JP2015070810A - 水産練り製品の製造方法、水産練り製品および保存性向上剤 - Google Patents

水産練り製品の製造方法、水産練り製品および保存性向上剤 Download PDF

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Abstract

【課題】水産練り製品(例えば蒲鉾などの水産練り製品)の品質の劣化を招くことなく、保存性を向上させる。
【解決手段】水産練り製品の製造過程において、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを1%水溶液でのPHが8.0〜8.9になるように配合し、グリシンとして0.5〜5.0%となるように粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合する方法で前記水産練り製品のPHを8.0〜8.9になるように製造する。又は、1%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる割合で前記グリシンと前記炭酸塩またはリン酸塩とをグリシンとして0.5〜5.0%となるようにそれぞれ別に、粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合する方法で前記水産練り製品のPHを8.0〜8.9になるように製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、蒲鉾などの水産練り製品の製造方法、水産練り製品および保存性向上剤に関するものである。ここで、水産練り製品とは、魚肉すり身を原料とした加工品のすべてを含み、たとえば蒲鉾、ちくわ、かに風味蒲鉾、揚げ蒲鉾、茹で蒲鉾、はんぺん、シューマイ、餃子、ソーセージなどが該当する。
従来、水産練り製品、例えば蒲鉾は、食品の保存性を向上させるため、酸性側で製造されているのが普通である。つまり、この酸性側にPHを低下させるために、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸およびリン酸塩などの有機酸または無機酸が使用され、酸性域に蒲鉾のPHを仕上げている。
これは、腐敗の原因となる一般細菌の発育における最適PHが中性の7.0付近であるため、酸性域に蒲鉾のPHを仕上げることで保存性を高めるようにしているからである。現在市販されている、板蒲鉾・カニ蒲鉾・揚げ蒲鉾・ちくわ・はんぺんを購入し、PHを測定すると、6.1〜6.8の範囲にすべて入っており、また、30℃保存による保存時間は36〜52時間であった。蒲鉾は本来30℃保存において24時間以上の日持ちは難しいにもかかわらず、酸性領域に仕上げることで日持ちを延長させ、その事で地方の蒲鉾メーカーが製造したものを全国流通が行えるようにし、食中毒から守った技術はすばらしいものである。
ところで、酸性域で保存性が向上するのであれば、アルカリ域でも保存性が向上するとの判断から、食品を、酸性域ではなく、アルカリ域に仕上げることで保存させようとすることがすでに提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、食品の保存性延長を目的にグリシン、ε−ポリリジン、しらこ蛋白、抗菌性を有する低級グリセリン脂肪酸エステルに1%水溶液がPH7.0以上のアルカリ性を呈するアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムのそれぞれの炭酸塩、りん酸塩、水酸化物からなる化合物群より選ばれた少なくとも1種または2種以上を配合した食品用保存剤が記載されている。
また、特許文献2には、炭酸カリウムとグリシンとの混合物をPH調整剤として使用する冷凍すり身の製造方法が記載されている。このとき使用されるグリシンは、0.5%未満である。
さらに、特許文献3には、水産すり身原料にグリシンの可食性金属塩およびグリシンを含有させて製造する、弾力性・保存性の改善された水産練り製品の製造方法が記載されている。
特開2000−189129号公報(段落0012) 特開2006−271211号公報(請求項8) 特許第3541565号公報(請求項1)
特許文献1記載のものは、1%水溶液がPH7.0以上のアルカリ性を呈するアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムのそれぞれの炭酸塩、リン酸塩、水酸化物からなる化合物群より選ばれた少なくとも1種または2種以上を製剤の一部として配合することで製剤のPHが9.0以上の高アルカリに引き上げられているので、それを用いると、食品のタンパク質がアルカリ変性を起こし、生臭くなり、品質の劣化を招くおそれがある。
特許文献2記載のものは、アルカリ性を呈する炭酸カリウムを用いているので、カリウム塩の独特の苦みにより、食品の味が低下するおそれがある。また、前記の通り、このとき使用されるグリシンは0.5%未満であるため、保存性の向上は望めない。
特許文献3記載のものは、アルカリ性を呈するグリシン金属塩を用いているが、グリシン金属塩は、現在、食品添加物として認可されておらず、現在は食品に使用することができない。
発明者は、まず、アルカリ域でも保存性が向上することを確認するために、炭酸ナトリウム(1w/w%(以下単に1%と記載する)水溶液でのPH11.2)を、水産練り製品の一つである蒲鉾に添加し、蒲鉾のPH、30℃での保存時間、味、弾力(食感)について調べた。なお、PH、30℃での保存時間の測定や、味、弾力の評価については、次に説明する通り、一般的な方法を採用した。
(i)PHの測定方法
・ 1%水溶液でのPH
添加剤である各粉体をイオン交換水に溶解させ、その後、PHメーター(東亜ディケーケー(株)型式HM-30R)にて、PHを測定し、1%水溶液でのPHとした。
・蒲鉾のPH
検体(蒲鉾)一部と前記イオン交換水一部とを混練り後、PHメーター(東亜ディケーケー(株)型式HM-30R)にて、PHを測定し、蒲鉾のPHとした。
(ii) 30℃での保存時間(保存性)の測定
各一般生菌の菌数を評価することで、保存性を判断した。
具体的には、一般生菌測定用・標準寒天培地を用いて、衛生試験法・注解の測定法に準じて、一般生菌の菌数を測定することとした。
そして、一般生菌の菌数を1時間毎に測定し,測定した菌数が10万個を超えた時点を腐敗とし、それまでの時間を保存時間とした。
(iii)弾力の評価方法
・サンプル調整
径48mmの塩化ビニリデン製の筒状ケーシングにできあがったすり身を詰め、85℃で30分間ボイルし、それから、5℃で24時間冷却する。その後、30mm厚さに切断し、弾力評価のサンプルとした。
・弾力の評価
5mmのプランジャーを使用し、押し込み強度(ゼリー強度:g・cm)を測定し、炭酸ナトリウムの添加量が0%のときの弾力を100(基準)とし、指数表示した。
(iv)味の評価方法
出来上がりの蒲鉾を5℃で24時間冷却し、その後常温に戻し、5人にて試食を行い、総合的に味を判断した。
まず、添加薬品である炭酸ナトリウムの添加量を変化させ、それに伴い蒲鉾のPH、30℃での保存時間(保存性)、味及び弾力がどのように変化するかについて調べた結果を、表1に示す。
Figure 2015070810
表1に示す結果から、炭酸ナトリウムを適量添加することで、30℃での保存時間が24時間から62時間に大幅に延びる、ことがわかった。特に、蒲鉾PH(最終水産練り製品)を8.0以上に仕上げると、高い保存効果が認められる。また、30℃での保存時間は、炭酸ナトリウムを適量添加することで、一般的な酸性タイプの日持向上剤(酸酸製剤を適量添加する場合と同等あるいはそれ以上になることもわかった。ここで、酢酸製剤は、酢酸ナトリウム80% リン酸ナトリウム20%で、1w/w%水溶液でのPHが6.0の製剤である。
それに加えて、炭酸ナトリウムの添加量の増大により保存性が向上するが、それに伴い生臭さが出てきて、商品(製品)の価値を低下させることもわかった。そして、蒲鉾PHが9.0以上に仕上げると、極端に弾力が低下し、品質の低下を招くこともわかった。これは、蒲鉾PHを高め、アルカリになると、蛋白質からアミンが発生し、さらにアルカリ性により蛋白質が変性することが原因であると考えられる。
そこで、発明者は、最終製品である蒲鉾のPHが保存時間や味・弾力に大きく影響することに着目し、さらに炭酸ナトリウムはグリシンとの併用にPH緩衝作用があること(すなわち、グルシンと炭酸ナトリウムとを配合して使用するか、同時にそれぞれを使用すると、炭酸ナトリウムが持つ高いPHは低下するが、蒲鉾のPHを上昇させる能力が増すこと)を利用すれば、炭酸ナトリウムが持つ高いPHを低下させることで、品質(味、弾力)を低下させることなく、保存性を改善できるのではないかという着想に基づき、さらに研究を重ねたところ、製造過程においてグリシンと炭酸ナトリウムとを適量添加・混合することにより蒲鉾のPHが8.0〜8.9のアルカリ域となるようにすれば、品質(味、弾力)を低下させることなく、保存性に優れる蒲鉾を製造できることを見出した。
そして、このことは、蒲鉾に限らず、そのほかの水産練り製品についても同様に適用できることを予測することができ、また、炭酸ナトリウムに代えて食品に用いられる他の炭酸塩またはリン酸塩を用いることもできるという知見に基づき、本発明をするに至ったのである。
本発明は、品質を低下させることなく、保存性に優れる蒲鉾などの水産練り製品、水産練り製品の製造方法、保存性向上剤を提供することを目的とする。
本発明は、水産練り製品の製造過程において、水産練り製品の製造過程において、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になるように配合し、製品原料に対し、グリシンとして0.5〜5.0w/w%となるように粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するか、又は、1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる割合で前記グリシンと前記炭酸塩またはリン酸塩とをグリシンとして0.5〜5.0w/w%となるようにそれぞれ別に、粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するかして、前記水産練り製品のPHを8.0〜8.9になるように製造する、ことを特徴とする。
このようにすれば、製造過程においてグリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを適量添加・混合することにより蒲鉾のPHが8.0〜8.9のアルカリ域となるようにするので、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩との併用によるPH緩衝作用を利用して、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することができる。
そして、品質向上の観点から、請求項2に記載のように、前記製品原料は、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含む、ことが望ましい。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする水産練り製品であり、請求項4の発明は、グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とを含有してなる、ことを特徴とする水産練り製品の保存性向上剤であり、請求項5の発明は、グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とに、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含有している、ことを特徴とする水産練り製品の保存性向上剤である。
本発明は、水産練り製品の製造過程において、グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とを適量添加・混合することにより蒲鉾のPHが8.0〜8.9のアルカリ域となるようにするので、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩との併用によるPH緩衝作用を利用して、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
本発明に係る製造方法は、水産練り製品の製造過程において、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを適量添加・混合することにより、前記水産練り製品を、PHが8.0〜8.9になるように製造するものである。これにより、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することができる。
この場合、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを、(i)1%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる配合割合で配合し、グリシンとして0.5〜5.0%となるように粉末のまま直接添加・混合するか、若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するか、又は、(ii)1%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる配合割合で前記グリシンと前記炭酸塩またはリン酸塩とをグリシンとして0.5〜5.0%となるようにそれぞれ別に、粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合することで、最終製品である水産練り製品のPHが前述したようになり、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することを実現できる。
ここで、グリシンと併用するアルカリ剤として、炭酸塩またはリン酸塩を用いている理由は次の通りである。グリシンは水産練り製品の保存性の向上を目的に使用されることがあるが、それ単独の保存効果はそれほど高くない。グリシンとの併用のアルカリ剤の選別について、水産練り製品のPHをアルカリ域にするためにはアルカリ性の強い物質が必要である。
アルカリ性の強い物質であって食品に用いられるものとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ヒロリン酸ナトリウム(重合リン酸塩)が知られている。
そこで、グリシン(中性)と配合し、水産練り製品に添加し、その水産練り製品のPHを8.0〜8.9にするためには、アルカリ剤は、グリシンとの配合において1%水溶液でのPHを8.0〜8.9にする必要がある。例えば、1%水溶液でのPHを8.8とするための配合割合は、次の表2に示す通りである。
Figure 2015070810
よって、炭酸ナトリウム以外の成分を用いる場合、炭酸ナトリウムに比べて2倍以上の配合が必要であるため、効率的でない。また、炭酸ナトリウムに続いて配合量が少なくてよい炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムうち炭酸カリウムは、カリウム塩は独特の苦みがあり、炭酸ナトリウムを用いた場合よりも水産練り製品の味が低下する。
従って、グリシンと併用するアルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムのいずれも適しているが、配合割合の点から、炭酸ナトリウムが最も適しているといえる。
グリシンと炭酸ナトリウムとの配合割合と、1%水溶液でのPHとの関係を、次の表3に示す。
Figure 2015070810
表3より、グリシンとして77〜95%、炭酸ナトリウムとして23〜5%をそれぞれ配合することで、1%水溶液でのPHが8.0〜8.9となる(No.3〜7)。グリシンはアミノ酸であるため、蒲鉾などの水産練り製品に対し5%以上使用するとその甘みが強く、水産練り製品としての商品価値が低下するので、グリシンの添加割合は、水産練り製品に対し0.5〜5.0w/w%とすることが望ましい、と確認された。
続いて、グリシンと、炭酸塩又はリン酸塩の代表としての炭酸ナトリウムとの添加量を変化させて、蒲鉾の食感(味・弾力)、保存性(30℃での有効保存時間)を調べた。その結果を表4に示す。
Figure 2015070810
この表4に示す結果から、次のことがいえる。
(i)蒲鉾PHを炭酸ナトリウム単品の添加で高め、蒲鉾PHを8.0とした場合(比較例1)、保存効果は認められたが、生臭く、蒲鉾PHが9.0になると(比較例2)、生臭いだけでなく、弾力が低下した。
(ii)グリシンと炭酸ナトリウムとを配合して添加製剤とし、それを蒲鉾に添加すると、蒲鉾PHが異常に上昇することはないが、その1%水溶液でのPHが9.0以上の場合(比較例3,4)には、蒲鉾PHが8.7であるが、生臭さと弾力低下とが認められた。よって、蒲鉾PHを8.0〜8.9にするだけでなく、その際の1%水溶液でのPHも、蒲鉾の味や弾力に影響するといえる。
(iii)グリシンと炭酸ナトリウムとを配合し1%水溶液でのPHを8.0〜8.9とし蒲鉾PHを8.0〜8.9にした場合(本発明例1〜11)には、蒲鉾の味は良好で弾力の低下もなく、保存時間が長く極めて高い保存効果が得られた。これは、炭酸ナトリウム単品を添加し蒲鉾PHを8.0〜8.9にした場合の保存効果と比較すると、極端に向上した。これはグリシンと炭酸ナトリウムの緩衝作用による効果であると考えられる。
(iv)グリシンと炭酸ナトリウムとを配合し1%水溶液でのPHを8.0未満である7.9,7.5とした場合(比較例5,6)、グリシンの添加量は多くなるが、高い保存効果は得られなかった。また、蒲鉾PHも8.0未満であった。
(v)グリシンと炭酸ナトリウムとを配合し1%水溶液でのPHを8.0〜8.9としたものを0.8〜1.0%添加した場合(本発明例6,7)には、ある程度の保存効果が得られたが、0.5%添加した場合(比較例7)には、全く保存効果が得られなかった。このときの蒲鉾PHは7.4で、グリシンの添加量は0.475であった。グリシンの添加量は0.5w/w%を超えなければ、保存効果が得られない、といえる。
(vi)グリシン単品で添加した場合(比較例8〜10)、その保存効果は弱く、蒲鉾PHはグリシンを添加しない場合(比較例11)とあまり変わらない。
以上の結果をまとめると、次のことがいえる。
・蒲鉾PHと保存性(30℃有効保存時間)との関係
蒲鉾のPHが8.0を超えると、保存性はよくなる。このとき、炭酸塩またはリン酸塩の代表としての炭酸ナトリウムのようなアルカリ性の強いアルカリ剤単独またはPH9.0以上に調整した製剤を使用しても、保存性の向上が認められるが、グリシンと炭酸ナトリウムを配合し1%水溶液でのPHを8.0〜8.9に調整した製剤を、グリシンとして0.5%以上となるように添加すると、その保存性は極端によくなり、30℃での保存時間は100時間を超える。これは従来の技術では全く考えられなかったことである。
・蒲鉾PHと蒲鉾の弾力との関係
どのようにしてアルカリ剤を添加しても、蒲鉾のPHが9.0を超えると、弾力は極端に低下する。つまり、蒲鉾PHが8.0〜8.9の範囲であれば、弾力は良好であるが、9.0を超えると低下する。
・蒲鉾PHと蒲鉾の生臭さとの関係
蒲鉾PHが8.0を超えると、生臭くなる。
炭酸ナトリウムのようなアルカリ性の強いアルカリ剤単独またはPH9.0以上に調整した製剤を使用すると生臭くなるが、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩(アルカリ剤)の代表としての炭酸ナトリウムを配合し1%水溶液でのPHを8.0〜8.9に調整したものを、グリシンとして0.5%を超えるように添加すると、蒲鉾は生臭くなくなる。
これは、添加するアルカリ性物質のPHが9.0以上であれば、蒲鉾原料の魚肉蛋白が添加されたアルカリと反応し,アルカリ変性を起こし、弾力の低下とアミンの発生を起こすが、添加するアルカリ性物質のPHを8.9以下のアルカリに調整して添加すると、そのようなアルカリ変性を起こさないためであると考えられる。
続いて、本発明製造方法で蒲鉾を製造する際に、澱粉、大豆蛋白及び油分を添加した場合の影響について説明する。
・澱粉の添加
澱粉は、水産練り製品の副剤として使用されるが、長期冷蔵保管時、長期冷凍保管時、レトルト処理時、さらにフリーズドライ処理等の乾燥処理時に澱粉の老化に起因し品質が低下する。これは澱粉の老化が原因で、水産練り製品は硬くなり、水分を吐き出す。
そこで、蒲鉾について、澱粉を10%添加し、グリシン85%・炭酸ナトリウム15%配合品を1.5%添加した本発明例と、前記配合品を無添加の比較例とについて、比較試験を行った。
(i)冷蔵10日目の食感を比較したところ、比較例は、製造直後に比べてぱさついていてドリップが出ているが、本発明例は、製造直後よりしなやかで弾力がありドリップは全く出ていない。これまで老化していた澱粉が、全く劣化せず、むしろその澱粉ゲルがしなやかで強固になることが確認された。
(ii)冷凍3ヶ月後の食感を比較したところ、比較例は、スカスカした食感で、ドリップが多いが、本発明例は、製造直後の食感に比べてより弾力とこしとがあり、ドリップは全く出ていない。
よって、グリシンと炭酸ナトリウムとを、1%水溶液でのPHが8.0〜8.9になるように配合し、その配合したものを、グリシンとして0.5%〜5.0%となるように蒲鉾(水産練り製品)に対し添加し、蒲鉾のPHを8.0〜8.9とすると同時に澱粉を適量添加すると、保存性が高まるとともに、その澱粉の効果が高まり、品質を向上させるといえる。特に、長期冷蔵保管時、長期冷凍保管時、レトルト処理時にその効果が発揮されることがわかった。
・大豆蛋白の添加
蒲鉾について、大豆蛋白を10%と水分を10%多く添加し、グリシン85%炭酸ナトリウム15%配合品を1.5%添加したものを本発明例とし、前記配合品を無添加の比較例とについて比較試験を行った。
その結果、比較例は、蒲鉾独特の弾力がなく、もさもさしていたが、本発明例は、弾力・しなやかさがあった。これは、大豆蛋白ゲルの保水力が本発明製造方法により向上したためである,と考える。
よって、グリシンおよび炭酸ナトリウムを配合し、1%水溶液のPHを8.0〜8.9にせしめたものを、グリシンとして0.5〜5.0%となるように水産練り製品(例えば、蒲鉾)に加え、前述した水産練り製品のPHを8.1〜8.9とする本発明製造方法にて水産練り製品を製造し、そこに大豆蛋白も添加すると、水産練り製品の保存性が高まるとともに、蒲鉾の、弾力感やしなやかさが維持されるといえる。この結果、これまで以上の割合の大豆蛋白の使用と水分の増加ができる。
・油分の添加
蒲鉾について、大豆油10%を添加し、グリシン85%・炭酸ナトリウム15%配合品を1.5%添加した本発明例と、前記配合品を添加しない比較例とについて比較試験を行った。
その結果、比較例は、大豆油を添加することで、弾力が補強されていた。これに対し、本発明例は、比較例と比べ、さらに弾力が強く、味・香りが良くなっていた。
よって、グリシンおよび炭酸ナトリウムを配合し、1%水溶液のPHを8.0〜8.9にせしめたものを、グリシンとして0.5〜5.0%となるように水産練り製品(例えば、蒲鉾)に加え、前述した水産練り製品のPHを8.1〜8.9とする本発明製造方法にて水産練り製品を製造し、そこに大豆油などの油分も加えていると、水産練り製品の保存性は向上するとともに、弾力補強の効果がさらに強まり、また、味と香りがよく、品質が向上する、といえる。なお、このとき使用する油分については、大豆油に限定するものではなく、どのような油であってもよい。
(蒲鉾の原料配合)
水産練り製品の一つである蒲鉾の製造する場合の原料配合(添加製剤を1.5w/w%添加の場合)の一例を示す。
魚肉冷凍すり身 100 重量部
食塩 3.0
馬鈴薯澱粉 10.0
小麦澱粉 10.0
砂糖 3.0
水 50.0
添加製剤 2.64(仕上がり重量に対して1.5w/w%)
前記添加製剤を含む前記原料配合を、カッターミキサーにて練り込んで、小判形状に成形し、90℃で15分間蒸し、冷却し、5℃で24時間冷蔵され、蒲鉾とされる。
本発明は、前述したほか、次のように変更して実施することも可能である。
(i)前述した実施の形態においては、蒲鉾の製造方法について説明しているが、蒲鉾に限らず、そのほかの水産練り製品についても同様に適用することができ、特に冷凍すり身を使用した加工品の全てに用いることが可能である。
(ii)前記実施の形態においては、アルカリ剤として炭酸ナトリウムを用いているが、炭酸ナトリウムに代えて食品に用いられる他の炭酸塩またはリン酸塩を用いることができるのはもちろんである。
(iii)グリシンと炭酸塩またはリン酸塩を水産練り製品に添加する方法は、事前に混合し製剤化してもよいし、それぞれ単品を添加しても良い。更にそれぞれ粉末でも液体でもよい。また、添加方法は、水産練り製品への内部添加でもよいし、グリシンと炭酸塩またはリン酸塩を溶解せしめた液に浸漬したり、溶解せしめた液を吹き付けるようにしてもかまわない。
(iv)グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とを含有してなる水産練り製品の保存性向上剤としたり、グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とに、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含有している水産練り製品の保存性向上剤とすることも可能である。
(v)前記実施の形態に限らず、本発明を用いて更なる商品の製造が可能である。本発明によれば、水分量が多く、ソフトな水産練り製品であっても、ソフトなだけでなく、弾力があり、しなやかで、なおかつ保存性に優れる製品を製造できるからである。そのため、次の食品及び食品素材を併用して水産練り製品を作ることが可能となる。例えば、豆腐、こんにゃく、乳製品、野菜、肉、コラーゲン、グルコマンナンなどの多糖類、卵、きのこ、海草、魚介類、根菜類、いも、果実、米、小麦粉、もち等。さらに、健康食品として用いられる素材を、より食しやすい形態で提供するための手段としても、本発明に係る水産練り製品を利用することができる。青汁、豆乳、各種ビタミン、各種金属、カフェインその他を用いることもできる。
本発明は、水産練り製品の製造過程において、グリシンと炭酸ナトリウムとを1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になるように配合し、製品原料に対し、グリシンとして0.5〜5.0w/w%となるように粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するか、又は1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる割合で前記グリシンと前記炭酸ナトリウムとをグリシンとして0.5〜5.0w/w%となるようにそれぞれ別に、粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するかして、前記水産練り製品のPHを8.0〜8.9になるように製造する、ことを特徴とする。
このようにすれば、製造過程においてグリシンと炭酸ナトリウムとを適量添加・混合することにより蒲鉾のPHが8.0〜8.9のアルカリ域となるようにするので、グリシンと炭酸ナトリウムとの併用によるPH緩衝作用を利用して、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することができる。
本発明は、水産練り製品の製造過程において、グリシンと、炭酸ナトリウムとを適量添加・混合することにより蒲鉾のPHが8.0〜8.9のアルカリ域となるようにするので、グリシンと炭酸ナトリウムとの併用によるPH緩衝作用を利用して、品質を低下させることなく、保存性に優れる水産練り製品を製造することができる。
(ii)グリシンと炭酸ナトリウムを水産練り製品に添加する方法は、事前に混合し製剤化してもよいし、それぞれ単品を添加しても良い。更にそれぞれ粉末でも液体でもよい。また、添加方法は、水産練り製品への内部添加でもよいし、グリシンと炭酸ナトリウムを溶解せしめた液に浸漬したり、溶解せしめた液を吹き付けるようにしてもかまわない。
(iii)グリシンと、炭酸ナトリウムとを含有してなる水産練り製品の保存性向上剤としたり、グリシンと、炭酸ナトリウムとに、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含有している水産練り製品の保存性向上剤とすることも可能である。
(iv)前記実施の形態に限らず、本発明を用いて更なる商品の製造が可能である。本発明によれば、水分量が多く、ソフトな水産練り製品であっても、ソフトなだけでなく、弾力があり、しなやかで、なおかつ保存性に優れる製品を製造できるからである。そのため、次の食品及び食品素材を併用して水産練り製品を作ることが可能となる。例えば、豆腐、こんにゃく、乳製品、野菜、肉、コラーゲン、グルコマンナンなどの多糖類、卵、きのこ、海草、魚介類、根菜類、いも、果実、米、小麦粉、もち等。さらに、健康食品として用いられる素材を、より食しやすい形態で提供するための手段としても、本発明に係る水産練り製品を利用することができる。青汁、豆乳、各種ビタミン、各種金属、カフェインその他を用いることもできる。

Claims (5)

  1. 水産練り製品の製造過程において、
    グリシンと炭酸塩またはリン酸塩とを1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になるように配合し、
    製品原料に対し、グリシンとして0.5〜5.0w/w%となるように粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するか、又は1w/w%水溶液でのPHが8.0〜8.9になる割合で前記グリシンと前記炭酸塩またはリン酸塩とをグリシンとして0.5〜5.0w/w%となるようにそれぞれ別に、粉末のまま直接添加・混合するか若しくは使用する調味液に溶解せしめて添加・混合するかして、前記水産練り製品のPHを8.0〜8.9になるように製造する、ことを特徴とする水産練り製品の製造方法。
  2. 前記製品原料は、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の水産練り製品の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする水産練り製品。
  4. グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とを含有してなる、ことを特徴とする水産練り製品の保存性向上剤。
  5. グリシンと、炭酸塩またはリン酸塩とに、澱粉、大豆蛋白および油分の少なくとも一つを含有している、ことを特徴とする水産練り製品の保存性向上剤。
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