JP2012225332A - スタータ制御装置の異常検出装置 - Google Patents

スタータ制御装置の異常検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】スタータのピニオンギヤをエンジンのリングギヤに噛み合わせるアクチュエータへの通電を開始してから所定の遅延時間が経過したときにスタータのモータへの通電を開始する、時間差制御の異常を検出して適切な処置を行う。
【解決手段】アイドルストップ制御を行うECU11では、運転者の始動用操作に応じてエンジン7を始動させるECU12からユーザ始動指令が出力されると、まずトランジスタT1,T3がオンして、ソレノイド23を動作させてスタータ9のピニオンギヤ21をリングギヤ25に噛み合わせ、その後、遅延回路47による遅延時間Tdが経過すると、該遅延回路47の出力でトランジスタT2がオンして、電磁スイッチ19をオンさせてスタータ9のモータ17への通電を行う。そして、マイコン35は、ユーザ始動指令が出力されてからトランジスタT2がオンするまでの時間tを測定し、該時間tが遅延時間Tdの正常値か否かを判定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両のエンジン(内燃機関)を始動のためにクランキングするスタータの制御装置に関し、特に、そのスタータ制御装置の異常検出に関する。
近年、車両(自動車)においては、所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動的に停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立するとエンジンを自動的に始動(いわば再始動)させるエンジン自動停止・始動システム(一般にはアイドルストップ(またはアイドリングストップ)システムと呼ばれる)を備えたものが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1には、スタータとして、モータにより回転駆動されるピニオンギヤをエンジンのリングギヤに噛み合わせることと、モータへの通電(即ち、モータを動作させること)とを、独立して行うことができるものが記載されている。
この種のスタータは、ピニオンギヤとモータとの各々を独立して制御できることから、以下では、独立制御型スタータ、あるいは単に、独立制御型とも言う。そして、アイドルストップシステムを備えた車両(以下、アイドルストップ車両という)では、そのような独立制御型スタータが用いられる可能性が高いと考えられる。
具体的に説明すると、ピニオンギヤは、エンジンのリングギヤに噛み合った状態でスタータのモータ(スタータモータ)により回転駆動されることで、エンジンのリングギヤを回転させて該エンジンをクランキングさせるものであるが、独立制御型スタータでは、ピニオンギヤを、リングギヤに噛み合わない位置である初期位置から、リングギヤに噛み合う位置である噛み合い位置へ動かすアクチュエータであるピニオン制御用ソレノイドと、モータへの通電経路に設けられて該通電経路を連通させる大型リレーであるモータ通電用電磁スイッチとが、独立して駆動できるようになっている。
このため、独立制御型スタータによれば、モータを動作させる前に、ピニオン制御用ソレノイドを駆動する(詳しくは、該ソレノイドのコイルに通電する)ことで、ピニオンギヤをリングギヤに噛み合わせ、その後、モータ通電用電磁スイッチを駆動する(詳しくは、該電磁スイッチのコイルに通電する)ことにより、ピニオンギヤとリングギヤとが噛み合った状態でモータの動作を開始させることができる。よって、ピニオンギヤとリングギヤとの磨耗や、両者が噛み合う際の騒音や振動を低減することができる。
そして、アイドルストップ車両では、走行中(車速が0の状態も含む)においてもエンジンの停止と始動が行われるため、上記の磨耗や騒音、振動を低減するために、独立制御型スタータが採用される可能性が高いと言える。また例えば、エンジンの自動停止処理後、未だエンジンが惰性で回っている回転降下中においても、エンジン回転数が高いときは、モータを駆動した後にピニオンギヤを突き出し、また、エンジン回転数が低いときは、ピニオンギヤを突き出した後にモータを駆動することにより、ピニオンギヤがリングギヤに当接するときの両者の回転数差を低減させることができ、スタータによるスムーズなエンジン再始動が可能となる。
また、独立制御型スタータが搭載される車両の場合、そのスタータを制御する装置は、運転者の始動用操作に応じてエンジンを始動させるユーザ始動時(即ち、アイドルストップからのエンジン再始動時ではなく、運転者の手動の始動用操作によるエンジン始動時)においても、まず、ピニオン制御用ソレノイドを駆動し、その後にモータ通電用電磁スイッチを駆動してモータを動作させる、といった制御を行うこととなる。尚、「アイドルストップからの」とは、「アイドルストップシステムによってエンジンが自動的に停止されてからの」ということである。
また、例えば特許文献2に記載されているように、このようなユーザ始動を行うためのユーザ始動用回路は、それの全部又は一部を、アイドルストップからの再始動を行うための自動再始動用回路とは別の回路として構成することも考えられる。冗長性による信頼性の向上を図ったり、電源電圧が低くてもユーザ始動が確実に行えるようにしたりするためである。具体的な構成例を述べると、特許文献2に記載のユーザ始動用回路は、運転者が、始動用操作として、ニュートラルスイッチをオンした状態でキースイッチをオンする操作を行うと、その操作によって発生するユーザ始動指令信号としてのバッテリ電圧によってピニオン制御用ソレノイドのコイルに通電するためのソレノイド用リレーがオンし、その時点から遅延回路による遅延時間が経過すると、モータへ通電するためのモータ用リレーをオンさせるように構成されている。
特開平11−30139号公報 特開2010−90874号公報
ところで、例えば前述した具体例のユーザ始動用回路において、何らかの原因で、遅延回路による遅延時間が正常値(本来の設定値)よりも短くなると、その遅延時間が正常値である場合と比較して、ピニオンギヤがリングギヤに当接する時の該ピニオンギヤの回転数が高くなってしまう。よって、ピニオンギヤとリングギヤとの噛み合い不良が生じ、延いては、両者の磨耗が起きてしまう。そして、磨耗が進むと、ピニオンギヤとリングギヤが正常に噛み合わなくなり、エンジンの始動ができなくなってしまうと考えられる。特に、アイドルストップ車両では、路上でエンジンが自動停止されるため、エンジンの始動ができなくなるということは、路上で走行不能になることに繋がるため、好ましくない。
また、遅延回路による遅延時間が正常値より長くなっても良くない。なぜなら、モータの動作開始タイミングが遅れるため、エンジンの始動性が悪化するからである。更に、ピニオンギヤがリングギヤに当たる時に発生する打撃音が、モータの動作音とは重ならずに目立ってしまうようになり、その結果、車両のユーザ(使用者)に違和感を与えてしまうことにもなる。
尚、独立制御型スタータを制御する装置においては、アイドルストップからのエンジン再始動時においても、まず、ピニオン制御用ソレノイドを駆動し、その時点から所定の遅延時間が経過したときにモータ通電用電磁スイッチを駆動してモータを動作させる、といった時間差制御を行うことが考えられ、その場合でも、遅延時間が正常値から外れると、上記のような不具合を招くこととなる。
本発明は、こうした新規の問題に着目したものであり、独立制御型のスタータを制御するスタータ制御装置において、スタータのピニオンギヤをエンジンのリングギヤに噛み合わせるためのピニオン制御用アクチュエータへの通電を開始してから所定の遅延時間が経過したときにスタータのモータへの通電を開始する、時間差制御の異常を検出することを目的としており、その異常を検出した場合に適切な処置を行うことができるようにすることも目的としている。
本発明のスタータ制御装置の異常検出装置(以下単に、異常検出装置という)が用いられる車両には、通電されることにより、エンジン始動用のスタータのピニオンギヤを、エンジンのリングギヤに噛み合わない位置である初期位置から、リングギヤに噛み合う位置である噛み合い位置へ動かすピニオン制御用アクチュエータと、ピニオンギヤを回転させるスタータのモータへの通電経路に設けられ、ピニオン制御用アクチュエータへの通電とは独立してオンするように駆動されるスイッチ手段であって、オンすることにより、モータへの通電経路を連通して該モータに通電するモータ通電用スイッチ手段と、が備えられている。
更に、その車両におけるスタータ制御装置は、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを備えている。
第1の駆動手段は、車両のエンジンを始動させる始動時(エンジン始動時)において、スタータのピニオンギヤを初期位置から噛み合い位置へ移動させるために、ピニオン制御用アクチュエータに通電するための第1の駆動動作を行う。そして、第2の駆動手段は、始動時において、第1の駆動手段が第1の駆動動作を開始してから所定の遅延時間が経過すると、モータに通電してエンジンのクランキングを開始するために、モータ通電用スイッチ手段をオンさせるための第2の駆動動作を行う。
このようなスタータ制御装置の異常を検出するための、請求項1の異常検出装置は、始動時異常判定手段を備えている。そして、その始動時異常判定手段は、始動時において、第1の駆動手段が前記第1の駆動動作を開始してから第2の駆動手段が前記第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間である実遅延時間が、前記遅延時間の正常値か否かを判定する。
よって、この始動時異常判定手段により実遅延時間が正常値ではないと判定されたならば、ピニオン制御用アクチュエータへの通電を開始してから所定の遅延時間が経過したときにスタータのモータへの通電を開始する、という時間差制御が正常に実施されていないということであり、その時間差制御の異常を検出するこができる。そして、異常を検出した場合には、実遅延時間が正常値でないことによって起こる不具合に対する処置を行うことができるようになる。
尚、スタータ制御装置の第1の駆動手段と第2の駆動手段とが、車両の運転者の始動用操作に応じてエンジンを始動させるユーザ始動時において動作するものであるならば、始動時異常判定手段は、そのユーザ始動時において動作するものであれば良く、また、車両がアイドルストップ車両であって、スタータ制御装置の第1の駆動手段と第2の駆動手段とが、アイドルストップからのエンジン再始動時において動作するものであれば、始動時異常判定手段は、そのエンジン再始動時において動作するものであれば良い。更に、スタータ制御装置の第1の駆動手段と第2の駆動手段とが、ユーザ始動時とエンジン再始動時との両方において動作するものであれば、始動時異常判定手段は、ユーザ始動時とエンジン再始動時との各々において動作するようになっていても良い。つまり、請求項1の異常検出装置において、始動時とは、ユーザ始動時と、アイドルストップからの再始動時との、何れでも良い。一方、始動用操作とは、運転者がエンジンを始動させるために行う一般的な手動の操作であり、例えば、キーシリンダに挿入した車両のキーを捻ってスタートスイッチをオンする操作や、始動用のプッシュスイッチのボタンを押す操作などである。
ところで、始動時異常判定手段は、実遅延時間が、遅延時間の正常範囲の最小値である最小許容値よりも小さいか否かの判定である過小異常判定と、実遅延時間が、遅延時間の正常範囲の最大値である最大許容値よりも大きいか否かの判定である過大異常判定との、両方または一方を行うように構成することができるが、請求項2に記載のように、少なくとも、過小異常判定を行うことが好ましい。
なぜなら、前述したように、実遅延時間が正常値よりも長くなった場合には、エンジンの始動性が悪化したり、ピニオンギヤがリングギヤに当たる時の打撃音が目立つようなったりするという不具合が生じるものの、エンジンの始動不能(クランキング不能)に至ることは無いと考えられる。これに対して、実遅延時間が正常値よりも短くなると、ピニオンギヤとリングギヤが磨耗してエンジンの始動不能に至る可能性があるからであり、過小異常判定を行えば、より重篤な故障の原因となる異常モードを検出できるからである。
次に、請求項2を引用する請求項3の異常検出装置が用いられる車両には、所定の自動停止条件が成立するとエンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられている。
そして、請求項3の異常検出装置は、始動時異常判定手段により実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、アイドルストップ制御手段がエンジンを停止させるのを禁止する。
なぜなら、実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、実遅延時間が正常値よりも短くなっているということであり、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性がある。そして、エンジン始動ができないのに、アイドルストップ制御手段によってエンジンが停止されると、その後の再始動ができなくなり、車両が路上で走行不能になってしまうため、請求項3の異常検出装置では、アイドルストップ制御手段によるエンジン停止を禁止している。よって、この異常検出装置によれば、車両が路上で走行不能になってしまうことを未然に防止することができる。
次に、請求項4の異常検出装置は、請求項2,3の異常検出装置において、始動時異常判定手段により実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、車両の運転者に対してエンジンを停止させないことを促す処理(以下、エンジン非停止を促す処理ともいう)を行う。
なぜなら、前述したように、実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性があるため、運転者がエンジン停止用操作を行ってエンジンを停止させてしまうと、その後の始動用操作による始動(即ちユーザ始動)ができなくなるからである。このため、エンジン非停止を促す処理を行うことで、車両が走行不能になってしまうことを未然に防止することができる。
尚、エンジン非停止を促す処理としては、例えば、エンジンを停止させないことを促す内容のメッセージを、表示装置に文章で表示したり、スピーカから音声で出力したりする処理や、エンジンの始動と停止を行うための操作部がプッシュスイッチのボタンである車両ならば、そのボタンが通常よりも長い時間押され続けないとエンジンを停止しないようにする、といった処理でも良い。
次に、請求項5の異常検出装置は、請求項2〜4の異常検出装置において、始動時異常判定手段により実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、車両の運転者がエンジンを始動させるための始動用操作を行っても、ピニオン制御用アクチュエータ及びモータへの通電が行われないようにする。つまり、次回以降のユーザ始動を禁止している。
なぜなら、実遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、実遅延時間が正常値よりも短くなっているということであり、ピニオンギヤとリングギヤが磨耗している可能性があるが、ユーザ始動を行うと、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗を更に進行させてしまう可能性があるため、請求項5の異常検出装置では、以後のユーザ始動を禁止している。よって、この異常検出装置によれば、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗が進んでしまうのを防止することができ、延いては、車両の修理費用を少なくすることができる。
ところで、請求項6に記載のように、第1の駆動手段及び第2の駆動手段には、車両の運転者がエンジンを始動させるための始動用操作を行うことで発生するユーザ始動指令信号が与えられると共に、第1の駆動手段は、ユーザ始動指令信号が与えられると第1の駆動動作を開始するように構成され、第2の駆動手段は、ユーザ始動指令信号が与えられると、その時点から前記遅延時間が経過したときに、第2の駆動動作を開始するように構成されているとする。そして、この場合、始動時異常判定手段は、第2の駆動手段にユーザ始動指令信号が与えられてから第2の駆動手段が第2の駆動動作を開始するまでの時間を、実遅延時間として検出するように構成することができる。つまり、この構成の場合、第1の駆動手段と第2の駆動手段とが、ユーザ始動時において動作するものとなり、始動時異常判定手段も、そのユーザ始動時において動作するものとなる。
一方、請求項6を引用する請求項7の異常検出装置が用いられる車両において、スタータ制御装置は、エンジンを始動させる始動時ではない場合に、第2の駆動手段が第2の駆動動作を行っても、モータに通電されるのを阻止するモータ通電阻止手段を備えている。
そして、請求項7の異常検出装置は、非始動時異常判定手段を更に備えており、その非始動時異常判定手段は、前記モータ通電阻止手段がモータへの通電を阻止している状態で、第2の駆動手段にユーザ始動指令信号と同じダミー信号を与え、該ダミー信号を与えてから第2の駆動手段が第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間であるダミー信号入力時遅延時間が、前記遅延時間の正常値か否かを判定する。
つまり、エンジン始動時ではない場合に、モータに通電されるのを阻止した状態で、第2の駆動手段にユーザ始動指令信号と同じダミー信号を与えることにより、そのダミー信号の付与時から第2の駆動手段が第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間であって、前述の始動時異常判定手段が判定する実遅延時間と同じ長さになるであろうダミー信号入力時遅延時間の良否を判定している。
そして、このような請求項7の異常検出装置によれば、例えばユーザ始動の後や前など、エンジン始動時以外においても、スタータを実際に機能させることなく、第2の駆動手段が正しく機能するのか否か(詳しくは、第1の駆動手段が第1の駆動動作を開始してから正しい遅延時間が経過したときに第2の駆動手段が第2の駆動動作を開始するか否か)を確認することができる。
ところで、始動時異常判定手段と同様に、非始動時異常判定手段も、ダミー信号入力時遅延時間が、遅延時間の正常範囲の最小値である最小許容値よりも小さいか否かの判定(過小異常判定)と、ダミー信号入力時遅延時間が、遅延時間の正常範囲の最大値である最大許容値よりも大きいか否かの判定(過大異常判定)との、両方または一方を行うように構成することができるが、請求項8に記載のように、少なくとも、過小異常判定を行うことが好ましい。そして、その理由は、請求項2の記載について述べた理由と同じであり、過小異常判定を行えば、エンジン始動不能の原因となる異常モードを検出できるからである。
次に、請求項8を引用する請求項9の異常検出装置が用いられる車両には、所定の自動停止条件が成立するとエンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられている。
そして、請求項9の異常検出装置は、エンジンの運転中において、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、アイドルストップ制御手段がエンジンを停止させるのを禁止する。
その理由は、請求項3の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、ダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、実遅延時間が正常値よりも短いということであり、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性がある。そして、エンジン始動ができないのに、アイドルストップ制御手段によってエンジンが停止されると、その後の再始動ができなくなり、車両が路上で走行不能になってしまうため、請求項9の異常検出装置では、アイドルストップ制御手段によるエンジン停止を禁止している。よって、この異常検出装置によっても、車両が路上で走行不能になってしまうことを未然に防止することができる。
次に、請求項8,9を引用する請求項10の異常検出装置は、エンジンの運転中において、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、車両の運転者に対してエンジンを停止させないことを促す処理(エンジン非停止を促す処理)を行う。
なぜなら、前述したように、ダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性があるため、運転者がエンジン停止用操作を行ってエンジンを停止させてしまうと、その後の始動用操作による始動(ユーザ始動)ができなくなるからである。このため、エンジン非停止を促す処理を行うことで、車両が走行不能になってしまうことを未然に防止することができる。
次に、請求項8〜10を引用する請求項11の異常検出装置は、エンジンの運転中において、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、車両の運転者が始動用操作を行っても、ピニオン制御用アクチュエータ及びモータへの通電が行われないようにする。つまり、次回以降のユーザ始動を禁止している。
なぜなら、ダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、実遅延時間が正常値よりも短いということであり、ピニオンギヤとリングギヤが磨耗している可能性があるが、ユーザ始動を行うと、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗を更に進行させてしまう可能性があるため、請求項11の異常検出装置では、以後のユーザ始動を禁止している。よって、この異常検出装置によれば、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗が進んでしまうのを防止することができ、延いては、車両の修理費用を少なくすることができる。
次に、請求項8〜11を引用する請求項12の異常検出装置が用いられる車両には、所定の自動停止条件が成立するとエンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられている。
そして、請求項12の異常検出装置は、アイドルストップ制御手段がエンジンを停止させてから該エンジンを再始動させるまでのアイドルストップ中において、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、エンジンを始動させる処理を行う。
なぜなら、前述したように、ダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、実遅延時間が正常値よりも短いということであり、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していてエンジン始動ができない可能性がある。そこで、エンジンを始動させる処理を行うことにより、実際にエンジンの始動ができるか否かをすぐに確認することができる。そして、エンジンの始動に成功したか否かによって異なるフェイルセーフ処置を行うことができる。
そこで、請求項13の異常検出装置は、請求項12の異常検出装置において、エンジンを始動させる処理によってエンジンを始動させることができた場合には、アイドルストップ制御手段がエンジンを停止させるのを禁止する。
その理由は、請求項9の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性があるため、アイドルストップ制御手段によるエンジン停止を禁止することにより、車両が路上で走行不能になってしまうことを未然に防止している。
また、請求項14の異常検出装置は、請求項12,13の異常検出装置において、エンジンを始動させる処理によってエンジンを始動させることができた場合には、車両の運転者に対してエンジンを停止させないことを促す処理(エンジン非停止を促す処理)を行う。
その理由は、請求項10の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、既にピニオンギヤとリングギヤが磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性があるため、エンジン非停止を促す処理を行うことで、車両が走行不能になってしまうことを未然に防止している。
また、請求項15の異常検出装置は、請求項12〜14の異常検出装置において、エンジンを始動させる処理によってエンジンを始動させることができた場合には、車両の運転者が始動用操作を行っても、ピニオン制御用アクチュエータ及びモータへの通電が行われないようにする。つまり、次回以降のユーザ始動を禁止している。
その理由は、請求項11の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、以後のユーザ始動を禁止することで、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗が進んでしまうのを防止している。
一方、請求項16の異常検出装置は、請求項12の異常検出装置において、エンジンを始動させる処理によってエンジンを始動させることができなかった場合には、他の車両を運転している他車両運転者に対して注意を喚起するための注意喚起処理を行う。
その注意喚起処理としては、例えば、音を出す処理や、車外から見える表示装置に何等かのメッセージを表示させる処理でも良いが、請求項17に記載のように、車両のハザードランプを点滅させる処理を行うと良い。他車両運転者に注意させるという面において、最も簡単且つ効果的と考えられるからである。
そして、このような請求項16,17の異常検出装置によれば、車両が路上で走行不能になったことを他車両運転者に気付かせることができ、安全性を向上させることができる。
次に、請求項18の異常検出処理は、請求項8〜17の異常検出処理において、車両の運転者のイグニッションオフ用操作によって車両がイグニッションオフの状態になった後に、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、運転者が始動用操作を行っても、ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにする。つまり、次回以降のユーザ始動を禁止している。
その理由は、請求項11の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、以後のユーザ始動を禁止することで、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗が進んでしまうのを防止している。尚、イグニッションオフ用操作とは、運転者が車両をイグニッションオフの状態にするために行う一般的な手動の操作であり、例えば、キーシリンダに挿入されている車両のキーを捻ってイグニッションスイッチをオフする操作や、エンジン始動/停止用プッシュスイッチのボタンを一定時間押し続ける操作などである。また、イグニッションオフの状態とは、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給されない状態である。
次に、請求項19の異常検出処理は、請求項8〜18の異常検出処理において、車両がイグニッションオンの状態になってからユーザ始動指令信号が発生するまでの間において、非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が最小許容値よりも小さいと判定された場合には、運転者が始動用操作を行っても、ピニオン制御用アクチュエータ及びモータへの通電が行われないようにする。つまり、ユーザ始動を禁止している。
その理由は、請求項11の異常検出装置について述べた理由と同じである。即ち、ユーザ始動を禁止することで、ピニオンギヤとリングギヤの磨耗が進んでしまうのを防止している。尚、イグニッションオンの状態とは、車両のイグニッションスイッチがオンされている状態であるとも言えるが、イグニッションスイッチが存在しない車両(即ち、前述のエンジン始動/停止用プッシュスイッチの操作によってイグニッションのオン/オフやスタータのオンが行われる車両)もあるため、詳しくは、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給されている状態である。
次に、請求項20の異常検出処理は、請求項7〜19の異常検出処理において、非始動時異常判定手段によりダミー信号入力時遅延時間が正常値ではないと判定された場合には、運転者に対して異常の発生を警告する処理を行う。また、請求項21の異常検出処理は、請求項1〜20の異常検出処理において、始動時異常判定手段により実遅延時間が正常値ではないと判定された場合には、運転者に対して異常の発生を警告する処理を行う。そして、請求項20,21の異常検出装置によれば、スタータ制御装置に異常が発生していることを運転者に知らせて、早期の修理を促すことができる。
ところで、請求項22に記載ように、モータ通電用スイッチ手段は、コイルに通電されることでオンするリレーであることが考えられ、車両には、ピニオン制御用アクチュエータへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通してピニオン制御用アクチュエータに通電するピニオン駆動用リレーと、モータ通電用スイッチ手段のコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通してモータ通電用スイッチ手段をオンさせるモータ駆動用リレーと、が搭載されることが考えられる。
その場合、第1の駆動手段としては、ピニオン駆動用リレーのコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通してピニオン駆動用リレーをオンさせるピニオン駆動用トランジスタを有するものが考えられ、そのピニオン駆動用トランジスタがオンする動作が、第1の駆動動作となる。
また、その場合、第2の駆動手段としては、モータ駆動用リレーのコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通してモータ駆動用リレーをオンさせるモータ駆動用トランジスタを有するものが考えられ、そのモータ駆動用トランジスタがオンする動作が、第2の駆動動作となる。そして、始動時異常判定手段及び非始動時異常判定手段は、モータ駆動用トランジスタあるいはモータ駆動用リレーがオンしたか否かを監視することで、第2の駆動手段が第2の駆動動作を開始したことを検知することができる。
一方、請求項23の異常検出装置によっても、請求項1の異常検出装置と同じ効果が得られる。
第1実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。 遅延回路の構成を表す回路図である。 エンジンの状態を時系列で表した説明図である。 第1実施形態のユーザ始動時異常検出処理を表すフローチャートである。 非始動時異常検出処理を表すフローチャートである。 フェイルセーフ処理を表すフローチャートである。 フェイルセーフ処理を説明する説明図である。 第2実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。 第3実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。 第3実施形態のユーザ始動時異常検出処理を表すフローチャートである。
以下に、本発明が適用された実施形態のスタータ制御システムについて説明する。
[第1実施形態]
まず図1は、第1実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。
本実施形態のスタータ制御システムは、車両のエンジン7を始動させるためのスタータ9を制御するものであるが、本実施形態において、スタータ9の制御は、エンジン7のアイドルストップ制御(自動停止及び自動始動の制御)の一部としても行われる。また、ここでは、車両の変速機は手動変速機(マニュアルトランスミッション)であるものとして説明する。
図1に示すように、本実施形態のスタータ制御システムは、2つの電子制御装置(以下、ECUという)11,12を備えている。
ECU11は、エンジン7のアイドルストップ制御を行うECUであり、そのアイドルストップ制御においてエンジン7を自動的に再始動させる際に、スタータ9を機能させる(即ち、スタータ9にエンジン7をクランキングさせる)。
また、ECU12は、車両の運転者の始動用操作に応じてエンジン7を始動させるユーザ始動時において、ECU11へユーザ始動指令信号を出力し、そのユーザ始動指令信号によりECU11内の駆動回路を動作させて、スタータ9を機能させる。尚、ユーザ始動指令信号は、エンジン7の始動を指示する始動指令である。また、運転者の始動用操作に応じてエンジン7を始動させることを、ユーザ始動と称している。
このため、ECU12には、運転者が自らの操作でエンジン7の始動及び停止を行うためのプッシュスイッチ(以下、スタートストップスイッチという)からの信号であるプッシュスイッチ信号が入力されている。
更に、ECU12には、ユーザ始動の許可条件が成立していることを確認するための信号として、例えば、車両のパーキングブレーキがかかっていることを検出するパーキングブレーキスイッチからの信号(Pブレーキ信号)、シフトレバーの操作位置(シフト位置)を検出するセンサからのシフト信号、クラッチペダルが踏まれたことを検出するセンサからのクラッチ信号、及びブレーキペダルが踏まれたことを検出するセンサからのブレーキ信号が入力されている。また、ECU12には、エンジン7が完爆状態(始動が完了した状態であり、いわゆるエンジン7がかかった状態)になったことを判断するために、クランク軸センサからの回転信号も入力されている。
そして、ECU12は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)15とトランジスタT0とを備えている。
トランジスタT0の2つの出力端子のうちの一方は、ECU12におけるバッテリ電圧VB(即ち、車載バッテリ16のプラス端子の電圧)のラインに接続されており、他方の出力端子は、ECU12においてユーザ始動指令信号を出力するために設けられた端子Joに接続されている。尚、本実施形態において、トランジスタT0は、Pチャネル型のMOSFETである。そして、トランジスタT0は、マイコン15からの駆動信号により、図示しない駆動回路を介してオン/オフされる。
マイコン15は、当該ECU12に入力されている上記各信号に基づいて、ユーザ始動の許可条件が成立していると判定し、且つ、運転者がエンジン7を始動させるための始動用操作(本実施形態では、スタートストップスイッチを所定時間以上押し続けた、という操作)を行ったことを検知すると、トランジスタT0をオンさせて、端子Joからバッテリ電圧VBを出力する。そして、その端子Joから出力されるバッテリ電圧VBが、ユーザ始動指令信号である。
尚、ユーザ始動の許可条件としては、例えば、パーキングブレーキがかかっており、且つ、シフト位置がニュートラルであり、且つ、ブレーキペダルとクラッチペダルが踏まれている、といった条件であるが、それらの条件を成立させる運転者の操作も、始動用操作であると見なすこともできる。
また、ECU11には、アイドルストップ制御を行うための信号として、例えば、上記シフト信号、上記クラッチ信号、上記ブレーキ信号、上記回転信号、アクセルペダルが踏まれたことを検出するセンサからのアクセル信号、車両の走行速度(車速)を検出するセンサからの車速信号、及びブレーキ負圧(ブレーキ倍力装置の負圧)を検出するセンサからのブレーキ負圧信号等が入力されている。
更に、ECU11は、ECU12の上記端子Joと車両内の配線(いわゆるワイヤハーネス)を介して接続される端子Jiを備えており、その端子JiにECU12からのユーザ始動指令信号が入力される。
一方、スタータ9は、独立制御型スタータであり、エンジン7をクランキングさせる動力源となるモータ(スタータモータ)17と、モータ17に通電するための電磁スイッチ19と、モータ17により回転駆動されるピニオンギヤ21と、ピニオンギヤ21を動かすためのピニオン制御用ソレノイド23とを備えている。
電磁スイッチ19は、バッテリ16からモータ17への通電経路に設けられた大型のリレーであり、その通電経路を連通してモータ17に電流を流すオン状態と、その通電経路を遮断するオフ状態とに、択一的に駆動される。
具体的には、電磁スイッチ19は、一端がグランドラインに接続されたコイル19aと、一対の接点19b,19cとを備えている。そして、コイル19aの他端にバッテリ電圧VBが印加されて該コイル19aに通電されると、接点19b,19cが短絡して通電経路を連通し(この状態がオン状態)、コイル19aに通電されないと、接点19b,19cが開放して通電経路を遮断する(この状態がオフ状態)。
ピニオン制御用ソレノイド23は、ピニオンギヤ21を、エンジン7のリングギヤ25に噛み合わない初期位置(図1に示す位置)から、リングギヤ25に噛み合う位置(噛み合い位置)へ動かすアクチュエータとしてのソレノイドである。
具体的には、ピニオン制御用ソレノイド23は、一端がグランドラインに接続されたコイル23aと、バネ等の付勢部材(図示省略)とを有しており、コイル23aに通電されなければ、ピニオンギヤ21を、上記付勢部材の力によって初期位置(図1に示す位置)に配置させる。また、コイル23aの他端にバッテリ電圧VBが印加されて該コイル23aに通電されると、その通電による電磁力により、ピニオンギヤ21を、図1における点線の矢印で示す如く当該スタータ9の外方向へ突出させて、リングギヤ25に噛み合わせる。尚、ピニオン制御用ソレノイド23のコイル23aに通電することは、該ピニオン制御用ソレノイド23に通電することに該当する。
そして、ピニオンギヤ21がリングギヤ25に噛み合った状態でモータ17が通電されれば、そのモータ17の回転力がピニオンギヤ21を介してリングギヤ25に伝わり、エンジン7がクランキングされることとなる。
また、車両において、バッテリ16からピニオン制御用ソレノイド23のコイル23aへの通電経路には、その通電経路の連通と遮断とを行うピニオン駆動用リレー31が設けられており、バッテリ16から電磁スイッチ19のコイル19aへの通電経路にも、その通電経路の連通と遮断とを行うモータ駆動用リレー32が設けられている。
具体的に説明すると、ピニオン駆動用リレー(以下単に、リレーという)31は、該リレー31の一対の接点がバッテリ16からコイル23aへ至る通電経路に設けられており、該リレー31のコイル31aに通電されて一対の接点が短絡することで(この状態がオン)、コイル23aに電流を流し、ピニオン制御用ソレノイド23を動作させてピニオンギヤ21をリングギヤ25に噛み合わせる。
同様に、モータ駆動用リレー(以下単に、リレーという)32は、該リレー32の一対の接点がバッテリ16からコイル19aへ至る通電経路に設けられており、該リレー32のコイル32aに通電されて一対の接点が短絡することで(この状態がオン)、コイル19aに電流を流し、電磁スイッチ19をオンさせてモータ17を動作させる。
また、リレー31のコイル31aの下流側端部は、ECU11の端子J1に接続されており、リレー32のコイル32aの下流側端部は、ECU11の端子J2に接続されている。更に、リレー31,32のコイル31a,32aの上流側端部は、両方共にECU11の端子J3に接続されている。
そして、ECU11は、2つの出力端子のうちの一方が当該ECU11の端子J1に接続され、他方がグランドラインに接続されたトランジスタT1と、2つの出力端子のうちの一方が当該ECU11の端子J2に接続され、他方がグランドラインに接続されたトランジスタT2と、2つの出力端子のうちの一方が当該ECU11の端子J3に接続され、他方がバッテリ電圧VBのラインに接続されたトランジスタT3とを備えている。
このため、トランジスタT3がオンした状態で、トランジスタT1がオンすれば、リレー31のコイル31aに電流が流れて該リレー31がオンすることとなり、トランジスタT3がオンした状態で、トランジスタT2がオンすれば、リレー32のコイル32aに電流が流れて該リレー32がオンすることとなる。尚、本実施形態において、トランジスタT1,T2は、Nチャネル型のMOSFETであり、トランジスタT3は、Pチャネル型のMOSFETである。
更に、ECU11は、アイドルストップ制御のための各種処理を実行するマイコン35を備えており、そのマイコン35には、当該ECU11に入力される前述の各信号が、それぞれの信号形態に合った入力回路(図示省略)を介して入力される。また、図示を省略しているが、マイコン35には、バッテリ電圧VBを図示しない抵抗で分圧した電圧も入力されており、マイコン35は、その分圧した電圧からバッテリ電圧VBを検出するようになっている。尚、マイコン35は、アナログの入力信号については、内部のA/D変換器でA/D変換することにより、その信号の電圧値を検出する。
また、ECU11は、端子Jiとグランドラインとの間に接続されたプルダウン用の抵抗37と、マイコン35からトランジスタT1をオンさせるために出力されるハイアクティブの駆動信号S1がアノードに入力されるダイオード41と、マイコン35からトランジスタT2をオンさせるために出力されるハイアクティブの駆動信号S2がアノードに入力されるダイオード42と、マイコン35からトランジスタT3をオンさせるために出力されるハイアクティブの駆動信号S3がアノードに入力されるダイオード43と、端子Jiからのユーザ始動指令信号がアノードに入力される3つのダイオード44,45,46と、ダイオード46のカソードから出力されるユーザ始動指令信号を、予め設定された遅延時間Tdだけ遅延させて出力する遅延回路47と、遅延回路47から出力されるユーザ始動指令信号(遅延させたユーザ始動指令信号)がアノードに入力されるダイオード48と、トランジスタT3をオンさせるための駆動回路49とを備えている。
そして、ECU11においては、ダイオード41,45のカソード同士が接続されており、その両ダイオード41,45のカソードの電圧が、トランジスタT1のゲートに駆動電圧として供給されるようになっている。このため、トランジスタT1は、マイコン35から駆動信号S1がハイで出力されるか、あるいは、ECU12からECU11へユーザ始動指令信号が出力されると、オンすることとなる。
また、ダイオード42,48のカソード同士が接続されており、その両ダイオード42,48のカソードの電圧が、トランジスタT2のゲートに駆動電圧として供給されるようになっている。このため、トランジスタT2は、マイコン35から駆動信号S2がハイで出力されるか、あるいは、遅延回路47からユーザ始動指令信号が出力されると、オンすることとなる。
また、ダイオード43,44のカソード同士が接続されており、その両ダイオード43,44のカソードの電圧が、トランジスタT3の駆動回路49に供給されるようになっている。そして、駆動回路49は、ダイオード43,44のカソードの電圧が、マイコン35の動作電圧(本実施形態では5V)より低く0Vよりは高い閾値電圧(例えば2.5V)未満であれば、トランジスタT3のゲートにバッテリ電圧VBを供給して該トランジスタT3をオフさせ、ダイオード43,44のカソードの電圧が上記閾値電圧以上であれば、トランジスタT3のゲートをバッテリ電圧VBよりも低い電圧にして該トランジスタT3をオンさせる。このため、トランジスタT3は、マイコン35から駆動信号S3がハイで出力されるか、あるいは、ECU12からECU11へユーザ始動指令信号が出力されると、オンすることとなる。
そして更に、ECU11は、遅延回路47が正常に機能しているか否かを確認するための回路として、端子Jiの電圧(延いては、ユーザ始動指令信号の有無)をモニタするためのモニタ回路M1と、端子J2の電圧(延いては、トランジスタT2のオン/オフ状態)をモニタするためのモニタ回路M2と、遅延回路47にダミーのユーザ始動指令信号(以下、ダミー信号という)を与えるためのトランジスタ(以下、ダミー信号出力用トランジスタともいう)T4とを備えている。
モニタ回路M1は、端子Jiに非反転入力端子(+端子)が接続された比較器51と、バッテリ電圧VBを分圧し、その分圧した電圧を比較器51の反転入力端子(−端子)に判定基準電圧Vth1として入力する2つの抵抗52,53と、当該ECU11の内部で生成される一定電圧VD(本実施形態では5V)のラインと比較器51の出力端子との間に接続されたプルアップ用の抵抗54とからなる。
また、モニタ回路M2は、バッテリ電圧VBのラインと端子J2と間に接続されたプルアップ用の抵抗55と、端子J2に非反転入力端子(+端子)が接続された比較器56と、バッテリ電圧VBを分圧し、その分圧した電圧を比較器56の反転入力端子(−端子)に判定基準電圧Vth2として入力する2つの抵抗57,58と、上記一定電圧VDのラインと比較器56の出力端子との間に接続されたプルアップ用の抵抗59とからなる。
そして、モニタ回路M1における抵抗52,53の抵抗値の比率と、モニタ回路M2における抵抗57,58の抵抗値の比率は、例えば、比較器51,56の反転入力端子に入力される判定基準電圧Vth1,Vth2がバッテリ電圧VBの半分の電圧(VB/2)となるように、「1:1」に設定されている。
このため、ECU12からユーザ始動指令信号が出力されて、端子Jiの電圧が0Vから「VB/2」よりも高い電圧(トランジスタT0のオン抵抗を無視すればバッテリ電圧VB)に変化すると、モニタ回路M1の出力である比較器51の出力CM1が、ローからハイに変化することとなる。また、トランジスタT2がオフからオンに転じて、端子J2の電圧がバッテリ電圧VBから「VB/2」よりも低い電圧(トランジスタT2のオン抵抗を無視すれば0V)に変化すると、モニタ回路M2の出力である比較器56の出力CM2が、ハイからローに変化することとなる。そして、各比較器51,56の出力CM1,CM2がマイコン35に入力される。尚、比較器51,56の内部の出力回路は電流引込型(オープンコレクタまたはオープンドレイン)であるため、その比較器51,56がハイ(=5V)の信号を出力できるようにするために、プルアップ用の抵抗54,59が設けられている。
また、ECU11において、トランジスタT4の2つの出力端子のうちの一方は、当該ECU11におけるバッテリ電圧VBのラインに接続されており、他方の出力端子は、ダイオード46のカソードであって、遅延回路47におけるユーザ始動指令信号の入力ラインに接続されている。尚、本実施形態において、トランジスタT4は、Pチャネル型のMOSFETである。
このため、トランジスタT4がオンすれば、そのトランジスタT4から遅延回路47へ、ダミー信号としてのバッテリ電圧VBが出力されることとなるが、ダイオード44,45のアノードへは、ダイオード46があるため、ダミー信号は伝達しない。そして、トランジスタT4は、マイコン35からの駆動信号により、図示しない駆動回路を介してオン/オフされる。
尚、本実施形態の車両では、前述のスタートストップスイッチの操作によって、イグニッションオンの状態(即ち、車両におけるイグニッション系電源ラインにバッテリ電圧VBが供給される状態)とイグニッションオフの状態(イグニッション系電源ラインにバッテリ電圧VBが供給されない状態)とに切り替わる。そして、ECU12は、イグニッション系電源ラインからのバッテリ電圧VB(いわゆるイグニッション系のバッテリ電圧VB)を受けて動作する。このため、ECU12は、車両がイグニッションオンの状態のときに動作する。
また、本実施形態の車両では、イグニッションオンの状態になると、図示しない給電用のメインリレーがオンして、そのメインリレーの出力ラインがバッテリ16のプラス端子と接続されるようになっている。そして、メインリレーは、車両がイグニッションオフの状態になった後もオンし続け、ECU11や他の特定のECUにおいて全ての処理が終了すると、そのことを検知した電源制御用のECUがメインリレーをオフさせるようになっており、ECU11は、そのメインリレーの出力ラインからのバッテリ電圧VB(いわゆるメインリレー系のバッテリ電圧VB)を受けて動作する。このため、ECU11は、運転者がスタートストップスイッチを操作してイグニッションオンの状態になると動作を開始し、イグニッションオフの状態になった後(延いては、エンジン7が停止した後)も、必要な処理を終了するまでは動作可能である。
次に、遅延回路47の構成について説明する。
図2に示すように、遅延回路47は、当該遅延回路47への入力電圧(即ち、ダイオード46からのユーザ始動指令信号、あるいは、トランジスタT4からのダミー信号)が一端に与えられる抵抗61、及び該抵抗61の他端とグランドラインとの間に接続されたコンデンサ62からなる積分回路と、コンデンサ62のグランドライン側とは反対側に非反転入力端子が接続された比較器63と、バッテリ電圧VBを分圧し、その分圧した電圧を比較器63の反転入力端子(−端子)に判定基準電圧Vth3として入力する2つの抵抗64,65と、バッテリ電圧VBのラインと比較器63の出力端子との間に接続されたプルアップ用の抵抗66とを備えている。そして、抵抗64,65の抵抗値の比率は、例えば、上記判定基準電圧Vth3がバッテリ電圧VBの3/4の電圧(VB・3/4)となるように、「1:3」の比率に設定されている。尚、プルアップ用の抵抗66は、比較器63がハイ(=VB)の信号を出力できるようにするために設けられている。
更に、遅延回路47は、抵抗61の上記一端(コンデンサ62側とは反対側)とグランドラインとの間に接続された抵抗67と、その抵抗67と抵抗61との接続点にベースが接続されたPNPトランジスタ68とを備えている。そして、PNPトランジスタ68のエミッタは、コンデンサ62のグランドライン側とは反対側に接続され、該PNPトランジスタ68のコレクタは、グランドラインに接続されている。
このような遅延回路47では、ECU12のトランジスタT0がオンして該ECU12からユーザ始動指令信号が出力されるか、あるいは、トランジスタT4からダミー信号が出力されると、当該遅延回路47への入力信号が0Vからバッテリ電圧VBに変化する。尚、ここでは、トランジスタT0やトランジスタT4での電圧降下は無視している。また、ECU12からユーザ始動指令信号が出力された場合、当該遅延回路47への入力信号は、厳密には、バッテリ電圧VBよりもダイオード46の順方向電圧(約0.7V)だけ低い電圧になるが、ここでは、そのダイオード46の順方向電圧も無視して、入力信号がバッテリ電圧VBになるとして説明する。
そして、当該遅延回路47への入力信号は、抵抗61及びコンデンサ62からなる積分回路により積分される。また、入力信号がバッテリ電圧VBになることで、PNPトランジスタ68はオフする。
そして、入力信号の積分によってコンデンサ62の電圧(詳しくは、コンデンサ62のグランドライン側とは反対側の電圧であり、比較器63の非反転入力端子の電圧)Vcは、0Vから入力信号と同じ電圧へ向けて徐々に上昇することとなり、その電圧Vcが判定基準電圧Vth3(=VB・3/4)に達した時点で、当該遅延回路47の出力に該当する比較器63の出力が、0Vからバッテリ電圧VBに変化する。
よって、入力信号が0Vからバッテリ電圧VBに変化してから、比較器63の出力が0Vからバッテリ電圧VBに変化するまでの時間が、当該遅延回路47による遅延時間Tdとなる。そして、本実施形態では、その遅延時間Tdが、例えば50ms〜100msの範囲となるように、コンデンサ62の静電容量及び抵抗61,64,65の抵抗値が設定されている。
また、遅延回路47においては、入力信号がバッテリ電圧VBから0Vに戻ると、PNPトランジスタ68がオンしてコンデンサ62を放電させるため、そのコンデンサ62の電圧Vcは即座に0V(<Vth3)に戻る。このため、入力信号がバッテリ電圧VBから0Vに戻ると、比較器63の出力(当該遅延回路47の出力)も即座に0Vに戻ることとなる。
次に、ECU12のマイコン15が行う処理の内容と、ECU11のマイコン35が行う処理の内容とについて、図3を用い説明する。尚、図3は、エンジンの状態を時系列で表したものである。
まず、車両の運転者の始動用操作に応じてエンジン7を始動させるユーザ始動時の処理内容について説明する。
車両がイグニッションオフの状態で、運転者がスタートストップスイッチを押すと、車両はイグニッションオンの状態となり、ECU12のマイコン15及びECU11のマイコン35が起動する。
そして、前述したように、ECU12のマイコン15は、運転者がユーザ始動の許可条件を成立させつつ始動用操作を行ったことを検出すると、トランジスタT0をオンして、当該ECU12の端子JoからECU11へユーザ始動指令信号を出力させる。
すると、ECU11では、まず、トランジスタT3とトランジスタT1がオンする。
そして、トランジスタT3がオンすることで、リレー31,32のコイル31a,32aの上流側にバッテリ電圧VBが供給され、更に、トランジスタT1がオンすることで、リレー31のコイル31aの下流側がグランドラインに接続される(接地される)。よって、コイル31aに電流が流れて、リレー31がオンし、ピニオン制御用ソレノイド23が動作して、スタータ9のピニオンギヤ21が、初期位置からエンジン7のリングギヤ25に噛み合う噛み合い位置へと移動する。
また、ECU11では、ECU12からユーザ始動指令信号が出力された時点から、遅延回路47による遅延時間Tdが経過すると、その遅延回路47からユーザ始動指令信号が出力されて、トランジスタT2がオンする。
すると、リレー32のコイル32aの下流側がグランドラインに接続されて、そのコイル32aに電流が流れ、リレー32がオンして、電磁スイッチ19がオンする。そして、モータ17が通電されて動作を開始し、そのモータ17の回転力によりピニオンギヤ21がリングギヤ25を回転させる(即ち、エンジン7をクランキングさせる)こととなる。
そして、エンジンがクランキングされると、エンジンを制御する他のECUにより、エンジンに対する燃料噴射と点火とが行われる。尚、エンジンがディーゼルエンジンであれば、点火は行われず、燃料噴射だけが行われる。また、こうしたエンジンの制御もECU11,12の何れかが行うシステム構成であっても良い。
その後、ECU12のマイコン15は、エンジン7が完爆状態になったと判定すると、トランジスタT0をオフして、ECU12へのユーザ始動指令信号の出力を停止する。
すると、ECU12では、トランジスタT1〜T3が全てオフする。その結果、リレー31,32がオフして、モータ17への通電が停止すると共に、ピニオンギヤ21がリングギヤ25に噛み合わない初期位置に戻る。尚、マイコン15は、前述の回転信号からエンジン回転数を算出し、そのエンジン回転数に基づいて、エンジンが完爆状態になったか否かを判定する。
以上が、図3における(1)のユーザ始動時において行われる処理の内容である。尚、ユーザ始動時は、運転者がエンジン7を停止させてから最初にエンジン7を始動させる時でもあるので、初回始動時とも言える。そして、エンジン7が運転状態になっている場合が、図3における(2)のエンジン運転中である。
つまり、エンジン7のユーザ始動(運転者の始動用操作に基づくエンジン7の始動)は、スタータ9を機能させるためにECU11に設けられたトランジスタT1〜T3が、ECU12からのユーザ始動指令信号で駆動されることによって実施される。
また、ユーザ始動時において、トランジスタT2をトランジスタT1と同じタイミングでオンさせると、ピニオンギヤ21の噛み合い位置への移動開始と、モータ17の動作開始とが同時になり、ピニオンギヤ21がリングギヤ25に当接する時の該ピニオンギヤ21の回転数が高くなり過ぎて、ピニオンギヤ21とリングギヤ25との噛み合い不良が生じ、延いては、両者の磨耗が起きてしまう。そこで、トランジスタT2は、トランジスタT1よりも遅延回路47による遅延時間Tdだけ遅れてオンさせることにより、ピニオンギヤ21の噛み合い位置への移動が開始されてから、遅延時間Tdだけ遅れて、モータ17の動作が開始されるようにしている。
但し、遅延時間Tdを長くし過ぎると、エンジン7のクランキングの開始が遅れて始動性が悪化することとなり、また、ピニオンギヤ21がリングギヤ25に当たる時に発生する打撃音が目立つようになって車両の商品性を低下させてしまうようになる。
このため、遅延回路47による遅延時間Tdは、エンジン7の始動性及び車両の商品性に問題が生じない範囲内で、できるだけ長い時間に設定されており、本実施形態では、前述したように、遅延時間Tdが50ms〜100msの範囲となるように、遅延回路47の各部品の定数を選定している。
次に、エンジン運転中において、ECU11のマイコン35は、所定の自動停止条件が成立したと判定したならば、エンジン7への燃料噴射を停止したり、エンジン7への吸気供給経路を遮断したりするための処理を行うことにより、エンジン7を自動的に停止させる。そして、このようにエンジン7が自動停止された状態が、図3における(3)のアイドルストップ中である。
尚、自動停止条件としては、例えば、下記の全条件が満たされていることである。
バッテリ電圧VBが所定値以上である。車速が所定値以下である。ブレーキ負圧の絶対値が所定値以上である。ブレーキペダルが踏まれている。シフト位置がニュートラルであるか、あるいはシフト位置がニュートラル以外でクラッチペダルが踏まれている。アクセルペダルが踏まれていない。前回にエンジン7を自動停止して再始動させてから一定時間以上経過している。
その後、ECU11のマイコン35は、アイドルストップ中において、所定の自動始動条件が成立したと判定したならば、エンジン7を再始動させるためにスタータ9を機能させる処理である再始動用スタータ制御処理を行う。そして、これが図3における(4)の再始動の状態である。
尚、自動始動条件としては、例えば、下記の何れかの条件が考えられる。
シフト位置がニュートラル以外且つクラッチペダルが踏まれている状態でアイドルストップした場合、その状態でブレーキペダルが放された。ブレーキペダルは踏まれたままだが、シフト位置がニュートラル以外でクラッチペダルのリリース(即ち、クラッチペダルの踏み込みを緩めてクラッチを接続しようとする動作)が開始された。ブレーキペダルが踏まれたままだが、シフト位置がニュートラルからニュートラル以外に操作された(その時点でクラッチペダルは踏まれている)。
ここで、再始動用スタータ制御処理について具体的に説明すると、マイコン35は、初めは、トランジスタT1〜T3に対する駆動信号S1〜S3を、全て非アクティブレベルのローで出力しており、エンジン7を再始動させる際には、まず、駆動信号S1〜S3のうち、駆動信号S3と駆動信号S1との2つを、アクティブレベルのハイにする。
すると、トランジスタT3とトランジスタT1がオンして、リレー31がオンし、その結果、ピニオン制御用ソレノイド23が動作して、スタータ9のピニオンギヤ21が、初期位置からリングギヤ25に噛み合う噛み合い位置へと移動する。
そして、マイコン35は、駆動信号S1,S3をハイにした時点からの経過時間を、タイマ処理等で計測しており、その経過時間が遅延回路47による遅延時間Tdと同等の遅延時間に達すると、その時点で駆動信号S2もハイにする。
すると、トランジスタT2がオンして、リレー32がオンし、その結果、電磁スイッチ19がオンして、モータ17が動作を開始し、エンジン7のクランキングが開始されることとなる。そして、エンジン7がクランキングされると、前述したように、エンジンを制御する他のECUにより、エンジンに対する燃料噴射と点火とが行われる。
その後、マイコン35は、エンジン7が完爆状態になったと判定すると、駆動信号S1〜S3を全てローに戻す。尚、マイコン35は、前述の回転信号からエンジン回転数を算出し、そのエンジン回転数に基づいて、エンジンが完爆状態になったか否かを判定する。また、マイコン35は、駆動信号S2をハイにしてから所定の上限時間が経過してもエンジン7が完爆状態にならない場合には、エンジン7の始動ができないと判断して、その場合にも駆動信号S1〜S3を全てローに戻す。
すると、ECU11において、トランジスタT1〜T3が全てオフし、その結果、リレー31,32がオフして、モータ17への通電が停止すると共に、ピニオンギヤ21が初期位置に戻る。
以上が、再始動用スタータ制御処理の内容である。
また、図3における右端の「停止」とは、運転者がエンジン7を停止させるための停止用操作(エンジン停止用操作)を行ったことでエンジン7が停止したことを示しており、その場合、車両はイグニッションオフの状態になる。尚、本実施形態において、エンジン停止用操作は、例えば、スタートストップスイッチを一定時間以上押し続ける操作であり、車両をイグニッションオフの状態にするイグニッションオフ用操作でもある。
ここで、本実施形態において、ECU11のマイコン35は、エンジン7のユーザ始動時と、ユーザ始動時以外の所定タイミングとの、各々において、遅延回路47による遅延機能の異常であって、遅延時間Tdが正常値ではなくなっている異常(以下単に、遅延機能異常ともいう)を検出するための処理を行っている。そこで次に、その処理について説明する。
最初に、ユーザ始動時において遅延機能異常を検出するための、ユーザ始動時異常検出処理について、図4を用い説明する。尚、図4のユーザ始動時異常検出処理は、マイコン35が起動すると開始されるが、マイコン35は、このユーザ始動時異常検出処理だけを実行するのではなく、他の処理もマルチタスクの方式により擬似的に並行して実行する。
図4に示すように、マイコン35は、ユーザ始動時異常検出処理の実行を開始すると、まずS110にて、ECU12から当該ECU11へユーザ始動指令信号が出力されたか否かであって、詳しくは、ユーザ始動指令信号がロー(0V)からハイ(バッテリ電圧VB)に変化したか否かを判定する。尚、ユーザ始動指令信号に関して、ハイのレベルは、バッテリ電圧VBである。そして、ユーザ始動指令信号がローからハイに変化したか否かは、比較器51の出力CM1がローからハイに変化したか否かによって判定する。
そして、ユーザ始動指令信号がローからハイに変化していないと判定した場合には(S110:NO)、再びS110の判定を行う。
また、ユーザ始動指令信号がローからハイに変化したと判定した場合には(S110:YES)、S120に進み、ユーザ始動指令信号がハイに変化したと判定した時点から比較器56の出力CM2がハイからローに変化するまでの時間(即ち、トランジスタT2がオンするまでの時間)を、遅延時間tとして測定する測定処理を開始する。
ここで、このS120の測定処理で測定される遅延時間tは、ECU12からユーザ始動指令信号が出力されてトランジスタT1がオンすると共に該ユーザ始動指令信号が遅延回路47に与えられてから、トランジスタT2がオンするまでの遅れ時間であり、遅延回路47による実際の遅れ時間(実遅延時間)に該当する。
そして、比較器56の出力CM2がハイからローに変化して、遅延時間tの測定が完了すると、S130に進む。
S130では、測定した遅延時間tが、遅延時間Tdの正常範囲(50ms〜100ms)の最小値である最小許容値Tmin(50ms)よりも小さいか否かを判定し、遅延時間tが最小許容値Tminよりも小さい(t<Tmin)と判定した場合には、遅延機能異常のうち、遅延回路47による遅延時間Tdが最小許容値Tminより小さくなっている異常(以下、遅延過小異常という)が生じていると判断して、S140に進む。
S140では、遅延過小異常が生じていることを示すフラグFsを“1”にし、更に、そのフラグFsを“1”にしたタイミングがユーザ始動時であることを示す異常検出タイミング情報も記憶する。そして、その後、当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
また、上記S130にて、遅延時間tが最小許容値Tminよりも小さくないと判定した場合には、S150に移行する。
S150では、遅延時間tが、遅延時間Tdの正常範囲の最大値である最大許容値Tmax(100ms)よりも大きいか否かを判定し、遅延時間tが最大許容値Tmaxよりも大きい(t>Tmax)と判定した場合には、遅延機能異常のうち、遅延回路47による遅延時間Tdが最大許容値Tmaxより大きくなっている異常(以下、遅延過大異常という)が生じていると判断して、S160に進む。
S160では、遅延過大異常が生じていることを示すフラグFlを“1”にし、更に、そのフラグFlを“1”にしたタイミングがユーザ始動時であることを示す異常検出タイミング情報も記憶する。そして、その後、当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
一方、上記S150にて、遅延時間tが最大許容値Tmaxよりも大きくないと判定した場合には、異常無しと判断して、そのまま当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
つまり、ユーザ始動時異常検出処理では、ECU12からのユーザ始動指令信号が遅延回路47に与えられてから、トランジスタT2がオンするまでの遅延時間tを、遅延回路47による実遅延時間として測定し、その測定した遅延時間tが、最小許容値Tminよりも小さければ、フラグFsを“1”にし(S140)、また、測定した遅延時間tが、最大許容値Tmaxよりも大きければ、フラグFlを“1”にしている(S160)。尚、フラグFs,Flの初期値は“0”である。
次に、ユーザ始動時以外の所定タイミングにおいて遅延機能異常を検出するための、非ユーザ始動時異常検出処理について、図5を用い説明する。尚、図5の非ユーザ始動時異常検出処理も、マイコン35が起動すると開始されるが、マイコン35は、この非ユーザ始動時異常検出処理だけを実行するのではなく、他の処理もマルチタスクの方式により擬似的に並行して実行する。
図5に示すように、マイコン35は、非ユーザ始動時異常検出処理の実行を開始すると、まずS210にて、ECU12から当該ECU11へのユーザ始動指令信号がロー(0V)であるか否かを判定する。尚、ユーザ始動指令信号がローか否かは、比較器51の出力CM1がローか否かによって判定する。
そして、ユーザ始動指令信号がローではないと判定した場合には(S210:NO)、再びS210の判定を行う。
また、ユーザ始動指令信号がローであると判定した場合には(S210:YES)、S220に進み、当該マイコン35がトランジスタT3をオフさせているか否か(即ち、駆動信号S3の出力レベルをローにしているか否か)を判定する。
そして、トランジスタT3をオフさせていない(オンさせている)と判定した場合には(S220:NO)、再びS210の判定を行う。
また、トランジスタT3をオフさせていると判定した場合には(S220:YES)、S230に進む。
このため、S230へは、エンジン7の始動中ではない場合(ユーザ始動時でもなく、アイドルストップからの再始動時でもないエンジン非始動時)であり、トランジスタT3からコイル31a,32aへの電源供給を遮断してリレー31,32をオン不能にしている場合に進むこととなる。
そして、S230では、現在が検査実施タイミングであるか否かを判定する。
検査実施タイミングとは、遅延機能異常を検出するためのS240以降の処理(即ち、遅延機能の診断処理)を行うタイミングであり、下記[1a],[1b],[1c],[2a],[2b],[3],[4]の各タイミングである。但し、下記[1a],[1b],[1c]のタイミングについては、何れもエンジン運転中のタイミングであるため、それらのうちの何れか1つまたは2つでも良い。同様に、[2a],[2b]のタイミングについては、何れもアイドルストップ中のタイミングであるため、それらのうちの何れか1つでも良い。
[1a]エンジン7の運転中であって、特に、運転者の始動用操作によってエンジン7が始動した直後。つまり、ユーザ始動の直後。
尚、マイコン35は、トランジスタT3に対する駆動信号S3をローにしているのに、エンジン7が停止状態から完爆状態に変化したと判定したなら、この[1a]のタイミングであると判定することができる。
[1b]エンジン7の運転中において、自動停止条件が成立したと判定し、エンジン7を自動的に停止させる処理を行う前のタイミング。つまり、アイドルストップを実施する直前。
[1c]エンジン7の運転中において、予め定められた一定時間毎のタイミング。
[2a]アイドルストップを実施した直後。
[2b]アイドルストップ中において、予め定められた一定時間毎のタイミング。
[3]エンジン7のユーザ始動前。
具体的には、車両がイグニッションオンの状態になって当該マイコン35が起動してから、未だECU12からのユーザ始動指令信号がハイになっていない期間において、処理の実行対象ステップが、最初に当該S230になったとき。
尚、ユーザ始動指令信号がハイになったか否かは、比較器51の出力CM1によって判断することができる。
[4]エンジン7のユーザ停止後(即ち、運転者のイグニッションオフ用操作によってイグニッションオフの状態になった後)。
具体的には、イグニッションオンの状態からイグニッションオフの状態に変化してから、前述のメインリレーがオフするまでの期間において、処理の実行対象ステップが、最初に当該S230になったとき。
尚、マイコン35には、イグニッションオンの状態か否かを示す状態信号が入力されており、マイコン35は、その状態信号により、現在がイグニッションオンの状態か否かを判断することができる。
そして、このS230にて、検査実施タイミングではないと判定した場合には、再びS210の判定を行うが、検査実施タイミングであると判定した場合には(S230:YES)、S240に進む。
S240では、ダミー信号出力用トランジスタT4をオンする。
次に、S250に進み、トランジスタT4をオンした時点から比較器56の出力CM2がハイからローに変化するまでの時間(即ち、トランジスタT2がオンするまでの時間)を、遅延時間tとして測定する測定処理を開始する。
尚、このS250の測定処理が行われる場合、トランジスタT3はオフされているが、端子J2は抵抗55によってバッテリ電圧VBにプルアップされているため、トランジスタT2がオフからオンに転じれば、比較器56の出力CM2はハイからローに変化することとなる。
また、このS250の測定処理で測定される遅延時間tは、トランジスタT4から遅延回路47にダミー信号を与えられてから、トランジスタT2がオンするまでの遅れ時間であり、ユーザ始動時の遅延回路47による実際の遅れ時間と同じ時間であると考えられる。
そして、比較器56の出力CM2がハイからローに変化して、遅延時間tの測定が完了すると、S260に進んで、トランジスタT4をオフし、その後、S270に進む。
S270では、測定した遅延時間tが、遅延時間Tdの最小許容値Tmin(50ms)よりも小さいか否かを判定し、遅延時間tが最小許容値Tminよりも小さい(t<Tmin)と判定した場合には、遅延過小異常が生じていると判断して、S280に進む。
S280では、前述のフラグFsを“1”にし、更に、そのフラグFsを“1”にした今回の検査実施タイミングが、上記[1a],[1b],[1c],[2a],[2b],[3],[4]のうちの何れであるかを示す異常検出タイミング情報も記憶する。そして、その後、当該非ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
また、上記S270にて、遅延時間tが最小許容値Tminよりも小さくないと判定した場合には、S290に移行する。
S290では、遅延時間tが、遅延時間Tdの最大許容値Tmax(100ms)よりも大きいか否かを判定し、遅延時間tが最大許容値Tmaxよりも大きい(t>Tmax)と判定した場合には、遅延過大異常が生じていると判断して、S300に進む。
S300では、前述のフラグFlを“1”にし、更に、そのフラグFlを“1”にした今回の検査実施タイミングが、上記[1a],[1b],[1c],[2a],[2b],[3],[4]のうちの何れであるかを示す異常検出タイミング情報も記憶する。そして、その後、当該非ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
一方、上記S290にて、遅延時間tが最大許容値Tmaxよりも大きくないと判定した場合には、異常無しと判断して、そのまま当該非ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
以上のように非ユーザ始動時異常検出処理では、トランジスタT3をオフしているエンジン非始動時であって、トランジスタT1,T2がオンしてもリレー31,32はオン不能で、モータ17もピニオン制御用ソレノイド23も動作しない場合において、トランジスタT4から遅延回路47にダミー信号を与え(S240)、そのダミー信号を与えた時点からトランジスタT2がオンするまでの遅延時間tを、遅延回路47による実遅延時間として測定している。そして、図4の始動時異常検出処理と同様に、測定した遅延時間tが、最小許容値Tminよりも小さければ、フラグFsを“1”にし(S280)、測定した遅延時間tが、最大許容値Tmaxよりも大きければ、フラグFlを“1”にしている(S300)。
次に、ECU11のマイコン35が行うフェイルセーフ処理について、図6を用い説明する。尚、図6のフェイルセーフ処理は、図4と図5の各処理が終了した直後毎に実行される。また、図6及び他の図において、ユーザとは、車両の使用者であり、運転者のことである。
図6に示すように、マイコン35は、フェイルセーフ処理の実行を開始すると、まずS310にて、フラグFsとフラグFlの何れかが“1”であるか否かを判定し、フラグFs,Flが両方ともに“1”でなければ、遅延機能異常が検出されていないということであるため、そのまま当該フェイルセーフ処理を終了する。
また、上記S310にて、フラグFsとフラグFlの何れかが“1”であると判定した場合には、遅延機能異常が生じているということであるため、S320に進み、運転者に対して異常の発生を警告するための警告処理(ユーザへの警告)を行う。
具体的には、警告ランプを点灯させたり、ブザーを鳴らしたり、例えば「始動システムに異常があります。ディーラーで点検を受けてください。」といったメッセージを、表示装置に文章で表示したりスピーカから音声で出力したりする。
そして、次のS330にて、フラグFsが“1”であるか否かを判定し、フラグFsが“1”でなければ、そのまま当該フェイルセーフ処理を終了する。
このため、フラグFlが“1”である場合、即ち、遅延過大異常を検出した場合には、S320の警告処理を行うだけで、当該フェイルセーフ処理を終了することとなる。
なぜなら、遅延過大異常が生じた場合には、前述したように、エンジン7の始動性が悪化したり、ピニオンギヤ21がリングギヤ25に当たる時の打撃音が目立つようになったりするものの、遅延過小異常が生じた場合のように、ピニオンギヤ21とリングギヤ25との磨耗を引き起こすことは無いため、警告処理を行うだけにしている。
一方、上記S330にて、フラグFsが“1”であると判定した場合、即ち、遅延過小異常を検出した場合には、上記S320の警告処理だけではなく、S340に進んで、他のフェイルセーフ用の処理も行う。
まずS340では、フラグFsを“1”にしたときに記憶した異常検出タイミング情報から、遅延過小異常を検出したタイミングがユーザ始動時またはエンジン運転中であるか否かを判定する。そして、遅延過小異常を検出したタイミングがユーザ始動時またはエンジン運転中であると判定した場合には、S350に進む。
S350では、アイドルストップ(エンジン7の自動停止)を禁止する処理を行う。
具体的には、アイドルストップ禁止フラグを“1”にする処理を行う。つまり、マイコン35は、アイドルストップ禁止フラグが“1”になっている場合には、エンジン7の運転中に自動停止条件の成立を判定しないか、あるいは、自動停止条件が成立したと判定しても、エンジン7を停止させる処理を行わなくなる。
そして、続くS360にて、運転者に対してエンジン7を停止させないことを促す処理(エンジン非停止を促す処理)を行う。
具体的には、例えば「エンジンを停止した場合、始動できない可能性があります。」といったメッセージを、表示装置に文章で表示したりスピーカから音声で出力したりする。また例えば、スタートストップスイッチが通常よりも長い時間押され続けないとエンジン7を停止しないようにする、といった処理でも良い。
そして更に、次のS370にて、エンジン7のユーザ始動を禁止する処理を行う。つまり、運転者が始動用操作を行っても、ピニオン制御用ソレノイド23のコイル23aとモータ17への通電が行われない(即ち、ピニオン制御用ソレノイド23とモータ17が動作しない)ようにする。
具体的には、例えば、ECU11のマイコン35とECU12のマイコン15とが通信線によって通信可能に接続されているのであれば、ECU12のマイコン15へ、ユーザ始動指令信号の出力を禁止する指令を送信する。また例えば、ECU11において、端子Jiから抵抗37までの信号経路(図1参照)にスイッチ素子を設けておき、そのスイッチ素子をオフしたままにすることにより、ECU12からのユーザ始動指令信号がダイオード44〜46に入力されるのを阻止して、そのユーザ始動指令信号を無効化するように構成しても良い。
そして、上記S370の処理を行った後、当該フェイルセーフ処理を終了する。
また、上記S340にて、遅延過小異常を検出したタイミングがユーザ始動時でもエンジン運転中でもないと判定した場合には(S340:NO)、S380に移行する。
S380では、フラグFsを“1”にしたときに記憶した異常検出タイミング情報から、遅延過小異常を検出したタイミングがアイドルストップ中であるか否かを判定する。そして、遅延過小異常を検出したタイミングがアイドルストップ中であると判定した場合には、S390に進む。
S390では、エンジン7を始動させる処理を行う。具体的には、エンジン7を始動させても問題がない状態であること(例えば、シフト位置がニュートラルであるかクラッチペダルが踏まれていること)を確認した上で、前述した再始動用スタータ制御処理を行うことにより、エンジン7の始動を試みる。
そして、次のS400にて、エンジン7を始動させることができたか否かを判定し、エンジン7を始動させることができた場合には、前述したS350〜S370の処理を行い、その後、当該フェイルセーフ処理を終了する。ここでは、一例として回転信号から算出されるエンジン回転数が所定値以上であることをもって、エンジン7が始動したと判定している。
また、上記S400にて、エンジン7を始動させることができなかったと判定した場合には、S410に進み、他の車両の運転者に対して注意を喚起するための注意喚起処理として、例えば、車両のハザードランプを点滅させる処理を行い、その後、当該フェイルセーフ処理を終了する。
一方、上記S380にて、遅延過小異常を検出したタイミングがアイドルストップ中ではないと判定した場合には、S420に移行する。
S420では、フラグFsを“1”にしたときに記憶した異常検出タイミング情報から、遅延過小異常を検出したタイミングがエンジン7のユーザ始動前またはユーザ停止後であるか否かを判定する。そして、遅延過小異常を検出したタイミングがユーザ始動前またはユーザ始動後であると判定した場合には、前述したS370の処理を行った後、当該フェイルセーフ処理を終了する。
また、上記S420にて、遅延過小異常を検出したタイミングがユーザ始動前でもユーザ停止後でもないと判定した場合には(S420:NO)、そのまま当該フェイルセーフ処理を終了する。尚、S420は、念のために設けているステップであり、そのS420に至った場合には常に“YES”と判定されると考えられる。逆に言えば、S420で“NO”と判定された場合には、遅延機能異常とは別の、何等かの異常が生じているということである。
以上のような図6のフェイルセーフ処理では、図4と図5の処理で検出した遅延機能異常の種別(遅延過小異常、遅延過大異常)と、異常検出タイミング(異常を検出したタイミング)とに応じて、異なるフェイルセーフ用の処理を実施するようになっている。そして、実施されるフェイルセーフ用の処理内容と、遅延機能異常の種別と、異常検出タイミングとの関係は、図7に示す通りである。
つまり、図6のフェイルセーフ処理では、フラグFsまたはフラグFlが“1”であれば(S310:YES)、遅延機能異常が検出されたということであるから、その異常を検出したタイミングが、エンジン7のユーザ始動前、ユーザ始動時、運転中、アイドルストップ中、及びユーザ停止後の、何れであっても(即ち、異常検出タイミングに拘わらず)、警告処理(ユーザへの警告)を行うようになっている(S320)。尚、エンジン7のユーザ停止後に遅延機能異常を検出した場合には、バッテリ16の電力消費を抑えるために、警告処理は、例えば、車両がキーロック状態になった時点や、その時点から一定時間が経過した時点等、適当な時点で終了すれば良い。
そして特に、フラグFsが“1”であれば(S330:YES)、遅延機能異常のうちでも、遅延過小異常が検出されたということであり、その場合には、異常検出タイミングによって異なる処理を実施している。
まず、エンジン7のユーザ始動時または運転中において遅延過小異常が検出された場合には(S340:YES)、ピニオンギヤ21とリングギヤ25が既に磨耗していて次回のエンジン始動ができない可能性があるため、アイドルストップ制御または運転者の停止用操作によってエンジン7が停止されると、その後のエンジン始動ができなくて車両が走行不能になってしまう可能性があることから、アイドルストップを禁止すると共に(S350)、運転者に対してエンジン非停止を促す処理を行う(S360)。更に、その後において、運転者が始動用操作を行ってスタータ9が機能させられると、ピニオンギヤ21とリングギヤ25の磨耗を進行させてしまう可能性があるため、以後のユーザ始動を禁止している(S370)。
また、エンジン7のアイドルストップ中において遅延過小異常が検出された場合には(S380:YES)、ピニオンギヤ21とリングギヤ25が既に磨耗していてエンジン7の再始動ができない可能性があるため、まずは、エンジン7の始動が可能か否かを確認するために、エンジン7を始動させる処理を行うようになっている(S390)。
そして、エンジン7の始動に成功した場合には(S400:YES)、エンジン7の運転中に遅延過小異常が検出された場合と状況は同じであるため、その場合にも、アイドルストップを禁止すると共に(S350)、運転者に対してエンジン非停止を促す処理を行い(S360)、更に、以後のユーザ始動を禁止している(S370)。
一方、エンジン7を始動させることができなかった場合には(S400:NO)、車両のハザードランプを点滅させることにより、自車両が走行不能になったことを他車両の運転者に気付かせるようにしている(S410)。
尚、S410の注意喚起処理としては、音を出す処理や、車外から見える表示装置に何等かのメッセージを表示させる処理でも良い。
一方また、エンジン7のユーザ始動前またはユーザ停止後(イグニッションオフ後)において遅延過小異常が検出された場合には(S420:YES)、以後のユーザ始動を禁止して(S370)、ピニオンギヤ21とリングギヤ25の磨耗が進行するのを防止している。
以上のようなスタータ制御システムによれば、運転者の始動用操作に応じてピニオン制御用ソレノイド23のコイル23aへの通電を開始してから所定の遅延時間Tdが経過したときにモータ17への通電を開始する、というユーザ始動時の時間差制御の異常を、遅延機能異常というかたちで検出することができる。そして、図7に示したように、その遅延機能異常が、遅延過大異常と遅延過小異常との何れであるかと、その異常をいつ検出したのかとに応じて、適切なフェイルセーフ用の処理を行うことにより、車両の信頼性や商品性を向上させることができる。
尚、本実施形態では、ピニオン制御用ソレノイド23が、ピニオン制御用アクチュエータに相当し、電磁スイッチ19が、モータ通電用スイッチ手段に相当し、トランジスタT1が、ピニオン駆動用トランジスタ及び第1の駆動手段に相当し、トランジスタT2が、モータ駆動用トランジスタに相当し、トランジスタT2と遅延回路47とが、第2の駆動手段に相当し、トランジスタT1がオンする動作が、第1の駆動動作に相当し、トランジスタT2がオンする動作が、第2の駆動動作に相当し、ECU11とECU12が、スタータ制御装置に相当し、トランジスタT3が、モータ通電阻止手段に相当している。また、ECU11のマイコン35は、スタータ制御装置の構成要素であると共に、アイドルストップ制御手段にも相当している。
そして、ECU11のマイコン35は、モニタ回路M1,M2及びトランジスタT4と共に、異常検出装置にも相当しており、マイコン35が実行する処理のうち、図4の処理が、始動時異常判定手段に相当し、図5におけるS240〜S300の処理が、非始動時異常判定手段に相当している。そして、図5のS250で測定される遅延時間tが、ダミー信号入力時遅延時間に相当している。また、図5におけるS210〜S230の処理が、エンジンの運転中と、アイドルストップ中と、運転者のエンジン停止用操作によってエンジンが停止した後と、車両がイグニッションオンの状態になってからユーザ始動指令信号が発生するまでの間との、各々において、非始動時異常判定手段を動作させる処理に相当している。
また、電磁スイッチ19は、モータ通電用スイッチにも相当し、トランジスタT1は、第1の駆動スイッチにも相当し、トランジスタT2は、第2の駆動スイッチにも相当し、ユーザ始動指令信号は、始動指令にも相当している。

[変形例]
上記実施形態において、ECU11のマイコン35は、アイドルストップからのエンジン再始動時において、前述の再始動用スタータ制御処理により、トランジスタT1の駆動信号S1をハイにしてから所定の遅延時間が経過した時点でトランジスタT2の駆動信号S2をハイにするため、そのエンジン再始動時の遅延時間(換言すれば、エンジン再始動時の時間差制御)も検査するように構成しても良い。
具体的に説明すると、例えば下記(a)〜(c)の構成及び処理を追加すれば良い。尚、下記の例は、ECU12のマイコン15が異常検出の処理を行う場合の例である。
(a)ECU12のマイコン15へ、ECU11のマイコン35が出力する駆動信号S1,S2が入力されるようにする。
(b)ECU12のマイコン15は、図4の処理の一部を下記のように変形した処理を行う。即ち、S110では、駆動信号S1がローからハイに変化したか否かを判定し、駆動信号S1がハイに変化したなら、S120にて、その駆動信号S1の変化時から駆動信号S2がハイに変化するまでの時間を、遅延時間tとして測定する。そして、遅延時間tの測定が終了したら、図4におけるS130〜S160と同じ処理を行う。
(c)ECU12のマイコン15は、上記(b)の処理でフラグFlを“1”にした場合には、図6のS320と同様の警告処理を行う。また、マイコン15は、上記(b)の処理でフラグFsを“1”にした場合には、図6のS320と同様の警告処理を行うと共に、図6のS350,S360,S370と同様の処理(アイドルストップを禁止する処理、運転者にエンジン非停止を促す処理、ユーザ始動を禁止する処理)を行う。
尚、この場合、アイドルストップを禁止する処理としては、例えば、ECU11のマイコン35へエンジン7を自動停止させないようにする指令を送信する、といった処理が考えられる。また、ユーザ始動を禁止する処理としては、例えば、当該マイコン15においてユーザ始動指令信号を出力する処理(トランジスタT0をオンする処理)が実行されないようにする禁止処理を行うことが考えられる。
一方、上記(a)において、ECU12へは、駆動信号S1,S2の代わりに、ECU11の端子J1,J2の電圧(トランジスタT1,T2のドレイン電圧)が入力されるようにしても良い。その場合、ECU12に、モニタ回路M1,M2と同様の2つのモニタ回路を設けて、その各モニタ回路に端子J1,J2の電圧がそれぞれ入力されるようにし、マイコン15は、端子J1の電圧が入力されたモニタ回路の出力がハイからローに変化してから、端子J2の電圧が入力されたモニタ回路の出力がハイからローに変化するまでの時間を、遅延時間tとして測定すれば良い。
また、上記変形例は、ユーザ始動時の時間差制御もECU11のマイコン35が行う構成に対しても適用することができる。
[第2実施形態]
次に図8は、第2実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。
第2実施形態のスタータ制御システムは、第1実施形態と比較すると、下記の点が異なっている。
まず、ECU11には、図1に示した構成要素のうち、トランジスタT3及びそれの駆動回路49と、トランジスタT4と、ダイオード43,44,46と、モニタ回路M1,M2と、端子J3とが無い。
このため、ECU11の内部において、遅延回路47には、ECU12からのユーザ始動指令信号が、ダイオード46を介すことなく入力される。
また、ECU11の外部において、リレー31,32のコイル31a,32aの上流側端部は、バッテリ電圧VBのラインに接続されている。よって、ECU11のマイコン35は、アイドルストップからのエンジン再始動時に行う再始動用スタータ制御処理では、駆動信号S3の出力を行わない。尚、本第2実施形態では、第1実施形態における駆動信号S3がハイのまま(トランジスタT3がオンのまま)になっているのと同等である。
一方、ECU12には、端子Jmがあり、その端子Jmには、ECU11の端子J2の電圧が入力されている。
そして、ECU12には、図1に示したモニタ回路M2と同様のモニタ回路M3が設けられている。
即ち、モニタ回路M3は、バッテリ電圧VBのラインと端子Jmと間に接続されたプルアップ用の抵抗70と、端子Jmに非反転入力端子が接続された比較器71と、バッテリ電圧VBを分圧し、その分圧した電圧を比較器71の反転入力端子に判定基準電圧Vth3として入力する2つの抵抗72,73と、当該ECU12の内部で生成される一定電圧VD(本実施形態では5V)のラインと比較器71の出力端子との間に接続されたプルアップ用の抵抗74とからなる。そして、抵抗72,73の抵抗値の比率は、例えば、判定基準電圧Vth3がバッテリ電圧VBの半分の電圧(VB/2)となるように、「1:1」に設定されている。
このため、ECU11のトランジスタT2がオフからオンに転じて、端子J2の電圧がバッテリ電圧VBから「VB/2」よりも低い電圧(トランジスタT2のオン抵抗を無視すれば0V)に変化すると、モニタ回路M3の出力である比較器71の出力CM3が、ハイからローに変化することとなる。そして、その出力CM3はマイコン15に入力される。
そして、ECU12のマイコン15は、ユーザ始動時において遅延機能異常を検出するために、前述した図4の処理の一部を下記のように変形したユーザ始動時異常検出処理を行う。尚、そのユーザ始動時異常検出処理は、マイコン15が起動すると開始されるが、マイコン15は、そのユーザ始動時異常検出処理だけを実行するのではなく、他の処理もマルチタスクの方式により擬似的に並行して実行する。
即ち、マイコン15は、S110では、ユーザ始動指令信号を出力したか否か(具体的には、自身がユーザ始動指令信号をローからハイに変化させたか否かであり、トランジスタT0をオンしたか否か)を判定し、ユーザ始動指令信号を出力したなら、S120にて、そのユーザ始動指令信号の出力時点から、比較器71の出力CM3がハイからローに変化するまでの時間(即ち、ECU11のトランジスタT2がオンするまでの時間)を、遅延時間tとして測定する。そして、遅延時間tの測定が終了したら、図4におけるS130〜S160と同じ処理を行う。
また、ECU12のマイコン15は、上記ユーザ始動時異常検出処理でフラグFlを“1”にした場合には、図6のS320と同様の警告処理を行う。また、マイコン15は、上記ユーザ始動時異常検出処理でフラグFsを“1”にした場合には、図6のS320と同様の警告処理を行うと共に、図6のS350,S360,S370と同様の処理(アイドルストップを禁止する処理、運転者にエンジン非停止を促す処理、ユーザ始動を禁止する処理)を行う。
尚、前述した変形例と同様に、アイドルストップを禁止する処理としては、例えば、ECU11のマイコン35へエンジン7を自動停止させないようにする指令を送信する、といった処理が考えられ、ユーザ始動を禁止する処理としては、例えば、当該マイコン15においてユーザ始動指令信号を出力する処理が実行されないようにする禁止処理を行うことが考えられる。一方、本第2実施形態において、ECU11のマイコン35は、図4〜図6の処理は行わない。
以上のような第2実施形態によれば、ECU11,12に動作用のバッテリ電圧VBが供給されてからECU11のマイコン35が起動するまでの時間が比較的長く、ユーザ始動時においてECU12からECU11へユーザ始動指令信号が出力されたときに、マイコン35が未だ起動していない可能性があるシステム構成の場合であっても、ECU12のマイコン15により、ユーザ始動時の遅延機能異常を検出することができ、更に異常の種類に応じたフェイルセーフ用の処理を行うことができる。
[第3実施形態]
次に図9は、第3実施形態のスタータ制御システムを表す構成図である。
第3実施形態のスタータ制御システムは、第2実施形態と比較すると、下記の点が異なっている。
まず、ECU12には、端子Jmとモニタ回路M3が無く、ECU12のマイコン15は、ユーザ始動時異常検出処理を行わない。尚、この点は第1実施形態と同じである。
一方、ECU11には、2つのフリップフロップ81,82と、端子J2の電圧を、フリップフロップ81,82の動作電圧をハイとし0Vをローとした二値信号に変換して、フリップフロップ81,82のデータ端子(D)に入力させる電圧レベル変換回路83と、ECU12からのユーザ始動指令信号が入力される2つの遅延回路84,85とが設けられている。
ここで、本実施形態において、フリップフロップ81,82は、バッテリ電圧VBから当該ECU11の内部で生成される一定電圧(本実施形態では5V)を受けて動作する。
このため、電圧レベル変換回路83は、端子J2の電圧を、5Vがハイで0Vがローの二値信号に変換して、フリップフロップ81,82のデータ端子(D)に入力させる。
例えば、電圧レベル変換回路83は、図8に示したモニタ回路M3と同様の回路であり、端子J2の電圧が、0Vとバッテリ電圧VBとの間の判定基準電圧よりも高ければ、フリップフロップ81,82のデータ端子(D)に、ハイの信号として、5Vの信号を出力し、端子J2の電圧が、上記判定基準電圧よりも低ければ、フリップフロップ81,82のデータ端子(D)に、ローの信号として、0Vの信号を出力する。
また、2つの遅延回路84,85は、図2に示した遅延回路47と同様のものであるが、その図2の回路構成と比較すると、抵抗66の接続される電圧が、バッテリ電圧VBではなく、5Vになっている。
このため、遅延回路84,85の各々は、ECU12からのユーザ始動指令信号(電圧値はバッテリ電圧VBと同じ)を、予め設定された遅延時間だけ遅延させると共に、5Vの信号にレベル変換して出力する。
そして、遅延回路84の出力は、フリップフロップ81のクロック端子(CK)に入力され、遅延回路85の出力は、フリップフロップ82のクロック端子(CK)に入力される。
更に、遅延回路84による遅延時間Td1は、遅延回路47による遅延時間Tdの最小許容値Tminよりも少し短い時間に設定されており、遅延回路85による遅延時間Td2は、遅延回路47による遅延時間Tdの最大許容値Tmaxよりも少し長い時間に設定されている。
このため、フリップフロップ81は、ECU12からユーザ始動指令信号が出力されてから、遅延回路84による遅延時間Td1(<Tmin)が経過した時の、トランジスタT2のオン/オフ状態(換言すればリレー32の駆動状態)をラッチすることとなる。
つまり、ユーザ始動指令信号が出力されてから遅延時間Td1が経過した時点で、トランジスタT2が未だオンしていなければ(尚、これが正常)、端子J2の電圧はバッテリ電圧VBであり、電圧レベル変換回路83の出力はハイであるため、フリップフロップ81は、そのハイをラッチして、該フリップフロップ81の出力Q1はハイになる。
逆に、ユーザ始動指令信号が出力されてから遅延時間Td1が経過した時点で、トランジスタT2が既にオンしていれば(尚、これは遅延過小異常)、端子J2の電圧は0Vであり、電圧レベル変換回路83の出力はローであるため、フリップフロップ81は、そのローをラッチして、該フリップフロップ81の出力Q1はローになる。
また、フリップフロップ82は、ECU12からユーザ始動指令信号が出力されてから、遅延回路85による遅延時間Td2(>Tmax)が経過した時の、トランジスタT2のオン/オフ状態をラッチすることとなる。
つまり、ユーザ始動指令信号が出力されてから遅延時間Td2が経過した時点で、トランジスタT2が既にオンしていれば(尚、これが正常)、端子J2の電圧は0Vであり、電圧レベル変換回路83の出力はローであるため、フリップフロップ82は、そのローをラッチして、該フリップフロップ82の出力Q2はローになる。
逆に、ユーザ始動指令信号が出力されてから遅延時間Td2が経過した時点で、トランジスタT2が未だオンしていなければ(尚、これは遅延過大異常)、端子J2の電圧はバッテリ電圧VBであり、電圧レベル変換回路83の出力はハイであるため、フリップフロップ82は、そのハイをラッチして、該フリップフロップ82の出力Q2はハイになる。
また、フリップフロップ81,82は、例えば車両がイグニッションオフの状態になるとリセットされるようになっている。
よって、車両がイグニッションオンの状態になってユーザ始動が実施された後に、フリップフロップ81の出力Q1がハイで、フリップフロップ82の出力Q2がローであれば、遅延回路47による遅延時間Tdは、Td1よりも大きく且つTd2よりは小さかったということであり、正常範囲であったと見なすことができる。
逆に、ユーザ始動が実施された後に、フリップフロップ81の出力Q1がローであれば、遅延過小異常が生じていると判断することができ、フリップフロップ82の出力Q2がハイであれば、遅延過大異常が生じていると判断することができる。
そこで、本第3実施形態において、ECU11のマイコン35は、図10のユーザ始動時異常検出処理を実行するようになっている。尚、図10のユーザ始動時異常検出処理も、マイコン35が起動すると開始されるが、マイコン35は、このユーザ始動時異常検出処理だけを実行するのではなく、他の処理もマルチタスクの方式により擬似的に並行して実行する。
図10に示すように、マイコン35は、ユーザ始動時異常検出処理の実行を開始すると、まずS510にて、ユーザ始動が実施されたか否かを判定する。
具体的に説明すると、マイコン35は、別の完爆判定処理により、回転信号に基づきエンジン7が停止状態から完爆状態(運転状態)になったと判定すると、エンジン完爆判定フラグを“0”から“1”に変化させるようになっている。そこで、S510では、モータ17を動作させるためのモータ制御信号に該当するトランジスタT2への駆動信号S2をローにしているのに、エンジン完爆判定フラグが“0”から“1”に変化したなら、ユーザ始動が実施されたと判定する。ECU12からのユーザ始動指令信号によってトランジスタT1,T2がオンしたことによりエンジン7が始動したと考えられるからである。
そして、このS510にて、ユーザ始動が実施されたと判定したならば、S520に進む。
S520では、フリップフロップ81,82の出力Q1,Q2を読み込んで、出力Q1,Q2の両方がローであるか否かを判定する。そして、出力Q1,Q2の両方がローであれば、遅延過小異常が生じていると判断して、S530に進む。尚、フリップフロップ81の出力Q1がローであれば、フリップフロップ82の出力Q2もローになっていると考えられるため、S520では、フリップフロップ81の出力Q1だけについて、ローであるか否かを判定しても良い。
そして、S530では、遅延過小異常が生じていることを示すフラグFsを“1”にし、その後、当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
また、上記S520で「NO」と否定判定した場合(即ち、出力Q1,Q2の少なくとも一方がローではなかった場合)には、S540に移行して、出力Q1,Q2の両方がハイであるか否かを判定する。そして、出力Q1,Q2の両方がハイであれば、遅延過大異常が生じていると判断して、S550に進む。尚、フリップフロップ82の出力Q2がハイであれば、フリップフロップ81の出力Q1もハイになっていると考えられるため、S540では、フリップフロップ82の出力Q2だけについて、ハイであるか否かを判定しても良い。
そして、S550では、遅延過大異常が生じていることを示すフラグFlを“1”にし、その後、当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
一方、上記S540で「NO」と否定判定した場合(即ち、出力Q1,Q2の少なくとも一方がハイではなかった場合)には、「Q1=ハイ、Q2=ロー」である考えられるため、異常無しと判断して、そのまま当該ユーザ始動時異常検出処理を終了する。
そして、ECU11のマイコン35は、図10のユーザ始動時異常検出処理でフラグFlを“1”にした場合には、図6のS320と同じ警告処理を行う。また、マイコン35は、図10のユーザ始動時異常検出処理でフラグFsを“1”にした場合には、図6のS320と同じ警告処理を行うと共に、図6のS350,S360,S370と同じ処理(アイドルストップを禁止する処理、運転者にエンジン非停止を促す処理、ユーザ始動を禁止する処理)を行う。つまり、本第3実施形態において、マイコン35は、図6の処理からS340,S380〜S420を削除したフェイルセーフ処理を行う。
以上のような第3実施形態によっても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
即ち、ECU11,12に動作用のバッテリ電圧VBが供給されてからECU11のマイコン35が起動するまでの時間が比較的長く、ユーザ始動時においてECU12からECU11へユーザ始動指令信号が出力されたときに、マイコン35が未だ起動していない可能性があるシステム構成の場合であっても、ECU11のマイコン35により、ユーザ始動時の遅延機能異常を検出することができ、更に異常の種類に応じたフェイルセーフ用の処理を行うことができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、ECU11とECU12は、2つのマイコン15,35を有する1つのユニットとして構成されていても良い。
また、端子J2の電圧(トランジスタT2のドレイン電圧)をモニタすることに代えて、リレー32の出力電圧(リレー32からコイル19aへ至る通電経路の電圧)をモニタすることにより、遅延機能異常を検出するように構成しても良い。
また、トランジスタT0〜T4としては、バイポーラトランジスタやIGBT等、FET以外のスイッチング素子を用いても良い。
7…エンジン、9…スタータ、11,12…ECU(電子制御装置)、15…マイコン
16…バッテリ、17…モータ、19…電磁スイッチ、19a…コイル
19b,19c…接点、21…ピニオンギヤ、23…ピニオン制御用ソレノイド
23a…コイル、25…リングギヤ、31…ピニオン駆動用リレー、31a…コイル
32…モータ駆動用リレー、32a…コイル、35…マイコン、37…抵抗
41〜46,48…ダイオード、47…遅延回路、49…駆動回路
M1,M2…モニタ回路、51,56…比較器、52〜55,57〜59…抵抗
62…コンデンサ、63…比較器、61,64〜67…抵抗
68…PNPトランジスタ、M3…モニタ回路、70,72〜74…抵抗
71…比較器、81,82…フリップフロップ、83…電圧レベル変換回路
84,85…遅延回路、J1〜J3,Jo,Ji,Jm…端子
T0〜T4…トランジスタ

Claims (23)

  1. 通電されることにより、エンジン始動用のスタータのピニオンギヤを、エンジンのリングギヤに噛み合わない位置である初期位置から、前記リングギヤに噛み合う位置である噛み合い位置へ動かすピニオン制御用アクチュエータと、
    前記ピニオンギヤを回転させる前記スタータのモータへの通電経路に設けられ、前記ピニオン制御用アクチュエータへの通電とは独立してオンするように駆動されると共に、オンすることにより、前記通電経路を連通して前記モータに通電するモータ通電用スイッチ手段と、を備えた車両に用いられ、
    前記車両の前記エンジンを始動させる始動時において、前記ピニオンギヤを前記初期位置から前記噛み合い位置へ移動させるために、前記ピニオン制御用アクチュエータに通電するための第1の駆動動作を行う第1の駆動手段と、
    前記始動時において、前記第1の駆動手段が前記第1の駆動動作を開始してから所定の遅延時間が経過すると、前記モータに通電して前記エンジンのクランキングを開始するために、前記モータ通電用スイッチ手段をオンさせるための第2の駆動動作を行う第2の駆動手段と、を有したスタータ制御装置の、異常を検出するための異常検出装置であって、
    前記始動時において、前記第1の駆動手段が前記第1の駆動動作を開始してから前記第2の駆動手段が前記第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間である実遅延時間が、前記遅延時間の正常値か否かを判定する始動時異常判定手段を備えていること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  2. 請求項1に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記始動時異常判定手段は、少なくとも、前記実遅延時間が、前記遅延時間の正常範囲の最小値である最小許容値よりも小さいか否かを判定すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  3. 請求項2に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記車両には、所定の自動停止条件が成立すると前記エンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられており、
    前記始動時異常判定手段により前記実遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンを停止させるのを禁止すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記始動時異常判定手段により前記実遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記車両の運転者に対して前記エンジンを停止させないことを促す処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  5. 請求項2ないし請求項4の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記始動時異常判定手段により前記実遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記車両の運転者が前記エンジンを始動させるための始動用操作を行っても、前記ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにすること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  6. 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段には、前記車両の運転者が前記エンジンを始動させるための始動用操作を行うことで発生するユーザ始動指令信号が与えられると共に、前記第1の駆動手段は、前記ユーザ始動指令信号が与えられると前記第1の駆動動作を開始し、前記第2の駆動手段は、前記ユーザ始動指令信号が与えられると、その時点から前記遅延時間が経過したときに、前記第2の駆動動作を開始するように構成されており、
    前記始動時異常判定手段は、
    前記第2の駆動手段に前記ユーザ始動指令信号が与えられてから前記第2の駆動手段が前記第2の駆動動作を開始するまでの時間を、前記実遅延時間として検出すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  7. 請求項6に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記スタータ制御装置は、前記エンジンを始動させる始動時ではない場合に、前記第2の駆動手段が前記第2の駆動動作を行っても、前記モータに通電されるのを阻止するモータ通電阻止手段を備えており、
    当該異常検出装置は、
    前記モータ通電阻止手段が前記モータへの通電を阻止している状態で、前記第2の駆動手段に前記ユーザ始動指令信号と同じダミー信号を与えて、該ダミー信号を与えてから前記第2の駆動手段が前記第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間であるダミー信号入力時遅延時間が、前記遅延時間の正常値か否かを判定する非始動時異常判定手段を、更に備えていること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  8. 請求項7に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記非始動時異常判定手段は、少なくとも、前記ダミー信号入力時遅延時間が、前記遅延時間の正常範囲の最小値である最小許容値よりも小さいか否かを判定すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  9. 請求項8に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記車両には、所定の自動停止条件が成立すると前記エンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられており、
    当該異常検出装置は、
    前記エンジンの運転中において、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンを停止させるのを禁止すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  10. 請求項8または請求項9に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンの運転中において、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記車両の運転者に対して前記エンジンを停止させないことを促す処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  11. 請求項8ないし請求項10の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンの運転中において、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記車両の運転者が前記始動用操作を行っても、前記ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにすること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  12. 請求項8ないし請求項11の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記車両には、所定の自動停止条件が成立すると前記エンジンを停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段が備えられており、
    当該異常検出装置は、
    前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンを停止させてから該エンジンを再始動させるまでのアイドルストップ中において、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記エンジンを始動させる処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  13. 請求項12に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンを始動させる処理によって前記エンジンを始動させることができた場合には、前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンを停止させるのを禁止すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  14. 請求項12または請求項13に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンを始動させる処理によって前記エンジンを始動させることができた場合には、前記車両の運転者に対して前記エンジンを停止させないことを促す処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  15. 請求項12ないし請求項14の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンを始動させる処理によって前記エンジンを始動させることができた場合には、前記車両の運転者が前記始動用操作を行っても、前記ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにすること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  16. 請求項12に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記エンジンを始動させる処理によって前記エンジンを始動させることができなかった場合には、他の車両を運転している他車両運転者に対して注意を喚起するための注意喚起処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  17. 請求項16に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記注意喚起処理として、前記車両のハザードランプを点滅させる処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  18. 請求項8ないし請求項17の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記車両の運転者のイグニッションオフ用操作によって前記車両がイグニッションオフの状態になった後に、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記運転者が前記始動用操作を行っても、前記ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにすること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  19. 請求項8ないし請求項18の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記車両がイグニッションオンの状態になってから前記ユーザ始動指令信号が発生するまでの間において、前記非始動時異常判定手段を動作させ、該非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が前記最小許容値よりも小さいと判定された場合には、前記車両の運転者が前記始動用操作を行っても、前記ピニオン制御用アクチュエータ及び前記モータへの通電が行われないようにすること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  20. 請求項7ないし請求項19の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記非始動時異常判定手段により前記ダミー信号入力時遅延時間が正常値ではないと判定された場合には、前記車両の運転者に対して異常の発生を警告する処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  21. 請求項1ないし請求項20の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記始動時異常判定手段により前記実遅延時間が正常値ではないと判定された場合には、前記車両の運転者に対して異常の発生を警告する処理を行うこと、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  22. 請求項1ないし請求項21の何れか1項に記載のスタータ制御装置の異常検出装置において、
    前記モータ通電用スイッチ手段は、コイルに通電されることでオンするリレーであり、
    前記車両には、
    前記ピニオン制御用アクチュエータへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通して前記ピニオン制御用アクチュエータに通電するピニオン駆動用リレーと、
    前記モータ通電用スイッチ手段のコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通して前記モータ通電用スイッチ手段をオンさせるモータ駆動用リレーと、が搭載されており、
    前記第1の駆動手段は、
    前記ピニオン駆動用リレーのコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通して前記ピニオン駆動用リレーをオンさせるピニオン駆動用トランジスタを有するものであり、
    前記第2の駆動手段は、
    前記モータ駆動用リレーのコイルへの通電経路に設けられ、オンすることで該通電経路を連通して前記モータ駆動用リレーをオンさせるモータ駆動用トランジスタを有するものであること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
  23. 通電されることにより、エンジン始動用のスタータのピニオンギヤを、エンジンのリングギヤに噛み合わない位置である初期位置から、前記リングギヤに噛み合う位置である噛み合い位置へ動かすピニオン制御用アクチュエータと、
    前記ピニオンギヤを回転させる前記スタータのモータへの通電経路に設けられ、前記ピニオン制御用アクチュエータへの通電とは独立してオンするように駆動されると共に、オンすることにより、前記通電経路を連通して前記モータに通電するモータ通電用スイッチと、を備えた車両に用いられ、
    前記エンジンの始動を指示する始動指令を受信すると、前記ピニオンギヤを前記初期位置から前記噛み合い位置へ移動させるために、前記ピニオン制御用アクチュエータに通電するための第1の駆動動作を行う第1の駆動スイッチと、
    前記始動指令を受信するとともに、前記始動指令を受信してから所定時間が経過すると第2駆動指令を出力する遅延回路と、
    前記遅延回路から前記第2駆動指令を受信すると、前記モータに通電して前記エンジンのクランキングを開始するために、前記モータ通電用スイッチをオンさせるための第2の駆動動作を行う第2の駆動スイッチと、を有したスタータ制御装置の、異常を検出するための異常検出装置であって、
    前記異常検出装置はマイクロコンピュータを備え、
    前記マイクロコンピュータは、
    前記始動指令を受信してから前記第2の駆動スイッチが前記第2の駆動動作を開始するまでの実際の遅れ時間である実遅延時間が、前記所定時間に対して所定値以上乖離している場合に前記遅延回路に異常が発生していると判定すること、
    を特徴とするスタータ制御装置の異常検出装置。
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