[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1(A)は第1実施形態に係る積層体の一例を示す断面図であり、図1(B)は積層体の他の例を示す断面図である。以下の説明において、適宜、図1などに示すXYZ直交座標系を参照する。このXYZ直交座標系は、X方向およびY方向が水平方向(横方向)であり、Z方向が鉛直方向である。また、各方向において、適宜、矢印の先端と同じ側を+側(例、+Z側)、矢印の先端と反対側を−側(例、−Z側)と称す。例えば、鉛直方向(Z方向)において、上方が+Z側であり、下方が−Z側である。また、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
図1に示すように、積層体1は、多孔質膜2と、非多孔質膜3と、導電膜4と、を備える。積層体1は、配線基板用積層体として好適に用いることができる。
多孔質膜2は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成される。中でも、多孔質膜2は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることが好ましい。多孔質膜2がこのようなイミド系樹脂により形成される場合、強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れた積層体1を得ることができる。
多孔質膜2は、複数の空隙5を有する。積層体1は、例えば、複数の空隙5により伝送損失が低減される。空隙5の形状は、球状または球状が連なった形状である。空隙5の形状が球状または球状が連なった形状である場合、多孔質膜2の強度を維持しつつ空隙率を高くすることができる。空隙5は、少なくとも一部の空孔6同士が接続して、三次元的に連通した空孔を形成する。空孔6は球状の曲面を有する微小な孔であり、空孔6同士が接続した部分に連通孔が形成されている。また、例えば、空隙5により、多孔質膜2の上面(+Z側の面)と、下面(−Z側の面)とを連通した貫通孔が形成される。
空隙5の内径(空孔6の内径)は、特に制限されないが、例えば、10nm以上50μm以下、好ましくは50nm以上10μm以下である。空隙5の内径は、例えば、多孔質膜2全体において、均一である。空隙5の内径は、後述する多孔質膜2を製造する際に用いられる微粒子の粒径により、適宜調整することができる。なお、空隙5の内径は、多孔質膜2全体において、均一でもよいし、不均一でもよい。
多孔質膜2の空隙率は、例えば、45%以上90%以下である。多孔質膜2の空隙率が上記範囲である場合、伝送損失がより低い積層体1を得ることができる。多孔質膜2の空隙率は、例えば、多孔質膜2の厚さ方向(Z方向)及び面方向(X方向、Y方向)において、均一に設定される。なお、多孔質膜2の空隙率は、均一でもよいし、不均一でもよい。
なお、空隙率は、例えば、単位体積あたりの空隙の割合を示す。空隙率は、例えば、以下の式(1)によって算出される。
空隙率(%)={[多孔質膜2の重量(g)/多孔質膜2の体積(cm3)]/樹脂の比重(g/cm3)}×100・・・(1)
多孔質膜2の空隙率は、多孔質膜2の製造に用いる材料(例、樹脂材料、可塑剤、無機又は有機フィラーの種類や含有量)、製造方法などにより、制御できる。例えば、後述する多孔質膜2を製造する際に用いられる微粒子の粒径や含有量を適宜調整することにより、所望の空隙率とすることができる。
多孔質膜2の膜厚は、特に限定されないが、10μm以上500μm以下とすることができ、好ましくは15μm以上250μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。多孔質膜2の膜厚が上記範囲である場合、強度に優れ、加工時における、膜の伸び、皺、ピンホール、膜の破断を抑制することができ、且つ伝送損失が低い積層体1を得ることができる。
多孔質膜2の周波数1GHzにおける比誘電率は、例えば、2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。また、多孔質膜2の周波数10GHzにおける比誘電率は、例えば、2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。多孔質膜2の比誘電率が上記範囲である場合、伝送損失を、より低減することができる。
なお、本明細書において、多孔質膜2(多孔質膜2a)の比誘電率は、空洞共振器法装置(株式会社エーイーティー社製)を用い、空洞共振器振動法により、温度27度、湿度50%の条件において、所定の周波数で測定した値を示す。
非多孔質膜3は、非多孔質の膜である。非多孔質膜3は、例えば、非多孔質の樹脂膜である。非多孔質膜3は、多孔質膜2と導電膜4との間に配置される。非多孔質膜3は、例えば、多孔質膜2と導電膜4とを接着する接着剤でもよい。導電膜4と非多孔質膜3との間は、例えば、平坦な面に形成される。この場合、非多孔質膜3と導電膜4との密着性がより向上する。非多孔質膜3は、例えば、多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層される。なお、以下の説明において、非多孔質膜3が多孔質膜2(多孔質膜2a(図11参照))の少なくとも一方の面に積層された膜を「複合膜7」と称する場合がある。
なお、図1(A)に示す非多孔質膜3は、多孔質膜2の一方の面の全体に積層されるが、非多孔質膜3は、多孔質膜2の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層されていればよい。
非多孔質膜3の形成材料は、特に制限されず、例えば、公知の樹脂材料により形成される。中でも、非多孔質膜3は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成されるのが好ましく、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることがより好ましい。非多孔質膜3がイミド系樹脂により形成される場合、強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れた積層体1を得ることができる。
なお、非多孔質膜3は非多孔質の樹脂膜でなくてもよく、例えば、後に図12で説明する積層体1Dのように、導電膜4として形成されてもよい。
非多孔質膜3と多孔質膜2とは、例えば、同一の材料で形成される。非多孔質膜3と多孔質膜2とが同一の材料で形成される場合、多孔質膜2と非多孔質膜3との間の接着性がより向上する。また、この場合、耐熱性をより向上させることができ、且つ、積層体1の材料の種類を少なくすることができるため、積層体1の製造を簡便にすることができる。なお、非多孔質膜3と多孔質膜2とは、異なる材料で形成されてもよい。
非多孔質膜3の膜厚は、特に制限されず、例えば、20μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上〜7μm以下である。非多孔質膜3の膜厚が、上記範囲である場合、伝送損失を低減することができ、且つ容易に製膜することができる。
なお、図1(B)に示す積層体1Aのように、非多孔質膜3は、多孔質膜2の両方の面(+Z側の面および−Z側の面)に積層されてもよい。この場合、多孔質膜2の+Z側に積層される非多孔質膜3と−Z側に積層される非多孔質膜3とは、同一の材料により形成されてもよいし、異なる材料により形成されてもよい。多孔質膜2の+Z側に積層される非多孔質膜3と−Z側に積層される非多孔質膜3とが同一の材料により形成される場合、耐熱性を向上させることができ、且つ、積層体1の材料の種類を少なくすることができるため、積層体1の製造を簡便にすることができる。また、図1(A)等に示す非多孔質膜3は1層であるが、非多孔質膜3は2層以上でもよい。
導電膜4は、多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層される。導電膜4は、例えば、多孔質膜2の上面(+Z側の面)に積層される。導電膜4は、例えば、多孔質膜2の上面(+Z側の面)に、非多孔質膜3を介して積層される。導電膜4は、特に限定されず、任意の導電性材料を用いることができる。導電膜4は、例えば、銅箔、ステンレス泊、アルミニウム泊、ニッケル泊などの金属泊が用いられる。また、導電膜4の表面は、粗面化処理や防錆処理がされていてもよい。導電膜4の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm以上100μm以下程度とすることができる。なお、導電膜4は、図1(B)に示す積層体1Aのように、多孔質膜2の両方の面に積層されてもよい。
次に、図2〜図7を参照して、実施形態に係る積層膜の製造方法を説明する。図2、図3及び図7(A)は、実施形態に係る積層膜の製造方法の一例を示すフローチャートである。図4〜図6及び図7(B)は、積層膜の製造方法の一例を示す断面図である。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、製造方法を限定するものではない。図2〜図7では、後述するエッチング処理を行った多孔質膜2を製造する方法を例として示す。
本実施形態の積層体1の製造方法は、例えば、図2に示すように、ステップS1において、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により多孔質膜を形成する。
例えば、図3に示すステップS11において、微粒子を含ませた樹脂の液体を基材に塗布して乾燥させることにより乾燥膜を形成する。例えば、まず、所定の樹脂材料、微粒子及び溶剤を含有する液体(塗布液L)を準備する。所定の樹脂材料としては、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体ポリマー、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂の前駆体ポリマー、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つが挙げられる。中でも、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つが好ましい。溶剤としては、使用される樹脂材料を溶解可能な任意の有機溶剤が用いられる。
上記した塗布液Lは、例えば、微粒子を予め分散した溶剤と、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドの少なくとも一つと、を任意の比率で混合することにより調製される。また、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを重合して調製されてもよい。例えば、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
塗布液Lの粘度は、最終的に300〜5000cPとすることが好ましく、400〜3000cPの範囲がより好ましく、600〜2500cPの範囲がさらに好ましい。塗布液Lの粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。塗布液L中の全成分のうち、溶剤の含有量は、例えば、50〜95質量%であり、好ましくは60〜85質量%である。
例えば、塗布液Lは、樹脂材料と微粒子とが10:90〜50:50の体積比となるように含有される。なお、各樹脂材料の体積は、各樹脂材料の質量にその比重を乗じて求めた値が用いられる。この場合において、塗布液Lの体積全体を100としたときに微粒子の体積が50以上であれば、粒子が均一に分散し、また、微粒子の体積が90以内であれば粒子同士が凝集することもなく分散する。このため、多孔質膜2に空隙5を均一に形成することができる。また、微粒子の体積比率がこの範囲内であれば、乾燥膜(例、乾燥膜D)を成膜する際の剥離性を確保することができる。
上記の塗布液Lには、微粒子とポリアミド酸又はポリイミドを乾燥して乾燥膜とした場合において、微粒子の材質が後述の無機材料の場合は、例えば、微粒子/ポリイミドの比率が2〜6(質量比)、好ましくは3〜5(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。微粒子の材質が後述の有機材料の場合は、例えば微粒子/ポリイミドの比率が1〜3.5(質量比)、好ましくは1.2〜3(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。例えば、樹脂材料に対して微粒子を72体積%(〜2.6体積倍)にする場合、質量比でシリカ(微粒子)/ポリイミド=80/20、あるいは、ポリメタクリル酸メチル樹脂(微粒子)/ポリイミド=(68/32)〜2.1倍に設定してもよい。質量比が上記範囲である場合、多孔質膜として適切な空隙率とすることでき、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。
また、乾燥膜とした場合において、例えば、微粒子/ポリイミドの体積比率が1.5〜4.5、好ましくは1.8〜3(体積比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合する。体積比が上記範囲である場合、配線基板用積層体として適切な空隙率とすることでき、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。乾燥膜とした際に微粒子/ポリイミドの質量比又は体積比が下限値以上であれば、多孔質膜として適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。ポリアミド酸又はポリイミドのかわりに樹脂材料がポリアミドイミド又はポリアミドとなる場合も、質量比は上記と同様である。
以下、塗布液Lを構成する上記好適な樹脂材料、微粒子及び溶剤について具体的に説明する。
<ポリアミド酸>
ポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本実施形態で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜60℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜7万cPの範囲である。
<ポリイミド>
本実施形態に用いるポリイミドは、塗布液Lに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
本実施形態で用いられる、有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
<ポリアミドイミド>
本実施形態に用いるポリアミドイミドは、塗布液Lに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメッと酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとから得られるポリアミドが好ましく、特に芳香族ポリアミドが好ましい。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びジフェン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<微粒子>
微粒子は、例えば真球率が高いものが用いられる。このような微粒子は、多孔質膜における孔の内面に曲面を形成しやすい点で好ましい。微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、100〜2000nm程度に設定することができる。上記のような微粒子を用いることにより、後の工程で微粒子を除去することで球状または球状が連なった形状の空隙を有する多孔質膜を得ることができる。また、得られる多孔質膜の孔径を揃えることができる。このため、多孔質膜2に特性を均一化できる。
なお、微粒子の材質としては、塗布液Lに含まれる溶剤に不溶であって、後の工程で多孔質膜2から除去可能な材質であれば、特に限定されることはなく公知のものを採用することができる。例えば、無機材料では、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物が挙げられる。また、有機材料では、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。また、微粒子の一例として、(単分散)球状シリカ粒子などのコロイダルシリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。この場合、多孔質膜2の孔径をより均一にすることができる。塗布液Lに含まれる微粒子は、粒径が、例えば100〜2000nmである。
<溶剤>
溶剤は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを溶解するものであれば、特に限定されることなく公知のものが使用できる。溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N−ビニル−2−ピロリドン等の含窒素極性溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、溶剤は、上記の溶剤に加え、沸点が190℃以上の高沸点溶剤を含むことができる。高沸点溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素極性溶剤;γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ピロリドンフェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が挙げられる。高沸点溶剤としては、これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶剤における高沸点溶剤の含有比率は特に限定されず、広い範囲のものを使用することができる。溶剤中、高沸点溶剤を5〜80質量%とすることが好ましく、7〜70質量%とすることが更に好ましく、高沸点溶剤を10〜60質量%とすることが最も好ましい。高沸点溶剤が5質量%以上で含有されれば、多孔質ポリイミド膜の成膜性や膜物性に問題がなく、80質量%以下であれば支障なく塗工及びプリベーク工程を行うことができる。
なお、上記塗布液Lは、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤の他、必要に応じて、離型剤、分散剤、縮合剤、イミド化剤、界面活性剤等種々の添加剤を含んでいてもよい。
ステップS11では、図4(A)に示すように、塗布液Lを基材S上に塗布し、乾燥させることにより溶剤を除去して、乾燥膜Dを形成する。塗布液Lは、微粒子Bを含む。基材S上に塗布された塗布液Lは、常圧又は真空下で50〜100℃で処理し(プリベーク)、乾燥膜Dとする。基材Sは、特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、基材Sとして箔を用いてもよい。この箔は導電膜4として用いてもよい。箔としては、例えば、金属箔、特に銅箔、アルミ箔が好ましく用いられる。基材Sに金属箔を用いて多孔質膜2を製造する場合、この金属箔を保持したままにしてもよいし、エッチング等により金属箔の一部だけを除去してもよい。これらの場合、金属箔は、電極及び回路とすることができる。
続いて、図4(B)に示すように、プリベーク処理後の乾燥膜Dを基材Sより剥離する。剥離方法は、特に限定されず、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよいし、手作業で行ってもよい。次いで、剥離後の乾燥膜Dを焼成する。なお、焼成の前に、乾燥膜Dにカールが発生するのを抑制するため、水を含む溶剤への浸漬処理や、プレス処理を任意で行ってもよい。また当該浸漬処理後の乾燥処理を任意で設けてもよい。焼成温度は、例えば、120〜400℃程度であり、150〜350℃程度の温度が好ましい。また、微粒子Bに有機材料が含まれる場合は、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。なお、塗布液Lがポリアミド酸を含む場合、この焼成においてはイミド化を完結させることが好ましいが、乾燥膜がポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドから構成される場合は、この限りでない。なお、乾燥膜Dを基材Sより剥離するか否かは、製造方法などにより適宜決定される。例えば、後述するように基材Sとして非多孔質膜3あるいは導電膜4を用いる等の場合は、乾燥膜Dを基材Sより剥離しなくてもよい。
次に、図3に示すステップS12において、焼成後の乾燥膜Dから微粒子Bを除去することにより、多孔質膜2を製造する。例えば、微粒子Bとして、シリカを採用した場合、乾燥膜を低濃度のフッ化水素水(HF)等によりシリカを溶解除去することで、多孔質とすることが可能である。また、微粒子が樹脂微粒子の場合は、上述のような樹脂微粒子の熱分解温度以上で、ポリイミドの熱分解温度未満の温度に加熱し、樹脂微粒子を分解させてこれを取り除くことができる。図4(C)に示すように、乾燥膜Dから微粒子Bを除去した部分がそれぞれ空孔6となり、空孔6が連通して空隙5を有する多孔質膜2が形成される。多孔質膜2は、面方向(X方向及びY方向)に均一な空隙率を有する。なお、多孔質膜2は微粒子Bを含有してもよい。この場合、微粒子Bをフィラーとして機能させ、多孔質膜2に強度を付与してもよい。
次に、図3に示すステップS13において、多孔質膜2に対して、エッチング(ケミカルエッチング)処理が行われる。多孔質膜2は、図5(A)に示すように、エッチング液ESに浸漬され、空隙5の樹脂の一部が除去される。エッチング液ESとしては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液が用いられる。無機アルカリ溶液として例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。エッチング処理により、図5(B)に示すように、空隙5のバリ等の突起部分が除去され、少なくとも多孔質膜2の空隙率を上昇させることができる。これにより、空隙5の連通性が向上し、例えば、このようなエッチング後の多孔質膜2を積層体1として用いる場合、伝送損失を低減させることができる。
その後、多孔質膜2が洗浄液によって洗浄され、液切りが行われる。続いて、液切り後の多孔質膜2が、例えば、100〜400℃程度(好ましくは100℃〜300℃程度)に加熱され、洗浄液が除去される。なお、エッチング後の多孔質膜2は、不図示の巻き取り装置等によって巻き取られ、不図示のロール体を形成してもよい。また、このロール体は、使用目的に応じて、多孔質膜2を引き出して切断装置により切断してから再び巻き取ってロール体とすることにより、ロール体のサイズを調整することができる。また、多孔質膜2は、エッチング処理後、保管されてもよい。エッチング処理後の多孔質膜2を保管する場合、多孔質膜2は、ロール体の状態で保管してもよい。なお、多孔質膜2の保管条件(例、保管時間、温度、湿度)は任意である。なお、ステップS13によりエッチング処理を行うか否かは任意であり、エッチング処理は行わなくてもよい。
次に、図2に示すステップS2において、図6(A)に示すように、多孔質膜2の少なくとも一方の面に非多孔質膜3となる液体LAを塗布する。非多孔質膜3は、例えば、多孔質膜2と導電膜4とを接着する接着剤である。非多孔質膜3は、特に制限されず、公知の樹脂材料により形成される。非多孔質膜3は、例えば、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンの少なくとも一つを含む樹脂により形成される。中でも、非多孔質膜3は、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドの少なくとも一つを含むイミド系樹脂により形成されることが好ましい。また、非多孔質膜3と多孔質膜2とは、例えば、同一の材料で形成されるのが好ましい。
非多孔質膜3となる液体LAは、例えば、樹脂成分を溶剤により溶解した液を用いることができる。非多孔質膜3となる液体LAは、樹脂成分等に応じて、適宜設定される。例えば、非多孔質膜3を上記樹脂により形成する場合、非多孔質膜3となる液体LAは、多孔質膜2の部分で説明した塗布液Lの成分から微粒子を除いた液を用いることができる。
非多孔質膜3となる液体LAの塗布は、導電膜4を貼付する面が平坦な面になるように塗布するのが好ましい。この場合、導電膜4と非多孔質膜3との接着性が向上する。また、この場合、導電膜4が平坦になるため、積層体1は、配線用基板、配線基板に好適に用いることができる。
次に、図2に示すステップS3において、図6(B)に示すように、予め形成した導電膜4を貼付する。この場合、例えば、導電膜4を非多孔質膜3となる液体LAが乾燥する前に貼付する。導電膜4は、特に限定されず、任意の導電性材料を用いることができる。導電膜4は、例えば、銅箔、ステンレス泊、アルミニウム泊、ニッケル泊などの金属泊が用いられる。また、導電膜4の表面は、粗面化処理や防錆処理がされていてもよい。導電膜4の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm以上100μm以下程度、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下とすることができる。
なお、導電膜4の貼付(積層)の方法は、上記方法に制限されない。例えば、導電膜4の貼付(積層)の方法は、後述するように、導電膜4を非多孔質膜3あるいは多孔質膜2の表面に直接貼付する方法でもよいし、非多孔質膜となる液体LAあるいは多孔質膜2となる液体Lを、導電膜4に塗布し乾燥させることにより貼付してもよい。
次に、図2に示すステップS4において、図6(C)に示すように、非多孔質膜3となる液体LAを乾燥させ、導電膜4を多孔質膜2に接着する。これにより、導電膜4が多孔質膜2に積層される。非多孔質膜3となる液体LAの乾燥の方法は、樹脂成分などにより、適宜設定される。例えば、非多孔質膜3を上記樹脂により形成する場合、塗布した非多孔質膜3となる液体LAをプリベークすることにより乾燥膜を形成する。これにより、導電膜4を多孔質膜2に接着する。続いて、上記樹脂がポリアミド酸等のポリイミド前駆体である場合、焼成を行うことにより、この乾燥膜のイミド化反応を行う。これにより、図1(A)に示す積層体1を得ることができる。なお、非多孔質膜3となる液体LAをプリベークすることにより形成した乾燥膜は、非多孔質膜3に含まれる。
次に、積層体の製造方法の他の例を説明する。図7(A)は、積層体の製造方法の他の例を示すフローチャートであり、図7(B)は、積層体の製造方法の他の例を示す断面図である。
本製造方法は、多孔質膜2の少なくとも一方の面に非多孔質膜3を形成した後に、形成した非多孔質膜3に導電膜4を積層する。すなわち、非多孔質膜3を接着剤として用いない方法である。本製造方法は、図7(A)に示すように、まず、上記したステップS1を行うことにより多孔質膜2を得る。
続いて、図7(A)に示すステップS5において、図7(B)に示すように、非多孔質膜となる液体LAを多孔質膜2に塗布して乾燥させることにより非多孔質膜3を形成する。非多孔質膜となる液体LAは、上記したステップS2と同様である。非多孔質膜3となる液体LAの乾燥の方法は、上記ステップS4と同様であり、樹脂成分などにより、適宜設定される。例えば、非多孔質膜3を上記樹脂により形成する場合、塗布した非多孔質膜3となる液体LAをプリベークすることにより非多孔質膜3(乾燥膜)を形成し、上記樹脂がポリアミド酸等のポリイミド前駆体である場合は、この乾燥膜を焼成することによりイミド化反応を行う。この際、非多孔質膜3は、導電膜4を貼付する面が平坦な面になるように形成するのが好ましい。この場合、導電膜4と非多孔質膜3との接着性が向上する。また、この場合、導電膜4が平坦になるため、積層体1は、配線用基板、配線基板に好適に用いることができる。
続いて、図7(A)に示すステップS6において、導電膜4を積層する。例えば、導電膜4を非多孔質膜3の表面に、直接、積層する。例えば、導電膜4を熱圧着により積層する。これにより、図6(C)に示す積層体1を得ることができる。
次に、積層体の製造方法の他の例を説明する。図8(A)は、積層体の製造方法の他の例を示すフローチャートであり、図8(B)は、積層体の製造方法の他の例を示す断面図である。
本製造方法は、別々に作製した多孔質膜2と非多孔質膜3とを積層する方法である。本製造方法は、図8(A)に示すように、まず、上記したステップS1を行い、多孔質膜2を得る。
続いて、図8(A)に示すステップS7において、図8(B)に示すように、非多孔質膜となる液体LAを基材Sに塗布して乾燥させることにより非多孔質膜3を形成する。まず、非多孔質膜となる液体LAを塗布する。非多孔質膜となる液体LAは、ステップS2と同様である。続いて、非多孔質膜3となる液体LAを乾燥する。これにより、非多孔質膜3を形成する。非多孔質膜3となる液体LAを乾燥する方法は、上記ステップS4と同様である。なお、ステップS7を行うか否かは任意である。例えば、市販品など予め形成された非多孔質膜3を用いる場合、ステップS7を行わなくてもよい。
続いて、図8(A)に示すステップS8において、予め形成された非多孔質膜3を多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層する。これにより、図7(B)に示す多孔質膜2の少なくとも一方の面に非多孔質膜3が積層された複合膜7を形成する。多孔質膜2と非多孔質膜3との積層の方法は、特に制限されない。例えば、多孔質膜2と非多孔質膜3との積層の方法は、圧着でもよいし、溶着でもよいし、焼結により積層する方法でもよいし、接着剤により接着する方法でもよい。この場合の接着剤は、上記した非多孔質膜となる液体LAを用いることができる。
続いて、図8(A)に示すように、上記したステップS6において、導電膜4を積層する。これにより、図6(C)に示す積層体1を得ることができる。
なお、図8(A)に示すステップS7において、基材Sとして導電膜4を使用してもよい。これにより、図8(D)に示す非多孔質膜3の一方の面に導電膜4が積層された非多孔質膜3と導電膜4との複合体8が形成される。この場合、図8(A)に示すステップS6を省略することができ、積層体1の製造方法を簡便にすることができる。
以上のように、本実施形態に係る積層体1、1Aは、伝送損失が少ないものである。また、本実施形態に係る積層体の製造方法は、伝送損失が少ない積層体1、1Aを好適に製造することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図9(A)に示すように、本実施形態の積層体1Bは、多孔質膜2aと、非多孔質膜3と、を備える。多孔質膜2aは、空隙率が異なる複数の多孔質層(多孔質層9、多孔質層10)が積層されて形成される。多孔質膜2aが複数の多孔質層を有する場合、多様な機能(特性)を付与することができ、また、強度を向上させることができる。なお、多孔質膜2aは2層であるが、3層以上の多孔質層で形成されてもよい。
多孔質層9は複数の空隙5aを有する。多孔質層10は複数の空隙5bを有する。例えば、空隙5aの内径は、空隙5bの内径より小さい。なお、空隙5aの内径は、空隙5bの内径より大きくてもよいし、空隙5aの内径は、空隙5bの内径と同様でもよい。空隙5aの形状及び空隙5bの形状は、球状または球状が連なった形状であり、空隙5と同様である。
多孔質層9の空隙率及び多孔質層10の空隙率は、それぞれ、例えば、45%以上80%以下である。多孔質層9の空隙率及び多孔質層10の空隙率が、それぞれ、上記範囲である場合、伝送損失がより低い積層体1Bを得ることができる。多孔質層9の空隙率は、多孔質層10の空隙率より高くてもよいし、多孔質層10の空隙率より低くてもよい。
多孔質層9の膜厚及び多孔質層10の膜厚は、特に制限されないが、それぞれ、1μm以上240μm以下であることが好ましい。多孔質層9の膜厚及び多孔質層10の膜厚が、それぞれ、上記範囲である場合、強度に優れ、加工時における、膜の伸び、皺、ピンホール、膜の破断を抑制することができ、且つ伝送損失が少ない積層体1を得ることができる。多孔質膜2aの膜厚については、第1実施形態の多孔質膜2と同様である。
多孔質層9及び多孔質層10の形成材料は、第1実施形態の多孔質膜2と同様である。本実施形態の例では、多孔質層9及び多孔質層10は、同一の材料により形成される。多孔質層9及び多孔質層10が同一の材料により形成される場合、多孔質層9と多孔質層10との間の接着性がより向上する。また、この場合、耐熱性を向上させることができ、且つ積層体1Bの材料の種類を少なくすることができるため、積層体1Bの製造を簡便にすることができる。なお、多孔質層9及び多孔質層10は、異なる材料で形成されてもよい。
多孔質膜2aの周波数1GHzにおける比誘電率は、例えば、2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。また、多孔質膜2aの周波数10GHzにおける比誘電率は、例えば、2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。多孔質膜2aの比誘電率が上記範囲である場合、伝送損失を、より低減することができる。
導電膜4は、第1実施形態の同様である。導電膜4は、多孔質膜2aの少なくとも一方の面に積層される。導電膜4は、例えば、多孔質膜2aの上面(+Z側の面)に積層される。導電膜4は、例えば、多孔質膜2の上面に、非多孔質膜3を介して積層される。なお、導電膜4は、図9(B)に示すように、多孔質膜2aの両方の面(+Z側の面および−Z側の面)に積層されてもよい。
非多孔質膜3は、第1実施形態と同様である。非多孔質膜3は、多孔質膜2aと導電膜4との間に配置される。導電膜4と非多孔質膜3との間は、例えば、平坦な面に形成される。この場合、導電膜4と非多孔質膜3との密着性がより向上する。非多孔質膜3は、例えば、多孔質膜2aの少なくとも一方の面に積層される。非多孔質膜3は、例えば、多孔質層9の上面に積層される。なお、非多孔質膜3は、多孔質層10に積層されてもよいし、図9(B)に示す積層体1Cのように、多孔質膜2aの両方の面に積層されてもよい。非多孔質膜3が多孔質膜2aの両方の面に積層される場合、導電膜4は多孔質膜2aの両方の面に設けられなくてもよく、例えば、多孔質膜2aの片方の面に設けられていてもよい。
図10は、多孔質膜2aの製造方法の一例を示すフローチャートである。図11は、多孔質膜2aの製造方法を示す断面図である。例えば、多孔質膜2aの製造は、図10に示すように、上記したステップS11において、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体を基材S塗布して乾燥させることにより乾燥膜Dを形成する。この際、塗布液Lから乾燥膜Dを形成する乾燥は、例えば、溶剤を除去し乾燥膜Dを形成できればよい。例えば、ステップS11において説明したプリベーク及び焼成は後に行ってもよい。
続いて、図10に示すステップS14において、図11(A)に示すように、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体LBを乾燥膜Dに塗布して乾燥させることにより、図11(B)に示す乾燥膜DAを形成する。これにより、乾燥膜Dに乾燥膜DAが積層される。乾燥膜DAを形成する際の乾燥は、例えば、上記したプリベーク及び焼成を行う。この場合、乾燥膜D及び乾燥膜DAのイミド化を一度に行うことができるため、製造を簡便にすることができる。
続いて、上記したステップS12において、微粒子Bを除去する。例えば、乾燥膜D及び乾燥膜DAを一度にフッ化水素水(HF)で処理する。これにより、乾燥膜D及び乾燥膜DAから微粒子Bが除去され、図9に示す多孔質膜2aを得ることができる。この場合、乾燥膜D及び乾燥膜DAから一度に微粒子Bの除去を行うことができるため、製造を簡便にすることができる。
続いて、上記したステップS13において、エッチング処理を行う。これにより、多孔質膜2aの空隙率を高くすることができる。なお、ステップS13を行うか否かは任意である。
以上のように、本実施形態の積層体1B、1Cは、強度が高く、多様な機能(特性)を備えることが可能である。
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図12(A)は、第3実施形態に係る積層体の一例を示す図であり、図12(B)及び図12(C)は、第3実施形態に係る積層体の他の例を示す断面図である。
図12(A)に示すように、本実施形態の積層体1Dは、例えば、多孔質膜2と、導電膜4と、を備える。本実施形態の積層体1Dは、多孔質膜2と導電膜4とが直接積層される。多孔質膜2及び導電膜4は、第1実施形態と同様である。本実施形態の積層体1Dは、多孔質膜2を備えるため、伝送損失が少ないものである。
導電膜4は、多孔質膜2の少なくとも一方の面に積層される。導電膜4は、例えば、多孔質膜2の上側の面(+Z側の面)に積層される。なお、導電膜4は、図12(B)に示す積層体1Eのように、多孔質膜2の両面に積層されてもよい。また、導電膜4は、図12(C)に示す積層体1Fのように、空隙率が異なる複数の層を有する多孔質膜2aの少なくとも一方の面に積層されてもよい。
多孔質膜2と導電膜4との積層の方法は、制限されない。例えば、多孔質膜2と導電膜4との積層の方法は、導電膜4に多孔質膜となる液体L(塗布液L)を塗布し、乾燥させることにより多孔質膜2と導電膜4とを積層してもよいし、別々に形成した多孔質膜2と導電膜4とを熱圧着等により積層してもよい。
図13(A)は、積層体1Dの製造方法を示すフローチャートである。図13(B)は、積層体1Dの製造方法を示す断面図である。
積層体1Dの製造は、例えば、導電膜4に多孔質膜2を形成して、多孔質膜2と導電膜4とを積層する。この場合、図13(A)に示すステップS15において、微粒子Bを含ませた上記樹脂(イミド系樹脂)の液体L(塗布液L)を導電膜4に塗布して、乾燥させることにより乾燥膜Dを形成する。例えば、図13(B)に示すように、塗布液Lを導電膜4に塗布する。続いて、塗布液Lを塗布した導電膜4を、上記したステップS1と同様にプリベーク及び焼成を行うことにより、図13(C)に示す乾燥膜Dを形成する。これにより、導電膜4と乾燥膜Dとが積層される。
続いて、図13(A)に示すように、上記したステップS12において、微粒子Bを除去して多孔質膜2を形成する。これにより、多孔質膜2と導電膜4とが積層され、図12(A)に示す積層体1Dが得られる。
なお、図13(A)に示すステップS15及びステップS12のように、上記樹脂(イミド系樹脂)の液体を導電膜4に塗布し、その後、微粒子Bの除去を行う場合、微粒子Bの材料がシリカであり微粒子Bの溶解(除去)する際にHF溶液を用いると、導電膜4の材質によっては、HF溶液が導電膜4にダメージを及ぼす恐れがある。このようなHF溶液による導電膜4へのダメージを避ける手段として、例えば、導電膜4の形成材料をハステロイ(登録商標)等のHF溶液に対して耐蝕性を有する耐蝕合金を用いてもよい。また、例えば、微粒子Bの形成材料を高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル等の有機高分子を用い、加熱処理を行うことにより分解することで微粒子Bの除去を行うことで、HF溶液を用いずに微粒子Bを除去してもよい。この場合の加熱処理は、例えば、多孔質膜2がポリイミド系樹脂の場合、イミド化する際の加熱処理と兼ねていてもよい。また、ポリメチルメタクリレートから形成される微粒子Bを、172nmのUV光を照射することにより解重合した後、2−プロパノール等の溶媒で溶解してもよい。この場合、加熱処理なしで微粒子Bを除去することができるため、上記樹脂としては、焼成工程を任意工程にできるポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、及びポリエーテルスルホンからなる群のいずれか少なくとも1種を用いることが好ましい。
続いて、ステップS13において、エッチング処理を行う。ステップS13は、上記の通りである。これにより、少なくとも多孔質膜2の空隙率を上昇させることができる。なお、ステップS13によりエッチング処理を行うか否かは任意であり、ステップS13は行わなくてもよい。
以上のように、本実施形態の積層体1D、1E、1Fは、伝送損失が少ないものである。
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図14は、第4実施形態に係る配線基板12の一例を示す断面図である。
本実施形態の配線基板12は、例えば、上記した積層体1の導電膜4の少なくとも一部に配線パターン13が形成される。配線基板12は、積層体1を有するため、伝送損失が少ないものである。配線パターン13のパターンは、特に制限されず、任意である。配線パターン13の形成方法は、特に制限されず、任意である。例えば、配線パターン13は、エッチング、機械加工等により形成される。
なお、配線基板12は、積層体1に代えて、上記した積層体1A、1B、1C、1D、1E、1Fの導電膜4の少なくとも一部に配線パターン13が形成されたいずれのものを備えてもよい。また、配線基板12は、複数の積層体1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fのいずれかを2つ以上の多層基板であってもよい。
以上のように、本実施形態の配線基板12は、伝送損失が少ないものである。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例では、以下に示すテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミドイミド、分散剤、有機溶剤、および微粒子を用いた。
・テトラカルボン酸二無水物:ピロメリット酸二無水物
・ジアミン:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・分散剤:ポリオキシエチレン二級アルキルエーテル系分散剤
・シリカ:(平均粒径)300nm,700nm
<参考例1>
(多孔質膜の製造)
第1多孔質層と第2多孔質層とが積層された多孔質膜を下記方法により製造した。
[ワニスの調製−1]
(1)第一のワニス(第1多孔質層の調整液)
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却機、窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物6.5gと、ジアミン6.7gと、N,N−ジメチルアセトアミド30gとを投入した。窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコの内容物を撹拌しながら、50℃で20時間、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて、ポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液に、平均粒径が300nmのシリカを、75g添加し撹拌して、ポリアミド酸と微粒子との体積比を22:78(質量比は15:85)とした第一のワニスを調製した。なお、ワニス中における全有機溶剤の割合は70質量%となるように、かつ有機溶剤組成がN,N−ジメチルアセトアミド:ガンマブチロラクトン=90:10となるようにそれぞれ追加し、調整した。
(2)第二のワニス(第2多孔質層の調整液)
得られたポリアミド酸溶液に、平均粒径が700nmのシリカを53g添加するほかは、(1)と同様にしてポリアミド酸と微粒子との体積比を28:72(質量比は20:80)とした第二のワニスを調製した。
[前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)の成膜]
上記ワニスの調製−1で製造した第一のワニスを、剥離剤を塗布したガラス板(基材)にアプリケーターを用いて塗布し、乾燥させることにより成膜して乾燥膜を形成した。この層(厚さ、約1μm)が第1多孔質層を形成する。続いて、さらに、同じくワニスの調製−1で製造した第二のワニスを、第1多孔質層上にアプリケーターを用いて塗布し、乾燥させることにより成膜して乾燥膜を形成した。この層(厚さ、約24μm)が第2多孔質層を形成する。70℃で5分間プリベークして、図11(B)に示すような、膜厚25μmの未焼成複合膜を形成した。
基材から上記未焼成複合膜を剥離後、エタノールで剥離剤を除去し、320℃で15分間熱処理を施し、イミド化を完結させ前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)とした。
[多孔質膜(多孔質ポリイミド膜)の形成]
上記前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)を、10%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれる微粒子を除去した。
[ケミカルエッチング]
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液をメタノール50質量%水溶液で1.04%となるように希釈して、アルカリ性のエッチング液を作成した。このエッチング液に、多孔質ポリイミド膜を浸漬してポリイミド表面の一部を除去し、図9に示す第1多孔質層と第2多孔質層とが積層された多孔質膜2aを製造した。
(比誘電率の測定)
得られた多孔質膜の比誘電率を測定した。多孔質膜の比誘電率は、空洞共振器法装置(株式会社エーイーティー社製)を用い、空洞共振器振動法により、周波数1GHz及び10GHzにおいて、温度27度、湿度50%の条件において測定した。比誘電率の測定は5回行い、その平均値を算出し比誘電率とした。その結果を表1に示す。
<比較例1、比較例2>
(液晶ポリマー膜の比誘電率)
液晶ポリマー膜の比誘電率を比較例1として用いた。その比誘電率を表1に示す。
(非多孔質ポリイミド膜の比誘電率)
非多孔質ポリイミド膜の比誘電率を比較例2として用いた。その比誘電率を表1に示す。
なお、比較例1及び比較例2として用いた比誘電率は、それぞれ、山一電機株式会社のウェブページ(http://www.yamaichi.co.jp/products/tabid/104/Default.aspx)に掲載されるカタログ値を用いた。
(結果)
表1に示すように、本発明の積層体に用いられる多孔質膜は、比誘電率が低いことが確認される。この結果から、本発明の積層体は、伝送損失が低いものであることが確認される。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。