JP2014077725A - ねじ形状測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】雌ねじS1の中心軸線Cに沿いかつ中心軸線Cを挟んで対向する第1軸線および第2軸線に沿って倣い測定を行い、得られた雌ねじS1の輪郭形状データからねじ形状の特性値を測定するねじ形状測定方法であって、倣い測定を実行して第1軸線および第2軸線で輪郭形状データを取得し、中心軸線C上の第1位置P1および第2位置P2の各々で、第1軸線側のねじ山と第2軸線側のねじ山との中心軸線Cに沿った変位量dX1,dX2を検出し、検出したねじ山変位量dX1,dX2から、倣い軸線Tの中心軸線Cに対する傾き量θおよびずれ量dYをそれぞれ計算し、傾き量θおよびずれ量dYを解消するように倣い測定における雌ねじS1の姿勢を調整する。
【選択図】図20
Description
例えば、規格JISB0205には一般用メートルねじの各種特性値が規定されている。ここで、ねじ形状の特性値は、ねじ形状の中心軸を通る平面による断面形状に現れるねじ山の輪郭形状として規定されている。
しかし、三針法では、測定用針の準備からねじ形状に対する配置、測定ないし演算の手順が煩雑であった。
これに対し、三次元測定機を利用してねじ形状の各種特性値を測定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
これに対し、測定装置および測定処理をより簡素にするために、一軸移動型の形状測定機を用いたねじ形状の測定も行われている(特許文献2参照)。
特許文献2では、形状測定機の倣い測定軸線とねじ形状の中心軸線とが揃うように配置し、形状測定機のスタイラスでねじ山を順次横断するようになぞり、ねじ山の輪郭形状やねじピッチ等を取得している。
これに対し、一軸移動型の形状測定機による倣い測定を、ねじ形状の中心軸線を挟んで互いに反対側となる対向位置でそれぞれ行うことで、ねじ形状の有効径の測定も可能である。
ただし、ねじ形状の対向位置をそれぞれ倣い測定する際には、ねじ形状の中心軸線と形状測定機の倣い軸線(倣い測定の移動軸線、トレース軌跡)とを正確に一致させるための「通り出し」調整および「頂点出し」調整が必要となる。
このような通り出しが正確に行われていないと、つまり倣い測定の移動軸線とねじ形状の中心軸線とが平行でなく、2本の軸線に傾きがあると、ねじ山の輪郭形状として測定される形状が変形し、正確なねじ形状の特性値が得られなくなる。
なお、前述した特許文献2にも、これらの各軸線が傾いていると得られるねじ山の輪郭形状に誤差が生じること、これらの軸線が揃うように形状測定機の向きおよび位置を調節することの記載がある。ただし、調整に関する具体的な手順などの記載はない。
しかし、そのような円柱状部分がない場合、あるいはねじ形状が雌ねじつまりねじ孔である場合、母線の検出による通り出しが困難であり、カットアンドトライで中心軸線を割り出してゆく必要があり、非常に煩雑な作業となる。
このような頂点出しが正確に行われていないと、例え前述した通り出しが正確であっても、ねじ山の輪郭形状が不正確になるとともに、有効径などが正確に演算できないことになる。
しかし、頂点出しが不正確で、ねじ形状の断面(中心軸線と交差する平面)の互いに反対側からずれた位置で倣い測定を行ったとすると、得られるねじ山の輪郭形状は、本来のねじ山の輪郭を反映したものとは異なるものとなる。
まず、本発明の原理について説明する。
このようなねじ形状Sに対して一軸移動型の形状測定機による倣い測定を行う場合、倣い軸線T(中心軸線Cを挟んで互いに反対側となる対向位置に設定される下側の倣い軸線T1および上側の倣い軸線T2)は中心軸線Cに沿って設定される。
ねじ形状Sが雄ねじの場合、下側の倣い軸線T1に沿った倣い測定は、ねじ形状Sの下方に配置されたスタイラスがねじ形状Sの外側から上向きに接触した状態とされ、上側の倣い軸線T2に沿った倣い測定は、ねじ形状Sの上方に配置されたスタイラスがねじ形状Sの外側から下向きに接触した状態とされる。
ここで、形状測定機に対するねじ形状Sの配置が適正でなく、倣い軸線Tと中心軸線Cとに傾きおよび軸ずれが生じたとすると、平面PTは平面PCから離れ、平面PCとは異なる部位でねじ形状Sと交差し、ねじ形状Sの異なる輪郭形状を表すことになる。
図2において、ねじ形状Sの平面形状(XY平面)を見たとき、倣い軸線Tおよび平面PTは、ねじ形状Sの中心軸線Cおよび平面PCと一致しており、ねじ形状Sの中央を通る。
図3のように、ねじ形状Sの中心軸線Cに交差する断面(YZ平面)においては、平面PTは平面PCであり、ねじ形状Sの最下端(倣い軸線T1となる)から中心軸線Cを通って最上端(倣い軸線T2となる)に至っており、これらの倣い軸線T1,T2がねじ形状Sの直径D(ここでは外径)を示すものとなる。
図4のように、平面PTと平面PCとが一致している状態では、倣い軸線T1,T2で得られる輪郭形状F1,F2(ZX平面)は、ねじ形状Sのねじ山形状(ねじ山の平面PT,PCで切断した断面形状)を示すものとなる。
これに加え、倣い軸線T(T1,T2)のねじ形状の中心軸線に対する傾きあるいは軸ずれに応じて、2点(P1,P2)で中心軸線Cを挟んで対向する部位のねじ山は、それぞれ中心軸線C方向に変位を生じる。
図5において、ねじ形状Sの平面形状(XY平面)を見たとき、倣い軸線Tおよび平面PTは、ねじ形状Sの中央を通る中心軸線Cおよび平面PCと平行であるが、ずれ量dYだけずれている。
図6のように、ねじ形状Sの中心軸線Cに交差する断面(YZ平面)においては、平面PTが平面PCからずれ量dYだけ軸ずれを生じており、倣い軸線T2,T1は、ねじ形状Sの最下端および最上端を通らないため、ねじ形状Sの直径D(有効径)を示すものとはならない。
図7のように、軸ずれを生じた状態では、倣い軸線T1,T2上に表れる輪郭形状F1,F2(ZX平面)は、ねじ形状Sの本来のねじ山形状(図4に示す輪郭形状F1,F2)から変形されたものとなる。
とくに、中心軸線C上の2点(P1,P2)では、輪郭形状F1,F2上の対応する位置(中心軸線Cを挟んで互いに反対側にあるねじ山および谷の位置)が、それぞれ中心軸線Cに沿って変位したものとなる。
しかし、図5および図7に示すように、平面PTでは、点P1,P2における下側の山(図7に示す輪郭形状F1)と上側の谷(図7に示す輪郭形状F2)とは、互いに中心軸線C方向にdX1,dX2だけ変位したものとなる。
この際、平面PCと平面PTとはずれ量dY分だけ平行にずれているので、点P1,P2における変位量dX1,dX2は等しくなる。
このように、2つの点P1,P2に等しく表れる変位量dX1,dX2は、平面PCと平面PTとのずれ量dYに基づくものといえる。
図8において、ねじ形状Sの平面形状(XY平面)を見たとき、倣い軸線Tおよび平面PTは、例えば点P1を通る垂直な直線で交差しつつ互いに角度θ(傾き量)だけ傾いている。
図9のように、傾きを生じた状態では、倣い軸線T1,T2で得られる輪郭形状F1,F2(ZX平面)は、交差する位置(例えば点P1)から離れるほど、ねじ形状Sの本来のねじ山形状(図4に示す輪郭形状F1,F2)から変形されて表れる。
この際、交点である点P1では、輪郭形状F1,F2上の対応する位置(中心軸線を挟んで互いに反対側にあるねじ山および谷の位置)が一致したままである(変位量dX1=0)のに対し、点P1から離れた点P2では、倣い軸線T1,T2上のねじ山および谷の位置がそれぞれ中心軸線に沿って変位したもの(変位量dX2)となる。なお、交点が点P1と異なる場合、点P1における山谷の変位量dX1も0ではなくなる。
このような、変位量dX1,dX2は、平面PCと平面PTとの傾き(傾き量θ)に基づくものであり、2つの点P1,P2の変位量dX1,dX2の差分から傾き量θが計算できるといえる。
実際には、倣い測定の移動軸線(倣い軸線)の中心軸線に対する傾きおよび軸ずれは混在しているが、変位量dX1,dX2の差分および平均をとることで各成分の分離が可能である。
このような原理に基づき、本発明では、倣い軸線である第1軸線(倣い軸線T1)と第2軸線(倣い軸線T2)の各々で倣い測定を行って輪郭形状データ(輪郭形状F1,F2)を取得しておき、中心軸線C上の2点(P1,P2)について、第1軸線の輪郭形状F1でのねじ山(または谷)と第2軸線の輪郭形状F2でのねじ山(または谷)との中心軸線C方向の変位量dX1,dX2を検出し、検出した2点のねじ山変位から倣い軸線T(T1,T2)の中心軸線Cに対する傾き量θおよびずれ量dYをそれぞれ計算できるようにする。
具体的に、本発明は以下の構成を備える。
これらの演算には、幾何学的な近似等を適宜含めてよく、要求される精度に応じて簡略化を拡張してもよい。一方で、厳密な演算を行うことで、演算精度を高めることができる。これらの精度は、要求されるねじ形状の測定精度に応じて設定することができ、装置および処理の簡略化と精度向上のバランスを適宜選択することができる。
なお、一回の倣い測定および傾き量、ずれ量の演算で得られた結果に基づいて、ねじ形状の形状測定機等に対する姿勢を調整し、再度倣い測定、傾き量、ずれ量の演算ないし姿勢の調整を行うことで、精度を更に改善することができ、これらを繰り返すことで、一層の精度向上を図ることができる。
例えば、前記ずれ量dYは、前記ねじ山変位量dX1,dX2、前記距離L、前記リード角βとして、dY=(dX1+dX2)/4tanβで計算することができる。
また、前記傾き量θは、前記ねじ山変位量dX1,dX2、前記距離Lとして、L=tanθ=(dY1−dY2)の関係を利用して計算することができる。
このような本発明では、ねじ形状の規格にあるリード角βを利用して三角法演算を行うことで、傾き量、ずれ量の演算を容易に行うことができる。
このような本発明では、倣い測定、傾き量、ずれ量の演算ないし姿勢の調整の繰り返しにより、要求条件に応じた精度向上を図ることができる。
このような本発明では、逆向きのスタイラスにより、ねじ形状あるいは形状測定機を反転等させることなく、それぞれ第1軸線および第2軸線に沿った倣い測定を行うことができる。
例えば、アームの一方向のみにスタイラスが設置された形状測定機であると、第1軸線に沿った倣い測定の後、第2軸線に沿った倣い測定を行う前に、ねじ形状(およびそれが形成された被測定物)の向きを反転させるか、あるいは形状測定機のスタイラスの向きおよび接触方向を反転させる必要がある。
これに対し、逆向きに配置された一対のスタイラスにより揺動方向の両方向で倣い測定ができる形状測定機であれば、ねじ形状あるいは形状測定機の反転を行う必要をなくすことができる。
本実施形態は、ねじ形状である雌ねじS1のねじ形状測定(図18参照)を行うために、一軸移動型の形状測定機である表面性状測定機(図10〜図17参照)を用いるとともに、本発明に基づく処理(図19〜図21参照)を実行するものである。
以下には、先ず表面性状測定機について説明し、続いて本発明に基づく処理について説明する。
本実施形態で用いる表面性状測定機は、図10に示すように、ベース1と、このベース1上に載置され上面に被測定物を載置するステージ10と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26A,26Bを有するスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ10とを相対移動させる相対移動機構40とを備える。
従って、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構41と、スタイラス変位検出手段20をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構44と、スタイラス変位検出手段20をX軸方向へ移動させるX軸駆動機構45とを含む三次元移動機構を備えるとともに、ステージ10をZ軸まわり(α方向)に回転させる回転駆動機構41Aを備えて構成されている。
回転駆動機構41Aは、Y軸駆動機構41とステージ10との間に設置された軸受機構と、ステージ10を回転駆動するモータ等により構成されている。
X軸駆動機構45は、図11に示すように、Zスライダ43に固定された駆動機構本体46と、この駆動機構本体46にX軸方向と平行に設けられたガイドレール47と、このガイドレール47に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ48と、このXスライダ48のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器49と、Xスライダ48をガイドレール47に沿って移動させる送り機構50とを備える。
送り機構50は、駆動機構本体46にガイドレール47と平行に設けられXスライダ48に螺合された送りねじ軸51と、駆動源としてのモータ52と、このモータ52の回転を送りねじ軸51に伝達する回転伝達機構53とから構成されている。回転伝達機構53は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
スタイラス26A,26Bは、第2測定アーム24Bに対して円弧運動方向に突出して設けられている。つまり、第2測定アーム24Bに対して上向きのスタイラス26Aと下向きのスタイラス26Bとが上下方向に直角に突出して設けられている。
なお、スタイラス26A,26Bには、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施す、あるいは表面を磨く等して、低摩擦化加工されたスタイラスを用いてもよい。後述する測定姿勢・測定力制御回路70の制御によっては、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢されている場合と、他方向(下方向)に付勢される場合とで測定力に差が生じ、予期せぬ微小なひっかかり等でスタイラスが破損する恐れがある。しかし、前述のような低摩擦化加工されたスタイラスを用いることで、そのような破損を防止することができる。
バランスウエイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム24A側の重量と、第2測定アーム24B側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、バランスウエイト29は、止めねじにより測定アーム24の所望位置に固定される。あるいは、測定アーム24に雄ねじを形成し、この雄ねじにバランスウエイト29を位置調整可能に螺合してもよい。
測定姿勢・測定力制御回路70からの指令により、ボイスコイル62に電流が流されると、ボイスコイル62から発生する電磁力と磁石61の磁力により、測定アーム24の磁石61がボイスコイル62に引きつけられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。
ここに、測定アーム姿勢切替機構60は、測定アーム24を、回転軸23を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含み、測定アーム24を円弧運動方向へ付勢しスタイラス26A,26Bに測定力を付与する測定力付与手段を兼ねている。
ここで、指令信号発生手段72から発生される電圧A(指令速度信号)は、スタイラス26A,26Bが被測定物に接触した際に、スタイラス26A,26Bや被測定物が損傷することがない速度に設定されている。
方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配置された第1着座部85と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配
置されかつ第1着座部85に対して測定アーム24の軸方向に離間して設けられた第2着座部86と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に対し
て直角にかつ所定間隔あけて配置された第3着座部87と、これら第1着座部85、第2着座部86および第3着座部87にそれぞれ対応して設けられこれらに係脱可能な係合球部88,89,90と、少なくとも2以上の係合孔91,92と、これら各係合孔91,92に係合する少なくとも2以上の係合ピン93,94とを備えている。
係合球部88,89,90および係合孔91,92は、第2プレート82に配置されている。つまり、第1プレート81に対して第2プレート82を所定位置に位置決めしたときに、第2プレート82において、第1プレート81の第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87に対応する位置に係合球部88,89,90が、係合ピン93,94に対応した位置に係合孔91,92が、磁石95に対応した位置に磁性体96がそれぞれ配置されている。
これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bおよび係合球部88,89,90は、導電性材料によって形成されている。
そして、図16に示すように、これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bとこれに係脱される係合球部88,89,90との接触、離間によって開閉される着座センサ97,98,99が形成され、これらの着座センサ97,98,99が直列に接続されて接触検知回路100に接続されている。
接触検知回路100は、着座センサ97,98,99の接触、離間を検知し、その状態
をランプの点灯や消灯、表示部への表示、あるいは、ブザーなどの音などで報知する。
また、係合ピン93,94の突出量は、これら係合ピン93,94が係合孔91,92に係合し始めてから、磁石95に磁性体96が吸着されるように設定されている。
制御装置101には、回転駆動機構41A、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、接触検知回路100、測定アーム姿勢切替機構60(これは、測定姿勢・測定力制御回路70を介して)が接続されているとともに、入力手段102、出力手段103、記憶装置104などが接続されている。
ここで、制御装置101は、接触検知回路100においていずれかの着座センサ97,
98,99が離間したことが検知されたときに、相対移動機構40(回転駆動機構41A、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45)の駆動を停止させる駆動停止手段を構成している。また、制御装置101は、第2測定アーム24Bの交換後に、測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを調整するバランス調整手段を構成している。具体的には、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイスコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了させるバランス調整手段を構成している。
図18において、被測定物W1にはねじ形状である雌ねじS1が形成されている。この雌ねじS1の内面上下のねじ山形状を前述した表面性状測定機を用いて倣い測定する際には、先ず被測定物W1をステージ10(図10参照)上に設置し、次に相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W1の雌ねじS1内に位置させる。
これにより、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が例えば下方向に付勢される方向へ予め設定された速度で測定アーム24が動作され、下向きスタイラス26Bが指令測定力で雌ねじS1の下面に接触される。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを雌ねじS1の中心軸線C(X軸方向)に沿って相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から雌ねじS1の下面側のねじ山についての輪郭形状データ(図4の輪郭形状F1参照)が測定される。
この状態で、前述した下面の倣い測定と同様に、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを雌ねじS1の中心軸線C(X軸方向)に沿って相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から雌ねじS1の上面側のねじ山についての輪郭形状データ(図4の輪郭形状F2参照)が測定される。
前述のような表面性状測定機を用いた雌ねじS1の倣い測定にあたっては、その中心軸線Cと倣い軸線Tとが正確に揃うように、表面性状測定機に対する被測定物W1の姿勢調整(通り出し・頂点出し)を行う必要がある。
具体的には、被測定物W1をステージ10(図10参照)上に設置したのち、相対移動機構40(回転駆動機構41AおよびY軸駆動機構41)により、雌ねじS1の中心軸線Cが表面性状測定機の倣い測定の倣い軸線T(X軸方向)に一致するように、被測定物W1の姿勢(傾きに対応するα方向の向き、および軸ずれに対応するY軸方向の位置)を調整する。
本実施形態では、このような被測定物W1の姿勢調整として、本発明に基づく手順(図19参照)による通り出し・頂点出しを行う。
次に、倣い軸線T1,T2に沿った倣い測定による輪郭形状データから輪郭形状F1,F2を取得するとともに、中心軸線C上で距離Lだけ離れた2点P1,P2(第1位置および第2位置)を設定し、輪郭形状F1,F2における2点P1,P2でのそれぞれ倣い軸線T1,T2方向のねじ山変位量dX1,dX2を検出する(図19の処理S12)。
さらに、検出したねじ山変位量dX1,dX2から、雌ねじS1の中心軸線Cに対する表面性状測定機の倣い軸線Tの傾き量θおよびずれ量dYを計算する(図19の処理S13)。
図20において、雌ねじS1の平面形状(XY平面)を見たとき、倣い軸線T(および平面PT、前述した図5の説明など参照)は、ねじ形状Sの中央を通る中心軸線C(および平面PC、前述した図5の説明など参照)に対して、傾き量θの傾きおよびずれ量dYの軸ずれが同時に生じた状態にある。
このような傾きおよび軸ずれにより、前述した倣い測定により得られる輪郭形状F1,F2(前述した図7および図9の説明を参照)には、距離Lだけ隔てた2点P1,P2においてそれぞれねじ山変位量dX1,dX2が生じている。
このようなねじ山変位量dX1,dX2については、雌ねじS1の規格上のリード角βを利用して、以下のような三角法を利用した演算を行うことができる。
ここで、点P1,P2における倣い軸線Tと中心軸線Cとの軸ずれはずれ量dY1,dY2であったとすると、これらは次のように表すことができる。
dY1≒dX1/2・tanβ …(1)
dY2≒dX2/2・tanβ …(2)
dY1=dX1’/2・tanβ …(3)
dY2=dX2’/2・tanβ …(4)
ただし、dX1’=dX1・cosθ、dX2’=dX2・cosθであり、傾き量θが微小であることを考慮するとcosθ≒1であるため、前述した式(1)(2)のように近似することができる。
dY=(dY1+dY2)/2
=(dX1+dX2)/4・tanβ …(5)
傾き量θは、距離LでdY1,dY2の差分が生じる傾きということで、次のように計算することができる。
L・tanθ=(dY1−dY2) …(6)
θ=tan−1(dY1−dY2)/L
=tan−1(dX1−dX2)/L・2・tanβ …(7)
終了判定としては、傾き量θおよびずれ量dYが所定の精度を満足するか否かの判定、後述する処理S15の調整が予め設定された繰り返し回数に達したか否かの判定、作業者が終了を指示したか否かの判定の何れかであればよい(図19の処理S14)。
一方、前述した処理S14で要求条件が満足された場合、傾き量θおよびずれ量dYの調整は行わず、現在の調整状態で倣い測定された輪郭形状F1,F2を測定結果とし、この輪郭形状F1,F2から雌ねじS1のねじ形状特性値(外形、有効径ほか)を計算する。
以上に説明した本実施形態によれば、倣い測定を行って得られた第1軸線T1および第2軸線T2の輪郭形状データ(輪郭形状F1,F2)から、第1位置P1および第2位置P2における各軸線上のねじ山および谷の軸線方向の変位量dX1,dX2を取得し、これらの差分から傾き成分を取り出し、傾き量θを演算できるとともに、各点の変位量dX1,dX2の平均値により共通する軸ずれ成分を取り出し、ずれ量dYを演算することができる。
とくに、本実施形態では、雌ねじS1のねじ形状の規格にあるリード角βを利用して三角法演算を行うことで、傾き量θおよびずれ量dYの演算を容易に行うことができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、ねじ形状として雌ねじを用いた例を説明したが、ねじ形状は雄ねじであってもよい。また、ねじ形状の特性値としては、ねじピッチや外形、有効径のほか、ねじの種類毎にJISに規定されたものが該当する。
また、ずれ量dYおよび傾き量θの計算の後の終了判定として、傾き量θおよびずれ量dYが所望の精度となること、予め設定された繰り返し回数に達したこと、作業者が終了を指示したこと、の何れかであるとしたが、各々の詳細な条件等は実施にあたって適宜選択すればよく、幾つかの条件を組み合わせて判定してもよい。
さらに、リード角βを入力あるいは参照することは本発明に必須ではなく、前記実施形態の測定動作の間に、測定するねじ形状の実測値から算出するようにしてもよい。
そして、第1軸線T1または第2軸線T2のねじ山間隔からねじ形状のピッチP(複数箇所の平均値が望ましい)を計算し、併せてねじ形状の外径Dを計算する。
これらのピッチPおよび外形Dから、リード角βは、β=Tan−1(P/πD)で計算できる。
この仮調整では、未調整の状態で計算したリード角βを利用しているため、正しくは調整できない。
しかし、仮調整の後、「本調整」として図19の処理S11〜S15を繰り返すことで、誤差を収束させることができ、処理S14で要求条件が満足できる状態に達したら、処理S16でねじ形状特性値の計算を行うことができる。
例えば、マニュアル式のステージ10を用いる場合、処理S15(傾き量θの調整、ずれ量dYの調整)を作業者が手動で行ってもよい。この場合、処理S13までで計算された傾き量θおよびずれ量dYを表示装置に表示させ、作業者がこの表示を見ながら調整を行い、再度倣い測定(処理S11)を繰り返す、という手順を行えばよい。
あるいは、処理S12で得られたねじ山変位量dX1,dX2を表示またはデータ出力し、作業者が別の計算手段などで処理S13を行い、得られた傾き量θおよびずれ量dYに基づいて調整を行ってもよい。
このように、本発明の手順は、その一部ないし全部を制御装置で自動実行してもよいし、作業者が手動操作により実行してもよい。
すなわち、先に傾き量・ずれ量を求めておき、姿勢調整することなしにねじ形状の測定を行い、ねじ形状の特性値の計算を行う際に、先に求めておいた傾き量・ずれ量を参照し、測定データを補正するような利用とすることもできる。
これは、測定対象のねじ形状がJISやISOで規定された形状(設計値)通りであると仮定すると、そのねじ形状の三次元形状は既知であり、例えば処理S11により倣い測定された曲線は、ねじ形状のどの部分の断面曲線かを推測でき、測定経路に沿ったねじ形状の理論値と測定曲線から得られるパラメータ値(外径やピッチなどの計算値)が比較できることによる。
ただし、現実には、測定対象のねじ形状は理想通りではないので、複数回の倣い測定および演算を行うことで、精度を高めてゆくことができる。特に、前記実施形態ではP1,P2の2点での測定であったのに対し、更に多数の点での測定を行い、統計的に求めることで、実用的な精度を確保することができる。
101…制御装置
20…スタイラス変位検出手段
24…測定アーム
24A…第1測定アーム
24B…第2測定アーム
26A…スタイラス
26B…スタイラス
27…変位検出器
40…相対移動機構
41…Y軸駆動機構
41A…回転駆動機構
44…Z軸駆動機構
45…X軸駆動機構
50…送り機構
60…測定アーム姿勢切替機構
70…測定姿勢・測定力制御回路
C…中心軸線
dX1,dX2…点P1,P2でのねじ山変位量
dY…ずれ量
dY1,dY2…点P1,P2でのずれ量
F1,F2…輪郭形状
L…距離
P1…第1位置である点
P2…第2位置である点
PC…中心軸線Cを含む平面
PT…倣い軸線Tを含む平面
S…ねじ形状
S1…雌ねじ
T…倣い軸線
T1…第1軸線
T2…第2軸線
W1…被測定物
β…リード角
θ…ずれ量
Claims (4)
- ねじ形状の中心軸線に沿いかつ前記中心軸線を挟んで対向する第1軸線および第2軸線に沿って前記ねじ形状の倣い測定を行い、得られた前記ねじ形状の輪郭形状データから前記ねじ形状の特性値を測定するねじ形状測定方法であって、
前記倣い測定を実行して前記第1軸線および第2軸線で前記輪郭形状データを取得し、
前記中心軸線上の第1位置および第2位置の各々で、前記第1軸線側のねじ山と前記第2軸線側のねじ山との前記中心軸線に沿った変位量を検出し、
検出した第1位置および第2位置のねじ山変位量から、前記第1軸線および前記第2軸線の前記中心軸線に対する傾き量およびずれ量をそれぞれ計算し、
前記傾き量および前記ずれ量を解消するように前記倣い測定における前記ねじ形状の姿勢を調整することを特徴とするねじ形状測定方法。 - 請求項1に記載のねじ形状測定方法において、
前記傾き量および前記ずれ量は、前記ねじ山変位量、前記第1位置と前記第2位置との距離および前記ねじ形状のリード角を用いて三角法演算により計算することを特徴とするねじ形状測定方法。 - 請求項1または請求項2に記載のねじ形状測定方法において、
前記倣い測定による前記輪郭形状データの取得と、前記傾き量および前記ずれ量の計算と、前記ねじ形状の姿勢の調整とを、要求条件を満足するまで繰り返すとともに、
前記要求条件は、前記傾き量および前記ずれ量が所望の精度となること、予め設定された繰り返し回数に達したこと、作業者が終了を指示したこと、の何れかであることを特徴とするねじ形状測定方法。 - 請求項1から請求項3の何れかに記載のねじ形状測定方法において、
前記ねじ形状の倣い測定に、揺動式のアームを有する形状測定機を用いるとともに、
前記アームは、揺動方向両側に向けて一対のスタイラスを有し、
前記形状測定機は、前記各スタイラスでそれぞれ前記第1軸線および第2軸線に沿った倣い測定が可能であることを特徴とするねじ形状測定方法。
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