JP2004151439A - トナー、画像形成方法および画像形成装置 - Google Patents

トナー、画像形成方法および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱定着装置を用いて高速定着を可能とし、低温オフセット、高温オフセットを発生することなく、充分な定着性を有するトナー、画像形成方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱用金属製スリーブと加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーを、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδが1.0〜2.0であり、損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδが0.5〜1.0である構成とした。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、トナージェット方式記録法などを利用した記録方法に用いられるトナー、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される定着装置においては、未定着トナー像を担持した記録材を、互いに圧接して回転する定着ローラと加圧ローラとにより形成されるニップ部を通過させることにより、記録材上に未定着トナー像を定着させる、いわゆる加熱定着装置が広く用いられている。
【0003】
また、特にスタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた方法、詳しくはヒータ部と加圧ローラの間に薄肉のフィルムを介して記録材上のトナー像を定着するフィルム加熱方式による加熱定着方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
定着ローラを用いた加熱定着装置の場合、定着ローラ芯金の肉厚が機械的強度を満足するためには1〜4mm程度必要となり、大きな熱容量を有するため、電源投入直後に定着画像を得ることができず、スタンバイ状態になるまで数分程度かかるのが普通である。また、待機中に定着ローラを予備加熱しておく必要があるため、消費電力が多いという問題を有している。
【0005】
一方、フィルム加熱方式の加熱定着装置では、定着装置の熱容量が小さく、電源投入直後に定着可能な状態となるため、ウェイトタイムの大幅な短縮と、待機中の予備加熱を必要としないため、消費電力の大幅な低下を実現した。
【0006】
しかし、従来の定着フィルムは熱伝導性の悪い樹脂層により形成されているため、定着速度を高速化するほど、また記録材が厚くなるほど連続プリント時のニップ部の温度変化に対して温度調節の追随性が悪くなるため、温度変化の波が大きくなりやすくニップ部の設定温度と実際の温度との差が生じやすい。そのため、定着不良や高温オフセットを生じ、高速化することが困難であった。また、厚紙などの熱伝導性が悪く、吸熱量の大きな記録材に未定着トナー像を問題なく定着させるためには、定着スピードを落とすなどの特殊なモードを設定して対応せざるを得なかった。
【0007】
また、記録材上の未定着トナー画像は何層かのトナー層が積層して形成されている。しかし、定着フィルムや装置の耐久性の問題から、ニップ部での加圧を強めることが困難なフィルム加熱方式の加熱定着装置では、定着速度を高速化するほど、未定着トナー像において加熱フィルムに接触する最上層のトナー層と、記録材に接触している最下層のトナー層との温度差が大きくなりやすい。すると、最上層のトナー層が充分に軟化していても最下層のトナーが充分に軟化しないため、低温オフセット現象を起こしやすくなる。この現象は、記録材が厚くなるとより顕著になる。
【0008】
そこで低エネルギーで定着し、高温下でもオフセットを発生し難い、定着可能な温度領域の広いトナーが要求されるが、通常はトナーの軟化温度を低下させるほど耐高温オフセット性を損ないやすいため、従来のトナーでは、オンデマンドタイプの定着方式での充分な高速化がいまだ実現できていない。
【0009】
トナーの低温オフセット及び高温オフセットの発生しない温度領域の拡大を目的として、トナー製造時にワックス類を添加することが一般的である。しかし、従来のトナーでは近年の要求に対して充分な低温定着性とオフセット防止効果を両立するためには多量のワックスを含有させる必要があり、この場合にはトナーの流動性や帯電性が悪化しやすく、画像濃度の低下、カブリ濃度の上昇等の問題が生じやすくなる。また、長期の保存にも悪影響を及ぼしやすい。
【0010】
また、粘弾性特性を規定したトナーにより定着特性を改良する提案も多数あり、例えば離型剤を含有し、150℃での貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”がそれぞれ10dyn/cm以上で、かつ見掛け粘度が0.1〜5×10Pa・secであるトナーが提案されているが、トナーの粘弾性を150℃の1点でのみとらえているため、定着時の低温特性と高温特性を同時に議論するには不十分であり、上記の範囲を満たしていても充分な性能を得られないことがある(例えば、特許文献5参照)。
【0011】
また、130℃において角周波数を振って測定した貯蔵弾性率G’及びtanδを規定した特定のアルコール成分を含むポリエステル樹脂を含むトナーが提案されているが、樹脂の粘弾性が規定されていても、トナーの粘弾性はトナー化する際の処方や製法により大きく変化するため、定着時の低温特性と高温特性を同時に議論するには不十分であり、上記の範囲を満たしていても充分な性能を得られないことがある(例えば、特許文献6参照)。
【0012】
また、トナーの貯蔵弾性率G’の降下開始温度と120℃付近の粘度の変化率、及び200℃付近の貯蔵弾性率の変化率を規定したトナー及び、フィルム加熱方式の加熱定着装置を用いた定着方法が提案されているが、充分な高速化は実現していない(例えば、特許文献7参照)。
【0013】
すなわち、上記したように従来技術では、電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いて高速定着したときに、低温オフセットと高温オフセットの両立に対して充分な性能を有するとは言えず、耐低温オフセット性と耐高温オフセット性の両方を満足する優れた定着性能を有するトナー、画像形成方法及び画像形成装置が求められている。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−313182号公報
【特許文献2】
特開平2−157878号公報
【特許文献3】
特開平4−44075号公報
【特許文献4】
特開平4−204980公報
【特許文献5】
特開平6−59502号公報
【特許文献6】
特開平8−334930号公報
【特許文献7】
特開平9−96921号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いて高速定着を可能とし、低温オフセット、高温オフセットを発生することなく、充分な定着性を有するトナー、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【0016】
また、本発明は、様々な種類の記録材に対しても、低温オフセット、高温オフセットを発生することなく充分な高速定着性を有するトナー、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トナーの粘弾性特性に着目し、これらを特定の範囲とすることによりオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた定着方法を用いた場合にも、高速定着を可能とし、且つ種々の記録材を用いた場合でも優れた定着性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0019】
(1)可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーであって、
結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδ1が1.0〜2.0であり、
損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδ2が0.5〜1.0であることを特徴とするトナー。
【0020】
(2)前記損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδaと、前記損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδbとが、下記の関係を満足することを特徴とする(1)のトナー。
【0021】
【数2】
tanδb > tanδa
【0022】
(3)前記結着樹脂が、少なくとも構成単位としてノボラックを含むポリエステル樹脂を含有することを特徴とする(1)または(2)のトナー。
【0023】
(4)記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着させる定着工程を含み、
前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
前記トナーは、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδが1.0〜2.0であり、且つ損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδが0.5〜1.0であることを特徴とする画像形成方法。
【0024】
(5)記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させる定着手段であって、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有する定着手段を有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
前記トナーは、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδが1.0〜2.0であり、且つ損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδが0.5〜1.0であることを特徴とする画像形成装置。
【0025】
(6)前記加熱用金属製スリーブにおいて、前記円筒状金属素管の内面および外面の表面粗さがRz=3μm以下であると共に、前記円筒状金属素管の外面には接着層を含む離型性層が厚み20μm以下で形成されていることを特徴とする(5)の画像形成装置。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に使用され、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδ1が1.0〜2.0であり、損失弾性率G”が1×10Paの範囲における損失正接tanδ2が0.5〜1.0であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の画像形成方法は上記本発明のトナーを用いるものであり、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって記録材上に定着させる定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ部を通過させることにより、未定着トナー画像を前記記録材上に定着させるものである。
【0028】
まず、本発明のトナーは、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδ1が1.0〜2.0であることを特徴とする。
【0029】
なお、本発明のトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有するトナー粒子と、必要に応じて用いられる添加剤とからなる。
【0030】
トナーの損失弾性率G”=1×10Pa付近というのは、結着樹脂中の高分子主鎖の分子内運動が活発化し、分子同士の摩擦抵抗も減少してトナーが軟化を開始する領域である。この状態でトナーが圧力を受けると、その圧力に応じて変形しトナー同士の接着が起こる。また、損失弾性率G”=1×10Pa付近というのは、さらにトナーの軟化が進み、トナーが圧力を受けると抵抗なく変形して記録材との接着を開始する領域である。トナーの軟化がさらに進んだ損失弾性率G”=1×10Pa付近という領域は、トナーはごくわずかな圧力でも容易に変形し、記録材へ強く密着あるいはアンカーリングする領域である。
【0031】
すなわち、本発明のトナーの損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδ1の値が1.0〜2.0未満であることは、トナーが軟化を開始する領域から記録材との接着を開始するまでの領域において、損失弾性率G”(粘性成分)と貯蔵弾性率G’(弾性成分)とを比較すると貯蔵弾性率G’(弾性成分)のほうが弱く、トナーが受ける応力に対する反発が少ないため変形しやすい状態であることを示す。そのため、定着装置の加圧力が低い場合にもトナー同士が充分に接着し、低温オフセットの発生を抑える効果がある。
【0032】
損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδ1の値に1.0未満の部分が存在すると、特に定着装置の加圧力が低い場合においてトナー同士の接着が不充分となり、低温オフセットが発生しやすく好ましくない。一方、上記tanδ1が2.0以上の部分が存在するとトナーが急激に軟化してしまうことにより高温オフセットが発生しやすい。
【0033】
損失弾性率G”=1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδ1の値は、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.15〜1.75である。
【0034】
また、本発明のトナーは損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδ2が0.5〜1.0未満であることを特徴とする。このようなtanδ2を有するトナーは、トナーの自己凝集力が維持され、過剰な流動を抑えて適度な流動特性を保つために、高温オフセットを生じることなく大きな圧力を受けずとも記録材の凹凸面に応じて変形してアンカーリングし、十分な定着強度が得られる。また、凹凸のない平滑な記録材表面に対しては強い密着力が得られ、十分な定着強度が得られる。
【0035】
トナーの損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδ2の値は0.5〜0.9であることが好ましく、0.6〜0.8であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明のトナーは、損失弾性率G”が5×10〜2×10Paの範囲における損失正接tanδの値が0.5〜1.0であることが好ましい。
【0037】
トナーの損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδ2の値が0.5未満であるとトナーの自己凝集力が強く、圧力に対する反発力が大きくなるため充分な流動特性が得られず、特に定着装置の加圧力が低い場合や表面の凹凸の大きな記録材を用いたときに、トナー同士や記録材との密着が不十分となり十分な定着強度が得られにくくなる。また、上記tanδが1.0より大きいと、トナーの自己凝集力が小さく、圧力に対する反発力が小さくなるため、トナーが流動化しすぎて高温オフセットが生じやすくなる。
【0038】
また、本発明のトナーは損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδaと、損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδbとが下記の関係を満足することが好ましい。
【0039】
【数3】
tanδb > tanδa
【0040】
tanδaがtanδbより大きい場合は、耐低温オフセットと耐高温オフセットの両方が満足される定着温度範囲が狭くなる傾向にある。
【0041】
トナーの損失弾性率G”が1×10Pa〜1×10Paの領域における損失正接tanδが定着特性に多大な影響を及ぼすことは上述のとおりであり、上記tanδ1とtanδ2とを同時に制御することによる相乗効果により低温から高温までの定着領域において非常に優れた定着性能を得ることが可能となる。
【0042】
従来の低温定着トナーにおいては、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδ1が1.0〜2.0であることと、損失弾性率G”が1×10Paにおける損失正接tanδ2が0.5〜1.0であることを同時に満足するものはなかったため、耐低温オフセットと耐高温オフセットの両立に対して充分な性能が得られていなかった。
【0043】
また従来のトナーにおいても粘弾性を規定して定着性を改良したものも存在するが、その規定する範囲がトナーの粘弾性のごく一部を捉えたものであり、定着時の低温特性と高温特性とを同時に議論するには不十分であるため、その範囲を満たしていても充分な性能を得られないことがあったが、本発明によれば、トナーの粘弾性特性を実際の定着時におけるトナーの状態に合わせて幅広く規定しているため、定着時の低温特性と高温特性を同時に満足する優れた性能のトナーが得られる。
【0044】
本発明において、トナーのtanδ1およびtanδ2を上記範囲に調整する具体的方法として、結着樹脂としてノボラックを含むポリエステル樹脂を用いることが挙げられる。なお、結着樹脂については後述する。
【0045】
なお、本発明に用いた粘弾性に関する値は、以下の方法で測定したものを用いる。トナーを加圧成型して直径8mm、高さ2〜4mmの円柱状サンプルを作製し、粘弾性測定装置(ARES、レオメトリックス社製)を用い、直径8mmのパラレルプレートを測定治具として用い、測定周波数は6.28rad/秒、温度40〜200℃まで2℃/分の昇温速度で1分毎に弾性率の測定を行って、損失弾性率G”及び損失正接tanδを算出する。
【0046】
本発明のトナーは、低エネルギーで軟化開始し、かつ高温時の特性も優れているため、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって記録材上に定着させる定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ部を通過させることにより、未定着トナー画像を前記記録材上に定着させる、いわゆる待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた画像形成方法において非常に優れた性能を発揮する。
【0047】
熱伝導性が良好な加熱用金属製スリーブ(以下、単に「金属製スリーブ」と表記することもある)を内面から加熱用部材により接触加熱する定着方法と組み合わせて用いることで、従来達成が困難であったオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着を可能にした。特に、従来定着スピードを落としたモードを設定しないと十分な性能が得られなかった厚紙などの用紙においても、定着スピードを落とすことなく対応することができる。
【0048】
本発明で使用される金属製の定着フィルムは、従来使用されてきたポリイミドやポリアミドイミド、PEEK等の樹脂製の定着フィルムに比べて定着フィルムの強度が強い為に、フィルムが撓みにくく、定着ニップ部のフィルム内面とヒーターが接触する部分でフィルムがヒーターに密着しにくい。そのため、記録材がニップに入る部分と出る部分はヒーターとフィルムの隙間が大きく、ニップ中央部分はヒーターとの隙間が小さい構成となり、定着ニップ部が記録材進行方向に対して凹凸のある、平滑な面ではなくなる。その結果、低温オフセットが悪化しやすくなる。優れた定着性や耐高温オフセット性を達成しつつ低温オフセットを抑制する為には、定着器の構成に合ったトナーを組み合わせることが重要である。
【0049】
本発明のトナーに使用される結着樹脂はガラス転移温度が45〜70℃であることが好ましく、50〜65℃であることがより好ましい。また、上記結着樹脂としては90〜140℃、好ましくは100〜130℃の軟化温度を有するポリエステルを主成分とする樹脂が好ましく用いられる。さらに、上記結着樹脂は85〜110℃の軟化温度を有する成分と130〜180℃の軟化温度を有する成分とのブレンドを主成分とすることが好ましい。また、このようなブレンド樹脂と、該ブレンド樹脂中の各成分の中間の110〜130℃の軟化温度を有するポリエステルを主成分とする樹脂とをさらにブレンドして得られる樹脂であっても良い結果が得られる。
【0050】
ブレンド方法としては二軸押出機等を用いて溶融混練したものが、特定の粘弾性特性を有する本発明のトナーが容易に得られやすく、定着特性、現像性において良好な結果が得られるため好ましく用いられる。結着樹脂の酸価としては2〜30mgKOH/g、さらには5〜25mgKOH/gの範囲のものが帯電特性に優れており、好ましく用いられる。
【0051】
また、上記特定の粘弾性特性を有する本発明のトナーを得るには、本発明のトナーに含有される結着樹脂が少なくとも構成単位としてノボラックを含むポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0052】
なお、本発明で用いられる結着樹脂のガラス転移温度、軟化点、酸価は以下の方法で測定したものである。
【0053】
<ガラス転移温度(Tg)>
DSC−7(パーキンエルマー社製)またはDSC2920(TAインスルツルメンツジャパン社製)等の装置を用い、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定する。
【0054】
<軟化点>
フローテスター(CFT−500、島津製作所製)において1.0mmφ×1.0mmのノズルを用い、荷重20Kg、昇温速度6℃/分で測定し、1.5gのサンプルの1/2が流出した時の温度を用いる。
【0055】
<酸価>
結着樹脂サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定された0.1mol/l苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
【0056】
【数4】
酸価 = KOH(ml数)×f×56.1/試料重量
(ただしfは0.1mol/lKOHのファクター)
【0057】
上記結着樹脂に含有されるポリエステル樹脂は、ポリオールと、ポリカルボン酸またはその酸無水物またはその低級アルキルエステル等の2価以上の酸成分との重縮合物などが挙げられる。上記ポリオール成分のうち2価のものとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
【0058】
【化1】
Figure 2004151439
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また、式(B)で示されるジオール類;
【0059】
【化2】
Figure 2004151439
が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、少なくともビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド2〜4モル付加物またはこの縮合物を用いることが、トナーに良好な耐オフセット性、対ブロッキング性、良好な帯電特性を与える点で好ましい。
【0061】
3価以上のポリオールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどフェノール類とアルデヒド類の重縮合物)等が挙げられる。
【0062】
これらの中でもノボラック樹脂が好ましく用いられ、特に好ましいのはノボラック樹脂のC2〜C4のアルキレンオキサイド付加物(例えばフェノールノボラック樹脂のエチレンオキシド付加物、フェノールノボラック樹脂のプロピレンオキシド付加物など)であり、これらは酸成分と反応して網目の広い柔軟な架橋構造を作るため、本発明のトナーの粘弾性特性を容易に達成し、低温定着性(特に耐低温オフセット)と耐高温オフセットの両立に対して有効に働き好ましく用いられる。特に好ましい3価以上の多価アルコール成分として、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルが挙げられる。このようなノボラック樹脂をポリオール成分として用いることにより、構成単位としてノボラックを含むポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を得ることができる。
【0063】
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、ノボラック型フェノール樹脂と分子中1個のエポキシ環を有する化合物との反応物である。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えばエンサイクロベディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・テクノロジー(インターサイエンス・パブリッシャーズ)第10巻1頁のフエノリツク・レジンズの項に記載されるように、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸又はパラトルエンスルホン酸;シュウ酸などの有機酸;又は酢酸亜鉛などの金属塩を触媒としてフェノール類とアルデヒド類からの重縮合により製造されるものが挙げられる。
【0064】
フェノール類としては、フェノールや炭素数1〜35の炭化水素基及び/又はハロゲン基を1個以上置換基として有する置換フェノールが挙げられる。置換フェノールの具体例としては、クレゾール(オルト体、メタ体またはパラ体)、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、イソプロペニルフェノール、3−クロルフェノール、3−ブロムフェノール、3,5−キシレノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−ジクロルフェノール、2,4−ジクロルフェノール、3−クロル−5−メチルフェノ−ル、ジクロルキシレノール、ジブロムキシレノール、2,4,5−トリクロルフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノール等が挙げられる。フェノールまたは置換フェノールは2種以上を併用してよい。
【0065】
これらの中ではフェノール及び炭化水素基で置換された置換フェノールが好ましく、その中でも特にフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールおよびノニルフェノールが好ましい。フェノールとクレゾールは価格及びトナーの耐オフセット性を付与する点で好ましく、t−ブチルフェノール及びノニルフェノールに代表される炭化水素基で置換された置換フェノールはトナーの帯電量の温度依存性を小さくする点で好ましい。
【0066】
アルデヒド類としては、ホルマリン(各種濃度のホルムアルデヒド溶液)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂の数平均分子量は通常300〜8000、好ましくは450〜3000、更に好ましくは400〜2000である。
【0067】
ノボラック型フェノール樹脂中の数平均のフェノール類の核体数は通常3〜60、好ましくは3〜20、更に好ましくは4〜15である。また軟化点(JISK2531;環球法)は、通常40〜180℃、好ましくは40〜150℃、更に好ましくは50〜130℃である。軟化点が40℃未満では常温でブロッキングし取り扱いが困難となる。また軟化点が180℃を越えるとポリエステル樹脂の製造過程でゲル化を引き起こし好ましくない。
【0068】
分子中1個のエポキシ環を有する化合物の具体例としてはエチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を挙げることができる。また炭素数1〜20の脂肪族1価アルコールまたは1価フェノールのグリシジルエーテルも使用できる。これらの中ではEOおよび/またはPOが好ましい。
【0069】
ノボラック型フェノール樹脂1モルに対する、分子中1個のエポキシ環を有する化合物の付加モル数は通常1〜30モル、好ましくは2〜15モル、更に好ましくは2.5〜10モルであり、またノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1個に対する分子中1個のエポキシ環を有する化合物の平均付加モル数は通常0.1〜10モル、好ましくは0.1〜4モル、更に好ましくは0.2〜2モルである。
【0070】
本発明で特に好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの構造を例示する。
【0071】
【化3】
Figure 2004151439
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、xは0以上の数で、y1〜y3は0以上の同一又は異なった数である。)
【0072】
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの数平均分子量は通常300〜10000、好ましくは350〜5000、更に好ましくは450〜3000である。数平均分子量が300未満ではトナーの耐オフセット性が充分でなく、10000を越えるとポリエステル樹脂の製造過程でゲル化を引き起こして好ましくない。
【0073】
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの水酸基価(アルコール性及びフェノール性水酸基の合計)は通常10〜550mgKOH/g、好ましくは50〜500mgKOH/g、更に好ましくは100〜450mgKOH/gである。また、水酸基価のうち、フェノール性水酸基価は通常0〜500mgKOH/g、好ましくは0〜350mgKOH/g、更に好ましくは5〜250mgKOH/gである。
【0074】
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの製法の一例として、必要により触媒(塩基性触媒又は酸性触媒)の存在下、ノボラック型フェノール樹脂に分子中1個のエポキシ環を有する化合物を付加反応させることにより該化合物を得る方法が挙げられる。反応温度は通常20〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、常圧下、又は加圧下、更には減圧下においても行うことができる。また反応は溶媒(例えばキシレン、ジメチルホルムアミドなど)あるいは他の2価アルコール類及び/又は他の3価以上のアルコール類の存在下で行うこともできる。
【0075】
本発明で用いられるポリエステル樹脂を構成する2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル、アルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0076】
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸およびこれらの無水物や低級アルキルエステルがトナーの耐オフセット性、良好な帯電特性を与える点で好ましい。
【0077】
また、3価以上の酸成分は3価以上のアルコール成分と併用することが、本発明のトナーにおいて上記の特有の粘弾性特性を容易に達成し、低温定着性(特に低温オフセット)と高温オフセットの両立に対して有効に働き好ましい。
【0078】
ポリオールとポリカルボン酸の好ましい比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/2、より好ましくは1.7/1〜1/1.8、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.7である。
【0079】
本発明で用いられるポリエステル樹脂のTHF(テトラヒドロフラン)可溶成分の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られる分子量分布において分子量1000〜15000に極大値を有していることが好ましく、さらに好ましくは極大値が分子量2000〜12000の領域に存在し、特に好ましくは極大値が2500〜9000の領域に存在することである。上記の範囲は低温定着性、耐熱保存性、粉体流動性、粉砕性が良好となる。
【0080】
また、本発明で用いられるポリエステル樹脂はTHF不溶分を5〜50質量%含有していることが好ましい。このTHF不溶分はさらに好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。上記の範囲は低温定着性と耐オフセット性及び良好な粉砕性の両立のために有効である。
【0081】
また、本発明に用いられるポリエステル以外の結着樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが使用でき、これらは2種以上の混合物、ブロック共重合体或いは、グラフト化物でも良い。なかでも特にスチレン系共重合体等のビニル系共重合体が好ましく用いられる。
【0082】
本発明に好ましいビニル系共重合体を得るためには、ビニル系重合体のモノマーとして以下のカルボキシ基を有するモノマー或いはカルボキシ基誘導体である酸無水物基を有するモノマーを用いることができる。
【0083】
例えば、コハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、及びこれらの無水物、フマル酸、メタコン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和二塩基酸及び上記不飽和二塩基酸のモノエステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸及びこれらの無水物、上記α、β−不飽和酸間の無水物及び低級脂肪酸との無水物などのα、β−不飽和酸、これらの無水物モノマー;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタン酸、アルケニルアジピン酸、これらの無水物及びモノエステルが挙げられる。
【0084】
これらの中でも、マレイン酸、フマル酸、コハク酸のような構造をもつα、β−不飽和二塩基酸のモノエステル類が本発明の結着樹脂を得るモノマーとして特に好ましく用いられる。
【0085】
このようなモノマーとしては、例えばマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニル、n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチル、などがあげられる。
【0086】
更にビニル重合体のコモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンなどの不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;前述のα、β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;が挙げられ、これらのビニル系モノマーが単独もしくは2つ以上で用いられる。
【0087】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0088】
さらに架橋性モノマーとしては、例えば芳香族ジビニル化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類、例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
【0089】
多官能の架橋性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;が挙げられる。
【0090】
これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0091】
本発明のトナーに含有されるワックスは、示差熱分析による吸熱ピークを60〜120℃に少なくとも一つ以上有する低融点のワックスであることが好ましい。また、ワックスの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して1〜10質量部程度用いることが好ましい。より好ましくは2〜8質量部、さらには2〜6質量部用いることが、ワックスの分散性、帯電特性、低温定着性と耐オフセット性両立のためには好ましい。
【0092】
ワックスの種類としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうなどの植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスなどの脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0093】
更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類などの飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールなどの飽和アルコール;ソルビトールなどの多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0094】
それらのなかでも好ましいものは低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスであり、GPC測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0〜2.0であり、分子量分布がシャープであることが特に好ましい。また、示差熱分析による吸熱ピーク(融点)を60〜120℃に少なくとも一つ以上有することが好ましい。ワックスの分子量分布をシャープにすること及び吸熱ピーク(ワックスの融点)を規定することで、本発明の目的を効果的に発揮できる。
【0095】
<ワックスのGPC測定条件>
装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:GMH−HT(東ソー社製)の2連
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min.
試料:濃度0.15%の試料を0.4ml注入
【0096】
以上の条件で測定を行い、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。更に、ワックスの分子量は、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式で換算することによって算出される。
【0097】
ワックスの融点は、DSC−7(パーキンエルマー社製)或いは、DSC2920(TAインスルツルメンツジャパン社製)等の装置を用い、昇温速度10℃/min.でASTM D3418の温度測定パターンに準じる測定により得られた最高融解温度のピークトップの値とする。
【0098】
また、ワックスのトナーへの添加方法は、用いる結着樹脂中にあらかじめ添加(内添)することが分散性の観点から好ましく、特に好ましいのは樹脂合成時に添加する方法である。
【0099】
本発明のトナーには着色剤が含有される。本発明のトナーを黒色の磁性トナーとして用いる場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねる。磁性材料としては、磁性酸化鉄または金属が挙げられ、磁性酸化鉄としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;金属としては、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性酸化鉄表面あるいは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0100】
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、鉄元素基準で異種元素を0.05〜10質量%含有することが好ましい。とくに好ましくは0.1〜5質量%である。
【0101】
異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウから選択される元素であることが好ましい。特にケイ素元素を含有していることが帯電性としても良好である。また、以下のリチウム、ベリリウム、ボロン、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、銅、ガリウム、インジウム、銀元素、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム等の金属が挙げられる。
【0102】
また、トナー中に含有される磁性材料の量としては結着樹脂100質量部に対して20〜200質量部、特に好ましくは結着樹脂100質量部に対して40〜150質量部がさらに良い。
【0103】
これらの磁性材料は平均粒子径が0.1〜2μmのものが好ましく、0.1〜0.5μm程度のものがより好ましい。
【0104】
本発明のトナーを非磁性トナーとして用いる場合は、任意の適当な顔料または染料が着色剤として使用される。トナーに用いられる着色剤は周知であって、例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。また同様の目的で、さらに染料が用いられる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等があり結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0105】
本発明トナーは荷電制御剤を含有するのが好ましい形態である。荷電制御剤としては、従来公知の負あるいは正の荷電制御剤が用いられる。今日、当該技術分野で知られている荷電制御剤としては以下のものがあげられる。
【0106】
トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0107】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン、四級アンモニウム塩、トリフェニルメタンレーキ顔料などの荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0108】
また、これらの物質の中には、溶融混練時に樹脂中の酸成分と反応し架橋するものもあるが、その性質を利用してトナーの粘弾性特性を本発明特有の範囲にすることも可能である。
【0109】
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上の為、添加剤としてシリカ、アルミナ、チタニアなどの微粉末を添加することが好ましい。
【0110】
本発明に用いられるシリカ、アルミナ、チタニアの微粉末は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が20m/g以上(特には30〜400m/g)の範囲内のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対してこれらの微粉末を0.01〜8質量部用いることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部使用するのが良い。
【0111】
また、該微粉末は、必要に応じ、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。なかでも、シラン処理後にシリコーンオイル処理したものが優れた帯電特性と耐久性を示し、特に好ましい。
【0112】
本発明で用いられる各種特性付与を目的とした添加剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
【0113】
(1)研磨剤:金属酸化物(チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムなど)、窒化物(窒化ケイ素など)、炭化物(炭化ケイ素など)、金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)など。
【0114】
(2)滑剤:フッ素系樹脂粉末(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)など。
【0115】
(3)荷電制御性粒子:無機酸化物または金属酸化物(酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)、カーボンブラック、樹脂微粒子など。
【0116】
これら添加剤は、トナー粒子100質量部に対し、0.05〜10質量部が用いられ、好ましくは、0.1〜5質量部が用いられる。これら添加剤は、単独で用いても、また、複数を併用しても良い。
【0117】
さらに本発明のトナーは、キャリヤー粉と混合して二成分系現像剤として用いることもできる。この場合には、トナーとキャリヤー粉との混合比は二成分系現像剤中のトナー濃度として0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは3〜5質量%が望ましい。
【0118】
本発明においてキャリヤー粉としては公知のものが使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉などの磁性を有する粉体、ガラスビーズ等及びこれらの表面をフッ素系樹脂またはアクリル系樹脂またはシリコ−ン系樹脂等で表面処理したものなどがあげられる。
【0119】
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級することによってトナー粒子を得る方法が好ましい。さらに必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合機により十分に混合後、ジャイロシフターなどの篩い装置により粗粒などをふるい分けることによって本発明のトナーを製造することができる。
【0120】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押出機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0121】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、前述の本発明のトナーを用いるものであり、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって記録材上に定着させる定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ部を通過させることにより、未定着トナー画像を前記記録材上に定着させるものである。
【0122】
すなわち、本発明の画像形成方法は、熱伝導性が良好な金属スリーブ内面から加熱用部材により接触加熱するいわゆる待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置と、前述したような特定の粘弾性特性を有し、さらに低温から軟化し、かつ高温下においても弾性を維持する、充分な低温定着性と耐高温オフセット性を兼ね備えたトナーとを合わせて用いたものである。このような構成とすることにより、電源投入直後に定着可能な、待機中の予備加熱を必要としない、消費電力の大幅な低下を実現するオンデマンドタイプの加熱定着装置による高速定着を可能とし、同時に低温オフセット、高温オフセットを発生することなく充分な定着性を有する画像形成方法を提供できる。
【0123】
また、本発明の画像形成方法では、定着時における加熱効率が良いことから、画像形成装置がプリント信号を受信していない状態のスタンバイ中に、加熱用部材への通電をシャットダウンしておくことが可能となり、省エネルギーの加熱定着を実現する上で好ましい。
【0124】
また、本発明の画像形成方法では、室温状態から画像形成装置の電源をONとした場合でも、即座にプリント信号受信可能になるため、作業者を待たせることがない。すなわち、画像形成装置が高速化した場合でも、クイックスタート性に優れ、ファーストプリントタイムも速い定着が可能となる。
【0125】
以下、本発明の画像形成方法に用いられる加熱定着装置の好ましい形態の一例を示す。但し以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0126】
加熱用金属製スリーブ(以下、単に「金属製スリーブ」ということもある)は厚み20〜100μmのものを用いる。また、該金属製スリーブ内面は加熱用部材との接触熱抵抗を低く抑え、定着ニップ部への伝熱を良好にするために、表面粗さRz=3μm以下とすることが好ましい。さらに金属製スリーブ外面の表面粗さをRz=3μm以下とし、この金属製スリーブ上に、接着層としてのプライマー層を含めた離型性層を厚み20μm以下で形成することも好ましい構成である。樹脂製フィルムに比べ剛性の高い金属製スリーブを使用することで、画像形成装置を高速化しても、装置の耐久性には問題ない。
【0127】
また、金属製スリーブ内面に接触し、定着ニップ部を加熱する加熱用部材の表面を耐熱性を有するポリイミド樹脂等の樹脂部材とすることも好ましい。このような構成とすることにより、金属製スリーブ内面と加熱用部材との摺動をスムーズにすることができ、さらに装置の耐久性が向上する。
【0128】
また、金属製スリーブに上記表面粗さ内の周方向のスジ加工を施すことにより金属製スリーブの回転をスムーズにし、上記加熱用部材の表面を傷つけにくくすることができる。
【0129】
また、未定着トナー像を記録材上に固着させる加熱定着装置においてトナーと逆極性のバイアスを加圧ローラ側に印加し、金属製スリーブを接地あるいはダイオード接続することで、紙粉、トナー等が金属製スリーブに吸着されることを防止する。これにより耐久的な使用によって金属製スリーブが汚れる等の問題も発生しない。
【0130】
本発明の画像形成方法は、公知の部材及び手段等を適宜組み合わせて実現することができる。より具体的には、本発明の画像形成方法は、前述した定着工程を実現する定着手段を搭載する改造を、公知の画像形成装置に施すことによって実現することが可能である。以下、本発明の画像形成方法を実現する上で好適な画像形成装置である本発明の画像形成装置の具体的一例を、図面を参照して説明する。
【0131】
(A)画像形成装置例
図1は本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される(帯電工程)。
【0132】
次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム3による走査露光が施され、静電潜像が形成される(潜像形成工程)。この静電潜像は現像装置4で現像、可視化され、トナー画像となる(現像工程)。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0133】
可視化されたトナー画像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される(転写工程)。ここで感光ドラム1上のトナー画像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、搬送のタイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。
【0134】
この未定着のトナー画像が転写された記録材Pは加熱定着装置6へと搬送され、永久画像として定着される(定着工程)。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される(クリーニング工程)。
【0135】
(B)加熱定着装置6
図2は加熱定着装置6の概略構成図である。図2において、10は定着部材、20は加圧部材である。定着部材10は加熱用部材としてのヒータ11、断熱ステイホルダー12、定着スリーブとして用いられる金属製スリーブ13等からなる。加圧部材20は耐熱性弾性加圧ローラであり、金属製スリーブ13に圧接されている。すなわち、金属製スリーブ13と加圧部材20とが互いに圧接されることにより、定着ニップNが形成されている。
【0136】
a)定着スリーブ13
定着スリーブとして用いられる加熱用金属製スリーブ13は熱容量の小さなスリーブであり、クイックスタートを可能にするために100μm以下の厚みであり、耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の金属の単独あるいは合金からなる可撓性の円筒状金属素管を基層とした金属製スリーブ(フィルム)である。
【0137】
この金属製スリーブ13は、長寿命の加熱定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた金属製スリーブとするために、20μm以上の厚みが必要である。よって金属製スリーブ13の厚みとしては20〜100μmが最適である。
【0138】
さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために、金属製スリーブ13の表層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂が単独でまたは2種以上が混合されてなる離型性層(図示せず)によって被覆されている。
【0139】
金属製スリーブ13表面を上記離型性層により被覆する方法としては、金属製スリーブ基層の外表面に接着層としてのプライマー層を塗布した後に、上記離型性層を形成する。離型性層の形成はディッピング、粉体スプレー等の塗布によるものであっても良いし、チューブ状に形成されたものを金属製スリーブの表面に被せる方式のものであっても良い。
【0140】
なお、金属製スリーブの内外面の表面性状および離型性層の厚み等については後記e)項で詳述する。
【0141】
b)加熱用ヒータ11
加熱用部材としての加熱用ヒータ11は金属製スリーブ13の内面に接触配置され、記録材P上のトナー像を溶融、定着させる定着ニップの加熱を行うべく金属製スリーブ13を加熱する。
【0142】
図3は、図2の定着ニップN近傍の部分拡大図である。また、図4は図2のI−I線に沿った模式的断面図である。図3において、加熱用ヒータ11は、アルミナ、AlN(チッ化アルミ)等の高絶縁性のセラミックスやポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂からなる基板11aの表面に長手方向(図面と直交する方向)に沿って、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO、TaN等の通電発熱抵抗層11bをスクリーン印刷等により、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状に塗工して形成してなる通電加熱用部材である。通電発熱抵抗層11bの表面には、金属製スリーブ13との摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層11cが設けられている。
【0143】
上記基板11aの背面(定着ニップNと反対側の面)には通電発熱抵抗層11bの発熱に応じて昇温した加熱用ヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配設されている。この温度検知素子14の信号に応じて、図4に示す長手方向(図4中芯金21に平行な方向)端部にある電極部11fおよび11gから通電発熱抵抗層11bに印加される電圧のデューティー比や波数等を適切に制御することで、定着ニップN内での温度を略一定に保ち、記録材P上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。温度検知素子14から不図示の温度制御部へのDC通電は不図示のDC通電部およびDC電極部を介して不図示のコネクターにより達成している。
【0144】
加熱用ヒータの他の実施形態を図5に示す。この図5も、図3と同様に加熱定着装置の加熱ヒーター近傍を示す部分的断面図である。図5に示すように、ヒータ基板11aとして熱伝導性の良好なAlN(チッ化アルミ)等を用いた場合には、通電発熱抵抗層11bを基板11aの定着ニップNと反対側に形成してあっても良い。図5において、11dは基板11a上に形成された通電発熱抵抗層11dと温度検知素子14の間の耐電圧を満足するために設けたガラスコート、フッ素樹脂層等の保護層である。また、11eは上述の11cと同様に金属製スリーブとの摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層である。
【0145】
また、上記金属製スリーブ13の内面において、加熱用ヒータ11の定着ニップN側の形状を曲面とすることで、金属製スリーブ13に屈曲負荷を与えないようにした方が長寿命の定着部材が形成される。あるいは、基板(11a)を金属製のものとし、この金属製基板上の定着ニップとは反対側に絶縁層、通電発熱抵抗層を順次積層してなり、上記金属製基板は定着ニップ側が金属製スリーブと同方向に湾曲した形状を有する金属製の加熱用ヒータを用いても良い。
【0146】
c)断熱ステイホルダー12
断熱ステイホルダー12は、加熱用ヒータ11を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成される。この断熱ステイホルダー12には金属製スリーブ13が余裕をもってルーズに外嵌されており、金属製スリーブ13は矢印の方向に回転自在に配置されている。
【0147】
また、金属製スリーブ13は内部の加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12に摺擦しながら回転するため、加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と金属製スリーブ13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤が少量介在されている。これにより金属製スリーブ13はスムーズに回転することが可能となる。
【0148】
d)加圧部材20
加圧部材20は、芯金21の外側に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層22からなるローラ部材であり、弾性層22の上にPFA、PTFE、FEP等からなる離型性層23が形成されていてもよい。
【0149】
図4に示すように、定着部材10は、断熱ステイホルダー12の一部に直接、または断熱ステイホルダーと嵌合等により取り付けられた部材を介して設けられたバネ等の加圧手段17により、加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するべく長手方向両端部から加圧部材20に対して十分に加圧されている。また、加圧部材20の芯金21の端部に取り付けられた駆動ギア16により加圧部材20を回転駆動し、加圧ローラ表面と金属製スリーブ13表面の摩擦により金属製スリーブ13を所定の速度に従動回転させる。
【0150】
以上が加熱定着装置6の構成であるが、図3および図5において記録材Pは不図示の供給手段によって適宜供給され、耐熱性の定着入口ガイド15に沿って加熱部材10と加圧部材20によって形成される定着ニップNに搬送される。そして、加圧部材20および金属製スリーブ13の回転によって記録材Pが定着ニップ部Nを通過することにより、記録材P上に未定着画像が定着され、定着画像が得られる。
【0151】
e)金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ等について
ここで金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ、離型性層の厚み等に関して以下に説明する。
【0152】
まず、金属製スリーブ13の内面は上記加熱用ヒータ11と所定の接触幅をもって接触することで加熱用ヒータ11より発生した熱を定着ニップNへ伝熱する必要があり、従来使用されてきた輻射熱による加熱を行う熱ローラ定着装置とは思想が異なる。よって加熱用ヒータ11と接触伝熱する金属製スリーブ13内面の表面粗さは、熱効率に大いに影響する。特に加熱用ヒータ11の摺動層(図3の11cまたは図5の11e)の表面と金属製スリーブ13の内面との接触熱抵抗が大きくなると、熱効率が悪化し、定着不良を起こしてしまう。仮に熱伝導グリース等を介在させた場合でも熱効率の高い加熱定着装置を構成するためには、所定以下の表面粗さに抑えることが好ましい。
【0153】
また、上述したように、金属製スリーブ13の外面には離型性層を形成されているが、離型性層は一般にフッ素樹脂より形成されるため、その熱伝導性は金属製スリーブ13の熱伝導性に比べて極端に低い。よって、離型性層をあまり厚く形成すると、熱伝導の悪化を招き画像形成装置の高速化に対し、定着ニップNで記録材P上のトナー像に対し十分な熱供給ができなくなる。よって薄い離型性層を金属製スリーブ13上に形成する必要がある。このとき、金属製スリーブ13外面の表面粗さは所定以下に抑えることが好ましい。すなわち、離型性層を薄くした場合には、金属製スリーブ13外面の表面粗さを離型性層によって緩和する効果が得られないため、金属製スリーブ13外面に離型性層を塗布形成した後の表面粗さは金属スリーブ13素管の表面粗さと同等か若干小さい粗さのものとなる。よって、金属製スリーブ13素管の表面粗さが大きいと離型性層を塗布形成後も大きな表面粗さとなり、定着ニップNで記録材Pとの密着力が得られず、定着不良を引き起こす可能性が大きくなる。
【0154】
以上のことから、金属製スリーブ13の外面の表面粗さを所定以下とし、且つ接着層としてのプライマー層を含む離型性層を所定以下の厚みで塗布形成することにより、十分な定着性能が得られ、画像形成装置の高速化に対応可能となる。
【0155】
また、金属製スリーブ13に周方向に所定以下の表面粗さを有する凹凸形状を施すことにより、金属製スリーブ13の回転をよりスムーズにすると共に加熱用ヒータ11の表面にコーティングした離型性層を傷つけにくくする。これによりさらに高耐久の高速対応可能な加熱定着用金属製スリーブ13を提供することができる。
【0156】
以下、図6〜図8を参照して、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13の製法を示す。まず、図6において、31は金属製スリーブ13の基材であり、0.1〜0.5mm程度のSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の単独ないしは2種以上の合金状態で形成される金属平板(プランク)である。32は一般的な深絞り製法における円形内型(ポンチ)、33は円筒容器状の外型(ダイス)であり、それぞれ金属材料の表面に超硬メッキ等を施した金型である。図6において、金属平板31を内型32と外型33の間に挟み矢印の方向に内型32を外型33の方向へ押し込む。また、金属平板31と外型33の間には粘度の高い潤滑油、あるいは黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を介在させ、絞り性を良くしてある。以上の工程を通常は2〜4回程度、異なる金型で深絞り加工することにより、図7に示すようなカップ状の金属製円筒部材34を製造する。
【0157】
次に、この金属製円筒部材34が所定の厚みに形成されるようにしごき加工を施す。しごき加工としては、圧延加工、引き抜き加工、絞り加工等どのような加工を途中に経てもよいが、最終加工としては、以下に示すような加工方法により金属製スリーブの周方向に所定以下の凹凸を有する加工を施す。例えば、図8の(a)および(b)に示すような加工方法がある。
【0158】
まず、図8の(a)は一般的な絞りスピニング加工を示すものである。図8(a)において、固定台36cに取り付けられた軸36bに回転自在に取り付けられた押し当てローラ36aを、金属製内型35と所定の距離だけ常に離間した状態で金属製内型35方向へ押し付けられるようになっている。金属製内型35に上記カップ状に深絞り加工を施した金属製円筒部材34をはめ込み、押さえ部材37によって金属製円筒部材34のカップ形状底部が金属製内型35に密着状態となって固定される。この状態で金属製内型35、金属製円筒部材34、押え部材37を図の矢印Aの方向に回転させながら、紙面右方(図8の矢印B方向)へ徐々に送り込む。端部からは金属製内型35と所定距離を保って回転自在のローラ36aが押し当てられる。
【0159】
これにより、金属製円筒部材34がしごき加工により端部から徐々に薄肉化され、最終的には図8(c)に示すように金属製スリーブ13の所定厚みにまで加工されたカップ状の金属製円筒部材39が形成される。
【0160】
金属製円筒部材39には、周方向に絞りスピニング加工時のローラ押し当ての凹凸跡39aが残る。最終的には、金属製円筒部材39のカップ形状底部を切り落とすことにより、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13を得る。
【0161】
また、図8(b)に示すように、押し当てローラ36aの代わりに段階的に内径が小さく形成された連続ダイス38a、38b、38cを用い、金属製内型35と押さえ部材37により固定された金属製円筒部材34を回転させながら送り込みしごき加工を行って、金属製円筒部材34を薄肉化しながら周方向の凹凸形状を付与させる方式であっても良い。
【0162】
その他、へら絞り加工等、金属製スリーブ13の周方向に所定量以下の凹凸を形成できる方法であれば、どのようなしごき加工の加工方法であっても構わない。
【0163】
以上の製法で製造した金属製スリーブ13を用いて、未定着トナー画像が形成された記録材Pを加熱定着する場合、熱伝導の観点から、上記周方向の凹凸は3μm以下に抑えることが好ましい。
【0164】
金属製スリーブ13の周方向に3μm以下の凹凸を形成し、好ましくは、長手方向の表面粗さRzを3μm以下とし、周方向の表面粗さRz’との関係をRz>Rz’とすることで、加熱定着装置の回転駆動を低く抑え、回転をスムーズにすると共に、耐久的な使用による金属製スリーブ内面に接触する加熱用ヒータの樹脂コートを傷つけにくくし、加熱定着装置のさらなる高耐久、高速化を達成することが可能になる。
【0165】
さらに、金属製スリーブ13と加圧部材である加圧ローラ20の間に電位差を形成し、かつ金属製スリーブ13を接地状態、もしくはダイオードを介して接地状態とすることで金属製スリーブ13に紙粉やトナーを付着しにくい構成とすることにより、耐久的な使用を通じて離型性を維持できる加熱定着装置を提供することが可能になる。
【0166】
金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図を図9(a)に、図9(a)のII−II線に沿った模式的断面図を図9(b)に、それぞれ示す。図9において、加圧部材である加圧ローラ20の導電性弾性層22は、導電性シリコーンゴム、導電性シリコーンスポンジ等からなる導電性が付与された弾性層であり、加圧ローラ芯金21または導電性弾性層22に、導電性カーボンチップ等よりなるチップ電極25を介してバイアス印加手段24によってトナー像と逆極性のバイアスを印加する。
【0167】
図では、トナーが現像部でマイナス帯電される画像形成装置を元に図示しており、加圧ローラ芯金部21には、プラスバイアスが印加される構成となっている。よってトナーが現像部でプラス帯電される画像形成装置の場合、加圧ローラ芯金21には、マイナスバイアスが印加される構成となる。
【0168】
また、金属製スリーブ13の端部では、接着層としてのプライマー層、フッ素樹脂層からなる離型性層がコーティングされていない金属製スリーブ素材がむき出しになっている部位13aを設け、この部位13aよりアモルファス導電繊維よりなる導電ブラシ18を介して接地状態に構成されている。
【0169】
または、トナー像と同電位の電荷が金属製スリーブ13に保持されるようにダイオード接続されていても良い。
【0170】
以上の構成により、加圧ローラ20側に積極的にバイアス印加する構成とすることで、金属製スリーブ13には紙粉、トナー等が吸着されにくくなる。よってパルプ材を主原料とするカット紙等に形成されたトナー像を加熱定着する場合の上記加熱定着装置においては、表面粗さRz=3μm以下とした金属製スリーブ13の表面の離型性層には、静電気的にも紙粉やトナーの汚染が発生しづらく、耐久的な使用によって離型性が損なわれることがないため、長寿命の加熱定着装置が提供される。
【0171】
なお、本発明に用いられる定着手段は、定着部材の離型性を維持するためのオイルを定着部材に塗布するオイル塗布方式の定着手段であっても良いし、オイルレス系の定着手段であっても良く、これらの方式の違いによらず同様に効果を奏する。
【0172】
また、本発明に用いられる定着手段において、加熱用部材は、通電により発熱するものであれば、通電時の抵抗によって発熱するものに限定されず、例えば通電時の電磁誘導によって発熱する電磁誘導発熱性部材によって形成することもできる。
【0173】
また、本発明に用いられる定着手段は、記録材上のトナーの加熱に広く適用することが可能であり、例えば記録材上の画像を仮定着処理する像加熱装置、つや等の画像表面性を改質する像加熱装置等にも適用することができる。
【0174】
また、前述した実施の形態では、定着部材10を加圧部材20に向けて付勢する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、加圧部材20を定着部材10に向けて付勢しても良く、また定着部材10および加圧部材20の両方を互いに接近する方向に付勢しても良い。
【0175】
また、前述した実施の形態では、バネに代表されるような、充分な付勢力を発現する加圧手段17による付勢によって定着ニップ部Nを形成する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、定着部材10と加圧部材20の位置を固定して所望の定着ニップNを形成しても良い。
【0176】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、文章中にある部は質量部を、比は質量比を、%は質量%を示す。
【0177】
<結着樹脂製造例>
(ポリエステル樹脂aの製造)
反応槽中に、ビスフェノールAのPO 2モル付加物70部、テレフタル酸28部、無水トリメリット酸2部、およびジブチルチンオキサイド0.5部を入れて210℃でポリエステル化反応をさせ、ポリエステル樹脂aを得た。得られたポリエステル樹脂aはTgが57℃、軟化点が94℃、Mnが2800、THF不溶分が0%であった。
【0178】
(ポリエステル樹脂bの製造)
反応槽中にビスフェノールAのPO 2モル付加物45部、ビスフェノールAのEO 2モル付加物20部、ノボラック型フェノール樹脂(核体数約4.4)のPO 4.4モル付加物3部、テレフタル酸18部、フマル酸8部、無水トリメリット酸6部、およびジブチルチンオキサイド0.5部を入れて210℃でポリエステル化反応をさせ、ポリエステル樹脂bを得た。得られたポリエステル樹脂bはTgが57℃、軟化点が132℃、THF不溶分が23%であった。
【0179】
(ポリエステル樹脂cの製造)
反応槽中にビスフェノールAのPO 2モル付加物65部、ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5.3)のPO 5.3モル付加物3部、テレフタル酸20部、イソフタル酸5部、無水トリメリット酸7部、およびジブチルチンオキサイド0.5部を入れて210℃でポリエステル化反応をさせ、ポリエステル樹脂cを得た。得られたポリエステル樹脂cはTgが57℃、軟化点が164℃、THF不溶分が35%であった。
【0180】
(樹脂Aの製造)
樹脂aを50部、樹脂bを50部、ポリエチレンワックス(軟化点104℃)4部を乾式混合し、120℃に設定された二軸押出機で溶融混練して樹脂Aを得た。
【0181】
(樹脂B〜Dの製造)
樹脂Aの製造において、樹脂a、樹脂b、樹脂cおよびワックスの配合を表1に示すように変えた以外は上記樹脂Aと同様にして樹脂B〜樹脂Dを得た。得られた樹脂A〜Dの物性を表1に示す。
【0182】
【表1】
Figure 2004151439
【0183】
(樹脂Eの製造)
樹脂aを75部、樹脂cを25部、ポリエチレンワックス(軟化点104℃)4部、及びジ−tert−ブチルサリチル酸Al化合物1部を乾式混合し、120℃に設定された二軸押出機で溶融混練して樹脂Eを得た。得られた樹脂EはTgが58℃、軟化点が119℃、酸価が12mgKOHであった。
【0184】
(樹脂Fの製造)
反応槽中に、ビスフェノールAのPO 2モル付加物65部、ビスフェノールAのEO 2モル付加物5部、テレフタル酸25部、無水トリメリット酸5部、およびジブチルチンオキサイド0.5部を入れ、210℃でポリエステル化反応をさせて樹脂Fを得た。得られた樹脂Fは、Tgが65℃、軟化点が130℃、酸価が15mgKOH/gであった。
【0185】
(樹脂Gの製造)
樹脂aを70部、樹脂bを30部を乾式混合し、120℃に設定された二軸押出機で溶融混練して樹脂Gを得た。得られた樹脂GはTgが56℃、軟化点が96℃、酸価が15mgKOH/gであった。
【0186】
<実施例1>
ポリエステル樹脂A 100質量部、球形磁性酸化鉄90質量部、下記式に示される金属錯体型モノアゾ化合物2質量部を予め均一に混合し、これを130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕した後、得られた粉砕物を風力分級し、重量平均径(D4)6.3μmの分級粉を得た。
【0187】
【化4】
Figure 2004151439
【0188】
この分級粉100質量部に対し、疎水化処理シリカ微粉体1.2質量部を外添してトナー1を得た。トナー1の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。また、このトナーの温度とG’との関係、温度とG”との関係および温度とtanδとの関係をそれぞれ示すグラフを図10に示す。
【0189】
得られたトナー1の評価を以下のように行った。トナー評価用の装置としては、紙送り速度がA4縦送りで40枚/分の、図1に示す構成の画像形成装置を用い、加熱定着装置の基本的構成として、加熱用ヒータ11としては図5に示す構成のものを用いた。
【0190】
金属製スリーブ13(図2参照)として内径30mm、厚み50μmの円筒状ステンレス鋼にプライマー層を5μm、PFA樹脂を10μmの厚みでディッピングによって塗布して外径30.13mmの円筒状に形成したものを用いた。金属製スリーブ13の内面の表面粗さRzを2μm、外面の表面粗さRzを2μmとした。
【0191】
また、加圧ローラ20(図2参照)は、φ20mmのAl芯金21に、シリコーンゴム層を厚み5mmで形成し、さらに外層にはPFAチューブを被覆したものを用いた。
【0192】
画像形成装置の定着ニップNの設定温度を180℃とし、定着装置全体が室温に冷えた状態から、加熱用ヒータ11の通電発熱抵抗層11bへの通電を開始して5秒後に、未定着トナー画像が形成された記録材Pの先端が定着ニップNに突入するように給紙のタイミングを調整した。ちなみに通電を開始して3秒後の定着ニップNの温度をモニターしたところ、既に設定温度に達していた。
【0193】
以下にトナーの評価方法を説明する。
【0194】
1.定着性評価:
A4普通紙(64g/m)及びA4上質紙(105g/m)を用い、画像形成装置の定着ニップNの設定温度を140℃、150℃、160℃の3段階に変え、定着装置全体が室温に冷えた状態から、一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像をそれぞれ連続30枚プリントした。その各30枚の画像全てについて、50g/cmの荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を算出して、以下の基準により評価した。
【0195】
ランクA:平均濃度低下率の最悪値が5%未満
ランクB:平均濃度低下率の最悪値が5%以上10%未満
ランクC:平均濃度低下率の最悪値が10%以上
【0196】
2.低温オフセット評価:
A4普通紙(64g/m)、A4再生紙(平均平滑度30μmのラフ紙)及びA4上質紙(105g/m)を用い、画像形成装置の定着ニップNの設定温度を140℃、150℃の2段階に変え、定着器全体が室温に冷えた状態から、紙の先端から形成されている幅が100mmのベタ画像をそれぞれ1枚ずつプリントした。プリント時の低温オフセットの発生について、以下の基準により評価した。
【0197】
ランクA:140℃設定で発生しない
ランクB:140℃設定で発生するが150℃設定で発生しない
ランクC:150℃設定で発生する
【0198】
3.高温オフセット評価:
A4普通紙(64g/m)を用い、高温オフセットが発生するまで画像形成装置の定着ニップNの設定温度を上げていった。高温オフセットが発生したときの温度により以下の基準で評価した。
【0199】
ランクA:230℃設定で発生しない
ランクB:210から230℃設定で発生する
ランクC:200℃以下の設定で発生する
【0200】
トナー1について以上の評価を行った結果、表3に示すとおり低温定着性、耐低温オフセット性、耐高温オフセット性のいずれにおいても、紙種によらず非常に良好な結果が得られた。
【0201】
<実施例2〜4>
実施例1において、樹脂Aの代わりに樹脂B〜Dをそれぞれ用いた以外は上記実施例1と同様の方法によりトナー2〜トナー4を得た。得られたトナー2〜トナー4の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。
【0202】
上記トナー2〜トナー4を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、実施例2については実施例1と同様に、非常に良好な結果が得られた。実施例3では厚手の上質紙を用いた低温定着性、及び低温オフセット性においては実施例1より若干劣るものの、充分な結果が得られた。実施例4では高温オフセットの評価において、やや低い温度で高温オフセットが発生したものの、実用にはまったく問題のないレベルの非常に良好な結果であった。評価結果を表3に示す。
【0203】
<実施例5>
実施例1において、樹脂Aの代わりに樹脂製造例で用いた樹脂bを100部と、ポリエチレンワックス(軟化点104℃)4部とを用いた以外は実施例1と同様の方法によりトナー5を得た。トナー5の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。
【0204】
上記トナー5を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、表3に示すとおり、厚手の上質紙においては低温定着性、低温オフセット性のランクが低下したものの、実用にはまったく問題のないレベルの良好な結果が得られた。
【0205】
<実施例6>
実施例1において、樹脂Aの代わりに樹脂Eを用いた以外は上記実施例1と同様の方法によりトナー6を得た。トナー6の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。
【0206】
上記トナー6を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、表3に示すとおり、厚手の上質紙の低温定着性、低温オフセット性のランクが若干低下し、高温オフセットの評価において、やや低い温度で高温オフセットが発生したものの、実用にはまったく問題のないレベルの良好な結果が得られた。
【0207】
<比較例1>
実施例5において、樹脂bの代わりに樹脂Fを用いた以外は上記実施例5と同様の方法により比較トナー1を得た。比較トナー1の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。
【0208】
上記比較トナー1を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、表3に示すとおり、特に厚手の上質紙の低温定着性が著しく劣っていた。低温オフセット性においても、かろうじて普通紙のみ実用可能なレベルで、厚手の上質紙、及び表面の荒れたラフ紙を用いた評価においてはこの定着スピードに対応できなかった。
【0209】
<比較例2>
実施例5において、樹脂bの代わりに樹脂Gを用いた以外は上記実施例5と同様の方法により比較トナー2を得た。比較トナー2の粘弾性およびその他の物性の測定結果を表2に示す。
【0210】
上記比較トナー2を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、表3に示すとおり、高温オフセットのレベルが著しく劣っており、実用不可の領域であった。
【0211】
【表2】
Figure 2004151439
【0212】
【表3】
Figure 2004151439
【0213】
【発明の効果】
本発明によれば、従来達成が困難であった電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着が可能となる。特に、従来高速で定着することが困難であった厚手の用紙などにおいても、定着スピードを落とすことなく定着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図
【図2】加熱定着装置の一例を示す概略構成図
【図3】図2の定着ニップ部近傍の部分拡大図
【図4】加熱定着装置の縦断面図(図2のI−I線に沿った模式的断面図)
【図5】加熱用ヒータの他の実施形態を表す部分模式図
【図6】金属製スリーブ製造方法である深絞り加工の説明図
【図7】製造途中の金属製スリーブの形状を説明する図
【図8】(a)と(b)は金属製スリーブ製造方法であるしごき加工の説明図、(c)はしごき加工終了時の金属製スリーブの形状を説明する図
【図9】金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図
【図10】実施例1のトナーの温度と貯蔵弾性率(G’)との関係、温度と損失弾性率(G”)との関係、および温度とtanδとの関係をそれぞれ示すグラフ
【符号の説明】
11 加熱用ヒータ
12 断熱ステイホルダー
13 加熱用金属製スリーブ
14 温度検知素子
20 加圧部材
24 バイアス印加手段

Claims (6)

  1. 可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーであって、
    結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
    損失弾性率G”が1×10〜1×10Paの範囲における損失正接tanδ1が1.0〜2.0であり、
    損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδ2が0.5〜1.0であることを特徴とするトナー。
  2. 前記損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδaと、前記損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδbとが、下記の関係を満足することを特徴とする請求項1記載のトナー。
    Figure 2004151439
  3. 前記結着樹脂が、少なくとも構成単位としてノボラックを含むポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
  4. 記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
    前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着させる定着工程を含み、
    前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
    前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
    前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
    前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
    前記トナーは、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδが1.0〜2.0であり、且つ損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδが0.5〜1.0であることを特徴とする画像形成方法。
  5. 記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成装置であって、
    前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させる定着手段であって、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブに平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有する定着手段を有し、
    前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
    前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
    前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
    前記トナーは、損失弾性率G”が1×10〜1×10Paのときの損失正接tanδが1.0〜2.0であり、且つ損失弾性率G”が1×10Paのときの損失正接tanδが0.5〜1.0であることを特徴とする画像形成装置。
  6. 前記加熱用金属製スリーブにおいて、前記円筒状金属素管の内面および外面の表面粗さがRz=3μm以下であると共に、前記円筒状金属素管の外面には接着層を含む離型性層が厚み20μm以下で形成されていることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
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