JP2014240092A - 押出ダイス - Google Patents
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Abstract
【課題】心棒にマンドレルリングを外嵌めする押出ダイスにおいて、マンドレルリングの固定安定性を高め、メンテナンスを簡単に行えるようにする。【解決手段】押出ダイスは、押出材の内面を成形するマンドレル(30)が、心棒(32)と、該心棒(32)に外嵌めされるマンドレルリング(35)とを有し、前記マンドレルリング(35)は、基材が心棒(32)よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、前記心棒(32)の外周面(32a)およびマンドレルリング(35)の内周面(35a)が、マンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めした状態において、常温時に両者(32)(35)間に隙間があり、押出時のダイス温度時に、マンドレル(30)の軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者(32)(35)が接触するように設定されている。【選択図】 図3
Description
この発明は、中空材の押出加工に用いる押出ダイスに関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、押出材および押出材料の進む方向を下流または下流側と称し、逆方向を上流または上流側と称する。
押出ダイスにおいては、ベアリング部に耐摩耗性を与えるために、ベアリング部を含むダイスの一部に超硬合金やセラミック等の超硬材料が用いられている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、工具鋼からなるダイケースの凹部内に超硬材料からなるリング状ダイスを焼嵌めしたダイスが記載されている。特許文献2には、マンドレルの心棒を工具鋼で形成し、この心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めし、心棒の先端に抜け止め用ナットを取り付けてマンドレルリングを心棒に固定するように構成したポートホールダイスの雄型が記載されている。また、特許文献3に記載されているダイスは、心棒とマンドレルリングとの間に心棒よりも軟らかいスリーブを介在させてマンドレルリングを焼嵌めしたものである。
しかし、超硬材料を焼嵌めするタイプのダイスは、押出の準備工程やメンテナンスに手間がかかるという問題点がある。
また、超硬材料は工具鋼よりも熱膨張係数が小さく、かつ工具鋼よりも引張力に弱いという特性がある。このため、工具鋼からなる心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めする場合、熱間押出時に心棒が膨張し、マンドレルリングに対する締め付け力が強すぎると破損するおそれがある。逆に、締め付け力が弱すぎると、マンドレルリングがしっかりと固定されず、押出材の押継ぎ部に波打ちが発生したり、偏肉するおそれがある。また、押出材料の流れによってマンドレルリングが心棒から外れるおそれがある。
さらには、マンドレルリングの寸法や強度を長期に維持してダイス寿命を向上させることが望まれている。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、心棒にマンドレルリングを外嵌めする押出ダイスにおいて、マンドレルリングを安定して固定でき、メンテナンスを簡単に行え、かつ寿命の長い押出ダイスの提供を目的とする。
即ち、本発明は[1]に記載の構成を有する。
[1]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度時に、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度時に、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
上記[1]の押出ダイスにおいて下記[2]〜[12]の態様が好ましい。また、下記[2]の押出ダイスを用いた押出方法は下記[14][15]の構成となり、下記[2]の押出ダイスを用いた押出材の製造方法は下記[14][15]の構成となる。
[2]常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T2)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T1)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている前項1に記載の押出ダイス。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
[3]前記心棒の先端にマンドレルリングの抜け落ちを防止する抑え部材が着脱自在に取り付けられる前項1または2に記載の押出ダイス。
[2]常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T2)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T1)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている前項1に記載の押出ダイス。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
[3]前記心棒の先端にマンドレルリングの抜け落ちを防止する抑え部材が着脱自在に取り付けられる前項1または2に記載の押出ダイス。
[4]前記心棒の断面形状が非円形である前項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
[5]前記心棒が中実である前項1〜4のいずれかに記載の押出ダイス。
[6]前記マンドレルリングは超硬材料からなる前項1〜5のいずれかに記載の押出ダイス。
[7]前記マンドレルリングはセラミック材料からなる前項6に記載の押出ダイス。
[8]前記マンドレルリングはベアリング部の上流側および下流側の少なくとも一方にリリーフ部を有する前項1〜7のいずれかに記載の押出ダイス。
[9]前記マンドレルリングは軸線方向の中央よりも下流側にベアリング部が形成されている前項8に記載の押出ダイス。
[10]前記マンドレルリングは軸線方向の全域がベアリング部となされている前項1〜7のいずれかに記載の押出ダイス。
[10]前記マンドレルリングは軸線方向の全域がベアリング部となされている前項1〜7のいずれかに記載の押出ダイス。
[11]前記マンドレルリングは、前記基材の少なくとも外周面に硬質の耐アルカリ被膜が形成されてなる前項1〜10のいずれかに記載の押出ダイス。
[12]前記マンドレルリングは、基材の外周面および内周面にのみ耐アルカリ被膜が形成されてなる前項11に記載の押出ダイス。
[13]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成された押出ダイスを用い、
常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、下記式で表される心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が0〜0.3%となるダイス温度(T2)で押し出すことを特徴とする押出方法。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
[14]前記押出ダイスのマンドレルリングは、前記基材の少なくとも外周面に硬質の耐アルカリ被膜が形成されてなり、押出後のダイスメンテナンスにおいてアルカリ洗浄を行う前項13に記載の押出方法。
常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、下記式で表される心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が0〜0.3%となるダイス温度(T2)で押し出すことを特徴とする押出方法。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
[14]前記押出ダイスのマンドレルリングは、前記基材の少なくとも外周面に硬質の耐アルカリ被膜が形成されてなり、押出後のダイスメンテナンスにおいてアルカリ洗浄を行う前項13に記載の押出方法。
[15]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成された押出ダイスを用い、
常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、下記式で表される心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が0〜0.3%となるダイス温度(T2)で押し出すことを特徴とする、押出材の製造方法。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
常温(T1)時の隙間が最小となる部分において、下記式で表される心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が0〜0.3%となるダイス温度(T2)で押し出すことを特徴とする、押出材の製造方法。
XT2={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α1>α2)
T1:常温
T2:押出時のダイス温度(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
上記[1]に記載の発明によれば、心棒にマンドレルリングを外嵌めしたマンドレルにおいて、ダイスが押出時の温度になると、心棒とマンドレルリングとの熱膨張係数の差により両者の間に隙間が無くなり、マンドレルリングは心棒が膨張しようとする径方向の力によって締め付けられて心棒に固定される。このように、マンドレルリングが心棒に固定された状態で押出を行うと、押出材の偏肉が抑制されて高品質の押出材を製造することができる。また、常温時には心棒とマンドレルリングと間に隙間があるので、マンドレルリングの心棒への着脱が容易であり、マンドレルリングの交換等のメンテナンスを簡単に行える。
上記[2]に記載の発明によれば、押出時のダイス温度における心棒とマンドレルリングとの間の締め代(XT2)が適正範囲に設定されているので、安定した固定状態が得られ、かつマンドレルリングの破損を回避できる。
上記[3]に記載の発明によれば、抑え部材によってマンドレルリングが押出軸方向にも固定されるので、マンドレルリングの抜け落ちが防がれてさらに安定した固定状態が得られる。また、抑え部材によって押出軸方向のずれを抑制することで、心棒の膨張力による締め付けのみで固定する場合よりも、締め代(XT2)を小さくすることができるので、締め代(XT2)の増大によるマンドレルリングの破損の危険性を回避できる。
上記[4]に記載の発明によれば、マンドレルリングの周方向の回動を阻止することができる。これにより、周方向のずれがなくなって固定安定性が高まるとともに、マンドレルリングの位置決めを行うことができる。
上記[5]に記載の発明によれば、心棒が中実であるためにマンドレルの強度が高い。
上記[6][7]に記載の各発明によれば、耐摩耗性に優れた押出ダイスを提供できる。
上記[8]に記載の発明によれば、マンドレルリングにリリーフ部を設けることでマンドレルリングの強度を確保できる。
上記[9]に記載の発明によれば、マンドレルリングにリリーフ部を形成しないことでマンドレルリングの製作コストを低減できる。
上記[10]に記載の発明によれば、雌型のリリーフ孔内へのマンドレルの突出量を小さくすることができ、ダイスの組み立て時および解体時の雌型のベアリング部へのマンドレルの接触を低減することができる。
上記[11]に記載の発明によれば、マンドレルリングの基材の少なくとも外周面には硬質の耐アルカリ被膜が形成されて基材が保護されているので、押出中においては押出材料による基材の摩耗を防ぎ、押出後のダイスメンテナンスにおいてはアルカリ洗浄による基材表面における含有成分の溶解を防いで基材の摩耗を防止することができる。さらに、耐アルカリ被膜の耐摩耗性によって、押出による被膜自身の摩耗が防がれ、溶解防止効果を長期間維持することができる。また、心棒から外したマンドレルリングに対して耐アルカリ被膜を再形成することも可能であるから、耐アルカリ被膜による基材の保護効果と耐アルカリ被膜の再形成とにより、マンドレルリングの強度を長期間維持して寿命を延ばすことができる。
上記[12]に記載の発明によれば、押出材料が付着するマンドレルリングの外周面に加えて内周面にも耐アルカリ被膜が形成されている。このため、押出後のダイス洗浄においてマンドレルリングと心棒の間に生じた隙間に洗浄液が浸入しても、基材の内周面は耐アルカリ被膜によって保護されているので、洗浄液による内周面の溶解が防がれてマンドレルリング内径変化を防ぐことができる。これにより、マンドレルリングの内径が維持されるので、マンドレルリングの径方向における固定安定性を維持することができる。さらに、マンドレルリングの端面に耐アルカリ被膜が形成されていないことで表面処理コストを低減できる。
上記[13]に記載の発明によれば、押出はマンドレルリングが心棒に固定された状態で行われているので、押出材の偏肉を抑制することができる。
上記[14]に記載の発明方法によれば、マンドレルリングの基材が硬質の耐アルカリ被膜によって保護されているので、押出中においては押出材料による基材の摩耗が防がれ、押出後のダイスメンテナンスにおいてはアルカリ洗浄による基材表面における含有成分の溶解を防いで基材の摩耗が防止されるので、長期に亘って高品質の押出材を製造することができる。
上記[15]に記載の発明によれば、押出はマンドレルリングが心棒に固定された状態で行われているので、偏肉が抑制された高品質の押出材を製造することができる。
図1および図2に示すポートホールダイス(10)は、中空押出材(1)の外周面を成形する雌型(11)と内周面を成形する雄型(20)とが組み合わされてなり、前記雄型(20)が本発明の押出ダイスの一実施形態である。
雌型(11)は、中央部にベアリング孔(12)を有し、ベアリング孔(12)の下流側にはリリーフ孔(13)が形成され、上流側には溶着室用凹部(14)が形成されている。
前記雄型(20)は、ダイス基盤(21)の中央から下流側にマンドレル(30)が突出し、このマンドレル(30)の周囲に押出方向に貫通する複数個のポートホール(22)を有している。隣接するポートホール(22)(22)間には、下流側に突出する前記マンドレル(30)をその基端部(31)で支持する脚部(23)が形成されている。
図3に示すように、前記マンドレル(30)において、基端部(31)の先端側に径の小さい心棒(32)が一体に形成され、前記基端部(31)と心棒(32)との直径差によりこれらの間には段部(33)が形成されている。前記心棒(32)の先端側はさらに径小となって、外周面に螺旋状のネジ溝が形成されたボルト部(34)が一体に形成されている。前記基端部(31)、心棒(32)およびボルト部(34)は同軸上に形成されている。マンドレルリング(35)は、外周面に、押出材(1)の内周面を成形するベアリング部(36)が突設された環状体である。ナット(37)は本発明における抑え部材であり、前記ボルト部(34)のネジ溝に螺合されるネジ孔(38)を有している。而して、前記心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めして段部(33)に当接させ、ボルト部(34)にナット(37)のネジ孔(38)を螺合させると、マンドレルリング(35)は段部(33)とナット(37)に挟まれて、押出軸方向の所定位置に配置される。前記心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料特性および寸法については後に詳述する。
前記雌型(11)と雄型(20)とを組み合わせると、雌型(11)のベアリング孔(12)内に雄型(20)のマンドレルリング(35)のベアリング部(36)が嵌り込んでこれらの間に環状の成形用間隙(符号なし)が形成され、雌型(11)の溶着室用凹部(14)の一部が雄型(20)の端面で塞がれてポートホール(22)に連通する溶着室を形成する。そして、各ポートホール(22)に流入した押出材料は溶着室で合流し、成形用間隙から中空部(2)を有する押出材(1)として押出される。
〔マンドレルの形状〕
本発明のマンドレルは、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度において、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されている限り、前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面の形状は任意に設定することができる。即ち、本発明におけるマンドレルの形状に関する条件は下記(1)(2)である。
(1)常温時にマンドレルリングを心棒に外嵌めすることができる隙間があること
(2)押出時のダイス温度において、軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって心棒とマンドレルリングとが接触すること
本発明における「押出時のダイス温度」とは、心棒(32)およびマンドレルリング(35)が高温押出時に所定の温度となり、そのときの温度をいう。
本発明のマンドレルは、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度において、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されている限り、前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面の形状は任意に設定することができる。即ち、本発明におけるマンドレルの形状に関する条件は下記(1)(2)である。
(1)常温時にマンドレルリングを心棒に外嵌めすることができる隙間があること
(2)押出時のダイス温度において、軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって心棒とマンドレルリングとが接触すること
本発明における「押出時のダイス温度」とは、心棒(32)およびマンドレルリング(35)が高温押出時に所定の温度となり、そのときの温度をいう。
図3および図5Aは、本実施形態のマンドレル(30)の常温(T1)時における要部断面図である。このマンドレル(30)は、図1および図2に示した押出ダイス(10)の雄型(20)の一部を構成するマンドレルである。
前記マンドレル(30)は、心棒(32)の外周面(32a)およびマンドレルリング(35)の内周面(35a)がマンドレル(30)の軸線と平行に形成され、心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)は軸線方向において一定である。前記心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めすると、両者間に軸線に平行な一定の隙間(S1)が存在する。
本発明において、心棒(32)とマンドレルリング(35)との間に「隙間(S1)がある」とは、心棒(32)とマンドレルリング(35)との接触の有無を意味するのではなく、常温(T1)における心棒の外径(AT1)とマンドレルリングの内径(BT1)とが「BT1>AT1」なる関係を満足し、両者の間にクリアランスが存在することを意味する。また、常温(T1)時の隙間(S1)の大きさはマンドレルリング(35)の内径(BT1)と心棒(32)の外径(AT1)との差(BT1−AT1)で表わすものとする。
なお、図5Aはマンドレルリング(35)の内周面(35a)と心棒(32)の外周面(32a)との間の距離が周方向においても一定の大きさとした状態を示しているが、常温(T1)においてはマンドレルリング(35)と心棒(32)の軸合わせがなされていないので、両者間の距離は周方向で必ずしも一定にはならない。例えば、マンドレル(30)の軸線が水平となる姿勢で組み立てを行うと、図5Cに示したように、マンドレルリング(35)の内周面(35a)の上部が心棒(32)の外周面(32a)の上部に接触して両者間の距離はゼロであり、周方向に沿って下方にいくにつれて両者間の距離が拡大し、下部において距離が最大となる。また、マンドレルリング(35)はナット(37)で締め付けられて仮止めされた状態にあるので、全周において両者は接触していないが、両者間の距離には偏りがある、という場合もある。従って、本発明において「隙間がある」とは、マンドレルリング(35)と心棒(32)との接触の有無を意味するのではなく、常温(T1)における心棒(32)の外径(AT1)とマンドレルリング(35)の内径(BT1)とが「BT1>AT1」なる関係を満足し、両者の間にクリアランスが存在することを意味する。また、マンドレルリング(35)と心棒(32)とが上述したいずれの位置関係にある場合においても、本発明における隙間(S1)の大きさはマンドレルリング(35)の内径(BT1)と心棒の外径(AT1)との差(BT1−AT1)で表される。
また、本発明は心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面はマンドレルの軸線に対して平行であることを要さず、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面のどちらか一方または両方が軸線に対して傾斜するテーパー面で形成されているマンドレル、軸線方向の一部がテーパー面で形成されているマンドレルも本発明に含まれる。従って、両者間の隙間の大きさが軸線方向で変化することもあり、本発明における隙間(S1)とは、軸線方向においてマンドレルリングの内径(BT1)と心棒の外径(AT1)との差(BT1−AT1)が最小となる部分における隙間である。
また、前記マンドレル(30)では強度確保を目的として中実の心棒(32)を採用しているが、冷却用媒体の流通路等の中空部を有する心棒を用いることもできる。
前記マンドレル(30)は、常温(T1)時に心棒(32)とマンドレルリング(35)とを組み付ける際には、両者の間に隙間(S1)があるのでマンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めすることは容易である。さらに、ナット(37)を取り付けて締め付けると、心棒(32)には押出方向の引張力が生じ、マンドレルリング(35)には押出方向の圧縮力が生じる。
〔マンドレルの材料〕
本発明において、マンドレルリングは耐摩耗性を有する基材の単独材またはこの基材の表面に耐アルカリ被膜を形成したものである。
本発明において、マンドレルリングは耐摩耗性を有する基材の単独材またはこの基材の表面に耐アルカリ被膜を形成したものである。
本実施形態のマンドレルリング(35)は基材の単独材で構成されたものであり、基材の表面に耐アルカリ被膜が形成されたマンドレルリングについては後に詳述する。
前記マンドレルリング(35)の基材を構成する材料は耐摩耗性に優れ、かつその熱膨張係数(α2)と心棒(32)を構成する材料の熱膨張係数(α1)とがα1>α2の関係を満足するものであれば特に限定されない。本実施形態においては、心棒(32)を含む部分(以下、単に「心棒」と略する)が工具鋼で形成されているのに対し、マンドレルリング(35)の基材は前記工具鋼よりも耐摩耗性の高い超硬材料で構成されている。超硬材料としては、WC−Co等の超硬合金、高速度工具鋼、粉末高速度工具鋼、セラミックス等を例示できる。表1に、これらの超硬材料および工具鋼の一例およびそれらの熱膨張係数を示す。なお、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の基材の熱膨張係数がα1>α2の関係を満足すれば良いので、例示した材料は表1に記載した用途に限定されない。例えば、粉末高速度工具鋼の心棒に超硬合金やセラミックスのマンドレルリングを組み合わせる場合も本発明に含まれる。
本発明において、マンドレルリングの基材として心棒よりも熱膨張係数の小さい材料を用いることにより、押出時の加工発熱によるマンドレルリングの膨張率が小さくなるため、押出材はより安定した寸法のものを得ることができる。即ち、心棒(工具鋼)に熱膨張係数の小さいマンドレルリングを組み合わせたマンドレルでは、押し出していない時と加工発熱最大時との外径差が、工具鋼のみで製作したマンドレルにおける外径差よりも小さくなるので、押出材の肉厚が安定する。そして、押出材の寸法が安定していると、後加工後の製品品質も安定したものとなる。例えば、押出後に引抜加工を行う場合、押出材に偏肉がなく肉厚が一定であれば、引抜材の肉厚も一定になる。また、押出材の肉厚が一定であれば、引抜上がりの長さも一定になる。また、基材の材料は耐摩耗性が高いので摩耗粉の発生が少なく、摩耗粉の押出材への混入も減少する。押出材に異物であるダイスの摩耗粉が混入していると、押出材の品質が低下することはもとより引抜材の表面欠陥となる。押出材への摩耗粉の混入量が少なければ、引抜材に発生する表面欠陥も少なくなる。これらのことから、本発明の押出ダイスを用いて製造した押出材は、押出材としての品質が優れていることはもとより、後加工用素材としても品質の優れたものとなる。
〔マンドレルリングの径方向における固定〕
図4は、温度(T)に対する心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)の変化を示したものである。
図4は、温度(T)に対する心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)の変化を示したものである。
心棒(32)およびマンドレルリング(35)はいずれも熱膨張により寸法が拡大する(AT、BT)。この図に示すように、常温(T1)において、マンドレルリングの内径(BT1)は心棒の外径(AT1)よりも大きく、実寸としてBT1−AT1の隙間がある。温度(T)が上昇すると、心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、それぞれの熱膨張係数(α1)(α2)に応じて径が大きくなる。T2>T1を満足する任意の温度(T2)における心棒(32)の外径(AT2)およびマンドレルリング(35)の内径(BT2)は、下記の(I)式および(II)式で表される。
AT2=AT1×(T2−T1)×α1+AT1 …(I)
BT2=BT1×(T2−T1)×α2+BT1 …(II)
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数
T1:常温
T2:高温(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
BT2=BT1×(T2−T1)×α2+BT1 …(II)
ただし、α1:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α2:マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数
T1:常温
T2:高温(>T1)
AT1:常温(T1)時の心棒の外径
BT1:常温(T1)時のマンドレルリングの内径(>AT1)
図5Aに示すように、常温(T1)においてマンドレルリング(35)の内径(BT1)を心棒(32)の外径(AT1)よりも大きい寸法で製作すると、両者の寸法差により心棒(32)の外周面とマンドレルリング(35)の内周面との間には隙間(S1)があるので、容易に外嵌めすることができる。
そして、図5Bに示すように、ダイス温度が上昇すると、心棒(32)の外径拡大量がマンドレルリング(35)の内径拡大量を上回るために隙間(S1)は減少していき、この隙間(S1)が無くなるとマンドレルリング(35)は心棒(32)に固定される。
熱膨張係数はα1>α2であるから、図4に参照されるように、温度上昇に伴い、温度(TZ)において心棒(32)の外径(ATZ)とマンドレルリング(35)の内径(BTZ)が等しくなった時点で隙間(S1)が無くなり、マンドレルリング(35)は心棒(32)から外れなくなって固定された状態となる。さらに温度が上昇すると、心棒(32)の外径(AT)がマンドレルリング(35)の内径(BT)を上回る。心棒(32)の外径(AT)がマンドレルリング(35)の内径(BT)を上回る温度領域(T>TZ)では、心棒(32)の膨張力がマンドレルリング(35)を内側から締め付ける力として作用し、マンドレルリング(35)に周方向の引張力が付与されるので、ますます心棒(32)から外れにくくなってしっかりと固定される。
〔心棒とマンドレルリングの締め代〕
押出時、ダイスは所定温度に加熱されて常温(T1)よりも高温となる。従って、図4および図5Bに示すように、押出時のダイス温度(T2)において、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)と等しくなるか、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)を上回るように、常温(T1)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば、マンドレルリング(35)を心棒(32)に固定した状態で押出を行うことができる。そして、マンドレルリング(35)が心棒(32)に固定された状態で押出を行うと、押出材(1)の偏肉が抑制されて高品質の押出材(1)を製造することができる。ただし、心棒(32)の膨張力が過剰になってマンドレルリング(35)の引張力の限界を超えるとマンドレルリング(35)が破損するので、材料の熱膨張係数(α1、α2)と押出時のダイス温度(T2)を勘案して、高温時に適度な引張力を生じさせるように、常温(T1)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定する。
押出時、ダイスは所定温度に加熱されて常温(T1)よりも高温となる。従って、図4および図5Bに示すように、押出時のダイス温度(T2)において、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)と等しくなるか、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)を上回るように、常温(T1)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば、マンドレルリング(35)を心棒(32)に固定した状態で押出を行うことができる。そして、マンドレルリング(35)が心棒(32)に固定された状態で押出を行うと、押出材(1)の偏肉が抑制されて高品質の押出材(1)を製造することができる。ただし、心棒(32)の膨張力が過剰になってマンドレルリング(35)の引張力の限界を超えるとマンドレルリング(35)が破損するので、材料の熱膨張係数(α1、α2)と押出時のダイス温度(T2)を勘案して、高温時に適度な引張力を生じさせるように、常温(T1)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定する。
ここで、任意の温度(T)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締まり具合および緩み具合を、心棒(32)の外径(AT)とマンドレルリング(35)の内径(BT)の比率に基づいて、下記(III)式の締め代(XT)として定義する。AT<BT、即ち両者の間には隙間がある状態ではXT<0となり、締め代(XT)値が小さくなるほど緩みが大きいことを示している。一方、AT>BT、即ち両者の間には隙間がなくマンドレルリング(35)が内側から心棒(32)に締め付けられている状態ではXT>0となり、締め代(XT)の値が大きくなるほど締め付け力大きいことを示している。AT=BT(XT=0)は、両者間に隙間はないが締め付け力が利いていない状態である。
XT(%)=(AT/BT−1)×100 …(III)
XT(%)=(AT/BT−1)×100 …(III)
さらに、(III)式により、常温(T1)時および高温(T2)時(押出時のダイス温度)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締め代(XT1)(XT2)は、それぞれ(IV)式および(V)式により表わされる。
XT1(%)=(AT1/BT1−1)×100 …(IV)
XT2(%)=(AT2/BT2−1)×100
={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
XT1(%)=(AT1/BT1−1)×100 …(IV)
XT2(%)=(AT2/BT2−1)×100
={〔AT1×(T2−T1)×α1+AT1〕/〔BT1×(T2−T1)×α2+BT1〕−1}×100
心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、常温(T1)時にAT1<BT1となるように製作されるのでXT1<0となり、締め代(XT1)は両者間の隙間があって緩んだ状態を示している。一方、押出時のダイス温度(T2)において両者間の隙間が無くなってAT2≧BT2であるから、その締め代(XT2)は0または正値となり、締め付け力が利いている状態を示している。また、XT2<0は、押出時のダイス温度(T2)においても緩みがあってマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定されていない状態を示している。
前記締め代(XT2)が大きくなるほど締め付け力も強くなり、マンドレルリング(35)がしっかりと固定されて外れにくくなるが、上述したように締め付け力が過度に大きくなるとマンドレルリング(35)が破損するおそれがある。また、押出時には材料流れにより押出方向の力もが加わる。これらを勘案すると、前記締め代(XT2)は0.3%以下が好ましい。前記締め代(XT2)が0または正値である限り下限値は規定されないが、確実に固定するために0.05%以上が好ましい。特に好ましい締め代(XT2)は0.15〜0.25%である。なお、締め代(XT2)の適正範囲は、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材質、マンドレルリング(35)の厚み等によって異なる。
従って、常温(T1)時に隙間(S1)が最小となり押出時のダイス温度(T2)時に締め付け力が最大となる部分において、高温(T2)時の締め代(XT2)が0〜0.3%となるように心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば良い。その他の部分における締め代は、常温(T1)時の隙間(S1)の大きさに応じた値となる。
また、常温(T1)時の締め代(XT1)は負値である限り限定されない。心棒(32)の外径(AT1)がマンドレルリング(35)の内径(BT1)よりも小さいので、これらの組み付け作業は容易である。押出ダイスは、押出が終わって常温(T1)に冷却されると常温(T1)時の締め代(XT1)に戻って緩みが生じるので、心棒(32)からマンドレルリング(35)を取り外すことができる。従って、摩耗したマンドレルリングの取り外し、新しいマンドレルリングの取り付けといったメンテナンスを容易に行える。
なお、図5A〜5Cは径方向の熱膨張を説明するための模式図であって、押出軸方向の熱膨張は表わされていない。
〔マンドレルリングの押出軸方向における固定〕
上記実施形態のマンドレル(30)においては、心棒(32)の先端に、マンドレルリング(35)の内径よりも径の大きいナット(37)が着脱自在に取り付けられている。高温(T2)時のマンドレルリング(35)は心棒(32)によって径方向に締め付けられて固定されるが、押出中は材料の流れにより下流側への力が加わる。そこで、前記マンドレル(30)においては、ナット(37)を取り付けることでマンドレルリング(35)の抜け落ちを確実に防ぎ、固定安定性を高めている。また、ナット(37)を取り付けて押出軸方向の拘束力を加えることで、心棒(32)の膨張力による締め付けのみで固定する場合よりも、締め代(XT2)を小さくすることができるので、締め代(XT2)の増大によるマンドレルリング(35)の破損の危険性を回避できる。
上記実施形態のマンドレル(30)においては、心棒(32)の先端に、マンドレルリング(35)の内径よりも径の大きいナット(37)が着脱自在に取り付けられている。高温(T2)時のマンドレルリング(35)は心棒(32)によって径方向に締め付けられて固定されるが、押出中は材料の流れにより下流側への力が加わる。そこで、前記マンドレル(30)においては、ナット(37)を取り付けることでマンドレルリング(35)の抜け落ちを確実に防ぎ、固定安定性を高めている。また、ナット(37)を取り付けて押出軸方向の拘束力を加えることで、心棒(32)の膨張力による締め付けのみで固定する場合よりも、締め代(XT2)を小さくすることができるので、締め代(XT2)の増大によるマンドレルリング(35)の破損の危険性を回避できる。
また、ナット(37)を取り付けるマンドレル(30)においては、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の押出軸方向における寸法にも常温(T1)時に差を設けておき、高温(T2)時にナット(37)がマンドレルリング(35)に当接して、マンドレルリング(35)がナット(37)によって確実に拘束されるようにすることが好ましい。
図6Aおよび図6Bは、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の押出軸方向における好ましい寸法関係を示している。図6Aに示す常温(T1)時において、心棒(32)の長さはマンドレルリング(35)の長さよりも短く、ボルト部(34)に螺合させたナット(37)はマンドレルリング(35)を締め付けている。心棒(32)には、心棒(32)とナット(37)との間の隙間(S2)に応じた引張力が付与され、マンドレルリング(35)は押出軸方向に拘束されている。図6Bは、図6Aの押出時のダイス温度(T2)時の状態を示す図であり、心棒(32)およびマンドレルリング(35)がそれぞれに膨張した状態を示している。心棒(32)の熱膨張係数(α1)とマンドレルリング(35)の基材(61)の熱膨張係数(α2)はα1>α2の関係にあるので、心棒(32)の寸法拡大量がマンドレルリング(35)の寸法拡大量を上回り、前記隙間(S2)は減少方向に変化する。この隙間(S2)の減少により、心棒(32)に付与される引張力は減少し、マンドレルリング(35)に対する締め付け力は減少するが、隙間(S2)がある限りがナット(37)による抑えが利いているので、マンドレルリング(35)が押出軸方向にずれることはない。即ち、マンドレルリング(35)は径方向と押出軸方向の両方向に拘束されて固定されている。このように、押出軸方向の拘束が加わることで、上述した径方向の締め代(XT2)を小さくしても、マンドレルリング(35)の固定安定性を維持することができる。ひいては、マンドレルリング(35)に付与される周方向の引張力を軽減して、締め代(XT2)の増大による破損を回避することができる。
これに対し、図7Aは、常温(T1)において心棒(32)とマンドレルリング(35)の長さが等しく、心棒(32)とナット(37)との間に隙間(S2)が無い状態を示している。図7Bは、図7Aの押出時のダイス温度(T2)における状態を示す図であり、熱膨張により心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなって、マンドレルリング(35)とナット(37)との間に隙間(S3)が生じている。このような状態では、マンドレルリング(35)に対してナット(37)による抑えが利かなくなり、押出軸方向の固定安定性が低下する。また、このような状態でマンドレルリング(35)のずれを確実に阻止するには、径方向の締め代(XT2)を十分に大きくする必要があるので、マンドレルリング(35)が破損する可能性も増大する。
なお、図6Aおよび図6Bでは常温(T1)時に心棒(32)がマンドレルリング(35)より短い場合を示したが、その差が小さく押出時のダイス温度(T2)時に長さが逆転して心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなれば、図7Bのようにナット(37)による抑えが利かなくなる。
以上より、押出時のダイス温度(T2)においてマンドレルリング(35)にナット(37)による締め付け力が作用するように、常温(T1)時の心棒(32)およびマンドレルリング(35)の押出軸方向の寸法を設定しておくことが好ましい。ダイスの温度上昇に伴って、マンドレルリング(35)とナット(37)は緩む方向に変化するので、押出時のダイス温度(T2)時にナット(37)による締め付け力を確実に利かせるためには、少なくとも常温(T1)時にナット(37)がマンドレルリング(35)を締め付けている必要がある。
〔マンドレルリングの周方向における位置決め〕
マンドレルにおいては、心棒およびマンドレルリングの孔の断面形状を非円形に形成することにより、マンドレルリングの周方向の回動を阻止することができる。これにより、周方向のずれがなくなって固定安定性を高めるとともに、マンドレルリングの位置決めを行うことができる。特に、押出材の中空部の形状が円以外の場合は、周方向の位置決めが必要となるため、適用意義が大きい。
マンドレルにおいては、心棒およびマンドレルリングの孔の断面形状を非円形に形成することにより、マンドレルリングの周方向の回動を阻止することができる。これにより、周方向のずれがなくなって固定安定性を高めるとともに、マンドレルリングの位置決めを行うことができる。特に、押出材の中空部の形状が円以外の場合は、周方向の位置決めが必要となるため、適用意義が大きい。
図8A〜図8Cは円形以外の形状例である。図8Aの心棒(40)は断面形状が多角形(図示例は六角形)であり、多角形の孔を有するマンドレルリング(41)が外嵌めされている。図8Bの心棒(42)は断面における輪郭線の一部が直線(43)で形成され、マンドレルリング(44)には心棒(42)の断面形状に対応する孔が形成されている。図8Cは、心棒(45)の外周面およびマンドレルリング(46)の内周面に半円形の凹部(47)(48)が形成され、これらの凹部(47)(48)の位置を合わせて形成される円形孔にピン(49)を打ち込んだものである。
〔マンドレルリングにおけるベアリング部の位置〕
図1〜7Bのマンドレルリング(35)は、軸線方向の中央にベアリング部(36)を形成し、ベアリング部(36)の上流側および下流側にリリーフ部(39a)(39b)を設けることによってマンドレルリング(35)の強度を確保している。本発明におけるマンドレルリングは、ベアリング部の位置を上記例に限定するものではなく、かつリリーフ部の有無も問わない。ベアリング部は適宜変更することができる。以下に、軸線方向におけるベアリング部の位置の例を示す。
図1〜7Bのマンドレルリング(35)は、軸線方向の中央にベアリング部(36)を形成し、ベアリング部(36)の上流側および下流側にリリーフ部(39a)(39b)を設けることによってマンドレルリング(35)の強度を確保している。本発明におけるマンドレルリングは、ベアリング部の位置を上記例に限定するものではなく、かつリリーフ部の有無も問わない。ベアリング部は適宜変更することができる。以下に、軸線方向におけるベアリング部の位置の例を示す。
図9Aのマンドレルリング(50)は、軸線方向の全域がベアリング部(36)であり、リリーフ部が無い。ベアリング部(36)のみで強度を確保できる場合は必ずしもリリーフ部を必要としない。かかる形状のマンドレルリング(50)は大型材の押出に適している。また、リリーフ部を形成しないことでマンドレルリングの製作コストを低減できる。
図9Bのマンドレルリング(52)は、図1〜7Bのマンドレルリング(35)と軸線方向の長さが同一であるが、ベアリング部(36)を軸線方向の中央よりも下流側に寄せたものである。前記マンドレルリング(35)と比べると、上流側リリーフ部(39a)が長く、下流側リリーフ部(39b)が短くなっている。また、図9Cのマンドレルリング(54)もまた図1〜7Bのマンドレルリング(35)と軸線方向の長さが同一であるが、下流側にリリーフ部を設けずに下流側端部にベアリング部(36)を設けたものである。これらのマンドレルリング(52)(54)は、ベアリング部(36)が図1〜7Bのマンドレルリング(35)よりも下流側に寄っているので、ベアリング部(36)の下流端からナット(37)の下流側端面、即ちマンドレルの先端までの距離(P)が短くなり、雌型(11)のベアリング孔(12)内へのマンドレルの突出量(P)が小さくなる。ベアリング孔(12)内へのマンドレルの突出量(P)を小さくすることにより、ダイスの組み立て時および解体時にマンドレルが雌型のベアリング部に接触する危険性を回避できる。
なお、本発明はベアリング部の位置を下流側に寄せることに限定するものではなく、図9Dに示すように、ベアリング部(36)を上流側に寄せたマンドレルリング(56)も本発明に含まれる。
〔マンドレルリングの表面処理〕
本発明において、上述したマンドレルリングの特性を長期に維持するための手段として、マンドレルリングを構成する基材の表面に耐アルカリ被膜を形成して基材を保護することを推奨する。
本発明において、上述したマンドレルリングの特性を長期に維持するための手段として、マンドレルリングを構成する基材の表面に耐アルカリ被膜を形成して基材を保護することを推奨する。
押出後のダイスには押出材料が付着しているため、押出後のダイスメンテナンスにおいて苛性ソーダ等の強アルカリ液でダイスを洗浄する。このとき、表1に示すマンドレルリングの基材の材料の中には、バインダーとして含有する成分が溶解し脱落するものがある。例えばWC−CoではバインダーのCoが強アルカリ液によって選択的に腐食・溶解し、Coの脱落によって表面強度が低下して摩耗した状態になる。かかる現象に対し、本発明では基材の表面に硬質で耐摩耗性を有する耐アルカリ被膜を形成して基材を保護する。前記耐アルカリ被膜は、基材表面における含有成分の溶解を防いで基材の摩耗を防止する。また、耐アルカリ被膜は高硬度で耐摩耗性を有しているので、押出による被膜自身の摩耗が防がれて溶解防止効果を長期間維持することができる。
図10A〜10Dに示したマンドレルは、図1〜7Bのマンドレル(30)と同じく軸線方向の中央にベアリング部(36)を有するマンドレルリング(60)(64)(66)(68)を備えているが、マンドレルリングが基材(61)の表面に耐アルカリ被膜(62)を有していることが相違している。また、図10Eに示したマンドレルは、マンドレルリング(64)が基材(61)の表面に耐アルカリ被膜(62)を有していることおよびナット(37)の形状が相違する。なお、図10A〜10Eにおいて、図1〜図7Bと共通の符号は同じものを表すものとして重複する説明を省略する。
上述したように、本発明においては、マンドレルリングは心棒との熱膨張係数の差を利用して押出時のダイス温度において心棒に固定され、かつ適正な締め代(XT2)が設定されるので、マンドレルリングの内径(BT1)は前記耐アルカリ被膜(62)の厚さを含む寸法として設定される。
図10Aのマンドレルリング(60)は、基材(61)の外周面(61a)、内周面(61b)、上流側端面(61c)、下流側端面(61d)の全ての面に耐アルカリ被膜(62)を形成したものである。
耐アルカリ被膜(62)は、耐アルカリ性および耐摩耗性を有する限りその種類は限定されず、表2に記載した被膜を例示できる。前記耐アルカリ被膜(62)は、基材(61)よりも高い硬度を有していることが好ましい。例えば、超硬合金(WC−Co)のHRA硬度は85程度(HV硬度で900)であり、耐アルカリ被膜(62)の好ましいHV硬度は900以上、特に好ましくは1800以上である。基材(61)よりも高硬度の耐アルカリ被膜(62)を形成することで、マンドレルリング(35)の耐摩耗性をさらに向上させることができる。表2に記載した被膜はいずれもHV硬度が1800以上である。耐アルカリ被膜(62)の厚さも限定されないが、十分な上記効果を得るためには1μm以上であることが好ましい。特に好ましい厚さは2〜8μmである。前記耐アルカリ被膜(62)は、所定形状に成型した基材(61)に対し、CVD、PVD等の周知の表面処理を施すことによって形成することができる。
また、マンドレルリング(60)において、押出時のダイス温度(T2)と常温(T1)の状態が繰り返されることにより、基材(61)は膨張と収縮を繰り返すことになるが、前記の耐アルカリ被膜(62)の厚さであればその被膜に割れを生ずることなく、割れた部分からのアルカリ洗浄液による溶解は生じない。
前記マンドレルリング(60)において、前記耐アルカリ被膜(62)は押出材料が付着する外周面(61a)のみならず、耐摩耗性を要求されない内周面(61b)および端面(61c)(61d)にも形成されている理由は以下のとおりである。洗浄時のダイス温度は常温(T1)または押出時の温度(T2)よりも低下しているから、心棒(32)およびマンドレルリング(60)はそれぞれに収縮して締め代が緩み、両者の間には隙間(S1)が生じている。そして、洗浄液は心棒(32)のボルト部(34)とナット(37)の螺合部からこの隙間(S1)にも入り込むおそれがあり、マンドレルリング(60)の内周面(61b)も洗浄液に接触する可能性がある。マンドレルリング(60)の内周面(61b)が溶解して内径が拡大すると、マンドレルリング(60)の径方向における固定安定性が低下し、ひいては押出安定性が低下する原因となる。このため、締め代の緩みによって洗浄液が接触するおそれのある内周面(61b)にも耐アルカリ被膜(62)が形成されている。
また、本実施形態のようにマンドレルリングが軸線方向において下流側からナット等の抑え部材によって拘束されている場合は、マンドレルリング(60)の両端面(61c)(61d)はダイス基盤(31)の段部(33)とナット(37)とに強く押圧されているので、これらの合わせ目から洗浄液が入り込む可能性は極めて低く、押出安定性に悪影響を及ぼすような洗浄液の浸入は起こらない。しかも、〔マンドレルリングの押出軸方向における固定〕の項で説明したように、押出時のダイス温度(T2)に上昇した時に、熱膨張係数の差により軸線方向においてマンドレルリング(60)が緩まないように、常温(T1)時は高温(T2)時よりもナット(37)がマンドレルリング(60)を強く締め付けているため、マンドレルリング(60)の端面(61c)(61d)を通って洗浄液が浸入する可能性はなお一層低くなる。
従って、常温(T1)時の状態に鑑みると、図10Bに示すマンドレルリング(64)のように、基材(61)の外周面(61a)および内周面(61b)に耐アルカリ被膜(62)が形成されていれば、両端面(61c)(61d)に耐アルカリ被膜(62)が形成されていなくても、洗浄液が内周面(61b)に接触する可能性は極めて低く、マンドレルリング(64)の固定安定性を低下させない。
図10Aのマンドレルリング(60)および図10Bのマンドレルリング(64)は、その逃がし径がナット(37)のフランジ(37a)の径よりも大きく、下流側端面(61d)の外縁部がフランジ(37a)からはみ出しているので洗浄液が接触する。従って、下流側端面(61d)が耐アルカリ被膜で覆われていない図10Bのマンドレルリング(64)では、下流側端面(61d)の外縁部が洗浄液に接触して基材(61)に溶解が生じる。しかしながら、下流側端面の外縁部が洗浄時に溶解したとしても、その溶解によって生じる程度の寸法変化によってマンドレルリングの固定安定性が低下することはないので、端面の耐アルカリ被膜は必須要件ではない。
従って、上記構造のマンドレルにおいては、マンドレルリングの基材の外周面および内周面に耐アルカリ被膜が形成されていれば足り、両端面に耐アルカリ被膜が形成されていないマンドレルリングを使用した場合も、洗浄によって固定安定性が損なわれることがなく、安定した押出を繰り返し行うことができる。
また、本発明は、マンドレルリング端面の耐アルカリ被膜を排除するものではなく、図10Aに示した基材(61)の全表面に耐アルカリ被膜(62)を形成したマンドレルリング(60)、図10Cおよび図10Dに示すように基材(61)の上流側端面(61c)および下流側端面(61d)のうちのどちらか一方にのみに耐アルカリ被膜(62)を形成したマンドレルリング(66)(68)も本発明に含まれる。
なお、マンドレルリングの下流側端面は溶解しても固定安定性に悪影響を及ぼさないと雖も、マンドレルリングの寿命を可及的に長くする上で、下流側端面の外縁部が溶解するよりも溶解しない方が好ましいことは明らかである。マンドレルリングの下流側端面を洗浄液に接触させない方法としては、図10Eのようにナット(37)のフランジ(37b)の径を拡大してマンドレルリング(64)の逃がし径と同寸とし、フランジ(37b)で基材(61)の下流側端面(61d)を覆う構造を推奨できる。また、図10Aおよび図10Cのマンドレル(60)(66)のように、基材(61)の下流側端面(61d)に耐アルカリ被膜(62)を形成して基材(61)を保護することも好ましい。
さらに、洗浄液がマンドレルリングの内周面に接触しない場合は、内周面に耐アルカリ被膜を形成しないことも選択できる。例えば、図11のマンドレル(70)は心棒(71)が基盤部の台座(24)に対して着脱自在となされ、マンドレルリング(78)を心棒(71)の本体部(72)の上流側から嵌める構造である。図面中の(72a)は本体部の外周面である。このような構造においては、本体部(72)の上流側端部にねじ部を形成し、台座(24)へのねじの締め具合によって頭部(74)によるマンドレルリング(78)への拘束力を調節できるので、頭部(74)を本体部(72)から外す必要がなく、頭部(74)は本体部(72)から連続して一体に形成されている。前記心棒(71)には、図10A〜10Dにおけるナット(37)に対応する頭部(74)に螺合部が存在しないので、下流側から隙間(S1)への洗浄液の浸入はない。また、基材(61)の両端面(61c)(61d)は台座(24)と頭部(74)のフランジ(77)によって強く押圧されているので、図10A〜10Dのマンドレルと同じく、基材(61)の両端面(61c)(61d)から洗浄液が浸入することもない。よって、マンドレルリング(78)の内周面が洗浄液に接触しない。従って、心棒の先端側(下流側)から洗浄液が浸入しないマンドレル構造においては、図11に示すように、基材(61)の外周面(61a)にのみ耐アルカリ被膜(62)を形成し、上流側端面(61c)、下流側端面(61d)および内周面(61b)に耐アルカリ被膜(62)を形成しないマンドレルリング(78)を使用しても耐アルカリ被膜による効果を得ることができる。
以上より、マンドレルリングは基材の少なくとも外周面に耐アルカリ被膜が形成されていれば、耐アルカリ被膜による基材保護効果を得てマンドレルリングの寿命を延ばすことが可能であり、その他の面においてはマンドレルの構造に応じて被膜を形成することにより基材に対する保護効果をなお一層高めることができる。
マンドレルリングにおいて、基材の一部の面に耐アルカリ被膜を形成しないことによるメリットは、耐アルカリ被膜形成のための表面処理のコストを低減できることである。表面処理方法として先に例示したCVDおよびPVDでは、全表面に被膜を形成する処理と一部の面に被膜を形成しない処理とで処理コストに差があるので、コスト面で有利である。ただし、マンドレルリングの固定安定性に悪影響を及ぼさない面に耐アルカリ被膜が存在していても何ら不都合はないので、基材に対する保護効果をより一層高め、あるいは不本意な洗浄液の接触やマンドレルの分解洗浄等に備えて端面や内周面に耐アルカリ被膜を形成することは、必ずしも無駄であるとは言えない。
上述したように、常温時に心棒とマンドレルリングとの間に隙間があるので、マンドレルリングの心棒への着脱が容易であり、マンドレルリングの交換等のメンテナンスを簡単に行える。そして、心棒から外したマンドレルリングに対して耐アルカリ被膜を再形成することも可能であるから、耐アルカリ被膜による基材の保護効果と耐アルカリ被膜の再形成とにより、マンドレルリングの強度を長期間維持して寿命を延ばすことができる。
本発明の押出ダイスは、閉じられた中空部を有する中空材の押出のみならず、中空部の一部が開口した半中空材の押出にも適用することができる。
また、本発明の押出ダイスを用いて成形する材料は金属である限り何ら限定されず、アルミニウム、銅、鉄およびこれらの合金を例示できる。
〔試験1〕
図1〜3に示すポートホールダイス(10)において、雄型(20)のマンドレル(30)の心棒(32)を含む部分を工具鋼(SKD61)で製作し、マンドレルリング(35)を超硬合金(WC−Co)で製作し、高温に加熱してマンドレルリング(35)の固定状態を調べた。
図1〜3に示すポートホールダイス(10)において、雄型(20)のマンドレル(30)の心棒(32)を含む部分を工具鋼(SKD61)で製作し、マンドレルリング(35)を超硬合金(WC−Co)で製作し、高温に加熱してマンドレルリング(35)の固定状態を調べた。
図12に示すように、心棒(32)は、外径(D2)が18mm、21mm、24mmの3種類を準備し、マンドレルリング(35)はベアリング部(36)の外径(D3)が30mmで、3種類の心棒(32)の外径(D2)に対応する孔を有するものを組み合わせるものとした。
加熱試験は、常温(T1)を20℃、高温(T2)時の温度を押出時のダイス温度に相当する550℃とした。表1に記載した熱膨張係数より、心棒(32)の熱膨張係数(α1)は13×10−6/℃であり、マンドレルリング(35)の熱膨張係数(α2)は7×10−6/℃である。3種類の外径(D2)の心棒(32)とマンドレルリング(35)の組み合わせにおいて、高温(T2)時の締め代(XT2)が表2に示す7段階の範囲の値となるように、常温(T1)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を微調整した。これにより、21種類のマンドレル(30)を有する雄型(20)を準備した。
前記マンドレル(30)は、常温(T1)で心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めして組み付けた後550℃(T2)に加熱した。そして、高温(T2)状態におけるマンドレルリング(35)の固定状態について観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
××:心棒とマンドレルリングが緩んでいて固定されていない。
○:マンドレルリングは心棒に固定される。また、押出材は「◎」よりも偏肉が大きい。
◎:マンドレルリングは「○」よりも心棒にしっかりと固定され、押出材の偏肉も小さい。
×:マンドレルリングが破損した。
○:マンドレルリングは心棒に固定される。また、押出材は「◎」よりも偏肉が大きい。
◎:マンドレルリングは「○」よりも心棒にしっかりと固定され、押出材の偏肉も小さい。
×:マンドレルリングが破損した。
表3より、高温時に適度な締め代(XT2)となることにより、心棒(32)にマンドレルリング(35)が安定して固定されることを確認した。
〔試験2〕
試験1で用いた21種類の雄型のうち、心棒(32)の外径(D2)が21mmで、高温時の締め代(XT2)が−0.05≦XT2<0、0.05≦XT2<0.10、0.20≦XT2<0.25の3種類について、雌型(11)と組み合わせたポートホールダイス(10)により押出試験を行い、押し出された中空の押出材(1)の偏肉を調べた。
試験1で用いた21種類の雄型のうち、心棒(32)の外径(D2)が21mmで、高温時の締め代(XT2)が−0.05≦XT2<0、0.05≦XT2<0.10、0.20≦XT2<0.25の3種類について、雌型(11)と組み合わせたポートホールダイス(10)により押出試験を行い、押し出された中空の押出材(1)の偏肉を調べた。
押出材料は直径160mm×長さ500mmのA3003アルミニウム合金ビレットであり、押出材(1)は、外径35mm、内径30mmの円筒管である。そして、押出時のダイス温度が550℃となるように調節し、各ダイスにつき12本のビレットを押し継ぎながら押出を行った。そして、押出材(1)における各ビレットの先端部と後端部に対応する部分の偏肉値を調べた。偏肉値とは、円筒管の肉厚における最厚部と最薄部の差である。各ポートホールダイス(10)による偏肉値を表4に示す。
表4より、締め代(XT2)を0%以上とすることにより偏肉を抑制でき、かつ締め代(XT2)を大きく設定することで偏肉値を小さくできることを確認した。
本願は、2009年1月6日に出願された日本国特許出願の特願2009−739号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容はそのまま本願の一部を構成するものである。
ここに用いられた用語および表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
本発明の押出ダイスは、中空部または半中空部を有する各種押出材の製造に利用できる。
1…押出材
10…ポートホールダイス
11…雌型
20…雄型(押出ダイス)
21…ダイス基盤
30、70…マンドレル
32…心棒
32a、72a…心棒の外周面
35、50、52、54、56、60、64、66、68、78…マンドレルリング
35a…マンドレルリングの内周面
36…ベアリング部
37…ナット(抑え部材)
39a、39b…リリーフ部
61…基材
61a…基材の外周面
61b…基材の内周面
62…耐アルカリ被膜
72…心棒の本体部(心棒)
10…ポートホールダイス
11…雌型
20…雄型(押出ダイス)
21…ダイス基盤
30、70…マンドレル
32…心棒
32a、72a…心棒の外周面
35、50、52、54、56、60、64、66、68、78…マンドレルリング
35a…マンドレルリングの内周面
36…ベアリング部
37…ナット(抑え部材)
39a、39b…リリーフ部
61…基材
61a…基材の外周面
61b…基材の内周面
62…耐アルカリ被膜
72…心棒の本体部(心棒)
Claims (1)
- 押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度時に、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
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