JP2012214734A - アクリルゴム系グラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリル酸エステル系単量体単位と多官能性単量体単位を含むゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体であって、該ゴム質重合体中の前記多官能性単量体単位の合計量が、アクリル酸エステル系単量体単位100質量部に対して0.3〜3質量部であり、かつ、前記多官能性単量体単位の総量100質量%中に2個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位30〜95質量%と3個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位5〜70質量%とを含むアクリルゴム系グラフト共重合体。このアクリルゴム系グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
また、本願明細書において「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の一方または双方をさす。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(アクリルゴム系グラフト共重合体(A))は、アクリル酸エステル系単量体単位と多官能性単量体単位を含むゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体であって、該ゴム質重合体中の前記多官能性単量体単位の合計量が、アクリル酸エステル系単量体単位100質量部に対して0.3〜3質量部であり、かつ、前記多官能性単量体単位の総量100質量%中に2個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位30〜95質量%と3個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位5〜70質量%とを含むことを特徴とする。
アニオン系乳化剤としては、カルボン酸塩(例えば、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、前記多官能性単量体の加水分解抑制といった点から、サルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が好ましく、これらの中でも特に重合安定性などの面から、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、酸基含有共重合体ラテックスの添加は、一括添加、または滴下により、断続的に添加する方法が好ましい。
このグラフト重合に用いるビニル系単量体は、不飽和ニトリル系単量体および芳香族ビニル系単量体、および必要に応じて他の単量体を含むことが好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体の割合は、単量体混合物(100質量%)中、20〜97質量%が好ましく、30〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル系単量体の割合が上記下限以上であれば、得られる成形性が良好となる。芳香族ビニル系単量体の割合が上記上限以下であれば、得られる成形品の耐衝撃性が良好となる。
グラフト共重合体ラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、グラフト共重合体を固化させる。次いで、固化したグラフト共重合体を、水または温水中に再分散させてスラリーとし、グラフト共重合体中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。次いで、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することによって、グラフト共重合体が粉体または粒子として回収される。
更にアクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶部の還元粘度は0.40〜1.00g/dL、特に0.50〜0.80g/dLであることが好ましい。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶部の還元粘度が上記下限以上であると衝撃強度がより高くなり、上記上限以下であると良好な外観および成形性を保つことができる。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶部の還元粘度は、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含むものであり、好ましくは、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)と、アクリル酸エステル系単量体単位を含むゴム質重合体(以下「ゴム質重合体(b)」と称す場合がある。)の存在下にビニル系単量体を重合してなり、体積平均粒子径が70〜200nmであるアクリルゴム系グラフト共重合体(B)(以下「本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(B)」と称す場合がある。)を含むことを特徴とする。
このビニル系単量体としては、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)に用いるビニル系単量体と同様のものを用いることができ、その好適なビニル系単量体の種類や使用割合についても同様である。
前述の如く、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)ラテックスとアクリルゴム系グラフト共重合体(B)ラテックス、必要により、他の重合体ラテックスを予め混合した後に前記回収操作を行っても良い。
更にアクリルゴム系グラフト共重合体(B)のアセトン可溶部の還元粘度は0.40〜1.00g/dL、特に0.50〜0.80g/dLであることが好ましい。アクリルゴム系グラフト共重合体(B)のアセトン可溶部の還元粘度が上記下限以上であると衝撃強度がより高くなり、上記上限以下であると良好な外観および成形性を保つことができる。アクリルゴム系グラフト共重合体(B)のアセトン可溶部の還元粘度は、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)およびアクリルゴム系グラフト共重合体(B)以外の他の熱可塑性樹脂(C)を含有していてもよい。この場合、熱可塑性樹脂(C)としては、スチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分として、上述のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含むことを必須とし、さらに好ましくはアクリルゴム系グラフト共重合体(B)を含み、必要により他の熱可塑性樹脂(C)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤、熱安定剤、光安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、加工助剤等が含まれてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)とアクリルゴム系グラフト共重合体(B)、必要に応じて他の熱可塑性樹脂(C)およびその他の成分とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等の混合装置で混合し、その混合装置により得た混合物を溶融混練することで製造される。その溶融混練の際には、単軸または二軸の押出機、バンバリーミキサー、加熱ニーダー、ロール等の混練機などが用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の熱可塑性樹脂成形品は、様々な用途に使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物による被覆層を形成する基材の構成材料としての他の樹脂としては、例えば、上述した他の熱可塑性樹脂(C)や、ABS樹脂やハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)等のゴム変性熱可塑性樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物をこれらの他の樹脂や金属よりなる基材上に被覆成形することにより、耐候性や良好な外観を有する意匠性を付与することができる。
ラテックスの固形分は、ラテックス1gを正確に秤量し、200℃で20分かけて揮発分を蒸発させた後の残渣物を計量し、下記の式より求めた。
固形分(%)=残渣物質量/ラテックス質量×100
重合転化率は、前記固形分を測定し、下記の式より求めた。
重合転化率(%)=
{S÷100×総仕込み質量−単量体・水以外の仕込質量}/単量体総質量×100
式中、Sは、上記固形分(%)を示し、総仕込み質量は、単量体、水等、反応器に仕込んだ物質の総質量を示す。
グラフト共重合体のグラフト率は、次の方法により算出した。
グラフト共重合体2.5gにアセトン80mLを加え65℃の湯浴で3時間還流し、アセトン可溶分の抽出を行った。残留したアセトン不溶物を遠心分離により分離し、乾燥した後重量を測定し、グラフト共重合体中のアセトン不溶物の質量割合を算出した。得られたグラフト共重合体中のアセトン不溶物の質量割合より次の式を用いて、グラフト率を算出した。
還元粘度は、0.2g/dLの共重合体のN,N−ジメチルホルムアミド溶液について、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。なお、グラフト共重合体の還元粘度は、グラフト率測定の際にアセトン抽出したアセトン可溶部を用いて測定した。
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について、ウベローデ粘度計を用いて、20℃における極限粘度[η]を測定し、以下の式より算出した。
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83
日機装社製のNanotrac UPA−EX150を用いて動的光散乱法より求めた。
熱可塑性樹脂組成物のメルトボリュームレートは、ISO 1133に準拠する方法により、バレル温度220℃、加重98Nの条件で測定した。メルトボリュームレートは、熱可塑性樹脂組成物の流動性の目安となる。
成形品のシャルピー衝撃強度は、ISO 179に準拠する方法により、23℃雰囲気下で12時間以上を放置したVノッチあり試験片について測定した。
成形品の曲げ弾性率は、ISO試験法178に準拠する方法により、測定温度23℃、試験片厚さ4mmで測定した。
成形品の荷重たわみ温度はISO試験法75に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で測定した。
成形品の表面の光沢度は、熱可塑性樹脂組成物を射出成形(射出速度:40g/sec.)により100mm×100mm×3mmの成形板とし、スガ試験器社製のデジタル変角光計UGV−5Dを用い、入射角60°、反射角60°での反射率から求めた。
ただし、実施例11〜28、比較例3〜5では、射出速度:10g/sec.および40g/sec.にて射出成形を行った100×100×2mmの平板試験片表面について、それぞれ上記と同様に光沢度を求めた。
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形(射出速度:40g/sec.)により100mm×100mm×3mmの成形板とし、ミノルタ製測色計CM−508Dを用いてL*を測定した。L*の数値が小さいほど、発色性が良好であることを示す。
ただし、実施例11〜28、比較例3〜5では、射出速度:10g/sec.および40g/sec.にて射出成形を行った100×100×2mmの平板試験片表面について、それぞれ上記と同様に発色性を測定した。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水(以下、単に水と記す。) 200部、
オレイン酸カリウム 2部、
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 4部、
硫酸第一鉄七水塩 0.003部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.009部、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
を窒素フロー下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、
アクリル酸n−ブチル 82部、
メタクリル酸 18部、
クメンヒドロパーオキシド 0.5部
からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃のまま熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が150nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
<1段目>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
水 310部、
アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK) 1部、
アクリル酸n−ブチル 80部、
メタクリル酸アリル 0.48部、
イソシアヌル酸トリアリル 0.4部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.2部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温55℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部、
硫酸第一鉄七水塩 0.0001部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部、
水 10部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持した。得られたゴム質重合体の体積平均粒子径は100nmであった。ここへ5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1部添加し(混合液のpHは9.1)、内温を70℃になる様にジャケット温度の制御を行った。
内温70℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.03部、
硫酸第一鉄七水塩 0.002部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.006部、
水 80部
からなる水溶液を添加し、次いで
アクリル酸n−ブチル 20部、
メタクリル酸アリル 0.12部、
イソシアヌル酸トリアリル 0.1部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.02部
からなる混合液を1時間にわたって滴下した。滴下終了後、温度70℃の状態を1時間保持した後に冷却し、固形分が18%、ゴム質重合体の体積平均粒子径が450nmであるゴム質重合体ラテックス(a−1)を得た。重合転化率は97%、粒子径200nm以下の粒子の割合は10%であった。
メタクリル酸アリルおよびイソシアヌル酸トリアリルの使用量を表1に記載した量にした以外は合成例2と同様にして、ゴム質重合体ラテックス(a−2)〜(a−5)およびゴム質重合体ラテックス(x−1)〜(x−2)を得た。
肥大化時に添加する5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として2部、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として3部に変更した以外は合成例2と同様の手法により、ゴム質重合体ラテックス(a−6)を得た。肥大化後の体積平均粒子径は510nm、また、アクリル酸n−ブチル20部重合後の体積平均粒子径は550nmであった。
肥大化時に添加する5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1部、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として4部に変更した以外は合成例2と同様の手法により、ゴム質重合体ラテックス(a−7)を得た。肥大化後の体積平均粒子径は325nm、また、アクリル酸n−ブチル20部重合後の体積平均粒子径は350nmであった。
初期に仕込む単量体等を表1に記載した量にし、肥大化後にアクリル酸n−ブチル等の重合反応を行わない以外は合成例2と同様の手法により、ゴム質重合体ラテックス(a−8)を得た。肥大化後の体積平均粒子径は430nmであった。
肥大化時に添加する5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として3部、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として3部に変更した以外は合成例2と同様の手法により、ゴム質重合体ラテックス(a−9)を得た。肥大化後の体積平均粒子径は600nm、また、アクリル酸n−ブチル20部重合後の体積平均粒子径は650nmであった。
肥大化時に添加する5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1部、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として5部に変更した以外は合成例2と同様の手法により、ゴム質重合体ラテックス(a−10)を得た。肥大化後の体積平均粒子径は280nm、また、アクリル酸n−ブチル20部重合後の体積平均粒子径は300nmであった。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、
水(ゴム質重合体ラテックス中の水を含む) 230部、
ゴム質重合体ラテックス(a−1) 50部(固形分として)、
アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK) 0.5部、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
を仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、攪拌しながら内温を70℃まで昇温した。
次いで、
アクリロニトリル 15部、
スチレン 35部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.5部
からなる混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、冷却し、グラフト共重合体(A−1)ラテックスを得た。
次いで、1.5%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(A−1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
用いるゴム質重合体ラテックスを表2に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、粉末状のグラフト共重合体(A−2)〜(A−10)と(X−1)〜(X−2)を得た。
グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)、(X−1)〜(X−2)の合成条件と物性の評価結果を表2にまとめて示す。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
水 240部、
アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK) 0.7部、
アクリル酸n−ブチル 50部、
メタクリル酸アリル 0.15部、
1,3−ブタンジオールジメタクリル酸エステル 0.05部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.1部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。
内温55℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部、
硫酸第一鉄七水塩 0.00015部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00045部、
水 10部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持した。重合発熱が確認されてから、発熱が確認されなくなるまでは20分間であり、発熱が確認されなくなった時点での重合転化率は92%、重合速度は4.6%/分であった。得られたゴム質重合体の体積平均粒子径は105nmであった。
内温を70℃に制御し、
アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK) 0.2部、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部、
硫酸第一鉄七水塩 0.001部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.003部、
水 10部
からなる水溶液を添加した。次いで、
アクリロニトリル 12部、
スチレン 28部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.2部
からなる混合液を80分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、75℃まで冷却し、
アクリロニトリル 3部、
スチレン 7部、
ノルマルオクチルメルカプタン 0.02部、
t−ブチルヒドロパーオキシド 0.05部
からなる混合液を20分間にわたって滴下した。滴下終了後、75℃で60分間保持した後冷却し、グラフト共重合体(B−1)ラテックスを得た。
次いで、2.0%硫酸水溶液100部を40℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(B−1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(B−1)を得た。
アクリル酸n−ブチル重合時に添加するアルケニルコハク酸ジカリウムを0.3部に変更した以外は合成例9と同様の手法により、粉末状のグラフト共重合体(B−2)を得た。
アクリル酸n−ブチルの重合発熱が確認されてから発熱が確認されなくなるまでの時間は22分間であり、発熱が確認されなくなった時点での重合転化率は94%、重合速度は4.3%/分であった。ゴム質重合体の体積平均粒子径は155nmであった。
アクリル酸n−ブチル重合時に添加する硫酸第一鉄七水塩を0.0000375部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを0.0001125部に変更した以外は合成例9と同様の手法により、粉末状のグラフト共重合体(B−3)を得た。
アクリル酸n−ブチルの重合発熱が確認されてから発熱が確認されなくなるまでの時間は40分間であり、発熱が確認されなくなった時点での重合転化率は91%、重合速度は2.3%/分であった。体積平均粒子径は130nmであった。
公知の懸濁重合法により、表4に記載の組成と還元粘度を有する共重合体(C−1),(C−2)を得、熱可塑性樹脂(C−1),(C−2)とした。
公知の懸濁重合法により、表4に記載の組成と還元粘度を有する共重合体(C−4)を得、熱可塑性樹脂(C−4)とした。
グラフト共重合体(A−1)16部、グラフト共重合体(B−1)24部、熱可塑性樹脂(C−1)30部、熱可塑性樹脂(C−2)30部、エチレンビスステアリルアミド0.5部、アデカスタブLA−63PK(旭電化工業社製)0.5部、および着色剤としてカーボンブラック#960(三菱化学社製)1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、該混合物をバレル温度240℃に加熱した脱揮式二軸押出機((株)日本製鋼製、TEX30α)で賦形し、ペレットを作製した。このペレットについて、メルトボリュームレートを測定した。結果を表5に示した。
この樹脂ペレットを4オンス射出成形機((株)日本製鋼製)にて220〜260℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、シャルピー衝撃強度、曲げ弾性率、荷重たわみ温度を測定した。また、射出速度:10g/sec.および40g/sec.にて射出成形を行った100×100×2mmの平板試験片表面について、それぞれ光沢度、発色性を測定した。これらの結果を表5に示した。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A)、アクリルゴム系グラフト共重合体(B)、グラフト共重合体(X)および熱可塑性樹脂(C)の配合を表5に示した配合とした以外は実施例11と同様の手法により、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。各種物性を評価した結果を表5に示した。
表5より次のことが明らかである。
即ち、本発明で必須成分とする2個の不飽和結合を有する多官能性単量体のメタクリル酸アリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−1)を用いた比較例3は光沢度および発色性が悪く、外観に劣る。また、3個の不飽和結合を有する多官能性単量体のイソシアヌル酸トリアリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−2)を用いた比較例4は衝撃強度、光沢度および発色性のバランスが劣る。また、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含まない比較例5は衝撃強度および曲げ弾性率のバランスが劣る。また、いずれの比較例も、低速成形時と高速成形時における光沢および発色性の差が大きく、射出速度依存性が高いことが明らかである。
これに対して、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含む実施例11〜28の本発明の熱可塑性樹脂組成物であれば、衝撃強度や曲げ弾性率等の機械的強度および光沢度や発色性などの外観において良好な特性を得ることができる。
実施例11における熱可塑性樹脂(C−1)および(C−2)を、(メタ)アクリル系樹脂である熱可塑性樹脂(C−4)に変更し、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)、アクリルゴム系グラフト共重合体(B)、グラフト共重合体(X)および熱可塑性樹脂(C)の配合を表5に示した配合とした以外は実施例11と同様の手法により、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。各種物性を評価した結果を表6に示した。
表6より次のことが明らかである。
即ち、本発明で必須成分とする2個の不飽和結合を有する多官能性単量体のメタクリル酸アリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−1)を用いた比較例6は光沢度および発色性が悪く、外観に劣る。また、3個の不飽和結合を有する多官能性単量体のイソシアヌル酸トリアリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−2)を用いた比較例7は衝撃強度、光沢度および発色性のバランスが劣る。また、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含まない比較例8は衝撃強度および曲げ弾性率のバランスが劣る。
これに対して、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含む実施例29〜44の本発明の熱可塑性樹脂組成物であれば、熱可塑性樹脂(C)として、(メタ)アクリル系樹脂(C−4)を用いた場合でも、衝撃強度や曲げ弾性率等の機械的強度および光沢度や発色性などの外観において良好な特性を得ることができる。
グラフト共重合体(A−1)6部、グラフト共重合体(B−1)9部、熱可塑性樹脂(C−1)45部、熱可塑性樹脂(C−5)40部、パラフィンワックス0.5部、アデカスタブLA−63PK(旭電化工業社製)0.5部、および着色剤としてカーボンブラック#960(三菱化学社製)1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、該混合物をバレル温度250℃に加熱した脱揮式二軸押出機((株)日本製鋼製、TEX30α)で賦形し、ペレットを作製した。このペレットについて、メルトボリュームレートを測定した。結果を表7に示した。
この樹脂ペレットを4オンス射出成形機((株)日本製鋼製)にて250〜270℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、シャルピー衝撃強度、曲げ弾性率、荷重たわみ温度、光沢度、発色性を測定した。これらの結果を表7に示した。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A)、アクリルゴム系グラフト共重合体(B)、グラフト共重合体(X)、熱可塑性樹脂(C−1)および(C−5)の配合を表7に示した配合とした以外は実施例45と同様の手法により、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。各種物性を評価した結果を表7に示した。
表7より次のことが明らかである。
即ち、本発明で必須成分とする2個の不飽和結合を有する多官能性単量体のメタクリル酸アリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−1)を用いた比較例9は光沢度および発色性が悪く、外観に劣る。また、3個の不飽和結合を有する多官能性単量体のイソシアヌル酸トリアリル単位を含まないアクリルゴム系グラフト共重合体(X−2)を用いた比較例10は衝撃強度、光沢度および発色性のバランスが劣る。また、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含まない比較例11は衝撃強度および曲げ弾性率のバランスが劣る。また、熱可塑性樹脂組成物中のゴム質重合体総量が低い比較例12は、衝撃強度の低下が著しい。
これに対して、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含む実施例45〜63の本発明の熱可塑性樹脂組成物であれば、熱可塑性樹脂(C)として、スチレン系樹脂(C−1)およびポリカーボネート樹脂(C−5)を用いた場合でも、衝撃強度や曲げ弾性率等の機械的強度および光沢度や発色性などの外観において良好な特性を得ることができる。
Claims (9)
- アクリル酸エステル系単量体単位と多官能性単量体単位を含むゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体であって、該ゴム質重合体中の前記多官能性単量体単位の合計量が、アクリル酸エステル系単量体単位100質量部に対して0.3〜3質量部であり、かつ、前記多官能性単量体単位の総量100質量%中に2個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位30〜95質量%と3個の不飽和結合を有する多官能性単量体単位5〜70質量%とを含むことを特徴とするアクリルゴム系グラフト共重合体。
- 前記ゴム質重合体が、アクリル酸エステル系単量体と多官能性単量体を含む単量体混合物を重合してなる共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより肥大化させ、その後さらにアクリル酸エステル系単量体を含む単量体を添加して重合させてなることを特徴とする請求項1に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体。
- 前記ゴム質重合体の体積平均粒子径が300〜600nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体(以下「アクリルゴム系グラフト共重合体(A)」という。)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- アクリルゴム系グラフト共重合体(A)と、体積平均粒子径が70〜200nmであるアクリル酸エステル系単量体単位を含むゴム質重合体の存在下にビニル系単量体をグラフト重合してなるアクリルゴム系グラフト共重合体(以下「アクリルゴム系グラフト共重合体(B)」という。)を含むことを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム質重合体の総量が熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して5〜30質量部であり、かつ、熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム質重合体の総量を100質量%として、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体が20〜70質量%、アクリルゴム系グラフト共重合体(B)に含まれるゴム質重合体が30〜80質量%であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- アクリルゴム系グラフト共重合体(A)およびアクリルゴム系グラフト共重合体(B)以外の他の熱可塑性樹脂(C)を0〜90質量部を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- アクリルゴム系グラフト共重合体(B)が、アクリル酸エステル系単量体100質量%を、重合速度3質量%/分以上で重合させてなることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項4ないし8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物成形品。
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