JP2015131523A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】リム滑りやリム外れが防止され、嵌合が容易な空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2では、ビード8のコア16を周方向に垂直な面で切った断面おいて、ワイヤの断面26は略軸方向に並べられた列が二列以上積層されている。この列のうち、半径方向において最も内側に位置する列が第一列とされ、内側から二番目に位置する列が第二列とされたとき、この第一列の中に存在するワイヤの断面26の数はこの第二列の中に存在するワイヤの断面26の数よりも少ない。上記第二列の内側端E2は、上記第一列の内側端E1より引いたこの列の延在方向に垂直な線よりも軸方向において内側に位置している。上記コア16を周方向に垂直な面で切った断面おいて、コア16の底辺とビードベースラインBBLとのなす角度は2°以上9°以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
車両のホイールは、タイヤとリムとからなる。タイヤのビードがリムと嵌合することで、タイヤがリムに取り付けられる。ビードとリムとの密着により、密封性が保たれている。ビードとリムとの嵌合は、ホイールにとって極めて重要である。
リムと嵌合されたビードはリムを締め付ける。この締め付け力により、タイヤはリムに固定されている。車両の急加速時又は急減速時に、リムとビードとの間に周方向に大きな力が発生する。ビードの締め付け力が充分でない場合、リムがビードに対して滑る「リム滑り」を起こすことがある。リム滑りが起こると、車体から路面、又は、路面から車体への力の伝達が阻害される。これは、操縦安定性を低下させる。また、リム滑りは、タイヤの質量バランスを崩す要因ともなりうる。これは、走行時の車両の振動を招来する。さらにビードの締め付け力の不足は、車両の旋回時にリムからビードが外れる「リム外れ」の原因ともなりうる。
ビードの締め付け力が大きく設定されれば、リム滑りやリム外れは抑制できる。しかし、締め付け力が大きなビードでは、ビードをリムに嵌合するとき、大きな嵌合圧が必要となる。このタイヤでは、リムへの取り付けに手間がかかる。このタイヤでは、大きな嵌合圧の影響で、ビードが局部的に捻れるおそれがある。捻れにより、不完全な嵌合が生じうる。
ビードの締め付け力を維持しながら、嵌合圧を低減したタイヤが、特開2013−151198公報に開示されている。このタイヤでは、ビードのコアが、伸びが異なる2種類のビードワイヤで構成されている。
特開2013−151198公報
ビードの締め付け力は、ホフマン締め付け力試験器によって測定される。この試験器は、8個のセグメントと、このセグメントを移動させるための装置と、セグメントの位置を計測するためのリニアポテンションメーターと、ロードセルとを備えている。セグメントは、円弧状である。8個のセグメントが配置されることで、これらセグメントはリングを形成する。これらセグメントは、リングの外径がリム規格値より一定値小さくなるように配置される。これらセグメントの外側にビードの底が位置するように、タイヤが置かれる。8つのセグメントは、径方向に徐々に移動する。この移動により、リングの外径が拡大する。移動に伴い、各セグメントに荷重がかかる。この荷重が、ロードセルで測定される。この荷重は、ビードによる締め付け力に相当する。リングの外径がリム規格値よりも一定値大きくなった段階で、測定が終了する。
ホフマン締め付け力試験器によって測定されたリング外径−締め付け力曲線の例が図6に示されている。リングの外径がリム規格値の−0.4mmから+0.4mmまでの区間における、リング外径の変化に対する締め付け力の変化率は、ビードの「締め付け力勾配」と称される。図6において、締め付け力勾配は点Aと点Bとを結ぶ直線の傾きである。締め付け力勾配の大きなビードでは、リム径の変化に対して締め付け力が大きく変化する。締め付け力勾配の小さなビードでは、リム径の変化に対して締め付け力の変化が小さい。
ビードの締め付け力は、通常規格値どおりのリム径を有するリムに対して、適正な値になるように調整される。しかし、現実にはリム径は、製造誤差によりばらつく。このばらつきについてのJATMAの規格は、±0.38mmである。ビードが規格値よりも大きなリム径を有するリムに嵌合されると、ビードの締め付け力は、適正値よりも大きい方にずれる。締め付け力勾配の大きなビードでは、締め付け力勾配の小さなビードに比べて、この適正値からのずれが大きくなる。これは、嵌合圧の増大の要因となる。このタイヤは、このリムを有するホイールへの取り付けに手間がかかる。このタイヤでは、嵌合のときにバーストが生じるおそれがある。
逆に、ビードが規格値よりも小さなリム径を有するリムに嵌合されると、ビードの締め付け力は、適正値よりも小さい方にずれる。締め付け力勾配の大きなビードでは、締め付け力勾配の小さなビードに比べて、この適正値からのずれが大きくなる。これは、ビードの締め付け力の不足の要因となる。これは、リム滑りやリム外れを招来しうる。
リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れを防止し、嵌合の容易性を確保するためには、ビードの締め付け力勾配を小さくすることが重要となる。これまで、締め付け力勾配を小さくするビードについての検討はなされていなかった。
本発明の目的は、リム滑りやリム外れが防止され、嵌合の容易性が実現された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスとを備えている。上記ビードはコアを備えている。上記コアは、周方向に巻回された非伸縮性ワイヤを備えている。上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、上記ワイヤの断面は略軸方向に並べられた列が二列以上積層されている。これらの列のうち、半径方向において最も内側に位置する列が第一列とされ、内側から二番目に位置する列が第二列とされたとき、この第一列の中に存在するワイヤの断面の数はこの第二列の中に存在するワイヤの断面の数よりも少ない。上記第二列の内側端は、上記第一列の内側端より引いたこの列の延在方向に垂直な線よりも軸方向において内側に位置している。上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、コアの底辺とビードベースラインとのなす角度は2°以上9°以下である。上記第二列の中に存在するワイヤの断面のうち、軸方向において最も内側に位置する断面が基準断面とされ、この基準断面の軸方向内側端から引いた半径方向に延びる接線がVLとされ、この接線VLと上記カーカスの半径方向内側面との交点がP1とされ、この接線VLと上記ビードの部分の底との交点がP2とされたとき、この交点P1とこの交点P2との距離Tが3.1mm以上4.0mm以下である。
好ましくは、上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、上記列は三列以上積層されている。この列のうち、半径方向において最も外側に位置する列の中に存在するワイヤの断面の数は、その一つ内側に位置する列の中に存在する断面の数よりも少なくされている。
好ましくは、上記コアの断面中に位置する全てのワイヤの断面の面積の合計は、13.6mm以上18.1mm以下である。
好ましくは、上記コアの断面の外形は八角形である。
好ましくは、上記ワイヤの断面の形状は略軸方向に長い楕円である。
好ましくは、上記楕円の長径がr1とされ、短径がr2とされたとき、この楕円の扁平率(r2/r1)は0.6以上0.8以下である。
発明者らは、ビードの締め付け力勾配を小さくするために、ビードの形状についての検討を行った。その結果、コア断面内に並べるワイヤの断面の並べ方、コアの底辺とベースラインとのなす角度及びコアの底辺とビードの底との距離を適正にすることにより、リム外れの防止性能の向上及び嵌合圧の低減が実現された上で、ビード締め付け力勾配が小さくできることを見出した。本発明に係る空気入りタイヤでは、リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れが防止され、かつ嵌合の容易性が実現されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのコアの部分が示された模式図である。 図3は、本発明の他の実施形態におけるコア中のワイヤの構成例が示された模式図である。 図4は、従来のタイヤにおけるコア中のワイヤの構成例が示された模式図である。 図5(a)は、本発明のさらに他の実施形態におけるコア中のワイヤの構成例が示された模式図であり、図5(b)はそのワイヤの断面図であり、図5(c)はそのコアの模式図である。 図6は、ホフマン締め付け力試験による測定結果の例である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2の一部が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図示されないが、このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、サイドウォール4、クリンチ6、ビード8、カーカス10、インナーライナー12及びチェーファー14を備えている。図示されないが、このタイヤ2は、これら以外に、トレッド、ベルト及びバンドをさらに備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
図示されないが、トレッドは、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッドは、路面と接地するトレッド面を形成する。トレッド面には、溝が刻まれている。この溝により、トレッドパターンが形成されている。トレッドは、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。
サイドウォール4は、トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール4は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール4は、カーカス10の損傷を防止する。
クリンチ6は、サイドウォール4の半径方向略内側に位置している。クリンチ6は、軸方向において、ビード8及びカーカス10よりも外側に位置している。クリンチ6は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ6は、リムのフランジと当接する。
ビード8は、クリンチ6の軸方向内側に位置している。ビード8は周方向に延びている。ビード8は、コア16と、このコア16から半径方向外向きに延びるエイペックス18とを備えている。コア16はリング状である。エイペックス18は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス18は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、カーカスプライ20からなる。カーカスプライ20は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド及びサイドウォール4に沿っている。カーカスプライ20は、コア16の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ20には、主部22と折り返し部24とが形成されている。このカーカス10は、2枚以上のカーカスプライ20からなってもよい。
図示されないが、カーカスプライ20は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。このコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
図示されないが、ベルトは、トレッドの半径方向内側に位置している。ベルトは、カーカス10と積層されている。ベルトは、カーカス10を補強する。ベルトは、内側層及び外側層からなる。図示されていないが、内側層及び外側層のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルトが、3以上の層を備えてもよい。
図示されないが、バンドは、トレッドの半径方向内側に位置している。バンドは、ベルトの半径方向外側に位置している。バンドは、ベルトに積層されている。バンドは、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンドは、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。バンドは、タイヤ2の半径方向の剛性に寄与しうる。バンドは、走行時に作用する遠心力の影響を抑制しうる。このタイヤ2は、高速安定性に優れる。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト及びバンドは、補強層を構成している。ベルトのみから、補強層が構成されてもよい。バンドのみから、補強層が構成されてもよい。
インナーライナー12は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー12は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー12は、架橋ゴムからなる。インナーライナー12には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー12の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー12は、タイヤ2の内圧を保持する。
チェーファー14は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー14がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。このタイヤ2では、チェーファー14は、布とこの布に含浸したゴムとから構成されている。チェーファー14が、クリンチ6と一体として構成されていてもよい。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リムTRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
図2には、コア16の断面及びカーカス10がタイヤ2のビード8の部分の輪郭と共に示されている。コア16は、周方向に巻回された非伸縮性ワイヤを含む。このコア16は、一本のワイヤが巻回されることで構成されている。コア16が、2本以上のワイヤが巻回されることで構成されていてもよい。ワイヤの典型的な材質は、スチールである。
図2に示されるとおり、周方向に垂直な面で切った断面において、コア16には複数のワイヤの断面26(ワイヤ断面26)が並べられている。それぞれのワイヤ断面26は円形である。コア16には、ワイヤ断面26が略軸方向に並べられた列が二列以上積層されている。図2のコア16では、この列が四列積層されている。これらの列のうち、半径方向において最も内側に位置する列は第一列と称され、内側から二番目に位置する列は第二列と称される。図2に示されるように、第一列の中に存在するワイヤ断面26の個数N1は第二列に存在するワイヤ断面26の個数N2よりも少ない。図2のコア16では、個数N1は3であり、個数N2は4である。
上述のとおり、コア16には、ワイヤ断面26が略軸方向に並べられた列が二列以上積層されている。換言すれば、それぞれの列は、略軸方向に延在している。それぞれの列について、この延在方向の両端のうち、軸方向内側に位置する端は、「列の内側端」と称される。図中の端E1は第一列の内側端であり、端E2は第二列の内側端である。図2において、直線RLは、内側端E1から引いた、第一列の延在方向に垂直な線である。これは、第一列の接線RLと称される。図2に示されるとおり、このタイヤ2のコア16では、第二列の内側端E2は、接線RLより軸方向において内側に位置している。
ここでは、コア16の断面の外形は、並べられた全てのワイヤ断面26を囲む多角形で表される。この多角形のそれぞれの辺は、少なくとも二個のワイヤ断面26と接している。図2のコア16では、コア16の断面の外形は八角形である。多角形の辺のうち、半径方向において、最も内側に位置する辺が、コア16の底辺28である。
図2において、実線BBLはビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリムのリム径(JATMA参照)を規定する線に相当する。このビードベースラインBBLは、軸方向に延びる。図2に示されるとおり、コア16を周方向に垂直な面で切った断面おいて、コア16の底辺28は、ビードベースラインBBLに対して傾斜している。底辺28は、ビードベースラインBBLに対して、軸方向外側に向けて、半径方向外側の方向に傾斜している。角度αは、コア16の底辺28とビードベースラインBBLとがなす角度である。換言すれば、角度αは、コア内部のそれぞれの列の延在方向と、ビードベースラインBBLとがなす角度である。このタイヤ2では、角度αは、2°以上9°以下である。
第二列の中に存在するワイヤ断面26のうち、最も半径方向内側に位置する断面は、「基準断面」と称される。図2において、直線VLは、基準断面の軸方向内側端から引いた半径方向に延びる接線である。点P1は、接線VLとカーカスの半径方向内側面との交点である。点P2は、接線VLと、ビード8の部分のリムのシート面と接触する面(ビード8の部分の底と称される)との交点である。両矢印Tは、交点P1と交点P2との距離である。カーカス10と、ビード8の部分の底との間の部分は、コア内側部32と称される。よって、換言すれば、両矢印Tは、交点P1におけるコア内側部32の厚さである。このタイヤ2では、交点P1におけるコア内側部32の厚さTは3.1mm以上4.0mm以下である。
なお、上記基準断面の軸方向内側端は、第二列の延在方向の内側端E2とは異なった点である。第二列の延在方向が、軸方向に対して角度αだけ傾いているからである。角度αが0°のタイヤにおいては、基準断面の軸方向内側端と、第二列の内側端E2とは一致する。
以下、本発明の作用効果が説明される。
リム径は、製造誤差により規格値からばらつくことが知られている。ビードが規格値よりも大きなリム径を有するリムに嵌合されると、ビードの締め付け力は、適正値よりも大きい方にずれる。締め付け力勾配の大きなビードは、締め付け力勾配の小さなビードに比べて、この適正値からのずれが大きくなる。これは、嵌合圧の増大の要因となる。このタイヤは、このリムを有するホイールへの取り付けに手間がかかる。逆に、ビードが規格値よりも小さなリム径を有するリムに嵌合されると、ビードの締め付け力は、適正値よりも小さい方にずれる。締め付け力勾配の大きなビードは、締め付け力勾配の小さなビードに比べて、この適正値からのずれが大きくなる。これは、ビードのリム締め付け力の不足の要因となる。これは、リム滑りやリム外れを招来しうる。
本発明に係るタイヤ2では、前述のとおり、第一列の中に存在するワイヤの断面26の個数N1は、第二列の中に存在するワイヤの断面26の個数N2よりも少ない。また、第二列の内側端E2は、第一列の内側端E1から引いた接線RLより、軸方向において内側に位置している。この構造は、締め付け力勾配の低減に寄与する。さらにこの構造は、リム外れの防止性能を向上させる。このコア16を備えたビード8では、リム外れの防止性能の向上が達成された上で、ビード8の締め付け力勾配が小さくされている。
本発明に係るタイヤ2では、前述のとおり、コア16の底辺28とビードベースラインBBLとがなす角度αは、2°以上9°以下である。角度αが2°以上9°以下であるコア16は、締め付け力勾配の低減に寄与する。さらに角度αが2°以上のコア16を備えたビード8は、嵌合圧を低減させる。角度αが9°以下のコア16を備えたビード8は、リム外れ防止の性能を向上させる。このコア16を備えたビード8では、リム外れの防止性能の向上及び嵌合圧の低減が達成された上で、ビード8の締め付け力勾配が小さくされうる。この観点から、角度αは、3°以上8°以下がより好ましい。
本発明に係るタイヤ2では、前述のとおり、点P1におけるコア内側部32の厚さTは3.1mm以上である。規格値よりも大きいリムにビード8が嵌合されたとき、ビード8からの締め付け力は規格値通りのリムが嵌合されたときの締め付け力より大きくなる。このとき、厚さTが3.1mm以上であるコア内側部32は、リムの締め付け力の増大を少なくしうる。このコア内側部32は、締め付け力の適正値からのずれを小さくする。規格値よりも小さいリムにビード8が嵌合されたとき、ビード8からの締め付け力は規格値通りのリムが嵌合されたときの締め付け力より小さくなる。このとき、厚さTが3.1mm以上であるコア内側部32は、リムの締め付け力の減少を少なくしうる。このコア内側部32は、締め付け力の適正値からのずれを小さくする。このコア内側部32は、締め付け力勾配の低減に寄与する。この観点から、コア内側部32の厚さTは3.2mm以上がより好ましい。
本発明に係るタイヤ2では、前述のとおり、コア内側部32の厚さTは4.0mm以下である。厚さTが4.0mm以下であるタイヤ2は、リムに対する充分な締め付け力を有する。このタイヤ2では、リム滑り及びリム外れが防止されている。この観点から、厚さTは、3.6mm以下がより好ましい。
本発明に係るタイヤ2では、個数N1を個数N2よりも少なくし、第二列の内側端E2を接線RLより軸方向において内側に位置させる構造、角度αを2°以上9°以下とする構造及び厚さTを3.1mm以上4.0mm以下とする構造を組み合わせることにより、さらに効率よく締め付け力勾配が低減される。このタイヤ2では、リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れが防止され、かつ嵌合の容易性が確保されうる。
図2のコア16では、半径方向において最も外側に位置する列に並べられたワイヤ断面26の数は3であり、その一つ内側に位置する列に並べられたワイヤ断面26の数は4である。このように、ワイヤ断面26の列が三列以上積層されたコア16においては、最も外側に位置する列に並べられた断面26の数は、その一つ内側に位置する列に並べられた断面26の数よりも少なくするのが好ましい。この構造は、締め付け力勾配をさらに低減させる。この構造を持つコア16は、リム径が規格値からずれたリムに対して、リム滑りやリム外れの防止及び嵌合の容易性の確保に寄与する。
コア16の断面の外形は、八角形が好ましい。断面の外形が八角形であるコア16は、底辺28及び底辺28に対向する辺30(上辺30)におけるコア16の幅が、底辺28と上辺30の中央部におけるコア16の幅よりも小さくされている。このコア16の断面の外形は、締め付け力勾配の低減に寄与する。このコア16を備えたビード8を有するタイヤ2では、リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れが防止され、かつ嵌合の容易性が確保されうる。
コア16の断面に含まれるワイヤ断面26の面積の合計Swは、13.6mm以上18.1mm以下が好ましい。面積の合計Swが13.6mm以上18.1mm以下のコア16を備えるビード8は、締め付け力勾配が小さい。この構造を持つコア16は、リム径が規格値からずれたリムに対して、リム滑りやリム外れの防止及び嵌合の容易性の確保に寄与する。さらに、面積の合計Swが13.6mm以上のコア16は、ビード8の強度の向上に寄与する。走行時等に大きな負荷がビード8にかかっても、このビード8は損傷が防止されている。このコア16は、タイヤ2の耐久性の向上に寄与する。
締め付け力勾配は、6000N/mm以下が好ましい。締め付け力勾配が6000N/mm以下のビード8を備えたタイヤ2では、リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れが防止される。このタイヤ2では、嵌合の容易性が確保されうる。この観点から締め付け力勾配は、5000N/mm以下がより好ましく、4000N/mm以下がさらに好ましい。
図3の(A)から(G)には、本発明の他の実施形態に係るコアの断面の構造の例が示されている。これらの構造を持つコアを備えたタイヤは、締め付け力勾配が小さくされている。これらのタイヤでは、リム径が規格値からずれたリムに対しても、リム滑りやリム外れを防止し、嵌合の容易性を確保することができる。
図4には、参考のため、従来のタイヤにおけるコアの構造の例が示されている。この従来のコアは、断面の外形が四角形である。このコアは、ビードベースラインに対して、傾斜はしていない。このコアでは、第一列の中に存在する断面の個数は第二列の中に存在する断面の個数と同じである。このコアでは、第二列の内側端は、第一列の内側端から引いた接線に接している。このコアでは、第二列の内側端は、第一列の内側端から引いた接線より、軸方向において内側に位置していない。このコアにおいては、コア内側部の厚さTは、第一列の最も軸方向内側に位置する断面を基準断面として、計測される。
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係るコア40の断面の構造を示した図である。図5(a)に示されるように、このコア40では、ワイヤの断面42が略軸方向に長い楕円形状を呈している。コア40は、楕円形のワイヤ断面42が略軸方向に並べられた列が複数段積層された構造となっている。そのため、コア40の断面の外形も、略軸方向に幅が広くなった八角形である。
前述のとおり、コア40は周方向に延びている。コア40はリング状を呈している。このリング状のコア40の一部が図5(c)に示されている。ワイヤの断面の形状が略軸方向に幅が広くなっているため、このリングは、ワイヤ断面42が円であるワイヤを有するコア40に比べて、半径方向(図5(c)の矢印Xの方向)に撓みやすくなっている。このコア40のリングは、容易に偏芯しうる。これは、このビードのリムへの嵌合を容易にする。このビードを有するタイヤは、リムへの取り付けが容易である。
一方、このコア40を有するビードがリムに組み込まれた後は、コア40は偏芯のないリング状を呈する。このビードは、その位置によって締め付け力が異なることはない。このビードは、どの位置においても均等な力でリムを締め付ける。このコア40を有するビードは、ワイヤの断面の形状が円形であるコア40を有するビードと比べて、締め付け力が小さくなることはない。このビードは、充分な締め付け力を有する。このタイヤは、リム滑り及びリム外れが防止されている。
図5(b)において、両矢印r1は楕円の長径であり、両矢印r2は楕円の短径である。この楕円の偏平率(r2/r1)は、0.8以下が好ましい。偏平率(r2/r1)が0.8以下のワイヤを備えたコア40は、ビードをリムに嵌合する際に、容易に撓みうる。このビードのリムへの嵌合は容易である。偏平率(r2/r1)は、0.6以上が好ましい。偏平率(r2/r1)が0.6以上のワイヤを備えたコア40は、ビードの強度の向上に寄与する。走行時等に大きな負荷がビードにかかっても、このコア40は損傷が防止されている。このコア40は、タイヤの耐久性の向上に寄与する。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1のタイヤを得た。このタイヤのサイズは、205/40R16とされた。このタイヤでは、コアの構造は、図2のとおりである。このことが、表1のコア構造の欄に「図2」として表されている。コアの底辺とビードベースラインBBLのなす角度は5°とされた。このことが、表1のコア角度αの欄に表されている。
[比較例1]
コアの構造を図4に示されたものとし、コア角度αを0°とした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。このタイヤは、従来のタイヤである。コアの構造が図4の構造であることは、表1のコア構造の欄に単に「図4」として記載されている。
[比較例2]
コアの構造を図4に示されたものとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。これは、比較例1のタイヤにおいて、コア角度αを5°にしたタイヤである。
[比較例3]
コアの構造を図3(A)に示されたものとし、コア角度αを0°とした他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。コアの構造が図3(A)の構造であることは、表1のコア構造の欄に単に「図3(A)」として記載されている。
[実施例2]
コアの構造を図3(A)に示されたものとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3]
コアの構造を図3(B)に示されたものとした他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
[比較例4−6及び実施例4−5]
コア角度αを表2に示されるものとした他は実施例3と同様にして、比較例4−6及び実施例4−5のタイヤを得た。
[実施例6−10]
コアの構造を表3に示されるものとした他は実施例1と同様にして、実施例6−10のタイヤを得た。
[比較例7−8及び実施例11−14]
コア内側部の厚さTを表4に示されるものとした他は実施例1と同様にして、比較例7−8及び実施例11−14のタイヤを得た。
[締め付け力勾配]
Wdk116(ドイツゴム工業会)にて規定された方法により、締め付け力勾配を測定した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[締め付け力]
Wdk116(ドイツゴム工業会)にて規定された方法により、締め付け力を測定した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[嵌合圧]
タイヤを標準リム(サイズ=16×7.5JJ)に組み込み、空気を充填し、このタイヤのビードの部分がリムのハンプを乗り越えるときの圧力(嵌合圧)を計測した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[リム外れ性能]
JISD4230に準拠したビートアンシーティング抵抗力試験により、ビード部に横方向からの荷重を負荷し、ビードがリムから外れるときの抵抗力を測定した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[水圧耐性]
タイヤを標準リム(サイズ=16×7.5JJ)に組み込み、このタイヤに針で穴を開けた後、圧力バルブからタイヤに水を注入した。この針穴から空気を抜きながらタイヤが破壊するまで水を注入し、その破壊時の水圧を計測した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:16×7.5JJ
内圧:250kPa
荷重:3.82kN
速度:80km/h
この結果が、比較例2を100とした指数値で下記の表1から4に示されている。数値が小さいほど好ましい。
Figure 2015131523
Figure 2015131523
Figure 2015131523
Figure 2015131523
表1から表4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたビードの部分の構成は、種々のタイヤにも適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・サイドウォール
6・・・クリンチ
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・インナーライナー
14・・・チェーファー
16、40・・・コア
18・・・エイペックス
20・・・カーカスプライ
22・・・主部
24・・・折返し部
26、42・・・ワイヤ断面
28・・・底辺
30・・・上辺
32・・・コア内側部

Claims (6)

  1. その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスとを備えており、
    上記ビードがコアを備えており、
    上記コアが、周方向に巻回された非伸縮性ワイヤを備えており、
    上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、上記ワイヤの断面が略軸方向に並べられた列が二列以上積層されており、
    上記列のうち、半径方向において最も内側に位置する列が第一列とされ、内側から二番目に位置する列が第二列とされたとき、この第一列の中に存在するワイヤの断面の数がこの第二列の中に存在するワイヤの断面の数よりも少なく、
    上記第二列の内側端が、上記第一列の内側端より引いたこの列の延在方向に垂直な線よりも軸方向において内側に位置しており、
    上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、コアの底辺とビードベースラインとのなす角度が2°以上9°以下であり、
    上記第二列の中に存在するワイヤの断面のうち、軸方向において最も内側に位置する断面が基準断面とされ、この基準断面の軸方向内側端から引いた半径方向に延びる接線がVLとされ、この接線VLと上記カーカスの半径方向内側面との交点がP1とされ、この接線VLと上記ビードの部分の底との交点がP2とされたとき、この交点P1とこの交点P2との距離Tが3.1mm以上4.0mm以下である空気入りタイヤ。
  2. 上記コアを周方向に垂直な面で切った断面おいて、上記列が三列以上積層されており、これらの列のうち、半径方向において最も外側に位置する列の中に存在するワイヤの断面の数が、その一つ内側に位置する列の中に存在するワイヤの断面の数よりも少なくされている請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記コアの断面中に位置する全てのワイヤの断面の面積の合計が、13.6mm以上18.1mm以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記コアの断面の外形が八角形である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
  5. 上記ワイヤの断面の形状が略軸方向に長い楕円である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
  6. 上記楕円の長径がr1とされ、短径がr2とされたとき、この楕円の扁平率(r2/r1)が0.6以上0.8以下である請求項5に記載のタイヤ。
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