[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1(A)は第1実施形態に係る圧電素子の一例を示す断面図であり、図1(B)及び図1(C)は圧電素子の他の例を示す断面図である。以下の説明において、適宜、図1などに示すXYZ直交座標系を参照する。このXYZ直交座標系は、X方向およびY方向が水平方向(横方向)であり、Z方向が鉛直方向である。また、各方向において、適宜、矢印の先端と同じ側を+側(例、+Z側)、矢印の先端と反対側を−側(例、−Z側)と称す。例えば、鉛直方向(Z方向)において、上方が+Z側であり、下方が−Z側である。また、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
図1(A)に示すように、圧電素子1は、多孔質膜2と、非多孔質膜3と、を備える。多孔質膜2は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成される。中でも、多孔質膜2は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることが好ましい。多孔質膜2が上記樹脂により形成される場合、強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れた圧電素子を得ることができる。
多孔質膜2は、複数の空隙4を有する。多孔質膜2は、例えば、空隙4及び表面の帯電により圧電性を有する。多孔質膜2は、例えば、圧電処理、製造時に発生する静電気等により帯電し、圧電処理により帯電するのが好ましい。
空隙4は、少なくとも一部の空孔5同士が接続して、三次元的に連通した空孔を形成する。空孔5は内面に曲面を有する微小な孔であり、空孔5同士が接続した部分に連通孔が形成されている。また、例えば、空隙4により、多孔質膜2の上面(+Z側の面)と、下面(−Z側の面)とを連通した貫通孔が形成される。例えば、空孔5は球状孔であり、空隙4の形状は、球状または球状が連なった形状である。空隙4の形状が球状または球状が連なった形状である場合、多孔質膜2の強度を維持しつつ空隙率を高くすることができる。なお、空隙4の形状は、球状、球状または球状が連なった形状に限定されない。例えば、空隙4の形状は、楕円体状でもよいし、楕円体状が連なった形状でもよい。
空隙4の内径(空孔5の内径)は、特に制限されないが、例えば、10nm以上50μm以下、好ましくは50nm以上10μm以下である。空隙4の内径は、例えば、多孔質膜2全体において、均一である。空隙4の内径は、後述する多孔質膜2を製造する際に用いられる微粒子の粒径により、適宜調整することができる。なお、空隙4の内径は、多孔質膜2全体において、均一でもよいし、不均一でもよい。
多孔質膜2の空隙率は、特に限定されず、例えば、45%以上95%以下である。多孔質膜2の空隙率が上記範囲である場合、圧電性能に優れた圧電素子1を得ることができる。多孔質膜2の空隙率は、多孔質膜2の厚さ方向(Z方向)及び面方向(X方向、Y方向)において、均一に設定される。なお、多孔質膜2の空隙率は、均一でもよいし、不均一でもよい。
なお、空隙率は、例えば、単位体積あたりの空隙の割合を示す。空隙率は、例えば、以下の式(1)によって算出される。
空隙率(%)={[多孔質膜2の重量(g)/多孔質膜2の体積(cm3)]/樹脂の比重(g/cm3)}×100・・・(1)
多孔質膜2の空隙率は、多孔質膜2の製造に用いる材料(例、樹脂材料、可塑剤、無機又は有機フィラーの種類や含有量)、製造方法などにより、制御できる。例えば、後述する多孔質膜2を製造する際に用いられる微粒子の粒径や含有量を適宜調整することにより、所望の空隙率とすることができる。
多孔質膜2の膜厚は、特に限定されないが、10μm以上250μm以下とすることができ、好ましくは15μm以上150μm以下、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。多孔質膜2の膜厚が上記範囲である場合、強度に優れ、加工時における、膜の伸び、皺、ピンホール、膜の破断を抑制することができ、且つ圧電性能に優れた圧電素子1を得ることができる。
非多孔質膜3は、非多孔質の膜である。非多孔質膜3は、例えば、非多孔質の樹脂膜である。非多孔質膜3は、図1(A)に示すように、多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層される。非多孔質膜3は、例えば、多孔質膜2の一方の面(+Z側の面)に積層される。非多孔質膜3が多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層されることにより、空隙4及び表面の帯電が維持され、圧電素子1の圧電性能が向上する。なお、以下の説明において、非多孔質膜3が多孔質膜2(多孔質膜2a(図11参照))の少なくとも一方の面に積層された膜を「複合膜7」と称する場合がある。
なお、図1(A)に示す非多孔質膜3は、多孔質膜2の一方の面の全体に積層されるが、非多孔質膜3は、多孔質膜2の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層されていればよい。
非多孔質膜3の形成材料は、特に制限されず、例えば、公知の樹脂材料により形成される。中でも、非多孔質膜3は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成されるのが好ましく、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることがより好ましい。非多孔質膜3が上記樹脂により形成される場合、強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れた圧電素子1を得ることができる。
なお、非多孔質膜3は、非多孔質の樹脂膜でなくてもよく、例えば、図1(B)に示す圧電素子1Aのように、電極6として形成されてもよい。この場合、電極6は、例えば、銅箔、ステンレス泊、アルミニウム泊、ニッケル泊などの金属泊が用いられる。また、電極6の表面は、粗面化処理や防錆処理がされていてもよい。
非多孔質膜3と多孔質膜2とは、例えば、同一の材料で形成される。非多孔質膜3と多孔質膜2とが同一の材料で形成される場合、多孔質膜2と非多孔質膜3との間の接着性がより向上する。また、この場合、耐熱性をより向上させることができ、且つ、圧電素子1の材料の種類を少なくすることができるため、圧電素子1の製造を簡便にすることができる。
なお、非多孔質膜3と多孔質膜2とは、異なる材料で形成されてもよい。非多孔質膜3と多孔質膜2とが異なる材料で形成される場合、非多孔質膜3と多孔質膜2との界面において、異なる材料との界面の方が、電荷が帯電しやすい傾向があり、圧電性能を高めることができる場合もある。
非多孔質膜3の膜厚は、特に制限されず、例えば、20μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上〜7μm以下である。非多孔質膜3の膜厚が、上記範囲である場合、圧電性を向上することができ、且つ容易に製膜することができる。また、電極6の膜厚は、特に限定されず、例えば、0.1μm以上100μm以下程度、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下とすることができる。
なお、図1(C)に示す圧電素子1Dのように、非多孔質膜3は、多孔質膜2の両方の面(+Z側の面および−Z側の面)に積層されてもよい。この場合、多孔質膜2の+Z側と−Z側に積層される非多孔質膜3は、同一の材料により形成されてもよいし、異なる材料により形成されてもよい。多孔質膜2の+Z側と−Z側に積層される非多孔質膜3がそれぞれ同一の材料により形成される場合、耐熱性を向上させることができ、且つ、圧電素子1の材料の種類を少なくすることができるため、圧電素子1の製造を簡便にすることができる。また、図1(A)等に示す非多孔質膜3は1層であるが、非多孔質膜3は2層以上でもよい。
次に、図2〜図6を参照して、実施形態に係る圧電素子の製造方法を説明する。図2、図3及び図6(A)は、実施形態に係る圧電素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。図4、図5及び図6(B)は、圧電素子の製造方法の一例を示す断面図である。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、製造方法を限定するものではない。図2〜図6では、後述するエッチング処理を行った多孔質膜2を製造する方法を例として示す。
本実施形態の圧電素子1の製造方法は、例えば、図2に示すステップS1において、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により、複数の空隙4を有する多孔質膜2を形成する。
例えば、図3に示すステップS11において、微粒子を含ませた所定の樹脂の液体を基材に塗布して乾燥させることにより乾燥膜を形成する。例えば、まず、微粒子を含ませた所定の樹脂の液体Lとして、所定の樹脂材料、微粒子及び溶剤を含有する液体L(塗布液L)を準備する。所定の樹脂材料としては、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体ポリマー、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂の前駆体ポリマー、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つが挙げられる。中でも、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂が好ましい。溶剤としては、使用される樹脂材料を溶解可能な任意の有機溶剤が用いられる。
塗布液Lは、例えば、微粒子を予め分散した溶剤と、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドの少なくとも一つと、を任意の比率で混合することにより調製される。また、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを重合して調製されてもよい。例えば、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
塗布液Lの粘度は、最終的に300〜5000cPとすることが好ましく、400〜3000cPの範囲がより好ましく、600〜2500cPの範囲がさらに好ましい。塗布液Lの粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。塗布液L中の全成分のうち、溶剤の含有量は、例えば、50〜95質量%であり、好ましくは60〜85質量%である。
例えば、塗布液Lは、樹脂材料と微粒子とが10:90〜50:50の体積比となるように含有される。なお、各樹脂材料の体積は、各樹脂材料の質量にその比重を乗じて求めた値が用いられる。この場合において、塗布液Lの体積全体を100としたときに微粒子の体積が50以上であれば、粒子が均一に分散し、また、微粒子の体積が90以内であれば粒子同士が凝集することもなく分散する。このため、多孔質膜2に空隙4を均一に形成することができる。また、微粒子の体積比率がこの範囲内であれば、乾燥膜(例、乾燥膜D)を成膜する際の剥離性を確保することができる。
上記の塗布液Lには、微粒子とポリアミド酸又はポリイミドを乾燥して乾燥膜とした場合において、微粒子の材質が後述の無機材料の場合は、例えば、微粒子/ポリイミドの比率が2〜6(質量比)、好ましくは3〜5(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。微粒子の材質が後述の有機材料の場合は、例えば微粒子/ポリイミドの比率が1〜3.5(質量比)、好ましくは1.2〜3(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。例えば、樹脂材料に対して微粒子を72体積%(〜2.6体積倍)にする場合、質量比でシリカ(微粒子)/ポリイミド=80/20、あるいは、ポリメタクリル酸メチル樹脂(微粒子)/ポリイミド=(68/32)〜2.1倍に設定してもよい。質量比が上記範囲である場合、圧電素子として適切な空隙率とすることでき、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。
また、乾燥膜とした場合において、例えば、微粒子/ポリイミドの体積比率が1.5〜4.5、好ましくは1.8〜3(体積比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。体積比が上記範囲である場合、圧電素子として適切な空隙率とすることでき、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。乾燥膜とした際に微粒子/ポリイミドの質量比又は体積比が下限値以上であれば、圧電素子として適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。ポリアミド酸又はポリイミドのかわりに樹脂材料がポリアミドイミド又はポリアミドとなる場合も、質量比は上記と同様である。
以下、塗布液Lを構成する上記好適な樹脂材料、微粒子及び溶剤について具体的に説明する。
<ポリアミド酸>
ポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本実施形態で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜60℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜7万cPの範囲である。
<ポリイミド>
本実施形態に用いるポリイミドは、塗布液Lに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
本実施形態で用いられる、有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
<ポリアミドイミド>
本実施形態に用いるポリアミドイミドは、塗布液Lに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメッと酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとから得られるポリアミドが好ましく、特に芳香族ポリアミドが好ましい。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びジフェン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<微粒子>
微粒子は、例えば真球率が高いものが用いられる。このような微粒子は、多孔質膜における孔の内面に曲面を形成しやすい点で好ましい。微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、100〜2000nm程度に設定することができる。上記のような微粒子を用いることにより、後の工程で微粒子を除去することで得られる多孔質膜2の孔径を揃えることができる。この場合、圧電性能を均一化でき、且つ、多孔質膜2に印加される電界を均一化できる。
なお、微粒子の材質としては、塗布液Lに含まれる溶剤に不溶であって、後の工程で多孔質膜2から除去可能な材質であれば、特に限定されることはなく公知のものを採用することができる。例えば、無機材料では、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物が挙げられる。また、有機材料では、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。また、微粒子の一例として、(単分散)球状シリカ粒子などのコロイダルシリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。この場合、多孔質膜2の孔径をより均一にすることができる。塗布液Lに含まれる微粒子は、粒径が、例えば100〜2000nmである。
<溶剤>
溶剤は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを溶解するものであれば、特に限定されることなく公知のものが使用できる。溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N−ビニル−2−ピロリドン等の含窒素極性溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、溶剤は、上記の溶剤に加え、沸点が190℃以上の高沸点溶剤を含むことができる。高沸点溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素極性溶剤;γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ピロリドンフェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が挙げられる。高沸点溶剤としては、これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶剤における高沸点溶剤の含有比率は特に限定されず、広い範囲のものを使用することができる。溶剤中、高沸点溶剤を5〜80質量%とすることが好ましく、7〜70質量%とすることが更に好ましく、高沸点溶剤を10〜60質量%とすることが最も好ましい。高沸点溶剤が5質量%以上で含有されれば、多孔質ポリイミド膜の成膜性や膜物性に問題がなく、80質量%以下であれば支障なく塗工及びプリベーク工程を行うことができる。
なお、上記塗布液Lは、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤の他、必要に応じて、離型剤、分散剤、縮合剤、イミド化剤、界面活性剤等種々の添加剤を含んでいてもよい。
ステップS11では、図4(A)に示すように、塗布液Lを基材S上に塗布し、乾燥させることにより溶剤を除去して、乾燥膜Dを形成する。塗布液Lは、微粒子Bを含む。基材S上に塗布された塗布液Lは、常圧又は真空下で50〜100℃で処理し(プリベーク)、乾燥膜Dとする。基材Sは、特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、基材Sとして箔を用いてもよい。この箔は非多孔質膜3(電極6)として用いてもよい。箔としては、例えば、金属箔、特に銅箔、アルミ箔が好ましく用いられる。基材Sに金属箔を用いて多孔質膜2を製造する場合、この金属箔を保持したまま圧電処理に供してもよいし、エッチング等により金属箔の一部だけを除去した状態で圧電処理に供してもよい。これらの場合、金属箔は、圧電素子の電極6及び回路とすることができる。
続いて、図4(B)に示すように、プリベーク処理後の乾燥膜Dを基材Sより剥離する。剥離方法は、特に限定されず、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよいし、手作業で行ってもよい。次いで、剥離後の乾燥膜Dを焼成する。なお、焼成の前に、乾燥膜Dにカールが発生するのを抑制するため、水を含む溶剤への浸漬処理や、プレス処理を任意で行ってもよい。また当該浸漬処理後の乾燥処理を任意で設けてもよい。焼成温度は、例えば、120〜400℃程度であり、150〜350℃程度の温度が好ましい。また、微粒子Bに有機材料が含まれる場合は、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。なお、塗布液Lがポリアミド酸を含む場合、この焼成においてはイミド化を完結させることが好ましいが、乾燥膜がポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドから構成される場合は、この限りでない。なお、乾燥膜Dを基材Sより剥離するか否かは、製造方法などにより適宜決定される。例えば、後述するように基材Sとして非多孔質膜3を用いる等の場合は、乾燥膜Dを基材Sより剥離しなくてもよい。
次に、図3に示すステップS12において、焼成後の乾燥膜Dから微粒子Bを除去することにより、多孔質膜2を製造する。例えば、微粒子Bとして、シリカを採用した場合、乾燥膜を低濃度のフッ化水素水(HF)等によりシリカを溶解除去することで、多孔質とすることが可能である。また、微粒子Bが樹脂微粒子の場合は、上述のような樹脂微粒子の熱分解温度以上で、ポリイミドの熱分解温度未満の温度に加熱し、樹脂微粒子を分解させてこれを取り除くことができる。本ステップでは、例えば、図4(C)に示すように、乾燥膜Dから微粒子Bを除去した部分がそれぞれ空孔5となり、空孔5が連通して空隙4を有する多孔質膜2が形成される。多孔質膜2は、面方向(X方向及びY方向)に均一な空隙率を有する。なお、多孔質膜2は微粒子Bを含有してもよい。この場合、微粒子Bをフィラーとして機能させ、多孔質膜2に強度を付与してもよい。
次に、図3に示すステップS13において、多孔質膜2に対して、エッチング(ケミカルエッチング)処理を行う。多孔質膜2は、図5(A)に示すように、エッチング液ESに浸漬され、空隙4の樹脂の一部が除去される。エッチング液ESとしては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液が用いられる。無機アルカリ溶液として例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。エッチング処理により、図5(B)に示すように、空隙4のバリ等の突起部分が除去され、少なくとも多孔質膜2の空隙率を上昇させることができる。これにより、空隙4の連通性が向上し、例えば、このようなエッチング後の多孔質膜2を圧電素子1として用いる場合、圧電性能を向上させることができる。
その後、多孔質膜2が洗浄液によって洗浄され、液切りが行われる。続いて、液切り後の多孔質膜2が、例えば、100〜400℃程度(好ましくは100℃〜300℃程度)に加熱され、洗浄液が除去される。なお、エッチング後の多孔質膜2は、不図示の巻き取り装置等によって巻き取られ、不図示のロール体を形成してもよい。また、このロール体は、使用目的に応じて、多孔質膜2を引き出して切断装置により切断してから再び巻き取ってロール体とすることにより、ロール体のサイズを調整することができる。また、多孔質膜2は、エッチング処理後、保管されてもよい。エッチング処理後の多孔質膜2を保管する場合、多孔質膜2は、ロール体の状態で保管してもよい。なお、多孔質膜2の保管条件(例、保管時間、温度、湿度)は任意である。なお、ステップS13によりエッチング処理を行うか否かは任意であり、エッチング処理は行わなくてもよい。
次に、図2に示すステップS2において、多孔質膜2の少なくとも一方の面に非多孔質膜3を積層する。非多孔質膜3は、特に制限されず、公知の樹脂材料により形成される。非多孔質膜3は、例えば、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成される。中でも、非多孔質膜3は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることが好ましい。また、非多孔質膜3と多孔質膜2とは、例えば、同一の材料で形成されるのが好ましい。
非多孔質膜3と多孔質膜2との積層は、特に制限されず、例えば、非多孔質膜3と多孔質膜2との積層は、別々に作製した多孔質膜2と非多孔質膜3とを積層してもよいし、後に説明するように、多孔質膜2を基材として使用し、この上に、非多孔質膜3を形成することにより積層してもよいし、非多孔質膜3を基材として使用し、この上に、多孔質膜2を形成することにより積層してもよい。
以下、別々に作製した多孔質膜2と非多孔質膜3とを積層する例を説明する。例えば、図6(A)に示すステップS21において、図6(B)に示すように、非多孔質膜3となる液体LAを基材Sに塗布して乾燥させることにより非多孔質膜3を形成する。非多孔質膜3となる液体LAは、例えば、樹脂成分を溶剤により溶解した液を用いることができる。非多孔質膜3となる液体LAは、樹脂成分等に応じて、適宜設定される。例えば、非多孔質膜3を上記樹脂(イミド系樹脂)により形成する場合、非多孔質膜3となる液体LAは、多孔質膜2の部分で説明した塗布液Lの成分から微粒子を除いた液を用いることができる。
続いて、基材Sに塗布した非多孔質膜3となる液体LAを乾燥し非多孔質膜3を形成する。非多孔質膜3となる液体LAの乾燥方法は、樹脂成分等に応じて、適宜設定される。例えば、非多孔質膜3を上記樹脂(イミド系樹脂)により形成する場合、上記したステップS11と同様に、塗布した非多孔質膜3となる液体LAをプリベークすることにより乾燥膜を形成する。続いて、形成した乾燥膜を剥離する。続いて、上記樹脂がポリアミド酸等のポリイミド前駆体である場合、剥離した乾燥膜の焼成を行うことによりイミド化反応を行い、図6(C)に示す非多孔質膜3を形成する。なお、非多孔質膜3となる液体LAをプリベークすることにより形成した乾燥膜は、非多孔質膜3に含まれる。
なお、ステップS21を行うか否かは任意である。例えば、市販品など予め形成された非多孔質膜3を用いる場合、ステップS21を行わなくてもよい。
続いて、図6(A)に示すステップS22において、形成した非多孔質膜3を多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層する。これにより、多孔質膜2の少なくともとも一方の面に非多孔質膜3が積層された複合膜7を形成する。例えば、図6(D)に示すように、非多孔質膜3を多孔質膜2の一方の面に積層する。多孔質膜2と非多孔質膜3との積層の方法は、特に制限されない。例えば、多孔質膜2と非多孔質膜3との積層の方法は、圧着でもよいし、溶着でもよいし、焼結により積層する方法でもよい。また、圧電素子1は接着剤を含んでもよく、非多孔質膜3と多孔質膜2との積層の方法は、接着剤により接着する方法でもよい。また、非多孔質膜3は、図1(B)に示すように、多孔質膜2の両方の面に積層してもよい。得られた複合膜7は圧電素子用の膜として好適に用いることができる。
続いて、図2に示すステップS3において、多孔質膜2の少なくともとも一方の面に非多孔質膜3が積層された複合膜7に対して、圧電処理を行う。これにより、複合膜7の圧電性能を高くすることができる。圧電処理は、例えば、複合膜7に電極を設けて高電圧を印加する方法により行ってもよいし、複合膜7の表面に電極を設けず、高電界下で数分間、保持する方法により行ってもよいし、金属板上に複合膜7を載置し、複合膜7から所定間隔をあけて、コロナ放電により行ってもよい。中でも、圧電処理は、コロナ放電により行う方法が好ましい。また、コロナ放電を行う場合、多孔質膜2の空隙4内の気体をヘリウム、あるいはアルゴンに置換することが好ましい。これにより、空隙4での放電が発生しやすくなり、圧電性の起源となる空隙4の帯電が発生しやすくなる。なお、圧電処理は複合膜7に対して行わなくてもよい。例えば、圧電処理を、積層する前の多孔質膜2、積層する前の非多孔質膜3に対して行い、圧電処理を行った多孔質膜2と非多孔質膜3とを積層してもよい。
次に圧電素子の製造方法の他の例を説明する。図7(A)は、圧電素子の製造方法の他の例を示すフローチャートであり、図7(B)は、圧電素子の製造方法の他の例を示す断面図である。
例えば、図2に示すステップS2は、他の方法で行ってもよい。例えば、図7(A)に示すステップS23において、図7(B)に示すように、非多孔質膜3となる液体LAを多孔質膜2に塗布して乾燥させることにより、非多孔質膜3を形成してもよい。これにより、多孔質膜2の少なくとも一方の面に非多孔質膜3を積層する。ステップS23は、例えば、図6に示すステップS21の基材Sを多孔質膜2に代える点以外の点は、ステップS21と同様にして行うことができる。本製造方法の場合、製造ステップを減らすことができ、且つ、多孔質膜2と非多孔質膜3との接着性を向上させることができる。
次に圧電素子の製造方法の他の例を説明する。図8は、圧電素子の製造方法の他の例を示すフローチャートである。図9及び図10は、圧電素子の製造方法の他の例を示す断面図である。
図2に示すステップS1及びステップS2は、他の方法で行ってもよい。例えば、図8(A)に示すステップS4において、非多孔質膜3の少なくとも一方の面に、多孔質膜2となる液体を乾燥させることにより多孔質膜2を形成してもよい。
例えば、図8に示すステップS15において、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体を非多孔質膜3に塗布して乾燥させることにより乾燥膜Dを形成する。ステップS15は、例えば、図3に示すステップS11の基材Sを非多孔質膜3に代えて、ステップS11と同様にして行うことができる。例えば、図9(A)に示すように、非多孔質膜3に塗布液Lを塗布する。なお、非多孔質膜3は、上記したステップS21により製造したものでもよいし、市販品を用いてもよい。
続いて、図9(B)に示すように、プリベークすることにより乾燥膜Dを形成する。上記樹脂がポリアミド酸等のポリイミド前駆体である場合は、乾燥膜Dの焼成を行う。なお、図1(B)に示すように多孔質膜2の両面に非多孔質膜3を形成する場合、乾燥膜Dに非多孔質膜3となる液体LAを塗布して乾燥させることにより非多孔質膜3を形成してもよい。
続いて、図8に示すように、上記したステップS12を行い、図9(C)に示すように、焼成後の乾燥膜Dから微粒子Bを除去する。これにより、非多孔質膜3の少なくとも一方の面に多孔質膜2が積層された複合膜7を得る。なお、ステップS12において、フッ化水素水(HF)等の低分子化合物により微粒子Bを溶解除去する場合、乾燥膜Dの両面に非多孔質膜3が積層されたものでも、フッ化水素水(HF)等の低分子化合物は、非多孔質膜3を透過可能なため、微粒子Bを溶解除去できる。
続いて、図8に示すように、上記したステップS13を行い、図10に示すように、多孔質膜2に対して、エッチング(ケミカルエッチング)処理を行い、図6(D)に示す複合膜7を得る。なお、ステップS13を行うか否かは任意である。本製造方法の場合、製造が簡便で、且つ、多孔質膜2と非多孔質膜3との接着性を向上させることができる。
なお、ステップS15において、焼成あるいはプリベーク前の非多孔質膜3に、塗布液Lを塗布して乾燥膜Dを形成し、その後、焼成することによりイミド化反応を行ってもよい。非多孔質膜3がイミド系樹脂により形成される場合、これにより、非多孔質膜3と多孔質膜2とを同時にイミド化反応を行うことができる。
以上のように、本実施形態に係る圧電素子1、1A、1Bは、圧電性能及び耐熱性に優れる。また、本実施形態に係る圧電素子の製造方法は、圧電性能及び耐熱性に優れる圧電素子を好適に製造することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図11(A)は、第2実施形態に係る圧電素子を示す図であり、図11(B)は、圧電素子の他の例を示す断面図である。
図11(A)に示すように、本実施形態の圧電素子1Cは、多孔質膜2aと、非多孔質膜3と、を備える。多孔質膜2aは、空隙率が異なる複数の多孔質層(多孔質層9、多孔質層10)が積層されて形成される。多孔質膜2aが複数の多孔質層を有する場合、多様な機能(特性)を付与することができ、また、強度を向上させることができる。なお、多孔質膜2aは2層であるが、3層以上の多孔質層で形成されてもよい。
多孔質層9は複数の空隙4aを有する。多孔質層10は複数の空隙4bを有する。例えば、空隙4aの内径は、空隙4bの内径より小さい。なお、空隙4aの内径は、空隙4bの内径より大きくてもよいし、空隙4aの内径は、空隙4bの内径と同様でもよい。空隙4aの形状及び空隙4bの形状は、特に制限されず、例えば、第1実施形態の多孔質膜2の空隙4と同様の形状である。なお、空隙4a及び空隙4bの形状は、同様の形状でもよいし、異なる形状でもよい。
多孔質層9の空隙率及び多孔質層10の空隙率は、それぞれ、例えば、45%以上95%以下である。多孔質層9の空隙率及び多孔質層10の空隙率が、それぞれ、上記範囲である場合、圧電性に優れた圧電素子1を得ることができる。多孔質層9の空隙率は、多孔質層10の空隙率より高くてもよいし、多孔質層10の空隙率より低くてもよい。
多孔質層9の膜厚及び多孔質層10の膜厚は、特に制限されないが、それぞれ、1μm以上240μm以下であることが好ましい。多孔質層9の膜厚及び多孔質層10の膜厚が、それぞれ、上記範囲である場合、強度に優れ、加工時における、膜の伸び、皺、ピンホール、膜の破断を抑制することができ、且つ圧電性に優れた圧電素子1を得ることができる。多孔質膜2aの膜厚については、第1実施形態の多孔質膜2と同様である。
なお、図11(A)に示す多孔質層9及び多孔質層10の膜厚は、同じ膜厚に設定されているが、多孔質層9の膜厚が多孔質層10の膜厚より厚くてもよいし、多孔質層9の膜厚が多孔質層10の膜厚より薄くてもよい。
多孔質層9及び多孔質層10の形成材料は、第1実施形態の多孔質膜2と同様である。本実施形態の例では、多孔質層9及び多孔質層10は、同一の材料により形成される。多孔質層9及び多孔質層10が同一の材料により形成される場合、多孔質層9と多孔質層10との間の接着性がより向上する。また、この場合、耐熱性を向上させることができ、且つ圧電素子1の材料の種類を少なくすることができるため、圧電素子1の製造を簡便にすることができる。なお、多孔質層9及び多孔質層10は、異なる材料で形成されてもよい。
非多孔質膜3は、第1実施形態と同様である。非多孔質膜3は、多孔質膜2aの少なくとも一方の面に積層される。非多孔質膜3は、例えば、多孔質層9の上面に積層される。なお、非多孔質膜3は、多孔質層10に積層されてもよいし、図11(B)に示す圧電素子1Dのように、多孔質膜2aの両方の面(多孔質層9および多孔質層10)に積層されてもよい。
図12は、多孔質膜2aの製造方法の一例を示すフローチャートである。図13は、多孔質膜2aの製造方法を示す図である。例えば、多孔質膜2aの製造は、図12に示すように、上記したステップS11において、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体Lを基材S塗布して乾燥させることにより乾燥膜Dを形成する。乾燥膜Dを形成する際の乾燥は、例えば、溶剤を除去し乾燥膜Dが形成できればよい。例えば、上記したプリベーク及び焼成は後に行ってもよい。
続いて、ステップS16において、図13(A)に示すように、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体LBを乾燥膜Dに塗布して乾燥させることにより、図11(B)に示す乾燥膜DAを形成する。これにより、乾燥膜Dに上に乾燥膜DAが積層される。乾燥膜DAを形成する際の乾燥は、例えば、上記したプリベークを行う。また、上記樹脂がポリアミド酸等のポリイミド前駆体である場合は、プリベーク及び焼成を行う。この場合、乾燥膜D及び乾燥膜DAのイミド化反応を一度に行うことができるため、製造を簡便にすることができる。
続いて、上記したステップS12において、微粒子Bを除去する。例えば、乾燥膜D及び乾燥膜DAを一度にフッ化水素水(HF)で処理する。これにより、乾燥膜D及び乾燥膜DAから微粒子Bが除去され、図9に示す多孔質膜2aを得ることができる。この場合、乾燥膜D及び乾燥膜DAから一度に微粒子Bの除去を行うことができるため、製造を簡便にすることができる。
続いて、上記したステップS13において、エッチング処理を行う。これにより、多孔質膜2aの空隙率を高くすることができる。なお、ステップS13を行うか否かは任意である。
以上のように、本実施形態の圧電素子1C、1Dは、強度が高く、多様な機能(特性)を備えることが可能である。
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図14(A)は、第3実施形態に係る圧電素子を示す図であり、図14(B)は、圧電素子の他の例を示す図である。
図14(A)に示すように、第3実施形態に係る圧電素子1Eは、積層型の圧電素子である。圧電素子1Eは、複数の複合膜7を備える。圧電素子1Eが複数の複合膜7を備える場合、圧電性能を高くすることができ、後述するアクチュエータ16等に好適に用いることができる。圧電素子1Eは、例えば、2つの複合膜7同士が積層されたものである。圧電素子1Eは複数の複合膜7を備える場合、圧電性能を向上させることができる。なお、圧電素子1Eは、2つの複合膜7が積層されたものに限定されず、3つ以上の複合膜7が積層されたものでもよい。また、図14(B)に示す圧電素子1Fのように、複合膜7と形成材料、空隙、空隙率等が異なる複合膜7Aと、が2つ以上積層されてもよい。
なお、圧電素子1Eにおける、複数の複合膜7(複合膜7A)の積層の形態は、特に制限されない。例えば、圧電素子1Eは、単体の複合膜7と単体の複合膜7とが重ね合わせて積層されてもよいし、長尺の帯状体の複合膜7が、断面がジグザグ状になるように折りたたまれて積層されてもよい。また、複数の複合膜7(複合膜7A)は、電極(図示せず)を介して積層されていてもよい。
また、圧電素子1Eは、複合膜7をそれぞれ圧電処理したものを重ね合わせることにより形成してもよいし、複数の複合膜7を積層した複合膜積層体を形成し、この複合膜積層体を圧電処理することにより形成してもよい。中でも、複合膜積層体を圧電処理するのが好ましい。圧電素子1Eは、多孔質膜2と非多孔質膜3との界面の他、積層される複合膜7同士の界面が存在する。上記したように異なる材料との界面では電荷が帯電しやすい傾向にあることから、同サイズの単体型の圧電素子(例、複合膜7が1層の圧電素子1、1A、1B)と比べて、高い圧電性能を得ることが期待できる。従って、複合膜7を積層した後に圧電処理する方が好ましい。
以上のように、本実施形態の圧電素子1E、1Fは、圧電性能に優れるものである。
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図15は、第4実施形態に係るセンサ及び第5実施形態に係るアクチュエータの一例を示す断面図である。
センサ12は、例えば、図1に示す圧電素子1を備える。センサ12は、例えば、圧電素子1の上面に設けられる電極6aと、圧電素子1の下面に設けられる電極6bと、を備える。電極6a及び電極6bは、例えば、導電性材料(例、導電性金属)からなる膜であり、圧電素子1に積層される。電極6a及び電極6bは、それぞれ、配線14a、配線14bに接続される。
センサ12は、例えば、圧電素子1に加えられた圧力(力)に基づいた電圧を発生し、圧力(力)を定性的、あるいは定量的に検出するセンサとして機能する。センサ12は、例えば、感圧センサ、接触センサ、超音波センサ、加速度センサなどの力を検出するセンサとして好適に用いることができる。また、センサ12は、上記したように圧電性能及び耐熱性が高い圧電素子1を備えるため、耐熱性が高い特性を有する。
なお、センサ12は、圧電素子1に代えて、上記した圧電素子(圧電素子1A〜1F)のいずれを備えてもよい。この場合、センサ12は、複数の同一の圧電素子(圧電素子1A〜1F)を備えてもよいし、複数の異なる圧電素子(圧電素子1A〜1F)を備えてもよい。
以上のように、本実施形態のセンサ12は、圧電性能及び耐熱性に優れるものである。
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
アクチュエータ16は、例えば、図15に示すセンサ12と同様の構造である。アクチュエータ16は、例えば、上記した圧電素子1を備える。アクチュエータ16は、例えば、圧電素子1の上面に設けられる電極6aと、圧電素子1の下面に設けられる電極6bと、を備える。電極6a及び電極6bは、それぞれ、配線14a、14bに接続される。配線14a及び配線14bは、例えば、電源(図示せず)に接続される。
アクチュエータ16は、例えば、電源(図示せず)により、圧電素子1に加えられた電圧に基づいて圧電素子1の形状が変化することにより機能する。例えば、アクチュエータ16は、電源(図示せず)により所定の電圧を加えた場合、圧電素子1の形状がX方向、Y方向及びZ方向に変化する。アクチュエータ16は、上記したように圧電性能及び耐熱性が高い圧電素子1を備えるため、耐熱性が高い特性を有する。
なお、アクチュエータ16は、圧電素子1に代えて、上記した圧電素子(圧電素子1A〜1F)のいずれを備えてもよい。また、アクチュエータ16は、複数の圧電素子(圧電素子1A〜1F)を備えてもよい。この場合、アクチュエータ16は、複数の同一の圧電素子(圧電素子1A〜1F)を備えてもよいし、複数の異なる圧電素子(圧電素子1A〜1F)を備えてもよい。アクチュエータ16が複数の圧電素子1(圧電素子1A、圧電素子1B)を備える場合、圧電素子1の形状の変化をより大きくすることができるので、好ましい。
以上のように、本実施形態のアクチュエータ16は、圧電性能及び耐熱性に優れるものである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
(圧電素子の作成)
PTFEディスパージョンAD911(旭硝子社製)とPFAラテックス(ソルベイソレクシス社製、PFAのMFI:7g/分)とを用いて、PFA/(PTFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比率)が60%となるように調整し、更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度3mg/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王製20T)を10mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調製した。
次に、調製したフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔に滴下し、アルミ箔上に均一に伸ばした。続いて、このアルミ箔を80℃で60分間乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱の各工程を行った後、自然冷却し、アルミ箔上に固定された厚さ5μmのPFA/(PTFA+PFA)樹脂膜(非多孔質膜)を得た。
次に、形成したPFA/(PTFA+PFA)樹脂膜に、4倍希釈した上記PFAディスパージョンを滴下し、アルミ箔上に均一に伸ばした後、ポリイミド多孔質膜(空隙率約70%、孔径0.3μm、厚さ40μm)を被せた。その後、80℃で60分間乾燥、250℃で2時間加熱し、フッ素樹脂膜とポリイミド多孔質膜とが接合された複合膜上にアルミ箔が固定された複合体を得た。続いて、この複合体のアルミ箔を塩酸によって溶解除去し、PFA/(PTFA+PFA)樹脂膜とポリイミド多孔質膜とが接合された複合膜を得た。
得られた複合膜をコロナ放電装置で−8kV、90秒間の条件で圧電処理を行い、図1に示す圧電素子1を得た。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。