JP7169133B2 - 製麺用粉体組成物 - Google Patents
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Description
中華麺、うどん、スパゲッティーなどの麺類は、小麦粉と任意の副原料に水を加えて捏ね上げ、定法の製麺工程を得て製造される。麺類は、その大半の原料が小麦粉であり、小麦粉には主要構成成分として澱粉質が含まれており、その澱粉が糖質含量を押し上げる原因となっている。麺類を低糖質化する有効な手段として、小麦粉(つまり澱粉質)を食物繊維等に置換することが知られている。食物繊維は、様々な健康機能を有していることから、低糖質化のための澱粉質代替原料として注目されている。特許文献1では、難消化性澱粉を30~50質量%、難消化性デキストリンを2~15質量%及びバイタルグルテンを5~23質量%を含む製麺用粉体組成物が開示されており、これにより、50質量%以上の糖質を低減しつつ、通常の麺に期待される外観や食感を維持し、良好な作業性を有する麺類を製造できることが記載されている。
しかしながら、難消化性澱粉等の食物繊維素材を主体とした麺用生地は、小麦粉を主体とした生地よりも麺帯表面に荒れが出易く、表面の荒れがひどいと、麺帯が切れる、最終麺圧が一定にならないなど作業性が悪くなる傾向にあり、茹でた低糖質麺の食感は、食物繊維素材に由来するボソつきや麺表面の荒れによるザラつきが出やすい傾向にある。そのため、更なる低糖質麺の改良が求められている。
ところで、麺類の食感改良のためにグルコマンナンを使用することは一般的である(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。しかしながら、これらは小麦粉を主体とした穀粉を主原料とした麺類の食感改良に関わるものであり、食物繊維を高配合された低糖質麺の食感や作業性を改善することについては何ら触れられていない。
また、モチ澱粉を麺類の食感改良を目的として使用することも一般的である(例えば、特許文献5、特許文献6)。前記同様、食物繊維を高配合された低糖質麺の改良については何ら触れられていない。
[1]モチ澱粉を5~30質量%、難消化性澱粉を30~50質量%、難消化性デキストリンを2~15質量%、及びバイタルグルテンを5~23質量%を含む製麺用粉体組成物。
[2]さらに増粘剤を含む、請求項1に記載の製麺用粉体組成物。
[3]前記[1]又は[2]に記載の製麺用粉体組成物を含む麺用生地。
[4]前記[1]又は[2]に記載の製麺用粉体組成物を粉体原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む、麺類の製造方法。
本発明の製麺用粉体組成物はモチ澱粉を5~30質量%、難消化性澱粉を30~50質量%、難消化性デキストリンを2~15質量%、及びバイタルグルテンを5~23質量%を含む。
本発明の製麺用粉体組成物は、製麺用粉体組成物の全量に対してモチ澱粉を5~30質量%含有する。好ましくは10~25質量%、さらに好ましくは12~18質量%含有する。5質量%未満では、麺帯及び/又は麺線表面の荒れが生じて作業性が悪くなり、難消化性澱粉に由来する茹で麺のザラつきとボソつきが目立つ傾向にある。30質量%を超えると、柔らかく弾力のない茹で麺になる傾向がある。
難消化性澱粉は以下に示すようにRS1~RS4に分類されている。
RS1:雑穀のように、澱粉が物理的に硬い組織に囲まれていることで消化酵素が澱粉まで届かないタイプ(物理的に閉じ込められた澱粉)
RS2:十分に加熱されていない未糊化の澱粉、アミロースの極めて多い澱粉など、澱粉の粒子自体が消化されにくいタイプ(抵抗性澱粉粒)
RS3:澱粉を一度糊化(α化)した後、澱粉が再結晶して安定な構造(β化)をとるようになったタイプ(老化澱粉)
RS4:澱粉を高程度に化学修飾することで消化酵素が作用しにくくなったタイプ(変性澱粉)
本発明に用いる難消化性澱粉は、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等の生澱粉類を物理的及び/又は化学的に加工して得られる上記RS3及び/又はRS4に分類される難消化性澱粉であって、消化酵素により消化されない難消化性成分(食物繊維)の含量が少なくとも70質量%以上含まれるものをいう。
RS3に分類される難消化性澱粉としては、例えば湿熱処理、パーボイル加工、プルラナーゼ処理により得られるものが挙げられ、このような加工処理は、RS2に分類されるハイアミロース澱粉に対して好適に適用される。また、RS4に分類される難消化性澱粉としては、化学修飾により、エステル化やエーテル化による架橋を施したものなどが挙げられる。好ましくは澱粉類をリン酸架橋して得られる難消化性澱粉であり、これは上記RS4に区分される難消化性澱粉であって、澱粉類を高度にリン酸架橋処理して消化酵素が極めて作用し難くなっているものをいう。
リン酸架橋処理された澱粉は、難消化性澱粉と易消化性である品質改良用加工澱粉に大別される。難消化性澱粉を評価するパラメーターには膨潤度、架橋度及び食物繊維含量(プロスキー法による)が使われる。架橋度が高くても食物繊維含量が極めて低いリン酸架橋澱粉もあるため、本願発明においては難消化性澱粉であるか否かは実質的に食物繊維含量で評価し、食物繊維含量が70質量%以上であるものを難消化性澱粉に分類する。なお、RS3及びRS4の難消化性澱粉の食物繊維含量は、プロスキー法、プロスキー変法、衛新第13号の酵素-HPLC法の何れによっても測定可能である。
難消化性澱粉は公知の方法で製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。原料とする澱粉には特に限定がない。市販されているものの好適な例として小麦澱粉を原料としたファイバージムRW(松谷化学社製)、タピオカ澱粉を原料としたパインスターチRT(松谷化学社製)、甘藷澱粉を原料とした松谷さつま(松谷化学社製)等が挙げられ、これらの食物繊維含量は70質量%以上である。
本発明において、難消化性澱粉は製麺用粉末原料全量に対して、30~50質量%の範囲で添加する。好ましくは35~45質量%、より好ましくは40~45質量%である。難消化性澱粉の含量が50質量%を超えると、ボソボソ感が強くなる傾向にある。難消化性澱粉の含量が30質量%未満では、糖質を50質量%以上低減させることが困難になる。
なお、難消化性デキストリン等の低分子水溶性食物繊維は、プロスキー法及びプロスキー変法で測定することができないので、通例、衛新第13号「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」に記載されている酵素-HPLC法で測定される(参考文献:日本食物繊維学会 http://jdf.umin.ne.jp/kakusyu/teigen-2.pdf、特開2006-149369)。
本発明において、難消化性デキストリンは製麺用粉末原料全量に対して、2~15質量%の範囲で添加する。好ましくは3~10質量%、より好ましくは5~8.5質量%添加する。難消化性デキストリンの含量が15質量%を超えると、吸水が悪く生地が得られにくくなる傾向にある。また難消化性デキストリンの含量が2質量%未満では、得られる麺の弾力が弱くなる傾向にある。
本発明において、バイタルグルテンは製麺用粉末原料全量に対して、タンパク質含量として5~23質量%含有するように添加する。好ましくは10~20質量%添加する。低糖質麺用の製麺用粉体組成物のタンパク質含量が23質量%を超えると、ゴム感が強くなる傾向にあり、5質量%未満では、得られる麺の弾力が弱くなる傾向にある。
増粘剤としては好ましくはグルコマンナン及び/又はキサンタンガムを使用することができ、さらに好ましくはコンニャクマンナンを使用することができる。
本発明において、増粘剤は製麺用粉末原料全量に対して、好ましくは4質量%以下、より好ましくは0.1~3.5質量、さらに好ましくは0.6~1.5質量%添加することができる。4.0質量%を超えると、加水量が多くなり柔らかく弾力感の少ない麺質になる傾向がある。
本発明の麺用生地は、少なくとも上記製麺用粉体組成物を含む。
本発明の麺類の製造方法は、上記記載の本発明の製麺用粉体組成物を粉体原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む以外は常法に従って製造することが出来る。
例えば本発明の製麺用粉体組成物に水分などを加えて混捏し生地を作成し、得られた生地を熟成した後、製麺ロールにより成型、複合および圧延して麺帯を製造し、切歯で切り出し麺線(生麺)とする、又は押出し製麺により麺線(生麺)を得る。得られた麺線を乾燥し乾麺としても良い。
(1)表1の配合表に記載の粉体原料をミキサーに投入して粉体混合し、次いで液体原料を加え、減圧下(-700mmHg)で13分間混合してそぼろ状の中華麺生地を得た。(2)得られた中華麺生地を常法に従って整形、複合及び圧延を行って麺帯を得た。
(3)麺帯をビニール袋で包み、30分間室温で熟成させた後、圧延して厚さ1.5mmの麺帯とし、切り刃♯18角刃で切り出して長さ25mmの生麺を得た。
(4)得られた生麺線を十分量の沸騰水中で茹で歩留が150質量%になるように茹で上げた。
(5)茹で上げた麺を直ちに湯切りし、醤油ベースのスープに投入し、試食に供した。
表2の配合表に記載の粉体原料とした以外は製造例1に従って標準的な中華麺を得た。
もち米澱粉に替えて表4記載の澱粉(食感改良に良く利用される変性澱粉)にした以外は製造例1に従って中華麺を製造し、上記製麺工程において、10名の専門パネラーにより下記表3の評価表に示す項目に従って麺帯の状態(表面の荒れ)を観ることで作業性を評価した。麺帯の状態は、表面の荒れがひどいほど、麺帯が切れる、最終麺圧が一定にならないなど作業性が悪くなるため、作業性評価の指標となる。
なお澱粉は、その種別や加工方法、加工度により吸水性が異なるため、ミキシング後の生地状態(特にそぼろ生地の大きさ)が揃うように加水量を適宜調節した。表4には「加水」として粉体原料100質量部に対する加水量が標準的な中華麺である表2の配合表の加水量を基準としてどれだけ変動したかを示した(例えば、+5%と表示した場合、粉体原料100質量部に対し水を5質量部増加させて42.8質量部の液体原料を使用したことを意味する。以降の試験例でも同様である。)。
また得られた中華麺それぞれについて10名の専門パネラーにより下記表3の評価表に示す項目に従って食感(つるみ、弾力)の評価を行った。なお、ヒドロキシプロピルタピオカ澱粉を使用する比較例1の低糖質麺(特開2017-023050)の作業性及び食感の評価点を3点とし、製造例2の標準的な中華麺における作業性及び食感の評価点を5点とした。結果を表3に示す。
澱粉B: ヒドロキシプロピルタピオカ澱粉(松谷化学社製松谷ゆり)
澱粉C: ヒドロキシプロピルリン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学社製松谷あさがお)
澱粉D: アセチル化タピオカ澱粉(松谷化学社製松谷さくら-2)
澱粉E: 酸化タピオカ澱粉(松谷化学社製MKK-100)
小麦粉ともち米澱粉の使用量を表5記載の通りとした以外は製造例1に従って中華麺を製造して試験例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
表6に記載した増粘剤0.5質量部を粉体原料に対しさらに添加した以外は実施例4に従って中華麺を製造し、試験例1と同様に評価した。結果を表6に示す。
表4に記載した質量部のグルコマンナンを粉体原料に対しさらに添加した以外は実施例4に従って中華麺を製造して評価した。結果を表4に示す。
製造例2で得られた小麦粉を主原料とした従来の中華麺と実施例11の生中華麺の糖質含量率の計算値を下記式1で求めた。また糖質低減率の計算値は、下記式2で求めた。計算結果を表8に示す。なお、糖質含量率は、各原料の規格書又は栄養成分表に基づいて算出した。鶏卵に関しては、5訂日本食品標準成分表に従った。炭水化物の内訳を糖質と繊維質に分けて表示されていない場合には、炭水化物は糖質とみなした。
式1:(「各原料の糖質含有率」×「各原料の配合重量部」)/「生地合計重量部」×100
式2:(「評価基準の糖質含量率」-「各比較例又は実施例の糖質含量率」)/「評価基準の糖質含量率」×100
Claims (4)
- モチ澱粉を5~30質量%、
難消化性澱粉を30~50質量%、
難消化性デキストリンを2~15質量%、
バイタルグルテンを5~23質量%、及び
グルコマンナンを0.1~3.5質量%
を含む製麺用粉体組成物。 - グルコマンナンを1.0~2.9質量%含む、請求項1に記載の製麺用粉体組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の製麺用粉体組成物を含む麺用生地。
- 請求項1又は請求項2に記載の製麺用粉体組成物を粉体原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む、麺類の製造方法。
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