関連出願の相互参照
本出願は、2007年7月2日に出願され、「位相器用のスプール内に逆止弁を備えた同心カム(CONCENTRIC CAM WITH CHECK VALVES IN THE SPOOL FOR A PHASER)」と題した仮特許出願第60/947,470号、および2008年4月2日に出願され、「位相器用のスプール内に逆止弁を備えた同心カム(CONCENTRIC CAM WITH CHECK VALVES IN THE SPOOL FOR A PHASER)」と題した仮特許出願第61/041,663号に開示した1つまたは複数の発明に対する優先権を主張するものである。本明細書では、米国特許法第119条(e)に基づいて米国仮特許出願の利益を主張し、上記の出願は、参照により本明細書に援用するものとする。
本発明は、同心カムシャフトの分野に関する。より詳細には、本発明は、カムトルク駆動型位相器用のスプール内に逆止弁を備えた同心カムに関する。
カムシステム内のカムは、従来から公知である。先行技術による、カムシステム内のカムでは、カムシャフトは2つのシャフトを有し、一方のシャフトはもう一方の内部に配置される。シャフトは、限定された軸方向距離にわたって、一方が他方の内部にある状態で支持され、互いに対して回転可能である。
米国特許第5,165,303号明細書および米国特許5,577,420号明細書は、内側カムが内側シャフトに保持され、カム山がスロットを通って内側および外側シャフトを貫通する、カムシステム内のカムを開示している。外側シャフトは、内側シャフトに連結されたカム山の基礎円カム面を形成する。
先行技術の米国特許第5,165,303号および米国特許5,577,420号とは異なり、両方のカムセットは、外側シャフトのまわりに回転可能であるか、または内側シャフトではなく外側シャフトに固定され、第1のカムセットの山部は、第2のシャフトのスロットを貫通せず、第2のシャフトは、第1のカムセットの山部分用の基礎円カム面を形成する手段を有さない。
米国特許第5,664,463号明細書は、外側シャフトが個別の長手部分を有し、これら長手部分が互いに連結されたシステムを開示している。内側カムは、第1の密着嵌合手段によって内側シャフトに連結され、外側カムは、第2の密着嵌合手段によって他方のシャフトに連結される。内側カムは、円弧状に広がり、外側シャフトの軸方向指状突起部分が入り込むスロットを形成する。
本発明は、個別の長手部分や軸方向指状突起部分を備えた外側シャフトを有さず、内側カムがスロットを形成することもない。
米国特許第6,725,817号明細書は、外側スリーブまたはチューブによって囲まれた内側シャフトを含むカムシャフトアセンブリを開示しており、その外側チューブは、限定された角度間を内側シャフトに対して回転できる。1つのカムセットは外側チューブに直結される。第2のカムセットは、外側チューブのまわりに自由に支持され、外側チューブにある接線方向に細長いスロットを貫通するピンによって内側シャフトに連結される。内側シャフトの端部はエンジン前端で突出し、可変位相駆動スプロケットを内蔵する駆動スプロケットを担持する。
可変位相駆動スプロケットの駆動機構は、エンジンクランクシャフトとともに回転するように連結可能な駆動部材と、それぞれのカムセットとともに回転するようにそれぞれ連結可能な2つの被動部材とを含む。被動部材はそれぞれ、ベーンタイプの油圧式連結器によって、駆動部材とともに回転するように連結される。油圧式連結器は、他の駆動部材から独立した駆動部材に対して、各被動部材の角度位置を変えることができるようなものとされる。言い換えると、カム内包カムシステムは、2つの位相器を備えている。
本発明は、単に、ベーンタイプの油圧式連結器を用いて駆動部材とともに回転するように連結された1つの被動部材を有するに過ぎず、1つの被動部材は固定される。被動部材を互いに独立して調整することはできない。
米国特許第6,725,818号明細書は、外側チューブ内に支持された内側駆動シャフトを含むカムシャフトを開示している。一部のカムは、外側チューブとともに回転するようにこれに直接取り付けられ、他のカムは、外側チューブのまわりに自由に回転することができ、回転できるようにするために、外側チューブの穴を貫通する中空ピンによって内側駆動シャフトに連結される。
第1の実施形態では、連結ピンは2つの異なる直径で形成され、ピンの中央部分の直径は、2つの端部の直径よりも小さい。
第2の実施形態では、連結ピンの穴にねじ込まれて、内側駆動シャフト内の所定の位置にピンを固定する要素上に、テーパ付きねじまたは締まりばめねじが形成される。
第3の実施形態では、1つまたは複数の球状の要素が連結ピンの穴に押し込まれて、内側駆動シャフトの穴に当たるまで連結ピンを拡張する。
第4の実施形態では、連結ピンは、これに押し通される心棒を有し、この心棒は、連結ピンの中央部分がその弾性限界を超えて拡張され、したがって、心棒を取り除いた後、内側駆動シャフト内で締まりばめとなるような寸法とされる。
本発明では、連結ピンは、密着嵌合ではなく、すき間ばめとなるような寸法とされる。本発明のピンは、先行技術の米国特許第6,725,818号とは異なり、内径は一定であり、直径が小さい領域は存在しない。さらに、本発明は、ピンを拡張するために、直径がより大きい要素をピンに挿入することはない。
米国特許出願公開第2005/0279302号明細書では、クランクシャフトによって駆動されるベーンタイプの位相器が、第1の単一カム位相器カムシャフトの内側シャフトおよび外側チューブを駆動し、この外側チューブは、第2の単一カム位相器カムシャフトの内側シャフトおよび外側チューブとともに回転するように駆動連結器によって連結される。駆動連結器は噛み合い歯車である。位相器が、両方のカムシャフトの内側シャフトと外側チューブとをともに変化させてもよく、またはベーンタイプの個々の単一位相器がそれぞれ、トルクを第1および第2のカムシャフトに伝達してもよい。
第1および第2のカムシャフトはそれぞれ、2つの内側シャフトに直接形成されたカムと、2つの外側チューブに形成された他のカムとを有する。外側チューブとともに回転するカムは、熱収縮によって外側チューブに連結されるカラーを有し、内側シャフトとともに回転するカムは外側チューブに緩く嵌合され、外側チューブにある円周方向に細長いスロットを貫通するピンによって、内側シャフトに連結される。
本発明は、第1のカムシャフト上の各カム山グループが同時に回転し、第2のカムシャフト上の対応するカム山グループを備えた第2のカムシャフトを駆動するのを確実にするために駆動連結器を使用することはない。
米国特許出願公開第2006/0185471号明細書は、内側シャフトと、内側シャフトを囲み、これに対して回転可能な外側チューブとを含むカムシャフトを開示している。2つのカム山グループは外側シャフトに取り付けられ、一方のグループは外側チューブに固定されて回転し、他方のグループは外側チューブに回転可能に取り付けられ、外側チューブのスロットをすき間をもって貫通するピンによって、内側シャフトとともに回転するように連結される。外側チューブに回転可能に取り付けられたスリーブは、外側チューブにある円周方向に延びるスロットをすき間をもって貫通するピンによって、内側シャフトを駆動するように連結される。
本発明では、スリーブが外側スリーブに回転可能に取り付けられることは全くなく、したがって、内側シャフトを駆動するために、スリーブを内側シャフトに連結することができない。
米国特許出願公開第2006/0207538号明細書は、内側シャフトおよび外側チューブで形成されるカムシャフトを開示しており、内側シャフトおよび外側シャフトはともに、それぞれのカムグループとともに回転する。内側シャフトおよび外側チューブを駆動する駆動列は、クランクシャフトの位相に対して少なくとも1つのカムグループを変化させる位相器を含む。位相器は外側チューブの前端に固定され、内側シャフトは、駆動部材によって位相器の前側に連結される。
本発明の位相器は、位相器の前側に配置された部品によってクランクシャフトの前端部に取り付けられることはない。本発明はまた、位相器を外側チューブ上で軸方向に保持する部品上にあり、カムシャフトの内側シャフトとともに回転するように位相器の前側を連結する駆動部材を含まない。
国際公開第2006/000832号パンフレットは、エンジンクランクシャフトに対して、カムシャフトの位相をシフトする位相器を開示している。位相器は、油圧で駆動してもよく、または弁機構の反作用トルクの反転を利用してもよい。カムシャフトは、位相シフトされる(phased)回転部材として機能する、シリンダヘッドのベアリングに支持された外側チューブを有し、位相シフトされる(phased)すべてのカムを担持する。外側チューブは、トルクを補助装置に伝達するように機能する、位相シフトされない(unphased)回転部材に相当する内側シャフトを支持する。
代替の実施形態では、カムシャフトは、内側シャフトを支持する、ジャーナル支持された外側チューブを含む。一部のカムのみが外側チューブに取り付けられて、これとともに回転する。残りのカムは外側チューブのまわりに回転し、外側チューブにある接線方向に細長いスロットを貫通するピンによって、内側シャフトとともに回転するように連結される。ピンがカム山を貫通するのを回避するために、内側シャフトとともに回転するカムはそれぞれ、ピンを受け入れる環状の延長部を形成される。
両方の実施形態では、位相器を使用して、カムシャフトの位相シフトされる部材、すなわち外側チューブを駆動する。
本発明では、補助装置は、クランクシャフトからカムシャフトの第1の回転部材、すなわち内側シャフトを通って伝達されるトルクによって駆動されるように連結されることはなく、しかも、存在さえ全くしない。
国際公開第2006/067519号パンフレットは、駆動部材および被動部材を備えた位相器を開示している。駆動部材は、軸方向両端部で開放された少なくとも1つのアーチ形空洞を設けたディスクを含む。被動部材は、軸方向端部でアーチ形空洞を封鎖する閉鎖プレートと、閉鎖プレートから独立して形成された少なくとも1つのベーンとを含む。ベーンは空洞内に移動可能に収容され、空洞を2つのチャンバに分割する。各ベーンは、その軸方向両端部で閉鎖プレートによって固定される。
位相器は、内側シャフトおよび外側シャフトを含むカムシャフトアセンブリに取り付けられる。外側シャフトは、ディスクに形成された雌ねじと係合可能な、ねじが切られた端部を有する。内側シャフトは、閉鎖プレートの軸方向preを貫通し、閉鎖プレートを内側シャフトの軸方向端部に固定するように働くボルトのねじ部が係合する雌ねじを有する。外側シャフトは、被動部材、すなわちディスクとともに回転し、内側シャフトは、駆動部材、すなわち閉鎖プレートとともに回転する。様々なカムグループが各シャフトとともに回転するように固定される。位相器は、クランクシャフトに対して一部のカムの位相を変化させ、他のカムは、常にクランクシャフトと同じ位相で回転する。
本発明では、ベーンは、軸方向の両端部で2つの閉鎖プレートまたは端部プレートに固定されることはなく、ベーン位相器にとっては従来どおり、ロータと一体で形成される。
国際公開第2006/97767号パンフレットは、内側シャフトと、内側シャフトを囲み、これに対して回転可能な外側チューブとを含むカムシャフトアセンブリを開示している。2つのカム山グループが外側シャフトに取り付けられ、一方のグループは外側チューブに固定されて回転し、他方のグループは、外側チューブに回転可能に取り付けられ、内側シャフトとともに回転するように連結される。内側シャフトとそれに付属するカム山グループとの間の大きな製造誤差を補償するようにその位置を調整できる駆動部材が、カム山と内側シャフトとを連結する。
本発明では、内側シャフトをカムに連結する駆動部材は、内側シャフトとそれに付属するカム山グループとの間の大きな製造誤差を補償するために調整することができない。
米国特許出願公開第2006/0207529号明細書は、内側シャフトと、内側シャフトを囲み、これに対して回転可能な外側チューブとを含むカムシャフトアセンブリを開示している。2つのカム山グループは外側シャフトに取り付けられ、一方のグループは外側チューブに固定されて回転し、他方のグループは外側チューブに回転可能に取り付けられ、外側チューブのスロットをすき間をもって貫通するピンによって、内側シャフトとともに回転するように連結される。角度範囲の一方の極値に向かって、外側チューブに対して内側シャフトを付勢するために、スプリングがカムシャフトアセンブリに組み込まれる。位相器は、従来のフランジ付きボルト装置によってカムシャフトアセンブリに取り付けられる。
本発明では、カムシャフトアセンブリの内側チューブは位相器を完全に貫通して、スプール制御弁用のスリーブとして機能し、外側チューブはスプロケットの延長部に固定される。本発明では、従来のフランジ付きボルト装置を使用して、位相器をカムシャフトアセンブリに取り付けることはない。
独国特許第39 43 426号明細書は、一方が他方に内包された2つのシャフト要素を備えたカムシャフトを開示し、シャフト要素はどちらも互いに対して移動できる。第1のカム要素は内側シャフトに連結され、第2のカム要素は外側シャフトに連結される。外側シャフトは、第1のカム要素を内側シャフトに連結するピンを受け入れる開孔を有する。カムは、片側だけでなく、カムの両側で(すなわち、1つの穴を貫通する)ピンによって固定される。
本発明では、ピンは、外側チューブを貫通する2つのスロットを通って、内側シャフトおよび外側チューブのスロットを完全に貫通する。
内燃機関用のカムシャフトアセンブリは、その長さ方向に沿って複数のスロットを設けた中空の外側シャフトと、その長さ方向に沿って複数の穴を設けた内側シャフトとを有する。内側シャフトの穴は、外側シャフトのスロットと整列する。第1のカム山セットは外側シャフトに固定され、第2のカム山セットは、すき間ばめの形で外側シャフトのスロット上に置かれる。1つの手段は、第2のカム山セットを内側シャフトに固定し、同時に、第2のカム山セットが外側シャフトに対してすき間ばめになるのを可能にする。第2のカム山セットを内側シャフトに固定する手段は、液圧成形される中空ピンか、またはねじ付きロッドを挿入し、引っ張り、取り出すことによって拡張されるリベットインサート(rivet insert)とすることができる。
カムシャフトアセンブリは位相器に取り付けられる。位相器は、ハウジング、ロータ、制御弁、およびアクチュエータを含む。ハウジングは、駆動力を受ける外周部を有する。ロータはハウジング内に同軸で配置され、カムシャフトアセンブリにある内側シャフトの端部に固定して取り付けられる。ハウジングおよびロータは、ハウジング内のチャンバを分割する少なくとも1つのベーンを画定する。ベーンは、ハウジングとロータの相対角度位置をずらすために回転することができる。
内側シャフトの端部の穴は、制御弁の複数のランドを備えたスプールをスライド可能に受け入れるスリーブを内包する。スプールは、流体を位相器のチャンバに向ける。穴の端部のスリーブは、スプールのポートと一列に整列する環状路を有する。ベーンは、ハウジングとロータの相対角度位置をずらすために回転することができる。
位相器に固定されるカムシャフトアセンブリを組み立てる方法も開示される。
位相器を備えたカムシステム内のカムの概略図を示している。
同心カムシャフトに取り付けられた位相器の拡大図を示している。
同心カムシャフトの、位相器とは反対側の端部の拡大図を示している。
図1の4−4線に沿った断面図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に第2の実施形態の機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定する前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に、ロッドが付いた第2の実施形態の機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定する前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
ロッドをねじって抜く前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定した後の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に第3の実施形態の機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定する前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に第4の実施形態の機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定する前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
内側シャフトと外側シャフトとの間に第5の実施形態の機械式連結器を備えた、機械式連結器を同心カムシャフトの内側シャフトに固定する前の同心カムシャフトの端部の拡大図を示している。
位相器を備えたカムシステム内のカムに関する本発明の第6の実施形態の概略図を示している。
内燃機関は、エンジン性能を改善したり、排出物を削減したりするのに、カムシャフトとクランクシャフトとの間の角度を変える種々の機構を採用してきた。これら可変カムシャフトタイミング(VCT)機構の大部分は、エンジンカムシャフト(または多重カムシャフトエンジンの複数のカムシャフト)にある1つまたは複数の「ベーン位相器」を使用する。ほとんどの場合、位相器は、カムシャフトアセンブリの端部に取り付けられ、ベーンが収まるベーンチャンバのあるハウジングによって囲まれた、1つまたは複数のベーンを備えたロータを有する(図示せず)。ベーンをハウジングに取り付け、さらにチャンバをロータに設けることも可能である。ハウジングの外周の一部は、通常はクランクシャフトから、あるいは多重カムエンジンでは別のカムシャフトから、チェーン、ベルト、またはギヤを介して駆動力を受けるスプロケット、プーリ、またはギヤを形成する。図1は、位相器に取り付けられた本発明のカムシャフトアセンブリ40を示している。
カムシャフトアセンブリ40は、内側シャフト4および外側シャフト2を有する。外側シャフト2は中空とされ、回転軸に対して垂直に延びる複数のスロット2aを有し、外側シャフト2の外側に取り付けられたスプロケット14aを有する。スプロケット14aは、外側シャフト2の端部から張り出していて、唯一のベアリング14bを形成し、内側シャフト4と外側シャフト2とがぶつかり合うのを防止する。内側シャフト4および外側シャフト2は、互いに接触するように機械加工されてはいない。中空の外側シャフト2の内部には、シャフトの長さ方向に対して垂直に延びる複数の穴4aを設けた中空の内側シャフト4がある。一方の端部で、位相器30のロータ10が内側シャフト4に強固に取り付けられている。内側シャフト4は、内側シャフト4の穴4aが外側シャフト2のスロット2aと整列するように、外側シャフト2内に配置されている。
第1のカム山セット6は、外側シャフト2に強固に取り付けられ、第2のカム山セット8は自由に回転でき、すき間ばめの形で外側シャフト2上に置かれている。第2のカム山セット8は、外側シャフト2のスロット2a上に配置され、機械式連結器を介して内側シャフト4によって制御される。
第1の実施形態では、中空ピン22は機械式連結器であり、内側シャフト4との連結を形成しながら、スリップ嵌合されたカム山、すなわち第2のカムセット8を外側シャフト2上の所定の位置に保持するために使用される。初期組立時、ピン22は、カム山8、内側シャフト4、および外側シャフト2に対してすき間ばめとなっている。ピン22は、カム山フランジの穴8aから挿入され、次いで、外側シャフト2のスロット2aおよび内側シャフト4の穴4aに通され、続いて回転軸を通ってカム山の外側に至る。ピン22が所定の位置に配置されると、ピンの一端にプラグが挿入され、ピンの中央部22aが液圧成形される。このとき、圧力がかかった流体がピンの他方の側からピンの中央部に送られ、ピンの中央部22aを内側シャフト4内で膨らませる。なお、ピンの中央部が膨張することのみを許容し、ピンを破裂させないように圧力を制限するべきである。ピン22のうちの内側シャフト4を越えてカム山8を貫通する部分22cは変形しないので、ピン22は、外側シャフト2および移動可能なカム山に対してそのすき間ばめを維持する。次いで、プラグと、流体をピンの中央部に注入する手段とを取り外す。すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、図2および図3に示すように、ピン22に対して軸方向を前後に浮動またはスライドする。あるいは、中空ピンを用いた液圧成形プロセスの代わりに、締まりばめピンを使用することもできる。
製造上の公差があることから、すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、ピン22に対して軸方向を前後に浮動またはスライドできなければならない。カム山8がピン22に堅固に固定され、浮動できない場合、カム山を外側シャフト2に強固に付着させる、外側シャフトへの結合問題が起こり得る。固定されたカム山、すなわち第1のカムセット6は、溶接などの方法を使用して、外側シャフト2に締まりばめされる。すべてのカム山6、8を外側シャフトに載せる、または取り付けることは、シャフトとカム山との間の振れの問題を軽減するのに寄与する。移動可能なカム山が内側シャフトに載っている場合、2つのシャフト2、4間の振れは致命的であろう。
第2の実施形態では、リベットインサート52が、内側シャフト4との連結を形成しながら、スリップ嵌合されたカム山、すなわち第2のカムセット8を外側シャフト2上の所定の位置に保持するために使用される機械式連結体となる。リベットインサート52は、第1の端部にあるヘッド52dとともに、円筒状の中空胴体部またはチューブ52aを有する。第1の端部とは反対側の第2の端部の近くには、ねじが切られた部分52bがある。ねじが切られた部分は、図5〜11に示すように、中空胴体部の内部に設けることができる。初期組立時、リベットインサート52の中空胴体部52aは、カム山8、内側シャフト4、および外側シャフト2に対してすき間ばめされている。リベットインサート52は、カム山フランジの穴8aから挿入され、外側シャフト2のスロット2aおよび内側シャフト4の穴4aに通され、続いて回転軸を経てカム山8の外側に至り、リベットインサート52のヘッド52dがカム山8と接触して同一平面内に収まるまで通される。図5に示すように、ピンが所定の位置に配置されると、ねじ付きロッド54を中空胴体部52aに挿入し、ロッド54の外周にあるねじ部54bをリベットインサート52の中空胴体部52aにあるねじ部52bと係合させる。ねじ付きロッド54がリベットインサート52のねじ部と適切に係合すると、ねじ付きロッド54をリベットインサート52の中から外に出す方向に、またはリベットインサート52から離れる方向に引っ張って、中空の内側シャフト4内に存在する、リベットインサート52の中空胴体部52aを単に外側に座屈、または拡張させ、図6に示すように、リベットインサートを所定の位置にロックする。リベットインサート52は所定の位置に堅固に保持され、一方、ねじ付きロッド54は、ホルダ53によってリベットインサートから外に、または離れる方向に引っ張られる。次いで、図7に示すように、ねじ付きロッド54をねじって外し、リベットインサート52から取り出す。中空インサートのうちの、内側シャフト4を越えてカム山8を貫通する部分は変形しないので、リベットインサート52は、引き続き外側シャフト2に対してすき間ばめとなっている。すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、図8に示すように、変形されないリベットインサートの部分52cに対して、軸方向を前後に浮動またはスライドする。
リベットインサートおよびねじ付きロッドは、同心カムシャフトに同時に挿入されてもよく、または上記のように別々に挿入されてもよい。
図9は、第3の実施形態の機械式連結器を示している。リベットインサート62は、内側シャフト4との連結を形成しながら、スリップ嵌合されたカム山、すなわち第2のカムセット8を外側シャフト2上の所定の位置に保持するために使用される。リベットインサート62は、第1の端部にあるヘッド62dとともに、円筒状の中空胴体部またはチューブ62aを有する。第1の端部とは反対側の第2の端部の近くには、ねじが切られた部分62bがある。ねじが切られた部分62bは、中空胴体部62aの内部に存在する。内側シャフト4の中空部内に整列する弱体化部分62eも中空胴体部62aの内部に存在する。弱体化部分62eは、切れ目、スロット、またはリベットインサートを弱体化する他の任意の手段とすることができる。リベットインサートは、図5〜8を参照して上記に説明したように組み立てられるので、すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、変形しないリベットインサート部分62cに対して軸方向を前後に浮動またはスライドする。
図10は、第4の実施形態の機械式連結器を示している。リベットインサート72は、内側シャフト4との連結を形成しながら、スリップ嵌合されたカム山、すなわち第2のカムセット8を外側シャフト2上の所定の位置に保持するために使用される。リベットインサート72は、第1の端部にあるヘッド72dとともに、円筒状の中空胴体部またはチューブ72aを有する。第1の端部とは反対側の第2の端部の近くには、ねじが切られた部分72bがある。ねじが切られた部分は、中空胴体部72aの内部に存在する。内側シャフト4の中空部内に整列する弱体化部分72eは、中空胴体部62aの外周に存在する。弱体化部分72eは、切れ目、スロット、またはリベットインサートを弱体化する他の任意の手段とすることができる。リベットインサートは、図5〜8を参照して上記に説明したように組み立てられるので、すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、変形しないリベットインサート部分72cに対して軸方向を前後に浮動またはスライドする。
図11は、第5の実施形態の機械式連結器を示している。リベットインサート82は、内側シャフト4との連結を形成しながら、スリップ嵌合されたカム山、すなわち第2のカムセット8を外側シャフト2上の所定の位置に保持するために使用される。リベットインサート82は、第1の端部にあるヘッド82dとともに、円筒状の中空胴体部またはチューブ82aを有する。第1の端部とは反対側の第2の端部の近くには、ねじが切られた部分82bがある。ねじが切られた部分82bは、中空胴体部82aの内部に存在する。内側シャフト4の中空部内に整列する弱体化部分82e、82fは、中空胴体部82aの内部と中空胴体部82aの外周とに存在する。弱体化部分82e、82fは、切れ目、スロット、またはリベットインサートを弱体化する他の任意の手段とすることができる。リベットインサートは、図5〜7を参照して上記に説明したように組み立てられるので、すき間ばめされたカム山、すなわち第2のカム山8は、変形しないリベットインサート部分82cに対して軸方向を前後に浮動またはスライドする。
内側シャフトの中空部に存在する中空胴体部分の座屈量は、ロッドをインサートから取り出す前に、ねじ付きロッドがどのくらい引っ張られたかによって決まる。
カムトルク駆動型位相器のみが図面に示されているが、カムシャフトアセンブリ40に取り付けられた位相器30は、油圧駆動型(OPA)位相器や、単一逆止弁のトーションアシスト型(TA)の場合には、「制御部がロータ内に配置されたトーションアシスト型多重位置カムインデクサ(TORSIONAL ASSISTED MULTI−POSITION CAM INDEXER HAVING CONTROLS LOCATED IN ROTOR)」と題して2005年4月26日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,883,481号明細書、および/または逆止弁が2つのTAについて開示した、「チャンバとスプール弁との間のロータ内に2つの逆止弁を有するエンジン用のカム位相器(CAM PHASER FOR ENGINES HAVING TWO CHECK VALVES IN ROTOR BETWEEN CHAMBERS AND SPOOL VALVE)」と題して2004年7月20日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,763,791号明細書に開示されたトーションアシスト型(TA)位相器や、「内燃機関用の可変カムシャフトタイミング(VARIABLE CAMSHAFT TIMING FOR INTERNAL COMBUSTION ENGINE)」と題して1992年4月28日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第5,107,804号明細書に開示されたカムトルク駆動型(CTA)位相器や、「カムねじり力が小さいエンジン状態で駆動するために比例油圧を併用するCTA位相器(CTA PHASER WITH PROPORTIONAL OIL PRESSURE FOR ACTUATION AT ENGINE CONDITION WITH LOW CAM TORSIONALS)」と題して2005年11月23日に出願され、参照により本明細書に援用される特許出願第11/286,483号明細書に開示された複合型位相器および「カムねじり力が小さいエンジン状態で駆動するために比例油圧を併用するCTA位相器(CTA PHASER WITH PROPORTIONAL OIL PRESSURE FOR ACTUATION AT ENGINE CONDITION WITH LOW CAM TORSIONALS)」と題して2005年11月23日に出願され、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0086332号明細書に開示された複合型位相器とすることができる。
位相器30は、シャフト2、4の位相を互いに対して調整する。カムシャフトアセンブリ40の内側シャフト4の端部は、位相器30の制御弁20のスプールを受け入れるスリーブを形成する穴を有する。内側シャフト4は、制御弁20のスプールの調量スロット20cと整列する環状路4bを有する。環状路4bに加えて、流体が環状路を通過する内側シャフトには、ロータ10内の流路に通じ、オイルがチャンバに向かったり戻ったりするのを可能にする幾つかの穴がある(図示せず)。プラグ24は、内側シャフト4に押しつけられ、制御弁20用のストッパを形成し、制御弁スプリング23を捕捉する。プラグ24の貫通穴23aがあるのは、制御弁20の後部に出口を与え、弁が油圧でロックされるのを防止できるようにするためである。
従来のCTA位相器では、位相器の前部に2つのプレート、中央プレートおよび外側プレートがある。中央プレートは逆止弁を覆うために使用され、一方、外側プレートはチャンバを覆うために使用される。「統合した逆止弁を備えた制御バルブ(CONTROL VALVES WITH INTEGRATED CHECK VALVES)」と題して2006年2月21日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第7,000,580号明細書に開示されているように、CTA位相器の逆止弁21a、21bを制御弁20に統合することによって、これらのプレートの1つが不要になり、ロータのパッケージ寸法が小さくなる。制御弁20はまた、「スプール弁制御のVCTロックピン解除機構(SPOOL VALVE CONTROLLED VCT LOCKING PIN RELEASE MECHANISM)」と題して2004年11月9日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,814,038号明細書に開示されたような、能動ロック機能用に追加した切り溝20dを有する。
位相器30用のオイルは、カムベアリング14bから外側シャフト2の穴2bを通って内側シャフト4と外側シャフト2との間のすき間3に送られる。シール36は、外側カム2の穴2bと第1のスロット2aとの間に置かれて、オイルがカムシャフトアセンブリの後部から流出するのを防止する。これは、オイルをスプロケット14aのスロット14cを経由して位相器内の吸入逆止弁(図示せず)に向ける。移動可能なカム山、すなわち第2のカムセット8の潤滑を維持するために、別のカムベアリング2dからのオイルが、シール36の後ろの、2つのシャフト2、4のすき間3の中に向けられる。2つのシャフト2、4間に入ると、移動可能なカム山、すなわち第2のカムセット8が外側シャフト2に搭載されたときに、オイルが外側シャフト2のスロット2aを流れて第2のカムセット8を潤滑することができる。
カムアセンブリ40の、位相器30とは反対側の端部には、バイアススプリングまたはトーションスプリング32があり、そのスプリングの一方の端部は、スロット2cを通って外側シャフト2に取り付けられ、スプリングのもう一方の端部は、別のスロット4cを通って内側シャフト4に取り付けられている。
あるいは、カムアセンブリ40の、位相器30とは反対側の端部に別のベアリングがあってもよい。
図12は、シャフト2、4の位相を互いに対して調整できる代替の位相器100を示している。そのほかのカムシステムのカムは、図1〜2を参照して上記に説明したのと同様のままである。内側シャフトによって管理される、第2のカム山セット8と外側シャフト2との間の機械式連結は、図5〜11を参照して上記に説明した実施形態のいずれかとすることができる。
位相器100は、シャフト2、4の位相を互いに対して調整する。カムシャフトアセンブリの内側シャフト4の端部は、位相器100の制御弁20のスプールを受け入れるスリーブを形成する穴を有する。内側シャフト4は、制御弁20のスプールの調量スロット20cと整列する環状路4bを有する。環状路4bに加えて、流体が環状路を通過する内側シャフトには、ロータ10内の流路に通じ、オイルがチャンバに向かったり戻ったりするのを可能にする幾つかの穴がある(図示せず)。この実施形態では、吸入逆止弁101が内側シャフトの中央環状路内にある。吸入逆止弁101は、内側シャフトの環状路に向かって予め張力をかけられたバンド式逆止弁(band check valve)であるのが好ましい。プラグ24は、内側シャフト4に押しつけられ、制御弁20用のストッパを形成し、制御弁スプリング23を捕捉する。プラグ24の貫通穴23aがあるのは、制御弁20の後部に出口を与え、弁が油圧でロックされるのを防止できるようにするためである。
従来のCTA位相器では、位相器の前部に2つのプレート、中央プレートおよび外側プレートがある。中央プレートは、逆止弁を覆うために使用され、一方、外側プレートは、チャンバを覆うために使用される。「統合した逆止弁を備えた制御バルブ(CONTROL VALVES WITH INTEGRATED CHECK VALVES)」と題して2006年2月21日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第7,000,580号明細書に開示されているように、CTA位相器の逆止弁21a、21bを制御弁20に統合することによって、これらのプレートの1つが不要になり、ロータのパッケージ寸法が小さくなる。制御弁20はまた、「スプール弁制御のVCTロックピン解除機構(SPOOL VALVE CONTROLLED VCT LOCKING PIN RELEASE MECHANISM)」と題して2004年11月9日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,814,038号明細書に開示されたような、能動ロック機能用に追加した切り溝20dを有する。
位相器30用のオイルは、カムベアリング14bから外側シャフト2の穴2bを通って内側シャフト4と外側シャフト2との間のすき間3に送られる。シール36は、外側カム2の穴2bと第1のスロット2aとの間に置かれて、オイルがカムシャフトアセンブリの後部から流出するのを防止する。これは、オイルをスプロケット14aのスロット14cを経由して位相器内の吸入逆止弁101に向ける。ここでは示していないが、第1の実施形態と同様に、移動可能なカム山、すなわち第2のカムセット8の潤滑を維持するために、別のカムベアリング2d(図示せず)からのオイルが、シール36の後ろの、2つのシャフト2、4のすき間3の中に向けられる。2つのシャフト2、4間に入ると、移動可能なカム山、すなわち第2のカムセット8が外側シャフト2に搭載されたときに、オイルが外側シャフト2のスロット2aを流れて第2のカムセット8を潤滑することができる。
カムトルク駆動型位相器のみが図面に示されているが、カムシャフトアセンブリ40に取り付けられた位相器100は、油圧駆動型(OPA)位相器や、単一逆止弁のトーションアシスト型(TA)の場合には、「制御部がロータ内に配置されたトーションアシスト型多重位置カムインデクサ(TORSIONAL ASSISTED MULTI−POSITION CAM INDEXER HAVING CONTROLS LOCATED IN ROTOR)」と題して2005年4月26日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,883,481号明細書、および/または逆止弁が2つのTAについて開示した、「チャンバとスプール弁との間のロータ内に2つの逆止弁を有するエンジン用のカム位相器(CAM PHASER FOR ENGINES HAVING TWO CHECK VALVES IN ROTOR BETWEEN CHAMBERS AND SPOOL VALVE)」と題して2004年7月20日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第6,763,791号明細書に開示されたトーションアシスト型(TA)位相器や、「内燃機関用の可変カムシャフトタイミング(VARIABLE CAMSHAFT TIMING FOR INTERNAL COMBUSTION ENGINE)」と題して1992年4月28日に登録され、参照により本明細書に援用される米国特許第5,107,804号明細書に開示されたカムトルク駆動型(CTA)位相器や、「カムねじり力が小さいエンジン状態で駆動するために比例油圧を併用するCTA位相器(CTA PHASER WITH PROPORTIONAL OIL PRESSURE FOR ACTUATION AT ENGINE CONDITION WITH LOW CAM TORSIONALS)」と題して2005年11月23日に出願され、参照により本明細書に援用される特許出願第11/286,483号明細書に開示された複合型位相器および「カムねじり力が小さいエンジン状態で駆動するために比例油圧を併用するCTA位相器(CTA PHASER WITH PROPORTIONAL OIL PRESSURE FOR ACTUATION AT ENGINE CONDITION WITH LOW CAM TORSIONALS)」と題して2005年11月23日に出願され、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0086332号明細書に開示された複合型位相器とすることができる。
したがって、本明細書で説明した本発明の実施形態が、単に本発明の原理を応用した例に過ぎないのは当然のことである。本明細書における、図示した実施形態の細部についての言及は、請求項の範囲を限定するよう意図されたものではなく、請求項自体が、本発明にとって必須と考えられるこれらの特徴を記載したものである。