮して、表面粗さを測定する場合と、輪郭形状を測定する場合では、一般にワークに対して検出部を相対移動で移動させる時の移動速度が異なる。具体的には、表面粗さを測定する場合の移動速度は、輪郭形状を測定する場合の移動速度に比べて低速である。
輪郭形状測定装置および表面粗さ測定装置は、類似の構成を有しており、表面形状(輪郭)および表面粗さの両方を測定できる測定装置が望まれている。
図1は、輪郭形状表面粗さ測定装置の外観図である。
図1に示すように、輪郭形状表面粗さ測定装置1は、ベース2と、ベース2に設けられた支柱3と、支柱3にZ軸方向に摺動自在に支持されたX軸駆動部4と、X軸方向に移動可能にX軸駆動部4に支持されたXアーム5と、Xアーム5の先端に設けられた測定部6と、ベース2に設けられた載置台8と、を有する。
測定を行う場合には、載置台8の上に載置されたワークWの表面に、変位検出器6の先端部に設けられた触針7を一定の力で接触させる。この状態で、X軸駆動部4によりアーム支持部5および変位検出器6をX軸に沿って移動させると、ワークWの表面の形状に応じて触針7がZ軸方向に変位する。変位検出器6は、内蔵したセンサ、例えば差動変圧器(差動トランス)などにより触針7の変位に応じた電気信号を出力する。
図2は、差動変圧器を使用した場合の変位検出器6の構成例および検出信号の例を示す図であり、(A)が構成例を、(B)が検出信号の例を、示す。
図2の(A)に示すように、変位検出器6は、筐体に係合される支点16に回転可能に支持されたホルダ14と、ホルダ14に着脱可能に係止されるアーム12と、アーム12の先端に設けられる触針7と、ホルダ14の変位に応じた信号を出力する差動変圧器型検出機構(センサ)15と、を有する。触針7とアーム12を合わせて測定子13と呼ぶ。差動変圧器型検出機構(センサ)15は、変位検出器6に固定された複数のコイルからなる固定部分と、ホルダ14に取り付けられた鉄心部分とを有し、ホルダ14の回転により固定部分の複数のコイルに対する鉄心部分の位置が変化し、コイルに生じる交流信号(検出信号)の強度が変化する。差動変圧器型センサについては広く知られているので、これ以上の説明は省略する。
測定子13をホルダ14に取り付け、触針7を所定圧でワーク表面に接触させると、接触位置に応じて、すなわちワーク表面の高さおよび凹凸に応じて、測定子13およびホルダ16が回転し、差動変圧器型センサの鉄心部分が変位し、変位に応じた検出信号が出力される。差動変圧器型センサの検出信号は、強度が変位に略比例して変化し、非常に微細な変位に応じて変化するが、変位に完全に比例して変化せず、図2の(B)に示すように、検出可能範囲の両側で比例した場合の値からの差が拡大、すなわち線形性が低下する。
そのため、微小な変位を検出可能であること、すなわち高分解能が要求されるが、長い周期の変位の絶対値についてはあまり厳しい検出精度を要求されない表面粗さ測定装置には、差動変圧器型センサが使用されることが多い。
差動変圧器型センサを輪郭形状測定装置に使用する場合には、あらかじめ差動変圧器型センサの較正を行い、変位と検出信号のずれを記憶した補正テーブルを用意して補正することにより、線形性を改善していた。しかし、差動変圧器型センサは温度変化の影響を受けやすく、この補正だけでは十分な線形性を実現するのが難しかった。
一方、広い検出範囲について高い線形性を有する変位検出器として、スケール型検出機構(センサ)が知られている。スケール型センサは、目盛りを記録したスケールを有し、移動に伴う目盛りの変化量またはスケールの移動位置を検出する。スケールは、光学式のものや、磁気式のものなどがある。
図3は、光学式スケール型検出機構(センサ)を説明する図であり、(A)は光学式スケール型センサに使用されるスケールの目盛りの例を、(B)は光学式スケール型センサの検出部の構成例を、(C)は検出信号の例を、それぞれ示す。
図3の(A)に示すように、スケール21の目盛りは、ガラス板などに形成された白黒パターンで、黒部分はクロムなどを蒸着して形成される。
図3の(B)に示すように、移動するスケール21を挟むように、検出部を設ける。検出部は、LEDまたはレーザなどの光源22と、光源22からの光をスケール21の白黒部分が形成される面に収束するレンズ23と、をスケール21の一方の側に、スケール21を透過した光を集光するレンズ24と、レンズ24により集光された光を検出する受光素子25と、をスケール21の他方の側に設ける。
スケール21が移動し、レンズ23により集光された光束の部分に、スケール21の白部分が位置するか黒部分が位置するかで、受光素子25が受光する光量が変化し、図3の(C)に示すように変化する検出信号が得られる。この検出信号を処理することにより、スケール21の移動量または移動位置が検出できる。
図4は、光学式スケール型センサを使用した変位検出器の構成例を示す図である。図4に示すように、この変位検出器は、リンク部材34と35が、2本のリンク36と37により連結された平行リンク機構を有する。リンク36と37は、リンク部材34と35の4つの回転軸に係合されており、リンク部材34と35が平行に、リンク36と37が平行を維持した状態、すなわちリンク部材34と35およびリンク36と37が平行四辺形をなすように変形可能である。4つの回転軸の1つの回転軸38が、変位検出器の筐体に係合され、リンク36は、回転軸38を支点として回転可能に支持される。先端に触針7が設けられたアーム32が、リンク36に係止される。したがって、アーム32およびリンク36は、図3のアーム12およびホルダ14と同様に、回転軸(支点)38に回転可能に支持される。
リンク部材35の一方の側には、光学式スケール型センサ39が設けられ、リンク部材35の変位を検出する。図4では、目盛りを有するスケールが筐体に固定され、リンク部材35に、後述するインデックススケールを設ける。なお、リンク部材35にスケールを設け、筐体に検出部を設けることも可能である。
図4の変位検出器では、リンク部材35は、横方向に少量移動するが、平行に移動するために、図3の(A)に示したような目盛りを有するスケールを使用した光学式スケール型センサを使用できる。しかし、図4に示した平行リンク機構は、大きなスペースを必要とする。
そこで、図5の(A)に示すように、図2の変位検出器で、ホルダ14に、放射線状にパターンが形成されたスケール17を設け、スケール17を利用して、ホルダ14の回転量(回転位置)を検出することにより、触針7の変位を検出する。スケール17は、図5の(B)に示すように、支点16を中心とする白黒パターンが円弧状に形成されている。円弧状のパターンの移動量を検出する場合も、図3で説明したのと同様の方法が使用できる。なお、ホルダ14の後端側の表面を、支点16を中心とする円筒面とし、その上に等間隔のパターンを形成し、パターンの移動(回転)量を光学的に検出する方法も提案されている。
スケール型センサの分解能は、基本的には目盛りのピッチで分解能が規定されるが、インデックススケールを用いるなどして分解能を向上する各種の方法が提案されている。また、スケール21の目盛りを回折格子としてレーザ干渉により分解能を向上する方法も提案されている。しかし、目盛りを回折格子としてレーザ干渉により分解能を向上する方法は、構成が大規模になり、その分大型化するため、表面粗さ/形状測定装置の変位検出器に使用するのは難しい。また、この方法を実現する構成は複雑であるため、高価であるという問題もある。
いずれにしろ、スケール型センサは、スケールを基準とするため、広い範囲で高精度の変位検出が可能であるが、差動変圧器型センサの分解能ほど高い分解能を得るのが難しい。
広い範囲で高精度の変位検出が可能で且つ高分解能である変位検出器には、レーザ干渉計方式がある。
図6は、レーザ干渉計方式を使用した変位検出器の構成を示す図である。図6に示すように、図2の変位検出器で、ホルダ43に、レーザ干渉計を形成するコーナーキューブ43を設け、差動変圧器型検出機構(センサ)は設けない。レーザ干渉計は、光源(レーザ)41と、ビームスプリッタ42と、コーナーキューブ43と、コーナーキューブ44と、ビームスプリッタ42に設けられた2枚の反射ミラー45および46と、受光素子47と、を有する。
光源41から出射されたレーザビームは、ビームスプリッタ42で2つのビームに分割される。分割された一方のレーザビームは、コーナーキューブ43で反射されてさらに反射ミラー45で反射されてコーナーキューブ43に戻り、さらに反射されてビームスプリッタ42に入り、反射されて受光素子47に向かう。分割された他方のレーザビームは、コーナーキューブ44で反射されてさらに反射ミラー46で反射されてコーナーキューブ44に戻り、さらに反射されてビームスプリッタ42に入り、透過して受光素子47に向かう。ビームスプリッタ42から受光素子47に向かう2つのレーザビームは、干渉する。ホルダ14が変位してコーナーキューブ43が変位すると、一方のレーザビームの光路長はコーナーキューブ43の変位量の4倍の距離変化し、これにより、受光素子47に入射する2つのレーザビームの光路長の差が変化し、干渉状態が変化する。受光素子47における1回の干渉の明暗の変化は、レーザビームの1波長に相当するので、受光素子47の検出信号の1回の変化を検出することにより、レーザビームの1波長の1/4のコーナーキューブ43の変位を検出可能である。レーザビームの1波長を約800nmとすると、200nmの変位を検出可能であり、非常に高分解能である。また、検出範囲も非常に広く、線形性も良好である。
このように、レーザ干渉計を使用した変位検出器は、高分解能で、線形性も良好であるが、非常に高額で、組立調整も複雑である。
特開2008−304332号公報 特開2004−069510号公報 特開2000−018935号公報 特開2004−077437号公報 特表平6−507706号公報
以上説明したように、表面粗さ測定に使用される変位検出器(センサ)は、高速の応答性を有し、微小な変位を検出可能であること、すなわち高分解能が要求される。一方、輪郭形状測定装置に使用される変位検出器(センサ)は、表面粗さ測定の場合ほど高速の応答性を要求されず、微小な変位を検出可能(高分解能)である必要はないが、長い周期の変位の絶対値、すなわち検出信号の広い検出範囲の線形性については高精度を要求される。レーザ方式など高価で大型の変位検出器(センサ)には、この両方の要求を満たすものもあるが、安価で小型の変位検出器(センサ)では、この両方の要求を満たせないのが現状である。
そこで、ワークの表面粗さおよび表面形状(輪郭)の両方を測定可能な、高分解能で広い測定範囲について高い線形性を有する輪郭形状表面粗さ測定装置が要望されている。
本発明は、構成が簡単で低コストで実現でき、高分解能で広い測定範囲について高い線形性を有する輪郭形状表面粗さ測定装置の実現を目的とする。
上記目的を実現するため、本発明の輪郭形状表面粗さ測定装置は、触針の変位を検出する変位検出部に、スケール型検出機構および差動変圧器型検出機構の両方を設け、測定対象(測定内容)に適した検出信号を選択可能にする。
すなわち、本発明の輪郭形状表面粗さ測定装置は、ワークの表面の輪郭形状と表面粗さを測定する輪郭形状表面粗さ測定装置であって、ワークの表面に接触して上下に変位する測定子を有する測定部と、測定子に対してワークを相対的に移動させる送り機構と、測定部を一端に有し、測定子の変位を伝える、支点を中心に回動するアームと、アーム、ないしはアームと連動する位置に取り付けられ、測定子の変位を検出する差動変圧器型検出機構およびスケール型検出機構と、を有することを特徴とする。
また、本発明のワークの表面の輪郭形状と表面粗さを測定する輪郭形状表面粗さ測定方法は、ワークの表面の輪郭形状と表面粗さを測定する輪郭形状表面粗さ測定方法であって、支点を中心に回動するアームの一端に、ワークの表面に接触して上下に変位する測定子を有し、測定子の変位を、アームと連動する位置に取り付けられ、アームの変位として検出する、差動変圧器型検出機構とスケール型検出機構の両方を有し、測定子をワークの表面に当接した状態で、ワークを相対的に移動させ、差動変圧器型検出機構とスケール型検出機構の検出結果を元に、ワークの輪郭表面粗さを測定することを特徴とする。
本発明によれば、差動変圧器型検出機構とスケール型検出機構の両方で同一のアームの変位を同時に検出するので、1回の測定で、差動変圧器型検出機構が検出する表面粗さデータと、スケール型検出機構が検出する輪郭形状データと、を同時に得ることができる。また、表面粗さデータと輪郭形状データが同時に得られるので、測定内容、すなわち、ワークの輪郭形状を測定するのか、ワークの表面粗さを測定するのかに応じて、適切な検出信号を選択することができる。このように、1台の測定装置で、輪郭形状と表面粗さを適切に測定することが可能になる。
差動変圧器型検出機構は、測定子に対してワークを相対的に移動させた時にワークの表面の粗さである微小変位に対応する高周波成分を検出する。また、スケール型検出機構は、測定子に対してワークを相対的に移動させた時にワークの表面のうねりに対応する変位の低周波成分を検出する。
スケールは、円弧状スケールを有し、そのスケールのピッチが連続的に刻まれていることで、全体として、スケールの線形性を確認することができる。また、測定対象は直線的な高低差を測定するのであるが、実際に検出する方式としては、一つの支点を中心に回動する円弧運動に変換し、その運動を円弧状のスケールで読み取る。
その場合、厳密には、sinθ/θのずれを発生する(これは、次に基づく)。すなわち、高低差はアーム支点位置から測定子までの距離をRとすると、アームがθ回転することによって変位する高低差はRsinθである。一方、円弧スケールでは、アーム支点位置からスケール位置までの距離をrとすると、アームがθ回転することによって変位するスケール上の長さはrθである。θが0度付近であれば、その誤差は非常に小さいが、θが大きくなるにつれてsinθ/θの誤差は大きくなる。
こうした誤差も上記関係を基に、その角度による理論的なずれ量を連続的に見積もり求めることができる。また、後に述べるがスケール場合は、連続的にその目盛りの間を補間することが可能となるため、たとえ円弧スケールであっても、その目盛りの連続性から精度よく補間し、補正することが可能となる。
一方、差動変圧器の場合は、精度よく円弧運動に対応させることは難しい。広いレンジの円弧運動の場合、微小にリニアリティのずれを発生することを回避することは原理的に難しくなる。測定子側のアームを長くすると、微小な円弧運動で済む場合もあるが、その場合は、アームの長さによる慣性抵抗の影響で感度のよい測定が困難になる。アームの慣性抵抗を小さくするには、アームの長さを極力短くする必要があるが、こうした場合は円弧運動の補正の必要性がさらに増すことになる。
こうした点で、円弧運動の補正は、スケール型検出機構の方がリニアリティ確保の点でよく、高精度な補正が可能となる。
また、差動変圧型検出器とスケール型検出器を組み合わせる場合、差動変圧式検出器は応答性を重要視し微小変位や高周波の粗さ成分を主として測定するため、差動変圧型検出器はスケール型検出器に対して回動する支点近くに置く方が良い。
一方、スケール型検出器は、アームの円弧運動に対しても高精度に補正することが可能になるため、リニアリティを重視しつつ微小変位を拡大して評価することもあって、差動変圧検出機構と比べると、アーム支点から遠い位置に置く方が望ましい。
輪郭形状表面粗さ測定装置は、差動変圧器型検出機構の検出信号と、スケール型検出機構の検出信号の一方を選択して出力する選択部を有する。
輪郭形状表面粗さ測定装置は、差動変圧器型検出機構の検出信号およびスケール型検出機構の検出信号を合わせて補正変位信号を生成する補正回路を有する。
補正回路は、スケール型検出機構の検出信号に基づいて、差動変圧器型検出機構の検出信号の広範囲の線形性を補正する。
補正回路は、線形性の不十分な差動変圧器型検出機構の検出信号の線形性を、スケール型検出機構の検出信号で補正して、高分解能で、広い測定範囲で線形性の良好な検出信号を生成する。
本発明によれば、1台で、ワークの輪郭形状とワークの表面粗さを適宜測定可能な輪郭形状表面粗さ測定装置が実現される。
また、補正回路を有する輪郭形状表面粗さ測定装置では、スケール型検出機構の検出信号に基づいて、差動変圧器型検出機構の検出信号の広範囲の線形性を補正することにより、高分解能で広い測定範囲について高い線形性で、ワークの輪郭形状および表面粗さを測定できるようになる。
図1は、表面粗さ/形状測定装置の外観図である。 図2は、変位検出器の構成例および検出信号の例を示す図であり、(A)が構成を、(B)が検出信号を示す。 図3は、光学式スケール型検出機構(センサ)を説明する図であり、(A)は光学式スケール型センサに使用されるスケールの目盛りの例を、(B)は光学式スケール型センサの検出部の構成例を、(C)は検出信号の例を、それぞれ示す。 図4は、光学式スケール型センサを使用した変位検出器の構成例を示す図である。 図5は、放射線状のパターンを有する光学式スケール型センサを使用した変位検出器の構成例を示す図である。 図6は、レーザ干渉計方式を使用した変位検出器の構成を示す図である。 図7は、本発明の第1実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置の変位検出器の構成を示す図である。 図8は、第1実施形態の信号を処理する部分の構成を示す図である。 図9は、スケール信号処理部の較正データの作成処理を説明する図である。 図10は、第2実施形態の信号を処理する部分および選択部の構成を示す図である。 図11は、第3実施形態の信号を処理する部分および選択部の構成および選択制御処理を示す図である。 図12は、変位が小さい範囲内で変化する場合の第2変位データ(表面粗さデータ)と第1変位データ(輪郭形状データ)の例を示す図である。 図13は、第4実施形態の信号を処理する部分および補正部の構成を示す図である。 図14は、第4実施形態における信号処理および補正処理を説明する図である。 図15は、第4実施形態における信号処理および補正処理を説明する図である。 図16は、第4実施形態における信号処理および補正処理の処理例を示す図である。 図17は、第4実施形態における信号処理および補正処理の処理例を示す図である。 図18は、変位を離散的に高精度で検出する光学式のスケール型検出機構の例を示す図である。 図19は、差動変圧器検出機構を、測定子と同じ側に設けた変位検出器の構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置を説明する。実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置は、例えば、図1に示すような外観を有し、変位検出器6の構成が従来例と異なる。ただし、外観および全体構成は、図1に示したものに限定されない。
図7は、本発明の第1実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置の変位検出器6の構成を示す図である。
図7に示すように、第1実施形態の変位検出器6は、筐体に係合される支点16に回転可能に支持されたホルダ14と、ホルダ14に着脱可能に係止されるアーム12と、アーム12の先端に設けられる触針7と、ホルダ14の変位に応じた信号を出力する差動変圧器型検出機構(センサ)51と、ホルダ14の変位に応じた信号を出力するスケール型検出機構(センサ)52と、を有する。触針7が設けられたアーム12を、測定子13と呼ぶ。差動変圧器型検出機構51は、変位検出器6の筐体に固定された複数のコイルからなる固定部分と、ホルダ14に取り付けられた鉄心部分と、を有し、ホルダ14の回転により固定部分の複数のコイルに対する鉄心部分の位置が変化し、コイルに生じる交流信号(検出信号)の強度が変化する。スケール型検出機構52は、ホルダ14に取り付けられ、支点16を中心として放射線状に設けられた白黒パターンを有するスケールと、変位検出器6の筐体に固定されたスケールの変位(回転量)を読み取る検出部と、を有し、ホルダ14の回転によりスケールが回転すると、検出部が回転量(回転位置)を読み取る。なお、検出部にインデックススケールを用いてもよい。
差動変圧器型検出機構51およびスケール型検出機構52については広く知られているので、これ以上の詳しい説明は省略するが、前述のように、差動変圧器型センサは、高分解能で、微小な変位を検出可能であるが、広い検出範囲での線形性が十分でない。一方、スケール型センサは、広い範囲で高精度の変位検出が可能であるが、差動変圧器型センサほどの高分解能を得るのが難しい。
例えば、スケール型検出機構としては、レニショー製のFASTRACKシリーズやハイデンハイン製のERA700などのテープスケール等が好適に使用される。または、通常のステンレススケールやガラス面に刻まれた円弧スケールであってもよい。
先に述べたレニショー製のFASTRACKシリーズは、両面テープで曲面部分に貼り付ける。スケールには目盛りが20μmピッチで連続的に刻まれている。こうした両面テープによる貼り付け方式の場合、貼り付けの精度等で多少のずれ等が発生することはあるが、こうしたずれは、いくつかの厚みのブロックゲージを事前に多数測定して、相関直線を引いて較正しておくことで、そのずれ量を確認し補正することができる。こうしたスケールを利用する利点としては、連続的に多数の点で目盛りが等間隔で刻まれているため、その連続性を基に、リニアリティを含めて補正することができる点である。
すなわち、最初から曲線状に形成されたスケールの場合、その曲面の曲率精度の点でも、細かい間隔で高精度かつ等間隔に目盛りを刻むことは難しく、厳密なリニアリティを有するスケールを製作することは非常に高価になる。
テープスケールの場合、初期は直線状で製作されるため、レーザ光等による直線的な較正により、非常に細かいピッチで、高精度に等間隔の目盛りを刻んだスケールとすることができる。その直線スケールを曲面に貼り付ける際に、その貼り付け時に微小な誤差を生じることはあるが、テープスケールが有する固有の高精度、等間隔の目盛りの連続精度から、その貼り付けによるずれ量を見積もることが可能になる。
例えば、温度状態が苛酷な環境下においては、スケール自体の熱膨張などの影響も考えられる。しかし、環境に起因してスケールが熱膨張する場合は、スケールの一部が局部的に熱膨張するのではなく、一般的には全体的に一様に熱膨張すると考えられる。
こうした状態においては、その状態下で何段階かの構成サンプル測定を行い、多数点で較正を行なうことで、その温度環境に適した連続的な較正を行なうことができる。
また、一方で差動変圧器の線形性は、差動変圧器のコア部がコイル部からどれだけずれるかによって、ずれ量が変化する。すなわち、一様に線形性がずれるのではなく、コアのコイルからの相対位置に応じてその線形性が失われる。
そこで、ある室温状態において、スケール型検出器から差動変圧型検出器のリニアリティのずれ量を評価しておき、次に、異なる温度環境下で、同様にスケール型検出器から差動変圧型検出器のリニアリティのずれを評価すると良い。
スケール型検出器から差動変圧器の温度環境による線形性のずれを基に、スケール型検出器におけるスケールの熱膨張による影響をある程度見積もることが可能である。
また、20μmピッチで5mmのレンジのスケールを想定しても、その間に250点もの目盛りが存在する。その目盛り位置の連続性を基に、いくつかの厚みのブロックゲージを測定し、その相関直線を基に測定対象の測定値を算出する。これにより、たとえ目盛り間であっても、その間を補間する機能をもたせることができる。すなわち、目盛りの連続性から、より高精度の測定を可能とする。
一方、離散的な測定では、その間の精度を穴埋めすることは困難である。すなわち、1つの点を基に較正する場合だと、その1点の絶対精度において多少の狂いを生じると、すべてのリニアリティの信頼性が失われるが、多数点が等間隔に連続して存在する場合、全体的な照合から、部分的な位置ずれ状態を確認でき、リニアリティ(線形性)の精度を安定的に確保することができる。
ただし、長い年月の使用においては、スケールを固定していた両面テープが徐々に浮き上がる等の問題が生じ、全体的に精度がずれてくる場合などもある。このような場合は、差動変圧型検出機構との相対的な精度ずれを観察しておくとよい。
差動変圧型の検出機構であっても、変位量が小さい場合、特に、原点付近は比較的リニアリティが確保されている。原点付近で互いのずれが大きい場合や、双方の検出機構において互いのゼロ点位置がずれてきている場合においては、スケールないしは差動変圧器の経時変化によるずれの影響を考慮し、互いの検出機構をチェックすることが可能となる。
このようなチェック機能がない場合、連続的に使用し、精度較正を途中で行なうことができない場合においては、精度ずれが起こっているかどうかの確認をすることができない。
本願の較正によれば、1つのアームに及ぼされる変位が、検出原理が異なる2つのセンサーで常時確認しているため、どちらかのセンサーの状況が正常ではない場合においても、双方の相対的なデータ関係から、すぐさま異常を検知することが可能となる。
よって、標準サンプルを測定する構成作業を頻繁に行なわずとも、双方のセンサーが出力するデータの整合性を確認することによって、互いの検出器の精度を自動的に診断することができ、その結果、長期にわたる使用においても正確性を確保しながら、精度よく測定することが可能となる。
第1実施形態では、差動変圧器型検出機構51およびスケール型検出機構52の出力する検出信号は、図示していない信号処理部で処理される。信号処理部は、変位検出器6の筐体内に設けても、変位検出器6の筐体外に設けても、一部を変位検出器6の筐体内に残りを変位検出器6の筐体外に設けてもよい。
図8は、第1実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置における、信号処理を行う部分の構成を示すブロック図であり、(A)は全体構成を、(B)はスケール信号処理部61の較正を、(C)は差動変圧器信号処理部62の構成を示す。
第1実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置は、図8の(A)に示すように、スケール信号処理部61と、差動変圧器信号処理部62と、を有する。輪郭形状表面粗さ測定装置では、触針7をワークWの表面に対して一定速度で移動して測定を行うため、差動変圧器型検出機構51およびスケール型検出機構52の出力する検出信号の時間軸は、ワークWの表面上の距離に対応する。信号処理部における処理では、これを利用して信号処理を行う。
スケール信号処理部61は、スケール型検出機構52の出力する検出信号を処理して第1変位データを生成して出力する。例えば、スケール信号処理部61は、図8の(B)に示すように、スケール型検出機構52の出力する検出信号であるスケール信号に対して、デジタル信号に変換するA/D変換処理64を行い、さらにデジタル信号に対して、長い距離における変位成分に対応する波長以下の成分を除去する第1フィルタ処理65を行い、第1変位データを生成する。
スケール型検出機構52は、測定子12の上下方向の変位をアーム12の円弧スケールでの回転量に変換して検出するため、回転量の変化を高さ変化に変換する。変換は、基本的には変換式で行えるが、実際の測定装置では各種の誤差が存在するために、実際に測定子12を正確に上下方向に変位させた場合の回転量、すなわちスケール型検出機構52の検出信号を測定し、その関係から較正データを作成し、記憶する。そして、実際の検出信号を、較正データに基づいて較正する。
スケール信号処理部61は、正確な変位が行われた時のスケール型検出機構52の出力する検出信号と正確な変位との差を較正データとして記憶しており、第1変位データを生成する時には、較正データ分の補正も行う。
図9は、スケール信号処理部61の較正データの作成処理を説明する図である。図9の(A)に示すように、支点16で回動可能に支持されたアーム12の一端には測定子13が設けられ、他端にはスケール型検出機構52の一部が設けられ、アーム12の他端の円弧に沿った変位(または回転量)を検出する。
図9の(B)に示すように、支点13から測定子13までの回転半径をR1、支点13からスケール信号機構52の円弧スケールまでの回転半径をR2とし、測定子13が上下方向に変位し、アームがθ回転した場合を考える。この場合、測定子13の上下方向の変位はR1sinθであり、円弧スケールの円弧に沿った変位量はR2θである。したがって、スケール信号機構52の円弧スケールに沿った変位量をdとすると、測定子13の上下方向の変位Dは、D=R1sin(d/R2)で表される。
上記のように、実際の測定装置では各種の誤差が存在するために、計算式からのずれ(誤差)が発生するので、較正データを作成し、補正を行う。図9の(A)に示すように、測定台53上にブロックゲージ54を載置し、支点16を固定し、測定子13をブロックゲージ54に接触させ、スケール型検出機構52の出力する検出信号を読み取る。この動作を高さの異なるブロックゲージ54で行う。言い換えれば、高さの異なるブロックゲージを、視点を固定して測定する。この測定により、正確な変位が行われた時のスケール型検出機構52の出力する検出信号と正確な変位との差である較正データが得られるので、それを記憶する。図9の(C)は、高さの異なるブロックゲージを測定した時のスケール型検出機構52の検出信号の読取値の変化例を示す図である。
図8に戻り、差動変圧器信号処理部62は、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号を処理して第2変位データを生成する。差動変圧器信号処理部62は、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号に対して従来行われているのと同様の処理を行い、従来と同様の変位データを第2変位データとして出力することが可能である。
図8の(C)に示すように、差動変圧器信号処理部62は、例えば、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号である差動変圧器信号に対して、デジタル信号に変換するA/D変換処理66を行い、さらにデジタル信号に対して、触針7の歪み、ノイズ等を除去する第2フィルタ処理67を行い、第2変位データを生成する。第2フィルタ処理67では、例えば、触針7の先端半径が2μmの場合、2.5μm以下の成分を除去する。さらに、図2の(B)で説明したように、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号は、変位が大きい場合線形性が劣化するため、あらかじめ較正データを作成して補正した上で第2変位データ(表面粗さデータ)とすることが望ましい。
第1実施形態では、第1変位データおよび第2変位データは、そのまま出力される。言い換えれば、第1実施形態では、1回の測定で、第1変位データが示す輪郭形状データと、第2変位データが示す表面粗さデータを同時に得ることができる。
図10は、本発明の第2実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置における、信号処理および選択を行う部分の構成を示すブロック図である。
第2実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置は、図10に示すように、スケール信号処理部61と、差動変圧器信号処理部62と、選択部63と、を有する。スケール信号処理部61および差動変圧器信号処理部62は、第1実施例と同じである。
選択部63は、輪郭形状と表面粗さのいずれを測定するかを示す選択信号に応じて、スケール信号処理部61の出力する第1変位データと、差動変圧器信号処理部62の出力する第2変位データの一方を選択して出力する。具体的には、輪郭形状を測定する場合には、選択信号として第1変位データを選択する信号が入力され、選択部63は、スケール信号処理部61の出力する第1変位データを検出データとして出力する。また、表面粗さを測定する場合には、選択信号として第2変位データを選択する信号が入力され、選択部63は、差動変圧器信号処理部62の出力する第2変位データを検出データとして出力する。選択信号は、例えば、輪郭形状表面粗さ測定装置のユーザが、装置に設けられた処理選択ボタンを操作することにより発生される。
第2実施形態では、選択部63は、選択信号に応じて第1変位データと第2変位データのいずれかを選択して出力したが、選択を別の方法で行なうことも可能である。次に説明する第3実施形態では、選択部63における選択を別の方法で制御する。
図11は、本発明の第3実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置における、信号処理を行うおよび選択を行なう部分の構成を示すブロック図、および選択信号の切り換えを説明する図である。
図11の(A)に示すように、第3実施形態では、図10に示した第2実施形態の構成に加えて、第1変位データおよび第2変位データを受けて、選択部63における選択を制御する選択制御部69を、さらに設けた構成を有する。なお、図11の(A)では、選択制御部69は、第1変位データおよび第2変位データの両方を受けるように記載しているが、一方のみを受ける場合もあり得る。
前述のように、差動変圧器信号処理部62の出力する第2変位データは、変位が大きくなると、誤差が増加する。図11の(B)は、実際の変位に対する第2変位データの値の変化例を示す。図11の(B)に示すように、第2変位データが、例えば上限閾値+Shと下限閾値−Shの範囲内であれば、第2変位データの値は、実際の変位に対して高い線形性で(直線で)変化する。これに対して、上限閾値+Sh以上の範囲および下限閾値−Sh以下の範囲では、線形性が劣化し、誤差が大きくなる。もちろん、この誤差は、較正により補正することが可能であるが、誤差は温度変化など環境に応じて変化すると共に、経時変化するため、高精度に補正することが難しい。そこで、第2実施形態の選択制御部69は、第2変位データが上下限閾値±Sh以内、言い換えれば変位が±Shに対応する±Th以内の場合は、第2変位データを選択し、第2変位データが上下限閾値±Shの範囲外、言い換えれば変位が±Thの範囲外の場合は、第1変位データを選択するように、選択部63を制御する。
なお、変位が上下限閾値±Thの範囲内であるか範囲外であるかは、スケール信号処理部61の出力する第1変位データに基づいて決定することも可能である。
こうした補正場合は、すなわち線形性が確保されているとの判断を基に、第一の変位データによる補正を行なわない場合に相当する。第2の変位データである差動変圧器型検出機構であっても、ゼロ点付近は線形性が確保されており、第1の変位データに基づく補正を必要としない範囲であることが前提である。こうしたどの範囲を補正範囲とするかは、事前の較正において、第2の変位データがどの範囲まで線形性が確保されているかとみなすかによる。
輪郭形状を測定する場合、表面粗さについても同時に測定することが要望される場合がある。このような場合に、従来は、例えば、輪郭形状を測定した後、同じ表面の表面粗さを測定していたため、測定時間が長くなっていた。これに対して、第2実施形態では、変位が上下限閾値の範囲内であれば表面粗さデータが出力され、変位が上下限閾値の範囲外であれば輪郭形状データが出力され、表面粗さデータは輪郭形状データとしても使用できるので、全測定範囲に渡って輪郭形状データが得られると共に、変位が上下限閾値の範囲内については表面粗さデータも同時に得られることになる。
図12は、変位が小さい範囲内で変化する場合の第2変位データ(表面粗さデータ)と第1変位データ(輪郭形状データ)の例を示す図である。図12の(A)は、第2変位データ(表面粗さデータ)の変化例を示し、図12の(B)は、第2変位データ(表面粗さデータ)の変化を拡大して示している。図12の(C)は、第1変位データ(輪郭形状データ)の変化例を示し、図12の(D)は、第1変位データ(輪郭形状データ)の変化を拡大して示している。
図12の(B)に示すように、第2変位データ(表面粗さデータ)は、分解能が高いため、拡大しても滑らかに変化する。第2変位データ(表面粗さデータ)は、例えば、分解能が1nmである。これに対して、図12の(D)に示すように、第1変位データ(輪郭形状データ)は、第2変位データに比べて分解能が低いため、拡大した場合ステップ状に変化する。第1変位データ(輪郭形状データ)は、例えば、分解能が50nmであり、輪郭形状を示すデータとしては十分な分解能を有する。そのため、輪郭形状を示す場合であれば問題はなく、第3実施形態で、変位が上下限閾値の範囲外の場合に輪郭形状を示すデータとして第1変位データが出力されても特に問題は生じない。また、図12の(B)と(D)に示すように、表面粗さを表すデータとしては、第1変位データ(輪郭形状データ)の分解能は不十分である。上記のように、第3実施形態では、変位が上下限閾値の範囲内であれば、輪郭形状を示すデータとして第2変位データ(表面粗さデータ)が出力されるので、表面粗さを測定することも可能である。
第1から第3実施形態では、スケール型検出機構52および差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号は、それぞれ信号処理されて第1および第2変位データにされた後、両方同時にまたは一方を選択して出力されるが、出力されるデータは、スケール信号および差動変圧器信号であった。
しかし、スケール信号(第1変位データ)および差動変圧器信号(第2変位データ)は、分解能および感度は異なるが、ワークの同じ部分を測定した信号であり、相互に関係している。そこで、スケール信号(第1変位データ)および差動変圧器信号(第2変位データ)を相互に補正して、要求に適した測定データを生成することが望ましい。以下に説明する実施形態では、このような補正処理が行われる。
前述のように、スケール型検出機構52が出力するスケール信号は、高分解能ではないが、広い検出範囲に渡って高い線形性を有する。一方、差動変圧器型検出機構51が出力する差動変圧器信号は、高分解能であるが、広い検出範囲における線形性は不十分である。そこで、補正の基本的な処理は、差動変圧器信号(第2変位データ)の長周期成分をスケール信号(第1変位データ)の長周期成分に一致させるように補正データを作成し、補正データの分だけ差動変圧器信号(第2変位データ)を補正することである。
補正処理は、各種の変形例があり得る。まず、差動変圧器型検出機構51およびスケール型検出機構52の出力する検出信号に基づいて生成した補正データを、触針7をワークWの表面に対して一定速度で移動させている移動中に出力するか、すなわちリアルタイムで出力するか、測定範囲について触針7のワークWの表面に対する移動が終了した後出力するか、の2つの場合があり得る。まず、リアルタイムで出力する場合について説明する。
図13は、第4実施形態の輪郭形状表面粗さ測定装置における、信号処理を行う部分の構成を示すブロック図であり、(A)は全体構成を、(B)は差動変圧器信号処理部62の構成を、(C)は差動変圧器信号処理部62の別の構成を示す。
図13の(A)に示すように、信号処理を行う部分は、スケール信号処理部61と、差動変圧器信号処理部62と、補正処理部70と、を有する。
スケール信号処理部61は、図8の(B)に示す構成を有し、第1から第3実施形態と同様に、スケール型検出機構52の出力する検出信号を処理して第1変位データを生成して補正部70に出力する。第1変位データは、差動変圧器信号処理部62の出力する第2変位データの線形性を補正するために使用し、補正は、スケール信号の長い距離における変位成分、すなわち距離的および時間的に長周期(長波長)成分を利用して行う。そのため、第1から第3実施形態と同様に、短い距離での変位成分、すなわち短周期(短波長)成分は必要ないので、所定の波長以下の成分については、除去する。
差動変圧器信号処理部62は、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号を処理して第2変位データを生成して補正部70に出力する。差動変圧器信号処理部62は、第1から第3実施形態と同様に、図8の(C)に示す構成を有し、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号に対して従来行われているのと同様の処理を行い、従来と同様の変位データを第2変位データとして出力することが可能である。しかし、第2変位データは、スケール信号処理部62の出力する第1変位データにより線形性が補正されるため、言い換えれば長周期(長波長)の成分は補正されるために必要ない。そのため、第4実施形態では、長周期(長波長)成分については、除去することが望ましい。
そこで、第4実施形態では、差動変圧器信号処理部62は、図13の(B)に示すように、差動変圧器型検出機構51の出力する検出信号である差動変圧器信号に対して、デジタル信号に変換するA/D変換処理66を行い、さらにデジタル信号に対して、触針7の歪み、ノイズ等を除去する第2フィルタ処理67を行い、その後、補正点の間隔に対応する波長以上の成分を除去する第3フィルタ処理68を行い、第2変位データを生成する。第2フィルタ処理67は、例えば、図8の(C)と同じ処理である。第3フィルタ処理68では、0.08mm、0.25mm、0.8mmなどの波長以上の成分を除去する。言い換えれば、第3フィルタ処理68では、図8の(B)の第1フィルタ処理65と逆のフィルタ処理が行われる。したがって、第4実施形態では、差動変圧器信号処理部62では、バンドパスフィルタ処理が行われることになる。
さらに、後述するように、補正データを生成するために、差動変圧器信号に対して、スケール信号に対して行うのと同様の短波長成分の除去を行う場合があり、その場合には、図13の(C)に示すように、差動変圧器信号に対して、デジタル信号に変換するA/D変換処理66を行い、さらにデジタル信号に対して、第1フィルタ処理65を行い、補正用データを生成する処理を別途行う。
補正部70は、第2変位データの長周期成分を、第1変位データに合わせるように補正する。
図14は、第4実施形態における信号処理および補正処理を説明する図である。
図14の(A)は、スケール型検出機構52の出力するスケール信号またはそれをA/D変換したデジタル信号を示す。この信号に対して第1フィルタ処理65を行うことにより、図14の(B)のような短波長成分を除去した第1変位データが得られる。
一方、図14の(C)は、差動変圧器型検出機構51の出力する差動変圧器信号またはそれをA/D変換したデジタル信号を示す。この信号に対して第2フィルタ処理67および第3フィルタ処理68を行うことにより、図14の(D)のような中間波長成分のみを残し、他の短波長および長波長成分を除去した第2変位データが得られる。
補正部70は、図14の(B)の第1変位データと、図14の(D)の第2変位データの長波長の変位が一致するように補正する。具体的には、各位置において、図14の(B)の第1変位データと、図14の(D)の第2変位データの高さと傾きが一致するように補正する。補正は連続的に行ってもよいが、図14の(D)の第2変位データの補正点(黒丸で示す)の値を、図14の(B)の補正点の値に合わせるように、離散的に補正してもよい。これにより、図14の(E)に示す補正変位データが得られる。
補正は、スケール信号および差動変圧器信号の長波長成分を求める必要があるので、補正する位置の後の変位信号もある程度サンプリングする必要があり、さらに演算処理に若干の時間を要する。そのため、補正データは、リアルタイムではあるが、ある程度の時間遅延で出力される。
上記の例では、スケール信号のフィルタ処理により長波長成分を生成したが、スケール信号をA/D変換した変位データの移動平均、直前の所定サンプル数のデータの最小二乗線またはスプライン曲線等で、ステップを取り除いた輪郭形状データを生成することも可能である。
図15は、信号処理および補正処理をさらに説明する図である。この図は、緩やかに傾斜した平面を測定した場合のような、第1補正データ(スケール信号)が単純に増加する場合を例として説明する図である。
図15の(A)に示すように、第1変位データ(スケール信号)の値が線形に増加する。これに対して、第3フィルタ処理68を行う前の差動変圧器信号は、図15の(B)に示すように、平均的な値が、中間点付近では第1変位データに一致するが、両側の領域では第1変位データより小さな値になるとする。この場合、例えば、図13の(C)に示すように、差動変圧器信号に第1フィルタ処理を行うと、図15の(B)に示す平均的な値の変化が得られる。この差動変圧器信号に第1フィルタ処理を行った値と、第1変位データの差を算出すると、図15の(C)で、Aで示すような変化になる。Aの符号を反転すると、Bに示すような補正データが得られるので、この補正データを第2変位データに加えれば、図15の(D)に示すような補正変位データが得られる。
図16および図17は、第4実施形態における具体的な測定例を示す図である。
測定対象のワークWは、図16の(A)に示すように、表面が平面である程度の粗さを有する。図16の(B)は、このワークWを水平に保持した状態で測定した差動変圧器信号または第2変位データを示す。図16の(C)は、このワークWを水平に保持した状態で測定したスケール信号または第1変位データを示す。
図16の(D)は、上記のワークWを傾けて保持した状態を示す。図16の(E)は、ワークWを傾斜して保持した状態で測定した差動変圧器信号または第2変位データを示す。図16の(F)は、ワークWを傾斜して保持した状態で測定したスケール信号または第1変位データを示す。
図16の(B)に示すように、水平に保持したワークWを測定した第2変位データの最小二乗線S0は、ゼロレベルを示す基準線と一致する。同様に、図16の(C)に示すように、水平に保持したワークWを測定した第1変位データの最小二乗線S1も基準線と一致する。図16の(E)に示すように、傾斜して保持したワークWを測定した第2変位データの最小二乗線S2は、基準線に対して傾斜角に対応する角度を有するが、完全に直線ではない。図16の(F)に示すように、傾斜して保持したワークWを測定した第1変位データの最小二乗線S3は、基準線に対して傾斜角に対応する角度の直線である。
補正部70は、図16の(E)の最小二乗線S2を、図16の(F)の最小二乗線S3に一致させるように補正データを生成する。この補正データで補正した第1変位データは、図17に示すようになる。これにより、広い範囲で高い線形性を有する表面粗さ信号が得られる。
上記のように、連続的な補正データを算出してもよいが、長波長成分を補正するので、離散的に補正を行っても問題は生じない。そこで、例えば、図15の(A)から(D)において、黒丸で示した補正点についてのみ第1補正データと第2補正データが一致するように補正し、補正点の間は直線的に補正してもよい。補正点の間隔は、その間隔における差動変圧器信号の線形性のずれが所定値(狭範囲誤差)以下になるように決定する。
具体的には、スケール信号を定ピッチ間隔で読み取り、ピッチごとの傾きを求めると共に、差動変圧器信号をこのピッチ間隔で分割し、差動変圧器信号の平均的なピッチ間の傾きが、スケール信号のピッチごとの傾きと一致するように、係数をかける。差動変圧器信号の平均的なピッチ間の傾きは、例えば、最小二乗線、スプライン曲線等により算出する。そして、ピッチ間の端点が一致するように、2つのデータを重ね合わせ、補正変位データを算出する。
リアルタイムで出力する別の方法は、あらかじめ差動変圧器検出機構51とスケール検出機構の長波長成分の差を測定し、補正部70が測定した差を補正データとして記憶しておき、差動変圧器信号処理部62が出力する第2変位データに補正データを加えて補正変位データを生成する。差動変圧器検出機構51とスケール検出機構の長波長成分の差の測定は、随時行い、補正データを更新することが望ましい。
差動変圧器検出機構51とスケール検出機構の長波長成分の差の測定は、上記の図15で説明した連続的に補正データを生成する方法および離散的に補正データを生成する方法が適用可能であるが、リアルタイムで行う必要は無いので、時間を掛けて高精度の補正データが得られるようにすることが可能である。また、前回の測定時のデータから差動変圧器検出機構51とスケール検出機構の長波長成分の差を算出して、補正データを更新してもよい。
なお、補正データを記憶する場合、全検出範囲についての測定データを記憶する必要があるので、例えば、あらかじめ真直度の良好なワークを傾斜させた表面を測定して、図15の(A)および(B)に示すようなスケール信号および差動変圧器信号を生成し、両方に長波長成分のみを残処理を行い、2つのデータの差を算出する。算出した差に基づいて、差動変圧器信号の値に対して差を近似する多項式を算出して記憶するか、または差を差動変圧器信号の値に対してマッピングしたルックアップテーブルを作成して記憶する。実際に測定を行う場合には、差動変圧器信号の値に対して記憶した多項式を利用して差を算出するか、または差動変圧器信号の値に対するルックアップテーブルに記憶された差を読み出して、この差を差動変圧器信号の値に加算して補正変位データを算出する。
補正変位データの生成を、リアルタイムで行わず、全測定範囲での触針7の移動が終了した後行う場合にも、上記と同様の処理が適用可能であるが、処理時間に余裕があるので、より高精度の処理が可能である。
補正を補正点で離散的に行う場合、スケール信号は、補正点で変位を高精度で検出できればよい。そのため、例えば、光学式のスケール型検出機構であれば、白黒パターンは連続的に存在する必要はなく、補正点に対応して存在すればよい。
図18は、変位を離散的に高精度で検出する光学式のスケール型検出機構の例を示す図である。
図18の(A)に示すように、スケール81には、支点16を中心として、放射線状に複数の黒線82が、間隔をあけて形成されている。図18の(B)は1本の黒線82を示す図であり、周辺は透明である。
図18の(C)は、受光素子85を示し、受光素子85は2分割素子で、同じ形状で同じ特性の2個の受光部86と87を有する。
図18の(D)に示すように、スケール81を挟むように検出部を設け、検出部は、光源91と、光源91からの光を平行光にするレンズ92と、スケール81の黒線82が形成された側に近接して設けられた受光素子85と、受光素子85の信号を処理する信号処理部90と、を有する。信号処理部90は、受光素子85の2個の受光部86と87の出力信号の差を演算するアナログ回路を有する。
図18の(E)に示すように、2個の受光部86と87の前に黒線82が存在しない時には、2個の受光部86と87の出力は同じ強度であり、差信号はゼロになる。黒線82が2個の受光部86と87の一方に重なり始めると、2個の受光部86と87の一方の出力が減少し、差信号は、例えば減少を始める。そして、黒線82が2個の受光部86と87の一方と重なると、差信号は最小になる。その後、さらに黒線81が移動すると、2個の受光部86と87の一方との重なりが減少して出力が増加する一方、他方と重なり始めるので、他方の出力が減少し、差信号は急激に増加する。そして、黒線81が2個の受光部86と87に等しく重なると、差信号はゼロになる。その後、黒線82がさらに移動して2個の受光部86と87の他方と重なると、差信号は最大になり、その後減少し、ゼロになる。したがって、ゼロクロスを高精度で判定できるので、その点を補正点とする。黒線82が形成されたスケール81について、信号がゼロクロスする位置をキャリブレーションしておけば、補正点の絶対的な変位を正確に求めることができる。
差動変圧器検出機構51とスケール検出機構52のホルダ14および測定子13に対する位置は、任意に設定可能である。例えば、図7では、差動変圧器検出機構51とスケール検出機構52は、支点16に対し測定子13と反対側に設けたが、図19に示すように、差動変圧器検出機構51を、測定子13と同じ側に設けることも可能である。これにより、支点16に対する2個のセンサの回転モーメントを小さくすることができ、測定子13を規定の測定圧にするための質量を小さくできる。その結果、支点に回転可能に支持される揺動部の質量を小さくして応答性を向上できる。
以上、実施形態を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。
例えば、スケール検出機構52は各種の形式および形状のものが使用可能であり、信号処理も各種変形例が可能である。
本発明は、輪郭形状表面粗さ測定装置に適用可能である。
6 変位検出器
7 測定子
8 載物台
12 アーム
13 測定部
14 ホルダ
16 支点
51 差動変圧器型検出機構
52 スケール型検出機構

Claims (2)

  1. ワークの表面の輪郭形状と表面粗さを測定する輪郭形状表面粗さ測定装置であって、
    前記ワークの表面に接触して上下に変位する測定子を有する測定部と、
    前記測定子に対して前記ワークを相対的に移動させる送り機構と、
    前記測定部を一端に有し、前記測定子の変位量を伝える、支点を中心に回動するアームと、
    前記アームの変位量を測定することにより、前記測定子の変位量を測定する差動変圧器型の変位量測定機構およびスケール型の変位量測定機構と、を備え、
    前記差動変圧器型の変位量測定機構および前記スケール型の変位量測定機構が出力するデータの整合性を確認することによって、前記差動変圧器型の変位量測定機構および前記スケール型の変位量測定機構の精度を診断するようにした、輪郭形状表面粗さ測定装置。
  2. さらに、前記差動変圧器型の変位量測定機構が出力する第一データおよび前記スケール型の変位量測定機構が出力する第二データのうちの一方を選択して出力する選択部と、
    前記第一データおよび前記第二データのうちの一方が所定の上下限閾値内にある場合には前記第一データおよび前記第二データのうちの前記一方を選択すると共に、前記第一データおよび前記第二データのうちの一方が前記上下限閾値内にない場合には前記第一データおよび前記第二データのうちの他方を選択する選択制御部とを具備する、請求項1に記載の輪郭形状表面粗さ測定装置。
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