JP5441815B2 - 押出ダイス - Google Patents

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Description

この発明は、中空材の押出加工に用いる押出ダイスおよびその関連技術に関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、押出材および押出材料の進む方向を下流または下流側と称し、逆方向を上流または上流側と称する。
押出ダイスにおいては、ベアリング部に耐摩耗性を与えるために、ベアリング部を含むダイスの一部に超硬合金やセラミック等の超硬材料が用いられている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、工具鋼からなるダイケースの凹部内に超硬材料からなるリング状ダイスを焼嵌めしたダイスが記載されている。特許文献2には、マンドレルの心棒を工具鋼で形成し、この心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めし、心棒の先端に抜け止め用ナットを取り付けてマンドレルリングを心棒に固定するように構成したポートホールダイスの雄型が記載されている。
特開平6−15348号公報 特開2003−181525号公報
しかし、超硬材料を焼嵌めするタイプのダイスは、押出の準備工程やメンテナンスに手間がかかるという問題点がある。
また、超硬材料は工具鋼よりも熱膨張係数が小さく、かつ工具鋼よりも引張力に弱いという特性がある。このため、工具鋼からなる心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めする場合、熱間押出時に心棒が膨張し、マンドレルリングに対する締め付け力が強すぎると破損するおそれがある。逆に、締め付け力が弱すぎると、マンドレルリングがしっかりと固定されず、押出材の押継ぎ部に波打ちが発生したり、偏肉するおそれがある。また、押出材料の流れによってマンドレルリングが心棒から外れるおそれがある。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、適正な締め代を設定して心棒にマンドレルリングを安定して固定でき、かつメンテナンスを簡単に行える押出ダイスおよびその周辺技術の提供を目的とする。
即ち、本発明は[1]〜[6]に記載の構成を有する。
[1]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングが心棒よりも熱膨張係数の小さい材料で構成され、
前記マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時の両者間に、押出の下流側で狭くなり上流側で広くなる隙間が存在し、押出時のダイス温度において少なくとも下流側においてその隙間が無くなるように、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が形成されていることを特徴とする押出ダイス。
[2]常温時において、前記マンドレルの軸線に対し、前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面の少なくともいずれか一方がテーパー面で形成されている前項1に記載の押出ダイス。
[3]常温(T)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T1)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている前項1または2に記載の押出ダイス。
T2={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−}×100
ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数(α>α
:常温
:押出時のダイス温度(>T
T1:常温(T)時の心棒の外径
T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
[4]押出時のダイス温度において、マンドレルリングの内周面面積の20%以上が心棒の外周面と接触する前項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
[5]常温時に、心棒の外周面とマンドレルリングの内周面とが平行となる芯合わせ部を有する前項1〜4のいずれかに記載の押出ダイス。
[6]前項1〜5のいずれかに記載の押出ダイスを用い、下流側において心棒とマンドレルリングとの間の隙間が無くなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
上記[1]に記載の発明にかかる押出ダイスは、常温時には心棒とマンドレルリングとの間に隙間があるのでマンドレルリングの心棒への着脱が容易であり、マンドレルリングの交換等のメンテナンスを簡単に行える。一方、高温時には、心棒とマンドレルリングとの熱膨張係数の差により両者の間に隙間が無くなり、マンドレルリングは心棒が膨張しようとする径方向の力によって締め付けられて心棒に固定される。しかも、常温時における隙間は下流側で狭く上流側で広くなっているので、高温時における締め付け力は下流側で強くなり上流側で弱くなる。このような応力分布の違いにより、押出方向とは逆向きの力が作用する。この逆向きの力は押出材料がマンドレルリングを下流側に押す力に抗して作用するので、押出中のマンドレルリングの下流側への動きが抑制され、マンドレルリングの位置安定性が向上する。このように、マンドレルリングが心棒に安定して固定された状態で押出を行うと、押出材の偏肉が抑制されて高品質の押出材を製造することができる。
上記[2]に記載の各発明によれば、下流側で狭くなり上流側で広くなる隙間を形成することができ、上記の効果を奏することができる。
上記[3]に記載の発明によれば、高温時の心棒とマンドレルリングとの間の締め代(XT2)が適正範囲に設定されているので、安定した固定状態が得られ、かつ締め過ぎによるマンドレルリングの破損を回避できる。
上記[4]に記載の発明によれば、マンドレルリングの固定安定性が特に優れている。
上記[5]に記載の発明によれば、心棒にマンドレルリングを外嵌めして仮止めする最の芯合わせを容易かつ確実に行うことができる。
上記[6]に記載の発明によれば、押出はマンドレルリングが心棒に固定された状態で行われているので、偏肉が抑制された高品質の押出材を製造することができる。
本発明の一実施形態である雄型を備えるポートホールダイスを示す分解斜視図である。 図1のポートホールダイスの組み付け状態を示す断面図である。 図1のポートホールダイスにおいて、マンドレルの分解状態を示す要部断面図である。 図3のマンドレルの常温時における仮止め状態を示す断面図である。 図3のマンドレルの押出時のダイス温度時における状態を示す断面図である。 常温時のマンドレルの他の状態を示す断面図である。 温度と、心棒の外径およびマンドレルリングの内径との関係を示す図である。 高温時の圧力分布を示す説明図である。 常温時のマンドレルを示す断面図である。 押出時のダイス温度時のマンドレルを示す断面図である。 常温時のマンドレルを示す断面図である。 押出時のダイス温度時のマンドレルを示す断面図である。 マンドレルの他の形状を示す斜視図である。 マンドレルの他の形状を示す斜視図である。 マンドレルの他の形状例を示す断面図である。 マンドレルの他の形状例を示す断面図である。 マンドレルの他の形状例を示す断面図である。 マンドレルの他の形状例を示す断面図である。 図12のマンドレルの変形例を示す部分拡大図である。 図12のマンドレルの他の変形例を示す部分拡大図である。 図12のマンドレルのさらに他の変形例を示す部分拡大図である。 比較例のマンドレルを示す断面図である。
図1および図2に示すポートホールダイス(10)は、中空押出材(1)の外周面を成形する雌型(11)と内周面を成形する雄型(20)とが組み合わされてなり、前記雄型(20)が本発明の押出ダイスの一実施形態である。
雌型(11)は、中央部にベアリング孔(12)を有し、ベアリング孔(12)の下流側にはリリーフ孔(13)が形成され、上流側には溶着室用凹部(14)が形成されている。
前記雄型(20)は、ダイス基盤(21)の中央から下流側にマンドレル(30)が突出し、このマンドレル(30)の周囲に押出方向に貫通する複数個のポートホール(22)を有している。隣接するポートホール(22)(22)間には、下流側に突出する前記マンドレル(30)をその基端部(31)で支持する脚部(23)が形成されている。
図3に示すように、前記マンドレル(30)において、基端部(31)の先端側に径の小さい心棒(32)が一体に形成され、前記基端部(31)と心棒(32)との直径差によりこれらの間には段部(33)が形成されている。前記心棒(32)の先端側はさらに径小となって、外周面に螺旋状のネジ溝が形成されたボルト部(34)が一体に形成されている。前記基端部(31)、心棒(32)およびボルト部(34)は同軸上に形成されている。マンドレルリング(35)は、外周面に、押出材(1)の内周面を成形するベアリング部(36)が突設された環状体である。ナット(37)は前記ボルト部(34)のネジ溝に螺合されるネジ孔(38)を有している。而して、前記心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めして段部(33)に当接させ、ボルト部(34)にナット(37)のネジ孔(38)を螺合させると、マンレルリング(35)は段部(33)とナット(37)に挟まれて、軸線方向の所定位置に配置される。
本発明においては、前記心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料と形状の両面により、押出時にマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定されるように構成している。前記心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料特性および形状については後に詳述する。本発明における「押出時のダイス温度」とは、心棒およびマンドレルリングが高温押出時に所定の温度となり、そのときの温度をいう。
前記雌型(11)と雄型(20)とを組み合わせると、雌型(11)のベアリング孔(12)内に雄型(20)のマンドレルリング(35)のベアリング部(36)が嵌り込んでこれらの間に環状の成形用間隙(符号なし)が形成され、雌型(11)の溶着室用凹部(14)の一部が雄型(20)の端面で塞がれてポートホール(22)に連通する溶着室を形成する。そして、各ポートホール(22)に流入した押出材料は溶着室で合流し、成形用間隙から中空部(2)を有する押出材(1)として押出される。
本発明は、マンドレルを構成する心棒およびマンドレルリングの材料および形状に主要な特徴を有し、これらによって適正な締め代が設定されてマンドレルリングを安定して固定できる。以下に、マンドレルリングおよび心棒の材料および形状、固定方法について詳述する。
〔マンドレルの材料〕
前記マンドレル(30)において、マンドレルリング(35)を構成する材料は耐摩耗性に優れ、かつその熱膨張係数(α)と心棒(32)を構成する材料の熱膨張係数(α)とがα>αの関係を満足するものであれば特に限定されない。本実施形態においては、心棒(32)を含む部分(以下、単に「心棒」と略する)が工具鋼で形成されているのに対し、マンドレルリング(35)は前記工具鋼よりも耐摩耗性の高い超硬材料で構成されている。超硬材料としては、WC−Co等の超硬合金、高速度工具鋼、粉末高速度工具鋼、セラミックス等を例示できる。表1に、これらの超硬材料および工具鋼の一例およびそれらの熱膨張係数を示す。なお、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の熱膨張係数がα>αの関係を満足すれば良いので、例示した材料は表1に記載した用途に限定されない。例えば、粉末高速度工具鋼の心棒に超硬合金やセラミックスのマンドレルリングを組み合わせる場合も本発明に含まれる。
Figure 0005441815
本発明において、マンドレルリングとして心棒よりも熱膨張係数の小さい材料を用いることにより、押出時の加工発熱によるマンドレルリングの膨張率が小さくなるため、押出材はより安定した寸法のものを得ることができる。即ち、心棒(工具鋼)に熱膨張係数の小さいマンドレルリングを組み合わせたマンドレルでは、押し出していない時と加工発熱最大時との外径差が、工具鋼のみで製作したマンドレルにおける外径差よりも小さくなるので、押出材の肉厚が安定する。そして、押出材の寸法が安定していると、後加工後の製品品質も安定したものとなる。
〔マンドレルの形状〕
図3および図4Aは、常温(T)時におけるマンドレル(30)の要部断面図である。
前記マンドレル(30)は、マンドレルリング(35)の内周面(35a)をマンドレル(30)の軸線と平行に形成する一方で、心棒(32)の外周面(32a)は下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されている。これらの寸法は、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との間に隙間(S)が存在し、かつその隙間(S1)は押出の下流側(心棒の先端側)に向かって徐々に狭くなって下流端で最も狭くなり、上流側(心棒の付け根側)に向かって徐々に広くなって上流端で最も広くなるように設定されている。
図4Aは、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)として、直径が最大となる下流端における直径を示している。マンドレルリング(35)の内径(BT1)は押出方向において一定である。従って、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との間には、(BT1−AT1)を最小値とする隙間(S)が存在する。
なお、図4Aはマンドレルリング(35)の内周面(35a)と心棒(32)の外周面(32a)との間の距離が周方向においても一定の大きさとした状態を示しているが、常温(T)においてはマンドレルリング(35)と心棒(32)の軸合わせがなされていないので、両者間の距離は周方向で必ずしも一定にはならない。例えば、図示の姿勢でマンドレル(30)の組み立てを行うと、図4Cに示したように、マンドレルリング(35)の内周面(35a)の上部が心棒(32)の外周面(32a)の上部に接触して両者間の距離はゼロであり、周方向に沿って下方にいくにつれて両者間の距離が拡大し、下部において距離が最大となる。前記心棒(32)は外周面(32a)がテーパー面であるから、心棒(32)の外径が最大となる下流端でのみマンドレルリング(35)の内周面(35a)と接触している。また、マンドレルリング(35)はナット(37)で締め付けられて仮止めされた状態にあるので、全周において両者は接触していないが、両者間の距離には偏りがある、という場合もある。従って、本発明において「隙間がある」とは、マンドレルリング(35)と心棒(32)との接触の有無を意味するのではなく、常温(T)における心棒(32)の外径(AT1)とマンドレルリング(35)の内径(BT1)とが「BT1>AT1」なる関係を満足し、両者の間にクリアランスが存在することを意味する。また、マンドレルリング(35)と心棒(32)とが上述したいずれの位置関係にある場合においても、本発明における隙間(S)の大きさはマンドレルリング(35)の内径(BT1)と心棒(32)の外径(AT1)との差(BT1−AT1)で表される。
また、後述する図10〜13においても、マンドレルリング(52)(57)(62)(67)の内周面(52a)(57a)(62a)(67a)と心棒(51)(56)(61)(66)の外周面(51a)(56a)(61a)(66a)との間の距離が周方向において一定とした例を示しているが、これらの態様においても両者が接触する部分を有していたり、周方向における両者間の距離に偏りがある場合もある。
常温(T)時に心棒(32)とマンドレルリング(35)とを組み付ける際には、前記隙間(S)があるのでマンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めすることは容易である。さらに、ナット(37)を取り付けて締め付けると、心棒(32)には押出方向の引張力が生じ、マンドレルリング(35)には押出方向の圧縮力が生じる。
〔マンドレルリングの径方向における固定〕
図5は、温度(T)に対する心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)の変化を示したものでる。なお、本実施形態のマンドレル(30)は心棒(32)の外周面(32a)がテーパー面であって軸線方向において外径が変化しているので、ここでは、心棒(32)とマンドレルリング(35)との隙間が最小となる、下流端における外径を心棒の外径(A)として説明する。
図5に示すように、心棒(32)およびマンドレルリング(35)はいずれも熱膨張により寸法が拡大する(A、B)。常温(T)において、マンドレルリング(35)の内径(BT)は心棒(32)の外径(A)よりも大きく、図4Aに示したように、心棒(32)の下流端においてBT1−AT1の隙間(S)がある。
温度(T)が上昇すると、心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、それぞれの熱膨張係数(α)(α)に応じて径が大きくなる。T>Tを満足する任意の温度(T)における心棒(32)の外径(AT2)およびマンドレルリング(35)の内径(BT2)は、下記の(I)式および(II)式で表される。
T2=AT1×(T−T)×α+AT1 …(I)
T2=BT1×(T−T)×α+BT1 …(II)
ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数
:常温
:高温(>T
T1:常温(T)時の心棒の外径
T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
ダイス温度が上昇すると、心棒(32)およびマンドレルリング(35)がそれぞれの熱膨張係数(α)(α)に従って膨張し、心棒(32)には圧縮力が生じ、マンドレルリング(35)には周方向の引張力が生じる。そして、心棒(32)の外径拡大量がマンドレルリング(35)の内径拡大量を上回るために隙間(S)は減少していき、図4Bに示すように下流端において隙間(S)が無くなるとマンドレルリング(35)は心棒(32)に固定される。
熱膨張係数はα>αであるから、図5に参照されるように、温度上昇に伴い、温度(T)において心棒(32)の外径(ATZ)とマンドレルリング(35)の内径(BTZ)が等しくなった時点で隙間(S)が無くなり、マンドレルリング(35)は心棒(32)から外れなくなって固定された状態となる。さらに温度が上昇すると、心棒(32)の外径(A)がマンドレルリング(35)の内径(B)を上回る。心棒(32)の外径(A)がマンドレルリング(35)の内径(B)を上回る温度領域(T>T)では、心棒(32)の膨張力がマンドレルリング(35)を内側から締め付ける力として作用し、マンドレルリング(35)に周方向の引張力が付与されるので、ますます心棒(32)から外れにくくなってしっかりと固定される。
常温時(T)における隙間(S)は下流側ほど狭くなっているので、ダイス温度が上昇する過程で、最初に心棒(32)の下流端において隙間(S)が無くなり、隙間(S)の無い領域が上流側に拡大していく。本実施形態のマンドレル(30)は、押出時のダイス温度(T)において、心棒(32)の上流側で隙間(S)が残るように、マンドレルリング(35)の内径(BT1)、心棒(32)の下流端における外径(AT1)および外周面(32a)のテーパー角度が設定されている(図4B参照)。
また、常温時(T)における隙間(S)は下流側ほど狭くなっているので、押出時のダイス温度(T)においては、マンドレルリング(35)は下流側ほど大きな力で締め付けられる。このため、図6に示すように、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との界面にかかる応力場に違いが現れ、圧力は下流側ほど高く上流側ほど低くなる。そして、このような圧力分布の違いにより、押出方向とは逆向きの力(F)が作用する。この逆向きの力(F)は押出材料がマンドレルリング(35)を下流側に押す力に抗して作用するので、押出中のマンドレルリング(35)の下流側への動きが抑制され、マンドレルリング(35)の位置安定性が向上する。
押出時、ダイスは所定温度に加熱されて常温(T)よりも高温となる。従って、図5に示すように、押出時のダイス温度(T)において、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)と等しくなるか、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)を上回るように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば、マンドレルリング(35)を心棒(32)に固定した状態で押出を行うことができる。そして、マンドレルリング(35)が心棒(32)に固定された状態で押出を行うと、押出材(1)の偏肉が抑制されて高品質の押出材(1)を製造することができる。ただし、心棒(32)の膨張力が過剰になってマンドレルリング(35)の引張力の限界を超えるとマンドレルリング(35)が破損するので、材料の熱膨張係数(α、α)と押出時のダイス温度(T)を勘案して、押出時のダイス温度時に適度な引張力を生じさせるように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定する。
ここで、任意の温度(T)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締まり具合および緩み具合を、心棒(32)の外径(A)とマンドレルリング(35)の内径(BT)の比率に基づいて、下記(III)式の締め代(X)として定義する。A<B、即ち両者の間には隙間がある状態ではXT<0となり、締め代(X)値が小さくなるほど緩みが大きいことを示している。一方、A>B、即ち両者の間には隙間がなくマンドレルリング(35)が内側から心棒(32)に締め付けられている状態ではX>0となり、締め代(X)の値が大きくなるほど締め付け力大きいことを示している。A=B(X=0)は、両者に隙間はないが締め付け力が利いていない状態である。
(%)=(A/B−1)×100 …(III)
さらに、(III)式により、常温(T)時および高温(T)時(押出時のダイス温度)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締め代(XT1)(XT2)は、それぞれ(IV)式および(V)式により表わされる。
T1(%)=(AT1/BT1−1)×100 …(IV)
T2=(AT2/BT2−1)×100
={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−1}×100
…(V)
心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、常温(T)時にAT1<BT1となるように製作されるのでXT1<0となり、締め代(XT1)は両者間の隙間があって緩んだ状態を示している。一方、押出時のダイス温度(T)時は両者間の隙間が無くなってAT2≧BT2であるから、その締め代(XT2)は0または正値となり、締め付け力が利いている状態を示している。また、XT2<0は、高温(T)時にも緩みがあってマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定されていない状態を示している。
前記締め代(XT2)が大きくなるほど締め付け力も強くなり、マンドレルリング(35)がしっかりと固定されて外れにくくなるが、上述したように締め付け力が過度に大きくなるとマンドレルリング(35)が破損するおそれがある。また、押出時には材料流れにより押出方向の力もが加わる。これらを勘案すると、前記締め代(XT2)は0.3%以下が好ましい。前記締め代(XT2)が0または正値である限り下限値は規定されないが、確実に固定するために0.05%以上が好ましい。特に好ましい締め代(XT2)は0.15〜0.25%である。なお、締め代(XT2)の適正範囲は、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材質、マンドレルリング(35)の厚み等によって異なる。
従って、常温(T)時に隙間(S)が最小となり高温(T)時に締め付け力が最大となる部分において、高温(T)時の締め代(XT2)が0〜0.3%となるように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば良い。その他の部分における締め代は、常温(T)時の隙間(S)の大きさに応じた値となる。
また、常温(T)時の締め代(XT1)は負値である限り限定されない。心棒(32)の外径(AT1)がマンドレルリングの内径(BT1)よりも小さいので、これらの組み付け作業は容易である。押出ダイスは、押出が終わって常温(T)に冷却されると常温(T)時の締め代(XT1)に戻って緩みが生じるので、心棒(32)からマンドレルリング(35)を取り外すことができる。従って、摩耗したマンドレルリングの取り外し、新しいマンドレルリングの取り付けといったメンテナンスを容易に行える。
押出時のダイス温度(T)において、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)とは必ずしも全領域で接触している必要はなく、図4Bに示すように上流側に隙間(S1)が残っていても良い。ただし、接触面積が大きいほど締め付け力が利いてマンドレルリング(35)の固定安定性が向上するので、マンドレルリング(35)の内周面(35a)の面積の20%以上、特に50%以上が心棒(32)の外周面(32a)に接触することが好ましい。かかる接触面積率は、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料選定および寸法設定によって調節できる。
なお、図4Aおよび図4Bは、径方向の熱膨張を説明するための模式図であって、軸線方向の熱膨張は表わされていない。
〔マンドレルリングの軸線方向における固定〕
本実施形態のマンドレル(30)においては、心棒(32)の先端に、マンドレルリング(35)の内径よりも径の大きいナット(37)が着脱自在に取り付けられている。押出時のダイス温度(T)時のマンドレルリング(35)は心棒(32)によって径方向に締め付けられ、かつ圧力分布の差によって生じる力(F)によって固定されるが、押出中は材料の流れによって下流側への力が加わる。そこで、前記マンドレル(30)においては、ナット(37)を取り付けることでマンドレルリング(35)の抜け落ちを確実に防ぎ、固定安定性を高めている。また、ナット(37)を取り付けて軸線方向の拘束力を加えることで、心棒(32)の膨張力による締め付けのみで固定する場合よりも、締め代(XT2)を小さくすることができるので、締め代(XT2)の増大によるマンドレルリング(35)の破損の危険性を回避できる。
また、ナット(37)を取り付けるマンドレル(30)においては、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向における寸法にも常温(T)時に差を設けておき、押出時のダイス温度(T)時にナット(37)がマンドレルリング(35)に当接して、マンドレルリング(35)がナット(37)によって確実に拘束されるようにすることが好ましい。
図7Aおよび図7Bは、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向における好ましい寸法関係を示している。図7Aに示す常温(T)時において、心棒(32)の長さはマンドレルリング(35)の長さよりも短く、ボルト部(34)に螺合させたナット(37)はマンドレルリング(35)を締め付けている。心棒(32)には、心棒(32)とナット(37)との間の隙間(S)に応じた引張力が付与され、マンドレルリング(35)は軸線方向に拘束されている。図7Bは、図7Aの押出時のダイス温度(T)時の状態を示す図であり、心棒(32)およびマンドレルリング(35)がそれぞれに膨張した状態を示している。心棒(32)の熱膨張係数(α)とマンドレルリング(35)の熱膨張係数(α)はα>αの関係にあるので、心棒(32)の寸法拡大量がマンドレルリング(35)の寸法拡大量を上回り、前記隙間(S)は減少方向に変化する。この隙間(S)の減少により、心棒(32)に付与される引張力は減少し、マンドレルリング(35)に対する締め付け力は減少するが、隙間(S)がある限りがナット(37)による抑えが利いているので、マンドレルリング(35)が軸線方向にずれることはない。即ち、マンドレルリング(35)は径方向と軸線方向の両方向に拘束されて固定されている。このように、軸線方向の拘束が加わることで、上述した径方向の締め代(XT2)を小さくしても、マンドレルリング(35)の固定安定性を維持することができる。ひいては、マンドレルリング(35)に付与される周方向の引張力を軽減して、締め代(XT2)の増大による破損を回避することができる。
これに対し、図8Aは、常温(T)において心棒(32)とマンドレルリング(35)の長さが等しく、心棒(32)とナット(37)との間に隙間(S)が無い状態を示している。図8Bは、図8Aの押出時のダイス温度(T)時の状態を示す図であり、熱膨張により心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなって、マンドレルリング(35)とナット(37)との間に隙間(S)が生じている。このような状態では、マンドレルリング(35)に対してナット(37)による抑えが利かなくなり、軸線方向の固定安定性が低下する。また、このような状態でマンドレルリング(35)のずれを確実に阻止するには、径方向の締め代(XT2)を十分に大きくする必要があるので、マンドレルリング(35)が破損する可能性も増大する。
なお、図7Aおよび図7Bでは常温(T)時に心棒(32)がマンドレルリング(35)より短い場合を示したが、その差が小さく押出時のダイス温度(T)時に長さが逆転して心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなれば、図8Bのようにナット(37)による抑えが利かなくなる。
以上より、高温(T)時にマンドレルリング(35)にナット(37)による締め付け力が作用するように、常温(T)時の心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向の寸法を設定しておくことが好ましい。ダイスの温度上昇に伴って、マンドレルリング(35)とナット(37)は緩む方向に変化するので、高温(T)時にナット(37)による締め付け力を確実に利かせるためには、少なくとも常温(T)時にナット(37)がマンドレルリング(35)を締め付けている必要がある。
〔マンドレルリングの周方向における位置決め〕
マンドレルにおいては、心棒およびマンドレルリングの孔の断面形状を非円形に形成することにより、マンドレルリングの周方向の回動を阻止することができる。これにより、周方向のずれがなくなって固定安定性を高めるとともに、マンドレルリングの位置決めを行うことができる。特に、押出材の中空部の形状が円以外の場合は、周方向の位置決めが必要となるため、適用意義が大きい。
図9Aおよび図9Bは、マンドレルリングの位置決めが可能なマンドレルの例である。図9Aのマンドレル(40)は、断面多角形(四角形)の心棒(41)と、この心棒(41)の断面に対応する多角形(四角形)の孔(43)を有するマンドレルリング(42)とを組み合わせたものである。また、図9Bのマンドレル(45)は、外周面(46a)の一部が平面(46b)で形成された略円柱形の心棒(46)と、円形孔(48)の内周面(49a)一部が心棒(46)の平面(46b)に対応する平面(49b)で形成されたマンドレルリング(47)とを組み合わせたものである。これらのマンドレル(40)(45)は、マンドレルリング(42)(47)の内周面(43a)(49a)がマンドレルの軸線と平行であり、心棒(41)(46)の外周面(41a)(46a)を下流側に向かって外向きに傾斜させたテーパー面とすることにより、両者間の隙間は下流側に向かって徐々に狭くなり、上流側に向かって徐々に広くなるように設定されている。
〔マンドレルの他の形状〕
本発明における特徴の一つは、常温時にマンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、両者間の隙間が下流側で狭くなり上流側で広くなるように設定されていることである。前記隙間形状を得るために、図3等のマンドレル(30)は、マンドレルリング(35)の内周面(35a)をマンドレルの軸線に平行に形成して一定の内径とし、心棒(32)の外周面(35a)を下流側に向かって外向きに傾斜させているが、本発明は上記の組み合わせに限定されない。常温で心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めするための条件は(マンドレルリングの孔の最小径)>(心棒の最大径)であるから、上記条件を満たし、かつ隙間が下流側で狭くなり上流側で広くなるという条件を満たす限り、形状は任意に設定できる。
図10〜図12はマンドレルの他の形状例である。図10のマンドレル(50)は、心棒(51)の外周面(51a)を軸線に対して平行に形成して外径一定とし、マンドレルリング(52)の内周面(52a)を下流側に向かって内向きに傾斜するテーパー面で形成したものである。図11のマンドレル(55)は、心棒(56)の外周面(56a)を軸線に対して下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成し、マンドレルリング(57)の内周面(57a)を下流側に向かって内向きに傾斜するテーパー面で形成し、逆方向に傾斜させたものである。図12のマンドレル(60)は、心棒(61)の外周面(61a)およびマンドレルリング(62)の内周面(62a)を軸線に対して同一方向に傾斜させたテーパー面とし、2つのテーパー面のテーパー角度に差を付けることによって、所期する隙間形状を形成している。
いずれの場合もテーパー面は、マンドレルの軸線に対するテーパー角度として0.03〜5°の範囲に設定することが好ましい。テーパー角度が0.03°未満では下流側の隙間と上流側の隙間の差が小さくなるので、図6で説明した圧力分布の差によって生じる反押出方向の力(F)も小さくなってマンドレルリングをずれを阻止する力も小さくなる。一方、テーパー角度が5°を超えると隙間の差が大きくなるので、高温時に高い接触面積率を確保しにくくなる。特に好ましいテーパー角度は0.05〜2°である。なお、各図に描かれた心棒およびマンドレルリングのテーパー面は説明の便宜上テーパー角度を強調したものであり、必ずしも上記好適範囲とは一致していない。
さらに、前記隙間の大きさが押出方向の全域で変化していることにも限定されない。図13のマンドレル(65)は、心棒(66)の外周面(66a)およびマンドレルリング(67)の内周面(67a)の下流側端部(66b)(67b)が軸線に平行に形成され、隙間(S)の大きさが一定となされた芯合わせ部(68)を有している。このような芯合わせ部(68)を設けることで、ナット(37)による仮止め時に心棒(66)とマンドレルリング(67)の軸線のずれを防ぐことができる。ダイス温度が上昇する過程において、最も隙間の狭い下流側端部は最初に心棒とマンドレルリングが接触する部分であるから、常温時にこの部分の芯合わせがなされていることで確実に締め付け力を利かせることができ、ひいてはマンドレルリングの固定安定性を高めることができる。また、軸線方向における前記芯合わせ部(68)の長さは、心棒(66)の長さの10〜30%に設定されていることが好ましい。10%未満では仮止め時のずれ止め効果が少なく、30%を超えると芯合わせ部(68)による固定力が強くなるため、テーパー面より得られる押出方向とは逆向きの力(F)の作用が小さくなってしまう。特に好ましい芯合わせ部(68)の長さは心棒(66)長さの15〜20%である。
本発明の押出ダイスは、閉じられた中空部を有する中空材の押出のみならず、中空部の一部が開口した半中空材の押出にも適用することができる。
また、本発明の押出ダイスを用いて成形する材料は金属である限り何ら限定されず、アルミニウム、銅、鉄およびこれらの合金を例示できる。
以下の実施例1,2および比較例において、図1および図2に参照されるポートホールダイス(10)の雄型(20)を、マンドレルの形状を変えて製作した。各マンドレルにおける心棒およびマンドレルリングの材料は共通であり、心棒を含む部分の材料は工具鋼(SKD61、熱膨張率:13×10−6/℃)であり、マンドレルリングの材料は超硬合金(WC−Co、熱膨張率:7×10−6/℃)である。
また、常温(T1)を20℃とした。
〔実施例1〕
図3〜4Bに示すマンドレル(30)を製作した。表2に、製作した心棒(32)よびマンドレルリング(35)の寸法を示す。
常温(T)時において、前記心棒(32)の下流端における外径(AT1)は24.000mmであり、その外周面(32a)は軸線に対するテーパー角度が0.137°で下流側に向かって外向きのテーパー面に形成されている。また、心棒(32)の軸線方向における長さは20mmであり、前記テーパー角度より、上流端における外径が23.904mm、両端部間の中央部(長さ方向の1/2の位置)における外径は23.952mmである。一方、マンドレルリング(35)は内周面(35)が軸線と平行に形成され、その内径(BT1)は24.028mmである。
図4Aに示すように、常温(T)時において、マンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めすると、両者間に隙間(S1)が生じる。この隙間(S)の大きさは下流側端部において0.014mm(直径差として0.028mm)、上流側端部において0.062mm(直径差として0.124mm)であり、下流に向かって徐々に狭く、上流側に向かって徐々広くなっている。
心棒(32)のボルト部(34)にナット(37)を螺合させてマンドレルリング(35)を仮止めした後、常温(T)から昇温させてダイス温度(T)が550℃になるように調節した。即ち、本実施例に高温(T)は550℃である。心棒(32)およびマンドレルリング(35)の熱膨張率および常温(T)時の各部の寸法より計算した押出時のダイス温度(T)時の寸法を表2に示す。さらに上述した(V)式により計算した締め代(XT2)を表2に示す。
Figure 0005441815
表2に記載した押出時のダイス温度(T)時の心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)より、心棒(32)の下流端においてマンドレルリング(35)は0.2%の締め代で締め付けられて、中央部で心棒(32)の外径(A)とマンドレルリング(35)の内径(B)が同寸となって締め代が「0」となる。即ち、下流端から中央部までは心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)とが接触し、締め付け力が作用している。また、この締め付け力は下流端で最大となり、上流側に向かって中央部まで徐々に減少する。中央部から上流端までは、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との間の隙間があって締め付け力が利いていない状態である。また、マンドレルリング(35)の内周面(35a)は、その面積の50%が心棒(32)の外周面(32a)と接触している。
〔実施例2〕
図12に参照されるように、マンドレル(60)は、常温(T)において、心棒(61)の外周面(61a)およびマンドレルリング(62)の内周面(62)が軸線に対して同一方向に傾斜するテーパー面に形成され、両者のテーパー角度に差を付けることにより、下流側に向かって狭くなり上流側に向かって広く隙間(S)が形成されている。各部の寸法は表3に示すとおりである。
実施例1と同様に、常温(T)において心棒(61)にマンドレルリング(32)を外嵌めし、ナット(37)を螺合させて仮止めした後、常温(T)の20℃から昇温させてダイス温度(T)が550℃になるように調節した。本実施例における高温(T)は550℃である。表3に、心棒(61)およびマンドレルリング(62)の熱膨張率および常温(T)時の各部の寸法より計算した押出時のダイス温度(T)時の寸法を表3に示す。さらに上述した(V)式により計算した締め代(XT2)を表3に示す。
Figure 0005441815
表3に記載した押出時のダイス温度(T)時の心棒(61)の外径(A)およびマンドレルリング(62)の内径(B)より、マンドレルリング(62)の内周面(62a)は全領域で心棒(61)の外周面(61a)と接触して接触面積率が100%であり、かつ下流側ほど締め代(XT2)が大きくなっている。
なお、本実施例のように100%の接触面積率でマンドレルリングと心棒とを接触させる場合、マンドレルリングの欠落を防止するために、両者のエッジが合わさる部分には、ンドレルリングおよび心棒のうちの少なくとも一方に面取り(R面取りを含む)またはアンダーカットを施すことが好ましい。図14Aはマンドレルリング(62)の角エッジ(62b)を面取りした例である。図14Bは心棒(61)の隅エッジ(61b)をアンダーカットした例である。図14Cは、マンドレルリング(62)の角エッジ(62b)を面取りし、かつ心棒(61)の隅エッジ(61b)をアンダーカットした例である。欠落防止効果を確実なものとするために、面取り量またはアンダーカット量は、どちらか一方に加工を施した場合に接触面積率が98%以下となるように設定することが好ましい。
〔比較例〕
図15に示すマンドレル(70)は、心棒(71)の外周面およびマンドレルリング(72)の外周面がいずれも軸線と平行であり、押出方向において隙間(S)が一定となるようにした。常温(T)における心棒(70)の外径(A)、マンドレルリング(72)の内径(B)、隙間(S)を表4に示す。これらの寸法は、常温(T)の20℃から昇温してダイス温度が550℃となった高温(T)時に隙間(S)が無くなり、マンドレルリング(72)の内周面と心棒(71)の外周面との接触面積率は100%であるが、締め代(XT2)が「0%」となるように設定されている。
Figure 0005441815
(押出試験)
上述した実施例1、2および比較例のマンドレルを有する雄型を含むポートホールダイスを用いて押出試験を行った。
押出試験は、常温(T)を20℃として心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めし、さらにナットを螺合させて仮止めし、その後ダイス温度が押出時に550℃(T)となるように調節して押出を行うものとした。押出材料は直径160mm×長さ500mmのA3003アルミニウム合金ビレットであり、押出材(1)は、外径35mm、内径30mmの円筒管である。そして、各ダイスにつき12本のビレットを押し継ぎながら押出を行った。そして、押出材(1)における各ビレットの先端部と後端部に対応する部分の偏肉値を調べた。偏肉値とは、円筒管の肉厚における最厚部と最薄部の差である。各ポートホールダイスによる偏肉値を表5に示す。
Figure 0005441815
表5より、心棒とマンドレルリングの間の隙間を下流側で狭くなるように設定した実施例では、押出材の偏肉が抑制されることを確認した。
本発明の押出ダイスは、中空部または半中空部を有する各種押出材の製造に利用できる。
1…押出材
10…ポートホールダイス
11…雌型
20…雄型(押出ダイス)
30、40、45、50、55、60、65…マンドレル
31…基端部
32、41、46、51、56、61、66…心棒
32a、41a、46a、51a、56a、61a、66a…外周面
35、42、47、52、57、62、67…マンドレルリング
35a、43a、49a、52a、57a、62a、64a内周面
36…ベアリング部

Claims (6)

  1. 押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
    前記マンドレルリングが心棒よりも熱膨張係数の小さい材料で構成され、
    前記マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時の両者間に、押出の下流側で狭くなり上流側で広くなる隙間が存在し、押出時のダイス温度において少なくとも下流側においてその隙間が無くなるように、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が形成されていることを特徴とする押出ダイス。
  2. 常温時において、前記マンドレルの軸線に対し、前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面の少なくともいずれか一方がテーパー面で形成されている請求項1に記載の押出ダイス。
  3. 常温(T)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている請求項1または2に記載の押出ダイス。
    T2={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−1}×100
    ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
    α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数(α>α
    :常温
    :押出時のダイス温度(>T
    T1:常温(T)時の心棒の外径
    T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
  4. 押出時のダイス温度において、マンドレルリングの内周面面積の20%以上が心棒の外周面と接触する請求項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
  5. 常温時に、心棒の外周面とマンドレルリングの内周面とが平行となる芯合わせ部を有する請求項1〜4のいずれかに記載の押出ダイス。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の押出ダイスを用い、下流側において心棒とマンドレルリングとの間の隙間が無くなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
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