JP2016048362A - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶配向膜からのアウトガス量が少なく、かつ信頼性の高い液晶表示素子を得る。
【解決手段】ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を液晶配向剤に含有させる。

(A及びAは水素原子又は1価の有機基であり、AとAの炭素数の合計が0〜7である。Yは酸素原子又は硫黄原子、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、Xは単結合又は2価の有機基である。「*」は結合手を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN型、VA(Vertical Alignment)型、MVA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS(Fringe Field Switching)型、光学補償ベンド型(OCB型)等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルガノシロキサンなどの重合体が使用され、中でも、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
近年、液晶パネルは、従来のようにパーソナルコンピュータ等の表示装置に使用されるだけでなく、例えば液晶テレビやカーナビゲーションシステム、携帯電話、スマートフォン、インフォメーションディスプレイなどの多種の用途で使用されている。液晶パネルの重要な特性の一つとして、使用による品質低下が少ない信頼性の高いことが挙げられ、この特性を満たすべく種々の液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、第三級ブトキシカルボニル基(t−BOC基)で保護されたアミノ基が1級アミノ基に対してオルト位に導入された芳香族ジアミンを用い、このジアミンを用いて得られるポリアミック酸やポリイミドを液晶配向剤に含有させることが提案されている。この技術によると、膜形成時の加熱によりt−BOC基が脱保護されてアミノ基が生成し、生成したアミノ基の分子内反応又は分子間反応(架橋反応)により信頼性を改善する旨が特許文献1には記載されている。
国際公開第2013/115228号
特許文献1に記載のものは、膜形成時の加熱で生成したアミノ基を利用する技術であり、架橋反応が進行しにくいため、液晶パネルの信頼性を十分に改善できないことが考えられる。
また、熱分解性のモノマーを用いた場合、加熱後に未反応の官能基が多く残存したままであると、液晶パネルの長期間点灯時にパネル中に気泡が発生する不良が起きることが考えられる。こうした不都合の発生を抑制するには、ポストベーク後において液晶配向膜からのアウトガスが少ないことが求められる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液晶配向膜からのアウトガス量が少なく、かつ信頼性の高い液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、熱分解性を示すと考えられる特定構造を重合体に導入することを試みた。そして、この特定構造を有する重合体を液晶配向剤の重合体成分として用いることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子が提供される。
本発明は一つの側面において、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有し、該重合体の少なくとも一部が、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)である液晶配向剤を提供する。
(式(1)中、A及びAは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基であり、AとAの炭素数の合計が0〜7である。Yは酸素原子又は硫黄原子であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、Xは単結合又は2価の有機基である。「*」は結合手を示す。)
本発明は、別の一つの側面において、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜、及び当該液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。
上記重合体(P)を含む液晶配向剤によれば、アウトガス量が少ない液晶配向膜を形成することができる。また、本発明の液晶表示素子は、上記重合体(P)を含む液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有することから、使用に伴う品質劣化が少なく、信頼性に優れている。
実施例及び比較例で使用した透明電極膜の電極パターンを示す図。 実施例で使用した透明電極膜の電極パターンを示す図。 実施例で使用した透明電極膜の電極パターンを示す図。
以下に、液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体(P)>
本発明に係る液晶配向剤は、重合体成分として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種を主骨格とし、かつ下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する。
(式(1)中、A及びAは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。ただし、AとAの炭素数の合計が0〜7である。Yは酸素原子又は硫黄原子であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、Xは単結合又は2価の有機基である。「*」は結合手を示す。)
上記式(1)において、A及びAの1価の有機基としては、例えば1価の炭化水素基;1価の炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−等の2価のヘテロ原子含有基で置換した基;1価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)等で置換した基;複素環を有する1価の基、などが挙げられる。A及びAの炭素数は、AとAの炭素数の合計が0〜7の範囲内であれは特に制限されないが、ポストベーク時の加熱によって脱離した基「−CHA」に由来する化合物が配向膜中に残存する量を少なくする観点から、0〜6であることが好ましく、0〜4であることがより好ましく、0〜3であることが更に好ましい。
ここで、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
1価の炭化水素基の具体例としては、鎖状炭化水素基として、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基等のアルキル基:エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;などが挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。また、脂環式炭化水素基としては、例えばシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等を;芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基等を;それぞれ挙げることができる。
及びAとしては、加熱による基「−CHA」の脱離しやすさの観点から、中でも水素原子、又は置換若しくは無置換の1価の鎖状炭化水素基であることが好ましく、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。なお、AとAは互いに同じでも異なっていてもよい。
の炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。なお、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基の具体例については、A及びAで例示した基のうち炭素数1〜6のものが挙げられる。Rとしては、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
の2価の有機基としては、例えば2価の炭化水素基;2価の炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−NR−、−CONR−(ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。)等の2価のヘテロ原子含有基で置換した基;2価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子等で置換した基;複素環を有する2価の基、などが挙げられる。
ここで、2価の炭化水素基の具体例としては、鎖状炭化水素基として、例えばメチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基などのアルカンジイル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。また、脂環式炭化水素基としては、例えばシクロヘキシレン基等を;芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタニレン基等を;それぞれ挙げることができる。
は、単結合、又は置換若しくは無置換の2価の鎖状炭化水素基であることが好ましく、単結合、又は置換若しくは無置換のアルカンジイル基であることがより好ましい。
式(1)中の「*」は芳香族環に結合していることが好ましい。式(1)中の「*」が結合する芳香族環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、イミダゾール環、チオール環等が挙げられる。好ましくはベンゼン環、ナフタレン環又はピリジン環である。
は、化合物の合成しやすさの点で酸素原子であることが好ましい。
重合体(P)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドは、従来公知の方法に従って合成することができる。具体例としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物及びジカルボン酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸誘導体と、ジアミンとを含む原料を用いて重合体(P)を合成する方法などが挙げられる。
[ポリアミック酸]
重合体(P)としてのポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。具体的な方法としては、[1]上記式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を原料組成に含む重合により合成する方法、[2]上記式(1)で表される構造を有するジアミンを原料組成に含む重合により合成する方法、[3]上記式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物及び上記式(1)で表される構造を有するジアミンを原料組成に含む重合により合成する方法、などが挙げられる。これらのうち、モノマーの制約が少ない点で[2]の方法によることが好ましい。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。なお、上記テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、溶剤に対する溶解性や透明性が良好である点において、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。中でも、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」ともいう。)を含むことが更に好ましい。
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記特定テトラカルボン酸二無水物を、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全体量に対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、40モル%以上含むものであることがより好ましく、60モル%以上含むものであることが更に好ましい。
(ジアミン)
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンとしては、上記式(1)で表される構造及び2個の1級アミノ基を有する化合物(以下「特定ジアミン」とも称する。)を含んでいることが好ましい。
特定ジアミンの具体例としては、例えば下記式(c)で表される化合物が挙げられる。
(式(c)中、Bは、上記式(1)で表される部分構造を有する2価の有機基であり、B及びBは、それぞれ独立に水素原子又は上記式(1)で表される部分構造を有する1価の有機基であり、Z及びZは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基であり、R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。n1及びn2は、それぞれ独立に0〜2の整数であり、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1である。ただし、m1=1の場合、Bは上記式(1)で表される部分構造を有し、m1=0かつm2=0の場合、B及びBのうち少なくとも一方は、上記式(1)で表される部分構造を有し、m1=0かつm2=1の場合、B、B及びBのうち少なくともいずれかは、上記式(1)で表される部分構造を有する。)
上記式(c)において、Bの具体例としては、例えば下記式(b−1)で表される基などが挙げられる。
(式(b−1)中、Rは、窒素原子又は3価の炭化水素基である。A、A、Y、R及びXは、それぞれ上記式(1)と同義である。「*」は結合手であることを示す。)
上記式(b−1)において、Rの3価の炭化水素基は、好ましくは芳香環基である。
及びBの1価の有機基は、上記式(1)で表される部分構造を1個以上有する基であればよい。好ましくは、上記式(1)で表される1価の基である。
及びZの2価の連結基は、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基の1個以上のメチレン基を−O−で置き換えてなる2価の基であることが好ましい。
n1及びn2は、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
特定ジアミンの好ましい具体例としては、例えば下記式(d)で表される化合物などが挙げられる。
(上記式(d)中、Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、n3は0〜2の整数である。A、A、Y、R及びXは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
上記式(d)において、A、A、Y、R及びXの例示及び好ましい具体例については、上記式(1)の説明をそれぞれ適用することができる。
上記式(d)中、ジアミノフェニル基における2個の1級アミノ基の結合位置としては、上記式(1)で表される基に対して2,4−位、2,5−位、3,5−位等が挙げられるが、信頼性の改善効果が高い点で、好ましくは3,5−位である。
n3は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
また、特定ジアミンの好ましい具体例として、下記式(e)で表される化合物が挙げられる。
(式(e)中、Zは単結合又は2価の連結基であり、Vは、水素原子又は上記式(1)で表される1価の基であり、R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。n4及びn5は、それぞれ独立に0〜2の整数である。A、A、Y、R及びXは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
上記式(e)において、A、A、Y、R及びXの例示及び好ましい具体例については、上記式(1)の説明をそれぞれ適用することができる。Zは、2価の連結基であることが好ましく、その好ましい具体例については、上記式(c)中のZ及びZの好ましい例示の説明を適用することができる。
n4及びn5は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
特定ジアミンの具体例としては、例えば下記式(MDA−1)〜式(MDA−21)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
なお、特定ジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。以下では、式(MDA−X)で表される化合物を「化合物(MDA−X)」と称することもある。
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンは特定ジアミンのみでもよいが、特定ジアミンとともにその他のジアミンを併用してもよい。その他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、及び下記式(D−1)
(式(D−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(D−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜(D−1−5)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
その他のジアミンとしては更に、2つの1級アミノ基の他に、窒素含有複素環、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(以下「窒素含有構造」とも称する。)を有するジアミンなども挙げられる。こうした窒素含有構造を有するジアミンを原料として用いることにより、対応する窒素含有構造と、上記式(1)で表される構造とを有する重合体が得られる。こうした重合体によれば、液晶表示素子の信頼性の改善効果を高くでき好適である。
窒素含有構造を有するジアミンの具体例としては、例えば2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、下記式(D−2−1)〜式(D−2−6)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
ポリアミック酸の合成に際して使用するジアミンとしては、特定ジアミンの配合割合を、ジアミンの全体量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、3モル%以上とすることがより好ましく、5モル%以上とすることがさらに好ましく、10モル%以上とすることが特に好ましい。特定ジアミンの使用割合の上限は特に制限はないが、他のジアミンによって液晶配向性や電気特性などの各種特性を高める点で、90モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましく、70モル%以下とすることがさらに好ましい。
窒素含有構造を有するジアミンの使用割合は、合成に使用するジアミンの全体量に対して、0.1モル%以上とすることが好ましく、1モル%以上とすることがより好ましく、2モル%以上とすることがさらに好ましい。窒素含有構造を有するジアミンの使用割合は、60モル%以下とすることが好ましく、50モル%以下とすることがより好ましく、40モル%以下とすることがさらに好ましい。
なお、その他のジアミンとしては1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(特定ジアミンの合成)
特定ジアミンは、公知の方法を適宜組み合わせることによって合成することができる。その一例としては、例えば、特定ジアミン中の一級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法などが挙げられる。なお、ジニトロ中間体を合成する方法は目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、ジニトロアニリンとアルキルクロロギ酸とを反応させる方法、ジニトロ安息香酸クロリドと、上記式(1)で表される構造を有する水酸基含有化合物とを反応させる方法、ジニトロフェニルイソシアナート等のイソシアネート基含有化合物と、基「−CHA」及び水酸基を有する化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま次の工程に供してもよく、ポリアミック酸を単離したうえで次の工程に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで次の工程に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
[ポリアミック酸エステル]
ポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
ここで、方法[I]で使用するエステル化剤としては、例えば水酸基含有化合物、アセタール系化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類などを;アセタール系化合物として、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタールなどを;ハロゲン化物として、例えば臭化メチル、臭化エチル、臭化ステアリル、塩化メチル、塩化ステアリル、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタンなどを;エポキシ基含有化合物として、例えばプロピレンオキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
方法[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、テトラカルボン酸二無水物を上記のアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。また、方法[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。上記式(1)で表される部分構造を有するポリアミック酸エステルを得る場合、方法[II]及び[III]では、反応に使用するジアミンの少なくとも一部として上記式(1)で表される構造を有するジアミンを使用することで、上記式(1)で表される部分構造を有するポリアミック酸エステルを得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま次の工程に供してもよく、ポリアミック酸エステルを単離したうえで次の工程に供してもよく、又は単離したポリアミック酸エステルを精製したうえで次の工程に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
[ポリイミド]
重合体(P)としてのポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、60〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。なお、ポリイミドの合成方法は上記に限定せず、例えばポリアミック酸エステルのイミド化により行ってもよい。
[ポリアミド]
重合体(P)としてのポリアミドは、例えばジカルボン酸とジアミンとを反応させることによって得ることができる。反応に使用するジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−デカノキシイソフタル酸などを挙げることができる。なお、ジカルボン酸は、これらのうちから選択される1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。反応に使用するジアミンとしては、特定ジアミンを単独で用いてもよいが、特定ジアミンとともにその他のジアミンを用いてもよい。
ジカルボン酸とジアミンとの反応は、好ましくは適当な有機溶媒中で行われる。このとき、ジカルボン酸を酸クロリド化したうえでジアミンと反応させてもよい。反応温度は、好ましくは−100〜200℃、より好ましくは−20〜150℃とすることができる。なお、ジカルボン酸をそのままジアミンとの反応に供する場合には、反応温度を室温(25℃)以上の温度とすることが好ましく、ジカルボン酸を酸クロリド化したうえでジアミンと反応させる場合には、反応温度を室温よりも低い温度とすることが好ましい。反応時間は、好ましくは0.1〜40時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
以上のようにして得られる重合体(P)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体(P)の溶液粘度(mPa・s)は、重合体(P)の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
重合体(P)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000であることがより好ましい。
なお、本発明を拘束するものではないが、上記式(1)で表される構造を有する重合体(P)を含む液晶配向剤では、塗膜形成時の加熱(ポストベーク)によって、上記式(1)で表される構造中の基「−CHA」が脱離してイソシアネート基が再生され、この再生したイソシアネート基と、系中のカルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基等との間で架橋反応が十分に進行するものと推測される。こうした分子間又は分子内の架橋反応によって、使用に伴う各種特性の低下が起こりにくく、その結果、良好な信頼性を示す液晶表示素子が得られたことが推測される。
<その他の成分>
上記液晶配向剤は、必要に応じて、重合体(P)以外のその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、重合体(P)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えば上記式(1)で表される部分構造を有さないポリアミック酸、上記式(1)で表される部分構造を有さないポリイミド、上記式(1)で表される部分構造を有さないポリアミック酸エステル、上記式(1)で表される部分構造を有さないポリアミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に配合する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して、50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。ここで、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンも用いることができる。
これらエポキシ基含有化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
なお、その他の成分としては、本発明の目的及び効果を妨げない範囲内において、上記以外の添加剤を適宜配合してもよい。上記以外の添加剤として具体的には、例えば分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、増感剤、分散剤、密着助剤、帯電防止剤、レベリング剤、抗菌剤等が挙げられる。
[溶剤]
本発明に係る液晶配向剤は、重合体(P)及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な有機溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には、固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明に係る液晶配向膜は、上記のように調製した液晶配向剤により形成される。また、本発明に係る液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶表示素子の駆動モードは特に限定せず、TN型、STN型、IPS型、FFS型、VA型、MVA型、PSA型などの種々の駆動モードに適用することができる。
液晶表示素子は、例えば以下の(1)〜(3)の工程を含む方法により製造することができる。工程(1)は、所望の駆動モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び工程(3)は各駆動モードに共通である。
[工程(1):塗膜の形成]
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)TN型、STN型、VA型、MVA型又はPSA型の液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、それぞれの基板における透明性導電膜の形成面上に、上記で調製した液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここで、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤の塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去する目的で、また必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−2)IPS型又はFFS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、配向膜となる塗膜が形成される。このとき、液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、ポリアミック酸エステルであるか又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
[工程(2):配向処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対しラビング処理を施してもよい。
なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して、更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
PSA型(Polymer sustained alignment)の液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま用いて以下の工程(3)を実施してもよいが、液晶分子の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で弱いラビング処理等の配向処理を行ってもよい。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜は、PSA型液晶表示素子にも好適に用いることができる。
[工程(3):液晶セルの構築]
(3−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。まず、第一の方法は、従来から知られている方法である。この方法では、先ずそれぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。この手法では、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、用いた液晶が等方相をとる温度まで更に加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。また、液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
(3−2)PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記(3−1)と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000〜200,000J/mであり、より好ましくは1,000〜100,000J/mである。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。なお、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率、重合体溶液の溶液粘度、重合体の重量平均分子量及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[重合体の重量平均分子量]
重量平均分子量は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
<化合物の合成>
[合成例1A:化合物(MDA−1)の合成]
下記スキーム1に従って化合物(MDA−1)を合成した。
窒素導入管、滴下漏斗、還流冷却管、温度計及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下で3,5−ジニトロアニリン16.5g(0.090mol)、ピリジン14.2g(0.180mol)、THFを加えて溶解させて全量を80mlとした。このフラスコを氷水で冷やしながら、メチルクロロギ酸12.7g(0.135mol)を90mlのジクロロメタンに溶かした溶液を滴下して撹拌した。滴下後に室温で24時間撹拌した後、酢酸エチルを600ml加えて数分撹拌した。溶液全部を分液漏斗に移し、1規定の塩酸溶液を加え、混合した後、水層を分離した。さらに、500mlの純水で混合する操作と、水層の取り出し操作とを3回行った後、下層の有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、中間体(1)を得た(収率95%)。
次いで、窒素導入管、滴下漏斗、温度計及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、上記中間体(1)を4.80g(0.020mol)、亜鉛25.4g(0.400mol)、塩化アンモニウム4.28g(0.080mol)、THF180ml、EtOH20mlを加えて溶解させた。このフラスコを氷水で冷やしながら、純水10mlを滴下して撹拌した。滴下後に室温で48時間撹拌した後、セライトろ過した。ろ液に酢酸エチルを100ml加えて、全量を分液漏斗に移した後、300mlの純水で混合する操作と、水層の取り出し操作とを3回行った後、下層の有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、化合物(MDA−1)を得た(収率87%)。
[合成例2A,3A:化合物(MDA−2)及び化合物(MDA−3)の合成]
出発物質としてメチルクロロギ酸の代わりにそれぞれエチルクロロギ酸、ヘキシルクロロギ酸を用いた以外は化合物(MDA−1)の合成方法と同様の方法で化合物(MDA−2)及び化合物(MDA−3)を得た。
[合成例4A;化合物(MDA−4)の合成]
出発物質としてメチルクロロギ酸の代わりにブチルクロロギ酸、3,5−ジニトロアニリンの代わりに2,4−ジニトロアニリンを用いた以外は化合物(MDA−1)の合成方法と同様の方法で化合物(MDA−4)を得た。
[合成例5A;化合物(MDA−5)の合成]
下記スキーム5に従って化合物(MDA−5)を合成した。
窒素導入管、滴下漏斗、還流冷却管、温度計及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下でアミノエタノール1.53g(0.025mol)、フッ化カリウム7.25g(0.125mol)、炭酸カリウム17.3g(0.125mol)、THFを加えて溶解させて全量を80mlとした。このフラスコを氷水で冷やしながら、プロピルクロロギ酸3.20g(0.026mol)を滴下して撹拌した。滴下後に室温で24時間撹拌した後、セライトろ過した。ろ液に酢酸エチルを300ml加えた後、溶液全部を分液漏斗に移し、500mlの純水を加え、混合した後、水層を分離した。これを合計3回行った後、下層の有機層を取り出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、中間体(2)を得た(収率85%)。その後、中間体(2)と3,5−ジニトロ安息香酸クロライドを用いて、化合物(MDA−1)の合成方法と同様の方法で化合物(MDA−5)を得た。
[合成例6A:化合物(MDA−6)の合成]
出発物質としてアミノエタノールの代わりにアミノブタノールを用いた以外は化合物(MDA−5)の合成方法と同様の方法で化合物(MDA−6)を得た。
[合成例7A:化合物(MDA−7)の合成]
下記スキーム7に従って化合物(MDA−7)を合成した。
窒素導入管、滴下漏斗、還流冷却管、温度計及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下でジアミノエタン6.00g(0.100mol)、ピリジン3.16g(0.040mol)、THFを加えて溶解させて全量を80mlとした。このフラスコを氷水で冷やしながら、エチルクロロギ酸2.16g(0.020mol)を滴下して撹拌した。滴下後に室温で24時間撹拌した後、セライトろ過した。ろ液に酢酸エチルを300ml加えた後、溶液全部を分液漏斗に移し、500mlの純水を加え、混合した後、水層を分離した。これを合計3回行った後、下層の有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、中間体(3)を得た(収率81%)。その後、中間体(3)と3,5−ジニトロ安息香酸クロライドを用いて、化合物(MDA−1)の合成方法と同様の方法で化合物(MDA−7)を得た。
[合成例8A:化合物(MDA−11)の合成]
下記スキーム8に従って化合物(MDA−11)を合成した。
窒素導入管及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下で2−フェノキシ安息香酸10.7g(0.050mol)、混酸100mlを加え、60℃のオイルバスにつけて6時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウムを加えて中和した。溶液全部を分液漏斗に移し、酢酸エチル300mlと飽和塩化アンモニウム水溶液500mlを加え、混合した後、水層を分離した。分液操作を合計3回行った後、有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ安息香酸を得た(収率80%)。
次に、窒素導入管、滴下漏斗、還流冷却管、温度計及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下で2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ安息香酸6.08g(0.020mol)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)6.61g(0.024mol)、トリエチルアミン2.87g(0.028mol)、脱水トルエン100mlを加えて3時間室温にて撹拌した後、120℃にて2時間加熱還流した。その後、溶液全部を分液漏斗に移し、酢酸エチル300mlと飽和塩化アンモニウム水溶液500mlを加え、混合した後、水層を分離した。分液操作を合計3回行った後、有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ−シアナトベンゼンを得た(収率85%)。
次に、窒素導入管、撹拌羽根及び滴下漏斗を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、窒素気流下で2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ−シアナトベンゼン6.02g(0.020mol)、脱水塩化メチレン50mlを加えて撹拌した。その後、滴下漏斗を用いて脱水メタノールを10ml滴下した。得られた溶液をエバポレーターで留去し、2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ−N−メトキシカルボニルアニリンを得た(収率95%)。
次に、合成例1Aにて中間体(1)から化合物(MDA−1)を得た合成方法と同様の方法で化合物(MDA−11)を得た(収率89%)。
[合成例9A:化合物(MDA−14)の合成]
下記スキーム9に従って化合物(MDA−14)を合成した。
窒素導入管及び撹拌羽根を備えた容量0.5リットルの4つ口フラスコに、合成例5Aで得た中間体(2)2.94g(0.020mol)、合成例8Aで得た2−(4−ニトロ)フェノキシ−5−ニトロ安息香酸6.08g(0.020mol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)5.75g(0.030mol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.49g(0.004mol)を窒素気流下で加え、室温にて12時間撹拌した。その後、溶液全部を分液漏斗に移し、酢酸エチル300mlと飽和塩化アンモニウム水溶液500mlを加えて混合した後、水層を分離した。分液操作を合計3回行った後、有機層を取り出し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の溶液から有機溶媒をエバポレーターで留去し、中間体(4)を得た(収率88%)。
次に、合成例1Aにて中間体(1)から化合物(MDA−1)を得た合成方法と同様の方法で化合物(MDA−14)を得た(収率80%)。
<重合体の合成>
[合成例1:ポリイミド(PI−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)100モル部、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン(PDA)60モル部、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル(HCDA)20モル部、及び化合物(MDA−1)20モル部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は56mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を、使用したテトラカルボン酸二無水物の全体量に対してそれぞれ1.0倍モルずつそれぞれ添加して、110℃で4時間、脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約60%のポリイミド(PI−1)を26重量%含有する溶液を得た。
[合成例2〜15、22]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量、並びにイミド化に際して使用するピリジン及び無水酢酸の量を下記表1のとおり変更した以外は上記合成例1と同様にしてポリイミド(PI−2)〜(PI−16)をそれぞれ合成した。得られた重合体のイミド化率の測定結果を下記表1に合わせて示した。なお、合成例8では、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともにモノアミンとしてアニリン1.5モル部を配合した。
表1中、テトラカルボン酸二無水物の括弧内の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対する使用割合[モル部]を表す。ジアミン及びモノアミンの括弧内の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対する使用割合[モル部]を表す。表1中の略称は、それぞれ以下の意味である。なお、表1中の「−」は、該当欄の化合物を使用しなかったことを意味する。
<テトラカルボン酸二無水物>
t−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)
t−2:2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物(BODA)
t−3:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)
t−4:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン(MTDA)
t−5:ピロメリット酸二無水物(PMDA)
t−6:1R,2S,4S,5R−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(PMDA−HS)
<ジアミン>
d−1:下記式(d−1)で表される化合物
d−2:下記式(d−2)で表される化合物
d−3:p−フェニレンジアミン(PDA)
d−4:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
d−5:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
d−6:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
d−7:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
d−8:3,5−ジアミノ安息香酸(35DAB)
d−9:1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン
d−10:3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル(HCDA)
d−11:コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン(HCODA)
d−12:3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン
d−13:上記式(D−1−5)で表される化合物
d−14:1,3−ジアミノ−4−{4−[トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェノキシ}ベンゼン(上記式(D−1−2)で表される化合物)
d−15:1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス(4−アミノフェニル)
mda−11:下記式(mda−11)で表される化合物
mda−12:下記式(mda−12)で表される化合物
mda−13:下記式(mda−13)で表される化合物
mda−14:下記式(mda−14)で表される化合物
<モノアミン>
m−1:アニリン
[合成例16:ポリアミック酸(PA−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)100モル部、ジアミンとして上記式(d−1)で表される化合物30モル部、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル40モル部、及び化合物(MDA−1)30モル部を、NMP及びγ−ブチロラクトン(γBL)(NMP:γBL=10:90(重量比))の混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行い、ポリアミック酸(PA−1)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は180mPa・sであった。
[合成例17:ポリアミック酸(PA−2)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を上記表1のとおり変更した以外は、合成例16と同様の操作を行うことによりポリアミック酸(PA−2)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は210mPa・sであった。
[合成例18:ポリアミック酸(PA−3)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を上記表1のとおり変更した以外は、合成例16と同様の操作を行うことによりポリアミック酸(PA−3)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は230mPa・sであった。
[合成例19:ポリオルガノシロキサン(APS−1)の合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。この反応性ポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られた反応性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
次いで、200mLの三口フラスコに、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、反応性化合物として4−ドデシルオキシ安息香酸3.98g、及び触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、液晶配向性ポリオルガノシロキサン(APS−1)を9.0g得た。得られた重合体の重量平均分子量Mwは9,900であった。
[合成例20:ポリアミック酸(PA−4)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を上記表1のとおり変更した以外は、合成例16と同様の操作を行うことによりポリアミック酸(PA−4)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は212mPa・sであった。
[合成例21:ポリアミック酸(PA−5)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を上記表1のとおり変更した以外は、合成例16と同様の操作を行うことによりポリアミック酸(PA−5)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は250mPa・sであった。
[実施例1]
<液晶配向剤の調製>
重合体として得たポリイミド(PI−1)に、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S1)を調製した。
<VA型液晶セルの製造>
上記で調製した液晶配向剤を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板(厚さ1mm)の透明電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)し、さらに200℃のホットプレート上で60分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、透明導電膜上に液晶配向膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することによりVA型液晶セルを製造した。
<信頼性の評価>
上記で製造した液晶セルを用いて、液晶表示素子の信頼性を評価した。評価は以下のようにして行った。まず、上記の液晶セルに、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR1)を測定した。次いで、液晶セルを、LEDランプ照射下の80℃オーブン中で200時間静置した後、室温中に静置して室温まで自然冷却した。冷却後、液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR2)を測定した。なお、測定装置は(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を使用した。このときのVHRの変化率(ΔVHR)を下記数式(2)により算出し、ΔVHRによって信頼性を評価した。評価は、ΔVHRが1%未満であった場合を信頼性「優良(◎)」、1%以上2%未満であった場合を信頼性「良好(○)」、2%以上3%未満であった場合を信頼性「可(△)」、3%以上であった場合を信頼性「不良(×)」とした。その結果、実施例1ではΔVHR=1.9[%]であり、信頼性「良好(○)」であった。
ΔVHR[%]=(VHR1−VHR2)/(VHR1)×100 …(2)
<アウトガス量の評価>
液晶セルを製造したときと同様の操作により液晶配向剤(S1)を基板上に塗布し、プレベーク及びポストベークを行うことで基板上に塗膜を形成した。このポストベーク後の基板について、熱分解ガスクロマトグラフィー(日本分析工業製JPS−700、熱分解条件590℃×5sec、GCカラム BPX−5)を用いてアウトガス量を分析した。アウトガス量は、標品を用いて検量線を作成し、熱分解型モノマーの導入量の物質量対比で、検出された物質量(%)を算出した。評価は、検出された物質量が4%未満であった場合を「優良(◎)」、4%以上7%未満であった場合を「良好(○)」、7%以上10%未満であった場合を「可(△)」、10%以上であった場合を「不良(×)」とした。その結果、実施例1ではアウトガス量が少なく、「優良(◎)」の評価であった。
[実施例2〜6、実施例10〜11及び比較例1〜5]
液晶配向剤の組成を下記表2に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にして液晶セルを製造するとともに、その製造した液晶セルの評価を行った。それらの評価結果を下記表2に示した。
[実施例7]
重合体として得たポリイミド(PI−8)とポリアミック酸(PA−1)が固形分重量比で20:80になるように、有機溶媒としてγ−ブチロラクトン(BL)、NMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がBL:NMP:BC=70:15:15(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S7)を調製した。
<TN型液晶セルの製造>
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度30mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、ラビング方向が直交するように一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止することにより、TN型液晶セルを製造した。
<信頼性及びアウトガス量の評価>
上記で製造したTN型液晶セルを用い、上記実施例1と同様の方法により信頼性及びアウトガス量を評価したところ、ΔVHR=0.6[%]であり信頼性は「優良」、アウトガス量は6%であり、「良好」の評価となった。
[実施例8]
<液晶配向剤の調製>
重合体として得たポリイミド(PI−9)とポリアミック酸(PA−2)が固形分重量比で40:60になるように、有機溶媒としてγ−ブチロラクトン(BL)、NMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がBL:NMP:BC=40:40:20(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S8)を調製した。
<IPS/FFS型液晶セルの製造>
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度20mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、ラビング方向が逆平行になるように一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止することにより、IPS/FFS型液晶セルを製造した。
<信頼性及びアウトガス量の評価>
上記で製造したIPS/FFS型液晶セルを用い、上記実施例1と同様の方法により信頼性及びアウトガス量を評価したところ、ΔVHR=0.6[%]であり信頼性は「優良」、アウトガス量は6%であり、「良好」の評価となった。
[実施例9]
<液晶配向剤の調製>
重合体として得たポリイミド(PI−10)とポリオルガノシロキサン(APS−1)が固形分重量比で95:5になるように、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S9)を調製した。
<液晶組成物の調製>
[液晶組成物LC1の調製]
ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)10gに対し、下記式(pc−1)で表される光重合性化合物0.3重量%を添加して混合することにより液晶組成物LC1を得た。
<PSA−VA型液晶セルの製造>
上記で調製した液晶配向剤を、図1〜3に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板2枚の各電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜800Åの塗膜を形成した。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、使用した電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に上記で調製した液晶組成物LC1を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止した。その後、得られた液晶セルの導電膜間に電圧を印加した状態で、100,000J/mの照射量にて光照射した。これにより、PSA−VA型液晶セルを得た。
<信頼性及びアウトガス量の評価>
上記で製造したPSA−VA型液晶セルを用い、上記実施例1と同様の方法により信頼性及びアウトガス量を評価したところ、ΔVHR=0.4[%]であり信頼性は「優良」、アウトガス量は2%であり、「優良」の評価となった。
[実施例12]
<液晶配向剤の調製>
重合体として得たポリアミック酸(PA−3)に、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S12)を調製した。
<光配向法を用いたIPS/FFS型液晶セルの製造>
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した。その後、Hg−Xeランプを用いて、254nmの輝線を含む偏光の紫外線を700mJ/cmの照射量で基板法線から照射した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、液晶配向膜を付与した平均膜厚800Åの塗膜を形成した。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、偏光紫外線の偏光面を基板へ投影した方向が平行になるように、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止することにより、IPS/FFS型液晶セルを製造した。
<信頼性及びアウトガス量の評価>
上記で光配向法によって製造したIPS/FFS型液晶セルを用い、上記実施例1と同様の方法により信頼性及びアウトガス量を評価したところ、ΔVHR=0.5[%]であり、信頼性は「優良」、アウトガス量は3%であり、「優良」の評価となった。
[実施例13〜14]
液晶配向剤の組成を下記表2に示すとおり変更した以外は実施例12と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例12と同様にして液晶セルを製造するとともに、その製造した液晶セルの評価を行った。それらの評価結果を下記表2に示した。
表2中、重合体の量の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体の合計100重量部に対する各重合体の使用割合[重量部]を表す。
表2に示すように、実施例1〜14では信頼性が「優良」〜「可」の評価であり、またアウトガス量も少なかった。これに対し、比較例1〜3、5では信頼性が「不良」の評価であり、比較例4ではアウトガス量が多く「不良」の評価であった。
なお、3級アルキル構造を有する熱分解性モノマーを用いた比較例2、3、5において信頼性の評価が実施例のものよりも低かった理由は定かではないが、3級アルキル構造の場合、主に脱炭酸してアミノ基を生成するため、実施例のものに比べて架橋反応が進行しにくいことが一つの要因として考えられる。また、熱分解性モノマーとして炭素数10の直鎖構造を有するジアミンを用いた比較例4の場合、炭素鎖が長すぎることに起因してアウトガスが発生しやすかったものと推測される。
1…ITO電極、2…スリット部、3…遮光膜

Claims (9)

  1. ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリアミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有し、
    該重合体の少なくとも一部が、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)である液晶配向剤。
    (式(1)中、A及びAは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基であり、AとAの炭素数の合計が0〜7である。Yは酸素原子又は硫黄原子であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、Xは単結合又は2価の有機基である。「*」は結合手を示す。)
  2. 前記重合体(P)は、下記式(c)で表されるジアミンに由来する部分構造を有する重合体である、請求項1に記載の液晶配向剤。
    (式(c)中、Bは、上記式(1)で表される部分構造を有する2価の有機基であり、B及びBは、それぞれ独立に水素原子又は上記式(1)で表される部分構造を有する1価の有機基であり、Z及びZは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基であり、R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。n1及びn2は、それぞれ独立に0〜2の整数であり、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1である。ただし、m1=1の場合、Bは上記式(1)で表される部分構造を有し、m1=0かつm2=0の場合、B及びBのうち少なくとも一方は、上記式(1)で表される部分構造を有し、m1=0かつm2=1の場合、B、B及びBのうち少なくともいずれかは、上記式(1)で表される部分構造を有する。)
  3. 前記重合体(P)は、下記式(d)で表されるジアミンに由来する部分構造を有する重合体である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
    (上記式(d)中、Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、n3は0〜2の整数である。A、A、Y、R及びXは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
  4. 上記式(d)で表される化合物が有するジアミノフェニル基において、2個の1級アミノ基は、上記式(1)で表される構造に対して3,5−位に結合している、請求項3に記載の液晶配向剤。
  5. 前記重合体(P)は、下記式(e)で表されるジアミンに由来する部分構造を有する重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
    (式(e)中、Zは単結合又は2価の連結基であり、Vは、水素原子又は上記式(1)で表される1価の基であり、R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。n4及びn5は、それぞれ独立に0〜2の整数である。A、A、Y、R及びXは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
  6. 前記重合体(P)は、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である酸無水物に由来する部分構造を有する重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  7. 前記重合体(P)は、上記式(1)で表される構造と、窒素含有複素環、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  9. 請求項8に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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