以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。この図において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18及び一対のチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、小型トラックに装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド4には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層26とキャップ層28とを有している。キャップ層28は、ベース層26の半径方向外側に位置している。キャップ層28は、ベース層26に積層されている。ベース層26は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層26の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層28は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向内側端は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、サイドウォール6の端から半径方向略内向きに延びている。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
それぞれのビード10は、クリンチ8よりも軸方向内側に位置している。ビード10は、コア30と、第一エイペックス32とを備えている。コア30はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス32は、コア30から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス32は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス32は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス12は、カーカスプライを備えている。この実施形態では、カーカス12は、第一プライ34及び第二プライの二つのカーカスプライからなる。第一プライ34及び第二プライは、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。
第一プライ34は、コア30の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ34には、主部34aと折返し部34bとが形成されている。主部34aは、第一エイペックス32の軸方向内側を通っている。折返し部34bは、第一エイペックス32の軸方向外側を通り半径方向外側に延びている。
第二プライ36は、コア30の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ36には、主部36aと折返し部36bとが形成されている。主部36aは、第一エイペックス32の軸方向内側を通っている。折返し部36bは、第一エイペックス32の軸方向外側を通り半径方向外側に延びている。この実施形態では、第二プライ36の折返し部36bの端は、半径方向において、第一プライ34の折返し部34bの端よりも外側に位置している。このようにカーカス12が複数のカーカスプライを備えるとき、最も半径方向外側に位置する折返し部の端は、カーカスプライの折返し部の外側端と称される。この実施形態では、第一プライ34の折返し部34bの端が、カーカスプライの折返し部の外側端である。
図示されないが、第一プライ34及び第二プライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス12が、1枚のプライから形成されてもよい。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、内側層14a及び外側層14bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層14aの幅は外側層14bの幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層14a及び外側層14bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層14aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層14bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト14の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー20は、布とこの布に含浸したゴムとからなっている。チェーファー20がクリンチ8と一体となっていてもよい。この場合、チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じである。
図2には、図1に示されたタイヤ2の一部が示されている。この図では、タイヤ2は、正規リム40に装着されている。この図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リム40とは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リム40である。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
本発明では、タイヤ2の外面の輪郭はプロファイル38と称される。外面に溝24や突起が設けられている場合は、この溝24や突起がないと仮定して得られる仮想外面を用いて、このプロファイル38は表される。図2には、図1に示されたタイヤ2の一部のプロファイル38が示されている。この図には、さらにコア30、第一エイペックス32及び第二プライ36の輪郭が示されている。
図2において、符号Pmは、外側面のプロファイル38上の位置である。この位置において、このタイヤ2の幅が最大となる。この位置Pmは、基準位置と称される。直線Mは、基準位置Pmを通り軸方向に延びる基準線である。両矢印Htは、基準位置Pmからトレッド4の半径方向外側端までの高さである。符号Plは、外側面のプロファイル38上の位置である。位置Plは、基準位置Pmから半径方向外側に上記高さHtの0.2倍の距離離れた位置である。すなわち、基準位置Pmから位置Plまで高さは、高さHtの0.2倍である。直線Lは、位置Plを通り軸方向に延びる基準線である。
図2において、符号Cmは直線M上に中心Zmを有する円弧である。円弧Cmは、基準位置Pmから半径方向外側に向けて、このタイヤ2のプロファイル38に則している。詳細には、円弧Cmは、直線M上に中心Zmを有し、基準位置Pmと位置Plとを通る円弧である。図2では、円弧Cmは、第一エイペックス32の近辺まで延長して描かれている。
図2において、両矢印Lmは第一エイペックス32の先端41と中心Zmとの距離である。このタイヤ2では、円弧Cmの曲率半径Rmは、距離Lmより小さい。換言すれば、第一エイペックス32の先端41は、円弧Cmを含む円の外側に位置している。
以下、本発明の作用効果が説明される。
タイヤの走行状態においては、ビードの部分は変形と復元とを繰り返す。このとき、特に第一エイペックスの先端近辺に、ひずみが集中し易い。この歪みの集中は耐久性向上の妨げとなる。これまでのタイヤでは、この歪みの集中の抑制については、十分な検討がされていなかった。
発明者らは、耐久性を向上させるためのビードの構造について詳細に検討を行った。その結果、荷重により撓んだときのタイヤのプロファイルと、ビードの構造との関係が、耐久性に大きく影響することを見出した。ビードの構造を、荷重が負荷されたときのタイヤのプロファイルとの関係で決めることにより、これまでの断面高さとの関係で決める方法に比べて、耐久性が効果的に向上されうる。具体的には、これまでのタイヤでは、荷重により撓んだときのサイドウォールのプロファイルの円弧の軌道の中に第一エイペックスの先端が入り込むことで、この先端近辺で歪みの集中及び発熱の集中が発生していることが判明した。歪みの集中及び発熱の集中は、タイヤの構成部材間のルースの要因となりうる。荷重により撓んだときのタイヤの外側面のプロファイルと、第一エイペックスの先端の位置との関係を適正に整えることにより、第一エイペックスの先端近辺の歪みが効果的に緩和できる。これにより、第一エイペックスを小さくしても、良好な耐久性が実現できる。
本発明に係る空気入りタイヤ2では、前述の基準線M上に中心Zmを持ち基準位置Pmと位置Plとを通る円弧がCmとされたとき、この円弧Cmの曲率半径Rmは、第一エイペックス32の先端41と中心Zmとの距離Lmよりも小さい。換言すれば、第一エイペックス32の先端41は、円弧Cmを含む仮想円の外側に位置する。これにより、タイヤ2が撓んだときの第一エイペックス32の先端41近辺の歪みの集中及び発熱の集中が効果的に緩和される。このタイヤ2は耐久性に優れる。
曲率半径Rmの距離Lmに対する比(Rm/Lm)は、0.95以下が好ましい。比(Rm/Lm)を0.95以下とすることで、このタイヤ2では、第一エイペックス32の先端41近辺の歪みの集中及び発熱の集中がより効果的に緩和される。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から、比(Rm/Lm)は、0.90以下がより好ましい。比(Rm/Lm)は0.75以上が好ましい。比(Rm/Lm)を0.75以上とすることで、このビード10の部分の剛性が適正に保たれている。このタイヤ2は、剛性の低下による耐久性の低下が抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらにこのタイヤ2では、ビード10の部分の剛性が適正に保たれるため、良好な操縦安定性が維持されている。これらの観点から、比(Rm/Lm)は、0.78以上がより好ましい。
図2に示されるとおり、この実施形態では、基準位置Pmと位置Plとの間において、プロファイル38と円弧Cmとは一致している。このように、これらの間において、プロファイル38と円弧Cmとが一致しているのが好ましい。プロファイル38と円弧Cmとが一致することで、このタイヤ2のサイド部はしなやかに撓む。このタイヤ2では、より良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。ここで「プロファイル38と円弧Cmとが一致する」とは、プロファイル38と円弧Cmとの距離の最大値が、一定値以下であることを表す。詳細には、これは、円弧Cmの法線に沿って計測したプロファイル38と円弧Cmとの距離の最大値がΔmとされたとき、最大値Δmの曲率半径Rmに対する比(Δm/Rm)が、0.03以下であることを表す。
図示されないが、位置Pnは、外側面のプロファイル38上の位置であって基準位置Pmから半径方向内側に上記高さHtの0.2倍の距離離れた位置である。基準位置Pmと位置Pnとの間において、プロファイル38と円弧Cmとは一致しているのが好ましい。プロファイル38と円弧Cmとが一致することで、このタイヤ2のサイド部はしなやかに撓む。より良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。このタイヤ2では、位置Plと位置Pnとの間において、プロファイル38と円弧Cmとが一致しているのがさらに好ましい。位置Plと位置Pnとの間においてプロファイル38と円弧Cmとが一致することで、このタイヤ2のサイド部は、広い範囲でしなやかに撓む。これによりさらに良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。
図2において、点Ppは基準線Mとカーカス12の外側面との交点である。この実施形態では、点Ppは、基準線Mと第二プライ36の主部36aの外側面との交点である。点Pqは基準線Lとカーカス12の外側面との交点である。この実施形態では、点Pqは、基準線Lと第二プライ36の主部36aの外側面との交点である。
図2において、符号Cpは基準線M上に中心Zpを有する円弧である。円弧Cpは、交点Ppから半径方向外側に向けて、このカーカス12の輪郭に則している。詳細には円弧Cpは、直線M上に中心を有し、交点Ppと交点Pqとを通る円弧である。図2では、円弧Cpは、第一エイペックス32の近辺まで延長して描かれている。
図2において、符号Lpは第一エイペックス32の先端41と中心Zpとの距離である。このタイヤ2では、円弧Cpの曲率半径Rpは、距離Lpより小さいのが好ましい。このとき、第一エイペックス32の先端41は、円弧Cpを含む仮想円の外側に位置している。これは、タイヤ2が撓んだときの第一エイペックス32の先端41近辺の歪みの集中及び発熱の集中を効果的に緩和する。このタイヤ2は耐久性に優れる。
曲率半径Rpの距離Lpに対する比(Rp/Lp)は、0.90以下が好ましい。比(Rp/Lp)を0.90以下とすることで、このタイヤ2では、第一エイペックス32の先端41近辺の歪みの集中及び発熱の集中がより効果的に緩和される。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から、比(Rp/Lp)は、0.85以下がより好ましい。比(Rp/Lp)は0.70以上が好ましい。比(Rp/Lp)を0.70以上とすることで、このビード10の部分の剛性が適正に保たれている。このタイヤ2は、剛性の低下による耐久性の低下が抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらにこのタイヤ2では、良好な操縦安定性が維持されている。この観点から、比(Rp/Lp)は、0.73以上がより好ましい。
図2に示されるとおり、この実施形態では、交点Ppと交点Pqとの間において、カーカス12の輪郭と円弧Cpとは一致している。このように、これらの間において、カーカス12の輪郭と円弧Cpとが一致しているのが好ましい。カーカス12の輪郭と円弧Cpとが一致することで、このタイヤ2のサイド部はしなやかに撓む。このタイヤ2では、より良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。ここで「輪郭と円弧Cpとが一致する」とは、輪郭と円弧Cpとの距離の最大値が、一定値以下であることを表す。詳細には、これは、円弧Cpの法線に沿って計測した輪郭と円弧Cpとの距離の最大値がΔpとされたとき、最大値Δpの曲率半径Rpに対する比(Δp/Rp)が、0.03以下であることを表す。
図示されないが、交点Prは、上記位置Pnから軸方向に延びる基準線とカーカス12の外側面との交点である。交点Ppと交点Prとの間において、カーカス12の輪郭と円弧Cpとは一致しているのが好ましい。カーカス12の輪郭と円弧Cpとが一致することで、このタイヤ2のサイド部はしなやかに撓む。より良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。交点Pqと交点Prとの間において、カーカス12の輪郭と円弧Cpとが一致しているのがさらに好ましい。交点Pqと交点Prとの間においてカーカス12の輪郭と円弧Cpとが一致することで、このタイヤ2のサイド部は、広い範囲でしなやかに撓む。これによりさらに良好な耐久性と乗り心地とが実現できる。
図1において、両矢印L1は第一エイペックス32の長さである。この長さL1は、第一エイペックス32の底面の軸方向中心からその先端までの長さで表される。長さL1は、タイヤ2が正規リム40に組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填され、タイヤ2には荷重がかけられない状態で測定される。後に述べる高さHc、高さH2及び距離Haも同じである。
このタイヤ2では、長さL1は5mm以上が好ましい。この長さL1が5mm以上に設定されることにより、第一エイペックス32がビード10の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。長さL1は15mm以下が好ましい。この長さL1が15mm以下に設定されることにより、この第一エイペックス32の曲げ変形は小さい。この第一エイペックス32では、長時間駐車しても変形が戻り難くなることが防止されている。このタイヤ2では、フラットスポットが防止されている。
このタイヤ2では、第一エイペックス32の複素弾性率E1は60MPa以上が好ましい。この弾性率E1が60MPa以上に設定されることにより、第一エイペックス32がタイヤ2の支持に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。複素弾性率E1は70MPa以下が好ましい。この弾性率E1が70MPa以下に設定されることにより、第一エイペックス32による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持されている。
本発明では、第一エイペックス32の複素弾性率E1及び後述する第二エイペックスの複素弾性率E2は「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
図3には、本発明の他の実施形態における空気入りタイヤ42が示されている。この図において、上下方向がタイヤ42の半径方向であり、左右方向がタイヤ42の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ42の周方向である。図3において、一点鎖線CLはタイヤ42の赤道面を表わす。このタイヤ42の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ42は、トレッド44、一対のサイドウォール46、一対のクリンチ48、一対のビード50、カーカス52、ベルト54、バンド56、インナーライナー58及び一対のチェーファー60を備えている。このタイヤ42は、チューブレスタイプである。このタイヤ42は、小型トラックに装着される。このタイヤ42では、クリンチ48、ビード50及びカーカス52を除き、図1のタイヤ2と同じである。以下では、クリンチ48、ビード50及びカーカス52について説明がされる。
それぞれのクリンチ48は、サイドウォール46の半径方向略内側に位置している。クリンチ48は、サイドウォール46の端から半径方向略内向きに延びている。クリンチ48は、軸方向において、ビード50及びカーカス52よりも外側に位置している。クリンチ48は、ビード50の第二エイペックスと接している。クリンチ48は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ48は、リムのフランジと当接する。
それぞれのビード50は、クリンチ48よりも軸方向内側に位置している。ビード50は、コア62と、第一エイペックス64と、第二エイペックス66とを備えている。コア62はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス64は、コア62から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス64は、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス66は、軸方向において第一エイペックス64よりも外側に位置している。第二エイペックス66は、軸方向においてクリンチ48とカーカス52との間に位置している。このタイヤ42では、第二エイペックス66の外側端68は半径方向において第一エイペックス64の先端70よりも外側に位置している。第一エイペックス64及び第二エイペックス66は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス52は、カーカスプライを備えている。この実施形態では、カーカス52は、第一プライ72及び第二プライ74の二つのカーカスプライからなる。第一プライ72及び第二プライ74は、両側のビード50の間に架け渡されており、トレッド44及びサイドウォール46に沿っている。
第一プライ72は、コア62の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ72には、主部72aと折返し部72bとが形成されている。主部72aは、第一エイペックス64の軸方向内側を通っている。折返し部72bは、第一エイペックス64の軸方向外側、かつ第二エイペックス66の軸方向内側を通って半径方向外側に延びている。折返し部72bは、第一エイペックス64と第二エイペックス66との間を通っている。この実施形態では、この折返し部72bの端76は、半径方向において、第二エイペックス66の外側端68より外側に位置している。
第二プライ74は、コア62の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ74には、主部74aと折返し部74bとが形成されている。主部74aは、第一エイペックス64の軸方向内側を通っている。折返し部74bは、第一エイペックス64の軸方向外側、かつ第二エイペックス66の軸方向内側を通って半径方向外側に延びている。折返し部74bは、第一エイペックス64と第二エイペックス66との間を通っている。この実施形態では、この折返し部74bの端78は、半径方向において、第二エイペックス66の内側端とその外側端68との間に位置している。この実施形態では、第二プライ74の折返し部74bの端78は、半径方向において、第一プライ72の折返し部72bの端76よりも内側に位置している。このようにカーカス52が複数のカーカスプライを備えるとき、最も半径方向外側に位置する折返し部の端は、カーカスプライの折返し部の外側端80と称される。この実施形態では、第一プライ72の折返し部72bの端76が、カーカスプライの折返し部の外側端80である。
図示されないが、基準位置Pmとは、このタイヤ42の幅が最大となる外側面のプロファイル上の位置である。図示されないが、直線Mは、基準位置Pmを通り軸方向に延びる基準線である。高さHtは、基準位置Pmからトレッド44の半径方向外側端までの高さである。位置Plは、外側面のプロファイル上の位置である。位置Plは、基準位置Pmから半径方向外側に上記高さHtの0.2倍の距離離れた位置である。すなわち、基準位置Pmから位置Plまで高さは、高さHtの0.2倍である。直線Lは、位置Plを通り軸方向に延びる基準線である。
図示されないが、円弧Cmは直線M上に中心Zmを有する。円弧Cmは、基準位置Pmから半径方向外側に向けて、このタイヤ42のプロファイルに則している。詳細には、円弧Cmは、直線M上に中心Zmを有し、基準位置Pmと位置Plとを通る円弧である。
図示されないが、距離Lmは第一エイペックス64の先端70と中心Zmとの距離である。このタイヤ42では、円弧Cmの曲率半径Rmは、距離Lmより小さい。換言すれば、第一エイペックス64の先端70は、円弧Cmを含む円の外側に位置している。
本発明に係る空気入りタイヤ42では、前述の基準線M上に中心Zmを持ち基準位置Pmにおいてプロファイルに則した円弧がCmとされたとき、この円弧Cmの曲率半径Rmは、第一エイペックス64の先端70と中心Zmとの距離Lmよりも小さい。換言すれば、第一エイペックス64の先端70は、円弧Cmを含む仮想円の外側に位置する。これにより、タイヤ42が撓んだときの第一エイペックス64の先端70近辺の歪みの集中及び発熱の集中が効果的に緩和される。このタイヤ42は耐久性に優れる。
さらに、このタイヤ42では、第一エイペックス64の先端70近辺での歪みが小さくされているため、この第一エイペックス64は、従来の第一エイペックス64に比べて、小さくできる。この第一エイペックス64の曲げ変形は小さい。このタイヤ42では、フラットスポットが防止されている。
図3において、実線BBLはビードベースラインである。ビードベースラインBBLは、リムRのリム径(JATMA参照)を規定する線である。両矢印Hcは、ビードベースラインBBLからカーカスプライの折返し部の外側端80までの高さである。この実施形態では、高さHcは、ビードベースラインBBLから第一プライ72の折返し部72bの端76までの高さである。両矢印H2はビードベースラインBBLから第二エイペックス66の外側端68までの高さである。
高さH2の高さHcに対する比(H2/Hc)は、0.95以下が好ましい。カーカスプライの折返し部の外側端80と第二エイペックス66の外側端68とが近くに位置すると、この外側端付近で歪みの集中が起こる。これは、折返し部の外側端80近辺でのルースの原因となりうる。比(H2/Hc)を0.95以下とすることで、この外側端付近で歪みの集中が抑えられる。このタイヤ42では、折返し部の外側端80付近でのルースが抑えられている。このタイヤ42は耐久性に優れる。比(H2/Hc)は、0.60以上が好ましい。比(H2/Hc)を0.60以上とすることで、この第二エイペックス66は、ビード50の部分の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ42では、優れた操縦安定性が実現されている。
図3において、両矢印Haは、カーカスプライの折返し部の外側端80と第二エイペックス66の外側端68との半径方向距離である。距離Haは、2.0mm以上が好ましい。距離Haを2.0mm以上とすることで、カーカスプライの折返し部の外側端80付近で歪みの集中が抑えられる。このタイヤ42では、カーカスプライの折返し部の外側端80付近でのルースが抑えられている。このタイヤ42は耐久性に優れる。距離Haは、50mm以下が好ましい。距離Haを50mm以下とすることで、この第二エイペックス66は、ビード50の部分の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ42では、優れた操縦安定性が実現されている。
図3において、両矢印L2は、第二エイペックス66の長さである。長さL2は、第二エイペックス66の外側端68と内側端69との距離である。長さL2は、20mm以上が好ましい。長さL2を20mm以上とすることで、この第二エイペックス66は、ビード50の部分の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ42では、優れた操縦安定性が実現されている。この観点から、長さL2は25mm以上がより好ましい。長さL2は60mm以下が好ましい。長さL2を60mm以下とすることで、第二エイペックス66の縦バネ定数への影響が抑えられる。このタイヤ42では、良好な乗り心地が維持されている。さらにこの第二エイペックス66の、タイヤ質量への影響が抑えられている。この第二エイペックス66の転がり抵抗への影響が抑えられている。この観点から、長さL2は55mm以下がより好ましい。
図3において、両矢印T2は、第二エイペックス66の最大厚みである。第二エイペックスの厚みは、第二エイペックス66の内側面上の点から外側面に対して引いた外側面の法線に沿って計測される。最大厚みT2は、この法線に沿って計測した第二エイペックス66内側面と外側面との距離の最大値である。
最大厚みT2は1.5mm以上が好ましい。最大厚みT2を1.5mm以上とすることで、この第二エイペックス66は荷重に耐えうる十分な剛性を備える。このタイヤ42は耐久性に優れる。さらにこの第二エイペックス66は、横バネ定数に効果的に寄与する。このタイヤ42では、優れた操縦安定性が実現されている。この観点から、最大厚みT2は2.0mm以上がより好ましい。最大厚みT2は5.0mm以下が好ましい。最大厚みT2を5.0mm以下とすることで、この第二エイペックス66のタイヤ質量への影響が抑えられている。この第二エイペックス66の転がり抵抗への影響が抑えられている。この観点から、最大厚みT2は4.5mm以下がより好ましい。
このタイヤ42では、第一プライ72の折返し部72b及び第二プライ74の折返し部74bと、クリンチ48との間に第二エイペックス66が位置している。このタイヤ42では、第一プライ72の折返し部72b及び第二プライ74の折返し部74bは従来タイヤにおける折返し部よりも軸方向内側に配置される。この配置は、折返し部への歪みの集中を抑えうる。ルースの発生が抑えられるので、このタイヤ42は耐久性に優れる。
このタイヤ42では、第一エイペックス64の複素弾性率E1は60MPa以上が好ましい。この弾性率E1が60MPa以上に設定されることにより、第一エイペックス64がタイヤ42の支持に寄与する。このタイヤ42は、操縦安定性に優れる。複素弾性率E1は70MPa以下が好ましい。この弾性率E1が70MPa以下に設定されることにより、第一エイペックス64による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ42では、良好な乗り心地が維持されている。
このタイヤ42では、第二エイペックス66の複素弾性率E2は60MPa以上が好ましい。この弾性率E2が60MPa以上に設定されることにより、第二エイペックス66が剛性に寄与する。このタイヤ42は、操縦安定性に優れる。複素弾性率E2は70MPa以下が好ましい。この弾性率E2が70MPa以下に設定されることにより、第二エイペックス66による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ42では、良好な乗り心地が維持されている。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実験1]
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「LT265/75R16 123/120Q」とされた。このタイヤでは、曲率半径Rmは120mm、距離Lmは128mm、曲率半径Rpは90mm、距離Lpは105mmとされた。第一エイペックスの長さL1は、15mmである。
[比較例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた比較例1のタイヤを得た。このタイヤは、従来のタイヤである。
[比較例2]
サイドウォールのプロファイルを変更して比(Rm/Lm)を表1の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
[実施例2]
カーカスの輪郭を変更して比(Rp/Lp)を表1の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
[実施例3−5]
第一エイペックスの高さ、サイドウォールのプロファイル及びカーカスの輪郭を変更して比(Rm/Lm)及び比(Rp/Lp)を表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−5のタイヤを得た。
[耐久性]
タイヤを正規リム(サイズ:7.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を550kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、20kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、95km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を、測定した。ただし、30000km走行した時点で、損傷がなければ試験を終了させた。この結果が、30000km走行した場合を100とした指数として、下記の表1−2に示されている。数値が大きいほど、好ましい。なお、表の故障モードの欄において、「A」は、第一エイペックスの先端近辺でルースが発生したとこと示す。
[実験2]
[実施例6]
図3に示された構成を備え、下記の表3に示された仕様を備えた実施例6の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「LT265/75R16 123/120Q」とされた。このタイヤでは、曲率半径Rmは120mm、距離Lmは125mm、曲率半径Rpは88mm、距離Lpは100mmとされた。第二エイペックスの長さL2は、45mmである。第二エイペックスの最大幅T2は、3.0mmである。ビードベースラインから第二エイペックスの外側端までの半径方向高さH2は、50mmである。
[実施例7]
第二エイペックスの高さを変更して比(H2/Hc)を表3の通りとした他は実施例6と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
[耐久性]
実験1と同様にして耐久性を評価した。この結果が、下記の表3に示されている。数値が大きいほど、好ましい。なお、表の故障モードの欄において、「C」は、カーカスプライの折返し部の外側端近辺でルースが発生したことを示す。
表1−3に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。