JP2017023050A - 糖質を低減した麺類及びその製造方法 - Google Patents
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中華麺、うどん、スパゲッティーなどの麺類は、小麦粉及び必要に応じて副原料を加え、定法の製麺工程を得て製造される。調理麺の場合は、麺線の太さに応じた歩留で茹で上げられた茹で麺とした後に、調理工程及び/又は冷凍処理を経て製造される。麺類は、その大半の原料が小麦粉であり、小麦粉には主要構成成分として澱粉質が含まれているため、それが糖質含量を押し上げる原因となっている。
従来、この様な麺類を低糖質化する有効な手段として、小麦粉(つまり澱粉質)を、水、タンパク質、食物繊維等に置換することが提案されている。
澱粉質を水で置換する方法として、例えば引用文献1には粗蛋白含量が通常の強力粉よりも高い小麦粉を使用し、高い茹で歩留まりで茹でることを特徴とする茹で麺類の製造方法が開示されている。引用文献2には小麦グルテン、加工澱粉及び小麦澱粉を含む製麺原料により製麺した麺を高歩留まりで茹で上げることを特徴とする中華麺類の製造方法が開示されている。これらの方法は1食あたりのカロリーをそれぞれ約30%、約30〜50%(茹で歩留に依存)軽減することが可能である。
また澱粉質を食物繊維質に置換する方法として、特許文献3では穀粉と、レジスタントスターチを含むレジスタントスターチ含有澱粉とを含有することを特徴とする麺類が提案されている。これにより、食物繊維の摂取を高めると共に、1食あたりのカロリーを20〜30%低減できる。特許文献3において、実施例のレジスタントスターチの配合割合から求められる糖質低減率は高々21質量%である。特許文献4には微細セルロース及び難消化性デキストリンからなる微細セルロース複合体を主原料の1つとして用いて製麺して得られる食物繊維強化麺類が提案されている。これにより、食物繊維の摂取を高めることができる。小麦粉の該複合体への最大置換割合が30質量%であることから、糖質低減率は高々30%である。特許文献6には難消化性架橋澱粉を、または難消化性架橋澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉及び/又はアセチル化澱粉を併用して麺に使用し、難消化性成分を含有させた麺類が開示されている。これにより、食物繊維を強化した麺類が得られる。特許文献6には難消化性リン酸架橋澱粉の配合量が麺原料の30質量%以上になると、製麺性と麺の食感が悪化することも開示されており、含有量の上限が示唆されている。特許文献7には難消化性リン酸架橋小麦澱粉を配合したパスタが開示されている。特許文献7においては得られたパスタについて官能評価及び作業性評価は行われていない。
さらに澱粉質をタンパク質に置換する方法として、特許文献8には水抽出低変性大豆蛋白質組成物が高配合された嗜好性の高い麺類および麺皮類が開示されている。また特許文献9には蛋白価90〜100のタンパク質(大豆タンパク質や小麦タンパク質など)を1食分あたり25〜30質量%含む栄養バランスに富む麺食品が開示されている。これにより、熱量を約30%低減することができる。
上記のような麺の低糖質化を目的として澱粉質を水、食物繊維、タンパク質で置換する方法においては、置換の程度がすすむにつれ麺の質(食感及び外観)や作業性が損なわれることが良く知られており、茹で麺や調理麺とした場合には更に食感が悪化する懸念がある。特に低糖質化の手段として難消化性澱粉を配合する場合、ザラつきやボソつきが出るなど食感が著しく損なわれること、また難消化性デキストリンや結晶セルロースを配合する場合、生地の作業性が著しく損なわれることから、それぞれ配合量に限界があり、十分な低糖質化を具現化し、かつ良好な食感や作業性を実現した先行技術はない。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]難消化性小麦澱粉を30〜50質量%、難消化性デキストリンを2〜15質量%及びバイタルグルテンを5〜23質量%を含む製麺用粉体組成物。
[2]前記[1]に記載の製麺用粉体組成物を製麺用粉原料として用いて製麺することを特徴とする製麺方法。
[3]前記[2]に記載の方法により得られる麺類。
[4]前記[3]に記載の麺類を調理して得られる調理麺。
RS1:雑穀のように、澱粉が物理的に硬い組織に囲まれていることで消化酵素が澱粉まで届かないタイプ(物理的に閉じ込められた澱粉)
RS2:十分に加熱されていない未糊化の澱粉やアミロースの極めて多い澱粉など、澱粉の粒子自体が消化されにくいタイプ(抵抗性澱粉粒)
RS3:澱粉を一度糊化(α化)した後、澱粉が再結晶して安定な構造(β化)をとるようになったタイプ(老化澱粉)
RS4:澱粉を高程度に化学修飾することで消化酵素が作用しにくくなったタイプ(加工澱粉)
RS3に分類される難消化性小麦澱粉としては、例えば湿熱処理、パーボイル加工、プルラナーゼ処理により得られるものが挙げられる。またRS4に分類される難消化性小麦澱粉としては、化学修飾により、エステル化やエーテル化による架橋を施したものなどが挙げられる。
好ましくは小麦澱粉をリン酸架橋して得られる難消化性小麦澱粉であり、これは上記RS4に区分される難消化性澱粉であって、小麦澱粉を高度にリン酸架橋処理して消化酵素が極めて作用し難くなっているものをいう。
リン酸架橋処理された澱粉は、難消化性澱粉と易消化性である品質改良用加工澱粉に大別される。難消化性澱粉を評価するパラメーターには膨潤度、架橋度及び食物繊維含量(プロスキー法による)が使われる。架橋度が高くても食物繊維含量が極めて低いリン酸架橋澱粉もあるため、本願発明においては難消化性澱粉であるか否かは実質的に食物繊維含量で評価し、食物繊維含量が70質量%以上であるものを難消化性澱粉に分類する。なお、RS3及びRS4の難消化性澱粉の食物繊維含量は、プロスキー法、プロスキー変法、衛新第13号の酵素−HPLC法の何れによっても測定可能である。
食品工業的に利用されている澱粉には、馬鈴薯やタピオカの様な根菜系、小麦や米、コーンの様な穀物系、サゴの様な樹幹系がある。小麦澱粉以外の澱粉から調製された難消化性澱粉を、糖質を50質量%超低減するように主原料として製麺用粉原料に用いると、吸水が悪い、つながりが悪いなどの原因で生地が得られない。また、生地が得られても弾力やコシといった食感が著しく劣る麺となる。
「難消化性小麦澱粉」は公知の方法で製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。原料とする小麦には特に限定がない。市販されているものの好適な例としてファイバージムRW(松谷化学社製)が挙げられ、この食物繊維含量は75質量%以上である。
本発明において、「難消化性小麦澱粉」は製麺用粉体組成物全量に対して30〜50質量%の範囲で添加する。より好ましくは35〜45質量%である。「難消化性小麦澱粉」の含量が50質量%を超えると、ボソボソ感が強くなる。「難消化性小麦澱粉」の含量が30質量%未満では、糖質を50質量%超低減させることが困難になる。
なお、難消化性デキストリン等の低分子水溶性食物繊維は、プロスキー法及びプロスキー変法で測定することができないので、通例、衛新第13号「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」に記載されている酵素−HPLC法で測定される(参考文献:日本食物繊維学会 http://jdf.umin.ne.jp/kakusyu/teigen-2.pdf、特開2006−149369)。
本発明において、難消化性デキストリンは製麺用粉体組成物全量に対して2〜15質量%の範囲で添加する。好ましくは3〜10質量%、より好ましくは5〜8.5質量%添加する。難消化性デキストリンの含量が15質量%を超えると、吸水が悪くなり生地が得られない。また難消化性デキストリンの含量が2質量%未満では、得られる麺の弾力が損なわれる。
本発明において、バイタルグルテンは製麺用粉体組成物全量に対して5〜23質量%の範囲で添加する。好ましくは10〜20質量%添加する。バイタルグルテンの含量が23質量%を超えると、ゴム感が強くなる。バイタルグルテンの含量が5質量%未満では、弾力が得られない。
本発明において、小麦粉は糖質を50質量%以上低減させるという観点から、製麺用粉体組成物全量に対して0〜50質量%の範囲で添加することが好ましい。より好ましくは0〜25質量%添加する。
本発明において、加工澱粉は製麺用粉体組成物全量に対して30質量%未満の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で添加することができる。加工澱粉の添加量が30質量%を超えると、糖質50質量%低減が困難になる。
例えば製麺用粉原料を十分に混合し、その製麺用粉原料100重量部に対して塩類等を溶解させた練水を35重量部添加して予備混合する。真空度93kPaで高速で3分間、低速で10分間混合した後、ロール機で整形及び複合を行って適当な厚さの麺帯を得、ビニール袋に包んで室温で30分間以上熟成させた後、適当な切刃で生麺線を得る。更に、生麺線を茹で処理して茹で麺を得る。
[製造例 中華麺(評価基準)の製造]
小麦粉91重量部、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉4.5重量部及びバイタルグルテン4.5重量部からなる麺用小麦粉組成物をミキサーに投入し、次いでかんすい1.7重量部、鶏卵5.0重量部及び65容量%含水アルコール1.0重量部を30.3質量部の水に溶解させた水溶液38重量部を加え、減圧下(−700mmHg)で13分間混合してそぼろ状の中華麺生地を得た(この配合で得られる生麺及び茹で麺を評価基準とし、各評価項目の5点とした)。
得られた中華麺生地を常法に従って整形、複合及び圧延を行って麺帯を得た。麺帯をビニール袋で包み、30分間室温で熟成させた後、圧延して厚さ1.5mmの麺帯とし、切り刃♯18角刃で切り出して生麺を得た。この際、10名の専門パネラーにより下記項目に従って麺帯の状態を観ることで作業性を評価した。
得られた生麺線を十分量の沸騰水中で茹で歩留が150質量%になるように茹で上げた。茹で上げた麺を直ちに湯切りし、醤油ベースのスープに投入し、10名の専門パネラーにより以下に示す表1の項目に従って食感の評価を行った。
表2記載の食物繊維質を配合した製麺用粉体組成物を使用した以外は製造例に従って、評価基準の生麺に対して糖質を50質量%超低減した生麺を得た。なお、水溶液は製造例同様の重量部のかんすい、鶏卵及びアルコールを含み、残余を水としたものである。
得られた生麺線を十分量の沸騰水中で茹で歩留が140%になるように茹で上げ、評価基準の茹で麺に対して糖質を50質量%超低減した茹で麺を得た。
生麺の糖質含量率の理論値は下記式1で求め、茹で麺の糖質含量率の理論値は生麺の糖質含量率を歩留で除して求めた。糖質低減率の理論値は、下記式2で求めた。なお、本発明届において糖質含量率及び糖質低減率の理論値とは、各原料の規格書又は栄養成分表に基づいて算出した。鶏卵に関しては、5訂日本食品標準成分表に従った。また、炭水化物の内訳を糖質と繊維質に分けて表示されていない場合には、炭水化物は糖質とみなした。
式1:(「各原料の糖質含有率」×「各原料の配合重量部」)/「生地合計重量部」×100
式2:(「評価基準の糖質含量率」−「各比較例又は実施例の糖質含量率」)/「評価基準の糖質含量率」×100
評価基準の製造例の中華麺を5点とし、前記同様に作業性及び食感の評価を行った。結果を表3に示す。
表4記載の難消化性澱粉と難消化性デキストリンとを配合した製麺用粉体組成物を使用した以外は製造例に従って、評価基準生麺に対して糖質を50質量%超低減した生麺を得た。なお、水溶液は製造例同様の重量部のかんすい、鶏卵及びアルコールが含まれ、残余を水とした。得られた生麺線を十分量の沸騰水中で茹で歩留が140%になるように茹で上げ、評価基準茹で麺に対して糖質を50質量%超低減した茹で麺を得た。なお、生麺及び茹で麺の糖質含量は前記同様に式1と式2から求めた。
評価基準の中華麺を5点とし、前記同様に作業性及び食感の評価を行った。結果を表5に示す。
表6記載の配合の製麺用粉体組成物を使用した以外は製造例に従って、評価基準生麺に対して糖質を50質量%超低減した生麺を得た。水溶液は製造例同様の重量部のかんすい、鶏卵及びアルコールを含み、残余を水とした。得られた生麺線を十分量の沸騰水中で茹で歩留が140%になるように茹で上げ、評価基準茹で麺に対して糖質を50質量%超低減した茹で麺を得た。なお、生麺及び茹で麺の糖質含量は前記同様に式1と式2から求めた。
評価基準の製造例の中華麺を5点とし、前記同様に作業性及び食感の評価を行った。結果を表7に示す。
製造した茹で麺の糖質含量を実測し、表2、4および6に記載した理論値との乖離がないか検証した。評価基準及び実施例3の茹で麺の成分分析を行った。成分分析は(一財)食品分析センターに外注した。食物繊維含量は衛新第13号の酵素−HPLC法により求めた。その結果を表8に示す。
低糖質麺における理論値の糖質低減率は62.1%であったが、茹で麺で実測した糖質低減率は58.1%であった。茹で麺で実測した評価基準の糖質含量が理論値との間に誤差が生じた原因は、炭水化物の内訳が示されていない原料(例えば小麦粉)の炭水化物を糖質とみなしたこと、茹で処理時に澱粉等の麺線からの溶出、原料の規格書又は成分表の許容され得る誤差範囲などに由来すると考えられる。その誤差を勘案した上で、本発明の難消化性小麦澱粉及び難消化性デキストリンを含む製麺用粉原料を用いることで、製麺作業性及び食感に優れた糖質を50質量%超低減した麺類を製造することができる。
Claims (4)
- 難消化性小麦澱粉を30〜50質量%、
難消化性デキストリンを2〜15質量%、及び
バイタルグルテンを5〜23質量%、
を含む製麺用粉体組成物。 - 請求項1に記載の製麺用粉体組成物を製麺用粉原料として用いて製麺することを特徴とする製麺方法。
- 請求項2に記載の方法により得られる麺類。
- 請求項3に記載の麺類を調理して得られる調理麺。
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