以下、添付図面に従って本発明に係る形状測定装置の実施の形態について説明する。
[形状測定装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置を示す外観斜視図である。以下の説明では、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする3次元直交座標系を用いて説明する。
図1に示すように、形状測定装置10は、定盤12、コラム14、X軸駆動部16X、変位検出器18、測定子20、入力装置22及び表示装置24を備えている。
形状測定装置10は、変位検出器18に取り付けられた輪郭形状の測定用の測定子20を粗さ検出器100と交換することが可能となっており、被測定物(ワーク)の輪郭形状の測定と、ワーク表面の粗さの測定とを行うことが可能である。ここで、輪郭形状の測定は、ワーク表面における比較的長い周期の変位を検出するものであり、表面粗さの測定は、ワーク表面におけるより短い周期の変位を検出するものである。輪郭形状の測定における測定分解能は一例で0.01μmオーダーであるのに対して、表面粗さの測定における測定分解能は一例で0.1nm~10nmオーダーである。
定盤12は、その上面が略水平となるように配置されている。定盤12の上面には、測定対象のワークが載置される。
コラム14は、定盤12の上面に略垂直に立設されている。コラム14には、X軸駆動部16Xが取り付けられている。コラム14には、X軸駆動部16Xを移動させるためのZ軸駆動部(図1では省略。図7の符号16Z)が設けられており、X軸駆動部16Xは、このZ軸駆動部16Zにより、コラム14に沿って±Z方向に移動可能となっている。ここで、Z軸駆動部16Zは、高さ調整部として機能する。
X軸駆動部16Xの下側(-Z側)には変位検出器18が取り付けられている。X軸駆動部16Xは、変位検出器18を±X方向に移動可能に保持する。
また、本実施形態に係る形状測定装置10は、定盤12とコラム14とを±Y方向に相対移動させるY軸駆動部(不図示)を備えていてもよい。
X軸駆動部16X、Y軸駆動部及びZ軸駆動部16Zとしては、例えば、ボールねじと、このボールねじに螺合されたナット部材と、ボールねじを回転させるモーターとを有する送りねじ機構を用いることができる。なお、X軸駆動部16X、Y軸駆動部及びZ軸駆動部16Zとしては、送りねじ機構以外の機構(例えば、モーターの回転力を往復直線運動に変換するための機構、ラック・アンド・ピニオン機構等)を用いてもよい。
変位検出器18は、ハウジング50と、取付部44とを有している(図2等参照)。ハウジング50は、X方向に伸びる略直方体状であり、検出制御部(図7の符号54)及び測定子20の変位を読み取るための変位読取部(図7の符号56)等を内蔵している。ハウジング50の上面には、嵌合部材50Aが設けられている。変位検出器18は、嵌合部材50Aを、X軸駆動部16Xの下面に形成されたアリ溝(不図示)と嵌合することにより、X軸駆動部16Xに固定される。
取付部44は、ハウジング50の-X側の側面から突出している。取付部44は、回転軸(不図示)を支点として上下方向(±Z方向)に揺動可能となっている。取付部44には、輪郭形状測定用の測定子20又は粗さ検出器(図2等の符号100)が取り付けられる。
図1に示す例では、変位検出器18の取付部44には、輪郭形状測定用の測定子20が取り付けられている。測定子20は、測定子アーム30と、測定子アーム30の先端側に取り付けられた触針32とを含んでいる。触針32は、測定子アーム30の長さ方向に対して略垂直に設けられる。
変位検出器18に測定子20を取り付けた場合には、形状測定装置10は、ワークの輪郭形状の測定を行うことが可能になる。一方、測定子20に代えて、変位検出器18に粗さ検出器100を取り付けた場合には、形状測定装置10は、ワーク表面の粗さの測定を行うことが可能になる。
入力装置22は、オペレータからの操作入力を受け付けるための装置であり、例えば、キーボード、マウス等を備えている。入力装置22は、オペレータからの操作入力に応じた制御信号を制御装置(図7の符号200)に入力する。なお、入力装置22としては、例えば、表示装置24の表示画面にタッチパネルを設けてもよい。
表示装置24は、測定結果等を表示するための装置であり、例えば、液晶モニタ等である。
[粗さ検出器]
次に、本実施形態に係る粗さ検出器について説明する。図2は、変位検出器に粗さ検出器を取り付けた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、粗さ検出器100は、変位検出器18の取付部44に着脱自在に取付可能である。取付部44は、Y軸に平行な軸(図4の回転軸42)の周りに回動可能となっており、粗さ検出器100は、ZX平面に沿ってZ1方向(図4参照)に移動可能となっている。
図2に示すように、粗さ検出器100は、アーム102と、触針104と、検出器本体106と、ノーズピース108とを含んでいる。
アーム102は、略棒状の部材であり、粗さ検出器100が変位検出器18の取付部44に取り付けられたときにX軸に対して略平行になるように配置される。
アーム102の先端には、触針104が取り付けられる。触針104は、アーム102に対して略直角に図中下方(-Z方向)に向けて取り付けられている。触針104は、粗さ測定を行うときにワークの表面に当接され、ワークの表面の粗さに倣って上下方向(以下、Z1方向という。)に移動可能となっている。
検出器本体106は、触針104の変位(Z1方向の変位)を検出するための変位センサ(図6の符号120)を含んでいる。
ノーズピース108は、略棒状の部材であり、アーム102と略平行に取り付けられる。ノーズピース108の基端部は、例えば、ボルト等を用いて検出器本体106に固定される。
ノーズピース108の先端部は、図中下方(-Z側方向)に伸びており、スキッド108Aが形成されている。スキッド108Aは、触針104の前方(-X側)を覆うように配置される。スキッド108Aの接触面108B(図5における下面、-Z側の端面)は、例えば、平面、円筒面又は球面状に形成されており、鏡面仕上げされていてもよい。スキッド測定時には、スキッド108Aの接触面108Bがワークの表面に接触した状態を維持しながら表面粗さの測定を行う。一方、スキッドレス測定時には、スキッド108Aの接触面108Bをワークの表面に接触させることなく(非接触の状態を維持して)表面粗さの測定を行う。
なお、触針104及びスキッド108Aの材料は、測定対象のワークの種類に応じて選択可能である。また、図2に示す例では、スキッド108Aは、触針104の前方(-X側)に配置されているが、後方(+X側)に配置されていてもよい。
本実施形態に係る形状測定装置10は、スキッド測定を行う場合とスキッドレス測定を行う場合との間で、触針104の先端部が移動する範囲として設定される触針104のストローク(使用域)を変更する。具体的には、スキッドレス測定を行う場合、触針104のストロークを、スキッド108Aの接触面よりも下方側に設定する。一方、スキッド測定を行う場合、触針104のストロークをスキッド108Aの接触面の近傍に設定する。そして、スキッドレス測定及びスキッド測定を行うときには、制御装置200は、それぞれについて設定したストロークの範囲内の測定値のみを測定対象として記録する。これにより、ノーズピース108を検出器本体106から取り外すことなく、スキッド測定とスキッドレス測定とを切り替えることが可能となる。
次に、粗さ検出器100が取り付けられる取付部について、図3を参照して説明する。図3は、変位検出器に粗さ検出器を取り付ける場合の係合部材を拡大して示す分解斜視図である。
図3に示すように、粗さ検出器100の検出器本体106の基端側には、粗さ検出器側係合部材160が設けられている。また、変位検出器18の取付部44の先端側には、変位検出器側係合部材80が設けられている。粗さ検出器側係合部材160の係合面162と変位検出器側係合部材80の係合面82には、それぞれ着磁部材168及び磁石90が取り付けられている。係合面162と係合面82とは、この着磁部材168及び磁石90からなるマグネットキャッチにより着脱自在に吸着される。これにより、変位検出器18に粗さ検出器100が取り付けられる。
粗さ検出器側係合部材160及び変位検出器側係合部材80は、例えば、金属製であり、略直方体状である。図3に示す例では、変位検出器側係合部材80は、粗さ検出器側係合部材160と比較して、Y方向の厚みが薄くなっている。粗さ検出器側係合部材160及び変位検出器側係合部材80は、着磁部材168と磁石90の吸着を阻害しないよう非磁性体であることが好ましい。
粗さ検出器側係合部材160の係合面162には、第1溝164及び第2溝166が形成されている。第1溝164は、粗さ検出器100のアーム102の軸方向に平行に伸びる直線状の溝である。第2溝166は、粗さ検出器100のアーム102の軸方向に直交する方向、すなわち、第1溝164に直交する方向に伸びる直線状の溝である。第1溝164及び第2溝166の断面形状は、例えば、略V字状である。第1溝164は、粗さ検出器100のアーム102に平行(換言すれば、触針104がワークの表面に接触したときの垂直抗力の向きに略垂直な方向)に形成される。
なお、図3では、第1溝164と第2溝166とが交差しているが、第1溝164と第2溝166とは交差していなくてもよい。
変位検出器側係合部材80の係合面82には、第1位置決めピン84、第2位置決めピン86及び第3位置決めピン88が取り付けられている。第1位置決めピン84、第2位置決めピン86及び第3位置決めピン88は、それぞれ略球状、円錐状又は円錐台状である。第1位置決めピン84及び第2位置決めピン86と第1溝164とは、係合面162と係合面82とを対向させた場合に、互いに対向するように配置されている。また、第3位置決めピン88と第2溝166とは、係合面162と係合面82とを対向させた場合に、互いに対向するように配置されている。
着磁部材168は、係合面162において、第2溝166に対して略線対称の位置に1つずつ取り付けられている。着磁部材168は、後述する磁石90に吸着される磁性体であれば、その素材については限定されない。
磁石90は、係合面82に2つ取り付けられている。磁石90は、係合面162と係合面82とを対向させた場合に、係合面162に取り付けられた2つの着磁部材168とそれぞれ対向するように配置されている。
図3に示す例では、着磁部材168及び磁石90は、その平面形状が略円形で、略同じサイズである。なお、着磁部材168及び磁石90の形状及びサイズはこれに限定されない。例えば、着磁部材168及び磁石90は、その平面形状を略合同として、相互に重なり合うように配置するようにしてもよい。また、着磁部材168及び磁石90の個数は2つに限定されるものではなく、例えば、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
変位検出器18に粗さ検出器100を取り付ける場合には、図3の白抜き矢印に示すように、粗さ検出器側係合部材160の係合面162と変位検出器側係合部材80の係合面82とを対向させて重ね合わせる。すると、着磁部材168と磁石90とが磁力により吸着する。このとき、第1位置決めピン84及び第2位置決めピン86と第1溝164とが係合し、かつ、第3位置決めピン88と第2溝166とが係合する。これにより、粗さ検出器側係合部材160と変位検出器側係合部材80の相対位置が固定される。
変位検出器18から粗さ検出器100を取り外す場合には、粗さ検出器側係合部材160を+Y方向に引っ張って着磁部材168と磁石90とを引き離す。これにより、粗さ検出器100を変位検出器18から容易に取り外すことができる。
図3に示す例では、係合面162及び係合面82が、触針104がワークの表面に接触したときの垂直抗力の向きに対して平行であり、かつ、第1溝164が垂直抗力の向きに対して垂直な方向に形成される。このため、触針104に垂直抗力が作用した場合にも、粗さ検出器100の位置がずれにくく安定する。また、第1溝164及び第2溝166の断面形状が、加工精度を容易に確保することが可能なV字状であるため、取付精度を容易に確保することが可能である。
なお、測定子20の係合部材60は、粗さ検出器側係合部材160と同様であるため、説明を省略する。
ここで、粗さ検出器側係合部材160及び変位検出器側係合部材80は、その全体が剛体である必要はない。粗さ検出器側係合部材160は、粗さ検出器100の着脱を繰り返しても、少なくとも第1溝164と第2溝166の変形が無視できる程度の剛性を有していればよい。例えば、粗さ検出器側係合部材160は、第1溝164と第2溝166を形成した金属と、カーボンとを接合した複合材であってもよい。変位検出器側係合部材80は、粗さ検出器側係合部材160と同様に、粗さ検出器100及び測定子20の着脱を繰り返しても、少なくとも係合面82の変形が無視できる程度の剛性を有していればよく、上記のような複合材であってもよい。
第1位置決めピン84、第2位置決めピン86及び第3位置決めピン88も同様に、粗さ検出器100及び測定子20の着脱を繰り返しても変形が無視できる程度の剛性を有していればよい。
図3に示すように、本実施形態に係る形状測定装置10では、変位検出器側係合部材80の係合面82に、第1着座センサ92A及び第2着座センサ92Bが並べて配置されている。第1着座センサ92A及び第2着座センサ92Bは、それぞれの検出面に加えられる圧力を検出して電気信号(検出信号)を出力する押圧センサであり、例えば、圧電センサである。
粗さ検出器100の粗さ検出器側係合部材160の係合面162には、作動ピン170が取り付けられている。作動ピン170と第2着座センサ92Bの検出面とは、係合面162と係合面82とを対向させた場合に、互いに対向するように配置されている。
作動ピン170は、係合面162から突出しており、粗さ検出器側係合部材160と変位検出器側係合部材80とが係合すると、第2着座センサ92Bの検出面に接触して押圧する。第2着座センサ92Bは、作動ピン170により押圧されると、検出信号を制御装置200に出力する。制御装置200は、第2着座センサ92Bから検出信号が入力されると、粗さ検出器100が取付部44に取り付けられたと判定し、形状測定装置10の測定モードを粗さ測定モードに切り替える。
同様に、測定子20の係合面には、係合面82と対向させた場合に、第1着座センサ92Aと対向する位置に突出する作動ピン(不図示)が取り付けられている。第1着座センサ92Aは、作動ピンにより押圧されると、検出信号を制御装置200に出力する。制御装置200は、第1着座センサ92Aから検出信号が入力されると、測定子20が取付部44に取り付けられたと判定し、輪郭測定モードに切り替える。
なお、本実施形態では、第1着座センサ92A及び第2着座センサ92Bにより、測定子20及び粗さ検出器100の識別を行うようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定子20の係合部材及び粗さ検出器側係合部材160に、それぞれ測定子20及び粗さ検出器100の識別情報が格納されたIC(Integrated Circuit)タグを取り付け、変位検出器側係合部材80にICタグリーダーを取り付けて、測定子20及び粗さ検出器100の識別を行うようにしてもよい。この場合、着座センサとして機能するICタグリーダーは1つでよい。
[変位検出器]
次に、変位検出器18の内部構成について図4を参照して説明する。図4は、変位検出器を示す側面図である。
図4に示すように、本実施形態に係る変位検出器18は、駆動部連結部40、取付部44、カウンターウェイト48及びリトラクト機構52を含んでいる。
駆動部連結部40は、嵌合部材50Aを介してX軸駆動部16Xに連結して固定される部材である。駆動部連結部40には、Y方向に伸びる回転軸42が設けられている。
アーム46は、回転軸42に回転可能に指示されている棒状の部材である。アーム46の図中左方(-X側)の端部には、取付部44が設けられており、変位検出器側係合部材80が設けられている。アーム46は、回転軸42に対して図中右方(+X側)に伸びている。アーム46の図中右方(+X側)には、カウンターウェイト48が取り付けられている。
カウンターウェイト48は、不図示のスライダーを介して、アーム46上をスライド可能に取り付けられている。カウンターウェイト48の位置を調整することにより、測定子20を用いて輪郭測定を行う場合の測定力(押圧力)が調整される。
リトラクト機構(規制手段)52は、スライド軸52A、アームストッパ52B及びピン52Cを含んでいる。
スライド軸52Aは、Z軸方向に伸びる棒状の部材であり、駆動部連結部40に連結されている。
アームストッパ52Bは、側面視で(+Y方向から見て)略C字状の部材である。アームストッパ52Bは、変位検出器18のアーム46とは独立して、スライド軸52Aに沿って±Z方向にスライド可能に取り付けられている。アームストッパ52Bをスライドさせる機構としては、例えば、ボールねじ又はラック・アンド・ピニオン機構等の往復直線運動を行うための機構を用いることができる。
ピン52Cは、アーム46から+Y方向に突出する棒状の部材である。C字状のアームストッパ52Bは、ピン52Cを囲むように配置される。図4に示すように、ピン52Cがアームストッパ52Bの上下の部分の中間にある場合には、ピン52Cは、アーム46の上下動に伴って上下動可能となっている。アームストッパ52Bは、ピン52Cの可動域を規制する。これにより、取付部44及びアーム46の可動域が一定の範囲に規制される。
輪郭測定を行う場合、ワークの表面に沿って触針32がZ1方向に上下動すると、触針32の上下動に応じてアーム46が上下動する。ピン52Cがアームストッパ52Bの上及び下の部分に接触するまでアーム46が回動すると、アームストッパ52Bによりアーム46の上昇及び下降がそれぞれ規制される。
一方、粗さ測定を行う場合、粗さ検出器100がマグネットキャッチ機構により取付部44に取り付けられる。すると、粗さ検出器100の重量により、変位検出器18のアーム46が押し下げられ、リトラクト機構52のピン52Cがアームストッパ52Bの下端部に押し付けられて固定される。これにより、粗さ検出器100の触針104を用いた粗さ測定を行うことが可能になる。
上記のように、スキッド108Aは、リトラクト機構52により規定される可動域の範囲内で移動可能である。スキッド測定を行うときには、粗さ検出器100の重量を利用してスキッド108Aの接触面108Bをワークに押し付けた状態を維持しながら粗さ測定を行う。ここで、スキッド108Aからワークの表面に加えられる測定力は、カウンターウェイト48を用いて調整することが可能である。一方、スキッドレス測定を行うときには、リトラクト機構52を制御して、粗さ検出器100(具体的には、アーム102)を水平に(XY平面に対して平行)して粗さ測定を行う。
なお、本実施形態では、リトラクト機構52は、アーム46の+Y側に設けられているが、-Y側に設けられていてもよいし、アーム46の両側に設けられていてもよい。
また、リトラクト機構52は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、特開2018-163094号公報に記載のリトラクト板を含む構成を適用することも可能である。なお、リトラクト機構52に代えて、アーム46(及び取付部44に取り付けられた測定子20又は粗さ検出器100)の可動域を規制するための機構(例えば、機械的な規制手段)を設けてもよい。
[粗さ検出器]
次に、粗さ検出器100の内部構成について図5を参照して説明する。図5は、粗さ検出器を示す一部断面図である。
粗さ検出器100は、アーム102、ねじ112、ばね114及び変位センサ120を備えている。
アーム102は、Y方向に伸びる回転軸110の周りに回動可能に取り付けられている。アーム102の先端には、触針104がアーム102の長さ方向に対して略垂直に取り付けられている。アーム102の基端部102Aには、ザグリ部(凹部)102Bが形成されている。
ばね114としては、例えば、圧縮ばね(圧縮コイルばね)等の付勢手段を用いることができるが、アーム102の基端部102Aを図中上方(+Z方向)に付勢できるものであれば、その種類については限定されない。ばね114の一端は、ザグリ部102Bに嵌め込まれており、他端は、ねじ112の先端に係合している。
ねじ112は、例えば、先端が円錐又は角錐形状に形成されたトガリ先タイプのねじである。ねじ112は、粗さ検出器100のZ方向に設けられたねじ穴に螺合している。触針104の測定力は、ねじ112のねじ込み量によりあらかじめ設定される。ここで、測定力は、触針式表面粗さ測定機の特性に関するJIS B 0651:2001 (ISO 3274:1996)等の規格に基づいて設定される。なお、JISは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)を意味し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)を意味する。
アーム102の基端部には、変位センサ120が配置されている。変位センサ120は、触針104の変位量を計測する。制御装置200は、変位センサ120から検出信号を受信して、触針104の変位量を算出する。変位センサ120としては、例えば、コア116とコイル118からなる差動トランスを用いることができる。
上記のように、本実施形態に係る形状測定装置10は、スキッド測定を行う場合とスキッドレス測定を行う場合との間で、触針104の先端部が移動可能な範囲である触針104のストローク(使用域)を変更する。これにより、ノーズピース108を検出器本体106から取り外すことなく、スキッド測定とスキッドレス測定とを切り替えることが可能となる。
[ストロークの設定]
次に、スキッド測定及びスキッドレス測定における触針104のストロークについて、図6等を参照して説明する。図6は、粗さ検出器の触針のストロークを示す図である。
図6に示すストロークR0は、触針104のストロークの全体を示している。以下の説明では、ストロークR0の上限、下限及び上限と下限の中間点(ゼロ点)の座標をそれぞれZ1U、Z1L及びZ1O(=(Z1U-Z1L)/2)とする。ストロークR0は、例えば、検出器本体106におけるアーム102用開口の大きさ、検出器本体106内部におけるアーム102の可動域等により規定される。
(スキッド測定)
スキッド測定を行う場合には、触針104のストロークをスキッド測定用のストロークR1に設定する。以下の説明では、ストロークR1における上限、下限及び基準となる位置(ゼロ点)の座標をそれぞれZ1U1、Z1L1及びZ1O1(=(Z1U1-Z1L1)/2)とする。
スキッド測定用のストロークR1は、例えば、スキッド108Aの接触面108Bの高さ位置(以下、Z1108Bという。)をゼロ点Z1O1として含む領域である。スキッド測定時のゼロ点Z1O1は、例えば、アーム102がワークWの表面(平面)に略平行であり、かつ、スキッド108Aの接触面108Bと触針104の先端部がともにワークWの表面に接触する位置とすることができる。
スキッド測定用のストロークR1の幅|Z1U1-Z1L1|は、例えば、測定対象のワークの表面粗さの振幅(例えば、過去の測定結果における同種のワーク(例えば、同一材料、又は同一の表面加工が施されたワーク等)の表面粗さ(粗さ曲線)の振幅の最大値)に基づいて定めることができ、例えば、振幅の1~数倍の領域とすることができる。
なお、図6に示す例では、Z1U1=Z1Uとなっているが、Z1U1は、Z1108Bよりも高く、Z1Uよりも低い位置であればよい(Z1108B<Z1U1<Z1U)。
スキッド測定を行うときには、リトラクト機構52により、スキッド108Aの接触面108Bをワークに押し付けた状態を維持しながら、スキッド測定用のストロークR1で粗さ測定を行う。ここで、リトラクト機構52により、スキッド測定用のストロークR1の範囲内において、ノーズピース108がワークの表面に対して略平行(換言すれば、ワークの表面に対する法線に垂直)となるようにしてもよい。これにより、触針104のワークの表面に対する角度を略垂直にすることができる。ここで、リトラクト機構52は、角度調整部として機能する。
(スキッドレス測定)
スキッドレス測定を行う場合には、触針104のストロークをスキッドレス測定用のストロークR2に設定する。以下の説明では、ストロークR2における上限、下限及び上限と下限の間の基準となる点(ゼロ点)の座標をそれぞれZ1U2、Z1L2及びZ1O2(=(Z1U2-Z1L2)/2)とする。
スキッドレス測定用のストロークR2は、その上限Z1U2がスキッド108Aの接触面108Bの高さ位置Z1108Bよりも下方(-Z側又はワークの表面側)となる領域である。
なお、図6に示す例では、Z1L2=Z1Lとなっているが、Z1L2はZ1Lよりも高い位置としてもよい(Z1L2>Z1L)。
触針104の先端位置がスキッドレス測定用のストロークR2の下限Z1L2に調整された状態で、触針104がワークに当接すると、ばね114が圧縮されて触針104が押し上げられる。触針104に加えられる力が閾値を越えると、リトラクト機構52のピン52Cがアームストッパ52Bの下端部から離れて、変位検出器18に対して粗さ検出器100が押し上げられる。
スキッドレス測定用のストロークR2の上限Z1U2は、スキッド108Aの接触面108Bの高さ位置Z1108Bよりも下方(-Z側又はワークの表面側)であり、かつ、リトラクト機構52のピン52Cがアームストッパ52Bの下端部から離れない範囲の位置として定められる。
ストロークR2の幅|Z1U2-Z1L2|は、例えば、測定対象のワークの表面粗さの振幅(例えば、過去の測定結果における同種のワーク(例えば、同一材料、又は同一の表面加工が施されたワーク等)の表面粗さ(粗さ曲線)の振幅の最大値)に基づいて定めることができ、例えば、振幅の1~数倍の領域とすることができる。
また、スキッドレス測定用のストロークR2の上限Z1U2は、例えば、スキッド108Aの接触面108Bの高さ位置Z1108Bよりも、測定対象のワークの表面粗さの振幅(例えば、過去の測定結果における同種のワーク(例えば、同一材料、又は同一の表面加工が施されたワーク等)の表面粗さ(粗さ曲線)の振幅の最大値)分低い位置に設定してもよい。これにより、スキッド108Aのワークへの接触をより確実に防止することが可能になる。
スキッドレス測定を行うときには、リトラクト機構52を制御して、粗さ検出器100(具体的には、アーム102)が水平に(XY平面に対して平行)なるように、変位検出器18のアーム46の角度が調整される。そして、スキッド108Aの接触面108Bがワークに接触しない状態を維持しながら、スキッドレス測定用のストロークR2で粗さ測定を行う。これにより、ノーズピース108を検出器本体106から取り付けた状態でも、スキッド108Aがワークに接触しないようにすることが可能になる。
ここで、リトラクト機構52により、ストロークR2の範囲内において、アーム102をワークの表面に対して略平行(換言すれば、ワークの表面に対する法線に垂直)となるようにしてもよい。これにより、触針104のワークの表面に対する角度を略垂直にすることができる。
なお、図6に示す例では、ストロークR1の幅|Z1U1-Z1L1|とストロークR2の幅|Z1U2-Z1L2|とは、異なっているが、これらは互いに等しくてもよい。
本実施形態によれば、ノーズピース108を検出器本体106から取り外すことなく、スキッド測定とスキッドレス測定とを切り替えることが可能となる。
また、本実施形態によれば、スキッド測定及びスキッドレス測定においてストロークが変更された場合であっても、変位検出器18のリトラクト機構52により、各ストロークR1及びR2において、アーム102をワーク表面に対して略平行にすることができるので、各ストロークR1及びR2内で触針104が移動した場合でも、ワークの表面に対する触針104の角度の変化を小さくすることができる。これにより、スキッド測定及びスキッドレス測定における粗さの測定精度を確保することが可能になる。
また、本実施形態によれば、粗さ検出器100が取付部44に取り付けられると、変位検出器18のアーム46のピン52Cが粗さ検出器100の重量によりアームストッパ52Bに押し付けられて固定される。このため、特許文献1のような補助付勢手段が不要となる。
また、本実施形態では、粗さ検出器100は、変位検出器18に対して、粗さ検出器100の重量により位置決めされる。このため、例えば、+Z向きの成分を含む衝撃が触針104に加えられた場合であっても、粗さ検出器100が+Z側に移動可能であるため、触針104の損傷を回避することができる。
[形状測定装置の制御系]
図7は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置を示すブロック図である。
図7に示す制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んでおり、入力装置22を介してオペレータから操作入力を受け付けて、形状測定装置10の各部に制御信号を送信し、各部の動作を制御する。
制御装置200は、測定子20と粗さ検出器100のどちらが取付部44に取り付けられたかを検出し、測定モード(輪郭測定モード及び粗さ測定モード)の切り替えを行う。
図7に示すように、変位検出器18は、検出制御部54と、変位読取部56とを含んでいる。
検出制御部54は、変位検出器18の各部を制御する。検出制御部54は、リトラクト機構52及びカウンターウェイト48の位置を制御する。
変位読取部56は、ワークの輪郭形状の測定を行うときに、測定子20の変位を読み取るための装置であり、例えば、リニアスケール、円弧スケール、LVDT(Linear Variable Differential Transformer:差動変圧器)等である。
(輪郭測定モード)
制御装置200は、第1着座センサ92Aからの検出信号により、取付部44に測定子20が取り付けられたことを検出する。そして、制御装置200は、形状測定装置10の測定モードを輪郭測定モードに切り替える。ここで、制御装置200は、輪郭形状の測定用のアプリケーションを起動させ、輪郭測定モードへの切り替え指示を検出制御部54に送信する。
検出制御部54は、制御装置200から輪郭測定モードへの切り替え指示を受信すると、リトラクト機構52及び変位読取部56を制御して輪郭測定を行う。
変位読取部56は、測定子20の測定子アーム30の先端側に取り付けられた触針32がワークの表面に接触したときの変位(Z1方向の変位)を読み取る。
制御装置200は、検出制御部54を介してX軸駆動部16Xから変位検出器18のX座標を取得して、測定子20のサイズ情報等から触針32の位置を算出する。そして、制御装置200は、触針32の位置と、変位読取部56から取得した触針32のZ1方向の変位に基づいてワークの輪郭形状を算出し、その結果を表示装置24に出力する。
(粗さ測定モード)
一方、ワーク表面の粗さの測定を行う場合、取付部44に粗さ検出器100が取り付けられる。粗さ検出器100が取り付けられると、粗さ検出器100の重量により、変位検出器18のアーム46が押し下げられ、リトラクト機構52のピン52Cがアームストッパ52Bの下端部に押し付けられて固定される。
制御装置200は、第2着座センサ92Bからの検出信号により、取付部44に粗さ検出器100が取り付けられたことを検出する。そして、制御装置200は、形状測定装置10の測定モードを粗さ測定モードに切り替える。ここで、制御装置200は、粗さ測定用のアプリケーションを起動させる。
次に、制御装置200は、入力装置22を介して、スキッド測定とスキッドレス測定のどちらを行うかに関する指示を受け付け、粗さ測定用のアプリケーションにおいて、指定の内容に応じてストロークの設定を行う。ここで、制御装置200は、使用域設定部として機能する。
制御装置200は、スキッド測定又はスキッドレス測定の指定に応じて設定したストローク(R1又はR2)の範囲内の測定値のみを測定対象として記録する。換言すれば、制御装置200は、スキッド測定時に触針104がストロークR1の外に移動した場合、又はスキッドレス測定時に触針104がストロークR2の外に移動した場合に、その間の測定値を記録しない。
(スキッド測定)
制御装置200は、スキッド測定を行う旨の指示を受け付けると、粗さ測定用のアプリケーションにおいて、触針104のストロークをストロークR1に設定する。
上記のように、初期状態では、触針104は、ストロークR0の下限Z1Lに位置する。
まず、制御装置200は、Z軸駆動部16Zを制御して、変位検出器18を-Z方向に移動させてワークWに触針104の先端を接触させる。ここで、触針104がワークWの表面に対して略垂直となるように、粗さ検出器100とワークWとを相対移動させることが好ましい。
スキッド108AがワークWの表面に接触すると、粗さ検出器100が+Z側に押し上げられる。
制御装置200は、変位読取部56からの検出信号に基づいて、スキッド108AがワークWの表面に接触したか否かを判定する。なお、本実施形態では、変位検出器18の変位読取部56からの検出信号に基づいて、スキッド108AがワークWの表面に接触したか否かを判定するようにしたが、例えば、リトラクト機構52のピン52Cがアームストッパ52Bに加える押圧力を検出するための押圧センサ等を設けてもよい。
制御装置200は、変位読取部56からの検出信号に基づいてスキッド108AがワークWの表面に接触したことを検出すると、Z軸駆動部16Zを制御して変位検出器18を-Z方向にさらに移動させる。そして、制御装置200は、変位読取部56からの検出信号に基づいて、アーム102が水平になる位置(アーム102がワークWの表面に対して平行になる位置)に到達したことを検出すると、Z軸駆動部16Zによる変位検出器18のZ方向の移動を停止させる。このときの触針104の位置がスキッド測定時のゼロ点(Z1O1)となる。これにより、リトラクト機構52は、ピン52Cがアームストッパ52Bから離れたフリーな状態になり、スキッド108Aは、リトラクト機構52により規制された粗さ検出器100の可動域の範囲内で、ワークWの表面に倣って移動可能となる。
なお、リトラクト機構52のアームストッパ52Bを+Z方向に移動させることにより、ピン52Cがアームストッパ52Bから離れたフリーな状態にしてもよい。
次に、制御装置200は、X軸駆動部16Xを制御して、変位検出器18をX方向に走査させてワークWの表面粗さの測定を行う。なお、スキッド108AからワークWの表面に加えられる押圧力は、粗さ検出器100の重量とカウンターウェイト48の位置との関係により調整される。
なお、本実施形態では、触針104の先端がスキッド108Aの接触面108Bと同じ高さの場合に、アーム102とノーズピース108とは略平行になるように、触針104の長さ等が調整されていることが好ましい。
(スキッドレス測定)
制御装置200は、スキッドレス測定を行う旨の指示を受け付けると、粗さ測定用のアプリケーションにおいて、触針104のストロークをストロークR2に設定する。
スキッドレス測定時には、制御装置200は、リトラクト機構52を制御してアームストッパ52Bを図4中上方(+Z方向)に移動させる。そして、スキッド108Aがノーズピース108の基端部よりも上方になるように、ノーズピース108を水平面に対して傾斜させる。上記のように、初期状態では、アーム102は、ばね114の付勢力によって押し下げられるため、触針104は、ストロークR0の下限Z1Lに位置する。
まず、制御装置200は、Z軸駆動部16Zを制御して、変位検出器18を-Z方向に移動させてワークWに触針104の先端を接触させる。ここで、ワークWに触針104の先端を接触させるときには、触針104がワークWの表面に対して略垂直となるように、粗さ検出器100とワークWとを相対移動させる。触針104のワークWに対する角度の調整は、例えば、リトラクト機構52を動作させて粗さ検出器100の姿勢(傾き)を調節することにより行うことが可能である。そして、制御装置200は、変位読取部56からの検出信号に基づいて、アーム102が水平になる位置に到達したことを検出すると、Z軸駆動部16Zによる変位検出器18のZ方向の移動を停止させる。このときの触針104の位置がスキッドレス測定時のゼロ点(Z1O2)となる。なお、ワークWを保持するクランプ機構(不図示)等の姿勢をアクチュエータ(不図示)等を用いて調整することにより、触針104がワークWの表面に対する角度を調整するようにしてもよい。
制御装置200は、変位センサ(差動トランス)120からの検出信号に基づいて、触針104がワークWの表面に接触したか否かを検出する。
制御装置200は、触針104がワークWの表面に接触したことを検出すると、Z軸駆動部16Zを制御して変位検出器18を-Z方向に移動させて、触針104のゼロ点を設定するためのオートストップ動作を行う。そして、制御装置200は、変位センサ120からの検出信号に基づいて、触針104の先端がゼロ点Z1Oに到達(一致)したことを検出すると、Z軸駆動部16Zによる変位検出器18のZ方向の移動を停止させる。なお、制御装置200は、触針104の先端が上限Z1U、下限Z1L及びゼロ点Z1Oに位置するときの変位センサ120の検出信号の出力値をあらかじめ記憶しておき、あらかじめ記憶した出力値に基づいて、触針104の先端の位置を検出するようにしてもよい。
次に、制御装置200は、X軸駆動部16Xを制御して、変位検出器18をX方向に走査させてワークWの表面粗さの測定を行う。これにより、粗さ測定時における触針104の動作範囲をゼロ点Z1Oを中心とした近傍領域に限定することができるので、触針104のワークWの表面に対する角度の変化を小さくすることができる。
なお、上記の実施形態では、輪郭測定用の変位検出器18に粗さ検出器100を取り付ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、粗さ検出器100を制御するためのリトラクト機構52及びカウンターウェイト48を備える構成であれば、本発明を実現することが可能である。