JP2019139254A - 液晶配向膜の製造方法及び液晶素子の製造方法 - Google Patents

液晶配向膜の製造方法及び液晶素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】信頼性及び残像特性が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向膜の製造方法を提供する。【解決手段】下記[2]の重合体組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程[A]と、工程[A]で得られた塗膜に対して、偏光した放射線を照射する工程[B]と、工程[B]における放射線照射の後及び該放射線照射時の少なくともいずれかに塗膜を加熱する工程[C]とを含む方法により液晶配向膜を製造する。[2]ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(P)と、架橋性基を有する液晶性化合物(Q)と、光配向性部位を有する分子量2,000以下の低分子化合物(R)とを含む重合体組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向膜の製造方法及び液晶素子の製造方法に関する。
液晶素子は、テレビやモバイル機器、各種モニターなどに広く利用されている。また、液晶素子には、液晶セル中の液晶分子を配向させるために、液晶配向規制力を有する液晶配向膜が使用されている。液晶配向膜を得る方法としては、有機膜をラビングする方法、酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法、感光性の有機膜に光照射する方法(光配向法)などが知られている。
光配向法は、静電気や埃の発生を抑えつつ感光性の有機膜に均一な液晶配向性を付与することができ、しかも液晶配向方向の精密な制御も可能であることから、近年、種々検討が進められている(例えば特許文献1参照)。
特開2004−163646号公報
しかしながら、光配向法を適用した場合、得られた液晶配向膜における配向規制力が十分でなく、これに起因して画像の焼き付きが発生しやすいという問題があった。また、配向規制力の経時変化により、液晶素子の信頼性の点で劣る傾向にあった。近年では、大画面で高精細の液晶テレビが主体となり、またスマートフォンやタブレットPC等といった小型の表示端末の普及が進み、液晶パネルに対する高精細化の要求は更に高まりつつあることから、従来のものよりもさらに高品質な液晶素子が要求されている。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、信頼性及び残像特性が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向膜の製造方法を提供することを一つの目的とする。
本発明者は、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、特定の配合組成の重合体組成物を用い、かつ特定の工程を含む方法によって液晶配向膜を製造することにより上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の手段が提供される。
1.下記[2]の重合体組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程[A]と、前記工程[A]で得られた塗膜に対して、偏光した放射線を照射する工程[B]と、前記工程[B]における放射線照射の後及び該放射線照射時の少なくともいずれかに前記塗膜を加熱する工程[C]と、を含む液晶配向膜の製造方法。
[2]ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(P)と、ラジカル重合性基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサジン環含有基、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基、メチロール基、エーテル化メチロール基及び環状カーボネート基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋性基を有する液晶性化合物(Q)と、光配向性部位を有する分子量2,000以下の低分子化合物(R)と、を含む重合体組成物。
2.上記1.に記載の製造方法により得られた液晶配向膜を具備する液晶素子。
3.上記1.に記載の製造方法により液晶配向膜を形成した一対の基板を、液晶層を介して前記液晶配向膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する工程と、前記液晶セルに無偏光の放射線を照射する工程と、を含む液晶素子の製造方法。
本発明の液晶配向膜の製造方法によれば、信頼性及び残像特性が良好な液晶素子を得ることができる。
以下、本発明に係る液晶配向膜の製造方法について説明するとともに、該製造方法を用いて製造される液晶素子について説明する。
≪重合体組成物≫
本発明における液晶配向膜は、重合体成分を含む重合体組成物を用いて製造される。具体的には、以下の[1]又は[2]の重合体組成物を用いる。
[1]ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(P)と、架橋性基と光配向性部位とを有する液晶性化合物(QR)と、を含む重合体組成物。
[2]上記重合体(P)と、架橋性基を有する液晶性化合物(Q)と、光配向性部位を有する分子量2,000以下の低分子化合物(R)と、を含む重合体組成物。
なお、上記[2]の重合体組成物に含有される液晶性化合物(Q)と低分子化合物(R)とは異なる化合物である。
<重合体(P)>
上記重合体組成物[1]及び[2]に配合される重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
(ポリアミック酸)
本発明に係るポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、下記式(B−1)
Figure 2019139254
(式(B−1)中、X及びXは、それぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、*−COO−、*−OCO−、*−CO−NR22−、*−NR22−CO−(ただし、R22は水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。「*」は、R21との結合手を示す。)である。R21は、炭素数1〜10のアルカンジイル基、当該アルカンジイル基の炭素−炭素結合間に−O−を含む2価の基、シクロヘキシレン基、フェニレン基又はビフェニレン基である。)
などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
上記式(B−1)におけるR21の炭素数1〜10のアルカンジイル基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。好ましくは直鎖状である。アルカンジイル基の炭素−炭素結合間に−O−を含む2価の基において、酸素原子の数は1個でもよく、2個以上であってもよい。
上記式(B−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(B−1−1)〜(B−1−4)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2019139254
なお、上記テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましく、シクロブタン環構造、シクロペンタン環構造及びシクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことがより好ましい。具体的には、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(T)を含むことが特に好ましい。
これらの好ましい化合物(T)の使用量(2種以上使用する場合にはその合計量)は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく、30モル%以上とすることがさらに好ましい。
(ジアミン)
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;
芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、テトラデカノキシジアミノベンゼン、ペンタデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N−(2,4−ジアミノフェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンズアミド、下記式(E−1)
Figure 2019139254
(式(E−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」はXとの結合手を示す。)であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などの配向性基含有ジアミン:
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノビフェニル−3−カルボン酸、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(E−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などを挙げることができ、これらは直鎖状であることが好ましい。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(E−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E−1−1)〜式(E−1−4)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2019139254
TN型、STN型又は垂直配向型の液晶表示素子用の液晶配向剤に適用する場合、ポリアミック酸の側鎖に、光照射によらずに塗膜に液晶配向能を付与可能な基(液晶配向性基)を導入してもよい。液晶配向性基としては、例えば炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシ基、炭素数17〜51のステロイド骨格を有する基、多環構造を有する基などが挙げられる。液晶配向性基を有するポリアミック酸は、例えば配向性基含有ジアミンをモノマー組成に含む重合によって得ることができる。配向性基含有ジアミンを使用する場合、その配合量は、液晶配向性の観点から、合成に使用する全ジアミンに対して、3モル%以上とすることが好ましく、5〜70モル%とすることがより好ましい。
重合体(P)は、窒素含有複素環(ただし、ポリイミドが有するイミド環を除く。)、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造(以下「窒素含有構造」とも称する。)を有することが好ましい。重合体(P)が窒素含有構造を有することにより、液晶表示素子の直流電圧による焼き付き低減の改善効果を高くできる点で好適である。窒素含有構造を有する重合体(P)は、窒素含有構造を有する単量体を原料の少なくとも一部に用いることにより得ることができる。当該単量体としては、例えば窒素含有構造を有するジアミンが挙げられる。
窒素含有構造を有するジアミンにおいて、該ジアミンが有していてもよい窒素含有複素環としては、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。中でも、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、カルバゾール及びアクリジンよりなる群から選ばれる少なくとも一種を有することが好ましい。
窒素含有構造を有するジアミンが有していてもよい2級アミノ基及び3級アミノ基は、例えば下記式(N−1)で表される。
Figure 2019139254
(式(N−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。「*」は炭化水素基に結合する結合手である。)
上記式(N−1)において、Rの1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
窒素含有構造を有するジアミンの具体例としては、例えば2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、下記式(D−2−1)〜式(D−2−8)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2019139254
ポリアミック酸の合成に際し、窒素含有構造を有するジアミンの使用割合は、液晶表示素子の信頼性の改善効果を十分に得る観点から、合成に使用するジアミンの全体量に対して0.1モル%以上とすることが好ましく、1モル%以上とすることがより好ましく、2モル%以上とすることがさらに好ましい。また、当該使用割合の上限は、60モル%以下とすることが好ましく、50モル%以下とすることがより好ましく、40モル%以下とすることがさらに好ましい。なお、窒素含有構造を有するジアミンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。このとき使用する他の有機溶媒としては、例えばブチルセロソルブ、2−ブトキシ−1−プロパノール、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
(ポリアミック酸エステル)
本発明におけるポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
なお、本明細書において「テトラカルボン酸ジエステル」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうち2個がエステル化され、残りの2個がカルボキシル基である化合物を意味する。「テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうち2個がエステル化され、残りの2個がハロゲン化された化合物を意味する。
方法[I]で使用するエステル化剤としては、例えば水酸基含有化合物、アセタール系化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類などを;アセタール系化合物として、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタールなどを;ハロゲン化物として、例えば臭化メチル、臭化エチル、臭化ステアリル、塩化メチル、塩化ステアリル、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタンなどを;エポキシ基含有化合物として、例えばプロピレンオキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
方法[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、例えば上記ポリアミック酸の合成で例示したテトラカルボン酸二無水物を、メタノールやエタノール等のアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。また、方法[II]で使用するジアミンとしては、ポリアミック酸の合成で例示したジアミンを挙げることができる。方法[II]の反応は、有機溶媒中、適当な脱水触媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水触媒としては、例えば4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤などが挙げられる。このときの反応温度は、−20〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
方法[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、例えば上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。また、方法[III]で使用するジアミンとしては、ポリアミック酸の合成で例示したジアミンを挙げることができる。方法[III]の反応は、有機溶媒中、適当な塩基の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類などを好ましく使用することができる。このときの反応温度は、−20〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
重合体組成物に含有させるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸エステルを精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。ポリアミック酸エステルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
(ポリイミド)
ポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、30〜99%であることがより好ましく、40〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで重合体組成物の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。その他、ポリイミドは、ポリアミック酸エステルのイミド化により得ることもできる。
以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
(ポリオルガノシロキサン)
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、例えば加水分解性のシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。
ポリオルガノシロキサンの合成に使用するシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物;トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などを挙げることができる。加水分解性シラン化合物は、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。加水分解・縮合反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
加水分解・縮合反応の際に使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
上記の加水分解・縮合反応の際に使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。これらのうち、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。加水分解・縮合反応時には、加熱温度を130℃以下とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜8時間とすることがより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。また、反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水(例えば、0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液など)を用いて洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は、洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後、有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブなどの乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができる。なお、ポリオルガノシロキサンの合成方法は上記の加水分解・縮合反応に限らず、例えば加水分解性シラン化合物をシュウ酸及びアルコールの存在下で反応させる方法などにより行ってもよい。
上記の縮合反応に際し、原料の少なくとも一部にエポキシ基含有シラン化合物を用いることにより、エポキシ基を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンにつき、更に、液晶配向性基を有するカルボン酸と反応させてもよい。この反応により、液晶配向性基を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は公知の方法に従って行うことができる。
本発明に係るポリオルガノシロキサンにつき、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、100〜50,000の範囲にあることが好ましく、200〜10,000の範囲にあることがより好ましい。ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が上記範囲にあると、液晶配向膜を製造する際に取り扱いやすく、また得られた液晶配向膜は十分な材料強度及び特性を有するものとなる。
(付加重合により得られる重合体)
上記付加重合により得られる重合体(以下「重合体(PMA)」ともいう。)は、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得ることができる。当該重合性不飽和結合としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、マレイミド基などが挙げられる。こうした重合性不飽和結合を有するモノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸オクトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル等の不飽和カルボン酸エステル:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和多価カルボン酸無水物:などの(メタ)アクリル系化合物;
スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;
1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物;
N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド基含有化合物;などが挙げられる。なお、重合性基不飽和結合を有するモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合体(PMA)としては、透明性や材料強度などの観点から、上記のうち、(メタ)アクリル系化合物を含むモノマーの重合体であるポリ(メタ)アクリレートが好ましい。重合体(PMA)の合成に際し、(メタ)アクリル系化合物の使用割合は、合成に使用するモノマーの合計量に対して、50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上とすることがより好ましく、70モル以上とすることがさらに好ましい。
重合体(PMA)は、例えば、重合性基不飽和結合を有するモノマーを重合開始剤の存在下で重合させることにより得ることができる。使用する重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;過酸化水素;これらの過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等が挙げられる。これらの中でもアゾ化合物が好ましい。重合開始剤は、これらの一種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全モノマー100重量部に対して、0.01〜30重量部とすることが好ましく、0.1〜20重量部とすることがより好ましい。
上記重合反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でもアルコール及びエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましく、例えばジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なお、有機溶媒は、一種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記重合反応に際し、反応温度は30℃〜120℃とすることが好ましく、60〜110℃とすることがより好ましい。反応時間は、1〜36時間とすることが好ましく、2〜24時間とすることがより好ましい。また、有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1〜60重量%になるような量にすることが好ましい。
重合体(PMA)は、液晶配向性基を側鎖に有する重合体であってもよい。当該重合体を合成する方法は特に限定されないが、例えば、原料の少なくとも一部にエポキシ基含有化合物を用いることで、エポキシ基を側鎖に有する重合体を合成し、次いで、エポキシ基を側鎖に有する重合体と、液晶配向性基を有するカルボン酸とを反応させる方法などが挙げられる。エポキシ基を側鎖に有する重合体とカルボン酸との反応における各種条件については、配向性基含有ポリオルガノシロキサンの合成方法についての説明を適用することができる。
重合体(PMA)について、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、形成される液晶配向膜の液晶配向性を良好にするとともに、その液晶配向性の経時的安定性を確保するといった観点から、250〜500,000であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることが更に好ましい。
本発明に係る重合体組成物は、重合体(P)として、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる重合体を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含有する。重合体組成物中における重合体(P)の含有態様は、使用する用途や環境によって適宜選択することができるが、本発明の効果を奏する上で好ましい例としては、例えば下記[a]〜[d]の態様などが挙げられる。
[a]重合体(P)が、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種である態様。
[b]重合体(P)として、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリオルガノシロキサンとを含有する態様。
[c]重合体(P)がポリオルガノシロキサンである態様。
[d]重合体(P)がポリ(メタ)アクリレートである態様。
これらのうち、本発明の効果をより好適に得る観点において、[a]又は[b]の態様が好ましい。上記[b]の場合、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルの合計の含有量を、重合体組成物に含有される重合体(P)の全体量に対して、5重量%以上とすることが好ましく、10重量%以上とすることがより好ましく、20重量%以上とすることがさらに好ましい。また、当該含有量の上限値は、99重量%以下とすることが好ましく、97重量%以下とすることがさらに好ましい。
本発明における重合体組成物において、重合体(P)の配合割合(2種以上配合する場合にはその合計量)は、当該重合体組成物における固形成分(重合体組成物の溶媒以外の成分)の合計量に対して、5重量%以上とすることが好ましく、10〜99.9重量%とすることがより好ましく、30〜99.5重量%とすることがさらに好ましい。
<液晶性化合物(QR)>
液晶性化合物(QR)は、架橋性基と光配向性部位とを有する液晶性化合物である。ここで、本明細書において「液晶性化合物」は、剛直なメソゲン部位と柔軟な部位とを有する化合物をいう。剛直なメソゲン部位としては、例えば炭素数3〜30のシクロアルカン及び炭素数5〜30の芳香環(ただし、シクロアルカン及び芳香環における任意の炭素原子は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、炭素原子に結合する水素原子は任意の1価の置換基で置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種の環構造を1〜10個含む構造であることが好ましい。
柔軟な部位としては、例えば飽和鎖状炭化水素基、オリゴエチレンオキサイド構造及びオリゴシロキサン構造(ただし、任意の炭素原子は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、炭素原子に結合する水素原子は任意の1価の置換基で置換されていてもよい。)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造であることが好ましい。
なお、上記置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
液晶性化合物(QR)が有する架橋性基としては、光及び熱の少なくともいずれかにより架橋性を示す官能基が挙げられる。具体的には、例えばラジカル重合性基、光架橋性基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサジン環含有基、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基、メチロール基、エーテル化メチロール基及び環状カーボネート基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を含む意味である。
ここで、ラジカル重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、マレイミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、エチニル基などを挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
光架橋性基としては、光照射により二量化する構造部位を有する基であることが好ましく、例えばベンゾイル(メタ)アクリル酸又はその誘導体を基本骨格として含有するベンゾイル(メタ)アクリル基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸含有基、シンナミド又はその誘導体を基本骨格として含有するシンナミド含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基、チミン又はその誘導体を基本骨格として含有するチミン含有基、ウラシル又はその誘導体を基本骨格として含有するウラシル含有基などを挙げることができる。これらのうち、桂皮酸含有基、ベンゾイル(メタ)アクリル基又はクマリン含有基であることが好ましい。
環状エーテル基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
上記ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基を、活性水素を有する化合物や活性メチレン化合物などのブロック剤と反応させて常温で不活性とした基であればよい。なお、当該ブロック剤としては公知のものを用いることができる。
液晶性化合物(QR)が有する架橋性基としては、これらの中でも、ラジカル重合性基又は環状エーテル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基であることが好ましい。液晶性化合物(QR)が有する架橋性基の数は特に限定されないが、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1又は2個である。
液晶性化合物(QR)が有する光配向性部位としては、光異性化、光二量化、光分解又は光フリース転位などによって異方性を示す構造を採用することができる。具体的には、例えばアゾ化合物又はその誘導体を基本骨格として含有するアゾ含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸含有基、シンナミド又はその誘導体を基本骨格として含有するシンナミド含有基、スチルベン又はその誘導体を基本骨格として含有するスチルベン含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基等が挙げられる。これらの中でも、光配向性が良好である点で、桂皮酸含有基又はアゾ含有基であることが好ましい。液晶性化合物(QR)において、光配向性部位の数は特に限定されず、1個でもよいし2個以上であってもよい。
液晶性化合物(QR)の液晶相は限定されるものではないが、配向性の観点でネマチック相又はスメクチック相が好ましい。中でもネマチック相が好ましい。
液晶性化合物(QR)の分子量は特に限定されないが、2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましい。
液晶性化合物(QR)の具体例としては、例えば下記式(QR−1)〜式(QR−12)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、液晶性化合物(QR)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2019139254
上記[1]の重合体組成物中における液晶性化合物(QR)の配合割合は、重合体組成物中の重合体(P)の100重量部に対して、1〜1,000重量部とすることが好ましく、5〜500重量部とすることがより好ましく、10〜300重量部とすることがさらに好ましい。当該配合割合を1重量部未満とすると、液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果が十分に得られにくく、1,000重量部よりも多くすると、電気特性が低下する傾向にある。
<液晶性化合物(Q)>
液晶性化合物(Q)は、架橋性基を有する液晶性化合物である。液晶性化合物(Q)が有する架橋性基については、上記液晶性化合物(QR)が有する架橋性基の例示及び好ましい具体例の説明を適用することができる。ただし、液晶性化合物(Q)は、光配向性部位を有さない点で液晶性化合物(QR)と相違する。
液晶性化合物(Q)の液晶相は、ネマチック相又はスメクチック相が好ましく、ネマチック相がより好ましい。液晶性化合物(Q)の分子量は特に限定されないが、2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましい。
液晶性化合物(Q)の具体例としては、例えば下記式(Q−1)〜式(Q−7)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、液晶性化合物(Q)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2019139254
<低分子化合物(R)>
低分子化合物(R)は、光配向性部位を有する分子量2,000以下の化合物であれば特に限定されない。低分子化合物(R)が有する光配向性部位については、上記液晶性化合物(QR)が有する光配向性部位の例示及び好ましい具体例の説明を適用することができる。ただし、低分子化合物(R)は、架橋性基を有さない点で液晶性化合物(QR)と相違する。低分子化合物(R)の分子量は、1,000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。
低分子化合物(R)の具体例としては、例えば下記式(R−1)〜式(R−13)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、低分子化合物(R)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2019139254
Figure 2019139254
上記[2]の重合体組成物中における液晶性化合物(Q)及び低分子化合物(R)の配合割合は、液晶性化合物(Q)及び低分子化合物(R)の合計量が、重合体組成物中の重合体(P)の100重量部に対して、1〜1,000重量部とすることが好ましく、5〜500重量部とすることがより好ましく、10〜300重量部とすることがさらに好ましい。当該配合割合を1重量部未満とすると、液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果が十分に得られにくく、1,000重量部よりも多くすると、電気特性が低下する傾向にある。
また、液晶性化合物(Q)及び低分子化合物(R)のそれぞれについて、重合体組成物中における液晶性化合物(Q)の配合割合は、重合体(P)の100重量部に対して、0.8〜800重量部とすることが好ましく、3.5〜300重量部とすることがより好ましく、8〜200重量部とすることがさらに好ましい。低分子化合物(R)の配合割合は、重合体(P)の100重量部に対して、0.2〜200重量部とすることが好ましく、1.2〜150重量部とすることがより好ましく、2〜100重量部とすることがさらに好ましい。
なお、上記[1]の重合体組成物は、液晶性化合物(QR)とともに、液晶性化合物(Q)及び低分子化合物(R)の少なくともいずれかを含有する態様を含む。この場合、重合体組成物中における液晶性化合物(QR)、液晶性化合物(Q)及び低分子化合物(R)の合計量が、重合体組成物中の重合体(P)の100重量部に対して、1〜1,000重量部の範囲内となる配合割合にすることが好ましい。
本発明に係る重合体組成物は、重合体(P)と光配向性部位を有する化合物とを含有するが、これらの成分は、重合体(P)が第1官能基を有し、光配向性部位を有する化合物が第2官能基を有しており、かつ第1官能基及び第2官能基の一方の基が、水酸基、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、他方の基が、3級アミノ基及び窒素含有複素環基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。この場合、偏光紫外線の照射量が少ない場合でも残像特性の改善効果を得ることができるという点で好適である。なお、「光配向性部位を有する化合物」は、液晶性化合物(QR)及び低分子化合物(R)を含むものである。上記とすることで、重合体(P)と光配向性部位を有する化合物との間で分子間相互作用が働くものと推測される。
第1官能基又は第2官能基としての三級アミン構造について具体的には、例えば下記式(N−2)で表される。
Figure 2019139254
(式(N−2)中、Rは置換又は無置換の1価の炭化水素基である。「*」は炭化水素基に結合する結合手である。)
上記式(N−2)において、Rの1価の炭化水素基は炭素数1〜10であることが好ましく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。Rが有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。
は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はベンジル基であり、より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基、シクロヘキシル基又はベンジル基である。
上記窒素含有複素環基としては、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フェナジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン及びヘキサメチレンイミン等の窒素含有複素環からi個の水素原子を取り除いたi価の基などが挙げられる。ただし、窒素含有複素環には置換基が導入されていてもよい。窒素含有複素環が有する置換基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。上記窒素含有複素環としては、中でもピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン及びアクリジンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
第1官能基及び第2官能基について、好ましくは、重合体(P)はカルボキシル基を有し、光配向性部位を有する化合物が、3級アミノ基及び窒素含有複素環基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有していることが好ましい。
重合体(P)が有するカルボキシル基は、テトラカルボン酸二無水物の開環により生じるカルボキシル基であってもよく、あるいはカルボキシル基含有ジアミンに由来するカルボキシル基であってもよい。カルボキシル基含有ジアミンとしては、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノビフェニル−3−カルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3−カルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエタン−3−カルボン酸などのモノカルボン酸;
4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−2,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸などのジカルボン酸;等が挙げられる。
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの合成に際して、カルボキシル基含有ジアミンの使用割合は、残像特性の改善効果を十分に得る観点から、合成に使用するジアミンの全体量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることが更に好ましい。また、当該使用割合の上限値は特に制限しないが、電圧保持率の観点から、合成に使用するジアミンの全体量に対して、90モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましい。なお、カルボキシル基含有ジアミンは、上記のうちの1種を単独で又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
光配向性部位を有する化合物として第2官能基を有する化合物を使用する場合、液晶配向剤中において、第2官能基を有する化合物の含有割合は、光配向性部位を有する化合物の合計量に対して50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上とすることがより好ましい。
<その他の成分>
本発明における重合体組成物は、本発明の目的及び効果を妨げない範囲内において、必要に応じて、上記以外のその他の成分を含有していてもよい。当該重合体組成物に配合してもよいその他の成分としては、例えば上記重合体(P)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物、官能性シラン化合物、界面活性剤、充填剤、顔料、消泡剤、増感剤、分散剤、酸化防止剤、密着助剤、帯電防止剤、レベリング剤、抗菌剤等が挙げられる。
上記その他の重合体としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどの主骨格が挙げられる。上記その他の化合物の配合割合は、本発明の目的及び効果を妨げない範囲で各種化合物に応じて適宜選択することができる。
<溶剤>
本発明における重合体組成物は、上記重合体(P)及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な有機溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−1−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、N,N,2−トリメチルプロパンアミド、1−ブトキシ−2−プロパノール、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、一種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
重合体組成物における固形分濃度(重合体組成物の溶媒以外の成分の合計重量が重合体組成物の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、重合体組成物は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより樹脂膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な樹脂膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な樹脂膜が得にくく、また、重合体組成物の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に重合体組成物を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法を用いる場合には、固形分濃度が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。重合体組成物を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
≪液晶配向膜≫
上記重合体組成物を用いることにより、樹脂膜としての液晶配向膜を製造することができる。具体的には、本発明における液晶配向膜は、以下の工程[A]〜[C]を含む工程により製造することができる。工程[A]は、所望とする液晶表示素子の動作モードによって使用基板が異なる。工程[B]及び工程[C]は各動作モード共通である。
工程[A]:上記重合体組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程。
工程[B]:工程[A]で得られた塗膜に対して、偏光した放射線を照射する工程。
工程[C]:工程[B]における放射線照射の後及び該放射線照射時の少なくともいずれかに塗膜を加熱する工程。
[工程[A]:塗膜の形成]
先ず、上記[1]又は[2]の重合体組成物を基板上に塗布し、次いで塗布面を好ましくは加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(A−1)例えばTN(Twisted Nematic)型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、上記で調製した重合体組成物を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。重合体組成物の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
重合体組成物を塗布した後、塗布した重合体組成物の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。加熱の方法は特に限定されず、例えばホットプレート上で基板を加熱する方法、オーブン中にて加熱する方法などが挙げられる。
(A−2)面内スイッチング型(IPS型)又はFFS(Fringe Field Switching)型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(A−1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
[工程[B]:偏光放射線の照射]
次いで、上記工程[A]で得られた塗膜に対し、偏光の放射線を照射して塗膜に液晶配向能を付与する。塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。用いる放射線は、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、放射線照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは100〜50,000J/mであり、より好ましくは300〜20,000J/mである。
[工程[C]:塗膜の加熱]
工程[C]は、溶剤を完全に除去し、加熱による再配向を促進させ、あるいは必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として、工程[B]で偏光放射線を照射した後か、偏光放射線の照射と同時か、又はその両方において、塗膜を加熱する処理を実施する。露光装置の低コスト化や加熱再配向の観点からすると、工程[B]で偏光放射線を照射した後に加熱処理を施すことが好ましい。
工程[C]では、所定温度による一段階での加熱処理としてもよく、異なる加熱温度による複数段での加熱処理としてもよい。一段階での加熱処理の場合、その加熱温度は特に制限されないが、プレベーク温度よりも高温とすることが好ましい。具体的には、100〜300℃とすることが好ましく、120〜250℃とすることがより好ましく、150〜250℃とすることがさらに好ましい。加熱時間は、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。
工程[C]を複数段での加熱処理とする場合、工程[C]は、第1温度で加熱する第1加熱工程と、第1温度よりも高い温度で加熱する第2加熱工程とを含むことが好ましい。こうした複数段での加熱処理とすることで、液晶表示素子の信頼性及び残像特性をさらに良好にでき好適である。
第1加熱工程における加熱温度(第1温度)は、液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果の点で、重合体組成物中に配合される液晶性化合物(液晶性化合物(QR)及び液晶性化合物(Q))が液晶性を示す温度範囲(以下「液晶温度範囲Ra」ともいう。)の下限温度よりも20℃低い温度Tm1を下限とし、かつ液晶温度範囲Raの上限温度よりも20℃高い温度Tm2を上限とする範囲Rb(Tm1≦Rb≦Tm2)内の温度とすることが好ましい。範囲Rbの下限について、好ましくは液晶温度範囲Raの下限温度よりも10℃低い温度であり、より好ましくは液晶温度範囲Raの下限温度よりも5℃低い温度である。範囲Rbの上限については、好ましくは液晶温度範囲Raの上限温度よりも10℃高い温度であり、より好ましくは液晶温度範囲Raの上限温度よりも5℃高い温度である。第1温度での加熱時間は1〜60分とすることが好ましく、5〜30分とすることがより好ましい。
なお、化合物における液晶性の有無は、例えば、示差走査熱量測定装置を用いて化合物の吸熱及び発熱の挙動を見る方法や、偏光顕微鏡を用いて化合物の加熱中における複屈折と流動性の有無を観察する方法などにより判別することができる。
第2加熱工程における加熱温度は、第1温度よりも高温であれば特に限定されないが、第1温度よりも10℃以上高い温度であることが好ましく、10〜50℃高い温度であることがより好ましく、20〜40℃高い温度であることがさらに好ましい。第2加熱工程における加熱時間は、1〜150分とすることが好ましく、5〜100分とすることがより好ましい。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
[工程[D]:無偏光放射線の照射]
本発明に係る液晶配向膜の製造方法は、上記工程[A]〜工程[C]に加え更に、上記第2加熱工程による加熱前、該加熱時及び該加熱後の少なくともいずれかに、無偏光の紫外線を照射する工程[D]を含んでいてもよい。この工程[D]の処理を行うことで塗膜の液晶配向性が更に向上し、得られる液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果を高めることができる点で好適である。
工程[D]による無偏光放射線の照射は、工程[C]の第2加熱工程による加熱前、該加熱時及び該加熱後の少なくともいずれかに実施するものであればよい。照射時期について具体的には、例えば工程[C]の第1加熱工程と第2加熱工程との間に行う態様、第2加熱工程の後であって液晶セルの構築前に行う態様、第2加熱工程による加熱中に行う態様などが挙げられる。これらの中でも、液晶配向性を良好にする観点から、第1加熱工程と第2加熱工程との間に行う態様とすることが好ましい。
塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。照射する放射線の種類、波長及び光源の説明は、上記工程[B]の説明を適用することができる。照射する放射線の照射量は、好ましくは1,000〜500,000J/mであり、より好ましくは5,000〜200,000J/mである。塗膜に対する光照射は、通常0〜120℃の温度で行い、好ましくは5〜100℃であり、より好ましくは10〜80℃である。
≪液晶素子≫
本発明に係る液晶素子は、上記重合体組成物を用いて形成した液晶配向膜を具備する。当該液晶素子の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、垂直配向型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、光学補償ベンド型(OCB型)など種々の動作モードに適用することができる。
本発明に係る液晶素子は、例えば以下の工程[E]を含む工程により製造することができる。
[工程[E]:液晶セルの構築]
(E−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
その後、上記(E−1)で構築した液晶セルに対し、無偏光の放射線を照射する処理を行ってもよい。こうした放射線照射処理により、液晶配向膜の配向性が更に向上し、得られる液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果を高めることができる点で好ましい。このときの放射線照射は、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加しない状態で行ってもよいし、あるいは電圧を印加した状態で行ってもよい。導電膜間に電圧印加する場合の電圧は、例えば0〜50Vの直流又は交流とすることができる。照射する放射線の波長、光源、照射量などの各種条件は上記工程[D]の説明を適用することができる。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明に係る液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本発明に係る液晶素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw、イミド化率、エポキシ当量並びに重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。
[重合体の重量平均分子量Mw]
Mwは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体のイミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(EX−1)を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 …(EX−1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
<重合体の合成>
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、並びにジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル80モル部、及び3,5−ジアミノ安息香酸20モル部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、40℃で3時間反応を行い、ポリアミック酸(PAA−1)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は120mPa・sであった。
[合成例2〜4]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1のとおり変更した以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸(PAA−2)〜(PAA−4)をそれぞれ合成した。
Figure 2019139254
表1中、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの括弧内の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対する各化合物の使用割合[モル部]を表す。表1中の化合物の略称はそれぞれ以下の意味である。
<テトラカルボン酸二無水物>
t−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
t−2:1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物
t−3:1R,2S,4S,5R−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(PMDA−HS)
<ジアミン>
d−1:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
d−2:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
d−3:3,5−ジアミノ安息香酸
d−4:上記式(D−2−6)で表される化合物
d−5:上記式(D−2−2)で表される化合物
[合成例5]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20モル部、3,5−ジアミノ安息香酸70モル部、及び上記式(D−2−6)で表される化合物10モル部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を、使用したテトラカルボン酸二無水物の全体量に対してそれぞれ1.3倍モルずつ添加して、110℃で4時間、脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約70%のポリイミド(PI−1)を16重量%含有する溶液を得た。
[合成例6]
テトラカルボン酸二無水物として1R,2S,4S,5R−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物30gをエタノール500mL中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、エタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、テトラカルボン酸ジエステルとして化合物(t−3E)を粉末状で得た。次いで、化合物(t−3E)100モル部をNMPに溶解させた後、ここにジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル50モル部、3,5−ジアミノ安息香酸40モル部、及び上記式(D−2−6)で表される化合物10モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステル(PAE−1)を10重量%含有する溶液を得た。得られた重合体(PAE−1)の重量平均分子量Mwは64,000、重合体粘度は90mPa・sであった。
[合成例7]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、加水分解性シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン500g、及び触媒としてトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。ここに脱イオン水100gを滴下漏斗から30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃において6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。このポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このポリオルガノシロキサンのエポキシ当量を測定したところ、186g/当量であった。得られた重合体(EPS−1)の重量平均分子量Mwは5,500であった。
[合成例8]
撹拌機、温度計及び還流冷却管を備えた反応容器に、重合性不飽和化合物としてメタクリル酸(重合に使用したモノマーの合計量100モル部に対して45モル部)、スチレン(同10モル部)、及び下記式(e−3)で表される化合物(同45モル部)を仕込み、重合性不飽和化合物の合計が50重量%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルを加えて溶解した。
ここに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を重合性不飽和化合物の合計モル数に対して3モル%、及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマーを重合開始剤の重量の0.5倍重量加えた。次いで、窒素気流で10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。回収した沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧下、40℃において15時間乾燥することによりポリメタクリレート(PMAA−1)を得た。得られた重合体(PMAA−1)の重量平均分子量Mwは11,000であった。
Figure 2019139254
[合成例9]
使用する重合性不飽和化合物を、メタクリル酸(重合に使用したモノマーの合計量100モル部に対して30モル部)、スチレン(同10モル部)、上記式(e−3)で表される化合物(同30モル部)及びグリシジルメタクリレート(同30モル部)に変更した点以外は上記合成例8と同様の操作によりポリメタクリレート(PMAA−2)を得た。得られた重合体(PMAA−2)の重量平均分子量Mwは12,000であった。
[合成例10]
使用する重合性不飽和化合物を、下記式(e−4)で表される化合物(同100モル部)に変更した点以外は上記合成例8と同様の操作によりポリメタクリレート(PMAA−3)を得た。得られた重合体(PMAA−3)の重量平均分子量Mwは10,000であった。
Figure 2019139254
[実施例1]
(1)重合体組成物の調製
重合体(P)として上記合成例1で得たポリアミック酸(PAA−1)を含む溶液に、化合物(Q)として上記式(Q−1)で表される化合物を、ポリアミック酸(PAA−1)100重量部に対して10重量部、及び化合物(R)として上記式(R−1)で表される化合物を、ポリアミック酸(PAA−1)100重量部に対して5重量部加え、NMP及びブチルセロソルブ(BCS)からなる混合溶媒の組成がNMP:BCS=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより重合体組成物(S−1)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
櫛歯状にパターニングされたクロムからなる2系統の金属電極(電極A及び電極B)を有し、それら電極A及び電極Bに対して独立に電圧の印加が可能なガラス基板を準備した。このガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対とし、ガラス基板の電極を有する面と対向ガラス基板の一面とに、上記で調製した重合体組成物(S−1)を、スピンコーターを用いてそれぞれ塗布した。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。この操作を繰り返し、透明導電膜上に塗膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。上記で得た塗膜に対し、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線2,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長313nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
次に、上記式(Q−1)で表される化合物が80℃にて液晶性を示すことを確認し、続いて、偏光紫外線を照射した後のガラス基板を80℃のホットプレートで15分間加熱した。さらに、庫内を窒素置換した200℃のオーブンで1時間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、基板の外側両面に、2枚の偏光板の変更方向が互いに直交するように偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子を作製した。
(3)信頼性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を測定し、その値を初期VHR(VHRBF)とした。なお、測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。次いで、初期VHR測定後の液晶表示素子につき、LEDランプ照射下の80℃オーブン中で200時間静置した後、室温中に静置して室温まで自然冷却した。冷却後の液晶セルにつき、上記と同様の方法により再度電圧保持率を測定した。この値をストレス付与後VHR(VHRAFBL)とした。電圧保持率の減少量ΔVHR(%)を下記数式(EX−2)から求め、信頼性を評価した。
ΔVHR=((VHRBF−VHRAFBL)÷VHRBF)×100…(EX−2)
ΔVHRが1.0%未満であった場合を信頼性「優良」(◎)、1.0%以上2.0%未満であった場合を信頼性「良好」(○)、2.0%以上3.0%未満であった場合を信頼性「可」(△)、3.0%以上であった場合を信頼性「不良」(×)と判断した。その結果、本実施例の液晶表示素子のΔVHRは1.2%であり、信頼性は「良好」(○)の評価であった。
(4)残像特性の評価(AC残像評価)
上記で製造した液晶表示素子について、電極AにAC10V(60Hz)、電極BにAC0V(60Hz)をそれぞれ印加した状態で300時間、室温にて放置した。その後、電極Aと電極BとをAC0〜10V(60Hz)まで0.1V毎に同時に駆動させ、透過率50%における透過率差ΔTを測定した。
ΔTが1.0%未満であった場合をAC残像特性「優良」(◎)、1.0%以上2.0%未満であった場合を「良好」(○)、2.0%以上3.0%未満であった場合を「可」(△)、3.0%以上であった場合を「不良」(×)と判断した。その結果、本実施例の液晶表示素子のΔTは1.5%であり、残像特性は「良好」(○)の評価であった。
[実施例2]
(1)重合体組成物の調製
使用する重合体の種類、添加剤の種類及び量、並びに溶剤組成を下記の表2に記載のとおり変更した点以外は上記実施例1(1)と同様にして重合体組成物(S−2)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
使用する重合体組成物を(S−2)に変更した点、塗膜に対して313nmの輝線を含む偏光紫外線の照射量を3,000J/mに変更した点、及び80℃・15分間の加熱処理の後であってポストベークの前に、基板上の塗膜に対してメタルハライドランプを用いて365nmの輝線を含む無偏光紫外線10,000J/mを基板法線方向から照射した点以外は上記実施例1(2)と同様の方法により液晶表示素子を作製した。
(3)信頼性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1の(3)と同様にして液晶表示素子の信頼性の評価を行った。その結果、この液晶表示素子ではΔVHR=0.5%であり、信頼性「優良」(◎)の評価であった。
(4)残像特性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1の(4)と同様にして液晶表示素子の残像特性の評価を行った。その結果、この液晶表示素子ではΔT=0.6%であり、残像特性「優良」(◎)の評価であった。
[参考例3,4、実施例6,7及び比較例1〜3]
使用する重合体の種類、添加剤の種類及び量、並びに溶剤組成を下記の表2に記載のとおり変更した点以外は上記実施例1の(1)と同様にして重合体組成物を調製した。また、得られた重合体組成物を用い、上記実施例2の(2)において偏光紫外線の照射量及び無偏光紫外線の照射量を下記表3のとおり変更した点、及び参考例4については偏光紫外線の波長を313nmから365nmに変更した点(参考例3、実施例6,7及び比較例1〜3については実施例2と同じ波長)以外は上記実施例2の(2)と同様にして液晶表示素子を製造した。なお、参考例4の偏光紫外線の照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。また、得られた液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして液晶表示素子の信頼性及び残像特性の評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。
Figure 2019139254
表2中、重合体(P)及び添加剤の配合量欄の数値は、重合体組成物の調製に使用した重合体(P)の合計100重量部に対する各化合物の配合割合[重量部]を示す。添加剤の略称Xは、それぞれ上記式Xで表される化合物であることを示す。溶剤の略称はそれぞれ以下の意味である。
(溶剤)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
PG:1−ブトキシ−2−プロパノール
DMI:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
PGDAc:プロピレングリコールジアセテート
DAA:ダイアセトンアルコール
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
Figure 2019139254
表3中、「−」は、該当する欄の紫外線照射を行わなかったことを示す。
[参考例5]
(1)重合体組成物の調製
使用する重合体の種類及び量、添加剤の種類及び量、並びに溶剤組成を上記の表2に記載のとおり変更した点以外は上記実施例1(1)と同様にして重合体組成物(S−5)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
櫛歯状にパターニングされたクロムからなる2系統の金属電極(電極A及び電極B)を有し、それら電極A及び電極Bに対して独立に電圧の印加が可能なガラス基板を準備した。このガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対とし、ガラス基板の電極を有する面と対向ガラス基板の一面とに、上記で調製した重合体組成物(S−5)を、スピンコーターを用いてそれぞれ塗布した。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。この操作を繰り返し、透明導電膜上に塗膜(液晶配向膜)を有するガラス基板を一対(2枚)得た。上記で得た塗膜に対し、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて365nmの輝線を含む偏光紫外線10,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
その後、偏光紫外線を照射した後のガラス基板を80℃のホットプレートで15分間加熱した。次いで、加熱後の塗膜に対し、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、無偏光紫外線50,000J/mを基板法線方向から照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。さらに、庫内を窒素置換した200℃のオーブンで1時間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止した。
得られた液晶セルにつき、電極間にAC0V(60Hz)を印加し、液晶が駆動していない状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、365nmの輝線を含む無偏光紫外線30,000J/mを基板板法線方向から照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。さらに、基板の外側両面に、2枚の偏光板の変更方向が互いに直交するように偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子を作製した。
(3)信頼性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1の(3)と同様にして液晶表示素子の信頼性の評価を行った。その結果、この液晶表示素子ではΔVHR=0.3%であり、信頼性「優良」(◎)の評価であった。
(4)残像特性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1の(4)と同様にして液晶表示素子の残像特性の評価を行った。その結果、この液晶表示素子ではΔT=0.4%であり、残像特性「優良」(◎)の評価であった。
[実施例8]
使用する重合体の種類、添加剤の種類及び量、並びに溶剤組成を上記の表2に記載のとおり変更した点以外は上記実施例1の(1)と同様にして重合体組成物(S−8)を調製した。また、得られた重合体組成物(S−8)を用い、上記実施例2の(2)において偏光紫外線の照射量及び無偏光紫外線の照射量を上記表3に記載のとおり変更した以外は上記参考例5の(2)と同様にして液晶表示素子を製造した。また、得られた液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして液晶表示素子の信頼性及び残像特性の評価を行った。その結果、本実施例では、ΔVHR=2.7%であり信頼性「可」(△)、ΔT=2.5%であり残像特性「可」(△)の評価であった。
表3に示すように、実施例1,2,6〜8、参考例3〜5では、液晶表示素子の信頼性及び残像特性がいずれも「優良」、「良好」又は「可」の評価であった。これに対し、液晶性化合物(Q)を含むが低分子化合物(R)を含まない比較例のうち、比較例1では残像特性が「不良」の評価であり、比較例3では信頼性及び残像特性のいずれも「不良」の評価であった。また、低分子化合物(R)を含むが液晶性化合物(Q)を含まない比較例2では、信頼性及び残像特性のいずれも「不良」の評価であった。以上の結果から、実施例の重合体組成物と、偏光紫外線照射後の塗膜を加熱する工程[C]との組み合わせにより、信頼性及び残像特性が良好な液晶配向膜を形成できることが分かった。

Claims (8)

  1. 下記[2]の重合体組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程[A]と、
    前記工程[A]で得られた塗膜に対して、偏光した放射線を照射する工程[B]と、
    前記工程[B]における放射線照射の後及び該放射線照射時の少なくともいずれかに前記塗膜を加熱する工程[C]と、を含む液晶配向膜の製造方法。
    [2]ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン及び付加重合により得られる重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(P)と、ラジカル重合性基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサジン環含有基、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基、メチロール基、エーテル化メチロール基及び環状カーボネート基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋性基を有する液晶性化合物(Q)と、光配向性部位を有する分子量2,000以下の低分子化合物(R)と、を含む重合体組成物。
  2. 前記工程[C]は、第1温度で加熱する第1加熱工程と、前記第1温度よりも高い温度で加熱する第2加熱工程とを含む、請求項1に記載の液晶配向膜の製造方法。
  3. 前記第1温度は、前記重合体組成物に配合される液晶性化合物が液晶性を示す温度範囲の下限温度よりも20℃低い温度を下限とし、かつ前記温度範囲の上限温度よりも20℃高い温度を上限とする範囲内の温度である、請求項2に記載の液晶配向膜の製造方法。
  4. 前記第2加熱工程による加熱前、該加熱時及び該加熱後の少なくともいずれかに、無偏光の放射線を照射する工程[D]を更に含む、請求項2又は3に記載の液晶配向膜の製造方法。
  5. 前記重合体(P)が第1官能基を有し、前記光配向性部位を有する化合物が第2官能基を有し、
    前記第1官能基及び前記第2官能基のうち一方の基が、水酸基、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、他方の基が、3級アミノ基及び窒素含有複素環基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。
  6. 前記第1官能基はカルボキシル基であり、前記第2官能基は、3級アミノ基及び窒素含有複素環基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項5に記載の液晶配向膜の製造方法。
  7. 前記重合体(P)は、窒素含有複素環(ただし、ポリイミドが有するイミド環を除く。)、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により液晶配向膜を形成した一対の基板を、液晶層を介して前記液晶配向膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する工程と、
    前記液晶セルに無偏光の放射線を照射する工程と、を含む液晶素子の製造方法。
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