JP2016166307A - 保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記(A)、(B)、及び(C)を含有する、保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる:
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物;
(B)アニオン部がPFm(Rf)n −(但し、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤;(C)ラジカル重合開始剤
【選択図】なし
Description
このような画像表示装置の表面や内部に設置される機能性フィルムは、通常、取扱い時に傷がつかないことが要求され、基材上に保護層を設けることが一般になされている。
本発明は、このような状況下になされたものであり、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制される、保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに当該保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
(B)アニオン部がPFm(Rf)n −(但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
(C)ラジカル重合開始剤
熱安定性、酸発生効率の点から好ましい。
更に、本発明は、光透過性基材の一面側に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルムも提供する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、下記(A)、(B)、及び(C)を含有することを特徴とする。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
(B)アニオン部がPFm(Rf)n −(但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
(C)ラジカル重合開始剤
発明者が検討の結果、当該白い析出物は、カチオン重合開始剤のリン成分(アニオン部)由来であることがわかった。
それに対して、本発明においては、カチオン重合開始剤(B)として、アニオン部がPFm(Rf)n −(但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤を用いる。このようなアニオン部を有する場合、白化現象を引き起こし易いPF6 −に比べて、疎水性が高くなり、且つ分子量が大きくなることから、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制できると考えられる。更に、上記PFm(Rf)n −はリン系のアニオン部であることから、有毒な重金属のアンチモンを用いることなく環境安全上好ましい上、硬化膜が加熱により変色しにくいという効果がある。本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、このように白化現象や変色を抑制でき、表示装置からの透過光の視認性をより高める点から、表示装置用途に好適である。
また、後述の実施例及び比較例で示されるように、本発明においては、光重合性成分(A)において、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含むことから、上記特定のアニオン部との相乗効果により、上記白化現象を抑制できている。更に、本発明においては、光重合性成分(A)において、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含むことから、カール抑制効果、硬度、及び密着性が向上している。
また、本発明においては、光重合性成分(A)全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれることから、薄膜であっても良好な硬度を有する硬化膜を得ることができる。カチオン重合性化合物の含有量を増加すると靭性が良好になるが、本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜であっても一定の硬度が要求される保護層形成用途であることから、ラジカル重合性基を有する化合物の含有量を高くする方が適した物性が得られる。
このように、本発明によれば、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制される、保護層形成用光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
以下、このような本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
本発明で用いられる光重合性成分(A)は、下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれるものである。
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
ここで、(i)におけるカチオン重合性基を有する化合物は、カチオン重合性基を有するが、ラジカル重合性基を有しない化合物(i-1)を表し、(i)におけるラジカル重合性基を有する化合物は、ラジカル重合性基を有するが、カチオン重合性基を有しない化合物(i-2)を表す。
本発明で用いられる光重合性成分(A)は、前記(i)及び(ii)の少なくとも1種であれば良く、以下の(1)〜(5)の態様が包含される。
(1)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、及び、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)
(2)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(3)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(4)ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(5)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
中でも、上記(1)、(4)、又は(5)が好適に用いられる。
カチオン重合性基を有する化合物(i-1)は、1分子中にカチオン重合性基を1個以上有するが、ラジカル重合性基を有しない化合物である。カチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。カチオン重合性基としては、中でも、逆カールの程度及び反応性の高さの点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種であることが好ましい。逆カールの点からはエポキシ基が特に好ましい。
pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの{ }内の基におけるnは同一でもよいし異なっていてもよい。
本発明に用いられる上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の市販品としては、ダイセル化学工業株式会社製、EHPE3150(nの和が平均15)を好適なものとして挙げられる。
カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物は、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)及びカチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)の合計量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが、好ましい。
また、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物は、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)中に、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、100質量%であることが、特に好ましい。
ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε−カプロラクトン(エポリードGT−401:ダイセル製)、エタンテトラカルボン酸テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)等の、1分子中に4個以上のカルボキシ基を有する脂肪族多価カルボン酸誘導体であって、一種又は二種以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物;
3−エチル−3−オキセタンメタノールとシランテトラオール重縮合物の縮合反応生成物(アロンオキセタンOXT−191(シランテトラオール重縮合物の平均縮合度5):東亞合成工業製)、及び下記化学式(A)等の、シラントリオール若しくはシランテトラオール又はこれらの重縮合物誘導体であって、一種又は二種以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物;
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(EHPE3150:ダイセル製、1分子中のエポキシ基数 平均15)等の前記一般式(I)で表される化合物のうち、nの和が4以上の化合物;及び、繰り返し単位中にカチオン性重合性基を含むポリマー;等を挙げることができる。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール等)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル等)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート等)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物等)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン等)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート等)、酸クロライド含有モノマー(例えば(メタ)アクリル酸クロライド等)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えば(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)などが挙げられる。
本発明に用いられるカチオン重合性基を有する化合物(i-1)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、中でも、カチオン重合性化合物が1分子内に10個以上のカチオン重合性基を有し、カチオン重合性基の官能基当量が250以下である化合物を少なくとも含むことが、好ましい。
なお、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)のカチオン重合性基の官能基当量は、下記式により算出することができる。
[カチオン重合性基の官能基当量]=[カチオン重合性基を有する化合物(i-1)の分子量]/[カチオン重合性基を有する化合物(i-1)が有するカチオン重合性基の数]
ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)は、1分子中にラジカル重合性基を1個以上有するが、カチオン重合性基を有しない化合物である。ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、P2は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性基を含む一価の基である。以下に一般式(III)で表される繰り返し単位のL2とP2の組み合わせの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。その他の繰り返し単位としては、特開2003−147017号公報の段落0034〜0038に記載の繰り返し単位を挙げることができ、このような繰り返し単位を含むポリマーの調製は、特開2003−147017号公報の段落0039〜0050等を参照して調製することができる。
−COOCH2CH=CH2
−COOCH2CH2OC(=O)CH=CH2
−COOCH2CH2OC(=O)C(CH3)=CH2
−CONHCH2CH2OC(=O)CH=CH2
−CONHCH2CH2OC(=O)C(CH3)=CH2
−COOCH2CH2OC(=O)Ph−CH=CH2(Ph=フェニレン基)
−COOCH2CH(OH)CH2OC(=O)CH=CH2
−COOCH2CH(OH)CH2OC(=O)C(CH3)=CH2
−COOCH2CH2OCH2NHC(=O)CH=CH2
本発明に用いられるラジカル重合性基を有する化合物(i-2)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、中でもラジカル重合性化合物が1分子内に3個以上のラジカル重合性基を有し、ラジカル重合性基の官能基当量が90〜120である化合物を少なくとも含むことが、好ましい。
なお、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)のラジカル重合性基の官能基当量は、下記式により算出することができる。
[ラジカル重合性基の官能基当量]=[ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)の分子量]/[ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が有するラジカル重合性基の数]
カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)は、1分子中にカチオン重合性基を1個以上とラジカル重合性基を1個以上とを有する化合物である。カチオン重合性基、及びラジカル重合性基としては、前記化合物(i)で例示した官能基と同様のものを用いることができる。なお、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)が2個以上のカチオン重合性基や2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基やラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)としては、例えば、下記一般式(IV−1)、(IV−2)及び(IV−3)で表される化合物が挙げられる。
保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、X2は、少なくとも1つが直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、中でも炭素数1〜5の直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
また、mは、保護層の硬度の点から、3以下であることが好ましく、更に1以下であることが好ましい。
一般式(IV−1)、(IV−2)又は(IV−3)で表される化合物は、市販品を入手しても良いし、特開2011−168561号公報、特開2013−14076号公報の記載を参考に調製することが可能である。一般式(IV−1)、(IV−2)又は(IV−3)で表される化合物の市販品としては、例えば、OXE−10、OXE−30(大阪有機化学工業株式会社製)等が挙げられる。
中でも、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から、カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物(i-1)に対する、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)の質量比((ii)/(i-1))が0.05以上であることが好ましく、更に0.1以上であることが好ましい。当該質量比が小さすぎると耐光試験後の密着性が不足する傾向がある。
本発明で用いられる(B)成分は、PFm(Rf)n −(但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)であるアニオン部と、カチオン部と共に構成されるオニウム塩からなり、光照射により酸を発生する光酸発生剤である。
本発明で用いられる(B)成分は、アニオン部に必ずフッ素化アルキル基を含むことから、白化現象を引き起こし易いPF6 −に比べて、発生する酸の疎水性が高くなり、且つ分子量が大きくなる。そのため、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制できると考えられる。本発明においては、上記PFm(Rf)n −はリン系のアニオン部であることから、有毒な重金属のアンチモンを用いることなく環境安全上好ましい上、ホウ素系アニオンB(C6F5)4-のオニウム塩では硬化膜を100℃加熱すると黄変が著しいのに対し、加熱時に硬化膜が黄変しにくい。
フッ素化アルキル基Rfとしては、中でも、CnF2n+1[nは1〜2の整数である]で表されるフッ素化アルキル基、又は、CnF2n+1CmH2m+1−[mは0〜1の整数、nは1〜2の整数であり、m+nは1〜2である。]で表されるフッ素化アルキル基であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアニオン部PFm(Rf)n −は、白化現象を引き起こし難くする点から、中でもPFm(Rf)n −中に含まれるフッ素原子数が8以上であることが好ましく、更に12以上であることが好ましい。一方、当該フッ素原子数は、多すぎると全体の分子量が高くなりすぎて膜中を移動し難くなる恐れがあり、且つ価格などの点から、30以下であることが好ましい。
また、本発明で用いられる特定の(A)成分中においても、アニオン部が硬化膜中を動きやすくなり、カチオン重合性基を有する化合物の反応率が向上して、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から、本発明で用いられるアニオン部PFm(Rf)n −の分子量は、中でも250〜360であることが好ましい。本発明で用いられる特定の(A)成分は、ラジカル重合性基を有する化合物とカチオン重合性基を有する化合物の混合系であって、且つラジカル重合性基を有する化合物量が多い系であることから、反応が早いラジカル重合性基を有する化合物の重合が進行した硬化膜において、カチオン重合性基を有する化合物の反応が進行する必要があるからである。このような分子量を有する化合物としては、例えば、PF3(CF3)3 −、PF4(C2F5)2 −等が挙げられる。
中でも、(B)成分としては、熱安定性、保存安定性、酸発生効率の点から、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明で用いられる(B)成分は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物の固形分中に0.1〜10質量%含まれることが好ましく、更に、0.5〜5質量%含まれることが好ましい。(B)成分の含有量が下限値よりも少ないと、カチオン重合性化合物の硬化反応の進行が不十分となって、カール抑制効果が低下する恐れがある。一方、(B)成分の含有量が上限値よりも多いと、硬化膜の硬度が低下する場合がある。
ラジカル重合開始剤としては、光照射により分解して発生するラジカルによってラジカル重合を開始させる光ラジカル重合開始剤を好適に使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を適宜選択して用いればよい。
なお、前記(B)成分が芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩のようなカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤として機能する場合には、別途(C)ラジカル重合開始剤を含まなくても良い。
(B)カチオン重合開始剤としてヨードニウム塩を用いる場合には、酸発生の際の増感剤のように機能して、感度を向上させる点から、アシルホスフィンオキサイド類を少なくとも含むことが好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド[BASF社製(ルシリンTPO)]、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[BASF社製(イルガキュア819)]が好適に用いられる。
本発明で用いられる(C)成分は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物の固形分中に0.1〜10質量%含まれることが好ましく、更に、1〜5質量%含まれることが好ましい。(C)成分の含有量が下限値よりも少ないと、ラジカル重合性化合物の硬化反応の進行が不十分となって、硬度が低下する恐れがある。一方、(C)成分の含有量が上限値よりも多いと、ラジカル重合反応のみが優先して進行しカールが顕著となる恐れがある。
本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の成分を含有してもよい。例えば、帯電防止剤や防眩剤、防汚剤を含んでなるものが、更に帯電防止性や防眩性、防汚染性を付与できる点から好ましい。更に、硬度を上昇させる点から、シリカ微粒子、樹脂微粒子、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等を混合しても良い。これらの添加剤は、公知の材料を適宜選択して用いることができる。
また、本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、上記性能を有しながら、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制でき、また硬化膜が加熱により変色し難いことから、表示装置からの透過光の視認性の向上に役立ち、表示装置用途に好適である。例えば、画像表示装置の表面やタッチパネルを備えた画像表示装置のエアギャップ部又はボンディング部など内部に用いられる光学フィルムの保護層に好適である。
本発明に係る光学フィルムは、光透過性基材の一面側に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルムである。
図1は、本発明に係る光学フィルムの層構成の一例を模式的に示した断面図である。尚、図1に示す断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)の縮尺を幅方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張して図示してある。
光学フィルム1は、光透過性基材10の一面側に、保護層20が設けられている。
以下、本発明の光学フィルムを構成する各層について順に説明する。
光透過性基材は、光を透過するものであれば、透明、半透明、無色または有色を問わないが、可視光域380〜780nmにおける平均光透過率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは85%以上である場合が好ましい。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
本発明においては、光学フィルムが用いられる態様によって、光透過性樹脂基材を選択することが好ましい。例えば、目的とする光学フィルムに光学的等方性が要求される場合は、光透過性樹脂基材として、トリアセテートセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセテートプロピオネートセルロース、アセテートブチレートセルロース等のようなセルロースエステル、ポリノルボルネン系透明樹脂の製品名アートン(JSR製)やゼオノア(日本ゼオン製)等のような環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂による易接着処理がされたPET等が用いられることが好ましい。
上記の中でも、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、及びアクリルフィルムから選ばれる基材フィルムが好ましい。機械的強度や寸法安定性の観点からは、延伸加工、特に一軸又は二軸延伸加工されたポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)が好ましく、TAC、アクリルは光透過性及び光学的等方性の観点で好適である。
光学フィルムにおいて、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層は、通常、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層として形成される。
前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物には、前記光重合性成分(A)の重合物が含まれる。
塗布方法は、光透過性基材表面に前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法を用いることができる。
本発明の硬化物は、上記保護層形成用光硬化性樹脂組成物の塗膜に紫外線を照射することにより製造することができる。上記光硬化性樹脂組成物に光を照射すると硬化反応(ラジカル重合反応及びカチオン重合反応)が促進され、硬化物が形成される。
(合成例1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートのホモポリマーの合成)
窒素導入口、撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた4つ口フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート48部、メチルイソブチルケトン(MIBK)50部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.48部、ドデシルメルカプタン0.49部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら85℃に加熱して3時間反応を行った。得られたポリマー溶液の固形分は50%であり、GPCで分析したところポリマーの重量平均分子量(ポリスチレン換算)は15,000であった。
(1)保護層形成用光硬化性樹脂組成物の調製
下記に示す組成の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を調製した。
<保護層形成用光硬化性樹脂組成物1>
・カチオン重合性化合物(多官能エポキシ、EHPE3150、ダイセル製):10質量部
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(1)、商品名アロニックスM−403、東亞合成製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物):45質量部
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(2)、商品名KAYARAD PET−30、日本化薬(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物):45質量部
・ラジカル重合開始剤(商品名 イルガキュア184、BASF):4質量部
・カチオン重合開始剤(1)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート):0.5質量部
・レベリング剤:メガファックF477:0.1質量部
・溶剤:メチルエチルケトン:75質量部
・溶剤:メチルイソブチルケトン:75質量部
光透過性基材として、25μmセルローストリアセテートフィルム(富士写真フィルム(株)製)を用い、当該基材上に、保護層形成用光硬化性樹脂組成物1を硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布した。70℃にて60秒乾燥し、紫外線150mJ/cm2を照射して光学フィルムを製造した。
(1)保護層形成用光硬化性樹脂組成物の調製
下記表1に示す組成の実施例2〜8の保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及び比較例1〜5の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を調製した。
表1中の略称は以下のとおりである。
・カチオン重合性化合物(2官能エポキシ、セロキサイド2021P、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(4官能エポキシ、エポリードGT401、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(多官能エポキシ(平均15官能)、EHPE3150、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(エポキシ基含有ポリマー(1)、合成例1のポリ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート))
・カチオン重合性化合物(エポキシ基含有ポリマー(2)、マープルーフG−01100(グリシジルメタクリレートユニット含有ポリマー)、日油製)
・カチオン重合性ラジカル重合性化合物(オキセタニル基含有(メタ)アクリレート(1)、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート、大阪有機化学工業製)
・カチオン重合性ラジカル重合性化合物(オキセタニル基含有(メタ)アクリレート(2)、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート、大阪有機化学工業製)
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(1)、商品名アロニックスM−403、東亞合成製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物)
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(2)、商品名KAYARAD PET−30、日本化薬製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物)
・ラジカル重合開始剤(Irg184、イルガキュア184、BASF)
・カチオン重合開始剤(1)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、WO2005/116038の実施例1の方法で作製したスルホニウム塩)
・カチオン重合開始剤(2)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、サンアプロ 製)
・レベリング剤(商品名メガファックF477、 DIC製)
・溶剤:MEK(メチルエチルケトン)
・溶剤:MIBK(メチルイソブチルケトン)
実施例1の光学フィルムの製造において、実施例1の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を、それぞれ実施例2〜8の保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及び比較例1〜5の保護層形成用光硬化性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造した。
(1)カール幅
作製した光学フィルムを100mm×100mmに切り出した後、保護層表面を上にして水平な場所に置き、フィルムの両端の距離を定規で計測した。
保護層塗工面側に反った場合(正カール)には未表示とし、基材面側に反った場合(逆カール)に「(逆)」と表示した。
<評価基準>
評価○:70mm以上
評価△:50mm以上〜70mm未満
評価×:50mm未満
作製した光学フィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、硬度の評価は、JIS K5600−5−4に準拠する鉛筆硬度試験により実施した。
得られた光学フィルムを高温高湿度環境下(80℃、湿度90%)で125時間放置後に、保護層表面を目視して、表面に析出物が析出して白化しているか否か評価した。
<評価基準>
評価○:保護層表面に析出物が析出しておらず、白化していない
評価×:保護層表面に析出物が析出しており、白化している
得られた光学フィルムを、紫外線オートフェードメーター(スガ試験機製、製品番号;U48AU)を用い、ブラックパネル温度63℃で150時間放置した。その後、光学フィルムの保護層表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦と横に10×10の切り込みを1mm間隔で入れ、計100個の正方形の升目を刻んだ。刻んだ面にニチバン(株)製工業用24mmセロテープ(登録商標)を圧着し引き剥がす試験を5回連続して行い、100個の升目中、剥がれずに残っていた数を目視で確認し評価した。
<評価基準>
評価○:95以上
評価△:85以上〜95未満
評価×:85未満
10 光透過性基材
20 保護層
Claims (5)
- 下記(A)、(B)、及び(C)を含有する、保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
(B)アニオン部がPFm(Rf)n −(但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
(C)ラジカル重合開始剤 - 前記(A)成分に、1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、請求項1に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
- 前記(B)光カチオン重合開始剤が、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物。
- 光透過性基材の一面側に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルム。
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