JP7090221B2 - 便座 - Google Patents

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Description

本発明は、撥液性に優れ、表面に汚れが付着しにくい便座に関するものである。
従来、掃除の労力軽減を目的として、製品表面に防汚性を付与する取り組みが行われている。家電製品等に広く使用されている樹脂成形体に対しても、表面コーティングやベース樹脂への添加剤の練り込み等による防汚性付与が試みられている。
防汚性のひとつの指標として、成形体表面における液滴との接触角がある。
接触角とは、図1(a)に記す通り、成形体1表面に液滴2が付着した状態において、成形体1の接触面と液滴2の界面とがつくる角度である。
接触角が0度に近づくほど成形体1の表面と液滴2がなじみやすく、180度に近づくほど、成形体1の表面に付着しにくくなる。
また、別の指標として、転落角がある。転落角とは、図1(b)に記す通り、液滴2が載った成形体1を、水平な位置から除々に傾斜させていき、液滴2が成形体1の表面を滑り始める角度のことである。
転落角が0度に近づくほど、液滴2は、成形体1表面から除去されやすくなり、転落角が90度に近づくほど、液滴2は、成形体1表面から離れにくくなる。
表面コーティングは、防汚性向上のための一手段であり、成形体の成形後に、後工程で成形体表面に、撥水性、すなわち水接触角を向上させるようなシリコーンやフッ素化合物等を含有するコーティング剤を塗装し、乾燥硬化を行って防汚性を付与する。必要に応じてプライマーやトップコート等も含めて二度塗り、三度塗りを行い、防汚性を付与する。
この方法では、成形体表面がコーティング剤によって防汚性物質で覆われるので、防汚効果が発現するが、工程・コストの増大、また成形体の材料によっては、成形体表面との密着性が低く、成形体表面からコーティング膜が剥離しやすい等という課題がある。
一方、成形体のベース樹脂への添加剤の練り込みは、撥水性を向上させるような防汚性化合物をあらかじめ他の添加剤とともにベース樹脂に練り込んでペレット化し、そのペレットを用いて成形することにより、成形と同時に防汚性が付与された部材を得ることができる。
従来より、成形体のベース樹脂への添加剤の練り込みの技術としては、ポリプロピレン系樹脂に、シリコーングラフトポリプロピレンと、シリコーンオイルとを含んだ樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物を用いた成形体は、撥水性が高く、成形体表面に汚れが付着しても容易に除去できる(例えば、特許文献1参照)。
また、ベース樹脂に滑剤を混入した樹脂成形体により便座を構成することが提案されている。便座を構成する樹脂成形体表面のすべりを良くすることにより、成形体表面に傷がつきにくく、汚れが付着しても容易に除去でき、掃除を簡単に行なうことができる(例えば、特許文献2参照)。
特開2012-214677号公報 特開2000-189345号公報
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂を用いて成形した成形体は、特に、汚れが付着しても容易に汚れを除くことができるが、成形体表面への汚れの付着自体を抑制するものではない。
また、特許文献2に記載の便座は、擬似汚物の拭取り性は向上するが、液滴汚れの付着を抑制するものではない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、汚れが付着しにくく、防汚性の改善を図ることを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明の便座は下部便座ケーシングおよび上部便座ケーシングから構成され、
前記下部便座ケーシングは、ベース樹脂と、ベース樹脂の融点より融点が低く、かつ常温で固体の滑剤とを含有する成形体であって、表面粗さSaが300nm以下であり、かつ表面における液滴の転落角が90°以下である成形体から構成されており、
前記滑剤は、化水素系ワックスおよび脂肪酸アミド系滑剤からなる群から選択される少なくとも1つの滑剤であって、
前記上部便座ケーシングは、ベース樹脂から構成される成形体であって、滑剤を含まない成形体から構成されており、
両面テープによりヒータが前記上部便座ケーシングの裏面に接着されており、かつ
前記下部便座ケーシングに含有されるベース樹脂がポリプロピレンである
本発明の便座では、液滴が表面を滑落し、液滴汚れ等が付着しにくい。また、汚れが付着した場合でも容易に拭取ることができる。したがって、防汚性に非常に優れている
(a)接触角の説明図、(b)転落角の説明図 本発明の実施の形態1における液滴付着評価装置の斜視図 同液滴付着評価装置の上面図 同付着液体を示した図 同落錘試験の断面模式図 同液滴付着評価の一例を説明する図 本発明の実施の形態2におけるトイレ装置および部材を示す斜視図 同トイレ装置の本体、本体ケースを示す平面図 同便座の断面図
第1の発明の便座は、下部便座ケーシングおよび上部便座ケーシングから構成され、
前記下部便座ケーシングは、ベース樹脂と、ベース樹脂の融点より融点が低く、かつ常温で固体の滑剤とを含有する成形体であって、表面粗さSaが300nm以下であり、かつ表面における液滴の転落角が90°以下である成形体から構成されており、
前記滑剤は、化水素系ワックスおよび脂肪酸アミド系滑剤からなる群から選択される少なくとも1つの滑剤であって、
前記上部便座ケーシングは、ベース樹脂から構成される成形体であって、滑剤を含まない成形体から構成されており、
両面テープによりヒータが前記上部便座ケーシングの裏面に接着されており、かつ
前記下部便座ケーシングに含有されるベース樹脂がポリプロピレンである
ベース樹脂の融点より滑剤の融点が低いことにより、成形時に、ベース樹脂が先に固まり、滑剤は流動性を保ちながら射出圧により押出されるので、表面に移動しやすくなる。したがって、成形体表面に滑剤が分布しやすく、滑剤の効果を発現しやすくなる。
また、表面平滑性が向上し、液滴の滑り性に優れる可能性がある。表面平滑性が向上す
る理由としては、ベース樹脂より融点が低い方が液状の状態をより長く保ち、表面張力により表面積が小さくなるために、ベース樹脂表面に平滑な層ができる。平滑性が向上すると、液滴が表面を転落する際の抵抗が少なく、滑落性が向上するためである。また、表面平滑性が向上すると、表面の微細な凹凸内に汚れが溜まりにくくなり、汚れの除去性も向上する。
さらに、常温で固体である滑剤を用いている。常温付近で液状であると、成形体表面に浮き出た液状の滑剤が、拭取り操作や流水清掃等を行う際に、拭取られる、もしくは流出し、含有量が減少しやすく、撥水性能が低下しやすい懸念がある。
したがって、常温で固体の滑剤を用いることにより、表面に接触した汚れが滑落しやすい、すなわち汚れが付着しにくい。また、汚れが残留した場合でも、表面滑り性に優れることから、汚れを拭取りやすい。
第2の発明の便座では、前記転落角が45°以下である。
転落角は小さいほど液滴滑落性に優れるため、特に優れた防汚性を得ることができる。また、滑り性が高くなることから拭き掃除等による表面の磨耗が抑制され、傷つきにくく、耐久性のある便座を得ることができる。
第3の発明の便座は、前記上部便座ケーシングおよび前記下部便座ケーシングの間に断熱材をさらに具備している
滑剤を用いることにより、液滴滑落性に優れた成形体を得ることができる。
滑剤の融点は、好ましくは140℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。融点が高いと、滑剤がベース樹脂表面に移動する前に固まり、滑剤の表面への有効な露出、あるいは平滑性に劣る。
滑剤の添加量は、好ましくは0.1~10重量部、さらに好ましくは1~5重量部である。
添加量が少ないと、潤滑性向上効果が小さく、多すぎると、強度低下が生じる。
表面自由エネルギーが低い-CH3基や-CH2-基を有する滑剤がベース樹脂表面に存在する。したがって、撥水性や滑落性に優れることから、汚染物の付着抑制や、付着した場合の拭取り性向上効果が付与できる。また、酸やアルカリに弱い官能基が少ないことから耐薬品性にも優れる。
特に、滑剤が炭化水素系添加剤を含み、樹脂がポリプロピレンの場合は相溶性がよいため、表面に滑剤が分布しやすいだけでなく、内部にも分散しやすいことから、表面が摩耗等によって削られたばあいでも、内部にも滑剤がとどまりやすく耐久性にも優れる
また、耐薬品性に優れた汎用樹脂であるため、洗剤や薬剤に触れるような部位でも耐久性に優れる。
の発明の便座では、前記成形体が無機添加剤を含有している。
例えば、滑剤等を含有したことにより樹脂の強度が低下した場合でも、ガラス繊維やタルク等の無機添加剤を添加して強度維持、もしくは向上を図ることが可能となる。
の発明の便座では、前記成形体が抗菌剤を含有している。
液滴汚れが付着しにくい成形体であるため、汚れに由来する雑菌等も繁殖しにくいが、抗菌剤を含有することにより、さらに成形体表面の防汚性、抗菌性、清潔性を向上することができる。
特に、尿汚れがつきやすい便座裏面では、液滴付着抑制効果による掃除回数低減等が見込める。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態に開示の成形体1は、防汚性を求められる製品や部品、構造体等に使用されることを想定しているが、これに限定されるものではない。
成形体1の基材の材質としては、成形体1が耐久的に形状を維持できるものであればよく、特に指定するものではない。成形体1として、求められる外観品位、機械物性、撥水性、耐久性、機能性、透明性、コスト等を考慮して適宜選択できる。
成形体1の基材の材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルフォン、ポリアミドイミドなどから適宜選択して用いることができ、特に指定するものではない。
また、ポリプロピレンとして、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー等が使用できるが、その他樹脂との共重合体を使用する、あるいはエチレン-プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等のエラストマーを配合した材料を用いることもできる。
また、複数の種類の樹脂が混合されたものを用いてもよい。
また、求められる機械特性や熱特性、撥液性等を付与するために、無機や有機、それらの混合物からなる添加剤を含有していてもよい。
添加剤として、例えば、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、フィラー、補強材、繊維、顔料、ゴム成分、撥水剤、摺動性向上剤、オイルなどを含有してもよく、それらを複数種含有してもよい。
滑剤を含有する場合、滑剤は、特に指定するものではない。滑剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の炭化水素系やオレフィン系の滑剤やワックス、またそれらの一部を酸化等の変性処理を行ったもの、あるいはステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪酸アミド系、あるいはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属せっけん系滑剤、ブチルステアレート、グリセリンモノアセテート等のエステル系滑剤等があるが、これに限定されるものではない。例えば、ノフアロイ(登録商標)、ハイワックス(商標)等を用いてもよい。また、複数種用いてもよい。
また、ポリプロピレン中にオレフィン系添加剤が含有されている場合の確認方法としては、例えば、DSCやTG-DTA、GC/MS、NMR、IR、GPC等を用いることが可能であるが、これに限定するものではない。
さらに、シリコーンオイルやシリコーン樹脂等のシリコーン系、フッ素系、オレフィン系等の撥水性添加剤を含有することも可能である。
また、添加剤の分散性や性能向上のため、例えばパラフィン等をあらかじめ適した樹脂に分散、もしくは結合させた滑剤を用いてもよい。このとき、樹脂は、複数の種類や重合体等でもよい。
また、ガラス繊維やタルク等の無機物を添加することにより、強度向上を図ることも可能である。また、炭酸カルシウムや酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、マイカ、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、リン酸カルシウム、ガラスバルーン等の充填材、顔料、あるいは難燃剤等を用いることも可能である。
さらに、抗菌剤を含有させてもよい。抗菌剤として、Ag系、Zn系、Cu系等の1種あるいは複数種、あるいは、それらをシリカ、アルミナ、ゼオライト、リン酸塩、ケイ酸塩等の担体に担持させたもの、あるいは、有機系抗菌剤、天然有機系抗菌剤等があるが、特に指定するものではない。
成形体1は、射出成形、押出し成形、ブロー成形、圧縮成形等で作製されるが、製法を指定するものではない。
例えば、射出成形は、加熱したシリンダー内で材料を溶融し、溶融した材料を金型に射出・圧入し、冷却後、成形品を得るものである。
射出成形に用いる材料、すなわちベース樹脂、滑剤やその他添加剤、他の樹脂材、ゴム材等の材料は、あらかじめ混合、あるいは二軸混錬機等により混錬して、材料をできるだけ均質化、ペレット化しておくことが望ましい。
本実施の形態では、ポリプロピレンをベース樹脂として用いており、MFRが3~70g/minのポリプロピレンを用いている。
また、上記のような成形体は、洗濯機、エアコン、冷蔵庫、炊飯器ジャーポット、ミキサー、便座や本体ケース等のトイレ用部品等の家電製品の筐体や部品、あるいは浴室の床や壁、天井、浴槽等、あるいはポータブルトイレや子供用トイレ、さらには自動車のバンパー等、これらに限らず防汚を目的とする製品や部品に使用することができる。
(実施例)
以下に、本実施の形態をより具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
まず、ベース樹脂としてポリプロピレン、添加剤として滑剤、酸化防止剤や補強材、ゴム材、その他添加剤等を二軸混錬機で混錬・ペレット化後、射出成形機にて成形し、各例の成形体1を得た。ポリプロピレンの融点は、約160℃であった。
このとき、すでにマスターバッチ化されている添加剤や、混錬しない方がよい樹脂や添加剤などは、二軸混錬せずに、成形までの間に混合すればよく、特に指定するものではない。
また、滑剤に用いた添加剤の融点が樹脂より低いため、二軸混錬機を用いる場合、スクリュー部への滑剤投入温度は、スクリューの練り部の温度よりも低い方が望ましい。
次に、成形体1の表面における撥液性の評価方法を以下に示す。
撥液性の代表的な指標として、5μLもしくは20μLの蒸留水の接触角および転落角を選定した。接触角および転落角の計測には、協和界面科学株式会社の接触角計DM-501型を用いた。転落角については、基材表面を垂直にしても液滴が転落しない場合は、>90°と表記した。
実施例で用いたサンプルの表面粗さSaは、レーザー顕微鏡を用いて評価したところ、いずれもaは1.0μm以下、あるいは0.5μm以下であった。
また、液滴付着評価は、以下の通り行った。
図2、図3に示すように、トイレを模した評価装置3を作製し、黒く着色し、表面張力を調整した水を噴射部品4から便器内側に一定速度で噴射し、便器内側にあたって跳ね返って便座5の裏面に付着した液滴(図4に一例を示す)の面積を評価した。付着液滴6は乾燥後、二値化して面積を算出し、定量比較した。液滴が付着しにくいほど面積は小さくなる。
このとき、便座裏面の半分側に比較例1に記載のポリプロピレン樹脂の平板を添付し、線対称となる位置に実施例記載の平板を添付し、比較例記載の平板に対して実施例記載の
平板に付着した液滴の面積比を評価した。
また、機械強度を簡易的に評価すべく、図5に示すように落錘試験を行った。平板状の成形体7をリング状の台8上に静置し、規定した高さから500gのおもり9を筒状ガイド10内を垂直落下させ、成形体7の割れが発生する落下高さを評価した。割れが発生する高さが高いほど、強度が強いことを示す。なお、成形体7上には、クッション材11をおいておもりの落下衝撃を和らげて行っている。
さらに、参考として、一部サンプルの成形体7については、引張試験、曲げ試験、シャルピー衝撃試験の機械強度評価を行った。機械強度評価は、試験環境約23℃で行い、引張試験は、JIS K7161を参考に、試験速度50mm/min、チャック間距離115mmで行った。曲げ試験は、JIS K7171を参考に、試験速度2mm/min、支点間距離64mで行った。シャルピー衝撃試験は、JIS K7111を参考に、ノッチタイプAで行った。
また、拭取り性評価は、以下の通り行った。
汚れの作製は、便と組成が一部似ているコーヒーを用いた。0.2%に希釈したインスタントコーヒーを滴下し、40℃で60分加熱乾燥後、乾いた布雑巾に約1kgの荷重をかけて5往復させて拭き取り、拭取ったあとの汚れ残りを目視で確認した。
(実施例1)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007090221000001
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤3部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLで行ったところ、109°/40°であり、20μLで行ったところ、107°/19°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性は、良好であった。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、120cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
(実施例2)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤1部、タルク5部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLで行ったところ、104°/73°であり、20μLで行ったところ、103°/29°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性は、良好であった。また、表面粗さを測定したところ39nmであった。比較例
1の平板と比較して表面粗さは小さくなっており、融点の低い添加剤を添加したことにより平滑性が向上したためであると考えられる。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、150cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
(実施例3)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤2部、タルク5部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLで行ったところ、109°/47°であり、20μLで行ったところ、107°/21°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性は、良好であった。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、140cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
実施例3の成形体は、実施例2の成形体と比較して、滑剤の添加量を増加させたことにより、接触角、転落角が向上している。
(実施例4)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤3部、タルク5部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLでは110°/41°であり、20μLでは105°/18°であった。また、汚れの拭取り性評価については、拭取り性は、良好であった。
また、表面粗さを測定したところ51nmであった。比較例1と比較して表面粗さは小さくなっている。
さらに、液滴付着評価を行った結果、比較例1の平板と比較して、実施例4に記載の平板では、付着面積は1/2以下であった。結果の一部を図6に示す。中心より左側が比較例1、右側が実施例4に記載の平板である。右側の方が付着量が少ないことがわかる。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、140cm以上の高さから錘を落としたとき平板状の成形体に割れが生じた。
さらに、参考評価として、引張強度は35MPa、曲げ強さは49MPa、曲げ弾性率は2070MPa、シャルピー衝撃試験は3.1kJ/m2であった。
実施例4の成形体は、実施例2の成形体と比較して、滑剤の添加量を増加させたことにより、接触角、転落角が向上している。
また、実施例4の成形体は、比較例の成形体と比較すると、転落角が向上していることから、液滴の付着抑制機能が向上している。
また、実施例4の成形体は、実施例1の成形体と比較して、タルクを配合することによ
り、機械強度が向上している。
(実施例5)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤5部、タルク5部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLで行ったところ、107°/42°であり、20μLで行ったところ、105°/18°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性は、良好であった。また、表面粗さを測定したところ79nmであった。滑剤の添加量が少ない実施例2、4と比較すると、大きくなっている。表面をレーザー顕微鏡を用いて観察したところ多数のポアのようなものが見られた。これは融点の低い滑剤が気化したためであると考えられ、添加量が増加したことでより多数のポアが発生したことで表面粗さが大きくなったと考えられる。
さらに、液滴残留性評価を行ったところ、比較例1の平板と比較して、実施例5の平板の付着面積は1/2以下であった。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、130cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
実施例5の成形体は、実施例4の成形体と比較して、滑剤の添加量を増大させているにもかかわらず、性能はほぼ同じであった。滑剤量がほぼ飽和していると考えられる。
(実施例6)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料として、ポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤8部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLで行ったところ、108°/45°であり、20μLで行ったところ、107°/21°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性は、良好であった。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、130cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
実施例6の成形体は、実施例5の成形体よりも滑剤の量を増大させている。滑剤の量を増大させると、転落角が悪化することがわかる。実施例6の成形体を作製した金型を確認したところ、滑剤が金型に付着していた。これは、過剰な滑剤が表面に偏在・析出したためと考えられる。過剰な滑剤により、成形体の表面粗さが大きくなり、液滴の滑り性が悪化したと考えられる。表面粗さを測定したところ183nmであった。表面をレーザー顕微鏡で観察したところ、実施例5と同様に多数のポアが確認され、過剰な滑剤が気化し、表面粗さを大きくしていると考えられる。実施例2、4、5、6および比較例1の結果から滑剤の添加により表面粗さは減少するが、過剰な添加は表面粗さの増加を引き起こし、滑り性を悪化させると考えられる。
(実施例7)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤3部、タルク5部、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)からなるゴム系添加剤3部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLでは108°/42°であり、20μLでは106°/21°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性良好であった。
また、機械強度として落錘試験を行ったところ、150cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
実施例7の成形体は、ゴム系の添加剤を加えることにより、衝撃強度が向上することが確認できた。
(実施例8)
上記製造方法にて成形体7を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤3部、タルク5部、PPグラフト重合したシリコーン添加剤3部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。
水の接触角/転落角は、5μLでは106°/49°であり、20μLでは103°/23°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性良好であった。
実施例8の成形体は、シリコーン添加剤を配合しても、接触角・転落角ともに所定の性能を確保した。
(実施例9)
成形体は、ポリプロピレン樹脂100部に、融点90℃の脂肪酸アミド系の滑剤3部、タルク5部を混錬・ペレット化して成形し、平板を作製した。
水の接触角/転落角は、5μLでは101°/56°であり、20μLでは98°/24°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、拭取り性良好であった。
実施例9の成形体は、パラフィン系滑剤を用いた実施例4の成形体より低下したが、接触角・転落角ともに性能を確保した。
(比較例1)
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、タルク5部を加えて混錬・ペレット化して成形し、平板を作製した。
水の接触角/転落角は、5μLでは96°/>90°であり、20μLでは95°/>90°であった。また、表面粗さを測定したところ89nmであった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、汚れを拭き取るためには、5回以上の拭取りが必要であった。
また、機械強度評価として落錘試験を行ったところ、150cm以上の高さから錘を落としたときに平板状の成形体に割れが生じた。
比較例1の成形体は、本発明に開示の添加剤を含有していないことから、転落角を確保できなかったと考えられる。
(比較例2)
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約300℃のフッ素系樹脂の粉末5部を加えて混錬・ペレット化し、平板を作製した。
水の接触角/転落角は、5μLでは95°/>90°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、汚れを拭取るためには、5回以上の拭き取りが必要であった。
(比較例3)
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点が<0℃のシリコーン系オイル(非変性、粘度約12,500)3部を加えて混錬・ペレット化して成形し、平板を作製した。
水の接触角/転落角は、5μLでは95°/>90°であった。また、汚れの拭取り性評価を行ったところ、汚れの拭取り性は良好であった。
ただし、拭取り操作を複数回行ったのち、同様の汚れの拭取り性評価を行ったところ、汚れを拭取るためには、5回以上の拭取りが必要であった。
(比較例4)
成形体は、ベース材料としてポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の滑剤3部、タルク5部を混錬・ペレット化し、平板を成形した。また、成形後に表面にヤスリ加工を施し、表面粗さを大きくした。
水の接触角/転落角は、5μLでは124°/>90°であり、20μLでは113°/66°であった。また、表面粗さを測定したところ、330nmであった。実施例4と比較して、材料は同じであるにも関わらず、表面粗さが大きくなることで転落しなくなっており、水の転落には、表面粗さも大きく影響することを確認した。
(実施の形態2)
図7、図8に、本発明の材料を用いたトイレ装置およびその部材を示す。
図7において、12はトイレ装置、13は便座、14は本体、15は便器、16は便蓋、17は洗浄ノズル、18は操作部、また、図8において、19は本体ケースである。
実施例4に記載したものと同様の配合である。ポリプロピレン樹脂100部に、融点70℃のパラフィン系の滑剤3部、タルク5部を混錬・ペレット化した材料を用いて、トイレ装置の便座13を成形した。本実施の形態で用いたポリプロピレン樹脂には、酸化防止剤も含まれており、必要に応じて耐候剤、難燃剤、抗菌剤、その他フィラー、顔料、抗菌剤等が含まれていてもよい。
酸化防止剤には、フェノール系、リン系、硫黄系等の種類があるが、必要に応じて適宜選択すればよい。
本実施の形態の便座13は、上記構成にすることにより、トイレ装置の中でも、特に尿汚れが付着しやすい便座13の裏面が、通常使用において従来に比べて尿の付着量が約1/2になった。本実施の形態の便座13では、掃除のタイミングが従来の2倍にのび、お手入れ性が向上した。また、付着した汚れも良好に拭き取ることができ、拭取り性が良好であった。
さらに、尿汚れが付着しやすい本体ケース19に本構成の配合を適用することにより、付着抑制効果が発現しやすく、お手入れ性を向上することができる。
(便座の構成)
図9は、便座の断面図である。
図9に示すように、便座300は、上面側から、上部便座ケーシング310と、アルミニウム箔製の均熱板331にコードヒータ332を配設した便座ヒータ330と、発泡スチロール製の断熱材340と、下部便座ケーシング320を主構成部材として構成されている。
上部便座ケーシング310の材質としては、トイレ用部材が耐久的に形状を維持できる材料であればよく、特に指定するものではない。トイレ用部材として、求められる外観品位、機械物性、撥水性、耐久性、機能性、透明性、コスト等を考慮して自由に選択することができる。本実施の形態では、ポリプロピレン樹脂を用いている。
下部便座ケーシング320は、実施例1と同様に、ベース樹脂としてポリプロピレン樹脂を用い、ポリプロピレン樹脂100部に、融点約70℃のパラフィン系の摺動性添加剤3部を混錬・ペレット化し、成形したものを用いている。
下部便座ケーシング320は、融点約70℃のパラフィン系の摺動性添加剤が混練されている。パラフィン系の摺動性添加剤は、ポリプロピレン樹脂よりも融点が低いために、混練時や成型時にポリプロピレン樹脂中で分散しやすく、十分な防汚効果を発揮することができる。パラフィン系の摺動性添加剤は、樹脂組成物中での流動性が高いため、成形体表面に向かってパラフィン系の摺動性添加剤が移動する現象が生じる。そのため、成形体表面にパラフィン系の摺動性添加剤が存在する比率が高くなり、高度の防汚性および耐磨耗性を達成することができる。
上部便座ケーシング310と下部便座ケーシング320は、完成状態では、相互の内周縁と外周縁が接合され内部が中空の環状をなしている。
便座ヒータ330は、前部の一部が切り取られた略馬蹄形状のアルミニウム箔で形成された均熱板331の表面に、軟質の塩化ビニール製の絶縁被覆で覆われたコードヒータ332が間隔を設けて蛇行して配設されており、コードヒータ332で発熱した熱が均熱板331に伝導して均熱板331の全面に拡散する構成となっている。便座ヒータ330は着座面313の全面を加熱できるようにコードヒータ332が配設あり、特に着座した使用者の大腿部と臀部が快適に加熱されるように場所によって密度を変えて配設してある。
また、均熱板331の表面には図示しない温度検知手段であるサーミスタと過昇防止手段であるサーモスタット設置されており、コードヒータ332とサーミスタおよびサーモスタットはリード線で接続されている。
本実施の形態における便座ヒータ330は、上部便座ケーシング310の上面を設定温度に保温した状態に維持する。設定温度は、図示しない操作スイッチにより使用者の好みにより変更が可能であり、35℃から40℃の範囲で調整することができる。上部便座ケーシング310の上面温度を40℃までにしているのは、使用者の低温やけどを防止するためである。
便座ヒータ330は、上部便座ケーシング310に両面テープなどにより貼着される。下部便座ケーシング320は、パラフィン系の摺動性添加剤が混練されているために、両
面テープなどが剥離しやすい。便座ヒータ330は、パラフィン系の摺動性添加剤を混練していない上部便座ケーシング310に貼着するので、便座ヒータ330の剥離が抑制される。
断熱材340は、独立発泡体である発泡スチロールで一体に成形されており、略馬蹄形状をしている。断熱材340の内周と外周の形状は、上部便座ケーシング310の内周と外周の形状と略相似形に形成されており、上部便座ケーシング310および便座ヒータ330の前部および側部を覆うことができる形状となっている。
便座ヒータ330は、着座した使用者の大腿部が接触する両側部の発熱量を多くなるようにコードヒータ332を配設しており、断熱材340は、便座ヒータ330の主要部を断熱する構成となっている。断熱材340の下面と下部便座ケーシング320との間で断熱空間305が形成されている。
便座ヒータ330より輻射および対流により下方に放出された熱は、断熱材340により下方への移動が抑制される。
上部便座ケーシング310の下面に便座ヒータ330を貼着し、便座ヒータ330の下方に断熱材340を配置したことにより、便座ヒータ330の熱が下部便座ケーシング330に伝達されることが抑制される。
下部便座ケーシング320は、パラフィン系の摺動性添加剤が混練されており、下部便座ケーシング320表面にパラフィン系の摺動性添加剤が存在する比率が高い。下部便座ケーシング320のパラフィン系の摺動性添加剤は、融点、あるいは融点に近い温度になると、液状になる。液状になった状態で、使用者が下部便座ケーシング320の汚れを拭き取ると、汚れと共に液状になった摺動性添加剤も拭き取られ、防汚性が低下する虞がある。
本実施の形態では、便座ヒータ330の下方に断熱材340を配設しているので、便座ヒータ330からの下部便座ケーシング320への熱的影響は非常に小さいものとなる。
また、融点が約70℃のパラフィン系の摺動性添加剤を用いているので、断熱材340を用いない場合でも、下部便座ケーシング320は、摺動性添加剤が液状となる温度に達することがない。例えば、夏季においては、トイレ空間は、40℃に達することが想定されるが、40℃に達したとしても、融点が約70℃のパラフィン系の摺動性添加剤を用いているので、液状になることはない。
本実施の形態では、融点が約70℃の摺動性添加剤を用いたが、融点が55℃以上であれば、トイレ空間の温度が40℃に達した場合でも、液状になることはなく、使用者が汚れを拭き取っても下部便座ケーシング320表面のパラフィン系摺動性添加剤が拭き取られることはない。また、融点が約50℃の摺動性添加剤を用いてもよい。融点が約50℃であれば、トイレ空間の温度が40℃に達した場合には、摺動性添加剤の一部が液状になることが想定される。しかしながら、仮に液状になったとしても、わずかの量であるため、防汚性の低下は抑制される。
以上のように、本発明に係る成形体は、液汚れが付着しにくく、かつ拭取り清掃しやすいので、家電製品、住宅関連製品、自動車用部品、産業用機械部品、消耗材、生活用品などの用途に適用することができる。
1 成形体
2 液滴
3 評価装置
4 噴射部品
5 便座
6 付着液滴
7 成形体
8 台
9 おもり
10 筒状ガイド
11 クッション材
12 トイレ装置
13 便座
14 本体
15 便器
16 便蓋
17 洗浄ノズル
18 操作部
19 本体ケース

Claims (5)

  1. 便座であって、
    前記便座は下部便座ケーシングおよび上部便座ケーシングから構成され、
    前記下部便座ケーシングは、ベース樹脂と、ベース樹脂の融点より融点が低く、かつ常温で固体の滑剤とを含有する成形体であって、表面粗さSaが300nm以下であり、かつ表面における液滴の転落角が90°以下である成形体から構成されており、
    前記滑剤は、化水素系ワックスおよび脂肪酸アミド系滑剤からなる群から選択される少なくとも1つの滑剤であって、
    前記上部便座ケーシングは、ベース樹脂から構成される成形体であって、滑剤を含まない成形体から構成されており、
    両面テープによりヒータが前記上部便座ケーシングの裏面に接着されており、かつ
    前記下部便座ケーシングに含有されるベース樹脂がポリプロピレンである、
    便座。
  2. 前記転落角が45°以下である、
    請求項1に記載の便座。
  3. 前記上部便座ケーシングおよび前記下部便座ケーシングの間に断熱材をさらに具備している、
    請求項1または2に記載の便座。
  4. 前記成形体が無機添加剤を含有している、
    請求項1からのいずれか一項に記載の便座。
  5. 前記成形体が抗菌剤を含有している、
    請求項1からのいずれか一項に記載の便座。
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