以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明が適用された形状測定装置の外観図である。形状測定装置10は、定盤12と、定盤12に設けられた支柱14と、支柱14にZ軸方向に移動自在に支持されたX軸方向に移動可能なX軸駆動部16と、X軸駆動部16に取り付けられた変位検出器18と、変位検出器18に着脱自在に取り付けられた測定子20と、制御装置(不図示)に指示を与えるための入力装置22と、測定結果等を表示するための表示装置24を備えている。
図2は、測定子20と変位検出器18の構造を示す概略図である。測定子20は、測定子アーム30と、測定子アーム30の先端側に設けられた形状測定するため両側に施された触針32とを有している。実施形態では測定子アーム30の先端に形状測定するため両側に施された触針32を有する測定子20を示したが、少なくとも形状測定するため片側に施された触針32を備えていれば良い。
変位検出器18は、駆動部連結部40と、駆動部連結部40に設けられたY軸方向に沿う回転軸42に回転可能に支持された可動部44と、回転軸42に対して可動部44の先端側に設けられた変位読み取り部46と、回転軸42を挟んで変位読み取り部46と反対側に位置調整されたウェイト48と、を備えている。
変位検出器18は、駆動部連結部40と、可動部44と、変位読み取り部46と、ウェイト48とを囲うハウジング50を有している。実施形態では、駆動部連結部40、可動部44とは、その一部がハウジング50の内部に配置される。実施形態では回転軸42に対して可動部44の先端側に変位読み取り部46を設けたが、ウェイト48側に設けても良い。
変位読み取り部46として、リニアスケール、円弧スケール、LVDT(Linear variable differential transformer:差動変圧器)等を用いることができる。
測定子20の測定子アーム30と変位検出器18の可動部44とは、下記に後述する係合機構52により着脱自在に係合されている。測定子アーム30と可動部44とは係合機構52を介して一つのアームを構成している。なお、係合機構52は、変位検出器18のハウジング50の外側に設けられている。
ウェイト48の位置を調整することにより、触針32に発生する荷重(測定力)を変更することができる。測定するワークによっては、ウェイト48を変位検出器18に備えない場合がある。
測定を行う場合には、定盤12の上に載置されたワーク(不図示)の表面に、変位検出器18の測定子20の先端部に設けられた触針32を一定の力で接触させる。この状態で、X軸駆動部16により測定子20および変位検出器18をX軸に沿って移動、すなわち、アームの軸方向にスライドさせる。アームを軸方向にスライドさせると、ワークの表面の形状に応じて触針32がZ軸方向に変位する。測定子アーム30及び可動部44からなるアームが回転軸42を中心に回転する。可動部44の変位を変位読み取り部46により検出する。これにより、触針32のZ軸方向の変位に応じた信号が変位読み取り部46から出力される。ワークの表面粗さ、及び/又は輪郭形状等の表面性状を測定することができる。
表面粗さ測定は、ワーク表面の微小な凹凸を検出し、ワーク表面の微小な長さにおける高さ変化、すなわち短い周期の高さ変化を検出する。これに対して、輪郭形状測定は、ワーク表面の比較的長い周期での高さ変化を検出する。
次に、本実施形態の着脱自在の係合機構52について、図3を参照して説明する。着脱自在の係合機構52は、図3に示すように、測定子アーム30の基端側に設けられた第1係合部材60と、可動部44の先端側に設けられた第2係合部材80とにより構成される。すなわち、係合機構52は、アームの触針側(測定子アーム30)をアームの基端側(可動部44)に対して着脱自在とする。第1係合部材60と第2係合部材80とは、ワーク面に垂直、かつアームの軸方向(X軸方向)に平行で対向する二つの係合面62,82を持ち、係合面62,82内の対応する位置にある着磁部材68と磁石90とにより互いに着脱自在に吸着する。ワーク面に垂直とは、垂直(Z軸に平行)と、略垂直とを含んでいる。平行で対向する二つの係合面62,82は平行であることと、略平行であることを含んでいる。
第1係合部材60は、金属製であり、略直方体の形状を有している。但し、材質は全体が剛体である必要は無く、少なくとも第1溝64と第2溝66が着脱を繰り返しても変形しない剛体であれば良い。例えば、係合機構52を軽量化したい場合、第1溝64と第2溝66を同時に加工した金属と、カーボンとを接合した複合材でも良い。また、後述の着磁部材68と磁石90の吸着を阻害しないよう非磁性体であることが好ましい。第1係合部材60は、第2係合部材80と接触する係合面62に、測定子アーム30の軸方向に平行な断面V字状の直線状の第1溝64と、測定子アーム30の軸方向に直交する断面V字状の直線状の第2溝66とを有している。図3では第1溝64と第2溝66とを交差させているが、第1溝64と第2溝66とを交差させなくても良い。第1溝64と第2溝66をまとめて溝64,66と呼ぶ場合がある。
第1係合部材60は、第2溝66を挟んで、ほぼ対象の位置に2個の円形の着磁部材68を有している。着磁部材68は、後述する磁石90に吸着される磁性体であれば、その素材については限定されない。
第1係合部材60の係合面62の基端側に、作動ピン70が第1係合部材60の設けられた貫通孔を通して配置されている。
第2係合部材80は、金属製であり、略直方体の形状を有している。但し、材質は第1係合部材60と同様、全体が剛体である必要はなく複合材でも良く、かつ、非磁性体であることが好ましい。第2係合部材80は、第1係合部材60と比較すると、Y軸方向の厚みは薄く構成されている。
第2係合部材80は、第1係合部材60と接触する係合面82に、第1溝64に対応する位置に配置され第1溝64に係合する球状の第1位置決めピン84及び第2位置決めピン86と、第2溝66に対応する位置に配置され第2溝66に係合する球状の第3位置決めピン88とを有している。第1位置決めピン84、第2位置決めピン86および第3位置決めピン88をまとめて位置決めピン84,86,88と呼ぶ場合がある。
また、第2係合部材80は、係合面82には、2個の着磁部材68に対応する位置に2個の円形の磁石90が配置されている。さらに、第2係合部材80の係合面82の基端側には、作動ピン70に対応する位置にセンサ92が設けられている。
第2係合部材80の基端側にX軸方向に対して傾けられた傾斜部94が、係合面82に設けられている。傾斜部94は、Z軸方向から見た際、第1係合部材60の係合面62に近づくにしたがい、第2係合部材80の基端側に近づくように傾けられている。傾斜部94は、ワーク面に垂直かつ係合面82に対して傾斜している。ワーク表面に垂直とは、垂直(Z軸に平行)と、略垂直とを含んでいる。
第1係合部材60の第2係合部材80の傾斜部94に対向する位置に、傾斜面72が設けられている。傾斜部94の形成された係合面82と反対側の係合面62に、傾斜部94に対向する傾斜面72が形成されている。傾斜面72と傾斜部94とについては後述する。
図3に示すように、第1係合部材60の係合面62と第2係合部材80の係合面82とが対向する位置に配置される。第1係合部材60の第1溝64および第2溝66と、第2係合部材80の第1位置決めピン84、第2位置決めピン86、第3位置決めピン88とが概略位置合わせされる。矢印に示すようにY軸方向に沿って、着磁部材68が磁石90の磁力により吸着され、その結果、第1係合部材60の係合面62と第2係合部材80の係合面82とが吸着される。
その際、第1位置決めピン84および第2位置決めピン86が第1溝64に案内され、第3位置決めピン88が第2溝66に案内される。これにより、第1係合部材60の係合面62と第2係合部材80の係合面82とが位置合わせされ、磁力により第1係合部材60と第2係合部材80とが吸着される。
図4に示すよう、第1係合部材60と第2係合部材80とで構成される係合機構52により、測定子20と可動部44とが着脱自在に係合される。本実施形態では、2個の磁石90と2個の着磁部材68が設けられているので、矢印Aに示す方向から力が加えられたとしても、第1係合部材60と第2係合部材80との吸着状態を維持することができる。但し、着磁部材68および磁石90は、それぞれ少なくとも1個を有していればよい。
本実施形態では、第1係合部材60をフライス加工等により、溝64,66が一直線状に製作されているため、測定子アーム30に対して平行度および直交度の優れた溝64,66を得ることができる。
複数の測定子20を交換して使用する場合、測定子20と可動部44との取り付け精度(位置決め精度、吸着力等)を常に一定に維持することが必要である。本実施形態では、構造が簡単でかつ加工精度を保障しやすい断面V字状の溝64,66を形成しているので、取り付け精度を一定に維持することができる。
第1溝64は、取り付け時も、第1溝64は相対的な送り方向に沿って平行に、一直線上に形成されているため、第1位置決めピン84,第2位置決めピン86を第1溝64に合わせてスライドさせるだけでよい。スライドさせる際も、X軸方向に平行にスライドさせて、第3位置決めピン88が第2溝66に嵌れば、着磁部材68と作用して、正確に着座させることができる。
また、第1溝64がアーム軸に平行に溝が刻まれていることが重要になる。これは、特にZ軸方向すなわちアームが上下して測定する方向に対し、アームの基端側にある変位検出器の0点位置との関係において、測定精度に大きく影響する。たとえば、別々の嵌合させる穴がありZ方向の取り付け精度を確保する場合、それぞれの穴の位置精度や穴の大きさなどを正確に形成しなくてはならない。仮にZ軸方向に多少のずれ、すなわち、アーム基端側とアーム測定子側で平行に設置されない場合、変位検出器の0点がずれるために、リニアリティがずれることがある。また、スタイラスの接触位置が所望の位置ではないところでワークに接触する誤差も出てくる。そのことから、アーム同士を精度よく平行に取り付ける機構であることが重要になる。
また、第1溝64は、測定方向言い換えれば測定力が作用する方向と垂直であることも重要である。溝に対して平行な力が作用する場合、溝に沿って移動することは少ない力で移動するが、溝に対して垂直方向に対しては大きな力が作用してもずれにくく、非常に安定する特徴がある。これは、位置決めピンと溝の接触している位置が、実質的には溝断面部の2点、すなわちZ軸方向に互いに位置する2点のみで接触して支持されているからである。
先にも述べたように、第1溝64が一直線上に製作されているから、交換する測定子アーム30自体の溝の平行性における部品精度のばらつきも小さい。また、その取り付けにおいて、平行な溝に滑らせながら着座させるので、取り付けにおける再現性も非常に高い。結果的に、様々なアーム間でも正確に精度よく取り付けることが可能となる。特に、アームの基端部に対して、アームの測定子側を多く交換するため、できれば、アーム測定子側に第1溝64が設けられているほうが望ましい。
図3においては、溝64,66を測定子20の基端側に設けられた第1係合部材60に設け、位置決めピン84,86,88を可動部44の第2係合部材80に設けた例を示した。これに限定されることなく、第1係合部材60に位置決めピン84,86,88を設け、第2係合部材80に溝64,66を設けることができる。
つまり、第1係合部材60の係合面62又は第2係合部材80の係合面82の何れか一方に第1溝64および第2溝66を形成し、第1係合部材60の係合面62又は第2係合部材80の係合面82の何れか他方に、位置決めピン84,86,88を設けることができる。
なお、測定子20の基端側に設けられた第1係合部材60に溝64,66を設けることが好ましい。複数の測定子20をワークに応じて交換する場合、測定子20間で位置精度のバラツキが小さいことが好ましい。したがって、構造が単純で加工精度が保障しやすい溝64,66を第1係合部材60に設けることが好ましい。
第3位置決めピン88に対して位置合わせすることができれば、第2溝66は、溝だけでなく孔であっても良い。よって、第2溝66と孔とを含めて、係合面62に形成される第1溝64とは異なる別の係合部が構成される。また、別の係合部に嵌め合わせることが可能であれば、第3位置決めピン88を含めて第2嵌合ピンを構成する。
次に、引き込み力(分力)に関して、本実施形態の係合機構と従来の係合機構との違いを、図5を参照して説明する。
図5の(A)部分は本実施形態の係合機構を示している。右の図に示すように、第1係合部材と第2係合部材とが磁力に吸着された際、位置決めピン84,86,88と溝64,66とが接触する。位置決めピン84,86,88には吸着力Fが働く。吸着力Fは、溝64,66に傾斜に直交方向の分力F1と、傾斜に対して平行方向で着座位置に移動させる引き込み力(分力)F2とで構成される。
第1係合部材と第2係合部材とが磁力に吸着され、両者の距離が近づくと、引き込み力F2により位置決めピン84,86,88が溝64,66の底部、つまり着座位置まで移動する。図5の(A)部分に示すように、位置決めピン84,86,88が、溝64,66と接触してから、着座位置に移動するまでの間に、引き込み力F2は、ほとんど変化しない。つまり、位置決めピン84,86,88を溝64,66の着座位置まで、安定して移動させることができる。
図5の(B)部分は従来の係合機構を示している。従来の係合機構は、一対の円柱状の位置決め部材200,200と球状のピン210とで構成されている。右の図に示すように、第1係合部材と第2係合部材とが磁力に吸着された際、一方の位置決め部材200とピン210とがと接触する。ピン210には吸着力Fが働く。吸着力Fは、位置決め部材200とピン210との接線方向に直交方向の分力F1と、接線方向に平行な引き込み力(分力)F2とで構成される。引き込み力(分力)F2は、接線方向に平行であるので、位置決め部材200とピン210が接触する位置によって、大きさが変化することになる。
第1係合部材と第2係合部材とが磁力に吸着され、両者の距離が近づくと、引き込み力F2によりピン210が、一対の円柱状の位置決め部材200,200に接する位置、つまり着座位置まで移動する。図5の(B)部分に示すように、ピン210が、位置決め部材200と接触してから、着座位置に移動するまでの間に、引き込み力F2は、大きく変化する。特に、位置決め部材200とピン210との接触時において、引き込み力F2は大きくない。引き込み力F2が小さい場合、ピン210が着座位置まで移動するのに時間がかかり、場合によっては引き込み力F2の不足により正確に着座しない可能性がある。
ピン210を着座位置に移動させるために、磁力を大きくして吸着力Fを大きくすることで、引き込み力F2を大きくすることができる。但し、吸着力Fを大きくすることで、第1係合部材と第2係合部材との係合力が強くなる。そうなると、第1係合部材と第2係合部材とを分離する際に、大きな力が必要となり、着脱の容易性が阻害される可能性がある。
本実施形態では、断面V字状の溝64,66の角度θが90°の例を示したが、触針32とワークとの接触力、吸着力Fの大きさ、第1溝64と第2溝66の材質による摩擦係数の違いによる引き込み力F2の大きさ等を考慮して、角度θは80°〜120°の範囲で決定される。
本実施形態では溝64,66が断面V字状の形状を有する場合を説明したが、これに限定されることなく、溝64,66を、例えば断面U字状等とすることもできる。また、位置決めピン84,86,88が球状である場合を説明したが、球状に限らず、半球状等とすることができる。また、位置決めピン形状においても、溝に沿って少し長めに形成したものでもかまわない。溝の直線性に沿って、ピンも少し長手方向に伸ばした方が直線同士の嵌め合わせ効果もあり、さらに互いのアームの取り付け平行度が向上することもある。さらには、ピンではなく、溝に嵌め合わせることが可能な長山であっても構わない。すなわち二つの位置決めピンを、一つの長山のピンとしても良い。これは、一つの長山は、二つ以上の位置決めピンが連続していることと同じである。一つの長山のピンは二つの位置決めピンの要件を満たしている。ただし、ピンであるか長山かにかかわらず、一方は必ずアーム軸方向に沿った直線溝を形成していることが重要となる。ここで、一つの長山、及び複数の位置決めピンが、第1溝64に嵌合する位置にある第1嵌合ピンを構成する。
位置決めピン84,86,88が溝64,66に案内される形状であれば、位置決めピン84,86,88、及び溝64,66の形状は限定されない。
なお、測定子側のアームの係合面と、基端部側のアームの係合面とでは、基端部側の部材の材料硬度を高く設定しておく方が望ましい。
これは、測定子側は測定によって測定子が摩耗するごとに交換することになるが、基端部側は、ほとんど交換しないからである。そのため、測定子側の係合面は、基端部側と比べて少し柔らかい材料を使用した方が長期的な使用を考慮すると望ましい。たとえば、測定子側をアルミニウム合金、銅合金などで構成し、基端部側をセラミックス、ステンレス、チタン、超硬材などを使用することなどが考えられる。なお、双方ともステンレスなど、同一材料であってもよい。
次に、第1係合部材60と第2係合部材80との係合方向について、図6を参照して説明する。図3に示す態様では、第1係合部材60と第2係合部材80とY軸方向に沿って近づけて係合する場合を説明した。図6に示すように、本実施形態では、第1係合部材60と第2係合部材80とをX軸方向に沿って近づけて係合することができる。本実施形態では、第1溝64が、第1係合部材60の係合面62のX軸方向に全域に亘り直線状に形成されている。第1溝64に沿って、第1位置決めピン84および第2位置決めピン86をスライドさせながら、第1係合部材60と第2係合部材80とを位置決めし、吸着させることができる。
次に、センサと作動ピンの機能について、図7を参照して説明する。図7の(A)部分は第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態をZ軸方向から見た上面図である。第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態では第1係合部材60の作動ピン70と第2係合部材80のセンサ92とが接触している。作動ピン70とセンサ92とにより接触、非接触を検出する検出回路(不図示)が構成されている。検出回路は、作動ピン70とセンサ92の接触と非接触とを検出することができる。
図7の(A)部分の状態において、検出回路は作動ピン70とセンサ92が接触状態であることを検出し、形状測定装置は接触状態であることを作業者に知らせる。
図7の(B)部分に示すように、例えば、測定子アーム30に予期しない力が加えられた場合、作動ピン70とセンサ92とが非接触状態となる。検出回路は作動ピン70とセンサ92が非接触状態であることを検出し、形状測定装置は非接触状態であることを作業者に知らせる。さらに、検出回路からの非接触の情報は制御装置(不図示)に伝えられ、制御装置はX軸駆動部16の駆動を停止させて、測定を中止する。また、支柱14を駆動している場合は、支柱14の駆動を停止する。形状測定装置の故障等を防止するためである。
作動ピン70は第1係合部材60の貫通孔に嵌合されている。作動ピン70を、貫通孔内を移動させることにより、係合面62から突出する作動ピン70の長さを調整することができる。作動ピン70の長さを調整することにより、センサ92の感度を調整することが可能となる。
次に、センサ92の好ましい位置について、図8を参照して説明する。図8は、第2係合部材80の係合面82をY軸方向から見た斜視図である。センサ92は第2係合部材80の係合面82であれば、どこにでも設けることができる。本実施形態では、位置決めピン84,86,88を結ぶ仮想三角形TRの外側であって、第2係合部材80の基端側に、センサ92が設けられていることが好ましい。
測定子アーム30に予期しない力がY軸方向から加えられた場合、図7の(B)部分に示すように、第1係合部材60は、先端側を回転支点として第2係合部材80から離れることが多い。したがって、先端側から離れた、第2係合部材80の基端側にセンサ92を配置し、かつ第1係合部材60の基端側に作動ピン70を配置することが好ましい。第1係合部材60に力が加えられた際、回転支点から作動ピン70の距離が長いほど、作動ピン70の移動距離も長くなるので、より感度良く非接触状態を検出することができる。
但し、作動ピン70およびセンサ92の位置は、実施例に限定されることなく、感度に応じてセンサ92および作動ピン70の位置を決定することができる。
次に、図9を参照して、X軸方向から衝撃を回避する好ましい形態について説明する。図9の(A)部分は第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態をZ軸方向から見た上面図である。図7の(A)部分と同様に、第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態では第1係合部材60の作動ピン70と第2係合部材80のセンサ92とが接触している。
図9の(B)部分は第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態をZ軸方向から見た下面図である。この状態において、第1係合部材60の傾斜面72と第2係合部材80の傾斜部94の斜面とは対向する位置に配置されている。
図9の(C)部分に示すように、例えば、ワークの形状を測定している途中で、X軸方向から強い力(衝撃)を測定子20が受けた場合、測定子20と第1係合部材60とはX軸方向に移動する。第1係合部材60の移動距離が長くなると、作動ピン70と第2係合部材80のセンサ92とが非接触となる。
検出回路が非接触を検出すると、制御装置はX軸駆動部16の駆動を停止する。しかしながら、衝撃を受けた測定子20と第1係合部材60とは慣性力により、可動部44の側に移動する。次に、第1係合部材60の傾斜面72と第2係合部材80の傾斜部94とが接触し、第1係合部材60が第2係合部材80の傾斜部94に沿って摺動(スライド)しながら矢印Bの方向に移動させられる。
すなわち、触針32側のアーム(測定子アーム30)が基端側のアーム(可動部44)に押し付けられた際、触針側のアームが傾斜部94の面上をスライドして基端側のアームから外れる。これにより、第1係合部材60と可動部44とが接触することを回避でき、可動部44を含む変位検出器18に衝撃が加えられることを防止することができる。特に、回転軸42に衝撃が加えられることを防止することができる。衝撃により回転軸42に軸ずれ等が生じると、変位検出器18の測定精度の再現性が低くなる場合があるからである。
さらに、作動ピン70は、着磁部材68や、位置決めピン84,86,88よりも傾斜面72付近とした。その結果、先の原理で、作動ピン70はすぐさま外れることになる。たとえ、X軸方向に急激な衝撃が加わっても、すぐさま作動ピン70が外れることにより、変位検出器18を保護することが可能となる。
本実施形態では、係合面62,82が傾斜面72と傾斜部94とを備える場合について説明したが、少なくとも、傾斜部94を備えることで、触針側のアームを傾斜部94の面上をスライドして基端側のアームから外すことができる。傾斜面72を有する場合、傾斜部94の面上をより容易に触針側のアームをスライドさせることができる。
次に、図10を参照して、X軸方向から衝撃を回避する好ましい別の形態について説明する。図9に示す係合機構の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。図10はX軸方向に衝撃が加えられた状態の第1係合部材60と第2係合部材80とを、Z軸方向から見た下面図である。この実施形態では、可動部44(基端側のアーム)の先端側に、傾斜部94と平行な傾斜面を有する切欠き部45が形成されている。X軸方向に衝撃が加えられた場合であっても、第1係合部材60と可動部44とが接触することを、より確実に回避することができる。ここで平行とは、略平行である場合を含んでいる。
図11は、別の形態の係合機構を示す概略構成図である。図9又は図10に示す係合機構の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
図11の(A)部分は、第1係合部材60と第2係合部材80とが係合している状態をZ軸方向から見た上面図である。本実施形態では第1係合部材60の係合面62に位置決めピン84,86,88が形成されている。第2係合部材80の係合面82に第1溝(不図示)、第2溝66が形成されている。
さらに、第1係合部材60の係合面62に第2傾斜面100が、傾斜面72と反対の触針側に形成されている。また、第2係合部材80の係合面82に第2傾斜部102が、傾斜部94と反対の触針側に形成されている。第2傾斜面100と第2傾斜部102とは対向する位置にそれぞれ配置されている。
図11の(B)部分に示すように、ワークの形状を測定している途中で、X軸方向から強い力(衝撃)を測定子20が受けた場合、測定子20と第1係合部材60とはX軸方向に移動する。次に、第1係合部材60の傾斜面72と第2係合部材80の傾斜部94とが接触し、第1係合部材60が第2係合部材80の傾斜部94に沿って摺動(スライド)しながら矢印Cの方向に移動させられる。
すなわち、触針32側のアーム(測定子アーム30)が基端側のアーム(可動部44)に押し付けられた際、触針側のアームが傾斜部94の面上をスライドして基端側のアームから外れる。これにより、第1係合部材60と可動部44とが接触することを回避でき、可動部44を含む変位検出器18に衝撃が加えられることを防止することができる。
また、ワークの形状を測定している途中で、X軸方向と反対方向から強い力(衝撃)を測定子20が受けた場合、測定子20と第1係合部材60とはX軸方向と反対方向に移動する。第1係合部材60の第2傾斜面100と第2係合部材80の第2傾斜部102とが接触し、第1係合部材60が第2係合部材80の第2傾斜部102に沿って摺動(スライド)しながら移動させられる(不図示)。
次に、触針32側のアーム(測定子アーム30)が基端側のアーム(可動部44)を押し付け、ないしは引っ張る際、その衝撃を回避するための、複数の態様について、図12を参照して説明する。
図12の(A)部分は、本実施形態の一態様を示している。本実施形態では、触針側のアーム(測定子アーム30)が基端側のアーム(可動部44)に対して乗り上げる乗り上げ部として、第2係合部材80に傾斜部94が設けられている。
したがって、触針側のアームが基端側のアームを押し付け、ないしは引っ張る際、触針側のアームが傾斜部94(乗り上げ部)の面上をスライドして乗り上げ、基端側のアームから外れることになる。
図12の(B)部分は、本実施形態の別の態様を示している。本実施形態では、触針側のアームが基端側のアームに対して乗り上げる乗り上げ部として、第2係合部材80に突起部110が設けられている。
したがって、触針側のアームが基端側のアームを押し付け、ないしは引っ張る際、触針側のアームが突起部110(乗り上げ部)の面上をスライドして乗り上げ、基端側のアームから外れることになる。
図12の(C)部分は、本実施形態の別の態様を示している。本実施形態では、触針側のアームが基端側のアームに対して乗り上げる乗り上げ部として、突起部110が第2係合部材80に設けられている。また、突起部112が第1係合部材60に、突起部110と対向する位置に設けられている。
したがって、触針側のアームが基端側のアームを押し付け、ないしは引っ張る際、触針側のアームの突起部112が突起部110(乗り上げ部)の面上をスライドして乗り上げ、基端側のアームから外れることになる。
図12の(D)部分は、本実施形態の別の態様を示している。本実施形態では、触針側のアームが基端側のアームに対して乗り上げる乗り上げ部として、突起部110が第2係合部材80に設けられている。また、傾斜面72が第1係合部材60に、突起部110と対向する位置に設けられている。
したがって、触針側のアームが基端側のアームを押し付け、ないしは引っ張る際、触針側のアームの傾斜面72が突起部110(乗り上げ部)の面上をスライドして乗り上げ、基端側のアームから外れることになる。
係合面62,82が、ワークに対して垂直方向であると、測定圧や急なワーク形状の変化に関係なく、単純に軸方向に一定荷重以上の負荷がかかったときに、外れるように設定することができる。一方で、係合面62,82が、ワークに対して平行方向にあると、測定圧によっても外れることがあり、安定しない場合がある。係合面62,82が、ワークに対して垂直方向であることが好ましい。
最後に、構造に関して、本実施形態の係合機構と従来の係合機構と違いについて図13を参照して説明する。図13の(A)部分は、本実施形態の係合機構を示している。本実施形態ではV字状の第1溝64が係合面62に形成されている。第1溝64が加工により形成されるので、第1溝64を第1係合部材60の端面の近くに設けることができる。
図13の(B)部分は、従来の係合機構を示している。従来の係合機構では一対の円柱状の位置決め部材200,200を有しているので、位置決め部材200,200を保持するためのホルダー(壁)220が必要となる。そのため、図13に示すように、本実施形態の係合機構は、従来の係合機構と比較して、係合部材を小さくすることができる。
また、係合部材が同じ大きさである場合、第1溝64を端面側に形成できるので、第1位置決めピン84および第2位置決めピン86と、第3位置決めピン88との距離を長くできる。つまり、位置決めピン84,86,88を結ぶ仮想三角形(図8参照)を大きくできるので、第1係合部材60と第2係合部材80とを安定して係合することができる。