JP5512328B2 - 押出ダイス - Google Patents

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Description

この発明は、中空材の押出加工に用いる押出ダイスに関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、押出材および押出材料の進む方向を下流または下流側と称し、逆方向を上流または上流側と称する。
押出ダイスにおいては、ベアリング部に耐摩耗性を与えるために、ベアリング部を含むダイスの一部に超硬合金やセラミック等の超硬材料が用いられている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、工具鋼からなるダイケースの凹部内に超硬材料からなるリング状ダイスを焼嵌めしたダイスが記載されている。特許文献2には、マンドレルの心棒を工具鋼で形成し、この心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めし、心棒の先端に抜け止め用ナットを取り付けてマンドレルリングを心棒に固定するように構成したポートホールダイスの雄型が記載されている。また、特許文献3に記載されているダイスは、心棒とマンドレルリングとの間に心棒よりも軟らかいスリーブを介在させてマンドレルリングを焼嵌めしたものであり、スリーブを圧縮変形させることによってマンドレルリングの割れを抑制するというものである。
特開平6−15348号公報 特開2003−181525号公報 特公平4−69009号公報
しかし、超硬材料を焼嵌めするタイプのダイスは、押出の準備工程やメンテナンスに手間がかかるという問題点がある。
また、超硬材料は工具鋼よりも熱膨張係数が小さく、かつ工具鋼よりも引張力に弱いという特性がある。このため、工具鋼からなる心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めする場合、熱間押出時に心棒が膨張し、マンドレルリングに対する締め付け力が強すぎると破損するおそれがある。逆に、締め付け力が弱すぎると、マンドレルリングがしっかりと固定されず、押出材の押継ぎ部に波打ちが発生したり、偏肉するおそれがある。また、押出材料の流れによってマンドレルリングが心棒から外れるおそれがある。
また、特許文献3のダイスは、スリーブを圧縮変形させるものであるから、押出の度にスリーブを交換しなければならず、メンテナンスの手間と費用がかかるものであった。しかも、マンドレルリングと心棒の熱膨張係数の差が小さい場合やマンドレルリングの熱膨張係数が心棒の熱膨張係数よりも大きい場合には、十分な締め代を与えることができなくなってマンドレルリングの固定安定性が低下し、押出材の偏肉やマンドレルリングの破損原因となる。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、心棒にマンドレルリングを外嵌めする押出ダイスにおいて、マンドレルリングを安定して固定でき、メンテナンスを簡単に行える押出ダイスの提供を目的とする。
即ち、本発明は下記[1]〜[6]に記載の構成を有する。
[1]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に中間締めリングを介して外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記中間締めリングは、心棒およびマンドレルリングよりも熱膨張係数の大きい材料で構成され、
前記心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面およびマンドレルリングの内周面が、前記心棒に中間締めリングを介してマンドレルリングを外嵌めした状態において、常温時に心棒と中間締めリングとの間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の少なくとも一方に隙間があり、押出時のダイス温度時にマンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
[2]前記中間締めリングの体積は、心棒とマンドレルリングとの間に形成される空間の体積に対し、常温時においてその空間の体積よりも小さく、押出時のダイス温度時においてその空間の体積よりも大きくなるように設定されている前項1に記載の押出ダイス。
[3]前記心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面およびマンドレルリングの内周面のうちの少なくとも1つの周面がマンドレルの軸線に対して傾斜するテーパー面で形成されている前項1または2に記載の押出ダイス。
[4]前記心棒の熱膨張係数(α)、マンドレルリングの熱膨張係数(α)、中間締めリングの熱膨張係数(α)は、α≦α<αなる関係を満たしている前項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
[5]前記マンドレルの軸線方向において、心棒の長さが中間締めリングの長さおよびマンドレルリングよりも短く設定されている前項1〜4のいずれかに記載の押出ダイス。
[6]前項1〜5のいずれかに記載の押出ダイスを用い、
マンドレルの軸線方向の少なくとも一部において、心棒と中間締めリングとの間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の隙間が無くなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
上記[1]に記載の発明は、心棒に中間締めリングを介してマンドレルリングを外嵌めしたマンドレルにおいて、中間締めリングが心棒およびマンドレルリングよりも熱膨張係数の大きい材料で構成されている。このため、ダイスが押出時の温度になって三者がそれぞれの熱膨張係数に基づいて膨張すると、径方向の外側をマンドレルリングによって拘束されている中間締めリングは内径が小さくなる方向にも膨張し、心棒の外径拡大と相俟って中間締めリングが心棒に対して締まる方向に変化する。また、中間締めリングの外径拡大量がマンドレルリングの内径拡大量を上回るので、マンドレルリングは中間締めリングに対して締まる方向に変化する。かかる熱膨張により、常温時に心棒と中間締めリングとの間の隙間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の隙間が無くなり、これらが接触することにより、マンドレルリングは中間締めリングを介して心棒に固定される。このように、マンドレルリングが心棒に固定された状態で押出を行うと、押出材の偏肉が抑制されて高品質の押出材を製造することができる。また、常温時には心棒と中間締めリングとの間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の少なくとも一方に隙間があるので、マンドレルリングの心棒への着脱が容易であり、マンドレルリングの交換等のメンテナンスを簡単に行える。
上記[2]に記載の発明によれば、常温時においてマンドレルリングの着脱を特に円滑に行え、かつ押出時の温度においてはマンドレルリングの高い位置安定性を得ることができる。
上記[3]に記載の発明によれば、マンドレルリングの抜け止め効果を得てマンドレルリングの位置安定性を高めることができる。
上記[4]に記載の発明によれば、マンドレルリングに対する締め付け力が高められてマンドレルリングの位置安定性を高めることができる。
上記[5]に記載の発明によれば、マンドレルの軸線方向におけるマンドレルリングの位置安定性を高め、かつ中間締めリングの熱膨張を効率良く径方向に導くことができる。
上記[6]に記載の発明によれば、押出はマンドレルリングが心棒に固定された状態で行われているので、押出材の偏肉を抑制することができる。
本発明の一実施形態である雄型を備えるポートホールダイスを示す分解斜視図である。 図1のポートホールダイスの組み付け状態を示す断面図である。 図1のポートホールにおけるマンドレルの分解状態を示す断面図である。 マンドレルにおいて隙間がある状態を示す断面図である。 マンドレルにおいて隙間がある他の状態を示す断面図である。 マンドレルにおいて隙間の無い状態を示す断面図である。 図3のマンドレルの常温時における状態を示す断面図である。 図3のマンドレルの常温時における他の状態を示す断面図である。 図3のマンドレルの常温時におけるさらに他の状態を示す断面図である。 図3のマンドレルの押出時のダイス温度における状態を示す断面図である。 マンドレルの軸線方向における好ましい寸法例を示す断面図である。 マンドレルの軸線方向における他の寸法例を示す断面図である テーパー面を有するマンドレルの常温時の状態を示す断面図である。 図8Aのマンドレルの押出時の圧力分布を示す説明図である。 テーパー面を有する他のマンドレルの常温時の状態を示す断面図である。 図9Aのマンドレルの押出時の状態を示す断面図である。 着脱自在の心棒を有するマンドレルの分解状態を示す断面図である。 図10のマンドレルの常温時の組み立て状態を示す断面図である。
図1および図2に示すポートホールダイス(10)は、中空押出材(1)の外周面を成形する雌型(11)と内周面を成形する雄型(20)とが組み合わされてなり、前記雄型(20)が本発明の押出ダイスの一実施形態である。
雌型(11)は、中央部にベアリング孔(12)を有し、ベアリング孔(12)の下流側にはリリーフ孔(13)が形成され、上流側には溶着室用凹部(14)が形成されている。
前記雄型(20)は、ダイス基盤(21)の中央から下流側にマンドレル(30)が突出し、このマンドレル(30)の周囲に押出方向に貫通する複数個のポートホール(22)を有している。隣接するポートホール(22)(22)間には、下流側に突出する前記マンドレル(30)をその基端部で支持する脚部(23)が形成されている。
図3に示すように、前記マンドレル(30)は心棒(32)、マンドレルリング(35)、中間締めリング(40)を備えている。前記マンドレル(30)において、ダイスの基盤部(21)から一体に続く台座(31)の先端側に径の小さい心棒(32)が一体に形成され、前記台座(31)と心棒(32)との直径差によりこれらの間には段部(33)が形成されている。前記心棒(32)の先端側はさらに径小となって、外周面に螺旋状のネジ溝が形成されたボルト部(34)が一体に形成されている。前記台座(31)、心棒(32)およびボルト部(34)は同軸上に形成されている。マンドレルリング(35)は、外周面に、押出材(1)の内周面を成形するベアリング部(36)が突設された環状体である。中間締めリング(40)は心棒(32)とマンドレルリング(35)との間に配置する環状体である。前記心棒(32)の外周面、中間締めリング(40)の内周面および外周面、マンドレルリング(35)の内周面はいずれもマンドレル(30)の軸線に平行である。ナット(37)は抑え部材であり、前記ボルト部(34)のネジ溝に螺合されるネジ孔(38)を有している。而して、前記心棒(32)に中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)を外嵌めして段部(33)に当接させ、ボルト部(34)にナット(37)のネジ孔(38)を螺合させると、中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)は段部(33)とナット(37)に挟まれて、軸線方向の所定位置に配置される。前記心棒(32)、中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)の材料特性および寸法については後に詳述する。
前記雌型(11)と雄型(20)とを組み合わせると、雌型(11)のベアリング孔(12)内に雄型(20)のマンドレルリング(35)のベアリング部(36)が嵌り込んでこれらの間に環状の成形用間隙(符号なし)が形成され、雌型(11)の溶着室用凹部(14)の一部が雄型(20)の端面で塞がれてポートホール(22)に連通する溶着室を形成する。そして、各ポートホール(22)に流入した押出材料は溶着室で合流し、成形用間隙から中空部(2)を有する押出材(1)として押出される。
〔心棒、中間締めリング、マンドレルリングの間の隙間〕
前記マンドレル(30)は、心棒(32)に中間締めリングを介してマンドレルリング(35)を外嵌めしたものである。そして、常温時に心棒(32)と中間締めリング(40)との間、および中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間の少なくとも一方に隙間があり、押出時のダイス温度時にマンドレル(30)の軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定されている。
本発明における「押出時のダイス温度」とは、心棒(32)、中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)が高温押出時に所定の温度となり、そのときの温度をいう。
また、心棒(32)と中間締めリング(40)との間の隙間(S)および中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間の隙間(S)の有無、および隙間(S)(S)の大きさは直径差によって定義する。即ち、任意のダイス温度(T)において、熱膨張係数から計算される心棒(32)の外径をA、マンドレルリング(35)の内径をB、中間締めリング(40)の内径をC、中間締めリング(40)の外径をDで表すとき、以下のように定義する。
図4Aに示すように、心棒(32)と中間締めリング(40)との間に隙間(S)がある状態とは、心棒(32)の外径(A)<中間締めリング(40)の内径(C)の関係を満足する状態であり、両者間にクリアランスが存在して中間締めリング(40)が心棒(32)に対して緩んでいることを意味する。また、隙間(S)の大きさは中間締めリング(40)の内径(C)と心棒(32)の外径(A)との差(C−A)であり、S=C−A>0である。図4Aは心棒(32)と中間締めリング(40)との軸合わせがなされた状態を示しており、心棒(32)の外周面と中間締めリング(40)の内周面との間の距離は周方向で一定である。しかし、軸合わせがなされていない場合は両者間の距離が周方向で変化し、例えば図4Bのように周方向の一部で両者が接触することもある。後者の場合も心棒(32)と中間締めリング(40)との間に隙間がある状態(S>0)であり、中間締めリング(40)は心棒(32)に対して緩んだ状態である。
一方、隙間(S)が無くなって心棒(32)の外周面と中間締めリング(40)の内周面とが接触している状態とは、図4Cに示すように、心棒(32)の外径(A)≧中間締めリング(40)の内径(C)の関係を満足する状態であり、S=C−A≦0である。心棒(32)の外径(A)と中間締めリング(40)の内径(C)が等しい(A=C)ときはS=0であり、両者は接触しているが締め付け力は利いていない。また、心棒(32)の外径(A)が中間締めリング(40)の内径(C)よりも大きい(A>C)ときはS<0であり、両者が接触しかつ心棒(32)に締め付けられている状態であり、その直径差(C−A)が中間締めリング(40)を内側から締め付ける力として作用し、中間締めリング(40)に周方向の引張力が付与されるので、ますます心棒(32)から外れにくくなってしっかりと固定される。
同様に、中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間に隙間(S)がある状態とは、図4Aおよび図4Bに示すように、中間締めリング(40)の外径(D)<マンドレルリング(35)の内径(B)の関係を満足する状態であり、両者間にクリアリンスが存在して緩んでいることを意味する。そして、隙間(S)の大きさは(B−D)で表され、緩んでいる状態はS=B−D>0である。また、隙間(S)が無くなって中間締めリング(40)の外周面とマンドレルリング(35)の内周面とが接触している状態とは、図4Cに示すように、中間締めリング(40)の外径(D)≧マンドレルリング(35)の内径(B)の関係を満足する状態であり、D=Bは両者が接触しているが締め付け力は利いていない状態(S=0)、D>Bはマンドレルリング(35)が中間締めリング(40)に締め付けられている状態(S<0)であり、その直径差(D−B)がマンドレルリング(35)を内側から締め付ける力として作用し、マンドレルリング(35)に周方向の引張力が付与されるので、ますます中間締めリング(40)から外れにくくなってしっかりと固定される。
そして、心棒(32)と中間締めリング(40)との間に隙間(S)が無く、かつ中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間にも隙間(S)の無い状態が、マンドレルリング(35)が中間締めリング(40)を介して心棒(32)に固定された状態である。即ち、S≦0かつS≦0を満たしているとき、マンドレルリング(35)は中間締めリング(40)を介して心棒(32)に固定され、高い位置安定性を得ることができる。
〔マンドレルの材料〕
本発明における心棒(32)の外周面、中間締めリング(40)の内周面および外周面、マンドレルリング(35)の内周面は、常温時に上述した隙間(S)(S)があり、ダイス温度が上昇して押出時のダイス温度時において三者の熱膨張によってその隙間(S)(S)が無くなるように設計する必要がある。前記隙間(S)(S)が無い状態とは、径方向において心棒(32)とマンドレルリング(35)との間が中間締めリング(40)で満たされている状態である。この状態を実現するには、中間締めリング(40)の熱膨張係数(α)が心棒(32)の熱膨張係数(α)およびマンドレルリングの熱膨張係数(α)より大きいことが条件となる。即ち、三者の熱膨張係数は、α>αかつα>αの関係となる。心棒(32)とマンドレルリング(35)の熱膨張係数の関係は限定されないが、マンドレルリング(35)に対する締め付け力を利かせて高い位置安定性を得るには、マンドレルリング(35)の熱膨張係数(α)が心棒(32)の熱膨張係数(α)のよりも小さいか、あるいは等しいことが好ましい。従って、三者の熱膨張係数の好ましい関係は、中間締めリング(α)>心棒(α)≧マンドレルリング(α)である。
また、前記マンドレルリング(35)は優れた耐摩耗性が要求されることから、超硬材料を用いることが望ましい。超硬材料としては、WC−Co等の超硬合金、高速度工具鋼、粉末高速度工具鋼、セラミックス等を例示できる。表1に、これらの超硬材料および心棒(32)の材料として用いられる工具鋼の一例およびそれらの熱膨張係数、ならびにこれらの材料よりも熱膨張係数が大きく中間締めリング(40)に適した材料の一例およびそれらの熱膨張係数を示す。なお、本発明は中間締めリング(40)の熱膨張係数(α)が心棒の熱膨張係数(α)およびマンドレルリングの熱膨張係数(α)よりも大きいという条件を満足すれば良いので、例示した材料は表1に記載した用途に限定されない。例えば、粉末高速度工具鋼の心棒(32)に超硬合金やセラミックスのマンドレルリング(35)を組み合わせ、さらに表1に例示した中間締めリング(40)を組み合わせる場合も本発明に含まれる。
Figure 0005512328
〔常温時のマンドレル〕
本発明において、マンドレル(30)は、常温(T)時にマンドレルリング(35)を心棒(32)に容易に装着または取り外すことができ、押出時には熱膨張係数差を利用してマンドレルリング(35)を心棒(32)に固定する。従って、マンドレルリング(35)を心棒(32)に容易に着脱するには、心棒(32)と中間締めリング(40)との間、中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間の少なくとも一方に隙間があることが条件となる。なお、「容易に着脱できる」とは、常温で圧力を付与することなく装着および取り外しが可能であることを意味する。
図5A〜図5Cに、マンドレル(30)が常温(T)時にとりうる3種類の態様、即ち、心棒(32)と中間締めリング(40)との間、中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間の少なくとも一方に隙間がある状態を示す。
図5Aは、心棒(32)と中間締めリング(40)との間に隙間(S)があり、かつ中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間に隙間(S)がある状態であり、心棒(32)の外径(AT1)<中間締めリング(40)の内径(CT1)、中間締めリング(40)の外径(DT1)<マンドレルリング(35)の内径(BT1)の関係を満たしている。従って、中間締めリング(40)は心棒(32)に対して容易に着脱でき、かつマンドレルリング(35)は中間締めリング(40)に容易に着脱できる。
図5Bおよび図5Cに示すように、中間締めリング(40)は心棒(32)またはマンドレルリング(35)のどちらか一方に隙間の無い状態で接触していても、他方との間に隙間があればマンドレルリング(35)を心棒(32)に容易に着脱することができる。
図5Bは、中間締めリング(40)が心棒(32)に対して隙間(S)がなく両者が接触した状態に装着され、マンドレルリング(35)と中間締めリング(40)との間には隙間(S)がある状態を示している。図5Bにおける3つの部材の寸法は、AT1≧CT1、DT1<BT1である。
図5Cは、中間締めリング(40)と心棒(32)との間に隙間(S)があり、マンドレルリング(35)と中間締めリング(40)とが隙間(S)がなく両者が接触した状態に装着された状態を示している。図5Cにおける3つの部材の寸法は、AT1<CT1、DT1≧BT1である。
なお、AT1≧CT1の関係を満足するように中間締めリング(40)を心棒(32)に外嵌めする方法、あるいはDT1≧BT1の関係を満足するようにマンドレルリング(35)を中間締めリング(40)に外嵌めする方法は限定されず、圧入または焼嵌め等により適宜行う。
〔押出時のダイス温度時のマンドレル〕
(マンドレルリングの径方向における固定〕
図6に示すように、押出時に所定のダイス温度(T)になると、心棒(32)、中間締めリング(40)、マンドレルリング(35)がそれぞれの熱膨張係数に基づいて熱膨張する。
中間締めリング(40)の熱膨張係数(α)は心棒(32)の熱膨張係数(α)よりも大きいが、中間締めリング(40)は径方向の外側を中間締めリング(40)よりも熱膨張係数の小さいマンドレルリング(35)によって拘束されているので、中間締めリング(40)は内径が小さくなる方向にも膨張し、外径が大きくなる心棒(32)と相俟って、中間締めリング(40)が締まる方向に変化する。換言すると、中間締めリング(40)を外側からマンドレルリング(35)で拘束することにより、中間締めリング(40)の膨張方向を内径が小さくなる方向に導いている。一方、中間締めリング(40)の熱膨張係数(α)はマンドレルリング(35)の熱膨張係数(α)よりも大きいので、中間締めリング(40)の外径拡大量がマンドレルリング(35)の内径拡大量を上回り、マンドレルリング(35)が中間締めリング(40)に対して締まる方向に変化する。かかる熱膨張により、常温(T)時に隙間(S)(S)があった場合は、温度上昇に伴って隙間が小さくなっていき、直径が等しくなった時点(AT2=CT2、DT2=BT2)で隙間(S)(S)が無くなり、押出時のダイス温度(T)がさらに高い場合はAT2>CT2、DT2>BT2となって、これらの直径差がマンドレルリング(35)および中間締めリング(40)を内側から締め付ける力として作用する。また、常温(T)時に隙間(S)(S)が無い場合は、押出時のダイス温度(T)において内側からの締め付け力が増大する。そして、いずれの場合も、マンドレルリング(35)は径方向に締め付けられて中間締めリング(40)を介して心棒(32)に固定される。
また、マンドレルリング(35)は中間締めリング(40)の体積膨張によってマンドレルリング(35)を固定されるので、心棒(32)の熱膨張係数(α)がマンドレルリング(35)の熱膨張係数(α)よりも小さい場合でもマンドレルリング(35)を固定することができる。
このように、マンドレルリングが心棒にしっかりと固定されてマンドレルリングの位置安定性を高めることにより、押出材の肉厚を安定させることができる。そして、押出材の寸法が安定していると、後加工後の製品品質も安定したものとなる。例えば、押出後に引抜加工を行う場合、押出材に偏肉がなく肉厚が一定であれば、引抜材の肉厚も一定になる。また、押出材の肉厚が一定であれば、引抜上がりの長さも一定になる。従って、本発明の押出ダイスを用いて製造した押出材は、押出材としての品質が優れていることはもとより、後加工用素材としても品質の優れたものとなる。
押出ダイスは、押出が終わって常温(T)に冷却されると常温(T)時の隙間(S)(S)に戻って緩みが生じるので、心棒(32)からマンドレルリング(35)、あるいはマンドレルリング(35)および中間締めリング(40)を取り外すことができる。従って、摩耗したマンドレルリングの取り外し、新しいマンドレルリングの取り付けといったメンテナンスを容易に行える。
図5A〜5Cに示した常温(T)時の3種類の態様は、いずれも、押出時のダイス温度(T)においてマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定され(図6)が、常温(T)時の隙間の位置によってそれぞれに以下のような特有の効果がある。
(図5A:S>0、S>0の場合)
中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)がそれぞれに容易に着脱できるため、これらを交換することができる。
(図5B:S≦0、S>0の場合)
中間締めリング(40)が心棒(32)に固定されているので、マンドレルリング(35)のみを交換すれ良い。また、中間締めリング(40)を予め心棒(32)に固定しておくので軸合わせの精度が良い。ひいては、偏肉が小さく寸法精度の高い押出材を押し出すことができる。さらに、マンドレルリング(35)にかかる力は中間締めリング(40)の熱膨張のみを考慮すれば良いので、図5Aの態様よりもマンドレルリング(35)の設計を単純化できる。
(図5C:S>0、S≦0の場合)
中間締めリング(40)をマンドレルリング(35)と一体で交換できる。また、中間締めリング(40)の交換が可能であるから、中間締めリング(40)が傷みやすい場合に有利である。
以上より、常温(T)時の心棒(32)の外周面(心棒の外径:AT1)、中間締めリング(40)の内周面および外周面(中間締めリングの内径:CT1、外径:DT1)、マンドレルリング(35)の内周面(マンドレルリングの内径:BT1)は、各材料の熱膨張係数に基づいて、常温(T)時において少なくとも一方の隙間(S)、(S)が有り、押出時に両方の隙間(S)(S)が無くなって両者が接触するように設定する。
なお、図4A〜4C、図5A〜5Cおよび図6は径方向の熱膨張を説明するための模式図であって、軸線方向の熱膨張は表わされていない。
(マンドレルリングの軸線方向における固定)
押出時のダイス温度(T)において、マンドレルリング(35)は中間締めリング(40)および心棒(32)によって径方向に締め付けられて固定されるが、押出中は材料の流れにより下流側への力が加わる。そこで、上記実施形態のマンドレル(30)においては、ナット(37)を取り付けることでマンドレルリング(35)の抜け落ちを確実に防ぎ、固定安定性を高めている。また、ナット(37)を取り付けて軸線方向の拘束力を加えることで、中間締めリング(40)および心棒(32)の膨張力による径方向の締め付けのみで固定する場合よりも、締め付け力を小さくすることができるので、締め付け力の増大によるマンドレルリング(35)の破損の危険性を回避できる。
また、軸線方向でマンドレルリング(35)を拘束するマンドレル(30)においては、心棒(32)、中間締めリングおよびマンドレルリング(35)の軸線方向における寸法にも常温(T)時に差を設けておき、押出時のダイス温度(T)時にマンドレルリング(35)および中間締めリング(40)をナット(37)に当接させて、マンドレルリング(35)および中間締めリング(40)をナット(37)によって確実に拘束させ、かつ中間締めリング(40)の体積膨張を径方向に確実に導くようにすることが好ましい。
図7Aは、図5Bの中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間にのみ隙間(S)のあるマンドレル(30)を例に挙げて、常温(T)における心棒(32)、中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)の軸線方向における好ましい寸法関係の例を示したものである。本図においては、中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)の長さが等しく、心棒(32)は中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)よりも短く、ボルト部(34)に螺合させたナット(37)は中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)を締め付け、心棒(32)とナット(37)との間に隙間(S)がある。そして、心棒(32)には前記隙間(S)の大きさに応じた引張力が付与され、中間締めリング(40)およびマンドレルリング(35)は軸線方向に拘束されている。
本発明においては、中間締めリング(40)の外側をマンドレルリング(35)で拘束し、中間締めリング(40)の体積膨張を径方向に導くことによってマンドレルリング(35)を固定しているので、図7Bに示すように、常温(T)時に心棒(32)が中間締めリング(40)よりも短く中間締めリング(40)が軸線方向で拘束されていない状態では、体積膨張分が軸線方向に流れて径方向の変化量が減少し、マンドレルリング(35)を固定する効果が小さくなる。また、中間締めリング(40)の熱膨張係数(α)は心棒(32)およびマンドレルリング(35)の熱膨張係数(α、α)よりも大きいが、軸線方向において確実に高い位置安定性を得るには、マンドレルリング(35)は押出時のダイス温度(T2)においても軸線方向で拘束されていなければならない。
以上より、常温(T)時における軸線方向の長さの好ましい関係は、心棒<中間締めリング≦マンドレルリングとなる。また、マンドレルリング(35)が中間締めリング(40)よりも長い場合は、中間締めリング(40)の体積膨張が軸線方向に逃げて径を拡大させる効率が小さくなるので、マンドレルリング(35)は中間締めリング(40)よりも短くならないことが好ましい。従って、中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)の長さが等しいことが好ましく、常温(T)時における軸線方向の長さの最も好ましい関係は、心棒<中間締めリング=マンドレルリングである(図7A参照)。
〔マンドレルリングに対する締め代〕
任意温度(T)におけるマンドレルリング(35)の心棒(32)に対する緩みまたは締まりの程度は、心棒(32)の外周面とマンドレルリング(35)の内周面との間に形成される空間の体積(V1)に対して中間締めリング(40)の体積(V2)が占める割合で表すことができる。ここで、V1、V2は、温度(T)および熱膨張係数(α、α、α)および常温時の寸法に基づいて計算される値である。締まりの程度を示す締め代(P)は下記(i)式で表される。
(%)=V2/V1×100 …(i)
上記(i)式において、V1>V2のときはP<100%であり、心棒(32)と中間締めリング(40)との間、および中間締めリング(40)とマンドレルリング(35)との間の少なくとも一方に隙間がある状態であり、マンドレルリング(35)が心棒(32)に対して緩んでいる状態である。中間締めリング(40)が心棒(32)、マンドレルリング(35)のどちらとも接触していない場合(図5A参照)も、どちらか一方に接触している場合(図5B、5C参照)も、締め代(P)はP<100%である。また、V1=V2のときはP=100%であり、心棒(32)、中間締めリング(40)、マンドレルリング(35)が互いに接触しているが締め付け力が利いていない状態である。V1<V2のときはP>100%であり、心棒(32)、中間締めリング(40)、マンドレルリング(35)が互いに接触しかつ締め付け力が利いている状態であり、Pが大きくなるほど締め付け力が強くなる。
従って、常温(T)時はV1T1>V2T1であり締め代(PT1)は100%よりも小さい。また、常温(T)時にマンドレルリング(35)の着脱を円滑に行うのに適した締め代(PT1)は99.5〜97.5%であり、さらに99.0〜98.0%が好ましい。また、押出時のダイス温度(T)時はV1T2 V2T2であり、締め代(PT2)はPT2≧100%である。また、マンドレルリング(35)を確実に固定し、高い位置安定性を得るにはV1T2 V2T2でPT2>100%が好ましい。前記締め代(PT2)が大きくなるほど締め付け力も強くなり、マンドレルリング(35)がしっかりと固定されて外れにくくなるが、締め付け力が過度に大きくなるとマンドレルリング(35)が破損するおそれがある。また、押出時には材料流れにより押出方向の力もが加わる。これらを勘案すると、押出時の締め代(PT2)は100.5〜102.5%が好ましく、さらに101.0〜102.0%が好ましい。
〔マンドレルの他の形状〕
図1〜図7Aのマンドレル(30)は、心棒(32)の外周面、中間締めリング(40)の内周面および外周面、マンドレルリング(35)の内周面の全てがマンドレルの軸線に平行であり、常温(T)時においてこれらの間に生じる隙間(S)(S)は軸線に平行でかつ軸線方向で大きさが一定である。しかしながら、本発明は三者の周面が軸線であることにも、隙間の大きさが軸線方向で一定であることにも限定されない。また、心棒(32)が雄型(20)の基盤部(21)の台座(31)と一体に形成されていることにも限定されない。
従って、心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面、マンドレルリングの内周面のうちの少なくとも1つの周面が軸線に対して傾斜するテーパー面で形成され、あるいはテーパー面により隙間の大きさが軸線方向で変化するマンドレルも本発明に含まれる。さらに、心棒が台座に対して着脱自在となされたマンドレルも本発明に含まれる。
以下に、上記形状のマンドレルについて詳述する。なお、以下の図8A〜11において、図1〜図7Aと共通の符号は同じものを表すものとして重複する説明を省略する。
(1) 隙間の大きさが下流側に向かって狭くなるマンドレル
図8Aに示すマンドレル(50)は、常温(T)時において、心棒(32)の外周面(32a)およびマンドレルリング(35)の内周面(35a)が軸線に平行であり、中間締めリング(60)の内周面(61)および外周面(62)が下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されている。従って、心棒(32)と中間締めリング(60)との間の隙間(S)および中間締めリング(60)とマンドレルリング(35)との間の隙間(S)は、下流側に向かって狭くなり、上流側に向かって広くなっている。
前記マンドレルは、ダイス温度が上昇する過程で、最初に下流端で隙間が無くなって両者が接触し、接触する領域が上流側に拡大していく。常温(T)時における隙間(S)(S)は下流側ほど狭くなっているので、図8Bの押出時のダイス温度(T)において隙間(S)(S)が無くなった状態においては、心棒(32)の外周面(32a)と中間締めリング(60)の内周面(61)との界面および中間締めリング(60)の外周面(62)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との界面にかかる圧力場に違いが現れ、圧力は下流側ほど高く上流側ほど低くなる。そして、このような圧力分布の違いにより、押出方向とは逆向きの力(F)(F)が作用する。この逆向きの力(F)(F)は押出材料がマンドレルリング(35)および中間締めリング(60)を下流側に押す力に抗して作用するので、押出中のマンドレルリング(35)および中間締めリング(60)の下流側への動きが抑制されて抜け止め効果が得られ、ひいてはマンドレルリング(35)の位置安定性が向上する。
上記の効果は、常温(T)時において、少なくともどちらか一方の隙間(S)(S)が下流側に向かって狭くなり上流側に向かって広くなるように形成されていれば得られる。従って、図8Aおよび図8Bのマンドレル(50)の変形例として、中間締めリング(60)の内周面(61)または外周面(62)の一方のみがテーパー面であるマンドレルを挙げることができる。また、隙間(S)(S)を下流側に向かって狭くすれば上記効果が得られるので、中間締めリングの内周面および外周面を軸線に平行とし、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面のうちの一方または両方をテーパー面で形成した場合も本発明に含まれる。さらに、対向する2つの面を逆向きに傾斜させることによって隙間(S)(S)を下流側に向かって狭くすることもでき、対向する2つの面を異なる角度で同じ方向に傾斜させることによって隙間(S)(S)を下流側に向かって狭くすることもできる。
なお、図8Bは、心棒(32)と中間締めリング(60)、中間締めリング(60)とマンドレルリング(35)が上流端まで接触した状態を示しているが、本発明は必ずしもこれらが軸線方向の全域で接触することを要件としない。テーパー角度、材料の熱膨張係数、各部材の肉厚等の設定により、上流側に接触しない部分が残る場合も本発明に含まれる。軸線方向の少なくとも一部で心棒、中間締めリング、マンドレルリングが接触していれば、マンドレルリングは固定されるからである。
(2) 押出時の接触面が傾斜面であるマンドレル
押出時のダイス温度(T)において、心棒と中間締めリングとの接触面、中間締めリングとマンドレルリングの接触との接触面のうちの少なくとも一方が、マンドレルの軸線に対して下流側に向かって外向きに傾斜している場合は、押出材料の流れがマンドレルリングを下流側に押そうとしても外向きの傾斜面がその動きを阻止する方向に作用するので、マンドレルリングの抜け止め効果が得られる。
図9Aに示すマンドレル(51)は、押出時ダイス温度(T)における接触面を下流側に向かって外向きにするための常温時(T)の状態の一例を示している。心棒(32)の外周面(32a)および中間締めリング(70)の内周面(71)は軸線に平行である。また、中間締めリング(70)の外周面(72)およびマンドレルリング(75)の内周面(76)は、下流側で径が拡大する方向に傾斜し、かつ互いに平行である。図9Aのマンドレル(51)が押出時のダイス温度(T)になると、図9Bに示すように、中間締めリング(70)とマンドレルリング(75)との接触面(77)は下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面となる。
また、心棒(32)と中間締めリング(75)との接触面をテーパー面とするには、心棒(32)の外周面(32)および中間締めリング(75)の内周面(71)を下流側で径が拡大する方向に傾斜させれば良い。さらに、対向する2つの面の一方のみがテーパー面であれば、他方が軸線に平行である場合も接触面は僅かであるが傾斜する。このような場合も本発明に含まれる。
上記(1)(2)より、常温時の心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面、マンドレルリングの外周面のうちの少なくとも1つの周面をマンドレルの軸線に対して傾斜するテーパー面で形成することにより、マンドレルリングの抜け止め効果を得てマンドレルリングの位置安定性を高めることができる。
(3) 着脱自在の心棒を有するマンドレル
図10に示すマンドレル(52)は、図1に参照される雄型(20)の基盤部(21)から一体に続く台座(31)に対して着脱自在に取り付けられる心棒(80)とこの心棒(80)に外嵌めされる中間締めリング(90)およびマンドレルリング(95)とにより構成されている。
前記心棒(80)はボルト形であり、中間締めリング(90)およびマンドレルリング(95)の装着部位である本体部(82)の上流側には、心棒(80)を台座(31)に取り付けるための凸部(83)が該本体部(82)と同軸状に設けられ、下流側にはマンドレルリング(95)を抑える頭部(84)が一体に設けられている。
前記心棒(80)は、本体部(82)の外周面(82a)が下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成され、凸部(83)は本体部(82)に続く円柱形の芯合わせ部(85)と上流側の雄ねじ部(86)とにより形成されている。前記頭部(84)は本体部(82)に嵌めたマンドレルリング(95)および中間締めリング(90)を下流側から抑えるものであり、本体部(82)に続く部分に径大のフランジ(87)が形成されている。一方、台座(31)の凹部(25)は、心棒(80)の芯合わせ部(85)に対応する芯合わせ部(26)と雄ねじ部(86)に対応する雌ねじ部(27)とにより形成されている。
前記中間締めリング(90)の内周面(91)および外周面(92)、マンドレルリング(95)の内周面(96)は、それぞれ下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されている。
そして、図11に示すように、常温(T)において前記マンドレル(52)の組み立てを行い、心棒(80)の凸部(83)側から中間締めリング(90)およびマンドレルリング(95)を嵌め、凸部(83)を台座(31)に取り付けると、本体部(82)に外嵌めされた中間締めリング(90)およびマンドレルリング(95)は台座(31)の先端面と心棒(80)の頭部(84)との間に挟まれて軸線方向の所定位置に配置される。心棒(80)の本体部(82)と中間締めリング(90)との間、中間締めリング(90)とマンドレルリング(95)との間には、それぞれ、軸線に対して傾斜する隙間(S)(S)が形成される。
上記のような心棒(80)を着脱自在に取り付ける構造においては、心棒(80)の交換が可能であり、かつメンテナンスをさらに簡単に行える。また、中間締めリング(90)およびマンドレルリング(95)を心棒(80)の上流側から嵌めることができるので、これらの周面(82a)(91)(92)(96)を下流側に向かって外向きに傾斜させる場合にそのテーパー角度の設計の自由度が高い。このため、台座(31)と一体に形成されて、下流側から中間締めリングおよびマンドレルリングを嵌める心棒では組み立てが不可能なテーパー角度の設定も可能となる。また、中間締めリング(80)およびマンドレルリング(95)に付与する軸線方向の締め付け力は、組み立て時に心棒(80)の雄ねじ部(86)と台座(31)の雌ねじ部(27)の締め具合で調節することができる。さらに、着脱自在の心棒においても、図1等のマンドレルのように頭部(ナット)が心棒から外れるようにすれば、心棒の上流側、下流側のどちらからでも中間締めリングおよびマンドレルリングを嵌めることができるので、さらにマンドレル設計の自由度が高くなる。
本発明の押出ダイスは、閉じられた中空部を有する中空材の押出のみならず、中空部の一部が開口した半中空材の押出にも適用することができる。
また、本発明の押出ダイスを用いて成形する材料は金属である限り何ら限定されず、アルミニウム、銅、鉄およびこれらの合金を例示できる。
本発明の押出ダイスは、中空部または半中空部を有する各種押出材の製造に利用できる。
1…押出材
10…ポートホールダイス
11…雌型
20…雄型(押出ダイス)
30、50、51、52…マンドレル
31…台座
32、80…心棒
32a…外周面
33…段部
34…ボルト部
35、75…マンドレルリング
35a、76、96…内周面
36…ベアリング部
37…ナット(抑え部材)
40、60、70…中間締めリング
61、71…内周面
62、72…外周面
82…心棒の本体部
82…外周面
、S…隙間

Claims (5)

  1. 押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に中間締めリングを介して外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
    前記中間締めリングは、心棒およびマンドレルリングよりも熱膨張係数の大きい材料で構成され、
    前記心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面およびマンドレルリングの内周面が、前記心棒に中間締めリングを介してマンドレルリングを外嵌めした状態において、常温時に心棒と中間締めリングとの間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の少なくとも一方に隙間があり、押出時のダイス温度時にマンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定され、さらに前記中間締めリングの体積は、心棒とマンドレルリングとの間に形成される空間の体積に対し、常温時においてその空間の体積よりも小さく、押出時のダイス温度時においてその空間の体積よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
  2. 前記心棒の外周面、中間締めリングの内周面、中間締めリングの外周面およびマンドレルリングの内周面のうちの少なくとも1つの周面がマンドレルの軸線に対して傾斜するテーパー面で形成されている請求項に記載の押出ダイス。
  3. 前記心棒の熱膨張係数(α)、マンドレルリングの熱膨張係数(α)、中間締めリングの熱膨張係数(α)は、α≦α<αなる関係を満たしている請求項1または2に記載の押出ダイス。
  4. 前記マンドレルの軸線方向において、心棒の長さが中間締めリングの長さおよびマンドレルリングよりも短く設定されている請求項1〜のいずれかに記載の押出ダイス。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の押出ダイスを用い、
    マンドレルの軸線方向の少なくとも一部において、心棒と中間締めリングとの間および中間締めリングとマンドレルリングとの間の隙間が無くなり、前記中間締めリングの体積が心棒とマンドレルリングとの間に形成される空間の体積よりも大きくなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
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