JP2012000885A - 易引裂性多層フィルム及び包装材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 特定の密度のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)60〜90重量%と特定の密度の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)10〜40重量%とからなる中間層(B)及び特定のポリエチレン(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなる易引裂性多層フィルム及びこれを用いた包装材による。
【選択図】 図1
Description
従来の易引裂包装袋に用いられている包装用積層体は、易引裂性、ヒートシール性、耐突き刺し性などを有する容器として必要な特性付与の観点から、二軸延伸したポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等のフィルムを基材とし、この基材にヒートシール層樹脂として高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等からなる無延伸ポリエチレン系樹脂を積層したものが用いられていた。
また、易引裂性を付与すると衝撃強度が低下する問題があった。
したがって、縦方向及び横方向の引裂性に優れ、さらに、縦方向及び横方向の引裂性のバランスに優れ、衝撃強度、ヒートシール性等の包装用フィルムに必要とされる特性も併せ持つ、包装材に好適な易引裂性フィルムが望まれていた。
2 中間層(B)
3 内層(C)
本発明の易引裂性フィルムは、特定の密度のポリエチレンからなる外層、環状オレフィン系樹脂60〜90重量%と特定の密度の直鎖状低密度ポリエチレン10〜40重量%とからなる中間層及び特定のポリエチレンからなる内層が、順に積層されてなることを特徴とする。
また、本発明の包装材は、前記易引裂性フィルムを用いてなることを特徴とする。
(1)中間層(B)
本発明のフィルムにおける中間層(B)は、環状オレフィン系樹脂(b1)60〜90重量%と、密度が0.870〜0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)10〜40重量%とからなることを特徴とする。すなわち、中間層(B)は、環状オレフィン系樹脂(b1)60重量%以上からなることが必要である。より好ましくは、環状オレフィン系樹脂(b1)60〜80重量%と、密度が0.870〜0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)20〜40重量%とからなることが好ましい。環状オレフィン系樹脂が60重量%未満であると十分な易引裂性が得られない恐れがあり好ましくない。
前述したように、従来技術においては、中間層と外層及び内層との密着性、非晶質である環状オレフィン系樹脂が多くなるとフィルムの引張弾性率の値が高くなり割れやすくなり、耐衝撃性におとる、といった理由から、中間層に含まれる環状オレフィン系樹脂の量は、50重量%以下であることが好ましいとされていた。本発明においては、環状オレフィン系樹脂を60重量%以上と多く配合した場合に、縦方向及び横方向の引裂強度の値が小さく易引裂性に優れる上に、両方向の引裂強度のバランスが優れ、衝撃強度にも優れる易引裂性多層フィルムとなる、易引裂性と衝撃強度を兼ね備えるといった予期せぬ改良となったものと思われる。
本発明の易引裂性フィルムの中間層(B)で用いる環状オレフィン系樹脂(b1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
さらにまた、エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上であることが好ましい。より好ましくは70℃以上のものである。環状オレフィンの含有量が上記範囲を下回ると、ガラス転移点が前記範囲を下回るようになり、例えば、芳香成分のバリアー性が低下するようになる、十分な剛性が得られず、高速包装機械適正に劣る等の恐れがある。一方、環状オレフィンの含有量が上記範囲を上回ると、ガラス転移点が高くなりすぎ、共重合体の溶融成形性やオレフィン系樹脂との接着性が低下する恐れがあり好ましくない。
また、環状オレフィン系樹脂(b1)の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
中間層(B)を形成するのに用いる直鎖状低密度ポリエチレン(b2、以下、「LLDPE(b2)」ともいう。)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたもののいずれであっても良いが、密度は、0.870〜0.935g/cm3であることが必要である。好ましくは0.910〜0.9330g/cm3である。密度が0.870g/cm3を下回る場合は十分な剛性が得られず、高速包装機械適正に劣る恐れがある。一方、密度が0.935g/cm3を超える場合は、十分な透明性が得られない恐れがある。
なお、本発明において、密度は、JIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
なお、本発明において、メルトインデックス(MI)は、JIS−K−7210により測定したメルトインデックス値である。また、本願明細書において、以下、MIは、MFRとも言う。
本発明の易引裂性多層フィルムにおける外層(A)は、密度が0.870〜0.935g/cm3のポリエチレン(a)からなることを特徴とする。好ましくは、ポリエチレン(a)の密度は0.910〜0.930g/cm3である。上記密度範囲内にあるポリエチレンであれば、強度、剛性、透明性が良好であるため、いずれのものも使用できる。
また、ポリエチレン(a)は、190℃におけるメルトインデックスが0.1〜30g/10分であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜4.0g/10分である。上記密度範囲内にあるポリエチレンであれば、フィルム物性、製膜安定性が良好であるため、いずれのものも使用できる。
好ましいポリエチレン(a)としては、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
本発明の易引裂性多層フィルムにおける外層(C)は、密度が0.870〜0.935g/cm3のポリエチレン(c)からなることを特徴とする。好ましくは、ポリエチレン(c)の密度は0.880〜0.920g/cm3である。上記密度範囲内にあるポリエチレンであれば、強度、剛性、透明性、ヒートシール性が良好であるため、いずれのものも使用できる。
また、ポリエチレン(c)は、190℃におけるメルトインデックスが0.1〜30g/10分であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜4.0g/10分である。上記密度範囲内にあるポリエチレンであれば、フィルム物性、製膜安定性が良好であるため、いずれのものも使用できる。
好ましいポリエチレン(c)としては、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
本発明の易引裂性多層フィルムは、前述したように、特定の外層(A)/特定の中間層(B)/特定の内層(C)との構成からなるものである。図1に、本発明の易引裂性多層フィルムの一例の断面の概略図を示す。1は外層(A)、2は中間層(B)、3は内層(C)を示す。
易引裂性多層フィルム全体の厚さとしては、30〜150μmのものが好ましい。多層フィルムの厚さが30μm以上であれば、優れた二次成形性が得られる。また、多層フィルムの厚さが50〜80μmの範囲では、内層(C)同士をヒートシールさせた袋状の包装材として使用できる。さらに、本発明の易引裂性多層フィルムは、その厚さが100μm以上の厚膜であっても、易引裂性に優れる。
また、本発明の易引裂性フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形が可能となる。
さらに、通常用いられる方法により、本発明の易引裂性フィルムをシーラントフィルムとして用い、外層(A)上に接着性樹脂や接着剤を介して基材をラミネートしてラミネートフィルムとすることもできる。
また、JIS K7124−1に準拠して測定した衝撃強度が、100g/30μm以上であることが好ましい。より好ましくは、130g/30μm以上である。なお、JIS K7124−1による衝撃強度とは、落槍衝撃強度又は打抜き強度(Dart Drop Impact Strength、DDI)とも呼ばれ、フィルム上に特定の重りを落として測定するものである。
本発明の易引裂性フィルムは、縦方向及び横方向におけるエルメンドルフ引裂強度の値が小さく、易引裂性に優れるにもかかわらず、縦方向及び横方向におけるエルメンドルフ引裂強度の差が小さくバランスがとれるためか、衝撃強度が強いという特徴を有する。
本発明の易引裂性フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、医療器具、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
なお、実施例に於ける各種物性の測定は、下記要領に従った。
(1)ヘイズ(Haze)
JIS K7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に規定の方法に準拠して測定した。数値が小さくなれば曇り度が小さくなり透明性は高い。
(2)光沢(Gloss)
フィルムの光沢を、以下の条件により評価した。
JIS K7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に規定の方法に準拠して測定した。測定機としては、スガ試験機製デジタル変角光沢性計 UGV−5Kを用い、評価項目としては、60度鏡面光沢度として測定した。数値が小さくなれば光沢度は小さくなる。
(3)衝撃強度(DDI:Dart Drop Impact Strength)
JIS K7124−1に準拠して測定した。
(4)引張弾性率
JIS K7127に準拠して測定した。なお、MDは流れ方向(MD:Macine Direction)であり、TDは垂直方向(TD:Transverse Direction)の値である。
(5)エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128−2に準拠して測定した。なお、MDは流れ方向(MD:Macine Direction)であり、TDは垂直方向(TD:Transverse Direction)の値である。
以下のインフレーションフィルム製膜機(成形装置)を用いて、下記の成形条件で、インフレーションフィルムを成形し、評価した。
装置:インフレーション成形装置(プラコー(株)製)
押出機スクリュー径:40mmφ×3
ダイ径:105mmφ
押出量:20kg/hr
ダイリップギャップ:2.5mm
引取速度:27m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:190℃
フィルム厚み:30μm
冷却リング:2段式風冷リング
装置:インフレーション成形装置(MK50型 三菱重工(株)製)
押出機スクリュー径:50mmφ
ダイ径:75mmφ
押出量:20kg/hr
ダイリップギャップ:3.0mm
引取速度:30m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:190℃
フィルム厚み:30μ
冷却リング:2段式風冷リング
実施例で使用した原料は、下記の通りである。なお、密度の単位はg/cm3、MFRの単位はg/10分である。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(A):
LL−1: 密度0.926、MFR1.0のエチレン・ブテン−1共重合体
LL−2: 密度0.910、MFR2.0のエチレン・ヘキセン−1共重合体
(2)COC
商品名TOPAS「8007」を使用。
(実施例1〜4)
表1の通り、外層をLL−1、内層をLL−2、中間層をLL−1にCOCを60〜85%とし、層比1:1:1の30μmインフレーションフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
表2の通り、LL−1にCOCを0〜100%ブレンドし、30μmインフレーションフィルムを得た。評価結果を表2に示す
中間層にCOC100重量%を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ30μmの多層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
表1及び2から明らかなように、本発明の製造方法の特定事項である「特定密度のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)60〜90重量%と、特定密度の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)10〜40重量%とからなる中間層(B)及び特定密度のポリエチレン(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなる」との要件を満たさない方法による比較例1〜3及び比較例7は、エルメンドルフ引裂強度が、MD方向とTD方向のうち、どちらか一方が比較的小さくても、両方向の値に開きがあり、バランスが取れないためか、衝撃強度(DDI)が不十分であり、比較例4及び5は、衝撃強度を満足していても、ヘイズ値及び光沢度の値が、フィルムとして不十分であり、特に包装材として用いる易引裂性フィルムとしては不十分であり、比較例6は透明性は満足しているが、衝撃強度が不十分であり、また、剛性が高くインフレーション成形性(加工性)が不十分であり、比較例8は易引裂性、衝撃強度を満足しているが、剛性が高くインフレーション成形性が不十分であるのに比べて、本発明による実施例1〜4では、易引裂性、衝撃強度、ヘイズ値、光沢度のすべてを兼ね備えており、特に包装材として用いる易引裂性フィルムとして好適なものとなることが明らかになった。
したがって、本発明の易引裂性フィルム及び包装材は、易引裂性、衝撃強度、ヘイズ値、光沢度のすべてを兼ね備えており、特に、縦方向及び横方向の引裂性に優れる上に、衝撃強度も兼ね備えた易引裂性多層フィルム及びこれを用いた包装材であるという結果が得られており、大きな技術的意義を持つことが明らかである。
Claims (11)
- 密度が0.870〜0.935g/cm3のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)60〜90重量%と、密度が0.870〜0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)10〜40重量%とからなる中間層(B)及び密度が0.870〜0.935g/cm3のポリエチレン(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなることを特徴とする易引裂性多層フィルム。
- 環状オレフィン系樹脂(b1)は、エチレン・環状オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の易引裂性多層フィルム。
- 前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15〜40/85〜60のものであることを特徴とする請求項2に記載の易引裂性多層フィルム。
- 前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の易引裂性多層フィルム。
- 環状オレフィン系樹脂(b1)は、フィルム全体を基準として、20〜70重量%含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- ポリエチレン(a)、直鎖状低密度ポリエチレン(b2)及びポリエチレン(c)は、190℃におけるメルトインデックスが0.1〜30g/10分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- ポリエチレン(a)及びポリエチレン(c)は、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- JIS K7128−2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向及び横方向において、それぞれ10N/mm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- JIS K7124−1に準拠して測定した衝撃強度が、100g/30μm以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- 中間層(B)の厚さは、フィルム全体を基準として、20〜70%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルムを用いてなることを特徴とする包装材。
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