JP6492799B2 - 保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学フィルム - Google Patents

保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学フィルム Download PDF

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Description

本発明は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに、当該硬化物を備えた光学フィルムに関し、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の画像表示装置の表面やタッチパネルを備えた画像表示装置のエアギャップ部又はボンディング部など内部に用いられる光学フィルムに関する。
画像表示装置において、LCD、タッチパネルを搭載したLCDやELなどは、省電力、軽量、薄型等といった特徴を有しており、モバイル型情報端末機器として急速に普及している。このような画像表示装置の表面や内部に設置される機能性フィルムとしては、反射防止性、帯電防止性、導電性などの光学的あるいは電気的な性能を有するフィルムの他、タッチパネルに用いられる電極部分を保護する目的で用いられる保護フィルムなどを挙げることができる。
このような画像表示装置の表面や内部に設置される機能性フィルムは、通常、取扱い時に傷がつかないことが要求され、基材上に保護層を設けることが一般になされている。
保護層は、通常、熱硬化性樹脂、或いは光硬化性樹脂を用いて、光透過性基材上に当該硬化性樹脂の硬化物を形成してなるが、近年、画像表示装置の薄膜化に伴い、光学フィルムも薄膜化が要求されており、従来に比べて、光透過性基材の薄膜化が求められている。従来の光透過性基材の膜厚は最も薄膜もので40μm程度であったが、近年の基材の薄膜技術の進化により、基材膜厚が25μmのものがある。このような基材の薄膜化により、基材自体の硬さ及び堅さが低下するため、従来の保護層形成用樹脂組成物では、硬度および硬化収縮性が不十分であった。薄膜の基材上に形成した、薄膜の保護層であっても一定の硬度を有し、且つ、剥がれが生じ難く、更に、保護層の成分の硬化収縮による積層体全体の反り(所謂カール)が抑制される必要がある。当該カールの発生は光透過性基材の厚みを薄くすると特に顕著となるものである。
従来の膜厚が厚い樹脂基材に対する技術として、特許文献1には、少なくとも(メタ)アクリロイル基を分子内に有する化合物(A)と、エポキシ基を分子内に有する化合物(B)と、(メタ)アクリロイル基とカチオン重合性基を分子内に併せ持つ化合物(C)とを含み、前記(メタ)アクリロイル基を分子内に有する化合物(A)10〜80重量部に対して、前記エポキシ基を分子内に有する化合物(B)10〜80重量部と、前記(メタ)アクリロイル基とカチオン重合性基を分子内に併せ持つ化合物(C)1〜40重量部配合してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が記載されている。当該硬化型樹脂組成物によれば、低硬化収縮性と表面硬度の高い、基体との密着性、透明性、屈曲性に優れたハードコート膜を形成することができると記載されている。
また、特許文献2には、樹脂基材の傷つきを防止する保護層として、特定のカチオン重合性化合物及び特定のラジカル重合性化合物を含有して硬化している層であり、且つ、樹脂基材に前記特定のカチオン重合性化合物が浸透して硬化している積層体が開示されている。当該積層体によれば、充分な耐擦傷性を有しつつ、カールが抑えられ、光透過性樹脂基材−ハードコート層間の密着性に優れた光学積層体を得ることができると記載されている。
特開2003−252954号公報 特開2007−237483号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているような、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物とを含有した樹脂組成物は、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出し、白化するという新たな問題が生じた。また、特許文献1及び2に具体的に開示されている樹脂組成物では、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合に、一定の硬度、密着性を有しながら、保護層の成分の硬化収縮による積層体全体の反り(所謂カール)を抑制するには未だ不十分であった。
本発明は、このような状況下になされたものであり、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制される、保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに当該保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物とを含有した樹脂組成物において、光重合性成分中に1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、ラジカル重合性化合物を特定量含み、且つ、特定のカチオン重合開始剤のアニオン部を用いることにより、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制されるとの知見を得た。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、下記(A)、(B)、及び(C)を含有することを特徴とする。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
(B)アニオン部がPF(Rf) (但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
(C)ラジカル重合開始剤
本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物においては、前記(A)成分に、1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが、更に密着性が良好で、且つ、保護層のカールが抑制される点から好ましい。
また、本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物においては、前記(B)光カチオン重合開始剤が、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の少なくとも1種であることが、
熱安定性、酸発生効率の点から好ましい。
本発明はまた、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物も提供する。
更に、本発明は、光透過性基材の一面側に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルムも提供する。
本発明によれば、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制される、保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに当該保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む光学フィルムを提供することができる。
図1は、本発明に係る光学フィルムの一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及び光学フィルムについて説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
[保護層形成用光硬化性樹脂組成物]
本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、下記(A)、(B)、及び(C)を含有することを特徴とする。
(A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
(B)アニオン部がPF(Rf) (但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
(C)ラジカル重合開始剤
ラジカル重合性基を有する化合物(以下、単に「ラジカル重合性化合物」という場合がある)は一般に硬化時に体積が収縮することから、硬度は高くなりやすいものの基材と保護層の積層体に反りが発生しやすく、保護層塗工面側に反る(正カール)。一方、カチオン重合性基を有する化合物(以下、単に「カチオン重合性化合物」という場合がある)の中でもエポキシ基を有する化合物は一般に硬化時に体積が膨張することから、ラジカル重合性化合物とは反対側(基材面側)に反り(逆カール)が発生しやすく、高硬度となりにくい。基材と保護層の積層体のカールを抑制するために、正カールが発生しやすいラジカル重合性化合物と逆カールが発生しやすいカチオン重合性化合物とを含有した樹脂組成物を用いることが考えられるが、当該樹脂組成物は、高温高湿度環境下で硬化膜表面に白い析出物が見られる(白化現象)という新たな問題が生じた。このような高温高湿度環境下で硬化膜表面に白い析出物が見られる白化現象は、後述の比較例1及び比較例2に示したように、ラジカル重合性化合物のみを用いた場合や、カチオン重合性化合物のみを用いた場合には、見られない現象であった。
発明者が検討の結果、当該白い析出物は、カチオン重合開始剤のリン成分(アニオン部)由来であることがわかった。
それに対して、本発明においては、カチオン重合開始剤(B)として、アニオン部がPF(Rf) (但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤を用いる。このようなアニオン部を有する場合、白化現象を引き起こし易いPF に比べて、疎水性が高くなり、且つ分子量が大きくなることから、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制できると考えられる。更に、上記PF(Rf) はリン系のアニオン部であることから、有毒な重金属のアンチモンを用いることなく環境安全上好ましい上、硬化膜が加熱により変色しにくいという効果がある。本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、このように白化現象や変色を抑制でき、表示装置からの透過光の視認性をより高める点から、表示装置用途に好適である。
また、後述の実施例及び比較例で示されるように、本発明においては、光重合性成分(A)において、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含むことから、上記特定のアニオン部との相乗効果により、上記白化現象を抑制できている。更に、本発明においては、光重合性成分(A)において、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含むことから、カール抑制効果、硬度、及び密着性が向上している。
また、本発明においては、光重合性成分(A)全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれることから、薄膜であっても良好な硬度を有する硬化膜を得ることができる。カチオン重合性化合物の含有量を増加すると靭性が良好になるが、本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜であっても一定の硬度が要求される保護層形成用途であることから、ラジカル重合性基を有する化合物の含有量を高くする方が適した物性が得られる。
このように、本発明によれば、高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがなく、且つ、薄膜の基材上に薄膜の保護層を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制される、保護層形成用光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、少なくとも前記(A)、(B)、及び(C)を含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
((A)光重合性成分)
本発明で用いられる光重合性成分(A)は、下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれるものである。
(i)カチオン重合性基を有する化合物、及び、ラジカル重合性基を有する化合物
(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
ここで、(i)におけるカチオン重合性基を有する化合物は、カチオン重合性基を有するが、ラジカル重合性基を有しない化合物(i-1)を表し、(i)におけるラジカル重合性基を有する化合物は、ラジカル重合性基を有するが、カチオン重合性基を有しない化合物(i-2)を表す。
本発明で用いられる光重合性成分(A)は、前記(i)及び(ii)の少なくとも1種であれば良く、以下の(1)〜(5)の態様が包含される。
(1)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、及び、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)
(2)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(3)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(4)ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
(5)カチオン重合性基を有する化合物(i-1)、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)、及び、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)
中でも、上記(1)、(4)、又は(5)が好適に用いられる。
<カチオン重合性基を有する化合物(i-1)>
カチオン重合性基を有する化合物(i-1)は、1分子中にカチオン重合性基を1個以上有するが、ラジカル重合性基を有しない化合物である。カチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。カチオン重合性基としては、中でも、逆カールの程度及び反応性の高さの点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種であることが好ましい。逆カールの点からはエポキシ基が特に好ましい。
エポキシ基を有する化合物としては、硬化速度、硬化物の耐熱性の観点で、1分子中に1個以上の脂環構造(脂肪族環構造)と1個以上のエポキシ基とを有するエポキシ化合物(「脂環式エポキシ化合物」と称する)が好ましい。上記脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、例えば、(i−1−a)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(i−1−b)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物などが挙げられる。
上述の(i−1−a)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキサン環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成される基(シクロヘキセンオキシド基)が好ましい。
上述の(i−1−b)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(I)中、R’はp価のアルコールからp個の−OHを除した基(残基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。)
前記p価のアルコール[R’−(OH)p]としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等の脂肪族アルコール、ベンジルアルコールのような芳香族アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール)、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール等の多価アルコールなどが挙げられる。当該多価アルコールの炭素数は、4〜15であることが好ましく、更に4〜10であることが好ましい。
pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの{ }内の基におけるnは同一でもよいし異なっていてもよい。
上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物などが挙げられる。
本発明に用いられる上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の市販品としては、ダイセル化学工業株式会社製、EHPE3150(nの和が平均15)を好適なものとして挙げられる。
本発明においては、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物が必ず含まれる。
カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物は、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)及びカチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)の合計量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが、好ましい。
また、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物は、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)中に、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、100質量%であることが、特に好ましい。
1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622:ナガセケムテック製)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411:ナガセケムテック製)等の1分子中に4個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;1分子中に4個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールに一種又は二種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;1分子中に4個以上の水酸基を有するフェノール類にアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのポリグリシジルエーテル類;
ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε−カプロラクトン(エポリードGT−401:ダイセル製)、エタンテトラカルボン酸テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)等の、1分子中に4個以上のカルボキシ基を有する脂肪族多価カルボン酸誘導体であって、一種又は二種以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物;
3−エチル−3−オキセタンメタノールとシランテトラオール重縮合物の縮合反応生成物(アロンオキセタンOXT−191(シランテトラオール重縮合物の平均縮合度5):東亞合成工業製)、及び下記化学式(A)等の、シラントリオール若しくはシランテトラオール又はこれらの重縮合物誘導体であって、一種又は二種以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物;
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(EHPE3150:ダイセル製、1分子中のエポキシ基数 平均15)等の前記一般式(I)で表される化合物のうち、nの和が4以上の化合物;及び、繰り返し単位中にカチオン性重合性基を含むポリマー;等を挙げることができる。
前記繰り返し単位中にカチオン性重合性基を含むポリマーとしては、例えば、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
(式中Rは水素原子又はメチル基を表し、Pはカチオン重合性基を含む一価の基であり、Lは単結合又は二価の連結基である。)
は単結合又は二価の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基、−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−である。Pは、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基を含む一価の基である。
本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、対応するモノマーを重合させて合成することが簡便で好ましい。この場合の重合反応としてはラジカル重合が最も簡便で好ましい。以下に一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位のうち、より好ましい例としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位であり、その中でもグリシジル(メタ)アクリレート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位であることが特に好ましい。また、本発明の一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、複数種の一般式(II)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、その中でも特にグリシジル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位で構成されたコポリマーとすることでより効果的に硬化収縮を低減できる。
本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは一般式(II)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーであってもよい。例えば、ポリマーのTgや親疎水性を制御したい場合や、ポリマー中のカチオン重合性基の含有量をコントロールする目的で一般式(II)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとすることができる。一般式(II)以外の繰り返し単位の導入方法は、対応するモノマーを共重合させて導入する手法が好ましい。
一般式(II)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを共重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等、N−i−プロピルアクリルアミド等)、(メタ)アクリル酸類((メタ)アクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、マレイミド類(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物類(例えばスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げれる。これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。一般式(I)以外の繰り返し単位を誘導するモノマーとしては、中でも、(メタ)アクリル酸から誘導されるエステル類、およびアミド類、マレイミド類、および芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられる。
一般式(I)以外の繰り返し単位としてカチオン重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位も導入することができる。特に、保護層の硬度を高めたい場合や、密着性を改良したい場合、カチオン重合性基以外の反応性基を含むコポリマーとする手法は好適である。カチオン重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位の導入方法は対応するモノマーを共重合する手法が簡便で好ましい。
以下にカチオン重合性基以外の反応性基を有するモノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール等)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル等)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート等)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物等)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン等)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート等)、酸クロライド含有モノマー(例えば(メタ)アクリル酸クロライド等)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えば(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)などが挙げられる。
本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマー中、一般式(II)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、30質量%以上100質量%以下、好ましくは50質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。一般式(II)以外の繰り返し単位が、反応性基を有さない場合、その含量が多すぎると硬度が低下し、反応性基を有する場合、硬度は維持できることもあるが、硬化収縮が大きくなったり、脆性が悪化する場合がある。特にアルコキシシリル基含有モノマーと一般式(II)で表される繰り返し単位の共重合体を用いる場合などのように架橋反応時に脱水、脱アルコールなどの分子量低下を伴う場合、硬化収縮が大きくなりやすい。このような分子量低下を伴って架橋反応が進行する反応性基を有する繰り返し単位を本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーに導入する場合の一般式(II)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
本発明の一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーとしては、中でも、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)が好ましく用いられる。
一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーの好ましい分子量範囲は重量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
本発明に用いられるカチオン重合性基を有する化合物(i-1)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、カチオン重合性基の官能基当量は、特に限定されないが、350以下が好ましく、より好ましくは300以下、さらに好ましくは250以下である。上記官能基当量が350を超えると、保護層の硬度が低下したり、カールが著しくなる場合があるからである。
本発明に用いられるカチオン重合性基を有する化合物(i-1)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、中でも、カチオン重合性化合物が1分子内に10個以上のカチオン重合性基を有し、カチオン重合性基の官能基当量が250以下である化合物を少なくとも含むことが、好ましい。
なお、カチオン重合性基を有する化合物(i-1)のカチオン重合性基の官能基当量は、下記式により算出することができる。
[カチオン重合性基の官能基当量]=[カチオン重合性基を有する化合物(i-1)の分子量]/[カチオン重合性基を有する化合物(i-1)が有するカチオン重合性基の数]
<ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)>
ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)は、1分子中にラジカル重合性基を1個以上有するが、カチオン重合性基を有しない化合物である。ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、2個以上であることが好ましく、更に3個以上であることが好ましい。その中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、分子内に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
また、繰り返し単位中にラジカル性重合性基を含むポリマーを用いても良く、このようなポリマーとしては、例えば、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
(式中Rは水素原子又はメチル基を表し、Pはラジカル重合性基を含む一価の基であり、Lは単結合又は二価の連結基である。)
は単結合又は二価の連結基であるが、具体的には、前記Lと同様のものを挙げることができる。
また、Pは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性基を含む一価の基である。以下に一般式(III)で表される繰り返し単位のLとPの組み合わせの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。その他の繰り返し単位としては、特開2003−147017号公報の段落0034〜0038に記載の繰り返し単位を挙げることができ、このような繰り返し単位を含むポリマーの調製は、特開2003−147017号公報の段落0039〜0050等を参照して調製することができる。
とPの組み合わせとしては、
−COOCHCH=CH
−COOCHCHOC(=O)CH=CH
−COOCHCHOC(=O)C(CH)=CH
−CONHCHCHOC(=O)CH=CH
−CONHCHCHOC(=O)C(CH)=CH
−COOCHCHOC(=O)Ph−CH=CH(Ph=フェニレン基)
−COOCHCH(OH)CHOC(=O)CH=CH
−COOCHCH(OH)CHOC(=O)C(CH)=CH
−COOCHCHOCHNHC(=O)CH=CH
本発明の一般式(III)で表される繰り返し単位を含むポリマー中、硬度を高くする点から、一般式(III)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。
本発明の一般式(III)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい分子量範囲は重量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
本発明に用いられるラジカル重合性基を有する化合物(i-2)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、ラジカル重合性基の官能基当量は、特に限定されないが、300以下が好ましく、より好ましくは275以下、さらに好ましくは250以下である。上記官能基当量が300を超えると、保護層の硬度が低下する場合があるからである。
本発明に用いられるラジカル重合性基を有する化合物(i-2)としては、カール抑制効果、硬度、密着性、及び、高温高湿度環境下での白化抑制の点から、中でもラジカル重合性化合物が1分子内に3個以上のラジカル重合性基を有し、ラジカル重合性基の官能基当量が90〜120である化合物を少なくとも含むことが、好ましい。
なお、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)のラジカル重合性基の官能基当量は、下記式により算出することができる。
[ラジカル重合性基の官能基当量]=[ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)の分子量]/[ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が有するラジカル重合性基の数]
また、保護層形成用光硬化性樹脂組成物にて、薄膜基材で低カール性と硬度の両立が要求される場合、ラジカル重合性基を有する化合物(i-2)が1分子中に水酸基を1個以上と(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、分子量/(メタ)アクリロイル基数が120以下である化合物を少なくとも含むことが好ましい。水酸基はカチオン重合性基の反応を促進させたり、カチオン重合性基と反応して収縮率が低下するため、カールが低減し、且つ、(メタ)アクリロイル基の密度が高いためラジカル重合により高い架橋密度の膜となるため硬度が維持される。当該化合物の例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
<カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)>
カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)は、1分子中にカチオン重合性基を1個以上とラジカル重合性基を1個以上とを有する化合物である。カチオン重合性基、及びラジカル重合性基としては、前記化合物(i)で例示した官能基と同様のものを用いることができる。なお、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)が2個以上のカチオン重合性基や2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基やラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明においては、アニオン部の疎水性が高く分子量が高いPF(Rf) である、カチオン重合開始剤(B)を用いることにより、硬化膜表面の白化現象を抑制している。その一方で、カチオン重合性基を有する化合物を用いてもカール抑制効果が低下する傾向がみられた。これは、ラジカル重合性基の重合の方が反応が早く、架橋が進行した膜中を分子量が高い酸HPF(Rf)が移動し難いため、カチオン重合反応が進行し難くなっているからと推定された。それに対して、本発明の(A)成分にカチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)を用いると、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から好ましい。
カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)としては、中でも、カチオン重合性基としてオキセタニル基を有し、且つ、ラジカル重合性基としてエチレン性不飽和結合を含む基を有する化合物が、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上効果が高い点から好ましい。
カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)としては、例えば、下記一般式(IV−1)、(IV−2)及び(IV−3)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(IV−1)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜5のアルキレン基又はフェニレン基を表す。mは0〜6の整数である。)
(一般式(IV−2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。X及びXはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式(IV−3)において、R及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X及びXはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
一般式(IV−1)又は(IV−2)において、R、R及びRにおける炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、t−ブチル等の分岐鎖状アルキル基などの直鎖状又は分岐鎖状炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。本発明におけるR、R及びRとしては、中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(IV−1)において、Xは炭素数1〜20のアルキレン基を表すが、当該アルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であっても良い。保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、中でも炭素数1〜5の直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
一般式(IV−1)において、Xは炭素数1〜5のアルキレン基又はフェニレン基を表すが、当該アルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であっても良い。mは0〜6の整数であり、mが2以上の場合に、2つ以上のXはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、Xは、少なくとも1つが直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、中でも炭素数1〜5の直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
また、mは、保護層の硬度の点から、3以下であることが好ましく、更に1以下であることが好ましい。
一般式(IV−2)におけるX及びX、並びに、一般式(IV−3)におけるX及びXは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表すが、当該アルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であっても良い。保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、中でも炭素数1〜2の直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
一般式(IV−1)、(IV−2)又は(IV−3)で表される化合物としては、中でも、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
一般式(IV−1)、(IV−2)又は(IV−3)で表される化合物は、市販品を入手しても良いし、特開2011−168561号公報、特開2013−14076号公報の記載を参考に調製することが可能である。一般式(IV−1)、(IV−2)又は(IV−3)で表される化合物の市販品としては、例えば、OXE−10、OXE−30(大阪有機化学工業株式会社製)等が挙げられる。
また、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)としては、前記一般式(II)で表される繰り返し単位と前記一般式(III)で表される繰り返し単位を含むポリマーを用いても良い。当該ポリマーにおいて、前記一般式(II)で表される繰り返し単位と前記一般式(III)で表される繰り返し単位との質量比は、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、50/50〜5/95であることが好ましく、更に20/80〜10/90であることが好ましい。
本発明に用いられる光重合性成分(A)においては、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる。中でも、薄膜の基材に薄膜の保護層を形成する場合の保護層の硬度を向上する点から、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が、(A)成分全量中に70質量%以上含まれることが好ましく、更に80質量%以上含まれることが好ましい。一方、カール抑制の点からは、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が、(A)成分全量中に95質量%以下含まれることが好ましく、更に(A)成分全量中に90質量%以下含まれることが好ましい。
中でも、薄膜の基材に薄膜の保護層を形成する場合の保護層の硬度を向上する点から、ラジカル重合性基を有するがカチオン重合性基を有しない化合物(i-2)が、(A)成分全量中に70質量%以上含まれることが好ましく、更に80質量%以上含まれることが好ましく、より更に85質量%以上含まれることが好ましい。一方、カール抑制の点からは、ラジカル重合性基を有するがカチオン重合性基を有しない化合物(i-2)が、(A)成分全量中に95質量%以下含まれることが好ましく、更に(A)成分全量中に90質量%以下含まれることが好ましい。
また、本発明に用いられる光重合性成分(A)においては、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)は、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から、(A)成分全量中に1質量%以上含まれることが好ましく、更に2質量%以上含まれることが好ましい。
また、本発明に用いられる光重合性成分(A)においては、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなる点から、カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物(i-1)とカチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)の合計量が、(A)成分全量中に40質量%以下であることが好ましく、更に30質量%以下であることが好ましく、より更に25質量%以下であることが好ましい。
中でも、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から、カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物(i-1)に対する、カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物(ii)の質量比((ii)/(i-1))が0.05以上であることが好ましく、更に0.1以上であることが好ましい。当該質量比が小さすぎると耐光試験後の密着性が不足する傾向がある。
本発明で用いられる(A)成分は、上述のように1種又は2種以上混合して用いることができる。本発明で用いられる(A)成分の含有量は、その他の成分との兼ね合いから適宜選択されれば良く、特に限定されない。本発明で用いられる(A)成分は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物の固形分中に30〜98.9質量%含まれることが好ましく、更に、50〜98.5質量%含まれることが好ましい。なおここでの固形分とは、溶剤を除く全ての成分をいい、液状のモノマーも含まれる。また、本発明で用いられる(A)成分は、(A)、(B)、及び(C)成分の合計量に対して80〜98.9質量%含まれることが好ましく、更に、90〜98.5質量%含まれることが好ましい。
<(B)カチオン重合開始剤>
本発明で用いられる(B)成分は、PF(Rf) (但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)であるアニオン部と、カチオン部と共に構成されるオニウム塩からなり、光照射により酸を発生する光酸発生剤である。
本発明で用いられる(B)成分は、アニオン部に必ずフッ素化アルキル基を含むことから、白化現象を引き起こし易いPF に比べて、発生する酸の疎水性が高くなり、且つ分子量が大きくなる。そのため、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制できると考えられる。本発明においては、上記PF(Rf) はリン系のアニオン部であることから、有毒な重金属のアンチモンを用いることなく環境安全上好ましい上、ホウ素系アニオンB(C)-のオニウム塩では硬化膜を100℃加熱すると黄変が著しいのに対し、加熱時に硬化膜が黄変しにくい。
本発明で用いられるフッ素化アルキル基Rfは、カチオン重合開始能が高い点から、中でも水素原子の80質量%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。
フッ素化アルキル基Rfとしては、中でも、C2n+1[nは1〜2の整数である]で表されるフッ素化アルキル基、又は、C2n+12m+1−[mは0〜1の整数、nは1〜2の整数であり、m+nは1〜2である。]で表されるフッ素化アルキル基であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアニオン部PF(Rf) は、白化現象を引き起こし難くする点から、中でもPF(Rf) 中に含まれる炭素数が1以上であることが好ましく、更に3以上であることが好ましい。一方、当該炭素数は、反応性の点から12以下であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアニオン部PF(Rf) は、白化現象を引き起こし難くする点から、中でもPF(Rf) 中に含まれるフッ素原子数が8以上であることが好ましく、更に12以上であることが好ましい。一方、当該フッ素原子数は、多すぎると全体の分子量が高くなりすぎて膜中を移動し難くなる恐れがあり、且つ価格などの点から、30以下であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアニオン部PF(Rf) は、白化現象を引き起こし難くする点から、分子量が190〜800であることが好ましく、更に250〜450であることが好ましい。
また、本発明で用いられる特定の(A)成分中においても、アニオン部が硬化膜中を動きやすくなり、カチオン重合性基を有する化合物の反応率が向上して、保護層の硬度を向上しつつ硬化後の保護層のカール抑制効果が高くなり、且つ、耐光試験後の密着性が向上する点から、本発明で用いられるアニオン部PF(Rf) の分子量は、中でも250〜360であることが好ましい。本発明で用いられる特定の(A)成分は、ラジカル重合性基を有する化合物とカチオン重合性基を有する化合物の混合系であって、且つラジカル重合性基を有する化合物量が多い系であることから、反応が早いラジカル重合性基を有する化合物の重合が進行した硬化膜において、カチオン重合性基を有する化合物の反応が進行する必要があるからである。このような分子量を有する化合物としては、例えば、PF(CF 、PF(C 等が挙げられる。
一方、(B)成分のカチオン部としては、公知の光酸発生剤のカチオン部を使用することができる。例えば、トリフェニルスルホニウム等のトリアリールスルホニウム、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム、ジベンゾチオフェニウム、S,S’−(チオジ−4,1−フェニレン)ビス[S,S−ジフェニル]スルホニウム、ビス{[4−(2一ヒドロキシ)エトキシ]ジフェニルスルフォニオフェニル}スルフイド・・・・等のスルホニウムカチオン、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、ジフェニルヨードニウム、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウム等のジアリールヨードニウムカチオン、等が挙げられる。
中でも、(B)成分としては、熱安定性、保存安定性、酸発生効率の点から、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の少なくとも1種を用いることが好ましい。
(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートなどのスルホニウム塩、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートなどのヨードニウム塩は、WO2005/116038記載の方法で製造することができる。
本発明で用いられる(B)成分は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
本発明で用いられる(B)成分は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物の固形分中に0.1〜10質量%含まれることが好ましく、更に、0.5〜5質量%含まれることが好ましい。(B)成分の含有量が下限値よりも少ないと、カチオン重合性化合物の硬化反応の進行が不十分となって、カール抑制効果が低下する恐れがある。一方、(B)成分の含有量が上限値よりも多いと、硬化膜の硬度が低下する場合がある。
<(C)ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、光照射により分解して発生するラジカルによってラジカル重合を開始させる光ラジカル重合開始剤を好適に使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を適宜選択して用いればよい。
ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3’,4−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン及びその位置異性体混合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート(商品名「パーブチルZ」、日油(株)製)等の過酸化エステル類;t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等の過酸化物類;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;キサントン類;1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシケトン類(商品名「Irgacure184」、BASF社製)等;2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;チタノセン化合物;芳香族ヨードニウム塩;芳香族スルホニウム塩等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、前記(B)成分が芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩のようなカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤として機能する場合には、別途(C)ラジカル重合開始剤を含まなくても良い。
本発明で用いられるラジカル重合開始剤としては、硬化性及び透明性の点から、中でも、α−ヒドロキシケトン類が好ましく、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[BASF社製(イルガキュア184)]、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[BASF社製(イルガキュア127)]、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[BASF社製(イルガキュア2959)]、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン][Lamberti社製(ESACURE ONE)]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[BASF社製(DAROCUR1173)]が好適に用いられる。
(B)カチオン重合開始剤としてヨードニウム塩を用いる場合には、酸発生の際の増感剤のように機能して、感度を向上させる点から、アシルホスフィンオキサイド類を少なくとも含むことが好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド[BASF社製(ルシリンTPO)]、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[BASF社製(イルガキュア819)]が好適に用いられる。
本発明で用いられる(C)成分は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
本発明で用いられる(C)成分は、保護層形成用光硬化性樹脂組成物の固形分中に0.1〜10質量%含まれることが好ましく、更に、1〜5質量%含まれることが好ましい。(C)成分の含有量が下限値よりも少ないと、ラジカル重合性化合物の硬化反応の進行が不十分となって、硬度が低下する恐れがある。一方、(C)成分の含有量が上限値よりも多いと、ラジカル重合反応のみが優先して進行しカールが顕著となる恐れがある。
<その他の成分>
本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の成分を含有してもよい。例えば、帯電防止剤や防眩剤、防汚剤を含んでなるものが、更に帯電防止性や防眩性、防汚染性を付与できる点から好ましい。更に、硬度を上昇させる点から、シリカ微粒子、樹脂微粒子、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等を混合しても良い。これらの添加剤は、公知の材料を適宜選択して用いることができる。
本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物には、更に溶剤を含んでいても良い。本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて溶剤を、必要に応じて例えば真空下で気泡を排除しつつ、撹拌、混合することにより調製される。撹拌、混合する際の温度は、例えば10〜60℃程度である。撹拌、混合には、公知の装置、例えば、自転公転型ミキサー、1軸又は多軸エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ディソルバー等を使用できる。
本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、薄膜の保護層として形成するために、25℃で測定した粘度が0.5〜10mPa・Sであることが好ましく、更に1〜5mPa・Sであることが好ましい。ここでの粘度は、B型粘度計により測定することができる。
本発明の保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、薄膜の基材上に薄膜を形成した場合であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、カールが抑制されるものであり、中でも、20μm以下の膜厚の保護層形成に適しており、更に10μm以下の膜厚の保護層であっても好適に用いることができる。
また、本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物は、上記性能を有しながら、高温高湿度環境下においても、硬化膜表面にブリードアウトし難くなり白い析出物が析出せず白化現象を抑制でき、また硬化膜が加熱により変色し難いことから、表示装置からの透過光の視認性の向上に役立ち、表示装置用途に好適である。例えば、画像表示装置の表面やタッチパネルを備えた画像表示装置のエアギャップ部又はボンディング部など内部に用いられる光学フィルムの保護層に好適である。
[光学フィルム]
本発明に係る光学フィルムは、光透過性基材の一面側に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルムである。
図1は、本発明に係る光学フィルムの層構成の一例を模式的に示した断面図である。尚、図1に示す断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)の縮尺を幅方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張して図示してある。
光学フィルム1は、光透過性基材10の一面側に、保護層20が設けられている。
本発明に係る光学フィルムは、光透過性基材の一面側に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置されていることから、膜厚が薄い光透過性基材に、薄膜の保護層を形成しても、一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、保護層のカールが抑制され、且つ高温高湿度環境下で硬化膜表面に析出物が析出して白化することがないことから、薄膜の光学フィルムが得られ、ディスプレイの薄膜化に適している。
以下、本発明の光学フィルムを構成する各層について順に説明する。
<光透過性基材>
光透過性基材は、光を透過するものであれば、透明、半透明、無色または有色を問わないが、可視光域380〜780nmにおける平均光透過率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは85%以上である場合が好ましい。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
また、本発明においては、光透過性樹脂基材上に形成しても密着性が良好で、且つ、保護層のカールが抑制されることから、光透過性樹脂基材が好適に用いられる。
本発明においては、光学フィルムが用いられる態様によって、光透過性樹脂基材を選択することが好ましい。例えば、目的とする光学フィルムに光学的等方性が要求される場合は、光透過性樹脂基材として、トリアセテートセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセテートプロピオネートセルロース、アセテートブチレートセルロース等のようなセルロースエステル、ポリノルボルネン系透明樹脂の製品名アートン(JSR製)やゼオノア(日本ゼオン製)等のような環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂による易接着処理がされたPET等が用いられることが好ましい。
上記の中でも、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、及びアクリルフィルムから選ばれる基材フィルムが好ましい。機械的強度や寸法安定性の観点からは、延伸加工、特に一軸又は二軸延伸加工されたポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)が好ましく、TAC、アクリルは光透過性及び光学的等方性の観点で好適である。
また、本発明においては、光透過性基材に表面処理(例、鹸化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよく、プライマー層(接着剤層)を形成してもよい。
光透過性基材の厚さは、通常、20μm〜200μm程度である。本発明においては、特にカール防止性に優れるようにしたため、光透過性樹脂基材の厚さが薄くてもカール防止性を達成可能になり、20μm以上40μm未満程度の厚さであっても好適に用いることが可能である。
<保護層>
光学フィルムにおいて、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層は、通常、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層として形成される。
前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物には、前記光重合性成分(A)の重合物が含まれる。
前記光透過性基材上に、前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。
塗布方法は、光透過性基材表面に前記本発明に係る保護層形成用光硬化性樹脂組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法を用いることができる。
本発明の硬化物は、上記保護層形成用光硬化性樹脂組成物の塗膜に紫外線を照射することにより製造することができる。上記光硬化性樹脂組成物に光を照射すると硬化反応(ラジカル重合反応及びカチオン重合反応)が促進され、硬化物が形成される。
光照射には、例えば、波長が250〜400nm程度の光を使用し、照射量は、例えば0.1〜100J/cm2程度である。また、光照射後、必要に応じて、例えば50〜200℃程度(好ましくは100〜200℃)の温度で0.5〜5時間程度加熱処理を施してもよい(ポストベーク処理)。ポストベーク処理を行うことにより、重合反応が更に進行し、更に硬度が向上した硬化物を形成することができる。
上記硬化反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。また、硬化反応の反応雰囲気としては硬化反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
本発明に係る保護層は、薄膜であっても一定の硬度を有し、密着性が良好で、且つ、保護層のカールが抑制されるものであり、中でも、20μm以下の膜厚に適しており、更に10μm以下の膜厚の保護層であっても好適に用いることができる。保護層の膜厚は硬度の点から3μm以上であることが好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、更に、帯電防止層、防眩層、防汚層、及び低屈折率層よりなる群から選択される少なくとも1種の層が更に配置されていても良い。これらの層は、本発明の効果が損なわれない限り、従来公知の構成を適宜採用することができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(合成例1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートのホモポリマーの合成)
窒素導入口、撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた4つ口フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート48部、メチルイソブチルケトン(MIBK)50部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.48部、ドデシルメルカプタン0.49部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら85℃に加熱して3時間反応を行った。得られたポリマー溶液の固形分は50%であり、GPCで分析したところポリマーの重量平均分子量(ポリスチレン換算)は15,000であった。
参考例1)
(1)保護層形成用光硬化性樹脂組成物の調製
下記に示す組成の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を調製した。
<保護層形成用光硬化性樹脂組成物1>
・カチオン重合性化合物(多官能エポキシ、EHPE3150、ダイセル製):10質量部
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(1)、商品名アロニックスM−403、東亞合成製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物):45質量部
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(2)、商品名KAYARAD PET−30、日本化薬(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物):45質量部
・ラジカル重合開始剤(商品名 イルガキュア184、BASF):4質量部
・カチオン重合開始剤(1)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート):0.5質量部
・レベリング剤:メガファックF477:0.1質量部
・溶剤:メチルエチルケトン:75質量部
・溶剤:メチルイソブチルケトン:75質量部
(2)光学フィルムの製造
光透過性基材として、25μmセルローストリアセテートフィルム(富士写真フィルム(株)製)を用い、当該基材上に、保護層形成用光硬化性樹脂組成物1を硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布した。70℃にて60秒乾燥し、紫外線150mJ/cm2を照射して光学フィルムを製造した。
(実施例2〜8、比較例1〜5)
(1)保護層形成用光硬化性樹脂組成物の調製
下記表1に示す組成の実施例2〜8の保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及び比較例1〜5の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を調製した。

表1中の略称は以下のとおりである。
・カチオン重合性化合物(2官能エポキシ、セロキサイド2021P、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(4官能エポキシ、エポリードGT401、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(多官能エポキシ(平均15官能)、EHPE3150、ダイセル製)
・カチオン重合性化合物(エポキシ基含有ポリマー(1)、合成例1のポリ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート))
・カチオン重合性化合物(エポキシ基含有ポリマー(2)、マープルーフG−01100(グリシジルメタクリレートユニット含有ポリマー)、日油製)
・カチオン重合性ラジカル重合性化合物(オキセタニル基含有(メタ)アクリレート(1)、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート、大阪有機化学工業製)
・カチオン重合性ラジカル重合性化合物(オキセタニル基含有(メタ)アクリレート(2)、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート、大阪有機化学工業製)
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(1)、商品名アロニックスM−403、東亞合成製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物)
・ラジカル重合性化合物(多官能アクリレート(2)、商品名KAYARAD PET−30、日本化薬製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物)
・ラジカル重合開始剤(Irg184、イルガキュア184、BASF)
・カチオン重合開始剤(1)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、WO2005/116038の実施例1の方法で作製したスルホニウム塩)
・カチオン重合開始剤(2)(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、サンアプロ 製)
・レベリング剤(商品名メガファックF477、 DIC製)
・溶剤:MEK(メチルエチルケトン)
・溶剤:MIBK(メチルイソブチルケトン)
(2)光学フィルムの製造
参考例1の光学フィルムの製造において、参考例1の保護層形成用光硬化性樹脂組成物を、それぞれ実施例2〜8の保護層形成用光硬化性樹脂組成物、及び比較例1〜5の保護層形成用光硬化性樹脂組成物に変更した以外は、参考例1と同様にして光学フィルムを製造した。
[評価方法]
(1)カール幅
作製した光学フィルムを100mm×100mmに切り出した後、保護層表面を上にして水平な場所に置き、フィルムの両端の距離を定規で計測した。
保護層塗工面側に反った場合(正カール)には未表示とし、基材面側に反った場合(逆カール)に「(逆)」と表示した。
<評価基準>
評価○:70mm以上
評価△:50mm以上〜70mm未満
評価×:50mm未満
(2)鉛筆硬度
作製した光学フィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、硬度の評価は、JIS K5600−5−4に準拠する鉛筆硬度試験により実施した。
(3)高温高湿度環境下の白化
得られた光学フィルムを高温高湿度環境下(80℃、湿度90%)で125時間放置後に、保護層表面を目視して、表面に析出物が析出して白化しているか否か評価した。
<評価基準>
評価○:保護層表面に析出物が析出しておらず、白化していない
評価×:保護層表面に析出物が析出しており、白化している
(4)耐光試験後の密着性
得られた光学フィルムを、紫外線オートフェードメーター(スガ試験機製、製品番号;U48AU)を用い、ブラックパネル温度63℃で150時間放置した。その後、光学フィルムの保護層表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦と横に10×10の切り込みを1mm間隔で入れ、計100個の正方形の升目を刻んだ。刻んだ面にニチバン(株)製工業用24mmセロテープ(登録商標)を圧着し引き剥がす試験を5回連続して行い、100個の升目中、剥がれずに残っていた数を目視で確認し評価した。
<評価基準>
評価○:95以上
評価△:85以上〜95未満
評価×:85未満
1 光学フィルム
10 光透過性基材
20 保護層

Claims (6)

  1. 下記(A)、(B)、及び(C)を含有する、保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
    (A)下記(i)及び(ii)の少なくとも1種である光重合性成分であって、1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物を含み、1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含み、(A)成分全量中に、少なくともラジカル重合性基を有する化合物が50質量%以上含まれる
    (i)カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物、及び、ラジカル重合性基を有するがカチオン重合性基を有しない化合物
    (ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物
    (B)アニオン部がPF(Rf) (但し、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Rfはフッ素化アルキル基を表し、m+n=6であり、nは1以上)である、カチオン重合開始剤
    (C)ラジカル重合開始剤
  2. 前記(B)光カチオン重合開始剤が、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の少なくとも1種である、請求項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
  3. 前記1分子中にカチオン重合性基を4個以上有する化合物が、カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物及びカチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物の合計量に対して、70質量%以上である、請求項1又は2に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
  4. 前記(ii)カチオン重合性基及びラジカル重合性基を有する化合物が、1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、当該1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、(A)成分全量中に1質量%以上であり、カチオン重合性基を有するがラジカル重合性基を有しない化合物と1分子中にオキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計量が、(A)成分全量中に40質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物。
  6. 光透過性基材の一面側に、請求項1〜のいずれか1項に記載の保護層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む保護層が配置された、光学フィルム。
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