JP2016079310A - 多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤 - Google Patents

多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤 Download PDF

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薫 石川
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光治 戸張
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Abstract

【課題】フッ酸を使用しないで多孔質膜を与える多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る多孔質膜製造用ワニスは、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体、及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及び/又はその塩により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子とを含有する。本発明に係る多孔質膜の製造方法は、上記多孔質膜製造用ワニスを用いて、未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、上記未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜を得るベーク工程と、上記樹脂−微粒子複合膜から微粒子を取り除く微粒子除去工程と、を有する。本発明に係る多孔質膜製造用空孔形成剤は、上記炭酸カルシウム微粒子を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤に関する。
近年、リチウムイオン電池のセパレータや燃料電池電解質膜、ガス又は液体の分離用膜、低誘電率材料として多孔質ポリイミドの研究がなされている。
例えば、特定の混合溶剤をポリアミド酸溶液に用い多孔質化する方法、親水性ポリマーを含むポリアミド酸を加熱イミド化した後、親水性ポリマーを取り除き多孔質化する方法、シリカ粒子を含有するポリイミドからシリカを取り除き多孔質化する方法等が公知である(特許文献1〜3参照)。
中でも、シリカ粒子を含有するポリイミドからシリカを取り除き多孔質化する方法は均質で緻密な多孔質膜を製造できる有効な手段である。その製造方法において、多孔質化するためには、焼成後のポリイミド膜をフッ酸で処理してシリカ粒子を取り除くことが必要とされる。
また、シリカ粒子を用いた方法について、ポリイミド以外の樹脂を使用する方法も提案されている(特許文献4参照)。特許文献4には、シリカを含む樹脂溶液を基板上にスピンコートして厚さ約10μmの膜を形成した後、フッ酸に浸漬させシリカを除去することで多孔質膜を得る実施例が記載されている。
特開2007−211136号公報 特開2000−044719号公報 特開2012−107144号公報 特開2004−292537号公報
しかしながら、上記シリカ粒子を用いる多孔質膜の製造方法に使用されるフッ酸(HF)は危険性が高いため、その取り扱いに注意を要する、管理された設備を必要とする、廃液処理に費用を要する等の問題があり、フッ酸を使用しない多孔質膜の製造方法が望まれている。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、フッ酸を使用しないで多孔質膜を与える多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、シリカ粒子の代わりに、特定のポリカルボン酸、その酸無水物、特定のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の態様は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体、及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子とを含有する多孔質膜製造用ワニスである。
本発明の第二の態様は、上記多孔質膜製造用ワニスを用いて、未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、上記未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜を得るベーク工程と、上記樹脂−微粒子複合膜から微粒子を取り除く微粒子除去工程と、を有する多孔質膜の製造方法である。
本発明の第三の態様は、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸及び/又はその酸無水物により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を含む多孔質膜製造用空孔形成剤である。
本発明によれば、フッ酸を使用しないで多孔質膜を与える多孔質膜製造用ワニス、それを用いた多孔質膜の製造方法、及び多孔質膜製造用空孔形成剤を提供することができる。
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<多孔質膜製造用ワニス>
本発明の多孔質膜製造用ワニスは、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体、及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)と、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子(B)とを含有する。本発明の多孔質膜製造用ワニスは、上記の通り、シリカ粒子の代わりに炭酸カルシウム微粒子(B)を含有することにより、フッ酸を使用しないで多孔質膜を与える。
〔樹脂(A)〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスに用いる樹脂(A)は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体、及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(以下、「ポリイミド系樹脂」と総称することがある。)である。
[ポリアミド酸]
本発明で用いるポリアミド酸としては、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は1種類を単独で又は二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基がいずれも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本発明で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類、キシレン系混合溶媒等のフェノール系溶剤が挙げられる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。
ポリアミド酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
[ポリイミド]
本発明に用いるポリイミドは、その構造や分子量が限定されることはなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。また、本発明の多孔質膜製造用ワニスが溶剤を含有するものである場合、使用する溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドが好ましい。
溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
ポリイミド及びそのモノマーの各々は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明で用いられるポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的な手段で閉環反応させることによって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミド等が挙げられる。式中、Arはアリール基を示す。本発明のワニスが溶剤を含有するものである場合、これらのポリイミドは、次いで、使用する溶剤に溶解させるとよい。
Figure 2016079310
Figure 2016079310
[ポリアミドイミド]
本発明に用いるポリアミドイミドは、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。また、本発明の多孔質膜製造用ワニスが溶剤を含有するものである場合、使用する溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドが好ましい。
本発明に用いるポリアミドイミドは、通常、(i)無水トリメリット酸等の1分子中にカルボキシル基と酸無水物基とを有する酸とジイソシアネートとを反応させて得られるもの、(ii)無水トリメリット酸クロライド等の上記酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマー(ポリアミドイミド前駆体)をイミド化して得られるもの等を特に限定されることなく使用できる。
上記酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
上記任意のジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられ、また、ジアミノピリジン系化合物も用いることができる。
上記任意のジイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、上記任意のジアミンに対応するジイソシアネート化合物等が挙げられ、具体的には、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリアミドイミドの原料モノマーとしては、上記以外にも、特開昭63−283705号公報、特開平2−198619号公報に一般式として記載されている化合物を使用することもできる。また、上記(ii)の方法におけるイミド化は熱イミド化及び化学イミド化のいずれであってもよい。化学イミド化としては、ポリアミドイミド前駆体等を含む多孔質膜製造用ワニスを用いて形成した未焼成複合膜を、無水酢酸、あるいは無水酢酸とイソキノリンの混合溶媒に浸す等の方法を用いることができる。なお、ポリアミドイミド前駆体は、イミド化前の前駆体という観点では、ポリイミド前駆体ともいえる。
本発明の多孔質膜製造用ワニスに含有させるポリアミドイミドとしては、上述の(1)無水トリメリット酸等の酸とジイソシアネートとを反応させて得られるポリマー、(2)無水トリメリット酸クロライド等の上記酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるポリマー等であってよい。本明細書及び本特許請求の範囲において、「ポリアミドイミド前駆体」は、イミド化前のポリマー(前駆体ポリマー)を意味する。
ポリアミドイミド及びポリアミドイミド前駆体の各々は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。また、ポリアミドイミドについて、上記ポリマー、原料モノマー、及びオリゴマーの各々は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
〔炭酸カルシウム微粒子(B)〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスに用いる炭酸カルシウム微粒子(B)は、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子である。本発明の多孔質膜製造用ワニスが炭酸カルシウム微粒子(B)を含有することにより、得られる膜にはクラックが発生しにくく、また、膜減り(炭酸カルシウム微粒子の除去後に膜厚が減少すること)を効果的に抑制することができる。
炭酸カルシウム微粒子の表面修飾の方法としては、例えば、炭酸カルシウム微粒子を溶解せず、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を溶解する溶媒に、表面未修飾の炭酸カルシウム微粒子を分散させ、かつ、上記ポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を溶解させて、所定温度に保持する方法等が挙げられる。溶媒としては、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、例えば、イソプロピルアルコールが挙げられる。表面処理により、炭酸カルシウム微粒子の表面に上記ポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が吸着する(CaCOとカルボキシル基:−COOH又は−COOとが反応する)。また、炭酸カルシウム微粒子の表面修飾は、例えば、特開2005−48034号公報等に記載の方法でも行うことができる。
ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸及びその酸無水物としては、特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジピコリン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;上記で具体的に例示したポリカルボン酸の酸無水物が挙げられ、多孔質膜の透気度の点で、脂肪族ポリカルボン酸が好ましい。上記ポリカルボン酸の炭素数は、3以上であり、好ましくは4〜20であり、より好ましくは5〜13である。脂肪族ポリカルボン酸における炭素鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。脂肪族ポリカルボン酸としては、アジピン酸が好ましい。
なお、ヒドロキシ酸とは、ヒドロキシ基を有するカルボン酸を意味する。よって、上記ポリカルボン酸には、クエン酸等は包含されない。
炭素数10以上のヒドロキシ酸としては、特に限定されず、例えば、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸等の、炭素数10〜22のヒドロキシ脂肪酸が挙げられ、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。
塩としては、特に限定されず、例えば、アンモニウム塩;第4級アンモニウム塩(例えば、テトラアルキル4級アンモニウム塩);カルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀等の金属の塩等を好適に使用することができる。特にアンモニウム塩が好ましい。
本発明で用いられる炭酸カルシウム微粒子(B)について、炭酸カルシウムの結晶形態は、特に限定されず、カルサイト型、バテライト型、及びアラゴナイト型のいずれの形態でもよい。バテライト型の場合は、真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが分散性の点で好ましい。
使用する炭酸カルシウム微粒子(B)の平均粒径は、例えば、100〜2000nmであることが好ましく、100〜1500nmであることがより好ましく、100〜1200nmであることが更により好ましい。これらの条件を満たすことで、微粒子を取り除いて得られる多孔質膜の孔径を揃えることができるため、セパレータに印加される電界を均一化できる点で、好ましい。
炭酸カルシウム微粒子(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明の多孔質膜製造用ワニスにおいて、炭酸カルシウム微粒子(B)の含有量は、樹脂(A)と炭酸カルシウム微粒子(B)との合計に対して65体積%以上であることが好ましい。上記範囲内であると、得られる多孔質膜の空孔率が下がりにくく、また、得られる未焼成複合膜のベーク時の収縮率が高くなりにくい。
樹脂(A)と炭酸カルシウム微粒子(B)との合計に対する炭酸カルシウム微粒子(B)の含有量は、上限値としては、95体積%が好ましく、90体積%がより好ましく、下限値としては、65体積%が好ましく、70体積%がより好ましく、72体積%が更に好ましい。上記微粒子の含有量の上限が上記範囲内であると、微粒子同士が凝集しにくく、また、表面にひび割れ等が生じにくいため、安定して電気特性の良好な多孔質膜を形成することができる。
なお、本明細書及び本特許請求の範囲において、体積%及び体積比は、25℃における値である。また、上記樹脂(A)の量は、樹脂(A)の固形分の量である。
樹脂(A)と炭酸カルシウム微粒子(B)とを含有する未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜とした場合において、ポリイミド又はポリアミドイミドに対する炭酸カルシウム微粒子(B)の比率が2〜6(質量比)となるように、炭酸カルシウム微粒子(B)とポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体及び/又はポリアミドイミドからなる樹脂とを混合することが好ましく、3〜5(質量比)とすることがより好ましい。また、樹脂−微粒子複合膜とした際にポリイミド又はポリアミドイミドに対する炭酸カルシウム微粒子(B)の体積比が1.5〜4.5となるように微粒子とポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体及び/又はポリアミドイミドからなる樹脂とを混合することが好ましく、1.8〜3(体積比)とすることがより好ましい。樹脂−微粒子複合膜とした際にポリイミド又はポリアミドイミドに対する炭酸カルシウム微粒子(B)の質量比又は体積比が上記下限値以上であれば、セパレータとして適切な密度の孔を得ることができ、上記上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題が生じにくく安定して成膜しやすい。
また、本発明の多孔質膜製造用ワニスにおいて、樹脂(A)の固形分と炭酸カルシウム微粒子(B)との合計の含有量は、後述の多孔質膜製造用ワニス中の固形分全体(後述の溶剤以外の各成分全体)に対し、例えば、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に99〜100質量%となるよう調整することが各種製造工程の安定性の点で更により好ましい。
〔界面活性剤(C)〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスは、更に界面活性剤を含有してもよい。本発明の多孔質膜製造用ワニスは、界面活性剤(C)を含有するものであることにより、はじきを生じにくい未焼成複合膜やしわを生じにくい樹脂−微粒子複合膜を与えることができる。
界面活性剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
界面活性剤(C)としては、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、ナフタレンスルホン酸、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサジデシルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオール;フッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、アニオン界面活性剤が好ましく、アルキルスルホン酸がより好ましい。
本発明の多孔質膜製造用ワニスにおいて、界面活性剤(C)の含有量は、例えば、多孔質膜製造用ワニスにおける全固形分に対し0.001〜5質量%であることが好ましく、0.005〜4質量%であることがより好ましく、0.01〜3質量%であることが更により好ましく、0.015〜2質量%であることが特に好ましい。
〔溶剤(D)〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスは、更に溶剤(D)を含有するものであってもよい。溶剤(D)としては、ポリイミド系樹脂を溶解することができ、炭酸カルシウム微粒子(B)を溶解しないものが好ましい。このような溶剤としては、特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として例示したもの等が挙げられる。
本発明の多孔質膜製造用ワニスにおける溶剤(D)としては、樹脂(A)と別に配合するものであってもよいし、樹脂(A)として、市販されているワニスを用いる場合、該市販品のワニスに含有されている溶剤をそのまま用いるものであってもよいし、後者であって更に樹脂(A)と別に配合する溶剤との合計であってもよい。
溶剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明の多孔質膜製造用ワニスにおいて、溶剤(D)の含有量は、上記多孔質膜製造用ワニス全体に対し、60質量%以上であること(即ち、上記多孔質膜製造用ワニスにおける固形分濃度が40質量%以下となる量であること)が塗布性の点で好ましい。上記溶剤の含有量は、上記多孔質膜製造用ワニスにおける固形分濃度の上限がより好ましくは35質量%、更により好ましくは30質量%となる量であり、下限がより好ましくは10質量%、更により好ましくは15質量%、特に好ましくは20質量%となる量である。溶剤の含有量(又は固形分濃度)が上記範囲内であると、塗布性が良くなりやすい。
〔多孔質膜製造用ワニスの調製〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスの調製は、例えば、樹脂(A)を含み、炭酸カルシウム微粒子(B)を分散したワニスを製造することにより行う。具体的には、本発明の多孔質膜製造用ワニスの調製は、例えば、炭酸カルシウム微粒子(B)を予め分散した溶剤(D)と樹脂(A)とを任意の比率で混合する方法、炭酸カルシウム微粒子(B)を予め分散した溶剤(D)中で樹脂(A)を重合する方法等により、行うことができる。後者の方法としては、例えば、炭酸カルシウム微粒子(B)を予め分散した溶剤(D)中において、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとする方法、ポリアミドイミドの原料モノマー(単量体成分)及び/又はそのオリゴマーを重合してポリアミドイミド前駆体(前駆体ポリマー)とするか、更にイミド化してポリアミドイミドとする方法等が挙げられる。界面活性剤(C)を含有する本発明の多孔質膜製造用ワニスを調製する場合、界面活性剤(C)を添加する方法は、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム微粒子(B)とともに界面活性剤(C)を予め溶剤(D)に分散する方法が挙げられる。
<多孔質膜の製造方法>
本発明の多孔質膜の製造方法は、本発明の多孔質膜製造用ワニスを用いて、未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、上記未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜を得るベーク工程と、上記樹脂−微粒子複合膜から微粒子を取り除く微粒子除去工程と、を有する。
〔未焼成複合膜の製造(未焼成複合膜形成工程)〕
以下、本発明における未焼成複合膜の形成方法について説明する。未焼成複合膜形成工程においては、本発明の多孔質膜製造用ワニスを用いて、未焼成複合膜を形成する。その際、未焼成複合膜は、基板上に形成してもよいし、上記未焼成複合膜とは異なる支持体上に形成してもよい。未焼成複合膜は、例えば、基板上又は上記支持体上に、本発明の多孔質膜製造用ワニスを塗布することにより、形成することができる。
基板としては、例えば、ガラス板;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の樹脂からなるプラスチックシート;ステンレス板、アルミニウム板等の金属板等が挙げられ、PETフィルム、SUS基板、ガラス基板が好ましく、PETフィルム、SUS基板がより好ましい。
未焼成複合膜は、また、支持体上に形成することもできる。支持体としては、例えば、セルロース系樹脂、不織布(例えば、ポリイミド製不織布等。繊維径は、例えば、約50nm〜約3000nmである。)等の繊維系材料からなる支持体、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
支持体上に未焼成複合膜を形成する場合、通常、該支持体上に多孔質膜が形成され、該支持体を剥離することなく多孔質膜と一体となった積層膜として使用することができる。支持体を用いる場合、基板上に支持体を載置した上に(即ち、基板及び支持体上に)未焼成複合膜を形成してもよいし、支持体によっては、基材を用いる必要がなく、支持体上に未焼成複合膜を形成できる場合もある。
本明細書及び本特許請求の範囲において、「支持体」は、このように多孔質膜と一体化して積層膜を構成するものを意味し、この点で、原則として最終的に多孔質膜から剥離される基板とは区別される。
未焼成複合膜は、例えば、基板上又は支持体上に、本発明の多孔質膜製造用ワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜100℃(好ましくは0〜90℃)、好ましくは常圧下10〜100℃(更に好ましくは10〜90℃)で乾燥することにより、例えば膜厚1〜10μm(好ましくは1〜8μm)で形成することができる。
乾燥後、更に同様の多孔質膜製造用ワニスを用いて複数の層による未焼成複合膜を形成してもよい。
本発明の多孔質膜の製造方法において、更に、上記未焼成複合膜又は上記未焼成複合膜と上記支持体との積層膜をベークして樹脂−微粒子複合膜を得るベーク工程に入る。上記未焼成複合膜又は上記未焼成複合膜と支持体とを基板上に形成した場合、そのままベークしてもよいし、ベーク工程に入る前に上記未焼成複合膜又は上記未焼成複合膜を含む積層膜を基板から剥離してもよい。上記支持体を用いた場合、上述のように、上記未焼成複合膜を支持体から剥離する必要はない。
なお、積層膜形成において、各未焼成複合膜の形成に用いられる多孔質膜製造用ワニスの組成又は組成中の(A)成分が同じである場合は、積層膜は実質1層(単層)となるが、本明細書においては積層膜という。
未焼成複合膜又は未焼成複合膜を含む積層膜を基板から剥離する場合、膜の剥離性を更に高めるために、予め離型層を設けた基板を使用することもできる。基板に予め離型層を設ける場合は、ワニスの塗布の前に、基板上に離型剤を塗布して乾燥あるいは焼き付けを行う。ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系、フッ素系又はシリコーン等の公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。上記乾燥した未焼成複合膜を基板から剥離する際、未焼成複合膜の剥離面にわずかながら離型剤が残存するため、ベーク中の変色や電気特性への悪影響の原因ともなるので、極力取り除くことが好ましい。離型剤を取り除くことを目的として、基板より剥離した未焼成複合膜又は未焼成複合膜を含む積層膜を、有機溶剤を用いて洗浄する洗浄工程を導入してもよい。
一方、未焼成複合膜の形成に、離型層を設けず基板をそのまま使用する場合は、上記離型層形成の工程や上記洗浄工程を省くことができる。
〔樹脂−微粒子複合膜の製造(ベーク工程)〕
上記未焼成複合膜に加熱による後処理(ベーク)を行ってポリイミド系樹脂と微粒子とからなる複合膜(樹脂−微粒子複合膜)とする。上記未焼成複合膜形成工程において、支持体上に上記未焼成複合膜を形成した場合には、ベーク工程において、上記支持体も上記未焼成複合膜とともにベークすることとなる。
本工程におけるベークは、乾燥及び焼成を含む概念であり、用いる樹脂(A)の種類に応じて乾燥のみ又は乾燥及び焼成を行うことができ、具体的には、樹脂(A)としてポリイミド又はポリアミドイミドを用いる場合、焼成は特に行う必要がない。
ベーク工程におけるベーク温度としては、未焼成複合膜及び支持体の構造や縮合剤の有無によっても異なるが、乾燥を行う場合、常圧又は真空下で0〜200℃℃が好ましく、常圧下10〜100℃がより好ましい。
ベーク工程において行う乾燥としては、例えば、基板上又は支持体上に本発明の多孔質膜製造用ワニスを塗布して未焼成複合膜を形成した場合、常圧又は真空下で50〜200℃(好ましくは0〜100℃)、より好ましくは常圧下60〜200℃(更に好ましくは65〜90℃)で乾燥することができる。
ベーク工程におけるベーク温度としては、未焼成複合膜及び縮合剤の有無によっても異なるが、焼成を行う場合、120〜375℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。また、微粒子に、有機材料を使用するときは、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。樹脂(A)としてポリアミド酸を用いる場合、ベーク工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。
焼成条件は、例えば、室温〜375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な乾燥−熱イミド化法を用いることもできる。基板上に未焼成複合膜を形成し、上記基板から上記未焼成複合膜を一旦剥離する場合は、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
できあがった樹脂−微粒子複合膜の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。どのような平均膜厚が好ましいかは、樹脂−微粒子複合膜又は多孔質膜の用途によって異なるが、例えば、セパレータ等に使用する場合は、1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。
〔樹脂−微粒子複合膜の多孔化(微粒子除去工程)〕
樹脂−微粒子複合膜から、炭酸カルシウム微粒子(B)を適切な方法を選択して除去することにより、多孔質膜を再現性よく製造することができる。例えば、樹脂−微粒子複合膜を低濃度(例えば、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%)の酸等により処理して、炭酸カルシウム微粒子(B)を溶解除去することが可能である。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸が挙げられ、取り扱いが容易である点、微粒子除去工程後に除去しやすい点等から、塩酸、クエン酸等が好ましい。
本発明の製造方法で作製する膜の全体の膜厚は特に限定されるものではないが、樹脂(A)としてポリアミド酸及び/又はポリイミドを用いた場合、0.5μm以上500μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることが更に好ましく、3μm以上10μm以下が特に好ましく、また、樹脂(A)としてポリアミドイミド前駆体及び/又はポリアミドイミドを用いた場合、上限値として、50μmが好ましく、30μmがより好ましく、15μmが更により好ましく、下限値として、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記の膜厚は、樹脂−微粒子複合膜の測定時と同様、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。
〔樹脂除去工程〕
本発明の多孔質膜の製造方法は、微粒子除去工程前に、樹脂−微粒子複合膜のポリイミド系樹脂からなる樹脂部分の少なくとも一部を除去するか、又は、微粒子除去工程後に多孔質膜の少なくとも一部を除去する樹脂除去工程を有してもよい。微粒子除去工程前に、樹脂−微粒子複合膜の樹脂部分の少なくとも一部を除去することにより、続く微粒子除去工程で微粒子が取り除かれ空孔が形成された場合に、上記樹脂部分の少なくとも一部を除去しないものに比べて、最終製品の多孔質膜の開孔率を向上させることが可能となる。また、微粒子除去工程後に多孔質膜の少なくとも一部を除去することにより、上記多孔質膜の少なくとも一部を除去しないものに比べて、最終製品の多孔質膜の開孔率を向上させることが可能となる。
上記の樹脂部分の少なくとも一部を除去する工程、あるいは、多孔質膜の少なくとも一部を除去する工程は、通常のケミカルエッチング法若しくは物理的除去方法、又は、これらを組合せた方法により行うことができる。
ケミカルエッチング法としては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として、例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01〜20質量%である。
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルム又は芳香族ポリアミドイミドフィルムの表面に30〜100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルムの表面を処理する方法等が使用できる。
上記した方法は、微粒子除去工程前又は微粒子除去工程後のいずれの樹脂除去工程にも適用可能であるので好ましい。
一方、微粒子除去工程後に行う樹脂除去工程にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、多孔質膜を台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、多孔質膜の表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔質膜が台紙フィルムから引きはがされる。
<多孔質膜の用途>
本発明の製造方法で作製することができる多孔質膜は、リチウムイオン電池のセパレータや燃料電池電解質膜、ガス又は液体の分離用膜、低誘電率材料として使用することが可能である。上記多孔質膜は、ニッケルカドミウム、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池用セパレータとして使用することが可能であるが、リチウムイオン二次電池用多孔質セパレータとして使用することが特に好ましい。特に、リチウムイオン電池のセパレータとして使用する場合、本発明に係る多孔質膜は均質な薄膜形成が可能なので、上記未焼成複合膜形成工程で未焼成複合膜を積層する場合も、本発明に係る多孔質膜製造用ワニスにより形成された面をリチウムイオン電池の負極面側とすることにより、電池性能を向上させることができる。
〔二次電池〕
本発明の多孔質膜製造用ワニスを用いて得られる多孔質膜を使用することができる二次電池は、負極と正極との間に、電解液と該多孔質膜からなるセパレータとが配置される。
二次電池の種類や構成は、何ら限定されるものではない。正極とセパレータと負極とが順に上記条件を満たすように積層された電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となった構成であれば、ニッケルカドミウム、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の公知の二次電池に、特に限定されることなく使用することができる。
二次電池の負極は、負極活物質、導電助剤及びバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造をとることができる。例えば、負極活物質として、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化カドミウムを、ニッケル水素電池の場合は水素吸蔵合金を、それぞれ用いることができる。また、リチウムイオン二次電池の場合は、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が採用できる。このような、活物質として、例えば、炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金等が挙げられる。
負極を構成する導電助剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えば、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。集電体には、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることが可能である。
また、正極は、正極活物質、導電助剤及びバインダーからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造とすることができる。例えば、正極活物質としては、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化ニッケルを、ニッケル水素電池の場合は水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケルを、それぞれ用いることができる。他方、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn0.5Ni0.5、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMn、LiFePO、LiCo0.5Ni0.5、LiAl0.25Ni0.75等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔等を用いることが可能である。
電解液としては、例えば、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池の場合には、水酸化カリウム水溶液が使用される。リチウムイオン二次電池の電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した構成とされる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
外装材は、金属缶又はアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本発明の製造方法で作製した多孔質膜からなるセパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
<多孔質膜製造用空孔形成剤>
本発明の多孔質膜製造用空孔形成剤は、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸及び/又はその酸無水物により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を含む。本発明の多孔質膜製造用空孔形成剤を含有する多孔質膜製造用ワニスを用いることにより、フッ酸を使用しない多孔質膜を製造することができる。また、得られる膜にはクラックが発生しにくく、また、膜減り(炭酸カルシウム微粒子の除去後に膜厚が減少すること)を効果的に抑制することができる。
本発明の多孔質膜製造用空孔形成剤に含まれる上記炭酸カルシウム微粒子は、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸及び/又はその酸無水物により表面修飾されたものである点を除き、上述の炭酸カルシウム微粒子(B)と同一である。上記炭酸カルシウム微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜7、比較例1〜3>
[炭酸カルシウム微粒子の表面修飾]
イソプロピルアルコール50gに表面未修飾の炭酸カルシウム微粒子(バテライト型、平均粒径700nm)10gを添加し、氷水で冷やしながらスターラーを用いて1時間撹拌し、炭酸カルシウム微粒子のイソプロピルアルコール懸濁液を調製した。一方、表1に示す表面処理剤0.2gをイソプロピルアルコール23gに添加し、10分間撹拌して完全に溶解させて、表面処理剤のイソプロピルアルコール溶液を調製した。上記イソプロピルアルコール懸濁液と上記イソプロピルアルコール溶液とを常温で2時間撹拌し、表面修飾された炭酸カルシウム微粒子とイソプロピルアルコールとを含むスラリを得た。桐山ロート(桐山製作所製)と捕集粒子径1μmのセルロース製濾紙とを用いて、上記スラリを濾過した後、濾物を120℃で1時間乾燥させて、表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を得た。
[ポリアミドイミド含有ワニス(多孔質膜製造用ワニス)の調製]
上記で表面修飾された炭酸カルシウム微粒子7.2g又は表面未修飾の炭酸カルシウム微粒子7.2gをN−メチル−2−ピロリドン10.8gに添加し、ホモジナイザーを用いて、粉砕パワー20%で40秒間、次いで、粉砕パワー30%で40秒間均質化を行い、微粒子分散液を得た。一方、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液6g(ポリアミドイミド(質量平均分子量:約30,000、無水トリメリット酸及びo−トリジンジイソシアネートを含む重合成分から合成)1.8gを含有)をN−メチル−2−ピロリドン6gで希釈し、ポリアミドイミド溶液を得た。上記微粒子分散液と上記ポリアミドイミド溶液とを自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)に入れて、2000rpmで5分間、次いで2000rpmで5分間、混合して、固形分濃度30質量%のポリアミドイミド含有ワニスを調製した。
[多孔質膜の作製と評価]
上記のポリアミドイミド含有ワニスを、基材であるPETフィルム上にアプリケーターを用いて塗布し、未焼成複合膜を形成した。この未焼成複合膜をオーブン中に入れ、70℃で15分間乾燥した後、焼成炉に移し替え、200℃で15分間焼成して、樹脂−微粒子複合膜を得た。その後、基材からこの樹脂−微粒子複合膜を剥離した。この樹脂−微粒子複合膜を10質量%塩酸中に5分間浸漬することで、膜中に含まれる炭酸カルシウム微粒子を除去した後、水洗・乾燥して、ポリアミドイミド多孔質膜を得た。
(膜厚)
上記乾燥後、上記焼成後、又は上記炭酸カルシウム微粒子除去後の膜の厚さを、マイクロメータを用いて測定した。結果を表1に示す。
(収縮率)
膜の面方向の寸法を上記乾燥前及び上記炭酸カルシウム微粒子除去後に測定し、上記乾燥前の寸法に対する、上記炭酸カルシウム微粒子除去後の寸法の比率(収縮率)を計算した。結果を表1に示す。
(透気度)
炭酸カルシウム微粒子除去後の多孔質膜を5cm角に切り出して、透気度測定用のサンプルとした。ガーレー式デンソメーター(東洋精機社製)を用いて、JIS P 8117に準じて、100mlの空気が上記サンプルを通過する時間を測定した。結果を表1に示す。
(引張強度)
炭酸カルシウム微粒子除去後の多孔質膜を1cm×5cmの大きさに切り出して短冊状のサンプルを得た。このサンプルの破断時の応力(MPa)を、RTC−1210A TENSILON(ORIENTEC社製)を用いて評価した。結果を表1に示す。
(引張伸度)
炭酸カルシウム微粒子除去後の多孔質膜から、IEC450規格に従った形状のダンベル型試験片を打ち抜いて、引張伸度測定用の試験片を得た。得られた試験片を用いて、チャック間距離20mm、引張速度2mm/分の条件で、万能材料試験機(TENSILON、オリエンテック社製)によって、多孔質膜の破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
<実施例8>
表面修飾された炭酸カルシウム微粒子として、12−ヒドロキシステアリン酸で処理した炭酸カルシウム微粒子(カルサイト型、平均粒子径約1μm)を用いた他は、実施例1と同様にして固形分濃度30質量%のポリアミドイミド含有ワニスを調製し、多孔質膜の作製と評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016079310
*比較例1では、上記乾燥後、膜にクラックが生じ、各種測定を行うことができなかった。
表1から明らかな通り、ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を用いた場合、膜減りが抑制されることが確認された。また、特に脂肪族ポリカルボン酸により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を用いた場合、透気度が向上することが確認された。
<実施例9>
[炭酸カルシウム微粒子の表面修飾]
実施例1と同様にして、アジピン酸で表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を得た。
[ポリアミドイミド含有ワニス(多孔質膜製造用ワニス)の調製]
界面活性剤(アルキルスルホン酸の20質量%水溶液)0.09gをN−メチル−2−ピロリドン10.8gに添加し、10分間撹拌して完全に溶解させて、界面活性剤のN−メチル−2−ピロリドン溶液を調製した。アジピン酸で表面修飾された炭酸カルシウム微粒子7.2gを上記N−メチル−2−ピロリドン溶液に添加し、ホモジナイザーを用いて、粉砕パワー20%で40秒間、次いで、粉砕パワー30%で40秒間均質化を行い、界面活性剤を含有する微粒子分散液を得た。一方、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液6g(ポリアミドイミド1.8gを含有)をN−メチル−2−ピロリドン6gで希釈し、ポリアミドイミド溶液を得た。上記微粒子分散液と上記ポリアミドイミド溶液とを自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)に入れて、2000rpmで5分間、次いで2000rpmで5分間、混合して、固形分濃度30質量%のポリアミドイミド含有ワニスを調製した。
[多孔質膜の作製と評価]
実施例1と同様にして、ポリアミドイミド多孔質膜を得、このポリアミドイミド多孔質膜について、膜厚、透気度、引張強度、及び引張伸度を測定し、収縮率を計算した。結果を表2に示す。
(はじき)
未焼成複合膜の表面を目視で観察して、はじきの個数を数えた。実施例1についても、同様にして、はじきの個数を数えた。結果を表2に示す。
(しわ)
乾燥後の膜の表面を目視で観察して、しわの有無を確認した。実施例1についても、同様にして、しわの有無を確認した。結果を表2に示す。
Figure 2016079310
表2から明らかな通り、界面活性剤を用いた場合、はじき及びしわが抑制されることが確認された。
<実施例10及び11>
[評価用コイン電池の作製及び評価]
電解液として1mol/dmのLiPF(溶媒としては、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(混合体積比3:7)を使用した。)を用い、炭素負極電極、実施例1又は8で作製した多孔質膜からなるセパレータ、及びLiCoO正極電極を組み入れた直径20mmの評価用コイン電池を得た。なお、実施例10では、実施例1で作製した多孔質膜からなるセパレータを用い、実施例11では、実施例8で作製した多孔質膜からなるセパレータを用いた。
恒温槽内に置いた上記各評価用コイン電池を用いて、充電及び放電を行った。充電は、4.2Vまで0.2C及び1Cの電流密度にてそれぞれ行い、その後、放電は、2.75Vまで0.2C及び1Cの電流密度にてそれぞれ行った。実施例10及び11のいずれにおいても、3サイクル目の放電容量は、電流密度が0.2Cの場合、2.2mAhであり、電流密度が1Cの場合、2.1mAhであった。

Claims (5)

  1. ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド前駆体、及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、
    ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸、その酸無水物、炭素数10以上のヒドロキシ酸、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子とを含有する多孔質膜製造用ワニス。
  2. 前記ポリカルボン酸が脂肪族ポリカルボン酸である請求項1に記載の多孔質膜製造用ワニス。
  3. 更に界面活性剤を含有する請求項1又は2に記載の多孔質膜製造用ワニス。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の多孔質膜製造用ワニスを用いて、未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、
    前記未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜を得るベーク工程と、
    前記樹脂−微粒子複合膜から微粒子を取り除く微粒子除去工程と、
    を有する多孔質膜の製造方法。
  5. ヒドロキシ酸以外の炭素数3以上のポリカルボン酸及び/又はその酸無水物により表面修飾された炭酸カルシウム微粒子を含む多孔質膜製造用空孔形成剤。
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