JP2013105074A - トナーバインダーおよびトナー組成物 - Google Patents

トナーバインダーおよびトナー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 定着温度幅の広さ、光沢性、および保存安定性に優れたトナーバインダーの提供。
【解決手段】 ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有し、(A)の軟化点が120〜180℃、重量平均分子量が100000〜300000、140℃における損失正接〔tanδ(140)〕と190℃における損失正接〔tanδ(190)〕が下記式(1)を満たし、(B)の軟化点が90℃以上120℃未満、重量平均分子量が20000〜40000、100℃における損失正接〔tanδ(100)〕と140℃における損失正接〔tanδ(140)〕が下記式(2)を満たすトナーバインダー。
1.0≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦5.0 ・・・式(1)
3.0≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦15.0・・・式(2)
【選択図】 なし

Description

本発明はトナーバインダーおよびトナー組成物に関する。
複写機、プリンター等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用の電子写真用トナーバインダーは、高い定着温度でもトナーが熱ロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)や、保存安定性が要求されている。
低温定着性と耐ホットオフセット性のいずれにも優れた、ポリエステル系トナーバインダーからなるトナー組成物が知られている(特許文献1参照)。しかし、軟化温度が高いため、トナーの定着下限温度を下げることができず、低温定着性が充分ではないという課題がある。また、溶融粘度が高いため、トナーを記録媒体上に定着して得られる画像の光沢性が充分ではないという課題がある。
特開平12−75549号公報
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)、光沢性、および保存安定性のいずれにも優れたトナーバインダーおよびトナーを提供することである。
本発明者らは、定着温度幅、光沢性、および保存安定性のいずれにも優れたトナーバインダーを開発すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記2発明である。
(I) ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の軟化点が120〜150℃、重量平均分子量が100000〜300000、140℃における損失正接〔tanδ(140)〕と190℃における損失正接〔tanδ(190)〕が下記式(1)を満たし、ポリエステル樹脂(B)の軟化点が90℃以上120℃未満、重量平均分子量が20000〜40000、100℃における損失正接〔tanδ(100)〕と140℃における損失正接〔tanδ(140)〕が下記式(2)を満たすトナーバインダー。
1.0≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦5.0 ・・・式(1)
3.0≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦15.0・・・式(2)
(II) このトナーバインダー、着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる一種以上の添加剤を含有するトナー組成物。
本発明により、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)、光沢性、および保存安定性のいずれにも優れたトナーバインダー、およびトナーを提供することが可能となった。
以下、本発明を詳述する。
本発明のトナーバインダーは、ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有するポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を含有する。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)において、ポリカルボン酸成分(x)としては、ジカルボン酸、および3価以上のポリカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸)、炭素数4〜8のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、およびアジピン酸)、炭素数9〜36のアルカンジカルボン酸(例えばセバシン酸、およびドデカンジカルボン酸)、炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔例えばダイマー酸(2量化リノール酸)〕、炭素数4〜8のアルケンジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびメサコン酸)、炭素数9〜36のアルケンジカルボン酸(例えば、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
上記エステル形成性誘導体としては、酸無水物、アルキル(炭素数1〜24、好ましくは1〜4:メチル、エチル、ブチル、ステアリル等)エステル、および部分アルキル(上記と同様)エステル等が挙げられる。以下のエステル形成性誘導体についても同様である。
これらのうち好ましいものは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、およびこれらのエステル形成性誘導体である。
3価以上(好ましくは3〜6価)のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(例えばトリメリット酸、およびピロメリット酸)、炭素数6〜36の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸(例えばヘキサントリカルボン酸、およびデカントリカルボン酸)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらのエステル形成性誘導体である。
なお、ポリカルボン酸成分(x)中に、必要により、少量の炭素数7〜14の芳香族モノカルボン酸(安息香酸等)を用いてもよい。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、保存安定性および定着性の観点から、ポリカルボン酸成分(x)中に、芳香族ポリカルボン酸を90モル%以上含有するのが好ましく、さらに好ましくは91〜99.9モル%、とくに好ましくは92〜99.7モル%である。
また、(A)と(B)の少なくとも一方、好ましくは両方が、ポリカルボン酸成分(x)中に、さらに炭素数4〜8のアルカンジカルボン酸および/またはアルケンジカルボン酸を0.1〜10モル%含有するのが好ましく、好ましくは0.2〜9モル%、さらに好ましくは0.3〜8モル%である。炭素数4〜8のアルケンジカルボン酸の含有量が0.1モル%以上であると、保存安定性がより良好となり、10モル%以下であると、カラートナーに使用した場合に透明性が良好になる。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)において、ポリオール成分(y)としては、ジオールおよび3価以上のポリオールが挙げられる。
ジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、芳香族ジオールとしては、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルが挙げられる。具体例としては、2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレン〔アルキレン基の炭素数2〜4(オキシエチレン、オキシプロピレン等)、以下のポリオキシアルキレン基も同じ〕エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数2〜30〕;等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、ビスフェノールAのポリオキシアルキレンエーテルであり、さらに好ましくはビスフェノールAのポリエチレンエーテル、ビスフェノールAのポリプロピレンエーテルである。
脂肪族ジオールとしては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、および水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30)等が挙げられる。
これらのうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、分子末端に1級水酸基を有する分岐のない脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および1,10−デカンジオール等)が好ましい。
保存安定性の観点から、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールがさらに好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
3価以上(好ましくは3〜8価)のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えばショ糖およびメチルグルコシド);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);ノボラック型樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
これらのうち好ましくは、ノボラック型樹脂のポリオキシアルキレンエーテルである。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、ポリオール成分(y)中に、保存安定性の観点から、ジオールと必要により3価以上のポリオールを含有するのが好ましく、ビスフェノール類(特にビスフェノールA)のポリオキシアルキレンエーテルと、必要によりノボラック型樹脂のポリオキシアルキレンエーテルを含有するのがさらに好ましい。また、粉砕性の観点から、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルの中でも、ビスフェノール類(特にビスフェノールA)のポリオキシプロピレンエーテルを含有するのが好ましい。
これらを含有する場合、(y)中のビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルの含有量は、保存安定性の観点から、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは91〜99.95モル%である。
ビスフェノール類のポリオキシプロピレンエーテルの含有量は、粉砕性の観点から、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは72〜99.95モル%である。
また、ノボラック型樹脂のポリオキシアルキレンエーテルの含有量は、保存安定性の観点から、好ましくは0.02〜10モル%、さらに好ましくは0.05〜8モル%である。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)とを、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは170〜260℃、とくに好ましくは180〜240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2〜40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
ポリオール成分(y)とポリカルボン酸成分(x)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の軟化点〔T(1/2)〕は、120〜180℃であり、好ましくは123〜170℃、さらに好ましくは125〜160℃である。この範囲外であると、耐ホットオフセット性と低温定着性の両立が困難となる。本発明において、T(1/2)は以下の方法で測定される。
<軟化点〔T(1/2)〕>
高化式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点〔T(1/2)〕とする。
(A)の重量平均分子量〔Mw〕は、トナーの耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、100000〜300000であり、好ましくは110000〜290000、さらに好ましくは120000〜280000である。
本発明において、ポリエステル樹脂の重量平均分子量〔Mw〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) :東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例):TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
ポリエステル樹脂(A)は耐オフセット性と光沢性の両立の観点から、140℃における損失正接〔tanδ(140)〕、および190℃における損失正接〔tanδ(190)〕が、次の式(1)を満たす必要があり、式(1’)を満たすことが好ましく、式(1”)を満たすことがさらに好ましい。
1.0≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦5.0・・・式(1)
1.2≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦4.8・・・式(1’)
1.3≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦4.5・・・式(1”)
上記式(1)は、トナーとして用いた際に耐オフセット性に優れるものは、一般に光沢性が劣る傾向にあることが知られているが、(A)のtanδ(190)とtanδ(140)の比が、耐オフセット性と光沢性のバランスに重要な因子であることを見いだし、多数の実験により、最適な範囲を求めたものである。
(A)の損失正接〔tanδ〕を調整するには、例えば、〔tanδ(190)〕 / 〔tanδ(140)〕を小さくする場合、ポリエステル樹脂(A)の軟化点〔T(1/2)〕を上げる、3価以上の構成成分の比率を上げ架橋点の数を増やす、分子量を大きくする等で達成できる。
本発明において、ポリエステル樹脂の損失正接〔tanδ〕は、下記粘弾性測定装置を用いて測定される。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、好ましくは10〜50(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは15〜35である。酸価が50以下であると、トナーとして用いた時の帯電特性が低下しない。
また、(A)の水酸基価は、好ましくは0〜10(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは0〜9である。水酸基価が10以下であると、環境安定性に優れる。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料中に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置:東洋精機(株)製 ラボプラストミルMODEL4M150
混練条件:130℃、70rpmにて30分
本発明で用いるポリエステル樹脂(B)の軟化点〔T(1/2)〕は、90℃以上120℃未満であり、好ましくは95〜119℃、とくに好ましくは100〜115℃である。この範囲外であると、耐ホットオフセット性と低温定着性の両立が困難となる。
(B)の重量平均分子量〔Mw〕は、トナーの低温定着性および耐オフセット性の両立の観点から、20000〜40000であり、好ましくは21000〜39000、さらに好ましくは22000〜38000である。
ポリエステル樹脂(B)は低温定着性および耐オフセット性の両立、光沢性の観点から、100℃における損失正接〔tanδ(100)〕、および140℃における損失正接〔tanδ(140)〕が、次の式(2)を満たす必要があり、式(2’)を満たすことが好ましく、式(2”)を満たすことがさらに好ましい。
3.0≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦15.0・・・式(2)
3.2≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦14.8・・・式(2’)
3.5≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦14.5・・・式(2”)
上記式(2)は、一般にトナーとして用いた際に耐オフセット性に優れるものは、低温定着性や光沢性が劣る傾向にあることが知られているが、(B)のtanδ(140)とtanδ(100)の比が、耐オフセット性と低温定着性および光沢性とのバランスに重要な因子であることを見いだし、多数の実験により、最適な範囲を求めたものである。
(B)の損失正接〔tanδ〕を調整するには、例えば、〔tanδ(140)〕 / 〔tanδ(100)〕を小さくする場合、ポリエステル樹脂(B)の軟化点〔T(1/2)〕を上げる、3価以上の構成成分の比率を上げ架橋点の数を増やす、分子量を大きくする等で達成できる。
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、好ましくは5〜50、さらに好ましくは10〜35である。酸価が50以下であると、トナーとして用いた時の帯電特性が低下しない。
また、(B)の水酸基価は、好ましくは10〜40、さらに好ましくは12〜30である。水酸基価が10以上、または40以下であると、トナーとして用いた時の帯電特性に優れる。
本発明のトナーバインダー中のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の、(A)と(B)の合計を100としたときの重量比〔(A)/(B)〕は、トナーとして用いた時の耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスの点から、好ましくは10/90〜90/10であり、さらに好ましくは15/85〜85/15、とくに好ましくは20/80〜80/20である。
本発明のトナーバインダーは、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)以外に、その特性を損なわない範囲で、トナーバインダーとして通常用いられる他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、重量平均分子量〔Mw〕が1000〜100万のスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂にビニル樹脂がグラフトした構造を有する樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。他の樹脂は、(A)および(B)とブレンドしてもよいし、一部反応させてもよい。他の樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
本発明のトナーバインダーにおいて、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)等、2種以上の樹脂の混合方法は特に限定されず、通常行われる公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。また、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
本発明のトナー組成物は、本発明のトナーバインダーと、着色剤、および必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等から選ばれる1種以上の添加剤を含有する。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
離型剤としては、融点(Tm)が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
本発明のトナー組成物の組成比は、トナー重量に基づき(本項の%は重量%である。)、本発明のトナーバインダーが、好ましくは30〜97%、さらに好ましくは40〜95%、とくに好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、さらに好ましくは0.1〜55%、とくに好ましくは0.5〜50%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、とくに好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%、とくに好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0.1〜4%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは4〜58%、とくに好ましくは5〜50%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
本発明のトナー組成物は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
本発明のトナー組成物は、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、および樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリア粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
本発明のトナー組成物は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
以下実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に断りの無い限り、%は重量%、( )内のモルはモル部を示す。
製造例1
[ポリエステル樹脂(A−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽(以下の製造例で用いる反応槽も同様)中に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと記載)3モル付加物686部(1.7モル)、ビスフェノールAのPO2モル付加物53部(0.15モル)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと記載)2モル付加物1部(3.1ミリモル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)のEO5.6モル付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸246部(1.5モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水マレイン酸1部(10ミリモル)、無水トリメリット酸6部(31ミリモル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸73部(0.38モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、軟化点131℃に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A−1)とする。
ポリエステル樹脂(A−1)のT(1/2)は131℃、〔Mw〕は150000、酸価は23、水酸基価は3、tanδ(190)は5.0、tanδ(140)は2.3、、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は2.2であった。
製造例2
[ポリエステル樹脂(A−2)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物733部(1.9モル)、エチレングリコール11部(0.18モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)のEO5.6モル付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸292部(1.8モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水マレイン酸1部(10ミリモル)、無水トリメリット酸10部(52ミリモル)および重合触媒としてジブチルスズオキサイド2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸15部(78ミリモル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、軟化点125℃に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A−2)とする。
ポリエステル樹脂(A−2)のT(1/2)は125℃、〔Mw〕は230000、酸価は22、水酸基価は0、tanδ(190)は7.2、tanδ(140)は1.7、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は4.2であった。
製造例3
[ポリエステル樹脂(A−3)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物686部(1.7モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物34部(42ミリモル)、テレフタル酸232部(1.4モル)、無水フマル酸14部(0.12モル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸82部(0.44モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、軟化点141℃に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A−3)とする。
ポリエステル樹脂(A−3)のT(1/2)は141℃、〔Mw〕は130000、酸価は23、水酸基価は1、tanδ(190)は2.1、tanδ(140)は1.6、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は1.3であった。
製造例4
[ポリエステル樹脂(A−4)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物73部(0.21モル)、ビスフェノールAのPO3モル付加物667部(1.7モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸191部(1.2モル)、イソフタル酸56部(0.35モル)、無水トリメリット酸24部(0.12モル)、コハク酸4部(34ミリモル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸68部(0.35モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、軟化点130℃に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A−4)とする。
ポリエステル樹脂(A−4)のT(1/2)は130℃、〔Mw〕は180000、酸価は24、水酸基価は1、tanδ(190)は5.0、tanδ(140)は1.4、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は3.6であった。
製造例5
[ポリエステル樹脂(A−5)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物746部(1.9モル)、エチレンングリコール1部(16ミリモル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)のEO5.6モル付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸268部(1.8モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水トリメリット酸11部(56ミリモル)および重合触媒としてジブチルスズオキサイド2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸35部(0.18モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、軟化点127℃に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A−5)とする。
ポリエステル樹脂(A−5)のT(1/2)は126℃、〔Mw〕は210000、酸価は13、水酸基価は3、tanδ(190)は6.0、tanδ(140)は1.3、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は4.6であった。
製造例6
[ポリエステル樹脂(B−1)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物587部(1.5モル)、ビスフェノールAのPO2モル付加物164部(0.47モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸262部(1.6モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水マレイン酸1部(10ミリモル)、無水トリメリット酸24部(0.13モル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸21部(0.11モル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B−1)とする。
ポリエステル樹脂(B−1)のT(1/2)は112℃、〔Mw〕は31000、酸価は14、水酸基価は22、tanδ(140)は14.6、tanδ(100)は1.9、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は7.7であった。
製造例7
[ポリエステル樹脂(B−2)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物586部(1.5モル)、ビスフェノールAのPO5モル付加物161部(0.32モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸236部(1.4モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水マレイン酸1部(10ミリモル)、無水トリメリット酸15部(78ミリモル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸36部(0.19モル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B−2)とする。
ポリエステル樹脂(B−2)のT(1/2)は103℃、〔Mw〕は22000、酸価は21、水酸基価は15、tanδ(140)は22.2、tanδ(100)は2.1、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は10.6であった。
製造例8
[ポリエステル樹脂(B−3)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物102部(0.30モル)、ビスフェノールAのPO2モル付加物600部(1.8モル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸269部(1.6モル)、フマル酸20部(0.16モル)および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れ、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸51部(0.27モル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B−3)とする。
ポリエステル樹脂(B−3)のT(1/2)は115℃、〔Mw〕は32000、酸価は28、水酸基価は14、tanδ(140)は8.3、tanδ(100)は2.0、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は4.2であった。
製造例9
[ポリエステル樹脂(B−4)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物29部(87ミリモル)、ビスフェノールAのPO3モル付加物683部(1.7モル)、エチレングリコール9部(0.15モル)フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸264部(1.6モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、アジピン酸1部(6.8ミリモル)、無水トリメリット酸19部(99ミリモル)および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れ、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸52部(0.27モル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B−4)とする。
ポリエステル樹脂(B−4)のT(1/2)は114℃、〔Mw〕は30000、酸価は30、水酸基価は11、tanδ(140)は23.5、tanδ(100)は4.6、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は5.1であった。
製造例10
[ポリエステル樹脂(B−5)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物118部(0.34モル)、ビスフェノールAのPO3モル付加物639部(1.6モル)、エチレングリコール1部(20ミリモル)、フェノールノボラック樹脂(核体数約5.6)の5.6モルEO付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸257部(1.5モル)、テレフタル酸ジメチル1部(5.2ミリモル)、無水トリメリット酸16部(85ミリモル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れた後、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸24部(0.12モル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B−5)とする。
ポリエステル樹脂(B−5)のT(1/2)は103℃、〔Mw〕は23000、酸価は14、水酸基価は23、tanδ(140)は45.2、tanδ(100)は4.8、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は9.4であった。
比較製造例1
[ポリエステル樹脂(RA−1)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物236部(0.69モル)、ビスフェノールAのPO3モル付加物540部(1.3モル)、フェノールノボラック(平均重合度約5.6)のEO5.6モル付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸120部(0.72モル)、フマル酸73部(0.63モル)および縮合触媒としてジブチルスズオキサイド2部を入れ、230℃でポリエステル化反応をさせた。次いで、無水トリメリット酸87部(0.45モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、所定の軟化点に到達した時点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RA−1)とする。
ポリエステル樹脂(RA−1)のT(1/2)は161℃、〔Mw〕は110000、酸価は29、水酸基価は9、tanδ(190)は0.96、tanδ(140)は1.1、〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕は0.9であった。
比較製造例2
[ポリエステル樹脂(RB−1)の合成]
反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物261部(0.75モル)、ビスフェノールAのPO3モル付加物470部(1.2モル)、エチレングリコール25部(0.40モル)、フェノールノボラック(平均重合度約5.6)のEO5.6モル付加物1部(1.2ミリモル)、テレフタル酸275部(1.7モル)、イソフタル酸69部(0.42モル)、無水フタル酸1部(8.6ミリモル)および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れ、230℃でポリエステル化反応をさせ、酸価が2以下になった時点で、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸17部(89ミリモル)を仕込み、180℃で1時間保持し、取出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RB−1)とする。
ポリエステル樹脂(RB−1)のT(1/2)は軟化点111℃、〔Mw〕は22000、酸価は10、水酸基価は22、tanδ(140)は40.2、tanδ(100)は2.4、〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕は16.8であった。
<実施例1〜6>、<比較例1〜3>
上記製造例で得られたポリエステル樹脂(A−1)〜(A−5)、(B−1)〜(B−5)、および比較製造例で得られたポリエステル樹脂(RA−1)および(RB−1)を、表1の配合比(部)に従い配合し、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)からなる本発明のトナーバインダー、および比較のトナーバインダーを得て、下記の方法でトナー化した。(カーボンブラックMA−100[三菱化学(株)製]、ポリオレフィンワックス、荷電制御剤T−77[保土谷化学(製)])
まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で140℃で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー組成物(T−1)〜(T−6)、および比較用のトナー組成物(RT−1)〜(RT−3)を得た。
これらのトナー組成物を下記評価方法で評価した結果を表1に示す。
Figure 2013105074
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
上記トナー組成物を用い、市販複写機(AR5030;シャープ製)で現像した未定着画像を、市販フルカラー複写機(LBPー2160、キヤノン(株)製)の定着機を改造し熱ローラー温度を可変にした定着機を用いてプロセススピード110mm/秒で定着した。定着画像をパットで擦った後の、マクベス反射濃度計RD−191(マクベス社製)を用いて測定した画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって最低定着温度(MFT)とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記MFTと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をもってホットオフセット発生温度(HOT)とした。
〔3〕トナーの耐ブロッキング性試験
上記トナー組成物を、50℃・85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該トナー組成物のブロッキング状態を目視判定し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察した。
判定基準
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが観察される。
△:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚複写後の画質に乱れが観察される。
×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる。
〔4〕トナーの光沢性
上記トナー組成物を用い、市販複写機(AR−505:シャープ製)でJ紙(富士ゼロックス製)に現像した未定着画像(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)を160℃、400mm/secで定着させた。
該画像の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG−330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度を測定した。
評価基準
◎:20以上
○:15以上20未満
△:10以上15未満
×:10未満
本発明のトナー組成物およびトナーバインダーは、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)、光沢性、および耐ブロッキング性(保存安定性)に優れる、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーおよびトナーバインダーとして有用である。

Claims (7)

  1. ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の軟化点が120〜180℃、重量平均分子量が100000〜300000、140℃における損失正接〔tanδ(140)〕と190℃における損失正接〔tanδ(190)〕が下記式(1)を満たし、ポリエステル樹脂(B)の軟化点が90℃以上120℃未満、重量平均分子量が20000〜40000、100℃における損失正接〔tanδ(100)〕と140℃における損失正接〔tanδ(140)〕が下記式(2)を満たすトナーバインダー。
    1.0≦〔tanδ(190)〕/〔tanδ(140)〕≦5.0 ・・・式(1)
    3.0≦〔tanδ(140)〕/〔tanδ(100)〕≦15.0・・・式(2)
  2. ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が、ポリカルボン酸成分(x)中に芳香族ポリカルボン酸を90モル%以上、ポリオール成分(y)中にビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルを90モル%以上含有する請求項1記載のトナーバインダー。
  3. ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が、ポリオール成分(y)中にビスフェノール類のポリオキシプロピレンエーテルを70モル%以上含有する請求項1または2記載のトナーバインダー。
  4. ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)が、ポリカルボン酸成分(x)中にさらに炭素数4〜8のアルカンジカルボン酸および/またはアルケンジカルボン酸を0.1〜10モル%含有する請求項2または3記載のトナーバインダー。
  5. ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が、ポリオール成分(y)中にさらにノボラック型樹脂のポリオキシアルキレンエーテルを0.02〜10モル%含有する請求項2〜4のいずれか記載のトナーバインダー。
  6. ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の重量比[(A)/(B)]が、(10〜90)/(90〜10)である請求項1〜5のいずれか記載のトナーバインダー。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載のトナーバインダー、着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有するトナー組成物。
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