JP7456197B2 - 樹脂組成物及び易引裂性フィルム、易引裂性シート - Google Patents

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Description

本発明は、少なくともポリオレフィン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂から構成される樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、樹脂組成物中の欠点数が少なく、フィルムにした際の易引裂性及び剛性に優れた樹脂組成物及び易引裂性フィルム、易引裂性シートに関するものである。
近年、プラスチックによる環境汚染問題が注目される中、包装袋に用いるプラスチックフィルムや包装袋の減容化によるプラスチック使用量の削減が検討されている。一方で、少子高齢化に対応するためユニバーサルデザインを意識した包材設計への要求も強くなってきている。
そのような設計の方針として、厚みを小さくしてもフィルムが十分な強度を有することや、包装袋を開封することを容易にするために、引き裂きが容易であるようなフィルムの設計が、主に実用的な観点からなされてきている(特許文献1)。
特開2012-000885号公報
包装用途に用いられるプラスチックフィルムには、剛性のような強度と同時に、開封を容易にするための易引裂性が求められる。しかし同時に、現在強まっている包材設計の要求では、フィルムの外観が優れることも求められている。
本発明では、フィルム又はシートに加工した際の易引裂性だけでなく、光学欠点数が少なく外観に優れる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた易引裂性フィルム又はシートを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、少なくともポリオレフィン系樹脂と環状オレフィン系樹脂から構成される樹脂組成物において、以下の要件(A)~(D)を満たすことにより本課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくともポリオレフィン系樹脂(a)20~80重量%と環状オレフィン系樹脂(b)20~80重量%から構成され、
・要件(A):フローカーブ測定より得られるせん断速度24S-1における粘度において、縦軸に粘度の自然対数(ln(粘度)(Pas))、横軸に1000/T(K-1)をとったアレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きが、4.0以上~7.0以下である;
・要件(B):厚み50μmのフィルムとしたときの、大きさが100μm以下である欠点のカウント数が5000個/m以下である;
・要件(C):固体粘弾性にて得られる30℃における貯蔵弾性率E’が4.0×10Pa以上である;
・要件(D):環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が60℃以上である;
を満たす樹脂組成物が提供される。
また、第二の発明によれば、第一の発明において、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリエチレン系樹脂であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
第三の発明によれば、第一又は第二の発明において、ポリオレフィン系樹脂(a)が、分岐状ポリエチレン系樹脂(c)をポリオレフィン系樹脂(a)の総量に対して0重量%より大きく、50重量%以下の量で含むことを特徴とする樹脂組成物が提供される。
第四の発明によれば、第一~第三いずれかの発明において、環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
第五の発明によれば、第一~第四いずれかの発明において、赤外分光法にて見積もられる、4250cm-1の吸光度に対する1790cm-1及び1710cm-1の吸光度の和の比が0.2以上である樹脂組成物が提供される。
第六の発明によれば、第一~第五いずれかの発明に記載される樹脂組成物を主成分とする樹脂層を有する、易引裂性フィルムが提供される。
第七の発明によれば、第六の発明において、さらに、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を2層有する易引裂性フィルムが提供される。
第八の発明によれば、第六又は七の発明において、さらにバリア層を少なくとも1層以上有する、易引裂性フィルムが提供される。
第九の発明によれば、第八の発明において、前記樹脂層が、前記バリア層の少なくとも一方に隣接している、易引裂性フィルムが提供される。
第十の発明によれば、第一~第五いずれかの発明に記載される樹脂組成物を用いて得られ、さらに以下の要件を満たす、易引裂性フィルムが提供される。
・要件(E):フィルムの流れ方向(MD)に対しての垂直方向(TD)の引裂強度が30N/mm以下
・要件(F):引張弾性率がフィルムの流れ方向及び垂直方向ともに300MPa以上
本発明の樹脂組成物によれば、第一の発明においては、樹脂組成物が上記要件(A)~(D)を満足することにより、フィルムとしたときの強度、易引裂性に加え、フィルムの外観にも優れる。
第二の発明においては、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリエチレン系樹脂であることにより、フィルムにしたときの易引裂性及び外観により優れる。
第三の発明においては、ポリオレフィン系樹脂(a)が、分岐状ポリエチレン系樹脂(c)をポリオレフィン系樹脂(a)の総量に対して0重量%より大きく、50重量%以下の量で含むことにより、フィルムにしたときの易引裂性により優れる。
第四の発明においては、環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が100℃以上であることにより、高温での処理が必要な樹脂を用いたものにも対応させることができ、汎用性に優れる。
第五の発明においては、赤外分光法にて見積もられる、4250cm-1の吸光度に対する1790cm-1及び1710cm-1の吸光度の和の比が0.2以上であることにより、当該樹脂組成物が極性樹脂との接着性にも優れる。
さらに、第六の発明においては、易引裂性フィルムが第一~第五いずれかの発明に記載される樹脂組成物を主成分とする樹脂層を有することにより、フィルムが強度及び易引裂性においてより優れる。
第七の発明においては、さらに、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を2層有することにより、フィルムが強度及び易引裂性においてより優れる。
第八の発明においては、さらにバリア層を少なくとも1層以上有することにより、フィルムが易引裂性及びバリア性においてより優れる。
第九の発明においては、前記樹脂層が、前記バリア層の少なくとも一方に隣接していることにより、フィルムが易引裂性においてより優れる。
第十の発明においては、上記要件(E)及び(F)を満足することにより、フィルムが強度においてより優れる。
以下、本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムについて、各項目ごとに詳細に説明する。なお、本発明において、「主成分とする」とは層を構成する樹脂成分中の主要成分であることを意味し、具体的には層を構成する樹脂成分中70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%含有することを意味する。
<樹脂組成物の構成>
[1]ポリオレフィン系樹脂(a)
ポリオレフィン系樹脂(a)としては、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンを主成分とする樹脂であれば、特に制限はない。ポリオレフィン系樹脂(a)は、共重合体であってもよい。共重合体は、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよい。モノマーとなるオレフィンは、炭素-炭素二重結合が分子末端に位置するα-オレフィンが好ましく、その種類としては、通常はエチレン又は炭素数3~8のα-オレフィンである。α-オレフィンの具体的にはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1などが挙げられる。特に好ましくは、エチレンである。エチレンとしては、石油原料由来の他、植物原料由来等の非石油原料由来のエチレンを用いることができる。以下、非変性ポリオレフィン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂とで分けて説明する。
(1-1)非変性ポリオレフィン系樹脂
非変性ポリオレフィン系樹脂は、一種又は二種以上の樹脂から構成されてもよい。ここで、「非変性ポリオレフィン系樹脂」には、オレフィン以外のモノマーをコモノマーとして得られる共重合体が含まれる。非変性ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂が挙げられるが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたホモポリエチレンもしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、もしくは有機過酸化物を反応開始剤として重合される高圧法低密度ポリエチレンのほか、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸3成分系共重合体等の中から選択される1種類もしくは2種類以上の混合物であってもよいが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から直鎖状ポリエチレン系樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。また、該ポリエチレン系樹脂の密度も、一般的なポリエチレンの密度範囲である0.860g/cm~0.970g/cmであればいずれであってもよい。密度範囲は好ましくは0.860g/cm~0.935g/cmであり、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。LLDPE又はLDPEとしては、日本ポリエチレン株式会社製の「ノバテック(登録商標)」又は「ハーモレックス」シリーズなどが市販されており、これらを用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等の他のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられ、いずれでも用いることができる。上記重合体の1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよいが、直鎖状ポリエチレン系樹脂と環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、メタロセン触媒から得られた直鎖状のエチレン・プロピレン・ランダムブロック共重合体が50重量%以上含まれることが好ましい。市販されている樹脂としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
非変性ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートについては、ポリエチレン系樹脂の場合は190℃において、またポリプロピレン系樹脂において230℃において、0.05~20g/10minが好ましく、より好ましくは0.1~10g/minであり、さらに好ましくは、0.1~3.5/minである。メルトフローレートが0.1~3.5/10minの場合、環状オレフィン系樹脂との粘度バランスが良好となり、接着層における環状オレフィン系樹脂がフィルムの流れ方向(MD)に引き伸ばされた分散構造を形成し、直線引裂性に優れるため、より好ましい。
(1-2)変性ポリオレフィン系樹脂
変性ポリオレフィン系樹脂は、多層のフィルム又はシートを得るにあたり樹脂層間を接着するために用いることができる。本発明では、エチレン又はプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂である場合は、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたホモポリエチレンもしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、もしくは有機過酸化物を反応開始剤として重合される高圧法低密度ポリエチレン等が挙げられるが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から直鎖状の分子構造を有するエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。該ポリエチレン系樹脂の密度は、一般的なポリエチレンの密度範囲である0.860g/cm~0.970g/cmであればいずれであってもよい。エチレンと共重合するα-オレフィンの種類としては、通常炭素数3~8のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1などが挙げられる。なお、本発明において樹脂の密度は、JIS K6922-2に基づいて測定する値である。
また、該ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から20g/10min以下が好ましい。MFRが20g/10min以下であると溶融張力の上昇により製膜安定性が向上しやすい。ここで、本発明におけるMFRの値は、特に断りがない場合、JIS K7210に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値である。
また、ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂の場合は、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等の他のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等のいずれでも用いることができる。上記重合体の1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよいが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、メタロセン触媒から得られた直鎖状のエチレン・プロピレン・ランダムブロック共重合体が50重量%以上含まれることが好ましい。市販されているこのような樹脂としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
また、該ポリプロピレン系樹脂の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から15g/10min以下が好ましい。MFRが15g/10min以下であると溶融張力の上昇により製膜安定性が向上しやすい。
上記、ポリオレフィン系樹脂にグラフト重合させる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物等が挙げられる。これらグラフト変性させる官能基含有モノマーの中では、カルボン酸基または酸無水基含有モノマーであるマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物が好ましく、特に無水マレイン酸(MAH)が基材との接着強度、樹脂との相溶性、経済性等の観点から好ましく使用される。グラフト重合する該α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体の量は、変性ポリオレフィン樹脂全量に対して、0.02~5.0重量%に相当するのが好ましい。
グラフト変性の方法には、重合された樹脂成分をラジカル発生剤の存在下に、グラフト変性させる官能基含有モノマーを押出機内で反応させる溶融法、あるいは溶液中で反応させる溶液法等がある。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、ジクミル化合物等が挙げられる。該有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。ジヒドロ芳香族化合物としては、ジヒドロキノリンまたはその誘導体、ジヒドロフラン、1,2-ジヒドロベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、9,10-10ジヒドロフェナントレン等が挙げられる。ジクミル化合物としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-メチルフェニル)ブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
なお、該変性ポリオレフィン系樹脂には、改質材としてエチレンプロピレン系ゴム等のエチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴムなどのエラストマーを添加してもよい。
市販されている変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「モディック」や三井化学株式会社製「アドマー」などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂(a)には、直鎖状のポリオレフィン系樹脂に加え、ポリマーの成長反応段階で枝分かれが生じたことにより分岐状になっている分岐状ポリオレフィン系樹脂(c)を含むことができる。そのようなポリオレフィン系樹脂の例は、上記説明に含まれており、例えば、LDPEと称される低密度ポリエチレンが挙げられる。分岐状ポリオレフィン系樹脂(c)を用いる場合、その割合は、ポリオレフィン系樹脂(a)の総量に対して50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。下限は特に制限されず、0重量%であってもよい。配合量の下限は0重量%、即ち分岐状ポリオレフィン系樹脂(c)を含まないものであることが好ましい。
[2]環状オレフィン系樹脂(b)
環状オレフィン系樹脂(b)は、炭素-炭素二重結合が環構造の一部を構成しているモノマーから得られるポリマーであり、環状オレフィン系樹脂(b)に用いられる環状オレフィンとしては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
Figure 0007456197000001

[一般式(1)中、R~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭素数1~20の炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R及びR10、並びに、R11及びR12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R~Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
環状オレフィン系樹脂(b)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3~20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]-3-ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン等およびこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(b)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
ポリエチレンに対する分散性の観点から、環状オレフィン系樹脂(b)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度は、要件(D)として後述するように60℃以上であるが、70℃~180℃であることが好ましく、特に90℃から180℃、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは160℃以下、特に140℃以下である。ガラス転移温度は、ISO 11357-3に準拠し測定される。好ましくはバリア層に直接隣接した層に、ガラス転移温度が60℃以上、好ましくは100℃以上の環状オレフィン系樹脂を用いると、フィルムの流れ方向(MD)だけでなく、垂直方向(TD)においても卓越した直線易引裂性を発現することができるため、より好ましい。ガラス転移温度の異なる環状オレフィン系樹脂(b)を2種類以上用いてもよい。
エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60のものであることが好ましい。より好ましくは15~35/85~65のものである。さらに好ましくは、20~30/80~70のものである。エチレンの含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、易引裂性、加工安定性、成形性、製袋適性が向上するため好ましい。
また、環状オレフィン系樹脂(b)の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、7,000~300,000であるものがより好ましい。
環状オレフィン系樹脂(b)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス株式会社製「トパス(TOPAS)(登録商標)」等が挙げられる。ノルボルネン系単量体の含有比率が前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007F、7010F、5013F、6013F、6015Fなどが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(a)及び環状オレフィン系樹脂(b)から構成される。ポリオレフィン系樹脂(a)及び環状オレフィン系樹脂(b)の合計に対するポリオレフィン系樹脂(a)の割合は、下限が20重量%以上であり、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上である。ポリオレフィン系樹脂(a)の割合の上限は、80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下である。この範囲とすることで、引張弾性率を高くするとともに引裂強度を下げることができ、フィルムの強度と易引裂性を高めることができる。
[樹脂組成物の物性]
本発明の樹脂組成物は、上記説明のような構成を有するものであるが、さらに、以下に掲げる要件を満たすものである。
・要件(A):フローカーブ測定より得られるせん断速度24S-1における粘度において、縦軸に粘度(Pas)の対数、横軸に温度の逆数をとってアレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きが、4.0以上~7.0以下である。
・要件(B):厚み50μmのフィルムとしたときの大きさ28~100μmの欠点のカウント数が5000個/m以下である。
・要件(C):固体粘弾性にて得られる30℃における貯蔵弾性率E’が4.0×10Pa以上である。
・要件(D):環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が60℃以上である。
[要件(A)]
本発明の樹脂組成物が有する要件(A)は、フローカーブ測定より得られるせん断速度24S-1における粘度において、縦軸に粘度の自然対数(ln(粘度)(Pas))、横軸に1000/T(K-1)をとったアレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きが、4.0以上~7.0以下であることである。
アレニウスプロットの傾きは、粘度の温度依存性の大きさを意味している。一般的な製膜加工においては、溶融樹脂を冷却固化させることにより、フィルム及びシート状の製品を得るため、この傾きが大きいほど、冷却過程での環状オレフィン系樹脂の粘度上昇が大きくなり、より流れ方向へ配向することになる。一方でフィルムの易引裂性における、樹脂組成物の分子状態に基づく機構を見ると、ポリオレフィン系樹脂と環状オレフィン系樹脂から構成される樹脂組成物は、フィルム又はシート状に加工した際に、ポリオレフィン系樹脂中に環状オレフィン系樹脂が微分散し、海-島構造を形成することによって易引裂性を発現する。また、島を形成する環状オレフィン系樹脂のドメインが、流れ方向に配向するほど、易引裂性に優れる。したがって、アレニウスプロットの傾きが大きいほど、環状オレフィン系樹脂の流れ方向への配向が促され、得られたフィルム及びシートの易引裂性が優れる。
アレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きが、4.0以上~7.0以下の範囲であれば、他の性質を損なうことなく、易引裂性を高めることができるため好ましい。アレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きは、より好ましくは、4.5~6.0の範囲である。アレニウスプロットの傾きが7.0より大きく粘度の温度依存性が大きくなりすぎると、光学欠点数が増え、外観が悪化する可能性があるため、フィルムの易引裂性と外観を両立させるためには、ある一定の範囲内に収めることが好ましい。
温度に対する高分子の粘度の関係は、一般に式lnη=lnA+0.4343B/T(ここで、A及びBは物質固有の定数であり、ηは粘度であり、Tは温度である)で表されることが公知である。本発明における要件(A)では、横軸にln(粘度(Pas))、縦軸に1000/T(K-1)をとることでアレニウスプロットを作成し、その直線近似式における傾きの値を用いる。粘度の測定方法、アレニウスプロットの作成は当業者に公知である。
[要件(B)]
本発明の樹脂組成物が有する要件(B)は、厚さ50μmのフィルムとしたときの大きさ100μm以下の欠点のカウント数が5000個/m以下であることである。これら欠点は、樹脂成分の架橋や劣化によって発生するゲルや、未溶融樹脂成分に由来し、フィルムの外観や品質に悪影響を及ぼすため、欠点の数は小さいほうが好ましい。
本発明の要件(B)では、厚さ50μmのTダイフィルムを作製したときに存在する単位面積当たりの光学欠点の数を光学カメラにより計数することで、欠点のカウント数とする。フィルムは、Φ32mm、ダイス幅:300mm幅の押出機を用い、短軸Tダイ成形機を成形機として作製する。計数に用いる機械は市販のものを用いることができる。
光学カメラで観察される欠点のうち、長軸方向の大きさが100μm以下のものを計数する。100μm以上の大きさの欠点があると、外観や物性への影響が顕在化するため好ましくないが、本要件を満たすことで、一般に100μm以上の大きさの欠点の数は有意に小さくなる。欠点の大きさについて下限は光学カメラの検出限界とする。欠点の数は、フィルム1m当たり5000個以下であることを要件とする。フィルム1m当たり5000個以下より少なければ、フィルムの外観や物性に与える影響は顕在化せず、優れた外観が得られる。欠点数の下限は特に制限されない。
[要件(C)]
本発明の樹脂組成物が有する要件(C)は、固体粘弾性にて得られる30℃における貯蔵弾性率E’が4.0×10Pa以上であることである。フィルムの易引裂性は、当該樹脂組成物中に分散する環状オレフィン系樹脂の脆性破壊によって発現するため、特に多層フィルムにおいては、当該樹脂組成物からなる層に応力が集中する必要がある。樹脂組成物としての貯蔵弾性率が高いと、フィルムを引き裂く際のきっかけとなるノッチ先端に、応力が集中しやすく、より優れた易引裂性を発現する。さらに、フィルム自体の弾性率を向上させる効果もあり、フィルムの剛性向上や機械適性の向上などのメリットもある。
貯蔵弾性率が4.0×10Pa以上であると、フィルム又はシートの強度が十分に得られ、かつ易引裂性が向上する。貯蔵弾性率の測定は、当業者に公知の方法によることができるが、具体的な一例として、本発明における測定方法の例を後述の実施例にて説明している。貯蔵弾性率は高い方が好ましいが、4.0×10Pa以上、好ましくは4.5×10Pa以上であれば、フィルム用途としては十分な強度を得ることができる。
[要件(D)]
本発明の樹脂組成物が有する要件(D)は、環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が60℃以上であることである。ガラス転移温度の好ましい範囲などは、環状オレフィン系樹脂(b)の項目で示したとおりである。ガラス転移温度は、特定の樹脂について公知である場合もあるが、市販の示差走査熱量計(DSC)等によって測定することができ、その手法は当業者に公知である。
本発明の樹脂組成物は上記要件(A)~(D)を備えているものであるが、さらに、以下のように定義され、赤外分光法にて見積もられるC=O値の合計が0.2以上であることが、より好ましい。
ポリオレフィンから構成される樹脂組成物は、その大部分が炭化水素からなる。しかし、特にカルボン酸で変性したポリエチレンを用いたりした場合や、酸化等の要因により、樹脂組成物中にカルボニル基(C=O)が導入されることがある。カルボニル基は極性を有するため、極性を有する樹脂との接着に影響を与える。主にバリア層として用いられる、ポリアミドやEVOHなどの極性を有する樹脂と積層する際に、C=O値が大きい程、より強固な接着性が発現する。接着性が不十分だと、バリア樹脂と当該樹脂層との界面でのデラミが発生し、シール強度等の機械物性の低下や、引き裂き中にデラミして伸びてしまうことによる易引裂性の低下を引き起こすことがある。このため、樹脂組成物に極性のカルボニル基が存在することが、特にバリア層との接着を含む多層フィルムの製造において好ましい。本発明の樹脂組成物は、カルボニル基の量として以下の計算方法により算出したC=O値が、0.2以上であることが好ましい。
C=O値の計算は、赤外分光法(IR)での測定に基づいて行われる。具体的な計算としては、まずIR測定により、4250cm-1、1790cm-1、1710cm-1の吸光度をそれぞれ求める。4250cm-1の吸収はメチレン鎖(-CH-)に、1790cm-1及び1710cm-1の吸収はカルボニル基に、それぞれ対応する。4250cm-1の吸光度をI、1790cm-1の吸光度をI、1710cm-1の吸光度をIとして、(I+I)/Iの値をC=O値とする。
C=O値は0.2以上であることが好ましいが、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。また、C=O値の上限としては、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。C=O値がこの範囲をとることで、バリア層との優れた接着性と、フィルムとしての易引裂性を両立させることができる。C=O値は、ポリオレフィン系樹脂(a)として変性ポリオレフィンを含むものを用いるなどして、制御が可能である。
<フィルム>
本発明の一態様における易引裂性フィルムは、上記樹脂組成物を主成分とする樹脂層を少なくとも一つ有する、フィルムである。該フィルムは、該樹脂層を少なくとも一つ有するものであれば、該樹脂層のみからなる単層フィルムであっても、該樹脂層に別の層を積層させた、多層フィルムであってもよい。ここで、本明細書における「フィルム」とは、狭義のフィルム(厚みが250μm未満)だけではなく、厚みが250μm以上の狭義のシートや、テープ等も含む意味である。本明細書においては、厚みと併せて特に注記しない限り、語「フィルム」には、フィルム又はシートが包含される。よってフィルムの厚さとしては、その用途に応じて任意に選択しうるが、通常、1~500μm程度、好ましくは5~200μm、更に好ましくは10~100μmである。本明細書においては、厚みが上記範囲外であっても、厚みが残り2軸方向の長さに比して十分に小さく、厚み方向を持たない面を専らその利用に供するものをフィルムとして表す。またフィルム状であればその面の部分は四辺形、円形、三角形など任意の形状をとることができる。好ましくは、フィルムは屈曲可能である。
また、本発明の異なる一態様においては、前記樹脂組成物を主成分とする樹脂層に加え、さらに、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を少なくとも2層有する、多層フィルムが提供される。さらに本発明の異なる一態様においては、多層フィルムは、さらにバリア層を有することが好ましく、前記樹脂組成物を主成分とする樹脂層が、前記バリア層の少なくとも一方に隣接していることが、より好ましい。
したがって、本発明の一態様における多層フィルムは、少なくとも2層、好ましくは4層以上の樹脂層からなるフィルムである。例えば、前記樹脂組成物を主成分とする樹脂層を(I)、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を(II)及び(III)、バリア層を(IV)とすると、本発明の一態様における多層フィルムは、樹脂層(I)に隣接するようにバリア層(IV)を積層させた積層体、すなわち、(I)/(IV)という積層構造を有する。また例えば、前記樹脂層(I)の両側に樹脂層(II)及び(III)が積層された積層体、すなわち、(II)/(I)/(III)という積層構造を有する。これらを組み合わせた、(II)/(I)/(IV)/(III)という積層構造を有することもできる。層の積層数に特段制限はない。例えば、樹脂層(II)と樹脂層(III)で融点差を設ければ、フィルム内外層での融点差を大きくとることが出来るため、各種充填機械への適応範囲が広がり、低温度でのヒートシールや高速充填等が可能となる。
樹脂層(II)又は(III)としてのポリオレフィン系樹脂としては、その種類は特に限定されることはなく、例えばポリオレフィン系樹脂(a)として示した樹脂を単独又は混合して用いることができる。それぞれの樹脂層を構成する樹脂は同じ種類又は配合であってもよいし、異なっていてもよい。
バリア層(IV)としては、バリア層として多層フィルムに用いられるものであれば特に制限されず用いることができる。バリア層(IV)としては、樹脂の分子構造中に極性基や高極性の結合を有する、極性を有する樹脂を主成分とする層が用いられる。より具体的には、極性基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、イソシアネート基、グリシジル基等の官能基を持つ樹脂、高極性の結合としてエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合等の結合を持つ樹脂が用いられ、例えば、ポリアミド6/66(以下、PA6/66とも記載する)又はポリアミド6(以下、PA6とも記載する)のようなポリアミド系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂を主成分とする単層構成であってもよく、また、ポリアミド系樹脂/エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂/ポリアミド系樹脂のような多層構成であってもよい。バリア層として用いることのできる、市販されている樹脂としては、日本ポリエチレン株式会社製「レクスパール」(登録商標)、DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバミッド(Novamid)」(登録商標)「アクロン(Akulon)」(登録商標)、BASF社製「ウルトラミッド(Ultramid)」(登録商標)、宇部興産株式会社製「宇部ナイロン(UBE NYLON)」(登録商標)、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール(Soarnol)」(登録商標)、株式会社クラレ製「エバール(EVAL)」(登録商標)、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製「ベルペット」やポリプラスチックス株式会社製「ジュラネックス」(登録商標)等が挙げられる。
多層フィルムにおいては、各樹脂層間に接着層を設けていてもよい。接着層として用いられる樹脂の例としては、変性ポリオレフィン系樹脂、特にエチレン又はプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体をグラフト重合した変性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。具体例としては、三菱化学株式会社製「モディック」(登録商標)などが挙げられる。また、多層フィルムの最外層には、ヒートシール層を設けてもよい。ヒートシール層を設けることで、包装袋用途に適したフィルムが得られる。
各々の樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、滑材、熱劣化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、離型剤などの添加剤を添加することが出来る。
本発明の易引裂性フィルムの厚みとしては、20~200μmのものが好ましい。フィルムの厚さが20μm以上であれば、優れた二次成形性が得られる。また、フィルムの厚さが30~200μmの範囲であれば、最表面に露出する層同士をヒートシールすることにより、包装材として使用できる。多層フィルムである場合の各層の厚みは、フィルム全体の厚みが上記範囲内に収まるように設計され、本発明の効果を損なわないような設計である限り特に制限されない。
本発明のフィルムの製造方法は、当業者に公知の方法を用いることができる。各種のインフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。例えば、インフレーション成形法を用いる場合、環状ダイを備えた公知のインフレーション成形機を使用することができる。環状ダイの温度は170~220℃とすることが好ましい。また、インフレーションフィルム成形の過程における吹き出しエアリングは特に制限されないが、複数の吹き出しスリットを有するものが好ましい。インフレーションフィルム成形の過程におけるブローアップ比は、好ましくは0.3~10の範囲であり、より好ましくは1~8の範囲である。バブルの安定性を増すために公知のバブル内部冷却装置を用いることもできる。
本発明の樹脂組成物を用いて多層フィルムを製造する場合は、共押出法により、各々の層を直接積層することにより製造される。例えば、バリア層に用いる樹脂と、樹脂層(I)用いるポリオレフィン系樹脂(a)及び環状オレフィン系樹脂(b)と、樹脂層(II)及び樹脂層(III)に用いるポリオレフィン系樹脂とを、それぞれ別の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(III)/(I)/(IV)/(III)の順の位置関係になるよう積層した後、空冷インフレーションや水冷インフレーション、Tダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形にする共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
上記製造方法で製造された多層フィルムは、易引裂性を付与するための一般的な延伸工程などの2次加工を必要とせず、共押出法により製膜加工のみで易引裂性を発現することが特徴である。これは、例えば、上記特定の層構成にて共押出しインフレーション成形により製膜をすると、各々の樹脂層中の環状オレフィン系樹脂がフィルムの流れ方向(MD)に引き伸ばされた状態で冷却固化された分散構造を形成することに起因する。したがって、共押出し時の加工温度下におけるポリエチレン系樹脂と環状オレフィンとの粘度バランスが分散構造に大きく影響するため、特に加工温度に合わせた最適な環状オレフィン系樹脂を選択することが好ましい。例えば、ポリアミド6/66共重合樹脂をバリア層(IV)に用いる場合、共押出法での加工温度は210~250℃程度に達するため、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は比較的高い100℃~140℃であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、さらに、以下の要件を満たしているものであると、より好ましい。
・要件(E):TDの引裂強度が30N/mm以下である
・要件(F):引張弾性率がMD及びTDともに300MPa以上である
要件(E)は、フィルム又はシートの垂直方向(TD)の引裂強度が30N/mm以下であることである。ここでの垂直方向とは、フィルムの流れ方向(MD)に対して垂直であることを意味する。一般にTDの引裂強度はMDの引裂強度より大きくなる傾向にあるので、TDの引裂強度が30N/mmであると、どの方向に対しても引裂強度の小さいフィルムを得ることができる。フィルムの引裂強度は、JIS K7128-2に基づき測定される。引裂強度は、特に下限は制限されないが、上限としては、25N/mm以下であることがより好ましく、20N/mm以下であることがさらに好ましい。
要件(F)は、フィルム又はシートの引張弾性率がMD及びTDともに300MPa以上であることである。引張弾性率が大きいと、フィルム又はシートの強度が高くなるため好ましい。引張弾性率は、JIS K7127に基づき測定される。測定装置は市販のものを用いることができる。
<包装材>
本発明のフィルムからなる包装材としては、食品、薬品、医療器具、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
前記包装袋は、本発明のフィルムの内層同士を重ねてヒートシールすることにより形成した包装袋が挙げられる。2枚のフィルムを、所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填した後、ヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。また、同様に2枚のフィルムを、所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねてパウチ状に製袋した後、開口部より内容物を充填した後、ヒートシールして密封することでスタンディングパウチ包装袋として用いることもできる。さらに、1枚のフィルムを用いて、横ピロー包装、縦ピロー包装の形態でも用いることができる。さらに、フィルムの内層とヒートシール可能な別のフィルムを重ねてヒートシールすることにより包装袋を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA等のフィルムを用いることができる。
本発明のフィルムを用いた包装材には、初期の引裂強度を弱め、開封性を向上するためにVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成すると好ましい。ノッチ等の形成部としては、シール部や包装材の上下端部、左右折り目部、ピロー包装の背張り部等が挙げられる。包装材の形態とノッチ形成部に応じて、ノッチ周囲にノッチを囲むようにして三日月状等の形状のシール部を設けることで、内部の密閉性を確保できる。
また、前記包装容器としては、フィルムを二次成形することにより得られる深絞り成形品(上部に開口部がある底材)が挙げられ、代表的なものとして食品用途の真空包装袋のボトム材やブリスターパックの底材などが挙げられる。このボトム材や底材を密封する蓋材は、ボトム材や底材とヒートシールできるものであれば特に材質は問わないが、双方を同時に引き裂いて開封できることから、本発明のフィルムを蓋材として用いることが好ましい。
上記の二次成形方法としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等が挙げられる。これらの中でも、フィルムあるいはシートを包装機上にてインラインで成形し、内容物を充填できるため真空成形が好ましい。
なお、一般的に包装材の流れ方向(MD)は、充填時や製袋時のライン方向に平行な軸であり、且つ原反フィルムの流れ方向(MD)に対応する。例えば、横ピロー包装材であれば、背張りの長尺方向が包装材の流れ方向(MD)に対応し、且つフィルムの流れ方向(MD)に対応する。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における使用原料は以下に示すとおりであり、物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
<使用原料>
(ポリエチレン系樹脂)
LLDPE1:ノバテック(登録商標)LL UF320(密度0.922g/cm、MFR1.0g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
LLDPE2:ノバテック(登録商標)LL UF421(密度0.926g/cm、MFR0.9g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
LLDPE3:ハーモレックス(登録商標) NF366A(密度0.919g/cm、MFR1.5g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
LLDPE4:ハーモレックス(登録商標) NF444A(密度0.912g/cm、MFR2.0g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
LLDPE5:ハーモレックス(登録商標) NC566A(密度0.918g/cm、MFR3.8g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
LDPE:ノバテック(登録商標)LD LE306(密度0.919g/cm、MFR1.0g/10min、日本ポリエチレン株式会社製)
(変性ポリエチレン)
変性PE1:モディック M522(密度0.920g/cm、MFR1.2g/10min、三菱ケミカル株式会社製)
変性PE2:マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(密度0.920g/cm、MFR3.0g/10min)
(環状オレフィン系樹脂)
COC1:TOPAS(登録商標) 8007F(ガラス転移温度78℃、ポリプラスチックス株式会社製)
COC2:TOPAS(登録商標) 7010F(ガラス転移温度110℃、ポリプラスチックス株式会社製)
COC3:TOPAS(登録商標) 6013F(ガラス転移温度138℃、ポリプラスチックス株式会社製)
COC4:TOPAS(登録商標) 6015S(ガラス転移温度158℃、ポリプラスチックス株式会社製)
(バリア樹脂)
PA6・66:ノバミッド(登録商標) 2030CA(密度1130kg/m、粘度数246cm3/g、DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製)
PA6:ノバミッド(登録商標) 1020(密度1130kg/m、粘度数183cm/g、DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製)
EVOH:ソアノール(登録商標) ET3803RB(密度1.17g/cm、MFR4.0g/10min(210℃、2160g)、エチレンコンテント38mol%、三菱ケミカル株式会社製)
<フィルム成形>
(1)単層空冷インフレーションフィルム成形
成形機:単層インフレーション成形機
押出機:Φ50mm
ダイス:Φ75mm
ダイリップクリアランス:3mm
(2)3層空冷インフレーションフィルム成形
成形機:3種3層インフレーション成形機(プラコー製)
押出機:Φ50mm×Φ55mm×Φ50mm
ダイス:Φ200mm
ダイリップクリアランス:3mm
(3)共押出5層空冷インフレーションフィルム成形
成形機:5種5層空冷インフレーション成形機(株式会社プラコー製)
押出機:φ40mm×5機
ダイス:φ150mm(スタックダイ)
ダイリップクリアランス:3mm
(4)共押出多層Tダイ成形
成形機:3種5層Tダイ成形機(クリエイトプラスチック株式会社製)
押出機:Φ30mm×Φ30mm×Φ40mm
ダイス幅:300mm
ダイリップクリアランス:1.0mm
ニップロール:金属ロール
<物性評価方法>
(1)粘度
JIS K7199を参考にし、以下の装置を用いて溶融粘度を測定した。得られた溶融粘度のうち、せん断速度24/sの値を用いた。
装置:キャピログラフ1B(株式会社東洋精機製作所製)
オリフィス長さ:10mm
オリフィス径:1mm
バレル径:9.55mm
オリフィス流入角:フラット
測定温度:190℃~250℃
(2)欠点数
各樹脂組成物において、以下、成形機を用いて50μmのTダイフィルムを成形し、光学カメラを用いて欠点数をカウントした。
成形機:短軸Tダイ成形機
押出機:Φ32mm
ダイス幅:300mm幅
欠点検出器:OCS社FSA100
(3)貯蔵弾性率E´
各樹脂組成物において、以下条件にて、プレスシートを調整し、固体粘弾性を測定した。
(プレスシート調整)
加熱条件:温度190℃、圧力10MPa、時間5min
冷却条件:温度25℃、圧力10MPa
(固体粘弾性測定)
測定装置:動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000
測定モード:引っ張り
波形:正弦波
試験片幅:5mm
測定周波数:1Hz
測定モード:温度依存性
昇温速度:5℃/min
(4)C=O値
各樹脂組成物において、以下条件にて、プレスシートを調整し、赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルの結果から、合計のC=O値を算出した。
(プレスシート調整)
加熱条件:温度180℃、時間1min
(赤外吸収スペクトル測定)
測定装置:FT-IR 6100(日本分光株式会社製)
測定法:透過法
合計のC=O値:以下の式より算出した。
合計のC=O値=(I+I)/I
:1790cm-1の吸収のピーク高さ
:1710cm-1の吸収のピーク高さ
:4250cm-1の吸収のピーク高さ
(5)引張弾性率
JIS K7127に基づき、以下の装置を用いて引張弾性率を評価した。
装置:テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製)
試験片幅:10mm
チャック間距離:100mm
引張速度:25mm/min
測定環境:温度23℃、湿度50%
(6)エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128-2に基づき、以下の装置を用いてエルメンドルフ引裂強度を評価した。なお、測定方向はフィルムの流れ方向に対するその垂直方向(TD)の値である。
装置:デジタルエルメンドルフ引裂試験機 型式SA(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
<実施例及び比較例 樹脂組成物>
表1に記載の通りの配合割合で各原料を用いて、実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-5の樹脂組成物を調整した。比較例1-3~1-5以外は溶融混錬し、調整した。
各樹脂組成物の配合割合、各種物性を表1に、総合的な評価結果を表2に示す。なお、表1における樹脂組成物の配合割合は、重量%である。
Figure 0007456197000002
Figure 0007456197000003
<実施例及び比較例 フィルム物性>
(実施例2-1)
上記(1)の成形方法にて、樹脂組成物A1のインフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は180℃、ブロー比は2.0、厚みは50μmとした。
(実施例2-2)
上記実施例2-1と同様の条件で、樹脂組成物A4のインフレーションフィルムを得た。
(実施例2-3)
上記実施例2-1と同様の条件で、樹脂組成物A6のインフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は190℃とした。
(比較例2-1)
上記(1)の成形方法にて、樹脂組成物B1のインフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は180℃、ブロー比は2.0、厚みは50μmとした。
(比較例2-2)
上記比較例2-1と同様の条件で、樹脂組成物B3のインフレーションフィルムを得た。
(比較例2-3)
上記比較例2-1と同様の条件で、樹脂組成物B4のインフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は190℃とした。
(比較例2-4)
上記比較例2-3と同様の条件で、樹脂組成物B5のインフレーションフィルムを得た。
(実施例2-4)
上記(2)の成形方法にて、LLDPE2/樹脂組成物A1/LLDPE2の3層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は190℃、ブロー比は2.0、層比は1/1/1、厚みは50μmとした。
(実施例2-5)
実施例2-4と同様の条件で、LLDPE2/樹脂組成物A4/LLDPE2の3層インフレーションフィルムを得た。
(実施例2-6)
実施例2-4と同様の条件で、LLDPE2/樹脂組成物A4/LLDPE2の3層インフレーションフィルムを得た。なお、層比は2/1/2とした。
(実施例2-7)
実施例2-4と同様の条件で、LLDPE3/樹脂組成物A6/LLDPE3の3層インフレーションフィルムを得た。
(比較例2-5)
上記(2)の成形方法にて、LLDPE2/樹脂組成物B1/LLDPE2の3層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は190℃、ブロー比は2.0、層比は1/1/1、厚みは50μmとした。
(実施例2-8)
上記(3)の成形方法にて、LLDPE4/樹脂組成物A5/PA6・66/樹脂組成物A5/LLDPE4の5層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度はPA6・66では245℃、LLDPE4及び樹脂組成物A5では200℃とした。また、ブロー比は1.4、各層厚み比は30/10/10/10/30、厚みは90μmとした。
(実施例2-9)
上記(3)の成形方法にて、LLDPE4(80)+LDPE(20)/樹脂組成物A5/EVOH/樹脂組成物A5/LLDPE4(80)+LDPE(20)の5層インフレーションフィルムを得た。括弧内の数値は、オレフィン系樹脂の配合割合(重量%)である。なお、加工温度は210℃とした。また、ブロー比は1.8、各層厚み比は43/8/8/8/43、厚みは110μmとした。
(実施例2-10)
上記(4)の成形方法にて、LLDPE5/樹脂組成物A3/PA6/樹脂組成物A3/LLDPE5の5層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は、PA6は260℃、LLDPE4は200℃、樹脂組成物A3は230℃とした。また、各層厚み比は20/10/10/10/20、厚みは70μmとした。
(比較例2-6)
上記(3)の成形方法にて、LLDPE4/樹脂組成物B4/PA6・66/樹脂組成物B4/LLDPE4の5層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度はPA6・66は245℃、LLDPE4及び樹脂組成物A5は200℃とした。また、ブロー比は1.4、各層厚み比は30/10/10/10/30、厚みは90μmとした。
(比較例2-7)
上記(3)の成形方法にて、LLDPE4(80)+LDPE(20)/樹脂組成物B4/EVOH/樹脂組成物B4/LLDPE4(80)+LDPE(20)の5層インフレーションフィルムを得た。なお、加工温度は210℃とした。また、ブロー比は1.8、各層厚み比は47/4/8/4/47、厚みは110μmとした。
各々の実施例、比較例における、フィルムの構成、引張弾性率及びエルメンドルフ引裂強度の測定結果を、表3~5に示す。
Figure 0007456197000004
Figure 0007456197000005
Figure 0007456197000006
<評価>
先に説明したとおり、要件(A)に係るアレニウスプロットの傾きは、粘度の温度依存性の大きさを意味している。アレニウスプロットの傾きが大きいほど、得られたフィルムの易引裂性が優れる。一方でこの傾きが大きすぎると光学欠点数が増え、外観が悪化する可能性があるため、フィルムの易引裂性と外観を両立させるためには、ある一定の範囲内に収めることが好ましい。また、樹脂組成物の貯蔵弾性率が高いと、フィルム自体の弾性率が向上するだけでなく、より優れた易引裂性を発現しやすい。
以上を踏まえると、表1の結果からも明らかなように、比較例1-1~1-4の樹脂組成物B1~B4は光学欠点数においては優れているが、アレニウスプロットの傾きが小さく、貯蔵弾性率も低い。また、比較例1-5の樹脂組成物B5については、アレニウスプロットの傾きが大きく、貯蔵弾性率も高いが、光学欠点数が劣る。表2の結果においては、樹脂組成物B1、B3、B4を用いたフィルムはTDの引裂強度が大きく、易引裂性に劣る。また、樹脂組成物B5を用いたフィルムはTDの引裂強度が小さく、易引裂性に優れるものの、上述の通り、光学欠点数が多く、外観に劣る。
一方で本発明に基づく、実施例1-1~1-6の樹脂組成物A1~A6については、表1から明らかなとおり、アレニウスプロットの傾きが大きく、貯蔵弾性率も高い。その結果、表2及び表3に示した結果の通り、フィルムとした際の、TDの易引裂性に優れるだけでなく、フィルムの弾性率も高い。さらには、樹脂組成物としての光学欠点数も少ないため、フィルムの外観にも優れる。この傾向は、多層フィルムとしたときの表4及び表5の結果においても見られる。
以上より、本発明に基づく樹脂組成物は易引裂性及び光学欠点数に優れ、当該樹脂組成物を用いたフィルム及びシートは易引裂性及び外観に優れている。本発明の樹脂組成物は、易開封性が要求される易引裂性フィルム及び包装材に好適である。

Claims (9)

  1. 少なくともポリオレフィン系樹脂(a)20~80重量%と環状オレフィン系樹脂(b)20~80重量%から構成され、
    前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン系樹脂を含み、
    赤外分光法にて見積もられる、4250cm -1 の吸光度に対する1790cm -1 及び1710cm -1 の吸光度の和の比が0.2以上であり、以下要件を満たす、樹脂組成物。
    ・要件(A):フローカーブ測定より得られるせん断速度24S-1における粘度において、縦軸に粘度の自然対数(ln(粘度)(Pas))、横軸に1000/T(K-1)をとったアレニウスプロットより得られる直線近似式の傾きが、4.0以上~7.0以下である。
    ・要件(B):厚み50μmのフィルムとしたときの、大きさが100μm以下である欠点のカウント数が5000個/m以下である。
    ・要件(C):固体粘弾性にて得られる30℃における貯蔵弾性率E’が4.0×10Pa以上である。
    ・要件(D):環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が60℃以上である。
  2. ポリオレフィン系樹脂(a)がポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、分岐状ポリエチレン系樹脂(c)をポリオレフィン系樹脂(a)の総量に対して0重量%より大きく、50重量%以下の量で含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. 環状オレフィン系樹脂(b)のガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1~のいずれか一項記載の樹脂組成物を主成分とする樹脂層を有する、易引裂性フィルム。
  6. さらに、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層が少なくとも2層積層されている、請求項に記載の易引裂性フィルム。
  7. さらにバリア層が少なくとも1層積層されている、請求項5又は6に記載の易引裂性フィルム。
  8. 前記樹脂層が、前記バリア層の少なくとも一方に隣接して積層されている、請求項に記載の易引裂性フィルム。
  9. 請求項1~のいずれか一項記載の樹脂組成物を用いて得られ、さらに以下の要件を満たす、易引裂性フィルム。
    ・要件(E):フィルムの流れ方向(MD)に対しての垂直方向(TD)の引裂強度が30N/mm以下
    ・要件(F):引張弾性率がフィルムの流れ方向及び垂直方向ともに300MPa以上
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