JP2013108070A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる便器部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、有機系難燃剤(B)2〜40重量部、および成分(D)0.1〜2重量部、或いは所望によりさらに難燃助剤(C)0.1〜20重量部を、含有する熱可塑性樹脂組成物であって、成分(D)が以下の条件を満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる便器部品など。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。
【選択図】なし
Description
本明細書において、「便器部品」とは、便座、便蓋、温水を吐出し局部を洗浄する洗浄ノズル、温水洗浄装置の本体ケース、水タンク等の便器周り一般に用いられる部品を言う。
しかし、一般的なポリプロピレン系樹脂では、ABS樹脂のような剛性や光沢等の物性、手触り肌触り感、耐傷付き特性、尿便や洗剤に起因する変色を抑制する耐変色性等において、充分満足できるものでなく、それらの改良が強く望まれていた。
例えば、上記特許文献1では、ポリプロピレン樹脂100重量部に、ヒンダードアミン系安定剤0.01〜1重量部および芳香族燐系酸化防止剤0.01〜1重量部を配合することにより、尿便、洗剤等による変色が抑制され、手触り肌触り感に優れ、剛性、耐熱老化性も良好で、且つ耐洗剤性に優れるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2では、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、ヒドロキシルアミン系化合物0.01〜1重量部およびヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1重量部を配合することにより、尿による成形体の変色が無く、加工時の焼けが少ないポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献3では、ポリプロピレン樹脂と、極性基を有するシリコーンオイルと、前記極性基を有するシリコーンオイルと前記ポリプロピレン樹脂との相溶性を向上させる相溶化剤と、を含み、前記極性基を有するシリコーンオイルが前記ポリプロピレン樹脂に分散していることを特徴とすることにより、優れた防汚性を有する防汚性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4では、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料0.2〜10重量部、分子量1500以上のヒンダードアミン系化合物0.02〜2重量部を有し、かつフェノール系酸化防止剤0.02重量部以下であることを特徴とすることにより、耐尿変色性、耐熱性及び耐候性に優れ、便座シートや便蓋等の材料に適した耐尿変色性樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献5では、アイソタクチックペンダット分率が96%以上の高結晶性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、核剤を0.01〜1重量部配合し、樹脂組成物が特定のメルトフローレート(MFR)とメモリーエフェクト(ME)とを有し、かつ結晶化温度が125〜136℃であることにより、便座部品の反り特性、尿便、洗剤等による変色が十分に抑制され、手触り肌触り感や反り特性及び剛性に優れ、耐熱老化性や耐洗剤性も良好である便座部品用ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
ところが、難燃剤の分解ガス等の要因により、シルバーストリーク発生などの成形不良の他、焼けによる成形品表面の外観不良発生などの問題点があり、これらの難燃性ポリプロピレン系樹脂の問題点を解決する試みとして、様々な手法が提案されている(例えば、特許文献6〜9参照。)。
また、特許文献7では、特定の高結晶性プロピレン系重合体I(A)100重量部に対して、MFRが1〜20g/10分、Q値が7以上、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比(Mz/Mw)が5以上であるプロピレン系重合体II(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部、シリコーンオイル(E)を0.01〜0.5重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適なポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献8では、特定の結晶性ポリプロピレン(A)100重量部に対して、MFRが0.01〜100g/10分、Q値が3.5〜10.5、分子量(M)が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満、昇温溶出分別(TREF)において40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下、アイソタクチックトライアッド分率(mm)が95%以上、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が6.0以上であるプロピレン系重合体(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適な結晶性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
またさらに、特許文献9では、特定の結晶性ポリプロピレン(A)100重量部に対して、25℃でp−キシレンに不溶となる特定の成分(α)と25℃でp−キシレンに溶解する特定の成分(β)とから構成され、且つ、特定の物性を有するプロピレン系重合体(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適な結晶性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、これらの従来技術による配合処方では、有機系難燃剤、例えば、ハロゲン系難燃剤を用いた際には、性能的に未だ十分でなく、例えば、エルカ酸アマイドのような脂肪酸アミド系滑剤とハロゲン系(臭素系)難燃剤との併用により、激しく褐色の変色を生じる場合があり、そのため、変色の不具合を起こさず、尿便、洗剤等による汚れ・劣化が抑制され、手触り肌触り感に優れ、また、耐傷付き特性を付与したポリプロピレン系樹脂組成物などの熱可塑性樹脂組成物が強く望まれている。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、有機系難燃剤(B)が臭素系難燃剤であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、成分(D)は、分子量が350〜2000の脂肪酸エステルであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明に係る射出成型用熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする便器部品が提供される。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる便器部品について、項目毎に詳細に説明する。
1.熱可塑性樹脂(A)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、本発明の目的とする効果を奏するものであれば、特に制限されず、種々の熱可塑性樹脂を使用することができるが、オレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましく、中でもプロピレン単独重合体、及び/又はプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとのブロック共重合体またはランダム共重合体(以下、本明細書においては単に、「プロピレン−α−オレフィン共重合体」と称することがある。)が好ましい。また、これらの混合物であってもよい。
好ましく用いられるプロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンとプロピレンを除く炭素数2〜8のα−オレフィンをコモノマーとする共重合体、プロピレン含量が70〜99重量%(すなわちコモノマー含量が1〜30重量%)であり、更に好ましくはプロピレン含量が90重量%以上のプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体である。また、α−オレフィンの異なるランダム共重合体またはブロック共重合体の混合物であってもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的に、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ペンテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体のような二元共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体のような三元共重合体などが挙げられ、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体などが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン単量体の含有量は、通常は、0.01〜30重量%程度、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%程度含むことができる。
なお、上記アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、13C−NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定される値である。例えば、日本電子社製FT−NMRの270MHzの装置が用いられる。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。ポリプロピレン系樹脂を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。また、バッチ重合法や連続重合法のいずれも用いることができ、所望により、二段及び三段等の複数段の連続重合法を用いてもよい。プロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部の重合(前段)と、この後に続く、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合(後段)の製造工程により得られる。
キルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合においては、プロピレン単独重合体部の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレンの分圧0.6〜4.2MPa、好ましくは1.0〜3.5MPa、特に好ましくは1.5〜3.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間で行う。プロピレン単独重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は7重量%以下のエチレンが共重合されていても構わない。
プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部の存在下、後段重合工程で、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.1〜1.5MPa、滞留時間は0.5〜10時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を製造し、最終的な生成物として、プロピレン−エチレンブロック共重合体を得る。エチレン・プロピレンランダム共重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
また、このようなプロピレン−エチレンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
本発明で用いられるプロピレン単独重合体の製造は、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造の、プロピレン単独重合体部の製造方法に準じて行えばよい。本発明に用いられるプロピレン単独重合体のMFRは、通常1.0〜400g/10分、好ましくは5〜200g/分、更に好ましくは10〜100g/分、より好ましくは15〜60g/分の範囲である。プロピレン単独重合体のMFRをこの様な範囲とする為には、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/プロピレンのモル比で5×10−3〜0.2の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造は、前記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造の、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の製造方法に準じて行えばよい。本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体は、MFRが1.0〜150g/10分のものが好ましく、5〜100g/分がより好ましく、10〜60g/分がさらに好ましい。プロピレン−エチレンランダム共重合体のMFRをこの様な範囲とする為には、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/(プロピレン+エチレン)モル比を、10−3〜1.5の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
本発明で用いられる有機系難燃剤(B)は、特に制限されず、ハロゲン系、リン系、窒素系などの種々の有機系難燃剤を使用することができるが、ハロゲン系難燃剤が難燃性能や入手の容易さの点で好ましく、例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物、ハロゲン化ビスフェノール系化合物、ハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物、ハロゲン化フタルイミド系化合物などの有機ハロゲン化芳香族化合物が好ましく、とりわけハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物がより好ましい。
これらのハロゲン系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤は、難燃効果が高く、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造や成形に際して、熱履歴を受けても分解することが少ないので、好ましい。
これらのハロゲン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物とハロゲン化ビスフェノール系化合物を併用してもよい。
また、ハロゲン系難燃剤と共に、リン系、窒素系などのハロゲン系難燃剤に該当しない他の有機系難燃剤を使用することもできる。
これらの有機リン系難燃剤としては、一般的に熱可塑性樹脂用、中でもポリオレフィン用の難燃剤として用いられるものであれば、いずれも用いることができる。トリメチルフォスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリペンチルフォスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリキシニエルホスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ジクレジルフェニルフォスフェート、ジメチルエチルホスフェート、トリキシニエルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニールジフェニールホスフェート等の各種置換其で変性した化合物、リン酸塩化合物、リンと窒素を含有するホスファゼン誘導体など化合物または混合物などが挙げられる。
ハロゲン系難燃剤とこれらリン系、窒素系などの各種の難燃剤を併用する場合、これらの有機系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物とハロゲン化ビスフェノール系化合物に、有機ハロゲン系難燃剤と有機リン系難燃剤を併用することもできる。特に窒素系難燃剤は、単独では難燃効果が十分に得られない場合がある。しかし、このような場合は、窒素系難燃剤をリン系難燃剤と併用することによって、窒素系難燃剤がリン系難燃剤の難燃助剤のような働きをし、十分な難燃効果が得られるようになることもあるので、これらの有機系難燃剤を併用することも、本発明の効果を得るための有効な手段の一つであるといえる。
また、ハロゲン系難燃剤を用いずに、リン系、窒素系などの他の有機系難燃剤を使用する場合、有機系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
尚、これらの有機系難燃剤(B)は、種々の製品が多くの会社から市販されており、所望の製品を入手することが可能であるので、それらを購入して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、所望により、用いられる難燃助剤(C)は、特に制限されず、種々の化合物を使用することができるが、中でも、アンチモン化合物が好ましい。アンチモン化合物に代表される難燃助剤(C)は、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤と共に、熱可塑性樹脂(A)に配合されることにより、難燃効果を増すために用いられる。
具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモンなどのハロゲン化アンチモン、三硫化アンチモン、五硫化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、酒石酸アンチモン等が代表的に挙げられる。
なお、本発明において、アンチモン化合物には、金属アンチモンが含まれるものとする。本発明で用いるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモンが好ましい。
また、これらの難燃助剤(C)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、難燃助剤(C)は、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤との組み合わせにおいて難燃効果を奏するものであり、有機系難燃剤(B)と難燃助剤(C)の合計重量に対して、好ましくは30〜60重量%の範囲で使用される。
尚、これらの難燃助剤(C)は、種々の製品が多くの会社から市販されており、所望の製品を入手することが可能であるので、それらを購入して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、用いられる成分(D)は、(i)ポリオレフィン系ワックス、(ii)アルコール類、(iii)カルボン酸類及び(iv)エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物である。
成分(D)は、融点が100℃以下であり、好ましくは90℃以下である。また、成分(D)の融点は、通常30℃以上、特に固体で取り扱う場合は、40℃以上が好ましい。
また、成分(D)は、HLB値が5以下のものである。HLB値が低いほど親油性が高く、撥水性に優れるので、耐汚染性が期待できる。そのため、HLB値の下限は、特に無く、実用としては0を超えるものであれば、好ましく使用することができる。
この他にも、所謂ワックス類と呼ばれるものとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、流動パラフィン、パラフィン系の合成ワックス、及びこれらの混合物等が知られているが、本発明においては、ポリオレフィン系ワックスと同等の効果を奏するものであれば、これらのワックス類も、同様に使用することができる。
これらのアルコール類としては、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ココナットアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
脂肪酸エステルの脂肪酸としては、オレイン酸(不飽和C18)、ステアリン酸(C18)、パルミチン酸(C16)、ミリスチン酸(C14)、ラウリン酸(C12)、エルカ酸(不飽和C22)、ベヘン酸(C22)など、分子量として26〜300程度の飽和または不飽和脂肪酸が使用可能であり、好ましくはC12以上の高級脂肪酸である。
また、脂肪酸エステルのアルコールとしては、プロピレングリコール(2価)などのアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール(2価)、グリセリン(3価)、トリメチロールプロパン(3価)、ソルビタン(4価)(またはソルビトール)、ペンタエリスリトール(4価)などが挙げられる。
また、脂肪酸エステルは、前記したように、HLB値が5以下である。HLB値が低いほど親油性が高く、撥水性に優れるので、耐汚染性が期待できる。そのため、HLB値の下限は、特に無く、実用としては0を超えるものであれば、好ましく使用することができる。脂肪酸エステル系滑剤(D)の分子量やHLB値が上記範囲であると、後述する滑剤機能、耐汚染性、耐変色性や成形体表面へのブリード効果も良好であり、好ましい。すなわち、成分(D)として、特に好ましいのは、分子量が350〜2000の脂肪酸エステルである。
また、これらの脂肪酸エステルは、単独又は2種以上の混合物として用いることができ、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸エステル以外の一般的に滑剤として使用されているような化合物を、併用することもできる。
さらに、本発明においては、成分(D)は、かかる滑剤機能に加えて、耐汚染性、耐傷つき性、耐変色性や焼け防止効果にも、大きく寄与しており、むしろ本発明においては、耐汚染性、耐傷つき性、耐変色性や焼け防止効果が一層重要である。即ち、これらの成分は、熱可塑性樹脂組成物の成形品において、徐々に成形品表面にブリードし、該表面に薄い皮膜を形成する。そのため、成形品表面に人が素手等で直接触れることなどを防止し、もって耐汚染性、耐変色性や焼け防止効果においても有効に作用するものである。
これら成分(D)として使用できる化合物は、種々の製品が多くの会社から市販されており、所望の製品を入手することが可能であるので、それらを購入して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ポリプロピレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂に、通常、用いられる任意成分である添加剤(E)を、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜配合することができる。
添加剤(E)としては、例えば、造核剤、分子量調節剤、発泡剤、顔料、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、金属不活性化剤、安定剤、抗菌剤、無機充填剤、ゴム状成分等を挙げることができる。
上記無機充填剤及びゴム状成分を単独又は併用して添加することにより、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機充填剤については1〜250重量部、好ましくは5〜200重量部の範囲で、ゴム状成分については1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部の範囲で添加することにより、得られる便器部品用に好適な熱可塑性樹脂組成物に剛性、重質感及び耐衝撃性を付与することができる。
尚、これらの添加剤(E)は、種々の製品が多くの会社から市販されているので、所望の製品を購入し、使用すればよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調製方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂(A)のパウダーまたはペレットに、直接、所定量の有機系難燃剤(B)、および成分(D)、所望により難燃助剤(C)、さらに必要に応じて用いる添加剤(E)を加える方法、ポリプロピレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂(A)のパウダー、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤、難燃助剤(C)および成分(D)、さらに必要に応じて用いる添加剤(E)を含有するマスターバッチをあらかじめ調製しておき、該マスターバッチを、ポリプロピレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂(A)のペレットに、加える方法等を挙げることができる。
混合には、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダーなどの公知の方法が適用できる。溶融混練は、例えば、溶融押出機、バンバリーミキサーなどを用い、熱可塑性樹脂(A)の融点以上の温度で溶融混練する方法であれば、特に限定されない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形等の種々の成形方法によって、成形することにより、熱可塑性樹脂成形体が得られるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品の変色も少なく、また、その加工性も良好であるという点から、射出成形用熱可塑性樹脂組成物として、好適に用いられる。成形条件としては、例えば、該成形方法が射出成形の場合、熱可塑性樹脂に関する公知の射出成形法に従い、同様に実施することができる。例えば、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂の場合、樹脂温度190〜230℃、金型温度10〜80℃、射出速度0.2〜20秒、射出圧力50〜70MPa、成形サイクル20〜200秒の条件で成形することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂成形体は、従来製品に比較して、表面外観に優れ、成形時の焼け不良発生による不良率低減が図られ、かつそれ自体充分な難燃性を有しており、また、その成形加工性も良好である。
なお、前記射出成形には、ガスアシスト射出成形法、二層(2色)射出成形法、サンドイッチ射出成形法等も含まれる。
以下の実施例及び比較例で使用した原材料の各成分の名称、物性等は、以下のとおりである。
1.熱可塑性樹脂(A)
A−1:日本ポリプロ社製、ノバテックPP BC03C(エチレン含量4.8重量%のブロック共重合体で、MFR30g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
A−2:日本ポリプロ社製、ノバテックPP MA04(ポロピレン単独重合体で、MFR40g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
A−3:日本ポリプロ社製、ノバテックPP(エチレン含量3.0重量%のブロック共重合体で、MFR120g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
A−4:日本ポリプロ社製、ノバテックPP EC9(エチレン含量5.0重量%のブロック共重合体で、MFR0.5g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
A−5:日本ポリプロ社製、エチレン含量3.0重量%のポロピレン−エチレンランダム共重合体で、MFR7.0g/10分
B−1:丸菱油化工業社製、ノンネン52{ビス[3、5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン}
B−2:アルベマール社製、SAYTEX8010[ビス(ペンタブロモフェニル)エタン]
B−3:ADEKA社製、FP2200(リン酸エステル系難燃剤)
3.難燃助剤(C)
C−1:三酸化アンチモン(鈴祐化学社製、ファイヤーカットAT3)
(1)脂肪酸エステル系滑剤とその他の滑剤
用いた脂肪酸エステル系滑剤とその他の滑剤を表1に示す。
熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂(A)として用いたポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、更に、付加的添加剤として、酸化防止剤(E−1:BASF社製、イルガノックス1010)を0.1重量部、リン系熱安定剤(E−2:BASF社製、イルガホス168)を0.1重量部それぞれ配合した。
ヘンシェルミキサーに、成分(A)のポリプロピレン系樹脂及び所定量の各成分(B)、(C)、(D)及び任意成分(E)を一括して投入し、3分間、充分に撹拌混合を行った。得られた配合組成物を、押出機(日本製鋼社製、径30mm2軸押出機)を用いて、設定温度200℃、樹脂温度200℃で溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
(1)試験片の成形
上記で得られたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(東芝社製IS100)にてシート試験片(120×120×3mmt)及び燃焼試験片(125×15×3mmt)で、樹脂温度200℃、金型冷却温度40℃の条件にて各々成形した。
以下の手順で成形時の焼け特性を評価した。
(i)成形温度が210℃の射出成形機のシリンダ内に30分滞留させる。
(ii)定常成形し、試験片を作製(1サイクル1min)する。
(iii)試験片を目視で確認する。
(判定基準)
○:変色がほとんど認められない。
△:変色がやや認められるが、実用上問題はない。
×:変色が著しく認められる。
UL−94規格に準拠して、難燃性を評価した。
以下の手順で防汚性を評価した。
(i)蒸留水140mlに汚れ成分として市販のインスタントコーヒーを0.2g溶かし、試験片上に15μl滴下する。
(ii)40℃で60分乾燥させる。
(iii)乾式ロールペーパーで5回擦り、表面状態を観察する。
(判定基準)
○:汚れが全て拭き取れる。
△:汚れが部分的に拭き取れる。
×:汚れが拭き取れない。
JIS K6768−1999に準じて、以下の手順で撥水性を評価した。
(i)試験片上に2μlの蒸留水を滴下する。
(ii)1分間放置する。
(iii)液面の角度を測定した。
液面の角度が大きい程、撥水性が良好であると、判断される。
以下の手順で耐傷付き性を評価した。
(i)ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT,INC製を用いて、5finger傷つき試験を実施した。
(ii)試験荷重0.6N、2N、3N、6N、10Nで実施し、その後の表面観察で白化が認められない最大の荷重について、読み取り評価した。
尚、以下の「ポリプロピレン単独」とは、使用したA−1〜A−5について何も添加することなく、単独で同様に試験片を作製し、評価した結果のことである。
(判定基準)
○:ポリプロピレン単独より最大荷重が大きい。
△:ポリプロピレン単独と同等である。
×:ポリプロピレン単独より最大荷重が小さい。
シート試験片をJIS K7212−Bに準拠するギアオーブンを用い、70℃で168時間加熱処理し、23℃で24時間状態調整した後、手触りでの粘着感を評価した。
(判定基準)
○:粘着感があまり感じられない。
△:やや粘着感が感じられる。
×:べたべたした粘着感が感じられる。
シート試験片を作製する際の成形不具合の有無について評価した。
○:成形不具合無し。
×:ショートショットなど成形不具合有り。
ポリプロピレン系樹脂及び各配合成分を表2に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、前記方法にて試験片を作製して、物性評価を行った。結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂及び各配合成分を表3に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、前記方法にて試験片を作製して、物性評価を行った。結果を表3に示す。
(1)実施例1〜18:
実施例1〜18の評価結果(表2)から、成分(D)として脂肪酸エステルを使用すると、ポリプロピレン単独の場合と比較して、燃焼性(難燃性)・防汚性・撥水性・耐傷付き性で改良効果があることが確認できる。
(2)比較例1〜9:
比較例1〜9の評価結果(表3)から、特に、エルカ酸アマイド(エルカ酸アミド)を用いた比較例3は、燃焼性(難燃性)・防汚性・耐傷付き性・撥水性で改良効果があるが、成形時に変色を生じることが確認できる。これは、エルカ酸アミドのアミド基と難燃剤のハロゲンとの間で、酸化反応が生じ、エルカ酸アミド及び難燃剤が変色したと、考察できる。これに対し、酸化反応を起こし難い脂肪酸エステルでは、成形時の変色を生じることなく、燃焼性(難燃性)・防汚性・耐傷付き性・撥水性で改良効果があることが確認できる。
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、有機系難燃剤(B)2〜40重量部、および成分(D)0.1〜2重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
成分(D)が以下の条件を満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。 - 有機系難燃剤(B)がハロゲン系難燃剤であり、かつ、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、難燃助剤(C)0.1〜20重量部を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 有機系難燃剤(B)が臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 難燃助剤(C)がアンチモン化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1.0〜150g/10分であり、且つプロピレン以外のα−オレフィン含量が1〜30重量%のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体またはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 成分(D)は、分子量が350〜2000の脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形用熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項8に記載の射出成型用熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする便器部品。
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