JP2004151438A - トナー、画像形成方法および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱用金属製スリーブと加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーを、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性4Paを示す温度が95〜120℃であり、失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃である構成とした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、トナージェット方式記録法などを利用した記録方法に用いられるトナー、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用した画像形成装置に具備される定着装置においては、未定着トナー像を担持した記録材を、互いに圧接して回転する定着ローラーと加圧ローラーとにより形成されるニップ部を通過させることにより、記録材上に未定着トナー像を定着させる、いわゆる加熱定着装置が広く用いられている。
【0003】
また、特にスタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた方法、詳しくはヒータ部と加圧ローラーの間に薄肉のフィルムを介して記録材上のトナー像を定着するフィルム加熱方式による加熱定着方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
定着ローラーを用いた加熱定着装置の場合、定着ローラー芯金の肉厚が機械的強度を満足するためには1〜4mm程度必要となり、大きな熱容量を有するため、電源投入直後に定着画像を得ることができず、スタンバイ状態になるまで数分程度かかるのが普通である。また、待機中に定着ローラーを予備加熱しておく必要があるため、消費電力が多いという問題を有している。
【0005】
一方、フィルム加熱方式の加熱定着装置では、定着装置の熱容量が小さく、電源投入直後に定着可能な状態となるため、ウェイトタイムの大幅な短縮と、待機中の予備加熱を必要としないため、消費電力の大幅な低下を実現した。
【0006】
しかし、従来の定着フィルムは熱伝導性の悪い樹脂層により形成されているため、定着速度を高速化するほど、また記録材が厚くなるほど連続プリント時のニップ部の温度変化に対して温度調節の追随性が悪くなるため、温度変化の波が大きくなりやすくニップ部の設定温度と実際の温度の差が生じやすい。そのため、定着不良や高温オフセットを生じ、高速化することが困難であった。また、厚紙などの熱伝導性が悪く、吸熱量の大きな記録材に未定着トナー像を問題なく定着させるためには、定着スピードを落とすなどの特殊なモードを設定して対応せざるを得なかった。
【0007】
さらに、フルカラー画像を形成する画像形成装置においては、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のトナー又はそれに黒色トナーを加えた4色のトナーを重ねることで色再現が行われるが、フィルム加熱方式の加熱定着装置を用いた場合はフィルム耐久性の制限のために定着ニップ部の加圧力をあまり大きくすることが出来ない。このため、加圧力による圧着時の混色性やトナー表面の平滑性が不足してしまい、特にオーバーヘッドプロジェクターシートでの色の透過性を満足するためには、定着速度を大幅に遅くする特殊なモードを設定して対応せざるを得ず、高速化は困難であった。
【0008】
また、従来のトナーを用いた場合、上記フィルム定着装置による定着方法ではシリコーンオイル等の離型オイルを供給する定着方法と組み合わせて用いないと、記録材の装置への巻きつきやオフセットを生じやすい。シリコーンオイル等の離型オイルを用いる場合、定着後のシート表面のべたつきが問題となっている。
【0009】
また、フルカラー画像形成装置の場合、グロス(光沢)を自由にコントロール可能とすることも要望される。また、高速化したときには温度調節の波が大きくなりやすく、その温度差によりグロスのムラが生じやすい。
【0010】
従来より、定着性や画像のグロスとトナーの粘弾性の関係については知られている。例えば、離型剤を含有し、150℃での貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”がそれぞれ104dyn/cm2以上で、かつ見掛け粘度が0.1〜5×103Pa・secであるトナーが提案されているが、トナーの粘弾性を150℃の1点でのみとらえているため、低温定着性、及び、得られる画像のグロスの幅を議論するには不十分である(例えば、特許文献5参照)。実際に上記条件を満たしたトナーについてテストしたところ、低温定着性、得られる画像のグロス幅とも不十分なものであった。
【0011】
また、180℃における貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を規定したトナーが提案されているが、これも同様にトナーの粘弾性を180℃の1点でのみとらえているため、低温定着性、及び、得られる画像のグロスの幅を議論するには不十分である(例えば、特許文献6参照)。
【0012】
また、トナーの体積平均粒径と170℃における貯蔵弾性率G’の関係を式で規定したトナーが提案されているが、これも同様にトナーの粘弾性を170℃の1点でのみとらえているため、低温定着性、及び、得られる画像のグロスの幅を議論するには不十分である(例えば、特許文献7参照)。
【0013】
また、130℃において角周波数を振って測定した貯蔵弾性率G’及びtanδを規定した特定のアルコール成分を含むポリエステル樹脂を含むトナーが提案されているが、樹脂の粘弾性が規定されていても、トナーの粘弾性はトナー化する際の処方や製法により大きく変化するため、トナーの低温定着性、及び得られる画像のグロスの幅を議論するには不十分であり、実際に上記樹脂を使用したトナーでも低温定着性、得られる画像のグロス幅とも不十分なものが存在する(例えば、特許文献8参照)。
【0014】
また、分子量を規定したビニル系樹脂からなるトナーの160℃及び180℃における貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を規定したトナーが提案されているが、低温定着性、得られる画像のグロス幅ともいまだ十分なレベルではない(例えば、特許文献9参照)。
【0015】
また、結着樹脂100質量部に対して低軟化点物質を5〜40質量部含有するトナーの60℃及び80℃における貯蔵弾性率G’の比(G’60/G’80)と、155℃及び190℃における貯蔵弾性率G’の比(G’155/G’190)を規定したトナーが提案されている(例えば、特許文献10参照)。しかしながら、トナー中に含有される低軟化点物質はトナーの定着時に高温オフセットの発生を抑制するように機能する成分であり、この様な成分としては、一般にワックスが用いられるが、ワックスは結晶性を有している物質であるため、オーバーヘッドプロジェクターシートの投影画像での色再現性及び透過性に対して影響を与える。従って、これらの低軟化点物質の含有量を少なくした上で同等の耐高温オフセット性及び低温定着性を有し、かつ、トナーに与えられる定着熱量の加減により自由に画像のグロスをコントロール可能とすることが望まれる。
【0016】
更に、スチレン−アクリル系樹脂からなるトナーの90℃と150℃における貯蔵弾性率G’を規定したカラートナーが提案されているが、これは定着時のトナー画像の平滑性を上げるものであり、画像のグロスは高く、さらに定着器へのオイル塗布が必須となっている(例えば、特許文献11参照)。
【0017】
定着分離性やオフセット防止に対しては、架橋した結着樹脂を用いて溶融時での流動化を抑える方法が有効である。例えば、樹脂を非線状化又は架橋化することによってオフセット現象を抑制する方法や(例えば、特許文献12、特許文献13及び特許文献14参照)、ポリエステル樹脂を金属イオン架橋化してオフセット現象を改善する方法が(例えば、特許文献15〜特許文献19参照)、それぞれ提案されている。しかし結着樹脂の架橋度が増大するにつれ、画像のグロスは高くなりにくく、さらにトナーの迅速な溶融性が低下し、高温でなければ定着しにくくなる傾向がある。
【0018】
また、結着樹脂の分子量分布の幅を広くすることによりオフセット現象を抑制する方法もあるが、一般に樹脂の重合度が高くなり定着温度も高く設定する必要がある(例えば、特許文献20及び特許文献21参照)。
【0019】
別の方法として、トナー中にワックス類を含有させる技術があるが、ワックスのみですべてを満足することは出来ず、バインダー樹脂の特性に依存するところが大きい(例えば、特許文献22〜特許文献29参照)。
【0020】
上記したように従来技術では、電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いて高速定着したときに、低温オフセットと高温オフセットの両立に対して充分な性能を有し、さらにフルカラー画像の色再現性及びオーバーヘッドプロジェクターシート上での色再現・透過性、さらに画像のグロスを自由にコントロールすることが可能な定着方法及びトナーは、現状では十分なものが無く、未だ改良すべき課題を残している。
【0021】
【特許文献1】
特開昭63−313182号公報
【特許文献2】
特開平2−157878号公報
【特許文献3】
特開平4−44075号公報
【特許文献4】
特開平4−204980号公報
【特許文献5】
特開平6−59502号公報
【特許文献6】
特開平5−142963号公報
【特許文献7】
特開平8−54750号公報
【特許文献8】
特開平8−334930号公報
【特許文献9】
特開平10−133422号公報
【特許文献10】
特開平9−34163号公報
【特許文献11】
特開平6−175395号公報
【特許文献12】
特公昭57−493号公報
【特許文献13】
特開昭50−44836号公報
【特許文献14】
特開昭57−37353号公報
【特許文献15】
特開昭61−213858号公報
【特許文献16】
特開平1−295269号公報
【特許文献17】
特開平1−30061号公報
【特許文献18】
特開平1−302267号公報
【特許文献19】
特開平3−96964号公報
【特許文献20】
特公昭55−6895号公報
【特許文献21】
特開昭56−98202号公報
【特許文献22】
特開昭52−3304号公報
【特許文献23】
特開昭52−3305号公報
【特許文献24】
特開昭57−52574号公報
【特許文献25】
特開昭61−138259号公報
【特許文献26】
特開昭56−87051号公報
【特許文献27】
特開昭63−88158号公報
【特許文献28】
特開昭63−113558号公報
【特許文献29】
特開平8−030036号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いて高速定着を可能とし、低温オフセット、高温オフセットを発生することなく、充分な定着性を有するトナー、画像形成方法及び装置を提供することを課題とする。
【0023】
また、本発明は、フルカラー高速定着時に用いられるシリコーンオイル等による記録材表面のべたつきがなく、オーバーヘッドプロジェクターシートでの色再現・透過性を満足し、安定して所望のグロスにコントロール可能なトナー、画像形成方法及び装置を提供することを課題とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、THF可溶分の最大吸熱ピークを有し、且つ特定の粘弾性特性を有するトナーを用いることにより、オンデマンドタイプの加熱定着装置においても高速定着を可能とすることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0026】
(1)可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーであって、
結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とするトナー。
【0027】
(2)前記損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6〜2.0であることを特徴とする(1)のトナー。
【0028】
(3)170℃における貯蔵弾性率G’170および損失弾性率G”170が1×102〜1×104Paであることを特徴とする(1)または(2)のトナー。
【0029】
(4)170℃における損失正接tanδ170と150℃における損失正接tanδ150の比(tanδ170/tanδ150)が1.05〜1.6であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのトナー。
【0030】
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピークが分子量2,000〜30,000の領域にあり、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が100より大きいことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのトナー。
【0031】
(6)前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量1万以下の成分の含有量(M1)が35〜55%であり、分子量1万超5万以下の成分の含有量(M2)が30〜45%であり、分子量5万超50万以下の成分の含有量(M3)が8〜20%であり、分子量50万超の成分の含有量(M4)が2〜12%であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのトナー。
【0032】
(7)前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量1万以下の成分の含有量(M1[%])、分子量1万超5万以下の成分の含有量(M2[%])、分子量5万超50万以下の成分の含有量(M3[%])、及び分子量50万超の成分の含有量(M4[%])が下記の関係を満足することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのトナー。
【0033】
【数4】
75[%] ≦ M1+M2 ≦ 90[%]
M1 > M2 > M3 > M4
【0034】
(8)前記結着樹脂は、非線状ポリエステル樹脂を有しており、
該非線状ポリエステル樹脂は、(a)3価以上のポリカルボン酸成分と、(b)炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び/又は炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分とを少なくとも有する組成物より合成されるものであり、
前記組成物中の前記3価以上のポリカルボン酸成分の含有量A[mol%]と、前記炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸および前記ポリアルコール成分の総含有量B[mol%]とが、下記の関係を満足することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかのトナー。
【0035】
【数5】
0.5 ≦ A ≦ 10
5 ≦ B ≦30
2 ≦ B/A ≦10
【0036】
(9)有機金属化合物をさらに含有し、前記組成物中の前記3価以上のポリカルボン酸成分の含有量A[mol%]と、トナー中の有機金属化合物の含有量C[質量%]とが下記の関係を満足することを特徴とする(8)のトナー。
【0037】
【数6】
0.2 ≦ C ≦ 10
2 ≦ A×C ≦ 50
【0038】
(10)前記有機金属化合物は、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸金属錯体、アルキルサリチル酸金属錯体、ジアルキルサリチル酸金属錯体、オキシナフトエ酸金属錯体、ヒドロキシカルボン酸、ポリカルボン酸金属錯体及びカルボン酸の金属塩からなるグループから選択されることを特徴とする(9)のトナー。
【0039】
(11)前記有機金属化合物は、アルミニウムまたはジルコニウムと、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合してなる有機金属化合物であることを特徴とする(9)または(10)のトナー。
【0040】
(12)前記着色剤として染料又は顔料を含有するカラートナーであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかのトナー。
【0041】
(13)少なくともシアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、シアン着色剤を含有するシアントナーであることを特徴とする(12)のトナー。
【0042】
(14)少なくともシアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、マゼンタ着色剤を含有するマゼンタトナーであることを特徴とする(12)のトナー。
【0043】
(15)少なくともシアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、イエロー着色剤を含有するイエロートナーであることを特徴とする(12)のトナー。
【0044】
(16)少なくともシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、ブラック着色剤を含有するブラックトナーであることを特徴とする(12)のトナー。
【0045】
(17)記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着させる定着工程を含み、
前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
前記トナーの損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とする画像形成方法。
【0046】
(18)前記定着工程において、前記定着手段から前記記録材にシリコーンオイルを供給せずに定着を行うことを特徴とする(17)の画像形成方法。
【0047】
(19)記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させる定着手段であって、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有する定着手段を有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
前記トナーの損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とする画像形成装置。
【0048】
(20)前記加熱用金属製スリーブにおいて、前記円筒状金属素管の内面および外面の表面粗さがRz=3μm以下で形成されているとともに、前記円筒状金属素管の外面には接着層を含む離型性層が厚み20μm以下で形成されていることを特徴とする(19)の画像形成装置。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に使用され、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とする。
【0050】
また、本発明の画像形成方法は上記本発明のトナーを用いるものであり、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって記録材上に定着させる定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ部を通過させることにより、未定着トナー画像を記録材上に定着させるものである。
【0051】
本発明者らは上記のような定着工程を含む画像形成方法に上記本発明のトナーを使用することにより、定着部材を瞬時に所要定着温度まで昇温できるクイックスタート性を達成でき、プリント時にのみ定着部材を加熱することで待機時の省エネルギーを達成できるオンデマンドタイプの加熱定着装置においても高速定着を可能とすることを見出した。
【0052】
特に、本発明においては、3色以上のトナーを用いるフルカラー画像においても、高速で十分な定着性を得ることが可能なオンデマンドタイプの加熱定着装置を備えた画像形成装置を構成することができる。
【0053】
フィルム加熱方式等のオンデマンドタイプの装置においては、従来の熱ローラータイプの定着器と比較した場合ニップ部の加圧が弱くなるため、3色以上のトナーを重ねて用いるフルカラー画像を高速定着する場合においては、未定着トナー像を形成するトナー層の最表面に存在するトナーと最底面に存在するトナーとでは軟化状態に差が生じて、低温オフセットの防止及びオーバーヘッドプロジェクターシートでの色再現・透過性を満足するのが一般に困難である。
【0054】
ここで本発明のトナーはDSC測定により得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜130℃の範囲にある。トナーのDSC測定による吸熱曲線の最大吸熱ピークは、実質的にはトナーに含有されるワックスの融点を表すものである。従って、本発明のトナーは融点が60〜130℃である低融点ワックスを含有するものである。このような本発明のトナーは、低融点ワックスの効果により定着時に瞬時にトナー層を一体化し、さらに定着温度領域における損失弾性率G”を特定の値としているため溶融したトナーの粘着性を抑えて定着装置側への付着が防止されるので離型オイルを全く使用しなくとも低温オフセットを防止することができる。また、本発明のトナーは上記のような粘弾性特性を有するため定着ニップ部の加圧が弱くてもトナーの変形が充分になされるため、オーバーヘッドプロジェクターシートでの色再現・透過性を満足する定着方法を実現することができる。
以下、本発明の構成について詳しく説明する。
【0055】
〈本発明のトナー〉
本発明のトナーは、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた画像形成方法に使用されるトナーであって、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃(好ましくは95〜110℃、より好ましくは95〜105℃)、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃(好ましくは100〜115℃、より好ましくは100〜110℃)、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃(好ましくは110〜130℃、より好ましくは110〜120℃)であることを特徴とする。
【0056】
本発明のトナーにおいては、損失弾性率G”がそれぞれ3×104Pa、2×104Pa及び1×104Paを示す温度を規定している。「損失弾性率G”」は、高分子における粘性すなわち、応力に対する不可逆な性質を表す指標であり、定着の場面においては記録材が定着装置の定着ニップ部を通過する時にかけられる圧力に対してのトナーの変形のしやすさを表すものである。
【0057】
本発明で規定している損失弾性率G”が3×104Paより高い領域は、圧力により若干変形はするが、まだ記録材への接着を開始しない領域である。一方の損失弾性率G”が1×104Paを下回る領域は、定着装置のニップ部通過時の圧力に対してトナーの変形が大きすぎて流動が起こるため、高温オフセットを生じる領域になる。従って、本発明で規定した損失弾性率G”の値は、定着装置のニップ部通過時の実際に記録材に定着されるときのトナーの粘弾性特性と同じ状態を規定したものであり、それぞれの値における温度は、定着開始温度、定着可能温度領域に深く関係する。
【0058】
損失弾性率G”が3×104Paを示す温度を90〜115℃、好ましくは95〜110℃とすることにより、保存安定性を損なうことなく、低温でのオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着性において十分な性能を発揮できる。損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90℃未満の場合には、トナーの保存安定性が損なわれることがあり、115℃を超える場合には、低温でのオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着性が不十分となる。
【0059】
損失弾性率G”が2×104Paを示す温度を95〜120℃とすることは、トナーの軟化速度を適度に保ち、画像のグロスのコントロール、定着領域の拡大の基本となる。この損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95℃未満の場合には、高温オフセットや定着装置の回転加熱部材と記録材の分離がされにくく、120℃を超える場合には、低温でのオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着性が不十分となる。
【0060】
損失弾性率G”が1×104Paを示す温度を105〜135℃、好ましくは110〜130℃とすることにより、トナーの急激な軟化を抑えることが可能なため急激に画像のグロスを過度に上昇させることなく、画像のグロスを定着熱量に応じて自由にコントロール可能となる。損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105℃未満である場合には、トナーの急激な軟化が起こるため定着温度領域が狭く、急激に画像のグロスが高くなるために低グロスにコントロールすることが難しい。一方上記温度が135℃を超える場合には、トナーが軟化しにくくなるため低温でのオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた高速定着性が不十分となる。
【0061】
また、本発明のトナーは、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6〜2.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5の範囲である。
【0062】
損失弾性率G”に対して「貯蔵弾性率G’」は、高分子における弾性すなわち、応力に対する可逆な性質を表す指標であり、定着の場面においては記録材が定着装置のニップ部を通過する時にかけられた圧力によるトナーの変形後の復元力を表すものである。これは、定着画像表面の平滑性に大きく影響し、画像のグロス及びオーバーヘッドプロジェクターシートの透過性に深く関係する。また、「復元力が高い」ということは、分子内部の分子自体ののび縮みによる影響が強いことを示し、軟化したトナーの流動を制限するため、高温オフセットにも深く関係する。
【0063】
本発明で規定した損失正接tanδは、その両者のバランスを表す指標であり、トナーの定着領域である損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示す温度領域における損失正接tanδを規定した意味は、上記のような関係に基づくものである。
【0064】
損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6〜2.0、好ましくは0.7〜1.5である場合、損失弾性率と貯蔵弾性率のバランスが、本発明の目的の一つであるグロスのコントロールに対して非常に優れるため、トナー画像に与える熱量に応じて画像のグロスをコントロールすることが出来る。
【0065】
通常、定着画像のグロスの値が10程度であれば、トナー画像表面は十分に平滑であるため、良好なオーバーヘッドプロジェクターシート透過性が得られる。従来技術では所望の透過性を有する画像を得るために、定着速度を遅くしなければ対応できなかった。しかし本発明のトナーは瞬時に画像表面の平滑性を得ることができるので、定着速度を変えることなく十分なオーバーヘッドプロジェクターシート透過性を得ることが可能である。
【0066】
トナーの損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示す温度領域におけるtanδが0.6未満の場合には、トナーの定着時の粘弾性特性において、粘性に対して弾性が強くなるため、定着装置ニップ部通過時の圧力により一度平滑にされた画像表面が、圧力から開放された時にトナーの応力に対する復元力により荒れやすく、グロスの低下、オーバーヘッドプロジェクターシート透過性の悪化が生じやすい。反対に2.0を超える場合には、定着時にトナーが溶融した状態での粘着性が高く、分離性が悪くなる傾向がある。
【0067】
また、本発明のトナーは、170℃における貯蔵弾性率G’170及び損失弾性率G”170は1×102〜1×104Paであることが好ましく、より好ましくは2×102〜5×103Paである。
【0068】
さらに、本発明のトナーにおいて、170℃における損失正接tanδ170と150℃における損失正接tanδ150の比(tanδ170/tanδ150)は1.05〜1.6であることが好ましく、より好ましくは1.15〜1.4である。
【0069】
この領域の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の値、及び温度によるtanδの変化のしかたを制御することで、軟化したトナーの流動性を制御して、高温オフセットの発生を抑えることが可能となり、与える定着熱量に応じて画像のグロスを自由にコントロールすることが可能となる。
【0070】
170℃における貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”のいずれかが、1×102Pa未満の場合には、高温オフセットが発生しやすくなり、1×104Paを超える場合には、低温での定着性が不十分となり易い。
【0071】
tanδ170とtanδ150の比(tanδ170/tanδ150)が1.05未満の場合には、定着熱量を上げてもグロスが上昇し難く、1.6を超える場合には、定着熱量を下げてもグロスが急激に高くなり易いため、低いグロスの画像を得ることが難しくなる。
【0072】
本発明においては、損失弾性率G”が3×104Paを示すときのtanδの値と、G”が1×104Paを示すときのtanδの値との差の絶対値が0.4未満であることが、定着領域の拡大に対して効果があり好ましい。
【0073】
この値が0.4以上の場合には、非オフセット領域が狭くなる傾向がある。例えば低温で軟化する樹脂成分の中に低温では軟化しないゲル領域の高分子量のものがドメインとして少量混在するときなどでは、トナーの損失弾性率G”が3×104Paのときの値と、G”が1×104Paのときの値との差の絶対値は0.4以上となる。
【0074】
また、本発明のトナーは示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあることを特徴とする。この最大吸熱ピークは60〜125℃の範囲にあることが好ましく、60〜120℃の範囲にあることがより好ましい。
【0075】
本発明ではトナーのDSC測定において、上記領域に最大吸熱ピークを存在させるためには、同領域に最大吸熱ピークを有する低融点のワックスを、トナー中に0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜4.5質量%含有させればよい。このような特定のワックスをトナーに含有させることで、トナー中に含有されている特定のワックスが耐高温オフセット性を改良すると共に、定着時の画像の定着部材(加熱用金属製スリーブ)からの分離性に対して顕著に機能して、定着画像の分離性の温度ラチチュード拡大に大きく寄与する。
【0076】
トナーの最大吸熱ピークが60℃未満の場合には、トナーの保存安定性に問題が生じ、135℃を超える場合には低温領域で定着装置の加熱用金属製スリーブからの記録材の分離性が低下して、定着可能温度領域が狭くなる。
【0077】
このように、粘弾性特性およびDSCにより得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークを特定の範囲に規定した本発明のトナーは、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって記録材上に定着させる定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ部を通過させることにより、未定着トナー画像を記録材上に定着させる、いわゆる待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いた画像形成方法と共に用いることにより、省エネルギーが達成されるオンデマンドタイプの加熱定着方法を用いた場合でも高速定着を可能とし、定着画像のグロスのコントロールが可能となり、オーバーヘッドプロジェクターシート上の画像の透過性を良好なものとすることができる。
【0078】
本発明で使用される金属製の定着フィルムは、従来使用されてきたポリイミドやポリアミドイミド、PEEK等の樹脂製の定着フィルムに比べて定着フィルムの強度が強い為に、フィルムが撓みにくく、定着ニップ部のフィルム内面とヒーターが接触する部分でフィルムがヒーターに密着しにくい。そのため、記録材がニップに入る部分と出る部分はヒーターとフィルムの隙間が大きく、ニップ中央部分はヒーターとの隙間が小さい構成となり、定着ニップ部が記録材進行方向に対して凹凸のある、平滑な面ではなくなる。その結果、低温オフセットが悪化しやすくなる。優れた定着性や耐高温オフセット性を達成しつつ低温オフセットを抑制する為には、定着器の構成に合ったトナーを組み合わせることが重要である。
【0079】
本発明に使用されるワックスは、トナーの損失弾性率G”が1×104Paを示す温度において、粘度が5〜200mPa・sを示すワックスであると、定着時の記録材の分離性に対してさらに効果が高くなる。この効果をより高めるためのワックスの上記粘度はより好ましくは5〜100mPa・s、さらに好ましくは5〜50mPa・sである。
【0080】
トナーの損失弾性率G”が1×104Paを示す温度において、ワックスの粘度が5mPa・s未満の場合には、トナーが接触する部材の汚染を生じることがあり、ワックスの粘度が200mPa・sを超える場合には、特に低温定着時の記録材の分離性に問題が生じ易い。
【0081】
上述したように、本発明のトナー中のワックスの含有量はトナーの0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜4.5%であることが好ましい。ワックスの含有量がトナーの0.2質量%未満の場合には、定着時の記録材の分離性が不十分になり易い。ワックスの含有量が10質量%を超える場合には、オーバーヘッドプロジェクターシートの投影画像の色再現性及び光透過性が低下し易く、さらに、トナー粒子中でワックスが均一分散している状態で存在している形態のトナーの場合には、トナー粒子表面に多量のワックスが存在するため、トナーの流動性及び耐ブロッキング性の低下が生じ易くなる。
【0082】
さらに、本発明のトナーは、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、特定の分子量領域にメインピークが存在する、特定の不均一な分子量分布を有することにより、さらに好ましくはテトラヒドロフラン(THF)不溶分を少量含むことにより、定着画像の自在なグロスコントロールが可能となり、与える定着熱量に応じて好みの光沢の画像を得ることができる。
【0083】
本発明においては、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の含有量が、トナーの全樹脂成分の質量を基準として0〜25質量%、好ましくは1.0〜10.0質量%、さらには2.0〜7.0質量%であることが良い。THF不溶分の含有量が25質量%より多い場合には、本発明のトナー特有の粘弾性特性を得ることが困難になる。
【0084】
また、本発明においては、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布において、メインピークが分子量2,000〜30,000の領域、好ましくは分子量5,000〜20,000の領域にあることが好ましい。本発明のトナーは、さらに、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が100より大きいことが好ましく、105〜2,000であることがより好ましく、110〜1,500であることがさらに好ましい。
【0085】
トナーのTHF可溶分のGPCによるメインピークが上記範囲の上限又は下限のいずれを外れる場合にも、本発明のトナー特有の粘弾性特性を得ることが困難となる。また、Mw/Mnが100以下の場合も同様である。
【0086】
さらに本発明のトナーは、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量が1万以下の成分の含有量(M1)が35〜55%(好ましくは35〜50%)であり、分子量が1万超5万以下の成分の含有量(M2)が30〜45%(好ましくは30〜40%)であり、分子量が5万超50万以下の成分の含有量(M3)が8〜20%(好ましくは8〜15%)であり、分子量が50万超の成分の含有量(M4)が2〜12%(好ましくは2〜10%)であることが好ましい。
【0087】
また、上記各含有量M1、M2、M3及びM4が下記の関係を満足することが、定着画像のグロスのコントロールの点で好ましい。
【0088】
【数7】
75[%] ≦ M1+M2 ≦ 90[%]
M1 > M2 > M3 > M4
【0089】
さらに好ましくは、上記各含有量M1、M2、M3及びM4が下記の関係を満足することである。
【0090】
【数8】
75[%] ≦ M1+M2 ≦ 85[%]
M1 > M2 > M3 > M4
【0091】
本発明のトナーにおいて、分子量が1万以下の成分の含有量(M1)が35%未満の場合には、グロスが高くなり難く、低温定着性が悪化しやすい。55%を超える場合には、オフセットが生じ易い。分子量が1万超5万以下の成分の含有量(M2)が30%未満の場合には低温定着性が悪化しやすく、45%を超える場合にはオフセットが生じ易い。
【0092】
分子量5万超50万以下の成分の含有量(M3)が8%未満の場合には、温度に対してトナーが急激に軟化するため低いグロスの画像が得られにくく、また高温での定着分離性が悪化する傾向がある。20%を超える場合には高グロスの画像が得られにくい。分子量50万超の成分の含有量(M4)が2%未満の場合には、温度に対してトナーが急激に軟化するため低いグロスの画像が得られにくく、また高温で定着分離性が悪化する傾向があり、12%を超える場合には、オーバーヘッドプロジェクターシート投影画像の色再現性及び光透過性が低下しやすくなる。
【0093】
M1+M2が75%未満の場合には、低温定着性、グロスコントロール及びオーバーヘッドプロジェクターシート光透過性を十分に向上させることが難しく、90%を超える場合には、トナーの軟化速度が速すぎるため非オフセット領域が狭くなりやすい。
【0094】
本発明においてトナーのTHF可溶分のメインピークの存在位置、Mw/Mn、およびM1、M2、M3、M4の値を上記範囲とする方法として、具体的には非線状ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用い、さらに有機金属化合物をトナーに含有させる方法が挙げられる。なお、これら非線状ポリエステル樹脂および有機金属化合物に関しては後述する。
【0095】
上述したトナーの特性値に係る測定方法を以下に示す。
【0096】
(トナーの粘弾性測定)
本発明において、トナーの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及びtanδは、以下に示す方法及び条件により測定する。
・使用装置:レオメトリックス社製レオメーターRDA−II型
・測定治具:直径25mmのパラレルプレート
・測定試料:トナーを直径25mm,高さ3mmの円盤状に圧縮成型して使用
・測定温度条件:80〜190℃まで毎分2℃で昇温
・測定周波数:6.28rad/sec
・測定歪の設定:自動測定モード(初期値を0.1%に設定)
・試料伸長補正:自動測定モード
【0097】
(トナーのTHF不溶分の含有量の測定)
トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF 200mlを用いて12時間抽出する。THF溶媒によって抽出された可溶分をエバポレートした後、100℃で一昼夜真空乾燥し、THF可溶の樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の顔料及びワックスのような樹脂成分以外の成分の質量を(W3g)とし、THF不溶分は、下記式から求められる。
【0098】
【数9】
THF不溶分(質量%)=[(W1−W3−W2)/(W1−W3)]×100
【0099】
(トナーのTHF可溶分の分子量分布の測定)
上記THF不溶分の含有量の測定において、ソックスレー抽出を行ったトナーサンプルのTHF可溶分とTHFとを約5〜25mg/5mlの濃度比で混合し、室温にて数時間放置のあと十分に振り混ぜ、更に一昼夜静置する。その後、上記混合物をサンプル処理フィルタ(ポアサイズ0.4〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンスジャパン社製等)を透過させたものを測定サンプルとして用いる。
【0100】
GPC測定装置においては、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。
【0101】
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出し、これよりメインピークが存在する分子量、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)、各分子量領域の成分の含有量(M1、M2、M3およびM4)を求める。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば、昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807及び800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、及びTSK guard columnの組み合わせを挙げることができる。
【0102】
GPC測定において、高分子量側はべースラインからクロマトグラムが立ち上がる開始点から測定を始め低分子量側・分子量約400までを分子量の算出範囲とする。測定装置は、GPC−150C(ウォーターズ社)を用いる。なお、本発明のトナーのTHF可溶分の分子量分布におけるメインピークが存在する分子量は、上記方法により得られる分子量分布における最大ピークのピークトップが存在する分子量を表す。
【0103】
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル;フェノール樹脂;天然変性フェノール樹脂;天然樹脂変性マレイン酸樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール;テルペン樹脂;クマロンインデン樹脂;石油系樹脂等が使用できる。
【0104】
本発明においては、この中でもポリエステル樹脂及びスチレン系共重合体を好ましく用いられる。
【0105】
本発明において、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いると、定着性に優れ、カラートナーに適したトナーが得られる。特に、ポリオール成分としての下記一般式(A)に示されるビスフェノール誘導体と、2価以上のカルボン酸、その酸無水物、又はその低級アルキルエステルから選択されるポリカルボン酸成分(例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)とを共縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0106】
【化1】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
【0107】
さらに、このポリエステル樹脂は、ポリオール成分とポリカルボン酸成分との共縮合時に、3価以上のポリカルボン酸及び/又は3価以上のポリアルコールを有する組成物から合成された非線状ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0108】
さらに本発明においては、トナーが結着樹脂としての上記の非線状ポリエステル樹脂と組み合わせて有機金属化合物を含有していることが、上述した特定の粘弾性特性、特定のTHF不溶分量及び特定のGPCによる分子量分布を有する本発明のトナーを製造できる点で好ましい。
【0109】
一般に有機金属化合物は、ポリエステルの末端極性基と結合し、金属架橋することが知られている。ポリマー中でこの架橋度合いをコントロールする手段として本発明者らは、立体障害性のあるソフトセグメントとしての炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び/又はポリアルコール成分と、金属架橋の反応確率の高い成分である3価以上のポリカルボン酸とを上記非線状ポリエステル樹脂を構成するポリマーとして選択し、これら各ポリマーの使用量の比と、トナー中の上記有機金属化合物の含有量を規定することが、特にフルカラー画像の定着時に要求される定着画像のグロスコントロール及び耐オフセット性との高度な両立に重要であることを見出した。
【0110】
本発明において、非線状ポリエステル樹脂を合成するためのポリカルボン酸成分とポリアルコール成分とを有する組成物は、少なくとも(a)3価以上のポリカルボン酸成分と、(b)炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び/又は炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分とを有し、この組成物中における3価以上の多価カルボン酸成分の含有量A[mol%]と、炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分の総含有量B[mol%]とが、下記の関係を満足することが好ましい。
【0111】
【数10】
0.5 ≦ A ≦ 10
5 ≦ B ≦ 30
2 ≦ B/A ≦10
【0112】
より好ましくは、上記AおよびBが下記の関係を満足することである。
【0113】
【数11】
1.5 ≦ A ≦ 6.5
10 ≦ B ≦ 25
2 ≦ B/A ≦ 10
【0114】
組成物中の3価以上のポリカルボン酸成分の含有量Aが0.5mol%未満の場合には、樹脂重合時の架橋反応、あるいはトナー製造時の有機金属化合物との架橋反応が良好に進行せず、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが2.0以上となりやすいため、非オフセット領域を広げることが難しくなる。また、それを抑えるために高分子量の樹脂を使用すると、低温での定着特性が低下しやすくなる。
【0115】
さらに、上記Aの値が10mol%を超える場合には、樹脂重合時の架橋反応、あるいはトナー製造時の有機金属化合物との架橋反応が促進され非オフセット領域は広がるが、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6以上となりやすいため、カラー画像に求められるグロスが低下し、定着温度を上げても高いグロスは得られにくくなる。また、オーバーヘッドプロジェクターシートにおける定着画像の光透過性や、低温定着性も低下しやすくなる。
【0116】
組成物中3価以上のポリカルボン酸成分の含有量(Amol%)と、炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分の総含有量(Bmol%)との比(B/A)が2未満の場合には、樹脂重合時の架橋反応、あるいはトナー製造時の有機金属化合物との架橋反応により非オフセット領域は広がるが、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6以上となりやすいため、カラー画像に求められるグロスが低下し、定着温度を上げても高いグロスは得られにくくなる。また、オーバーヘッドプロジェクターシート光透過性、低温定着性が低下しやすい。
【0117】
反対に上記B/Aが10を超える場合には、ソフトセグメントとしての炭素数5〜30の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分の立体障害により架橋性が低下し、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが2.0以上となりやすく、非オフセット領域を広げることが難しい。
【0118】
組成物中の炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分の総含有量(Bmol%)が、5mol%未満である場合、樹脂重合時の架橋反応、あるいはトナー製造時の有機金属化合物との架橋反応により非オフセット領域は広がるが、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6以上となりやすいため、カラー画像に求められるグロスが低下し、定着温度を上げても高いグロスは得られにくくなる。また、オーバーヘッドプロジェクターシートにおける定着画像の光透過性も低下し、低温定着性も低下しやすい。
【0119】
反対に上記Bの値が30を超える場合には、ソフトセグメントとしての炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分の立体障害により、架橋性が低下し、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが2.0以上となりやすく、非オフセット領域を広げることが難しい。
【0120】
さらに、本発明においては、組成物中の3価以上の多価カルボン酸成分含有量A[mol%]と、トナー中の有機金属化合物の含有量C[質量%]とが下記の関係を満足することが好ましい。
【0121】
【数12】
0.2 ≦ C ≦ 10
2 ≦ A×C ≦ 50
【0122】
より好ましくは、中グロス領域での温度安定性を発揮することから、上記AとCとが下記の関係を満足することである。
【0123】
【数13】
0.5 ≦ C ≦ 7
3 ≦ A×C ≦ 25
【0124】
トナー中の有機金属化合物の含有量が0.2質量%未満の場合には、有機金属化合物による架橋反応が良好に進行せず、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが2.0以上となりやすいため、非オフセット領域を広げることが難しくなる。また、それを抑えるために高分子量の樹脂を使用すると、低温での定着特性が低下しやすくなる。
【0125】
さらに、10質量%を超える場合には、有機金属化合物との架橋反応が促進し非オフセット領域は広がるが、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6以上となりやすいため、カラー画像に求められるグロスが低下し、定着温度を上げても高いグロスは得られにくくなる。また、オーバーヘッドプロジェクターシートにおける定着画像の光透過性、低温定着性が低下しやすくなる。
【0126】
組成物中3価以上のポリカルボン酸成分の含有量(Amol%)と、トナー中の有機金属化合物の含有量(C質量%)との積(A×C)が2未満の場合には、架橋性が低下し、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが2.0以上となりやすいため、非オフセット領域を広げることが難しくなる。また、それを抑えるために高分子量の樹脂を使用すると、低温での定着特性が低下しやすくなる。
【0127】
さらに、上記A×Cが50を超える場合には、有機金属化合物との架橋反応が促進し非オフセット領域は広がるが、損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6以上となりやすいため、カラー画像に求められるグロスが低下し、定着温度を上げても高いグロスは得られにくくなる。また、オーバーヘッドプロジェクターシートにおける定着画像の光透過性、低温定着性が低下しやすくなる。
【0128】
本発明に用いられる有機金属化合物としては、有機金属錯体、金属塩、金属錯塩及びキレート化合物が挙げられ、例えばモノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸金属錯体、アルキルサリチル酸金属錯体、ジアルキルサリチル酸金属錯体、オキシナフトエ酸金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体及びカルボン酸の金属塩などが挙げられる。有機金属錯体、金属塩、金属錯塩及びキレート化合物を構成する金属イオンとしては、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウム及びジルコニウム等が挙げられ、特に、鉄、アルミニウム又はジルコニウムが、上述したトナーの粘弾性コントロールが容易に行えるという点で好ましい。
【0129】
さらに有機金属化合物としては、黒トナーに用いる場合には、無色・有色を問わず使用可能であるが、カラートナーに用いる場合には、トナーの色調に影響を与えない無色または淡色のものが好ましい。従ってカラートナーにおいては、有機金属錯体、金属塩、金属錯塩及びキレート化合物を構成する金属イオンとしては、アルミニウム又はジルコニウムが好ましく用いられ、特にトナーの摩擦帯電性を考慮した場合には、アルミニウムが好ましい。
【0130】
特に好ましい有機金属化合物の例としては、アルミニウム又はジルコニウムと、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合してなる有機金属化合物である。このような有機金属化合物は、上述したトナーの粘弾性コントロール及びカラートナー画像の色調の目的をより高度に達成可能であることから好ましく、特に、有機アルミニウム化合物が、さらにカラートナーの摩擦帯電性をより安定にできることから最も好ましい。
【0131】
この特に好ましい有機金属化合物として具体的には、
(i)金属元素としてアルミニウムまたはジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸が配位した金属錯体;
(ii)金属元素としてアルミニウムまたはジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸が配位した金属錯塩;
(iii)金属イオンとしてアルミニウムイオンまたはジルコニウムイオンを有し、酸イオンとして芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン又は芳香族ポリカルボン酸イオンを有するカルボン酸金属塩;
が挙げられる。
【0132】
金属錯体及び金属錯塩のような金属錯化合物においては、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を2〜4個キレート形成して有するものが好ましく、金属錯塩においては、芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン又は芳香族ポリカルボン酸イオンを1〜4個有するものが好ましく、更には2〜3個有するものが好ましい。また、キレート形成数の異なる錯体、錯塩あるいは配位子の異なる錯体、錯塩であっても良い。また、酸イオンの数の異なる塩の混合物であっても良い。
【0133】
具体的には、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0134】
【化2】
【0135】
本発明においては、アルミニウム及びジルコニウムからなるグループから選択される金属と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を香族化合物とが配位又は/及び結合している有機金属化合物と、(a)3価以上のポリカルボン酸成分、及び(b)炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び/又はポリアルコール成分を有する組成物を共縮合して得られる非線状ポリエステル樹脂とをトナー製造の際の溶融混練時に金属架橋させて用いることが、定着領域の拡大、さらにはグロスコントロールの点で好ましい。
【0136】
この溶融混練時の架橋反応は、分子鎖の端末の多い非線状ポリエステル樹脂の末端のカルボキシル基や水酸基のような官能基が有機金属化合物における金属を介して配位結合やイオン結合することにより施される。これにより樹脂成分は3次元の網目構造となるが、配位結合やイオン結合であるためその結合はそれほど強固ではなく、オフセット防止に有効でありながら低温定着性にすぐれ、さらにはグロスをある程度高い領域でコントロール可能とするために有効に働いている。
【0137】
また、配位結合やイオン結合によるそれほど強固でない3次元の網目構造はワックスの分散と、定着時の染み出し速度のコントロールに関しても、有効に作用している。
【0138】
本発明においては、これら有機金属化合物と従来の技術で述べたような公知の電荷制御剤とを組み合わせて使用することもできる。
【0139】
本発明において、トナーの結着樹脂として用いるポリエステル樹脂は、酸価が1〜40mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜30mgKOH/gであることが良い。
【0140】
ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g未満の場合には、有機金属化合物との相互作用による現像安定性及び耐久安定効果を十分に発揮しきれなかったり、有機金属化合物の分散不良に伴うワックスの分散性の低下により、低温定着性が十分にならず、40mgKOH/gを超える場合には、吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが生じ易くなる。
【0141】
本発明において、樹脂の酸価は、以下の方法により求める。
【0142】
(酸価の測定)
樹脂のサンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定された0.1mol/l苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算式により酸価を求める。
【0143】
【数14】
酸価 = KOH(ml数)×f×56.1/試料重量
(ただしfは0.1mol/lKOHのファクター)
【0144】
本発明に用いられる3価以上のポリカルボン酸成分としての単量体としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0145】
また、本発明に好ましく用いられるポリエステル樹脂の構成成分としての炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する単量体としては、ポリエステル樹脂の骨格にブランチ化されて導入される飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する単量体であることが必要であり、炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する単量体であることが好ましい。
【0146】
炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分は、ポリエステル樹脂を構成する2価及び3価以上のモノマーのいずれかに炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するものであればよいが、炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分で置換された脂肪族ジカルボン酸類及び/又は炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分で置換された脂肪族ジオール類の単量体であることがより好ましい。
【0147】
炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分で置換された脂肪族ジカルボン酸類の単量体としては、炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物が好ましく、特に、ドデセニルこはく酸、オクチルこはく酸及びその無水物が好ましい。
【0148】
炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分で置換された脂肪族ジオール類単量体としては、n−ドデセニルエチレングリコール、n−ドデセニルトリエチレングリコール等が挙げられる。
【0149】
また、本発明に好ましく用いられるポリエステル樹脂の他の構成成分としては、炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有する成分を有さない2価の酸成分、2価及び/又は3価以上のアルコール成分が用いられる。
【0150】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0151】
また、2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール;水素化ビスフェノールA;また下記式(イ)で表されるビスフェノール及びその誘導体;
【0152】
【化3】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
【0153】
また下記式(ロ)で示されるジオール類;
【0154】
【化4】
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’及びy’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0〜10である。)
【0155】
等のジオール類が挙げられる。
【0156】
これらのうち少なくともプロポキシ化及び/又はエトキシ化したエーテル化ビスフェノールを用いることが好ましい。
【0157】
更に、本発明に用い得る3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−メンタトリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0158】
本発明のトナーに好ましく用いられるポリエステル樹脂は、他の樹脂と本発明に悪影響の無い程度での併用が可能である。
【0159】
ポリエステル樹脂と併用できる他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル;フェノール樹脂;天然変性フェノール樹脂;天然樹脂変性マレイン酸樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール;テルペン樹脂;クマロンインデン樹脂;石油系樹脂などが使用できる。本発明において、ポリエステル樹脂と好ましく併用できる結着樹脂としては、スチレン系共重合体が挙げられる。
【0160】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミドなどのような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;例えば、マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルなどのような二重結合を有するジカルボン酸およびその置換体;例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのようなビニルエステル類;例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのようなエチレン系オレフィン類;例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのようなビニルケトン類;例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのようなビニルエーテル類;等のビニル単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
【0161】
本発明のトナーは、保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜75℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。トナーのTgが45℃未満の場合には、高温雰囲気下でトナーが劣化し易く、また、定着時にオフセットが発生し易くなり、75℃を超える場合には、定着性が低下する傾向にある。
【0162】
上述した通り、DSC測定により得られる最大吸熱ピーク温度が60〜135℃である本発明のトナーを得るためには、トナーに含有されるワックスとしてDSC測定による最大吸熱ピーク温度が60〜135℃のワックスが好ましく用いられる。より好ましくはDSC測定による最大吸熱ピーク温度が60〜120℃のワックスである。このようなワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、酸化処理されたポリエチレン及びポリプロピレン、酸変性処理されたポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;キャンデリラワックス、カルナウバワックスなどの天然ワックス及びその誘導体;ライスワックス、木ろう、ホホバ油などの植物系ワックス類及びその誘導体;みつろう、ラノリン、鯨ロウなどの動物系ワックス類及びその誘導体;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物系ワックス類及びその誘導体;硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系ワックス類及びその誘導体が挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとのブロック共重合物及びグラフト変性物が含まれる。
【0163】
これらの中でも、ポリオレフィンワックスまたはフィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスまたは石油系ワックスで、示差走査熱量計(DSC)測定による最大吸熱ピークが60〜120℃の範囲にある化合物が、低温定着性及び離型性に優れているため本発明においては好ましく用いられ、特に好ましくはポリエチレンワックスが用いられる。
【0164】
さらに、ステアリン酸、パルミチン酸などの高級脂肪酸及びその金属塩、その他ワックスとして従来より公知の化合物を用いることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、あるいは2種類もしくはそれ以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0165】
それらの中でも、特に定着時における転写材の巻付きを防止する効果に対しては、トナーが損失弾性率G”が1×104Paを示す温度において、粘度が5〜200mPa・sであるワックスが好ましく、5〜100mPa・sであるワックスがより好ましい。
【0166】
定着時における転写材の巻付きを防止するためには、転写材が定着ニップ部を通過する際に、トナーが軟化・変形するとき、すなわちトナーのG”が1×104Paであるときにワックスが溶融してトナー表面から加熱用金属製スリーブ表面に供給されることが重要である。従って、このときの粘度を上記範囲に規定することで、加熱用金属製スリーブ表面とトナー画像との離型性がより発揮される。ワックスの粘度が5mPa・s未満ではトナーの保存性に問題が生じ、一方200mPa・s超では定着分離性が著しく低下するため、定着分離が可能な温度範囲が狭くなる。ここでの粘度測定方法は次の通りである。
【0167】
(粘度測定方法)
ハーケ社製 VT500を使用し、センサーとしてPK10.5°を用い、測定温度を融点〜160℃とし、10℃間隔の各温度にてシェアレートを6000(1/sec)に設定して測定する。
【0168】
得られた測定結果のデータを片対数グラフ上にプロットし、このグラフから損失弾性率G”=1×104Paを示す温度における値を読み取り、これを損失弾性率G”=1×104Paを示す温度におけるワックスの粘度とする。
【0169】
さらに本発明で用いるワックスはDSC測定により得られる吸熱曲線(以下、「DSC曲線」ともいう)における昇温時のオンセット温度が55〜105℃であることが好ましい。このようなワックスを用いることにより、低温定着性に優れ、かつ保存性に優れたトナーを得ることができる。
【0170】
オンセット温度が55℃未満のものは、比較的低温からトナー粒子表面にワックス成分が染み出しやすいため保存性が劣り、昇温に対して現像性の劣化を生じやすく、105℃を超える場合には、トナーが軟化・変形を開始する状態でトナーから定着加熱部材表面にワックスが供給されず、耐巻付き性や定着性が劣るようになる。ここでの最大吸熱ピーク及びオンセット温度は、以下の方法に従ったものである。
【0171】
(トナー、ワックスのDSC測定における最大吸熱ピーク及びオンセット温度の測定)
トナー及びワックスのDSC曲線における最大吸熱ピーク温度及びオンセット温度は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線から得ることができる。例えば、測定装置としては、パーキンエルマー社製のDSC−7が使用できる。本発明では、示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料を2〜10mgの範囲内で正確に秤量し、これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲20〜200℃の間で、昇温速度10℃/min、常温常湿下で測定を行ったときの値を用いる。
【0172】
・最大吸熱ピーク温度:昇温時の吸熱曲線における最大ピークのピークトップの温度
・オンセット温度:昇温時の吸熱曲線の微分値が最大となる点における接線とベースラインの交点の温度
【0173】
本発明で用いられるワックスは、GPC測定による分子量分布において、数平均分子量(Mn)が好ましくは200〜2000、より好ましくはMn300〜1000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは200〜2500、より好ましくは300〜1200であり、Mw/Mnが好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下であることが良い。
【0174】
ワックスが上記範囲の分子量分布を持つことにより、トナーに好ましい熱特性をもたせることができる。すなわち、上記範囲よりMn又はMwが小さくなると、熱的影響を過度に受けやすく、耐ブロッキング性と現像性に劣るようになり、上記範囲よりMn又はMwが大きくなると、外部からの熱を効果的に利用できず、優れた定着性と耐オフセット性を得ることができにくい。また、Mw/Mnが2より大きくなると、分子量分布が広いために溶融挙動が熱に対してシャープでなくなり、良好な定着性と耐オフセット性を共に満足する領域が得られ難くなる。
【0175】
本発明に使用されるワックスの分子量分布は以下の方法により測定することができる。
【0176】
(GPC測定条件)
装置:GPC−150C(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.15%の試料を0.4ml注入
【0177】
以上の条件で測定を行う。試料の分子量算出にあたっては単分散ポリエステル標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。
【0178】
本発明に用いられる着色剤のうち有彩色のものとして、従来公知の着色剤を用いることができるが、シアントナーは銅フタロシアニン系の有機顔料を含有しており、マゼンタトナーはキナクリドン系の有機顔料を含有しており、イエロートナーはジアラリード系の有機顔料を含有している場合、良好な帯電性、良好な流動性、及び良好な分光反射特性を有するトナーが得られるので好ましい。
【0179】
銅フタロシアニン系の有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー15;15:1;15:2;15:3;15:4が挙げられる。さらに式(ハ)で示される構造を有する、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換したフタロシアニン顔料が挙げられる。他の置換基を有する銅フタロシアニン系の顔料であっても良い。
【0180】
【化5】
【0181】
銅フタロシアニン系の有機顔料のトナー中における含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜12質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部が良い。12質量部を上回るとシアントナーの彩度、明度が低下し、色再現能力が低下する。
【0182】
キナクリドン系の有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド122が好ましく、C.I.ピグメントレッド192,202,206,207,209も好ましい。さらにC.I.ピグメントバイオレット19も好ましい。C.I.ピグメントレッド122をベース顔料として、他の着色剤と併用しても良い。その際用いられる顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,123,146,150,163,184,185,238;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。キサンテン系染料に代表される様な染料を一部併用しても良い。
【0183】
キナクリドン系の有機顔料のトナー中における含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜12質量部、より好ましくは1〜10質量部である。他の染顔料と併用する場合であっても、他の染顔料は、キナクリドン系顔料100質量部に対して50質量部以下、好ましくは25質量部以下が良い。
【0184】
ジアラリード系の有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,17,81,106,113が好ましく、さらに、C.I.ピグメントイエロー55,63,83,87,90,114,121,124,126,127,136,152,170,171,172,174,176,188であっても良い。
【0185】
さらに、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,17,81をベース顔料として、他のイエロー着色剤と併用しても良く、イエロー系の染料と一部併用しても特に何ら構わない。
【0186】
ジアラリード系の有機顔料のトナー中における含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜12質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部が良い。
【0187】
本発明に用いられる着色剤のうち黒色のものとして、カーボンブラック、または上記のイエロー着色剤/マゼンタ着色剤/シアン着色剤を混合して黒色に調色されたものが利用される。
【0188】
本発明のトナーを黒色の磁性トナーとして用いる場合には、着色剤として磁性体を用いることもできる。
【0189】
磁性体としては、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面あるいは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0190】
上記したものの中でも、本発明に用いられる磁性体として、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。
【0191】
中でも異種元素としてリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、カドミウム、インジウム、銀、パラジウム、金、水銀、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、第4周期の遷移金属元素が好ましい元素である。
【0192】
これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。酸化物として酸化鉄中に含有されているのが好ましい形態である。
【0193】
上記異種元素の含有率は磁性酸化鉄の鉄元素を基準として0.05〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜7質量%であり、更に好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.3〜4質量%である。異種元素の含有量が0.05質量%より少ないと、これら元素の含有効果が得られなく、良好な分散性、帯電均一性が得られなくなる。また、10質量%より多くなると、電荷の放出が多くなり帯電不足を生じ、画像濃度の低下や、カブリの増加を生じることがある。
【0194】
また、これら異種元素の磁性体中での含有分布において、磁性体の表面に近い方に多く存在しているものが好ましい。例えば、磁性酸化鉄の鉄元素溶解率が20質量%までに存在する異種元素の含有量Bと該磁性酸化鉄の異種元素の全含有量Aとの比(B/A)×100が40%以上であることが好ましい。上記値は40〜80%であることがより好ましく、60〜80%であることが特に好ましい。異種元素の磁性体表面における存在量を多くすることによりトナーの分散効果や電気的拡散効果をより向上させることができる。また、トナー中に含有される磁性体の量としては結着樹脂100質量部に対して20〜200質量部、より好ましくは結着樹脂100質量部に対して40〜150質量部である。
【0195】
また、これらの磁性体は粒度分布が揃っていると、結着樹脂への分散性とあいまって、トナーの帯電性を安定化することができる。また近年はトナー粒径の小径化が進んでいるが、トナーの重量平均粒径が10μm以下のような場合でも、磁性体の粒度分布が揃っていると帯電均一性が促進され、トナーの凝集性も軽減され、画像濃度の向上、カブリの改善等現像性が向上する。特に重量平均粒径が6.0μm以下のトナーにおいてはその効果は顕著であり、きわめて高精細な画像が得られる。トナーの重量平均粒径は2.5μm以上である方が十分な画像濃度が得られて好ましい。
【0196】
本発明のトナーには、必要に応じて、滑剤としての脂肪族金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム)、フッ素系重合体微粉末(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びテトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体の微粉末)、あるいは酸化スズ及び酸化亜鉛などの導電性付与剤を添加してもよい。
【0197】
また、本発明のトナーには、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されることが好ましい。例えば、シリカ微粉体、アルミナ微粉体、酸化チタン微粉体を添加して用いることが好ましい。
【0198】
本発明に用いられるシリカ微粉体は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
【0199】
さらに本発明に用いるシリカ微粉体等は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理した後、あるいはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0200】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0201】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mPa・sのものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が好ましい。
【0202】
シリコーンオイル処理の方法は、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0203】
トナーと混合される無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは、0.1〜3質量部)使用するのが良い。
【0204】
本発明中のトナーには、必要に応じてシリカ微粉体以外の外部添加剤を添加してもよい。
【0205】
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0206】
例えばテフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンなどの滑剤、中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤;或いは例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤;また逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0207】
本発明のトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミル、ヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー,エクストルーダーの熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、機械的な粉砕、分級によってトナー粒子を得て、このトナー粒子に必要に応じてシリカ微粉体および/または他の外部添加剤を添加することにより本発明のトナーを得る方法を好ましく用いることができる。
【0208】
本発明のトナーの製造に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0209】
本発明のトナーはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用しても良いし、トナーのみからなる(キャリアを用いない)一成分系現像剤として使用しても良い。本発明のトナーを二成分現像剤として使用する際に用いられるキャリアとしては、例えば、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム及び希土類金属などの磁性金属、それらの磁性合金、それらの磁性酸化物及びそれらの磁性フェライトからなるグループから選択される磁性粒子が挙げられる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアも用いることができる。
【0210】
キャリアは、上記の磁性粒子のキャリアコアの表面を被覆材で被覆した被覆キャリアを用いることが好ましい。この被覆キャリアにおいて、キャリアコアの表面を被覆材で被覆する方法としては、被覆材を溶剤中に溶解または懸濁させて塗布しキャリアコアに付着させる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
【0211】
キャリアコアの被覆材としては、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いるのが適当である。
【0212】
上記被覆材材料の処理量は、適宜決定すれば良いが、一般には総量でキャリアに対し0.1〜30質量%(好ましくは0.5〜20質量%)が好ましい。
【0213】
本発明に用いられるキャリアは、平均粒径が好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜70μmであることが良い。キャリアの平均粒径が10μm未満の場合には、二成分系現像剤のパッキングが強まり、トナーとキャリアとの混合性が低下し、トナーの帯電性が安定しにくくなり、さらにキャリアの感光体ドラム表面への付着が生じやすくなる。
【0214】
キャリアの平均粒径が100μmを超える場合には、トナーとの接触機会が減ることから、低帯電量のトナーが混在し、カブリが発生しやすくなる。さらにトナー飛散が生じやすい傾向にあるため二成分系現像剤中のトナー濃度の設定を低めにする必要があり、高画像濃度の画像形成ができなくなることがある。
【0215】
特に好ましいキャリアとしては、磁性フェライトコア粒子などの磁性コア粒子の表面を、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びメタクリレート系樹脂などの樹脂を、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%でコーティングしたものであり、且つ250メッシュパス・400メッシュオンのキャリア粒子を70質量%以上含有し、かつ上記平均粒径を有するように粒度分布を調整した磁性キャリアであるものが挙げられる。
【0216】
上記磁性コートキャリアは粒径分布がシャープな場合、本発明のカラートナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0217】
本発明のトナーをカラートナーとし、キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは3〜13質量%、より好ましくは4〜10質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低くなりやすく、15質量%を超える場合ではカブリや機内飛散が生じやすく、現像剤の耐用寿命が短くなる傾向がある。
【0218】
〈本発明の画像形成方法および画像形成装置〉
以下、上記本発明のトナーを用いた本発明の画像形成方法および画像形成装置について説明する。
【0219】
本発明の画像形成方法は、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を上記記録材上に定着させることにより、記録材上に画像を形成する画像形成方法である。また、本発明の画像形成装置は上記本発明の方法により画像を形成するための装置であって、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を上記記録材上に定着させることにより、記録材上に画像を形成する装置である。
【0220】
まず、上記本発明の画像形成方法および画像形成装置に用いられる定着手段について説明する。
【0221】
本発明で用いられる定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され上記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、上記加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ上記加熱用金属製スリーブと平行な軸を有する円筒形状の加圧部材と、を少なくとも有する加熱定着装置である。上記本発明の加熱定着装置において、上記加熱用金属製スリーブ(以下、単に「金属製スリーブ」ということがある)と上記加圧部材とが互いに圧接されることにより所定の温度に維持された定着ニップ部が形成され、未定着トナー画像が形成された記録材がこの定着ニップ部を通過することにより、上記未定着トナー画像が記録材上に定着される。
【0222】
すなわち、本発明は、熱伝導性が良好な金属スリーブ内面から加熱用部材により接触加熱することで、電源投入直後に定着可能であり、且つ待機中の予備加熱を必要としないために、消費電力の大幅な低下を実現するオンデマンドタイプの加熱定着方法と前述のような特定の最大吸熱ピークと特定の粘弾性特性を有する本発明のトナーを合わせて用いるものである。このような方法を用いることにより、従来は困難であったオンデマンドタイプの加熱定着装置による高速定着を可能とし、さらに離型オイルを全く使用しなくとも低温オフセットを防止し、定着ニップ部への加圧が弱くても十分なトナーの変形が得られるため、オーバーヘッドプロジェクターシートでの定着画像の色再現・透過性を満足することができる。
【0223】
また、本発明の画像形成方法では、定着時における加熱効率が良いことから、画像形成装置がプリント信号を受信していない状態のスタンバイ中に、加熱用部材への通電をシャットダウンしておくことが可能となり、省エネルギーの加熱定着を実現する上で好ましい。
【0224】
また、本発明の画像形成方法では、室温状態から画像形成装置の電源をONとした場合でも、即座にプリント信号受信可能になるため、作業者を待たせることがない。すなわち、画像形成装置が高速化した場合でも、クイックスタート性に優れ、ファーストプリントタイムも速い定着が可能となる。
【0225】
以下、本発明の画像形成方法に用いられる加熱定着装置の好ましい形態の一例を示す。但し以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0226】
加熱用金属製スリーブは厚み20〜100μmのものを用いる。また、該金属製スリーブ内面は加熱用部材との接触熱抵抗を低く抑え、定着ニップ部への伝熱を良好にするために、表面粗さRz=3μm以下とすることが好ましい。さらに金属製スリーブ外面の表面粗さをRz=3μm以下とし、この金属製スリーブ上に、接着層としてのプライマー層を含めた離型性層を厚み20μm以下で形成することも好ましい構成である。樹脂製フィルムに比べ剛性の高い金属製スリーブを使用することで、画像形成装置を高速化しても、装置の耐久性には問題ない。
【0227】
また、金属製スリーブ内面に接触し、定着ニップ部を加熱する加熱用部材の表面を耐熱性を有するポリイミド樹脂等の樹脂部材とすることも好ましい。このような構成とすることにより、金属製スリーブ内面と加熱用部材との摺動をスムーズにすることができ、さらに装置の耐久性が向上する。
【0228】
また、金属製スリーブに上記表面粗さ内の周方向のスジ加工を施すことにより金属製スリーブの回転をスムーズにし、上記加熱用部材の表面を傷つけにくくすることができる。
【0229】
また、未定着トナー像を記録材上に固着させる加熱定着装置においてトナーと逆極性のバイアスを加圧ローラ側に印加し、金属製スリーブを接地あるいはダイオード接続することで、紙粉、トナー等が金属製スリーブに吸着されることを防止する。これにより耐久的な使用によって金属製スリーブが汚れる等の問題も発生しない。
【0230】
本発明の画像形成方法は、公知の部材及び手段等を適宜組み合わせて実現することができる。より具体的には、本発明の画像形成方法は、前述した定着工程を実現する定着手段を搭載する改造を、公知の画像形成装置に施すことによって実現することが可能である。以下、本発明の画像形成方法を実現する上で好適な画像形成装置である本発明の画像形成装置の具体的一例を、図面を参照して説明する。
【0231】
(A)画像形成装置例
図1は本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される(帯電工程)。
【0232】
次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム3による走査露光が施され、静電潜像が形成される(潜像形成工程)。この静電潜像は現像装置4で現像、可視化され、トナー画像となる(現像工程)。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0233】
可視化されたトナー画像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される(転写工程)。ここで感光ドラム1上のトナー画像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、搬送のタイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。
【0234】
この未定着のトナー画像が転写された記録材Pは加熱定着装置6へと搬送され、永久画像として定着される(定着工程)。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される(クリーニング工程)。
【0235】
(B)加熱定着装置6
図2は加熱定着装置6の概略構成図である。図2において、10は定着部材、20は加圧部材である。定着部材10は加熱用部材としてのヒータ11、断熱ステイホルダー12、定着スリーブとして用いられる金属製スリーブ13等からなる。加圧部材20は耐熱性弾性加圧ローラであり、金属製スリーブ13に圧接されている。すなわち、金属製スリーブ13と加圧部材20とが互いに圧接されることにより、定着ニップ部Nが形成されている。
【0236】
a)加熱用金属製スリーブ13
定着スリーブとして用いられる加熱用金属製スリーブ13は熱容量の小さなスリーブであり、クイックスタートを可能にするために100μm以下の厚みであり、耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の金属の単独あるいは合金からなる可撓性の円筒状金属素管を基層とした金属製スリーブ(フィルム)である。
【0237】
この金属製スリーブ13は、長寿命の加熱定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた金属製スリーブとするために、20μm以上の厚みが必要である。よって金属製スリーブ13の厚みとしては20μm以上100μm以下が最適である。
【0238】
さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために、金属製スリーブ13の表層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂が単独でまたは2種以上が混合されてなる離型性層(図示せず)によって被覆されている。
【0239】
金属製スリーブ13表面を上記離型性層により被覆する方法としては、金属製スリーブ基層の外表面に接着層としてのプライマー層を塗布した後に、上記離型性層を形成する。離型性層の形成はディッピング、粉体スプレー等の塗布によるものであっても良いし、チューブ状に形成されたものを金属製スリーブの表面に被せる方式のものであっても良い。
【0240】
なお、金属製スリーブの内外面の表面性状および離型性層の厚み等については後記e)項で詳述する。
【0241】
b)加熱用ヒータ11
加熱用部材としての加熱用ヒータ11は金属製スリーブ13の内面に接触配置され、記録材P上のトナー像を溶融、定着させるニップ部の加熱を行うべく金属製スリーブ13を加熱する。
【0242】
図3は、図2の定着ニップ部N近傍の部分的拡大図である。また、図4は図2のI−I線に沿った模式的断面図である。図3において、加熱用ヒータ11は、アルミナ、AlN(チッ化アルミ)等の高絶縁性のセラミックスやポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂からなる基板11aの表面に長手方向(図面と直交する方向)に沿って、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の通電発熱抵抗層11bをスクリーン印刷等により、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状に塗工して形成してなる通電加熱用部材である。通電発熱抵抗層11bの表面には、金属製スリーブ13との摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層11cが設けられている。
【0243】
上記基板11aの背面(定着ニップ部Nと反対側の面)には通電発熱抵抗層11bの発熱に応じて昇温した加熱用ヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配設されている。この温度検知素子14の信号に応じて、図4に示す長手方向(図4中芯金21に平行な方向)端部にある電極部11fおよび11gから通電発熱抵抗層11bに印加される電圧のデューティー比や波数等を適切に制御することで、定着ニップ部N内での温度を略一定に保ち、記録材P上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。温度検知素子14から不図示の温度制御部へのDC通電は不図示のDC通電部およびDC電極部を介して不図示のコネクターにより達成している。
【0244】
加熱用ヒータの他の実施形態を図5に示す。この図5も、図3と同様に加熱定着装置の加熱ヒーター近傍を示す部分的断面図である。図5に示すように、ヒータ基板11aとして熱伝導性の良好なAlN(チッ化アルミ)等を用いた場合には、通電発熱抵抗層11bを基板11aの定着ニップ部Nと反対側に形成してあっても良い。図5において、11dは基板11a上に形成された通電発熱抵抗層11dと温度検知素子14の間の耐電圧を満足するために設けたガラスコート、フッ素樹脂層等の保護層である。また、11eは上述の11cと同様に金属製スリーブとの摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層である。
【0245】
また、上記金属製スリーブ13の内面において、加熱用ヒータ11の定着ニップ部N側の形状を曲面とすることで、金属製スリーブ13に屈曲負荷を与えないようにした方が長寿命の定着部材が形成される。あるいは、基板(11a)を金属製のものとし、この金属製基板上の定着ニップ部とは反対側に絶縁層、通電発熱抵抗層を順次積層してなり、上記金属製基板は定着ニップ部側が金属製スリーブと同方向に湾曲した形状を有する金属製の加熱用ヒータを用いても良い。
【0246】
c)断熱ステイホルダー12
断熱ステイホルダー12は、加熱用ヒータ11を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成される。この断熱ステイホルダー12には金属製スリーブ13が余裕をもってルーズに外嵌されており、金属製スリーブ13は矢印の方向に回転自在に配置されている。
【0247】
また、金属製スリーブ13は内部の加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12に摺擦しながら回転するため、加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と金属製スリーブ13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤が少量介在されている。これにより金属製スリーブ13はスムーズに回転することが可能となる。
【0248】
d)加圧部材20
加圧部材20は、芯金21の外側に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層22からなるローラ部材であり、弾性層22の上にPFA、PTFE、FEP等からなる離型性層23が形成されていてもよい。
【0249】
図4に示すように、定着部材10は、断熱ステイホルダー12の一部に直接、または断熱ステイホルダーと嵌合等により取り付けられた部材を介して設けられたバネ等の加圧手段17により、加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するべく長手方向両端部から加圧部材20に対して十分に加圧されている。また、加圧部材20の芯金21の端部に取り付けられた駆動ギア16により加圧部材20を回転駆動し、加圧ローラ表面と金属製スリーブ13表面の摩擦により金属製スリーブ13を所定の速度に従動回転させる。
【0250】
以上が加熱定着装置6の構成であるが、図3および図5において記録材Pは不図示の供給手段によって適宜供給され、耐熱性の定着入口ガイド15に沿って加熱部材10と加圧部材20によって形成される定着ニップ部Nに搬送される。そして、加圧部材20および金属製スリーブ13の回転によって記録材Pが定着ニップ部Nを通過することにより、記録材P上に未定着画像が定着され、定着画像が得られる。
【0251】
e)金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ等について
ここで金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ、離型性層の厚み等に関して以下に説明する。
【0252】
まず、金属製スリーブ13の内面は上記加熱用ヒータ11と所定の接触幅をもって接触することで加熱用ヒータ11より発生した熱を定着ニップ部Nへ伝熱する必要があり、従来使用されてきた輻射熱による加熱を行う熱ローラ定着装置とは思想が異なる。よって加熱用ヒータ11と接触伝熱する金属製スリーブ13内面の表面粗さは、熱効率に大いに影響する。特に加熱用ヒータ11の摺動層(図3の11cまたは図5の11e)の表面と金属製スリーブ13の内面との接触熱抵抗が大きくなると、熱効率が悪化し、定着不良を起こしてしまう。仮に熱伝導グリース等を介在させた場合でも熱効率の高い加熱定着装置を構成するためには、所定以下の表面粗さに抑えることが好ましい。
【0253】
また、上述したように、金属製スリーブ13の外面には離型性層が形成されているが、離型性層は一般にフッ素樹脂より形成されるため、その熱伝導性は金属製スリーブ13の熱伝導性に比べて極端に低い。よって、離型性層をあまり厚く形成すると、熱伝導の悪化を招き画像形成装置の高速化に対し、定着ニップ部Nで記録材P上のトナー像に対し十分な熱供給ができなくなる。よって薄い離型性層を金属製スリーブ13上に形成する必要がある。このとき、金属製スリーブ13外面の表面粗さは所定以下に抑えることが好ましい。すなわち、離型性層を薄くした場合には、金属製スリーブ13外面の表面粗さを離型性層によって緩和する効果が得られないため、金属製スリーブ13外面に離型性層を塗布形成した後の表面粗さは金属スリーブ13素管の表面粗さと同等か若干小さい粗さのものとなる。よって、金属製スリーブ13素管の表面粗さが大きいと離型性層を塗布形成後も大きな表面粗さとなり、定着ニップ部Nで記録材Pとの密着力が得られず、定着不良を引き起こす可能性が大きくなる。
【0254】
以上のことから、金属製スリーブ13の外面の表面粗さを所定以下とし、且つ接着層としてのプライマー層を含み離型性層を所定以下の厚みで塗布形成することにより、十分な定着性能が得られ、画像形成装置の高速化に対応可能となる。
【0255】
また、金属製スリーブ13に周方向に所定以下の表面粗さを有する凹凸形状を施すことにより、金属製スリーブ13の回転をよりスムーズにすると共に加熱用ヒータ11の表面にコーティングした離型性層を傷つけにくくする。これによりさらに高耐久の高速対応可能な加熱定着用金属製スリーブ13を提供することができる。
【0256】
以下、図6〜図8を参照して、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13の製法を示す。まず、図6において、31は金属製スリーブ13の基材であり、0.1〜0.5mm程度のSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の単独ないしは2種以上の合金状態で形成される金属平板(プランク)である。32は一般的な深絞り製法における円形内型(ポンチ)、33は円筒容器状の外型(ダイス)であり、それぞれ金属材料の表面に超硬メッキ等を施した金型である。図6において、金属平板31を内型32と外型33の間に挟み矢印の方向に内型32を外型33の方向へ押し込む。また、金属平板31と外型33の間には粘度の高い潤滑油、あるいは黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を介在させ、絞り性を良くしてある。以上の工程を通常は2〜4回程度、異なる金型で深絞り加工することにより、図7に示すようなカップ状の金属製円筒部材34を製造する。
【0257】
次に、この金属製円筒部材34が所定の厚みに形成されるようにしごき加工を施す。しごき加工としては、圧延加工、引き抜き加工、絞り加工等どのような加工を途中で経てもよいが、最終加工としては、以下に示すような加工方法により金属製スリーブの周方向に所定以下の凹凸を有する加工を施す。例えば、図8の(a)および(b)に示すような加工方法が用いられる。
【0258】
まず、図8の(a)は一般的な絞りスピニング加工を示すものである。図8(a)において、固定台36cに取り付けられた軸36bに回転自在に取り付けられた押し当てローラ36aを、金属製内型35と所定の距離だけ常に離間した状態で金属製内型35方向へ押し付けられるようになっている。上記カップ状に深絞り加工を施した金属製円筒部材34が金属製内型35にはめ込まれ、押さえ部材37によって金属製円筒部材34のカップ形状底部が金属製内型35に密着状態で固定される。この状態で金属製内型35、金属製円筒部材34、押さえ部材37を図の矢印Aの方向に回転させながら、紙面右方(図8の矢印B方向)へ徐々に送り込む。端部からは金属製内型35と所定距離を保って回転自在のローラ36aが押し当てられる。
【0259】
これにより、金属製円筒部材34がしごき加工により端部から徐々に薄肉化され、最終的には図8(c)に示すように金属製スリーブ13の所定厚みにまで加工されたカップ状の金属製円筒部材39が形成される。
【0260】
金属製円筒部材39には、周方向に絞りスピニング加工時のローラ押し当ての凹凸跡39aが残る。最終的には、金属製円筒部材39のカップ形状底部を切り落とすことにより、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13を得る。
【0261】
また、図8(b)に示すように、押し当てローラ36aの代わりに段階的に内径が小さく形成された連続ダイス38a、38b、38cを用い、金属製内型35と押さえ部材37により固定された金属製円筒部材34を回転させながら送り込みしごき加工を行って、金属製円筒部材34を薄肉化しながら周方向の凹凸形状を付与させる方式であっても良い。
【0262】
その他、へら絞り加工等、金属製スリーブ13の周方向に所定量以下の凹凸を形成できる方法であれば、どのようなしごき加工の加工方法であっても構わない。
【0263】
以上の製法で製造した金属製スリーブ13を用いて、未定着トナー画像が形成された記録材Pを加熱定着する場合、熱伝導の観点から、上記周方向の凹凸は3μm以下に抑えることが好ましい。
【0264】
金属製スリーブ13の周方向に3μm以下の凹凸を形成し、好ましくは、長手方向の表面粗さRzを3μm以下とし、周方向の表面粗さRz’との関係をRz>Rz’とすることで、加熱定着装置の回転駆動を低く抑え、回転をスムーズにすると共に、耐久的な使用による金属製スリーブ内面に接触する加熱用ヒータの樹脂コートを傷つけにくくし、加熱定着装置のさらなる高耐久、高速化を達成することが可能になる。
【0265】
さらに、金属製スリーブ13と加圧部材である加圧ローラ20の間に電位差を形成し、かつ金属製スリーブ13を接地状態、もしくはダイオードを介して接地状態とすることで金属製スリーブ13に紙粉やトナーを付着しにくい構成とすることにより、耐久的な使用を通じて離型性を維持できる加熱定着装置を提供することが可能になる。
【0266】
金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図を図9(a)に、図9(a)のII−II線に沿った模式的断面図を図9(b)に、それぞれ示す。図9において、加圧部材である加圧ローラ20の導電性弾性層22は、導電性シリコーンゴム、導電性シリコーンスポンジ等からなる導電性が付与された弾性層であり、加圧ローラ芯金21または導電性弾性層22に、導電性カーボンチップ等よりなるチップ電極25を介してバイアス印加手段24によってトナー像と逆極性のバイアスを印加する。
【0267】
図では、トナーが現像部でマイナス帯電される画像形成装置を元に図示しており、加圧ローラ芯金部21には、プラスバイアスが印加される構成となっている。よってトナーが現像部でプラス帯電される画像形成装置の場合、加圧ローラ芯金21には、マイナスバイアスが印加される構成となる。
【0268】
また、金属製スリーブ13の端部では、接着層としてのプライマー層、フッ素樹脂層からなる離型性層がコーティングされていない金属製スリーブ素材がむき出しになっている部位13aを設け、この部位13aよりアモルファス導電繊維よりなる導電ブラシ18を介して接地状態に構成されている。
【0269】
または、トナー像と同電位の電荷が金属製スリーブ13に保持されるようにダイオード接続されていても良い。
【0270】
以上の構成により、加圧ローラ20側に積極的にバイアス印加する構成とすることで、金属製スリーブ13には紙粉、トナー等が吸着されにくくなる。よってパルプ材を主原料とするカット紙等に形成されたトナー像を加熱定着する場合の上記加熱定着装置においては、表面粗さRz=3μm以下とした金属製スリーブ13の表面の離型性層には、静電気的にも紙粉やトナーの汚染が発生しづらく、耐久的な使用によって離型性が損なわれることがないため、長寿命の加熱定着装置が提供される。
【0271】
なお、本発明に用いられる定着手段は、定着部材の離型性を維持するためのオイルを定着部材に塗布するオイル塗布方式の定着手段であっても良いし、オイルレス系の定着手段であっても良く、これらの方式の違いによらず同様に効果を奏する。
【0272】
また、本発明に用いられる定着手段において、加熱用部材は、通電により発熱するものであれば、通電時の抵抗によって発熱するものに限定されず、例えば通電時の電磁誘導によって発熱する電磁誘導発熱性部材によって形成することもできる。
【0273】
また、本発明に用いられる定着手段は、記録材上のトナーの加熱に広く適用することが可能であり、例えば記録材上の画像を仮定着処理する像加熱装置、つや等の画像表面性を改質する像加熱装置等にも適用することができる。
【0274】
また、前述した実施の形態では、定着部材10を加圧部材20に向けて付勢する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、加圧部材20を定着部材10に向けて付勢しても良く、また定着部材10および加圧部材20の両方を互いに接近する方向に付勢しても良い。
【0275】
また、前述した実施の形態では、バネに代表されるような、充分な付勢力を発現する加圧手段17による付勢によって定着ニップ部Nを形成する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、定着部材10と加圧部材20の位置を固定して所望の定着ニップNを形成しても良い。
【0276】
【実施例】
以下実施例に本発明をより具体的に説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様が何ら限定されるものではない。尚、以下の配合における部数は、全て質量部である。
【0277】
(樹脂製造例I)
実施例に用いられるポリエステル樹脂を、表1に記載のモノマー組成で脱水縮合法により合成した。得られたポリエステル樹脂の物性を表2に示す。
【0278】
【表1】
【0279】
【表2】
【0280】
<実施例1>
・ポリエステル樹脂a 90部
・銅フタロシアニン顔料 4部
(C.I.Pigment Blue15:3)
・ポリエチレンワックス 2部
(最大吸熱ピーク102℃、Mn;670、Mw/Mn;1.35)
・アルミニウム化合物(D) 4部
上記材料のうち顔料は樹脂中にプレ分散させた。これらをヘンシェルミキサーで混合した後、120℃に設定した二軸混練押出機にて溶融混練した。
【0281】
得られた混練物を冷却後、カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、さらに得られた微粉砕品を多分割分級装置で分級して、重量平均粒径6.7μmのトナー粒子Aを得た。
【0282】
得られたトナー粒子Aを100部に対し、ヘキサメチルジシラザン10部と、ジメチルシリコーンオイル10部で疎水化処理した、メタノールウエッタビリティ80%、BET比表面積120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0部と、イソブチルトリメトキシシラン20部で処理を行ったメタノールウエッタビリティ70%、BET比表面積200m2/gの疎水性γ−アルミナ微粉体0.3部とを添加してヘンシェルミキサーで外添混合してシアントナーAを調製した。表3にそのトナーの処方を示し、表4および表5にトナー物性を示す。また、このトナーの温度とG’との関係、温度とG”との関係及び温度とtanδとの関係をそれぞれ示すグラフを図10に、THF可溶分のGPCによる分子量分布を図11に示す。
【0283】
トナー評価用の装置としては、紙送り速度がA4縦送りで40枚/分の、図1に示す構成の画像形成装置を用い、加熱定着装置の基本的構成として、加熱用ヒータ11としては、図5に示す構成のものを用いた。
【0284】
金属製スリーブ13(図2参照)として内径30mm、厚み50μmの円筒状ステンレス鋼にプライマー層を5μm、PFA樹脂を10μmの厚みでディッピングによって塗布して外径30.13mmの円筒状に形成したものを用いた。金属製スリーブ13の内面の表面粗さRzを2μm、外面の表面粗さRzを2μmとした。
【0285】
また、加圧ローラ20(図2参照)は、φ20mmのAl芯金21に、シリコーンゴム層を厚み5mmで形成し、さらに外層にはPFAチューブを被覆したものを用いた。なお、定着装置にシリコーンオイルの塗布は行わなかった。
【0286】
画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を180℃とし、定着装置全体が室温に冷えた状態から、加熱用ヒータ11の通電発熱抵抗層11bへの通電を開始して5秒後に、未定着トナー画像が形成された記録材Pの先端が定着ニップ部Nに突入するように給紙のタイミングを調整した。ちなみに通電を開始して3秒後の定着ニップ部Nの温度をモニターしたところ、既に設定温度に達していた。
【0287】
以下にトナーの評価方法を説明する。
【0288】
1.低温定着性評価:
A4普通紙(64g/m2)及びA4上質紙(105g/m2)を用い、画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を140℃、150℃、160℃の3段階に変え、定着器全体が室温に冷えた状態から、一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像をそれぞれ連続30枚プリントした。なお、トナー載り量は、フルカラー4色分を想定し1.1〜1.2mg/cm2に設定した。その各30枚の画像全てについて、50g/cm2の荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を算出して、以下の基準により評価した。
【0289】
ランクA:平均濃度低下率の最悪値が5%未満
ランクB:平均濃度低下率の最悪値が5%以上10%未満
ランクC:平均濃度低下率の最悪値が10%以上
【0290】
2.低温オフセット評価:
A4普通紙(64g/m2)及びA4上質紙(105g/m2)を用い、画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を140℃、150℃の2段階に変え、定着器全体が室温に冷えた状態から、紙の先端から形成されている幅が100mmのベタ画像をそれぞれ1枚ずつプリントした。プリント時の低温オフセットの発生について、以下の基準により評価した。
【0291】
ランクA:140℃設定で発生しない
ランクB:140℃設定で発生するが150℃設定で発生しない
ランクC:150℃設定で発生する
【0292】
3.グロス評価:
A4普通紙(64g/m2)を用い、画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を160℃、190℃の2段階に変え、一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像をそれぞれ連続30枚プリントした。なお、トナー載り量は、フルカラー4色分を想定し1.1〜1.2mg/cm2に設定した。
【0293】
この画像のグロスを、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(東京電色工業社製)を用いて、光の入射角75°の条件で測定した。設定温度を変えたときのグロス値の変化を30枚の平均値で示した。また、各温度でのグロス安定性を1枚の画像における平均グロスの最大値と最小値の差により以下の基準により評価した。
【0294】
A:普通紙の平均グロスの最大と最小の差が5以内
B:普通紙の平均グロスの最大と最小の差が6を超え10以内
C:普通紙の平均グロスの最大と最小の差が10以上
【0295】
4.高温オフセット評価:
A4普通紙(64g/m2)を用い、高温オフセットが発生するまで画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を上げていった。高温オフセットが発生したときの温度により以下の基準で評価した。
【0296】
ランクA:230℃設定で発生しない
ランクB:210〜230℃設定で発生する
ランクC:200℃以下の設定で発生する
【0297】
5.オーバーヘッドプロジェクターシートの画像透明性
A4オーバーヘッドプロジェクターシートを用い、画像形成装置の定着ニップ部Nの設定温度を200℃とし、一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像をそれぞれ連続30枚プリントした。なお、トナー載り量は、フルカラー4色分を想定し1.1〜1.2mg/cm2に設定した。定着した画像をオーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影し評価した。
【0298】
A:透明性、色再現性に優れ、明暗ムラ、オフセットが全くない
B:明暗ムラがわずかにあるが、実用上問題無いレベルが1枚以上ある
C:透過せず色の判別が不可能なものが1枚以上ある
【0299】
6.分離性
上記の評価中に全く問題なく画像定着を行うことができ、転写紙を定着装置から分離できたものはA、分離不良によるジャムが発生したものはCとして評価した。
【0300】
トナーAについて以上の評価を行った結果を表6に示す。低温定着性、耐低温オフセット性、耐高温オフセット性のいずれにおいても、紙種によらず非常に良好な結果が得られた。
【0301】
<実施例2〜7>
実施例1において、トナーの処方を表3に示すように変えた以外は実施例1と同様の方法を用いて、表4および表5に示すトナーB〜Gを作製した。(但し、混練温度、軸回転数、パドル構成等の混練条件はトナー処方によって変更した。)得られたトナーB〜Gについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。実施例2〜7においても、実施例1よりは若干劣る部分もあるが充分に良好な結果が得られた。
【0302】
<比較例1〜6>
実施例1において、トナーの処方を表3に示すように変えた以外は実施例1と同様の方法を用いて、表4および表5に示すトナーH〜Mを作製した。(但し、混練温度、軸回転数、パドル構成等の混練条件はトナー処方によって変更した。)得られたトナーH〜Mについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。表6に示すとおり、各比較例では満足な結果は得られなかった。
【0303】
【表3】
【0304】
【化6】
【0305】
【化7】
【0306】
【表4】
【0307】
【表5】
【0308】
【表6】
【0309】
【発明の効果】
本発明によれば、画像形成方法において、従来達成が困難であった電源投入後のウェイトタイムが無く、待機中の予備加熱を必要としないオンデマンドタイプの加熱定着装置を用いたオイルレスフルカラー高速定着を可能とすることができる。特に、従来定着速度を遅くして対応していた、厚手の用紙の定着性、オーバーヘッドプロジェクターシートでの色再現・透過性においても、定着スピードを落とすことなく定着することが可能となる。
【0310】
また、本発明によれば、フルカラー画像のグロスを自由にコントロール可能とし、幅広いグロスのレンジをカバーできる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図
【図2】加熱定着装置の一例を示す概略構成図
【図3】図2の定着ニップ部近傍の部分拡大図
【図4】加熱定着装置の縦断面図(図2のI−I線に沿った模式的断面図)
【図5】加熱用ヒータの他の実施形態を表す部分模式図
【図6】金属製スリーブ製造方法である深絞り加工の説明図
【図7】製造途中の金属製スリーブの形状を説明する図
【図8】(a)と(b)は金属製スリーブ製造方法であるしごき加工の説明図、(c)はしごき加工終了時の金属製スリーブの形状を説明する図
【図9】金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図
【図10】実施例1のトナーAの温度と貯蔵弾性率(G’)との関係、温度と損失弾性率(G”)との関係、および温度とtanδとの関係をそれぞれ示すグラフ
【図11】実施例1のトナーAの分子量分布を示す図
【符号の説明】
11 加熱用ヒータ
12 断熱ステイホルダー
13 加熱用金属製スリーブ
14 温度検知素子
20 加圧部材
24 バイアス印加手段
Claims (20)
- 可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーであって、
結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、
示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とするトナー。 - 前記損失弾性率G”が1×104〜3×104Paを示すときの損失正接tanδが0.6〜2.0であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 170℃における貯蔵弾性率G’170および損失弾性率G”170が1×102〜1×104Paであることを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
- 170℃における損失正接tanδ170と150℃における損失正接tanδ150の比(tanδ170/tanδ150)が1.05〜1.6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピークが分子量2,000〜30,000の領域にあり、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が100より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量1万以下の成分の含有量(M1)が35〜55%であり、分子量1万超5万以下の成分の含有量(M2)が30〜45%であり、分子量5万超50万以下の成分の含有量(M3)が8〜20%であり、分子量50万超の成分の含有量(M4)が2〜12%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記結着樹脂は、非線状ポリエステル樹脂を有しており、
該非線状ポリエステル樹脂は、(a)3価以上のポリカルボン酸成分と、(b)炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸成分及び/又は炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリアルコール成分とを少なくとも有する組成物より合成されるものであり、
前記組成物中の前記3価以上のポリカルボン酸成分の含有量A[mol%]と、前記炭素数5〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を有するポリカルボン酸および前記ポリアルコール成分の総含有量B[mol%]とが、下記の関係を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記有機金属化合物は、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸金属錯体、アルキルサリチル酸金属錯体、ジアルキルサリチル酸金属錯体、オキシナフトエ酸金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体及びカルボン酸の金属塩からなるグループから選択されることを特徴とする請求項9記載のトナー。
- 前記有機金属化合物は、アルミニウムまたはジルコニウムと、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合してなる有機金属化合物であることを特徴とする請求項9または10記載のトナー。
- 前記着色剤として染料又は顔料を含有するカラートナーであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のトナー。
- 少なくともシアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、シアン着色剤を含有するシアントナーであることを特徴とする請求項12記載のトナー。
- 少なくともシアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、マゼンタ着色剤を含有するマゼンタトナーであることを特徴とする請求項12記載のトナー。
- 少なくともシアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、イエロー着色剤を含有するイエロートナーであることを特徴とする請求項12記載のトナー。
- 少なくともシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するための、ブラック着色剤を含有するブラックトナーであることを特徴とする請求項12記載のトナー。
- 記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着させる定着工程を含み、
前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
前記トナーの損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とする画像形成方法。 - 前記定着工程において、前記定着手段から前記記録材にシリコーンオイルを供給せずに定着を行うことを特徴とする請求項17記載の画像形成方法。
- 記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、この未定着トナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させる定着手段であって、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有する定着手段を有し、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは、結着樹脂と着色剤とワックスとを少なくとも含有し、示差走査熱量計(DSC)による測定で得られる最大吸熱ピークが60〜135℃の範囲にあり、
前記トナーの損失弾性率G”が3×104Paを示す温度が90〜115℃であり、損失弾性率G”が2×104Paを示す温度が95〜120℃であり、損失弾性率G”が1×104Paを示す温度が105〜135℃であることを特徴とする画像形成装置。 - 前記加熱用金属製スリーブにおいて、前記円筒状金属素管の内面および外面の表面粗さがRz=3μm以下であるとともに、前記円筒状金属素管の外面には接着層を含む離型性層が厚み20μm以下で形成されていることを特徴とする請求項19記載の画像形成装置。
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