JP2001191126A - 突起付き中空軸およびその製造方法 - Google Patents

突起付き中空軸およびその製造方法

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JP2001191126A
JP2001191126A JP37330399A JP37330399A JP2001191126A JP 2001191126 A JP2001191126 A JP 2001191126A JP 37330399 A JP37330399 A JP 37330399A JP 37330399 A JP37330399 A JP 37330399A JP 2001191126 A JP2001191126 A JP 2001191126A
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    • F01LCYCLICALLY OPERATING VALVES FOR MACHINES OR ENGINES
    • F01L1/00Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear
    • F01L1/02Valve drive
    • F01L1/04Valve drive by means of cams, camshafts, cam discs, eccentrics or the like
    • F01L1/047Camshafts
    • F01L2001/0475Hollow camshafts

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  • Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
  • Shaping Metal By Deep-Drawing, Or The Like (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼結合金からなるカムピースと挿入した中空
素管をバルジ加工を行って嵌着しカムシャフトを製造す
ると、カムピースの機械加工が必要であり、またカムシ
ャフトの製造コストが高い。 【解決手段】 塑性加工可能な軸受用鋼からなる中空体
6b、6cの内部に挿入された中空素管5を、バルジ型
3の内部に収容し、中空素管5にバルジ加工を行うこと
によって、中空体6b、6cをバルジ型3の内面に張り
付かせて中空体6b、6cの外形を所定の形状に成形す
るとともに、中空素管5と中空体6b、6cとを嵌着す
る。これにより、回転軸11と、この回転軸11の外周
面にバルジ加工により嵌着されたカムピース10b、1
0cとを有し、このカムピース10b、10cの外形が
バルジ加工により成形されたカムシャフト9を製造す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、突起付き中空軸お
よびその製造方法に関し、例えば、4サイクルレシプロ
エンジンの吸気弁および排気弁を開閉するためのカムピ
ースが取り付けられたカムシャフトのような突起付き中
空軸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば4サイクルレシプロエンジ
ンの吸気弁および排気弁を駆動するためのカムを有する
回転軸であるカムシャフトは、鋳造や鍛造で粗形状に加
工された後に、機械加工により最終形状に仕上げられて
いた。しかし、この方法では、カムと回転軸とが一体に
形成されるため、機械加工を行う部分が増加し、また、
カムの硬度を高めて耐摩耗性を向上するには加工後に浸
炭や熱処理等を行う必要が生じるため、製造コストが嵩
むという問題があった。さらに、この方法では、耐摩耗
性が要求されるカムと高強度が要求される回転軸とを、
それぞれに最適な材料で製造できないという問題もあっ
た。
【0003】このため、耐摩耗性を要求されるカムを焼
結合金により中空のカムピースとして製造するとともに
回転軸を軽量化のために中空軸として製造し、製造後に
これらを、溶接、ろう付けまたは機械的固定によって一
体化して組み立ててカムシャフトを製造する技術が開発
された。しかし、溶接またはろう付けを行うには、カム
ピースおよび回転軸それぞれの材質が制限されて最適な
材料を用いることができなくなり、一方、機械的固定を
行うと、この機械的固定をカムピースの設置数だけ繰り
返して行う必要が生じて生産効率が低下するという問題
があった。
【0004】このため、特公昭49−28298号公報
には、焼結合金からなるカムピースの内部に中空の回転
軸を嵌合し、嵌合されたカムピースおよび回転軸をバル
ジ型に収容し、回転軸にバルジ加工を行うことによって
カムピースおよび中空軸を嵌着することにより、カムピ
ースおよび回転軸を機械的に高能率で一体化する発明が
提案された。しかし、この発明では、カムピースの内面
形状が連続的に緩やかに変化する形状であるため、バル
ジ加工を行っても、カムピースおよび回転軸の固定強度
が充分ではなかった。
【0005】そこで、特開昭59−144532号公報
には、焼結合金からなるカムピースの内面に固定用突起
を設けておき、バルジ加工の際には、この固定用突起を
バルジ加工される回転軸の外面に噛み込ませることによ
り、カムピースおよび回転軸の固定強度を増加させる発
明が、また、特開昭60−257933公報には、焼結
合金からなるカムピースの内面に固定用溝を設けてお
き、バルジ加工の際には、この固定用溝に、バルジ加工
される回転軸の外面の一部を膨出させて嵌まり込ませる
ことにより、カムピースおよび回転軸の固定強度を増加
させる発明が、それぞれ提案されている。
【0006】さらに、特開昭62−97722号公報に
は、中空の回転軸にバルジ加工を行う際に用いるバルジ
型にカム位置決め機構を設け、このカム位置決め機構に
よりカムピースの固定位置精度を向上させる発明が提案
されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開昭59−1445
32号公報、同60−257933公報さらには同62
−97722号公報等により提案された従来の発明で
は、いずれも、カムピースは、耐摩耗性に優れるととも
に偏心したプロフィルを有するカムピースの外形を比較
的低コストで大量に製造できることから、焼結合金から
なる。この焼結合金からなるカムピースは、塑性変形せ
ずに割れてしまうため、バルジ加工による塑性変形を与
えることはできない。このため、これらの従来の発明で
はカムピースの最終的な寸法精度は焼結時の寸法精度に
より決定されるが、この焼結時の寸法精度では所望の寸
法精度が得られない。したがって、バルジ加工後に、焼
結合金からなる高硬度のカムピースに切削加工等の機械
加工を行わざるを得なくなり、製造コストが嵩んでしま
う。また、カムピースに用いる焼結合金自体もコストが
高い。このため、これらの従来の発明では、カムシャフ
トを高い生産効率で製造することができたとしても、製
造コストが大幅に嵩んでしまう。
【0008】また、これらの従来の発明では、中空の回
転軸を用いるために軽量化効果は得られるものの、カム
ピースは焼結合金からなる重量物であるため、高速回転
時のカムシャフトのダイナミックバランスが悪かった。
このため、カムピースの重量に起因したカムシャフトの
高速回転性能の低下も否めなかった。
【0009】本発明の目的は、バルジ加工後に寸法精度
を確保するための機械加工を必要としないことから低コ
ストで製造できるとともに高速回転時のダイナミックバ
ランスも優れた、例えばカムシャフト等の突起付き中空
軸およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するため、鋼管のバルジ加工について鋭意検討を重
ねた結果、以下に列記する新規な知見(i)〜(ii
i)を得た。 (i)バルジ加工は、加工後の形状を決定するバルジ型
の中に鋼管を収容し、鋼管の内部に高圧流体を導入して
張出し成形を行うことにより、鋼管を型に張り付かせて
所定の形状に成形するものである。このため、塑性加工
を行うことができる鋼管であれば、単管には限らず、二
重管以上の複層管や複合部材であっても、バルジ加工を
行うことができる。このため、部分的に二重管以上の複
層管または複合部材からなる管にバルジ加工を行えば、
突起付き中空軸を成形することができる。 (ii)部分的に二重管以上の複層管または複合部材を
有する管にバルジ加工を行うことにより、外径が大きく
変化する突起付き中空軸を、低い拡管率で高能率および
高精度で成形することができる。 (iii)バルジ加工は、管の内面側には工具を用いず
に張出し成形を行うため、管の内面形状を自由に変化さ
せることが可能であり、また、バルジ型の形状を適宜設
定することにより、鋼管の張出し方向を自在に設定する
ことができる。このため、内側の管と外側の管とが偏心
して配置された二重管であっても、充分に成形できる。
【0011】そこで、本発明者はこれらの新規な知見
(i)〜(iii)に基づいてさらに検討を重ねた結
果、前述した従来の発明のようにカムピースを焼結合金
により構成するのではなく、塑性加工可能な材料により
構成し、バルジ加工の際に膨出変形させてカムピースの
外形も成形することにより、上述した課題を解決できる
ことを知見して、本発明を完成した。
【0012】本発明は、中空の回転軸と、この回転軸の
外周面にバルジ加工により嵌着された突起とを有し、こ
の突起の外形が前記のバルジ加工により所定の形状に成
形されることを特徴とする突起付き中空軸である。
【0013】別の観点からは、本発明は、中空体の内部
に隙間を有して挿入された中空素管にバルジ加工を行う
ことによって中空素管と中空体とを嵌着する際に、中空
体を塑性加工可能な材料により構成するとともに、バル
ジ加工により中空体の外形を所定の形状に成形すること
を特徴とする突起付き中空軸の製造方法である。
【0014】具体的には、本発明は、塑性加工可能な材
料からなる中空体の内部に隙間を有して挿入された中空
素管を、バルジ型の内部に収容し、中空素管にバルジ加
工を行うことによって、中空体をバルジ型の内面に張り
付かせて中空体の外形を所定の形状に成形するととも
に、中空素管と中空体とを嵌着することを特徴とする突
起付き中空軸の製造方法である。
【0015】これらの本発明にかかる突起付き中空軸の
製造方法では、中空体と中空素管との間の隙間の少なく
とも一部に偏心部成形部材が配置されることが、突起の
形状にかかわらず中空素管の破断を防止しながら突起付
き中空軸をバルジ加工により製造することができるた
め、望ましい。
【0016】また、これらの本発明にかかる突起付き中
空軸の製造方法では、バルジ加工を行う前に中空素管と
中空体とを固定する固定部材が配置されることが、中空
素管および中空体を極めて高い静許容トルクで固定する
ことができるため、望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明に
かかる突起付き中空軸およびその製造方法の実施の形態
を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、
以降の実施の形態の説明では、突起付き中空軸が4サイ
クルレシプロエンジン用のカムシャフトである場合を例
にとる。
【0018】図1は、本実施形態において、バルジ型3
に収容されてバルジ加工の前の中空素管5を示す縦断面
図であり、図2は、本実施形態において、バルジ型3に
収容されてバルジ加工により成形されたカムシャフト9
を示す縦断面図である。また、図3は、図1におけるA
−A断面図であり、図4は、図2におけるB−B断面図
である。
【0019】図1および図2に示すように、本実施形態
では、上型1および下型2からなるバルジ型3を用い
る。上型1および下型2の内面には、それぞれ、製造さ
れるカムシャフト9の最終仕上げ形状が刻設された孔型
1a、2aが刻設される。上型1および下型2は、いず
れも、バルジ加工時の内圧による分割力に耐えるため
に、上下から図示しないプレス機構により押さえられて
おり、このプレス機構のプレスヘッドの上下動によって
上型1および下型2も上下動し、これにより、型内への
中空素管5の搬入と、型外へのカムシャフト9の搬出と
が行われる。
【0020】なお、上型1および下型2の間には、中空
素管の両端部を支持する管端拘束工具4a、4bが配置
されており、バルジ加工時の中空素管5またはカムシャ
フト9を、上型1および下型2の内部の所定の位置に支
持する。
【0021】このバルジ型3の構造や動作については、
既に公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0022】本実施形態では、上型1を上昇させるとと
もに下型2を下降させて、バルジ型3の内部に中空素管
5を収容し、上型1を下降させるとともに下型2を上昇
させてバルジ型3を閉じる。中空素管5は、図1に示す
ように、中空孔を有する中空体6a、6b、6cおよび
6dの内部に、それぞれ隙間を有して挿入された状態
で、バルジ型3の内部に収容される。
【0023】中空素管5は、製品であるカムシャフト9
の回転軸をなすため、充分な強度が要求される。本実施
形態では、中空素管5には一般的なSTKM13Aの鋼
管を用いた。
【0024】本実施形態では、中空体6b、6cは、い
ずれも、上型1に刻設された孔型1aおよび下型2に刻
設された孔型2aに配置するために、図3に示すよう
に、最終形状であるカムピース10b、10cに類似し
た形状に、予め偏心してプレス成形される。なお、図1
に示すように、この中空体6a〜6dと、上型1に刻設
された孔型1aおよび下型2に刻設された孔型2aとの
間には、後述するバルジ加工時の張出し量に応じた隙間
7a、7b、7cおよび7dが存在する。
【0025】また、この中空体6a〜6dには、塑性加
工可能な材料として、短尺の軸受用鋼管を用いた。すな
わち、前述した従来の技術では、耐摩耗性に優れるため
だけではなくて偏心したプロフィルを有するカムピース
の外形を比較的低コストで大量に製造できることから、
カムピースに焼結合金を用いるのに対し、本実施形態で
は、耐摩耗性の要求性能を満足することができ、かつ所
定の外形を有するカムピース10b、10cを、後述す
るバルジ加工により容易に成形することができる塑性加
工可能な材料を用いる。そこで、本実施形態では、中空
体6a〜6dには、短尺の軸受用鋼管を用いた。
【0026】次に、本実施形態では、中空体6a、6
b、6cおよび6dの内部にそれぞれ隙間を有して挿入
された中空素管5に、バルジ加工を行う。
【0027】このバルジ加工は、中空素管5の内部に、
管端拘束工具4a、4bの中心に開けられた管路8a、
8bから、高圧のバルジ加工用液体を注入する。これに
より、中空素管5は膨出変形して拡管される。この際、
中空素管5の膨出変形は、中空素管5の外側に配置され
た軸受用鋼管からなる中空体6a〜6dにも及び、中空
体6a〜6dも膨出変形する。このため、中空素管5と
中空体6a〜6dとは互いに当接した状態で、隙間7
a、7b、7cおよび7dへ向けて膨出変形する。そし
て、中空体6a〜6dの外面が、上型1に刻設された孔
型1aおよび下型2に刻設された孔型2aにそれぞれ当
接することにより、この膨出変形は終了する。
【0028】本実施形態では、このようにして、中空体
6a〜6dの外面を、上型1に製造されるカムシャフト
9の最終仕上げ形状が刻設された孔型1a、および下型
2にカムシャフト9の最終仕上げ形状が刻設された孔型
2aのいずれにも張り付かせることにより、中空体6a
〜6dの外形が、製造されるカムシャフト9の最終仕上
げ形状通りに成形される。
【0029】また、本実施形態では、このバルジ加工に
よって中空素管5を膨出変形させることにより、中空素
管5を中空体6a〜6dの内面に高い面圧で接触させて
密着させることができる。これにより、中空素管5と中
空体6a〜6dとは、実用上充分な固定強度(静許容ト
ルク)で嵌着される。
【0030】このようにして、図2に示すように、中空
の回転軸11と、この回転軸11の外周面にバルジ加工
により嵌着されたカムピース10b、10cと、カムシ
ャフト9を、搭載されるエンジンのシリンダヘッドに設
けられたベアリングにより軸支するためのジャーナル部
10a、10dとを有し、カムピース10b、10cの
外形がバルジ加工により成形されたカムシャフト9が提
供される。つまり、本実施形態では、カムピース10
b、10cとジャーナル部10a、10dとが、いずれ
も、本発明における突起に相当する。
【0031】そして、上型1を上昇させるとともに下型
2を下降させてバルジ型3を開き、バルジ加工されたカ
ムシャフト9を搬出する。
【0032】なお、バルジ型3から搬出したカムシャフ
ト9に対して、カムピース10b、10cおよびジャー
ナル部10a、10dそれぞれの表面を高周波で焼き入
れすることが望ましい。これにより、所望の硬度が与え
られるとともに、バルジ加工による嵌着部であるカムピ
ース10b、10cおよびジャーナル部10a、10d
が熱膨張で緩むことが、いずれも防止される。
【0033】また、ジャーナル部10a、10dには、
カムピース10b、10cに比較すると、大きなトルク
が作用せず、また大きな拡管率も要求されないため、ジ
ャーナル部10a、10dに対するバルジ加工は、カム
ピース10b、10cに対するバルジ加工よりも容易で
ある。
【0034】さらに、本実施形態では、ジャーナル部1
0a、10dもバルジ加工により成形したが、前述した
ように、ジャーナル部10a、10dには大きなトルク
が作用しないため、バルジ加工により成形するのではな
く、バルジ加工後にジャーナル部10a、10dをなす
別部品を、例えば溶接、ろう付けまたは機械的固定等の
適宜手段により、固定してもよい。
【0035】この本実施形態では、カムピース10b、
10cおよびジャーナル部10a、10dは、いずれ
も、充分な寸法精度を有するため、バルジ加工後に、切
削加工を行う必要がない。また、カムピース10b、1
0cおよびジャーナル部10a、10dに用いる軸受用
鋼は焼結合金よりも安価である。このため、本実施形態
によれば、カムシャフト9を高い生産効率で、かつ低コ
ストで製造することができる。
【0036】また、本実施形態では、カムピース10
b、10cは、軸受用鋼管である中空体6b、6cを膨
出させて塑性変形させることにより製造されるため、従
来の焼結合金からなる中実のカムピースに比較すると、
軽量である。このため、高速回転時のカムシャフトのダ
イナミックバランスが良好となり、カムシャフトの最大
許容回転数を従来よりも引き上げることもできる。これ
により、4サイクルレシプロエンジンの回転数を引き上
げることもできる。
【0037】このように、本実施形態によれば、バルジ
加工後に寸法精度を確保するための機械加工を必要とし
ないことから低コストで製造できるとともに高速回転時
のダイナミックバランスも優れたカムシャフト9を提供
できた。 (第2実施形態)次に、第2実施形態を説明する。な
お、以降の説明では、前述した第1実施形態と相違する
部分を説明し、共通する部分には同一の図中符号を付す
ことにより、重複する説明を適宜省略する。
【0038】図5は、本実施形態において、バルジ型3
に収容されてバルジ加工により成形されたカムシャフト
9−1を示す縦断面図である。また、図6は、図5にお
けるバルジ加工前のC−C断面図であり、図7は、図5
におけるC−C断面図であり、バルジ加工後を示す。
【0039】第1実施形態では、中空素管5をバルジ加
工により膨出変形させることにより、中空体6b、6c
と中空素管5とを嵌着させてカムピース10b、10c
を形成したが、カムピース10b、10cの形状(プロ
フィル)によっては、中空素管5の膨出変形量が過大と
なって中空素管5が破断することが考えられる。
【0040】そこで、本実施形態では、図6に示すよう
に、中空素管5には横断面が略円形の中空素管5を用い
るとともに、バルジ加工を行う前に、この中空素管5と
中空体6b、6cとの間に隙間に、偏心部成形部材12
を配置しておく。偏心部成形部材12は、中空素管5の
膨出変形量を低く押さえた状態で中空体6b、6cの膨
出変形量を充分に確保するために配置される。
【0041】偏心部成形部材12は、中空素管5と中空
体6b、6cとの間の隙間を埋めるために、中空素管5
の膨出変形により容易に変形するものが望ましい。ま
た、偏心部成形部材12は、カムピース10b、10c
の軽量化を図るために軽量のものが望ましい。
【0042】偏心部成形部材12の材質は、これらの要
求、加工工程での扱い易さ、さらには、コスト等を勘案
して適宜設定すればよい。本実施形態では、偏心部成形
部材12の材質は純アルミニウムとした。
【0043】また、偏心部成形部材12の形状や寸法等
は、中空素管5と中空体6b、6cとの間の隙間に挿入
可能であってカムピース10b、10cを成形可能な体
積を有していればよく、何ら限定を要さない。すなわ
ち、偏心部成形部材12は、中空素管5と中空体6b、
6cとの間の少なくとも一部に配置されていればよい。
本実施形態では、中空素管5と中空体6b、6cとの間
の隙間への挿入に際して機械加工の必要がないことか
ら、丸棒の切断材を用いた。
【0044】図6に示すように、中空素管5と中空体6
b、6cとの間に隙間に、偏心部成形部材12を配置し
てからバルジ加工を行うと、図5および図7に示すよう
に、バルジ加工により中空素管5が膨出変形すると、中
空素管5および偏心部成形部材12がともに、中空体6
b、6cの内面に当接して、中空体6b、6cを膨出変
形させる。前述したように、偏心部成形部材12は、中
空素管5および中空体6b、6cのいずれよりも軟らか
い純アルミニウムからなるため、中空素管5および中空
体6b、6cの間の隙間を埋めるように変形し、中空素
管5の局部的な膨出変形を抑制する。このため、中空素
管5の拡管率が小さくても、大きな偏心量を得ることが
できる。
【0045】このようにして、中空体6b、6cの外形
が、製造されるカムシャフト9−1の最終仕上げ形状通
りに成形されるとともに、中空素管5と中空体6b、6
cとは、実用上充分な固定強度(静許容トルク)で嵌着
される。
【0046】このため、本実施形態によれば、カムピー
ス10b、10cの形状(プロフィル)にかかわらず中
空素管5の破断を防止しながら、カムシャフト9−1を
バルジ加工により製造することができる。 (第3実施形態)図8は、本実施形態における予成形の
際の中空素管5と、中空体6b、6cとを示す説明図で
ある。また、図9はバルジ加工前の中空素管5および中
空体6b、6cを示す縦断面図、図10はバルジ加工後
の中空素管5および中空体6b、6cを示す縦断面図で
ある。
【0047】本実施形態では、図8に示すように、中空
素管5にバルジ加工を行う前に、中空素管5と中空体6
b、6cとを固定する固定部材13が配置される。固定
部材13は、後述するように、中空素管5および中空体
6b、6cの双方にめり込ませる必要があるため、高硬
度の部材を用いることが望ましい。本実施形態では、固
定部材13としてCrMo鋼線材を用いた。
【0048】すなわち、予成形として、図8に示すよう
に、中空素管5と中空体6b、6cとの間に固定部材1
3を配置して、上型14aおよび下型14bからなるプ
レス型14により、中空体6b、6cを縮径させる方向
へプレスする。これにより、固定部材13は、中空体6
b、6cの当接部近傍を塑性変形させ、中空体6b、6
cへめり込む。なお、固定用部材13を、後続して行わ
れるバルジ加工により中空素管5にもめり込ませる必要
があるため、このプレスでは、固定部材13の直径の半
分程度の深さだけ、中空体6b、6cにめり込ませるこ
とが望ましい。
【0049】そして、この予成形を行った後に、図9に
示すように、前述した第1実施形態または第2実施形態
と同様にバルジ加工を行う。本実施形態によれば、図1
0に示すように、中空体6b、6cにめり込まされた固
定部材13が、中空素管5の膨出変形にともなって中空
素管5の当接部近傍を塑性変形させ、中空素管5にもめ
り込む。
【0050】このため、固定部材13は、中空素管5と
中空体6b、6cとの間でキーと同様の固定作用を奏
し、バルジ加工による中空素管5および中空体6b、6
cの間における高い面圧での接触と相まって、極めて高
い静許容トルクを確保することができる。
【0051】
【実施例】図1〜図4に示す第1実施形態により4サイ
クルレシプロエンジン用のカムシャフトを製造した場合
を実施例1とし、図5〜図7に示す第2実施形態により
4サイクルレシプロエンジン用のカムシャフトを製造し
た場合を実施例2とし、図8〜図10に示す第3実施形
態により4サイクルレシプロエンジン用のカムシャフト
を製造した場合を実施例3とするとともに、前述した特
開昭60−257933公報により提案された方法によ
り4サイクルレシプロエンジン用のカムシャフトを製造
した場合を比較例として、それぞれにより得られたカム
シャフトの静許容トルク、カム形状の自由度および製造
コストを評価した。
【0052】なお、実施例1〜実施例3では、中空体6
b、6cは球状化焼鈍を行った高炭素Cr軸受鋼からな
る短尺鋼管を用い、この短尺鋼管の軸方向長さは必要カ
ム幅に一致させた。また、中空素管5には一般的なST
KM13Aの鋼管を用いた。さらに、実施例3では、固
定部材13にCrMo鋼の線材を用いた。
【0053】また、実施例1〜実施例3では、バルジ加
工後のカムシャフトに高周波焼入れを行って表面硬度を
所望の値に調整した。
【0054】製造条件および評価結果を、総合評価とと
もに表1にまとめて示す。
【0055】
【表1】
【0056】表1に示すように、実施例1では、中空素
管5に加えた内圧でバルジ加工を行うことにより、必要
な寸法精度を有するとともに実用上問題の無い固定強度
を有するカムピース10b、10cを設けることができ
た。ただし、カムピース10b、10cは、中空素管5
の膨出変形だけにより成形されているため、カムピース
10b、10cの外形(プロフィル)によっては成形で
きないことがある。
【0057】実施例2では、純アルミニウム材からなる
偏心部成形部材12を用いているため、実施例1に比較
して偏心量の大きな外形(プロフィル)を有するカムピ
ース10b、10cを製造できた。
【0058】実施例3では、中空素管5の膨出変形とと
もに、固定部材13を用いてカムピース10b、10c
を中空素管5に固定するため、カムピース10b、10
cの固定強度が実施例1および実施例2よりも向上し、
大きな静許容トルクが得られた。
【0059】なお、通常、カムシャフトに要求される静
許容トルクは98N・mと言われているが、実施例1〜
実施例3のいずれもこの値を越えた良好な値が得られて
おり、充分に実用化が可能である。 (変形形態)各実施形態および実施例の説明では、突起
付き中空軸が4サイクルレシプロエンジン用のカムシャ
フトである場合を例にとった。しかし、本発明はカムシ
ャフトには限定されず、中空の回転軸と、この回転軸の
外周面にバルジ加工により嵌着された突起とを有する突
起付き中空軸であれば、等しく適用される。このような
突起付き中空軸として、4サイクルレシプロエンジン用
のカムシャフト以外に、レシプロタイプのコンプレッサ
のカムシャフトやカム機構を有する機械部品のカムシャ
フト等が例示される。
【0060】また、各実施形態および実施例の説明で
は、中空体が軸受用鋼からなる場合を例にとった。しか
し、本発明における中空体は、軸受用鋼には限定され
ず、要求される硬度を満足するとともに塑性加工可能な
材料であれば、等しく適用される。塑性加工可能な材料
としては、軸受用鋼以外に、機械構造用炭素鋼や機械構
造用合金鋼さらにはチタン合金鋼等も、同様に用いるこ
とができる。
【0061】さらに、各実施形態および実施例の説明で
は、カムシャフトが二つのカムピースを有する場合を例
にとった。しかし、本発明はカムピースの数には何ら制
限されず、カムピースの数が1または3以上であって
も、同様に適用される。
【0062】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、バルジ加工後の機械加工を必要としないことから低
コストで製造できるとともに、カムピースの重量を低減
できることから高速回転時のダイナミックバランスも優
れた、例えばカムシャフト等の突起付き中空軸およびそ
の製造方法を提供することができた。
【0063】また、本発明では、カムピースを焼結合金
ではなく、塑性加工可能な材料により製造するため、こ
の材料を適宜選定することにより、部品コストを低減で
き、突起付き中空軸をさらに低コストで製造することが
できる。
【0064】かかる効果を有する本発明の意義は、極め
て著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態において、バルジ型に収容されて
バルジ加工の前の中空素管を示す縦断面図である。
【図2】第2実施形態において、バルジ型に収容されて
バルジ加工により成形されたカムシャフトを示す縦断面
図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図2におけるB−B断面図である。
【図5】第2実施形態において、バルジ型に収容されて
バルジ加工を行われて成形されたカムシャフトを示す縦
断面図である。
【図6】図5におけるバルジ加工前のC−C断面図であ
る。
【図7】図5におけるバルジ加工後のC−C断面図であ
る。
【図8】第3実施形態における予成形の際の中空素管
と、中空体とを示す説明図である。
【図9】バルジ加工前の中空素管および中空体を示す縦
断面図である。
【図10】バルジ加工後の中空素管および中空体を示す
縦断面図である。
【符号の説明】
3 バルジ型 5 中空素管 6b、6c 中空体 9 カムシャフト 10b、10c カムピース 11 回転軸

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空の回転軸と、該回転軸の外周面にバ
    ルジ加工により嵌着された突起とを有し、該突起の外形
    は前記バルジ加工により所定の形状に成形されることを
    特徴とする突起付き中空軸。
  2. 【請求項2】 中空体の内部に隙間を有して挿入された
    中空素管にバルジ加工を行うことによって該中空素管と
    前記中空体とを嵌着する際に、該中空体を塑性加工可能
    な材料により構成するとともに、前記バルジ加工により
    前記中空体の外形を所定の形状に成形することを特徴と
    する突起付き中空軸の製造方法。
  3. 【請求項3】 塑性加工可能な材料からなる中空体の内
    部に隙間を有して挿入された中空素管を、バルジ型の内
    部に収容し、該中空素管にバルジ加工を行うことによっ
    て、前記中空体を前記バルジ型の内面に張り付かせて該
    中空体の外形を所定の形状に成形するとともに、前記中
    空素管と前記中空体とを嵌着することを特徴とする突起
    付き中空軸の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記隙間の少なくとも一部に、偏心部成
    形部材が配置される請求項2または請求項3に記載され
    た突起付き中空軸の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記バルジ加工を行う前に、前記中空素
    管と前記中空体とを固定する固定部材が、配置される請
    求項2から請求項4までのいずれか1項に記載された突
    起付き中空軸の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011504558A (ja) * 2007-07-02 2011-02-10 ボーグワーナー・インコーポレーテッド 位相器用のスプール内に逆止弁を備えた同心カム
CN113732197A (zh) * 2021-09-03 2021-12-03 浙江飞剑工贸有限公司 一种异形壶的制造工艺

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